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音楽

2011/04/02

続13・震災とパフォーミングアーツ界関連の動き/仙台フィル/森山開次ほか

正式に「東日本大震災」という名称に決まった今回の震災。被災されたみなさんをサポートするための動きを引き続きレポートしていきます。

その中でも、バレエではないのですが、実際に被災した側が被災者をサポートしているということで見逃せないのが仙台フィルの動き。

http://www.sendaiphil.jp/news/index.html

「仙台フィルによる復興コンサート『鎮魂、そして希望』第2弾」として仙台で4月5日から連続37日間「マラソンコンサート」公演活動を続ける一方、4月20日にはサントリーホールで「東北応援チャリティ・コンサート ~仙台フィルとともに~」を開催します。

このチャリティコンサートは、日本を代表する演奏家が全員、無償で出演し、公演開催に関する経費を差し引いた入場料収入はすべて寄付されます。その半分を仙台フィル自らが被災地をめぐって音楽を届ける「復興コンサート」の活動資金に充て、残り半分は日本赤十字社を通じて被災地に寄付されるとのことです。

http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/110401/ent11040114540013-n1.htm

東北応援チャリティ・コンサート ~仙台フィルとともに~

http://www.suntory.co.jp/suntoryhall/perform/list1104.html#P21M3

・曲目
モーツァルト: フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K299から第1楽章
マスネ: タイスの瞑想曲
J.S.バッハ: 2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043から第1楽章
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64から第1楽章
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 op.18から第2・第3楽章
ブラームス: ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 op.102から第1楽章
ベートーヴェン: 交響曲第7番(全曲)

・指揮
広上淳一、山下一史

・出演
小山実稚恵(Pf)、漆原朝子、加藤知子、高嶋ちさ子、徳永二男、三浦文彰(Vn)、堤 剛(Vc)、高木綾子(Fl)、吉野直子(Hrp)、山口綾規(Org)

・演奏:仙台フィルハーモニー管弦楽団、在京音楽家有志による合同オーケストラ

・開演 18:30
・料金 指定5,000 (4月5日一般発売)
・問合せ AMATI 03-3560-3010
・チケット 電話申込:サントリーホールチケットサービス
WEB:チケットぴあ:

仙台フィル コンサートマスター 神谷未穂さんインタビュー
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/110330/ent11033016090016-n1.htm


一方、クラシック音楽会のみならず全音楽ジャンルを巻き込んだ、こんなチャリティコンサートもあります。

「全音楽界による音楽会」東北関東大震災チャリティコンサート
http://t.pia.jp/feature/classic/charity/charity.html

・曲目
・三枝成彰:震災のためのレクイエム
・グノー:アヴェ・マリア(ソロ:池田理代子)
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番より 第2楽章(ピアノ:小林研一郎)
・シベリウス:交響詩「フィンランディア」 op.26
・アイルランド民謡:ダニーボーイ
・チャイコフスキー:序曲「1812年」変ホ長調 op.49他

・出演
小林研一郎、大友直人(指揮)
小川里美(S)、奥村愛(Vn)、小原孝、神谷郁代(Pf)、川井郁子(Vn)、熊本マリ(Pf)、小林沙羅、佐藤しのぶ、佐藤美枝子(S)、佐野成宏(T)、塩田美奈子(S)、清水和音(Pf)、千住明(Com)、千住真理子(Vn)、堤剛(Vc)、仲道郁代(Pf)、中丸三千繪(S)、ジョン・健・ヌッツォ(T)、長谷川陽子(Vc)、林美智子(M-s)、福島明也(Br)、外囿祥一郎(ユーフォニウム)、松本蘭(Vn)、三浦友理枝(Pf)、村治佳織(Guit)、石井竜也、ル・ヴェルヴェッツ、大貫妙子、クミコ、coba、小林幸子、姿月あさと、平原綾香、森山良子
三枝成彰、林真理子、茂木健一郎、山田邦子、湯川れい子(トーク)
・合唱
神楽坂女声合唱団と仲間たち、スター混声合唱団、湯川れい子・亀渕友香・池未信とその仲間クワイヤー、六本木男声合唱団倶楽部
・演奏
コバケンとその仲間たちオーケストラ、東北関東大震災チャリティコンサート有志オーケストラ

・開演 17:30
・料金 全席指定無料 (4月5日受付開始、1申込み4枚まで) 入場時にお一人10,000円以上の義援金を申し受けます。※サントリーホールチケットセンターでの取り扱いはありません。
・問合せ
【チケット発売】 4月5日(火)10:00より受付開始
チケットぴあ WEB受付サイト 電話受付 0570-02-9565(音声自動応答)
チケットぴあ 問合せ 0570-02-9111

******
森山開次さんのメールマガジンから。

地震直後から日々連絡をとりあい、ともにできることを模索していたコスチュームアーティストのひびのこづえさん、
音楽家の川瀬浩介さんとともに、
まずは今、ここ東京でできることから。
昨年12月の「LIVE BONE」をバージョンアップ、
永遠に紡がれていく命、再生への希望をこめたパフォーマンスを行います。

スパイラル「アートのちから」内ダンスパフォーマンス
森山開次(ダンス)×ひびのこづえ(衣裳)×川瀬浩介(音楽) 
2011年4月17日(日)14:00開演予定
会場:スパイラルガーデン(表参道スパイラルビル1F)
http://www.spiral.co.jp/

※開演時間が変わることがあります。
正式な詳細は近日中にスパイラル公式サイト、当メルマガおよび森山開次ホームページにて発表しますので、
再度ご確認の上ご来場ください。

※会場に義援金募金箱が設置される予定です。集まった義援金は日本赤十字社を通じ被災地の皆さまへ送付されます。

******

海外での動きは、なかなか全部は追い切れませんが、いくつかご紹介します。

ニューヨークでは、現地で活躍する日本人ダンサーを中心にしたプロジェクト「Dance Project New York (DPNY) 」が“DANCE for JAPAN”,という公演を4月16日に開催します。場所はブルックリンのマーク・モリス・ダンスセンター。
http://www.dpny-us.org/#!__dance-for-japan
日本語サイトはこちら http://www.bway.name/dpny/menu.htm

出演はABTの加治屋百合子さんをはじめ、瀬河寛司さん、Limon Dance Company、Mark Morris Dance Group, Cedar Lake Contemporary Balletの日本人ダンサーほか、またアメリカン・バレエ・シアター付属ジャクリン・ケネディ・オナシス・スクールの生徒たちなどが出演するとのことです。入場料は無料ですが35ドル以上の寄付をお願いしたいとのこと。寄付金は100%、ジャパン・ソサエティが設立した東日本大震災基金に寄せられるとのことです。

******
鑑賞生活日記のエントリで教えていただきましたが、3月27日にサンクトペテルブルグ州立大学において、東日本大震災の犠牲者を支援するチャリティーコンサートが行われたとのことです。

こちらの記事(ロシア語)に内容が載っています。
http://www.iskusstvo-tv.ru/News/2011/03/27/v-sankt-peterburge-proshel-blagotvoritelnyi-vecher-v-podderzhku-postradavshix-v-yaponskoi-tragedii

それによると、バレエ界からはディアナ・ヴィシニョーワとイーゴリ・コールプが「白鳥の湖」からアダージオを踊ったとのこと。当初ヴィシニョーワは挨拶を言うだけの予定だったのが、急遽踊りも見せてくれることになったとか。映画監督アレクサンドル・ソクーロフが日本を撮影した映画「オリエンタル・エレジー」も上映されたそうです。

ヴィシニョーワは震災以来、日本の被災者を支援するための機会がないか探していたとのことで、当初義援金を集めるためのガラを企画したいと考えていたそうです。スケジュールがタイトでなかなか実現するのが難しそうだったときに、ちょうどこの機会に招待されたとのことで、踊りを見せることになったそうです。「日本の人々のためにできることとしては本当に小さなこと、やりたいことのほんの一部だけど、真心を込めて行います」と彼女は語ったとのこと。

そのときの写真なども。
http://interpress.ru/index.php?page=group&group_id=27326

********
ジャパンアーツでは、オフィシャルのFacebookサイトで、所属アーティストのチャリティ活動やメッセージを数多く伝えています。ピアニストの小川典子さんが3月30日ロンドン・キングスプレイスにて、東北関東大震災被災地への義援金支援を呼びかけるコンサートを行ったことなど。

http://www.facebook.com/japanarts

その中で、4月1日の新聞に掲載された広告が紹介されています。「私たちは日本を応援しています」と、ワレリー・ゲルギエフ、ニーナ・アナニアシヴィリ、プラシド・ドミンゴをはじめとする錚々たるアーティストたちからのメッセージが掲載されています。

2009/09/06

9/5 東京ニューシティ管弦楽団 第64回定期演奏会 指揮:アンドレイ・アニハーノフ

アンドレイ・アニハーノフ客演指揮者就任記念演奏会
「怒濤のロシア音楽」
指揮:アンドレイ・アニハーノフ
コンサートマスター:浜野孝史

<第1部>
リムスキー・コルサコフ 「スペイン奇想曲 op.34」

バレエ組曲「白鳥の湖」op.20より(アニハーノフ編纂)
 1.情景(第2幕 No.10) <2幕冒頭>
 2.パ・ダクシオン(オデットと王子)(第2幕 No.13)<オデットと王子のグラン・アダージオ>
 3.情景:賓客の入場とワルツ(第3幕 No.17)<ファンファーレと招待客、花嫁候補によるワルツ>
 4.情景(第3幕 No.18)<オディールのヴァリエーション(グリゴローヴィチ版やブルメイステル版で使用される曲)>
 5.パ・ド・ドゥ(第3幕 No.19a)<チャイコフスキー・パ・ド・ドゥのアダージオの曲>
 6.情景(第3幕 No.24)<王子がオディールに愛を誓わされる>
 7.間奏曲(第4幕 No.25)<4幕の冒頭の曲>
 8.情景(第4幕 No.28)
 9.最後の情景(第4幕 No.29)

<第2部>
ラフマニノフ 「交響曲第2番 ホ短調 op.27」

アンコール
チャイコフスキー「くるみ割り人形」より金平糖のPDDのアダージオ

ここ数日仕事が忙しくて残業続きの上、体調が優れず、さらに蕁麻疹が悪化して手の甲がとても気持ち悪い状態になっていたりします。大抵土曜日の午前中は死んでいるのですが、ぎりぎりに家を出たところ、普段滅多に行かない池袋で土地勘がなく、(中央線より北は生活圏から外れているので)、しかも一度しか行ったことがない東京芸術劇場の大ホールだったため、間違って中劇場に行ってしまったりして。大ホールのエスカレーターって、5階に相当する高さで、しかも3階席だったので、そこまで行くのに大変だったこと!というわけで、残念ながらぎりぎり開演に間に合わず、1曲目のリムスキー=コルサコフはモニターの前で聴く羽目に・・・

でも、「白鳥の湖」から聴けて本当に良かったです。コンサートマスターのグラン・アダージョでのソロ、ハープによるカデンツァの弦の響きも美しくてうっとりしました。バレエの伴奏ではなくて演奏会なので、バレエを観ている時とテンポが違う(ちょっと速め)のですが、アニハーノフさん、そしてオーケストラの気合が伝わってきました。ニューシティ管弦楽団の演奏もすごく良かったです。

バレエの演奏では、大抵3幕のファンファーレでトランペットが外すことが多くてずっこけるのですが、演奏会だから当然のようにそこも正しく演奏されていて。いやはや、バレエではあそこでトランペットがこけることがなかった方が珍しいですからね。

3幕は、パ・ド・ドゥの曲がブルメイステル版の曲順になっていて、オディールのヴァリエーションはグリゴローヴィチ版での曲だったし(オーボエの旋律が妖しげな短調のこの曲、大好き)、その後にチャイコフスキー・パ・ド・ドゥのアダージオを使っていて、思わずミラノ・スカラ座のチャイコフスキー・ガラやモスクワ音楽劇場の「白鳥の湖」の舞台が思い出されてきました。

4幕の演奏が、も~素晴らしかったです。「聴け、怒涛のロシア音楽」というキャッチコピーほど、ここまでは爆音ではなかったのですが、4幕の「情景」から「最後の情景」までは本当にドラマティックで、ティンパニも炸裂していて、盛り上がりました。最後の情景のところは、私はマシュー・ボーンの「白鳥の湖」と、ノイマイヤーの「幻想 白鳥の湖のように」をいつも思い出すのですよね。この二つの演出は、4幕の「最後の情景」の凄絶なまでの盛り上がり方を、もの凄くうまく使っている演出だと思うのです。そこを指揮する時のアニハーノフの身体の動きも、3階席のバルコニーだったのでとてもよく見えて、全身を使って飛び跳ねるように指揮しているのがわかりました。

今まで数限りなく「白鳥の湖」の舞台を観てきているわけですが、こうやって、アニハーノフさんの入魂の指揮と、高いクオリティと、オーケストラピットではなく舞台の上で演奏しているゆえにクリアな音質による演奏を聴くと、さまざまな舞台の記憶が脳裏に浮かんできます。とともに、バレエ公演でこのレベルの演奏を聴けたらどんなにいいことだろうと思いました。アニハーノフさんがレニングラード国立バレエの指揮で来ていた頃は、この音が聴けたんですよね。全曲でないのは残念ですが、それでもアニハーノフによる選曲のセンスが、聴き所をばっちり押さえていて素晴らしかったです。一昨年のNHK音楽祭でのゲルギエフによる「白鳥の湖」抜粋とはかなり選曲が違っていました。(ゲルギエフは、チャルダッシュを選んでいましたね)

アニハーノフ指揮、東京ニューシティ管弦楽団で今度牧阿佐美バレエ団の「白鳥の湖」の演奏をするんですよね。この音で観られるのは良いのですが、牧というのがちょっと・・・。「スーパーバレエレッスン」を観ていると、牧のダンサーの悪いところが目に付いてしまって、とても公演を観ようとは思えないんですよね。


ラフマニノフの交響曲二番を聴くのは初めて。曲調は変われども4つの楽章を通じて、主題が根底に流れているところがいいなあ、と思って聴き入りました。第3楽章のアダージオだけ、指揮棒を置いて指揮をしていたんですね、マエストロ。柔らかくてきれいな手の動きを見てしまいました。音の方も、それに見合った柔らかくゆっくりとして美しい旋律で。第4楽章のフィナーレは晴れやかで華麗で、アニハーノフさんは、舞台から落ちちゃうんじゃないかと思うくらい飛び跳ねていて、カッコよかったです。オーケストラのメンバーも、釣られたようにノリノリで、身を乗り出さんばかりに気合入りまくりで演奏しているのが見えました。

カーテンコールの時、上手で譜面台が運び込まれ、さらにハープがもう一台運ばれてくるにつけ、アンコールに期待しました。すると、2台のハープから、真珠の珠のようなつややかな旋律、そしてチェロの暖かく少し哀しくて美しいメロディが流れてきます。そう、「くるみ割り人形」の金平糖の精のアダージオです!なぜかこの曲を聴くと、いつも涙が出そうになります。そして、金平糖の精といえば、吉田都さんの金平糖が目に浮かぶのです。実は都さんの金平糖の精は、ロイヤルとバーミンガム・ロイヤルの映像でしか観たことがないのに。

やっぱり生の演奏に触れることは、他では換えがたい経験だと思いました。アニハーノフさん、牧以外のバレエ団での指揮をぜひお願いしたいです。

2009/05/10

5/10 新国立劇場 ムツェンスク郡のマクベス夫人 Shostakovich:Lady Macbeth of Mtsensk

2008/2009 Season Opera
[New Production]
Shostakovich:LADY MACBETH OF MTSENSK
ショスタコーヴィチ/全4幕

http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000059_opera.html

【作 曲】ドミトリー・ショスタコーヴィチ
【台 本】アレクサンデル・プレイス

【指 揮】ミハイル・シンケヴィチ
【演 出】リチャード・ジョーンズ
【美 術】ジョン・マクファーレン
【衣 裳】ニッキー・ギリブランド
【照 明】ミミ・ジョーダン・シェリン

【芸術監督】若杉 弘

キャスト
【ボリス・チモフェーヴィチ・イズマイロフ】ワレリー・アレクセイエフ
【ジノーヴィー・ボリゾヴィチ・イズマイロフ】内山 信吾
【カテリーナ・リヴォーヴナ・イズマイロヴァ】ステファニー・フリーデ
【セルゲイ】ヴィクトール・ルトシュク
【アクシーニャ】出来田 三智子
【ボロ服の男】高橋 淳
【イズマイロフ家の番頭】山下 浩司
【イズマイロフ家の屋敷番】今尾 滋
【司祭】妻屋 秀和
【警察署長】初鹿野 剛
【警官】大久保 光哉
【酔っ払った客】二階谷 洋介
【軍曹】小林 由樹
【ソニェートカ】森山 京子
【年老いた囚人】ワレリー・アレクセイエフ
【ボリスの亡霊】ワレリー・アレクセイエフ

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団

1934年の初演は大好評だったものの、1936年にスターリンがこの作品を鑑賞して激怒し上演禁止となり、ショスタコーヴィチの作曲家生命すら危ぶまれるという事態になったいわくつきの作品。今回の上演は、2004年にロイヤル・オペラのために演出されたプロダクション。ローレンス・オリヴィエ賞の最優秀オペラ賞を受賞しているとのこと。

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とマリス・ヤンソンス指揮のプロダクションをDVDで観ていたものの(そちらは、今年の一月にパリ・オペラ座でも上演されていた)、このオペラを実演で観るのは初めて。実に面白かった!セックス&ヴァイオレンス描写はコンセルトヘボウの方が過激だけど、英国的な抑え目の演出と黒いユーモアが良くマッチしていたと思う。

なんといっても、ショスタコーヴィチの音楽がもう最高にいい!性描写の時の、扇情的な打楽器による盛り上げ方、間奏、舞台上で起きていることは悲惨なのに笑えてしまうパロディ的な音楽の使い方。ショスタコーヴィチなんて暗くて難解で、と思っている人でも楽しめるわかりやすいメロディ。金管が特に前面に出されていて、15人という大きな編成のバンダが、2階L1列(バルコニー席)に登場したり、合唱の中に混じって舞台上に登場したり、殺されたジノーヴィの死体を発見した酔っ払った客が警察に駆けつける間の間奏で幕の前に登場して演奏するという活躍ぶり。演奏もとてもよかったと思う。大音量で鳴らしていて大変な迫力があった。私はクラシック音楽に詳しくないので、若杉弘氏の代役として登場した、マリインスキー劇場のミハイル・シンケヴィチの指揮が良かったかどうかはわからないけど、よく響いていたし、ショスタコーヴィチならではの諧謔性も表現できていて、とても楽しめたことは間違いない。

歌手については、まず定評のある新国立劇場合唱団の実力を再認識。そしてカテリーナ役のステファニー・フリーデが最後まで美しく響く声で熱演。この作品で叙情的なメロディのほとんどは、カテリーナが歌うことになっているため、表現力が重要なことは言うまでもない。カテリーナは夫と舅を殺してしまう悪女ではあるけれども、悪い女というよりは、周りの男たちの犠牲者となった悲劇的な存在だというのがよくわかる。舅ボリスと、ボリスの亡霊や年老いた囚人役のワレリー・アレクセイエフも素晴らしかった。1幕では好色で支配的な老人のいやらしさ、4幕ではシベリアに流刑となって、終わりのない行進を続けさせられている運命への嘆きが深みを持って伝わってきた。特に4幕では圧巻。あとは、死体を発見する酔っ払った客の二階谷洋介さん、超笑えて最高の怪演。ものすごい怪しい存在感の司祭妻屋 秀和さんも良かった。また、セルゲイを誘惑する若く蓮っ葉な女ソニェートカ役の森山京子も迫力あり。

連続した二つの部屋を表現する箱を並べた舞台構成。サイド席だとかなり観づらいのではないかと思う。字幕を追いかけながら舞台も同時に観るのは大変だったし。しかし、結婚式の宴の隣の倉庫に死体が隠されていたり、嫁の様子を舅が覗き見たり、妻の情事を夫が嗅ぎつけたりといった2つの隣接した別の場所の様子を表現するにはうまいやり方だ。夫を殺したとたん、カテリーナが部屋をピンクの壁紙を実際に貼り付けさせて改装させたり、結婚式での(あほくさいまでの)熱狂の最中に殺人が露見するというシチュエーションの転換が面白い。テレビの画面も巧みに使っていて、舅の亡霊が画面に映ったり、結婚式に招かれなくてふくれている警察官たちの部屋にあるテレビに宴の様子が中継されていて、ますます「いいなあ」って彼らが思い込むというのが笑える。

カテリーナは悲劇的な存在であるとともに、悪い男に引っかかったばかりに身を破滅し、挙句の果てにその男にも捨てられ、彼の愛人ソニェートカにはおばかさんと罵られてしまう、バカな女。しかし単なる悲劇としてでなく、笑えるところをいっぱい盛り込むことによって、息の詰まるような田舎町の封建性、人間の変わり身の早さといった醜い部分がクローズアップされ、さらにカテリーナの悲劇が強調されているのが、面白い。

ただ、最後にカテリーナがソニェートカを急流に突き落とし自分も身を投げて死ぬところ、プロンプターボックスの横のせりにゆっくりと下りていくという演出が、あまり緊迫感やドラマティックさがなくて、拍子抜けしてしまったのがちょっと残念だった。

プログラムの解説がとても詳しくて、すごく勉強になった。新国立劇場のバレエのプログラムは、前回公演の使い回しとかが多くて、値段の価値はないけれど、今回のオペラのプログラムはとてもいい!

大胆で面白く、充実した上演であったことは間違いない。再演もぜひして欲しいと思う。

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追記:この作品、リブレットがとても面白いし、性暴力を描いているにも関わらず、一種の女性の自立譚となっている。セルゲイや使用人たちが、女中を集団暴行しているときに騒ぎを聞いて駆け付けたカテリーナは、「女にだって男と同様、頭はあるのよ」と言い、セルゲイと腕相撲対決までする。女性に対して抑圧的だった当時の世の中で、カテリーナがその抑圧を逃れようとあがいた結果が、この物語の結末であるのが悲しい。

舅を毒殺するときに「キノコの毒に当たって死ぬことはよくあるわ」とカテリーナが言い放つのは爽快ですらあるし、酔っ払った客の歌の歌詞は爆笑モノ!

2009/01/20

ミラノ・スカラ座オペラ来日公演の概要/ロベルト・ボッレがABTのロサンゼルス公演に出演

高いので絶対に観に行きませんが(笑)ミラノ・スカラ座で検索して来られる方が多いので…。

ミラノ・スカラ座のオペラ来日公演の概要が発表されました。

http://www.nbs.or.jp/festival2009-2011/scala.html

ダニエル・バレンボイム指揮「アイーダ」
演出・舞台装置 フランコ・ゼッフレッリ
2009年9月4日、6日、9日、11日 NHKホール(開演時間は後日発表)
S席67000円(!)ほか

ダニエレ・ガッティ指揮「ドン・カルロ」
2009年9月8日、12日、13日、15日、17日 東京文化会館
S席59000円ほか

3月28日(土)10:00~ 一斉発売(S~D席)
2演目セット券(S~C席)、E,F席特別受付 3月7日(土)10:00~ 
NBSチケットセンター 03-3791-8888

ちなみに、フランコ・ゼッフレッリ演出のミラノ・スカラ座の「アイーダ」(ロベルト・アラーニャ主演)はDVDが出ています(持っています)。バレエのシーンでロベルト・ボッレが出ていますが、ロベルトはこの時期スカラ座に出演中なので日本には来られません。スカラ座のバレエダンサーが出演するとは思います。

感想はこちらです。ただし、ほとんどバレエシーンのことしか書いていません。
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2007/09/post_0f4d.html

ヴェルディ:歌劇《アイーダ》 [DVD]ヴェルディ:歌劇《アイーダ》 [DVD]
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追記:ミラノ・スカラ座つながりでのニュースです。

ロベルト・ボッレがABTのロサンゼルス公演の「ロミオとジュリエット」(7月16日)に出るそうですロベルトのオフィシャルサイトからお知らせが送られてきました。ゲストプリンシパルがツアーに出るのは珍しいですね。本格的にABTの一員としての位置づけとなったんですね。
まだABTのオフィシャルには出ていません。

Roberto Bolle will perform "Romeo and Juliet" with the ABT in Los Angeles on the 16/07/2009

Los Angeles Music Center Dorothy Chandler Pavilion
http://www.musiccenter.org//events/dance_0809_abt.html

あと、カリフォルニア・オレンジカウンティのOCPAC(Orange County Performing Arts Center)での5月21日のガラにも、ロベルト・ボッレは今のところ出演するようです。
http://www.ocpac.org/home/Content/ContentDisplay.aspx?NavID=514

Artists scheduled to appear include Maria Alexandrova, Roberto Bolle, Ashley Bouder, Alina Cojocaru, Angel Corella, Johan Kobborg, Denis Matvienko, Natalia Osipova, Desmond Richardson, Leonid Sarafanov, Genaddi Saveliev, Nicolay Tsiskaridze, Ivan Vasiliev , Diana Vishneva, Svetlana Zakharova and the Eifman Ballet of St. Petersburg. (Artists are subject to change.)

ロベルトに加え、アレクサンドロワ、コジョカル、コレーラ、コボー、マトヴィエンコ、オシポワ、サラファーノフ、ツィスカリーゼ、ワシーリエフ、ヴィシニョーワ、ザハロワと本当にこんな豪華な人たちが出演するんでしょうか???サブスクライバー(シーズン会員)のみチケット購入可能だそうです。

2008/11/10

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のライブ音源が無料でダウンロードできる!

日経パソコンのPC Onlineの記事で見つけたのですが、なんと太っ腹にも、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団が創立120周年を迎えた記念として、ラジオ局Radio4のウェブサイト経由で10曲の交響曲のライブ録音を無料配布しているのです。

http://kco.radio4.nl/?page=home&lang=en

しかも、mp3のファイルをダウンロードさせてくれるというサービスぶり。もちろんiPodなどにも転送できます。CDに焼くユーザーのためにわざわざPDFファイルでCDジャケットまで用意されているというからすごい。

ラインアップは以下の通り。ヤンソンスやアーノンクール、ミョンフンといった名指揮者の演奏を無料でダウンロードできるのは本当に美味しいです。ライブ録音なので少々のノイズはあります。

1. シューベルト:交響曲第8番(第7番)「未完成」  ニコラウス・アーノンクール指揮(1997年)
2. ベートーヴェン:交響曲第2番 マリス・ヤンソンス指揮(2002年)
3. メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」 キリル・コンドラシン指揮(1979年)
4. フランク:交響曲ニ短調 マリス・ヤンソンス指揮(2004年)
5. マーラー:交響曲第1番「巨人」 レナード・バーンスタイン指揮(1987年)
6. ドヴォルザーク:交響曲第8番 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮(1990年)
7. サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン」 チョン・ミョンフン指揮(2005年)
8. シベリウス:交響曲第2番 マリス・ヤンソンス指揮(2005年)
9. ブルックナー:交響曲第8番 マリス・ヤンソンス指揮(2005年)
10.ブラームス:交響曲第2番 マリス・ヤンソンス指揮(2004年)

上記の音源は11月24日までの期間限定で公開なので急ぐべし、です。名前やメールアドレス等を入力する必要がありますが(確認のメールが来ます)、方法はすごく簡単です。ただファイルが圧縮されていないので、ダウンロードには結構時間がかかります。

2008/11/09

ゲルギエフ、グルジアとロシアの紛争について語る

マリインスキー劇場の芸術監督で、指揮者のヴァレリー・ゲルギエフは、マリインスキー管弦楽団の米国ツアーでマイアミ・ビーチにいるところを、ニューヨークタイムズにインタビューされました。

http://www.nytimes.com/2008/11/08/arts/music/08gerg.html?_r=1&hp&oref=slogin

ゲルギエフは、今年8月に南オセチア自治州の州都Tskhinvaliにて演奏会を行い、グルジアの攻撃を激しく非難しました。ロシア語と英語の両方で、彼はグルジアを批判し、ロシアを救世主として讃えました。世界でもっとも有名なオセチア人であるゲルギエフは、ペテルブルグのキーロフオーケストラを率いて、5日間の戦闘における死者たちを弔う追悼コンサートを行いました。このできごとは、クレムリンのプロパガンダであるという強い印象を世界に与え、西側世界ではこの戦闘の悪役とされているロシアを支持するゲルギエフに対して、非難の嵐が巻き起こりました。

3ヶ月が経過した今も、ゲルギエフは、自身の役割に誇りを持っているようです。彼が言うには、グルジアは自衛ではなく、無差別攻撃を行っていたとのことです。どちら側に原因があったかは、今もって論争が続いています。

ゲルギエフは、グルジアと、サカシヴィリ大統領を激しく非難しました。グルジアの攻撃を、予想はされていたものの、実際に起きるとは思っていなかったという意味で真珠湾攻撃になぞらえました。そして、彼を批判する者たちは、安楽椅子で高みからコメントしているのだと。

「ひとつ明らかなのは、グルジアは眠れる街を爆撃したということです。誰もが今はそれを知っています。グルジアの大統領は、力づくで奪い取ろうとしており、市民がどれほど殺されようと彼には関係のないことなのです」
「どのようにして始まったことかが大事なのです。もしパンドラの箱を開けてしまったら、その中に蛇が入っていたとしても叫ぶべきではありません」

グルジア側は、 ロシアは侵略を準備しており、グルジアの村を攻撃していたという証拠があり、自国の攻撃は防衛的なものであると主張しています。

9日から始まる、エイヴァリー・フィッシャーホールで行われるニューヨーク公演でゲルギエフは、有名ではないバレエ音楽集から始まり、月曜日には「ロミオとジュリエット」を指揮します。16日は、「三つのオレンジへの恋」のコンサートヴァージョン、17日には映画音楽プログラムを指揮します。そして来年3月には、ロンドン交響楽団とともにプロコフィエフの交響曲やコンチェルトのプログラムを上演します。来シーズンには、ニューヨークフィルと、3週間のストラヴィンスキープログラムを上演する予定です。ニューヨークの人々に、まだあまり知られていない舞台作品や映画音楽を紹介する機会と考えているとのことです。

今までもゲルギエフは、北オセチアで起こった悲劇や、日本の震災の被害者のためのチャリティコンサートを開いてきました。

しかし、8月21日の南オセチアでのパフォーマンスは、一部のコメンテーターからは厳しい批判が寄せられました。このコンサートの光景自体がシュールなものであったと。暗闇に包まれた街のなかで、コンサートが行われた場所だけは光に包まれていました。すぐ近くのグルジアの村からは、おそらくロシア軍によって火が放たれた家からの煙が昇っていました。このコンサートはロシア中で放映され、ショスタコーヴィチの交響曲7番「レニングラード」が演奏されたことで、第二次世界大戦において、ドイツ軍に占領されたレニングラードでのロシア人の苦難に重ねられ、ナショナリスト的なメッセージを伝えていました。

Forbes.comにおいて記者は、「南オセチア人は罪のない犠牲者でロシア軍は輝く鎧を着けた騎士、グルジアのサーカシヴィリ大統領はヒトラーに似ていなくもない口ひげを生やしている」と書きました。これに対して、ロンドン交響楽団は、ゲルギエフを支持すると表明しました。

「私は自分のしたことが正しいと100%確信しています」とゲルギエフは言いました。西側からの批判に対しては、「それがどうしましたか。私はオセチア人なのですよ」と答えました。

このコンサートがどのように実現したかについては、ロシアの一部である北オセチアの役人に接触し、現地を訪問したいと申し出たとのこと。クレムリンがコンサートの準備についてどのような役割を果たしたかについては、返事をかどわかしました。

ゲルギエフは、チャイコフスキーの交響曲5番、アンダンテという平和的な音楽から始め、チャイコフスキーの交響曲6番「悲愴」の死に支配されたフィナーレで終えたという事実を批評家たちが無視したと言い、プログラムの内容を擁護しました。交響曲「レニングラード」を上演したことに対する批判については、「ショスタコーヴィッチは悪を非難する意味でこの曲を書いたのです。彼は、私たちがこの世界で生きていく権利を護るための作品を考えていたのです」

また、プーチン首相との関係についての質問も出てきました。お互いの子供の名付け親であるという噂までささやかれているからです。「私たちは親しくはしていますが、友人ではありません」プーチンがサンクトペテルブルグの副市長であった1990年代からの知り合いであり、便宜を図ってもらったり、高価な贈り物をもらったこともないと彼は語りました。事実、ゲルギエフは20カ国から勲章を受けています。

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オセチアでの追悼コンサートを報道するニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/080822/erp0808220808002-n1.htm

もうひとつ記事
「【音楽の政治学】廃墟のゲルギエフ 情報戦争に加担した巨匠」
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/081019/erp0810191327005-n1.htm

政治と音楽は切り離して考えるべきものなのでしょうが、特にロシアでは、バレエも含めて密接にかかわってくる部分があるのでしょうね。

いずれにしても、このような情勢では、グルジア国立バレエの芸術監督であるニーナ・アナニアシヴィリが、再びロシアで踊るということは非常に考えにくいですね。残念なことです。

なお、ショスタコーヴィチの交響曲7番「レニングラード」ですが、
ソ連のプロパガンダを強く感じさせるとされてきましたが、1970年代後半に出された「ショスタコーヴィッチの証言」でこの作を「スターリンによって破壊され、ヒトラーによってとどめを刺された」レニングラードを意味すると書かれたるころ評価が変わり始め、現在では、ショスタコーヴィチはこの作品においてナチス・ドイツのみならずソ連政府の暴力をも告発しているのだ、という説が有力になりつつあるそうです(Wikipediaより)

個人的には、この曲そのものには、ソ連のプロパガンダに見せかけて実はスターリンも批判しているのではないかという解釈に賛成です。ショスタコーヴィチは、そんなに一筋縄で行くような作曲家ではないと思いますので。

でも、南オセチアのコンサートでの演奏における政治性の有無に関しては、当事者ではないので、なんともいえないところです。ただ言えることは、大義名分が何であれ、一般市民に犠牲を強いるような戦争はして欲しくないということ。

2008/10/22

新国立劇場会報ジ・アトレと「ムツェンスク郡のマクベス夫人」

新国立劇場のクラブ・ジ・アトレ会員にはなっているものの、オペラはあまり観ないので、毎月送られてくる会報誌「ジ・アトレ」はあまりきちんと読んでいない。ほとんどの場合、オペラにページが割かれていてバレエの話はあまり載っていないから。あげくのはてにどこかに置いてしまって、チケットの発売日を忘れるという体たらくで…。オペラを聴くのはもちろん嫌いではないのだけど、オペラを実際に観に行く時間とお金がなくて。

ところで、ジ・アトレの最新号の特集はオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」だ。これは今シーズンでも、バレエのどの作品よりも楽しみにしていたのだ。ショスタコーヴィチによるこの作品は、日本人キャストによる初演こそ昨年行われたけれども、新国立劇場で上演されるのは初めて。しかも、DVDでこのオペラを観たら、音楽も強烈だし、とっても面白いのだ。

http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000059_3_opera.html

この「ムツェンスク郡のマクベス夫人」は、スターリンによる批判で有名な作品である。1936年1月、スターリンがオペラを観劇に訪れていたが、内容に激怒して途中で退席。その2日後の「プラウダ」紙に「音楽のかわりに荒唐無稽」と題した無署名の批評が掲載されて事態は急変し、作曲者の生命にも危険を及ぼしかねない事件となった(プラウダ批判)。以後20年以上にわたり、事実上の上演禁止となってしまった。(以上Wikipediaより引用)

ジ・アトレの岡部真一郎さんによる解説によると、ショスタコーヴィチは「マクベス夫人」を「ラインの黄金」に譬え、現代の女性をテーマトした四部作を書くという広大な構想を持っていたとのことだけど、結局この構想は幻となってしまった。ショスタコーヴィチは他にオペラを2作品しか書いておらず、そのうちの一作は未完である。

ストーリー自体、かなり強烈な作品なのだ。

1860年代のロシアで、裕福な商人イズマイロフ家に嫁いだ女性カテリーナ。彼女は夫のジノーヴィーとの結婚生活に満たされておらず、舅のボリスに厭味を言われる日々。新しい使用人セルゲイが、女中を手篭めにするところを見て、カテリーナは彼に関心を持ち、ついに彼と関係を持ってしまう。ジノーヴィーの不在中、嫁にやましい気持ちを抱いている好色なボリスに、カテリーナは毒をもって殺してしまう。さらに、ボリスの死を帰宅した夫に問い詰められ、彼女は夫をセルゲイに殺させる。
カテリーナとセルゲイが結婚するが、農民がジノーヴィーの死体を見つけ、警察を呼ぶ。婚礼の宴の最中に、カテリーナとセルゲイが逮捕される。そして二人はシベリアの流刑地へと送られる。セルゲイは、若い女囚のソニェートカに色目を使う。囚人仲間に嘲笑われたカテリーナは、絶望の果てにソニェートカを橋の上から突き落とし、自分も身を投げて溺死する。

ショスタコーヴィチは、美しく賢く自立心のあった女性カテリーナが、封建的な農村で自由を奪われたために犯罪に手を染める姿を描いた。しかもショスタコーヴィチは、犠牲者としてのブルジョワ妻としてカテリーナを同情的に描き、労働者であるセルゲイを悪役としたため、それが共産主義体制への批判と受け止められたと考えられている。

1幕のセルゲイたちが女中を手篭めにするところや、カテリーナとセルゲイが関係を持つところの音楽、特に打楽器の連打が高潮して爆発するという、まさに性行為を思わせる露骨ともいえるものであって、だからこそスターリンが激怒したのではないかという説がある。

私もまだ実演は観たことがなくて、今まで観たのは、DVDで発売されている、ヤンソンス指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ演奏のものだけ。これは2006年の収録で、洗練されていながらも、作品の原始的なインパクトを強めている演出。カテリーナを演じるエヴァ=マリア・ウェストブロックがマリリン・モンローのような金髪に現代風の衣装を着て、ハイヒールを大量に並べたガラスの檻のような部屋に住んでいるというセットが効果的だ。そして、コンセルトヘボウの演奏がものすごい。とにかくドラマティックで猥雑で面白い作品なので、実際に舞台で観られるのがとても楽しみ。

それから、この作品の改訂版「カテリーナ・イズマイロヴァ」の映画版のDVDもある。こちらも、ロストロポーヴィチの音源を用いた名演。

新国立劇場の今回の上演は、ロイヤル・オペラハウスの製作によるリチャード・ジョーンズのプロダクション。イギリス的な諧謔もあるというのでますます楽しみ。ジ・アトレには寝取られ夫のジノーヴィを演じる内山信吾さんのインタビューが載っている。内山さんは音大を出た後実家に帰って10年ほど家業で現場監督をしていたという異色の経歴の持ち主。経営者の息子で、現場で使用人を使うという感覚はよく理解できるとのこと。メーンキャストでは唯一の日本人で、ロシア語オペラに挑むというのは大変そうだけど、それだけに面白そうな気がする。

しかし上演時期が来年のゴールデンウィークなので、私は最終日にしか見にいけないのだ。これがちょっと残念。

2009年5/1(金)~5/10(日) ムツェンスク郡のマクベス夫人 
会員郵送受付は11月5日締め切り
会員販売:2009.1/4(日)~13(火)
一般発売日:2009.1/17(土)

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なお、ジ・アトレのバレエ関連記事としては、まず、まもなく初演される「アラジン」。先日のデヴィッド・ビントレーの「アラジン」のトークショーの内容について。それから、ダンサーがここに注目して欲しいということで注目ポイントを取り上げています。湯川麻美子さんと中村誠さんのコメントがとても長くて、二人の気合の入り方がよくわかります。
「アラジン」2008年11月15(土)~22(土)

それから、これももう郵送受付(11月5日締め切り)となるガラ「バレエ・ザ・シック」の紹介。3月末のチケットをもう決めなくちゃいけないんですね。(他劇場の公演でも、もう4月末の作品まで先行は始まっていますが)。新国立劇場では初演となるトワイラ・サープの「プッシュ・カムズ・トゥ・ショヴ」が楽しみですね。トワイラが振付指導をするのか、それとも、最近彼女の代わりにサープ作品を指導することが多いキース・ロバーツ(元ABT、「ムーヴィン・アウト」)が指導するのか、どちらなんでしょうね。
「Ballet the Chic ―バランシン/サープ/ドゥアト―」
2009年3/26(木)~29(日)
会員販売:12/14(日)~2009.1/8(木)
一般発売日:2009.1/12(月)

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2008/06/25

アニハーノフ、ミハイロフスキー劇場を辞任?

門行人さんの観劇記
http://kado.seesaa.net/
によると、レニングラード国立バレエに最高水準の音楽を提供するに至った指揮者アンドレイ・アニハーノフが5月末に辞任した模様。ニュースソースは以下のとおり。

http://www.gorodovoy.spb.ru/rus/news/civil/730577.shtml
http://www.kommersant.ru/doc.aspx?DocsID=896907(以上引用)

自動翻訳でしか読んでないので私も自信がないのですが、ケフマン総裁との方針の違いがあったようです。

来年一月のミハイロフスキー劇場(レニングラード国立バレエ)来日公演に名前がないのはそういうことだったのですね。非常に残念です。恒例の、年末に彼が指揮をするコンサートも行われないのですね。

牧阿佐美バレエ団に今まで何回か出演しているので、これからも日本で振る機会があればいいのですが。

ケフマン総裁になってからミハイロフスキーは残念ながら迷走状態になっているように思われます。アニハーノフの指揮が、レニングラード国立バレエの大きな魅力だったのに。

2008/06/08

アレクサンドル・メルニコフ ピアノ・リサイタル再放送

去年聴きに行って、凄絶で素晴らしい演奏に魂を抜かれてしまったアレクサンドル・メルニコフのピアノ・リサイタルが再放送されます。本放送を見逃してしまったので嬉しい!

特にスクリャーピンの演奏には驚きました。

アレクサンドル・メルニコフ(P)*2008年6月13日(金)6:00~6:55
  2008年6月20日(金)13:00~13:55

《ハイビジョン クラシック倶楽部》
「アレクサンドル・メルニコフ  ピアノ・リサイタル」(再)
曲目:1.交響的練習曲 作品13(シューマン作曲)
    2.幻想曲 ロ短調 作品28(スクリャービン作曲)
    3.2つの詩曲 作品32(スクリャービン作曲)
    4.24の前奏曲 作品28から第6番(ショパン作曲)
    5.24の前奏曲 作品28から第3番(ショパン作曲)

収録:2008年10月16日 東京オペラシティコンサートホール

2008/05/05

ラ・フォル・ジュルネ316 5/4 ネマニャ・ラドゥロヴィチ&ボルドー・アキテーヌ管弦楽団 ベートーヴェン・ヴァイオリン協奏曲

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 二長調 作品61
ネマニャ・ラドゥロヴィチ(ヴァイオリン)
フランス国立ボルドー・アキテーヌ管弦楽団
クワメ・ライアン(指揮)

ラ・フォル・ジュルネは初参加。今まで、人出がやたら多くチケットもすぐ売り切れると聞いて敬遠していたのだけど、3月に井上道義指揮のオーケストラアンサンブル金沢のフランス小品集公演に出演していたネマニャ・ラドゥロヴィチの演奏が素晴らしかったので、チケットを取ってみた。東京国際フォーラムAという会場だったので不安でいっぱいだったのだけど、前から16列目と席もまずまず。

さすがに夜9時半からの公演なので、フォーラムAの1階席でも3分の2くらいしか埋まっていなかったけど、とても良い公演だったと思う。ネマニャ・ラドゥロヴィチは、1985年10月生まれというからまだ23歳。ユーゴスラビア出身でエキゾチックな風貌、すらりとした長身に長髪でヴァイオリン奏者というよりはロックミュージシャンのよう。イケメン若手ヴァイオリニストとして売り出し中のようだけど、イケメンというよりは愛嬌がある感じで終始ニコニコ、演奏の方はとても熱く、髪を振り乱して大きな振りで弾く姿は確かにすごくカッコいい。テクニックも冴えていた。
http://www.lfj.jp/lfj_2008/artist/detail_artist/violin_11.php

危惧していた音の方は、たしかにフォーラムAというでかい会場なので、こもっていたり拡散していたところもあったけど、ヴァイオリンの音は非常にクリアに鮮やかに聴けて良かった。ラドゥロヴィチのつむぎ出す音の多彩さ、豊かさに惹きつけられる。終盤のカデンツァには、なんともいえない冴えと凄みがあったし、第2楽章の最初の方の柔らかく美しい響きにも息を詰めて聴き入ってしまった。とにかくラストに駆けていくテンションが爽快な演奏だったと思う。それなのに、弾むような軽やかさがあって気持ちよい。終わるや否やブラボーがたくさん飛び、スタンディングオベーションも登場するほどの大喝采。アンサンブルの方との掛け合いも、よく息が合っていたし、音の重なり方もきれいだった。

楽しかった~年末にまたラドゥロヴィチの演奏会があるのよね。その前に、明日もラ・フォル・ジュルネに登場するんだけど、また9時半からで、明日は飲み会があるからどうしよう。

一応ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を予習していこう、とワディム・レーピン(Vn)、リッカルド・ムーティ指揮のウィーン・フィルハーモニー演奏(ついでに、アルゲリッチとレーピン共演の「クロイツェル・ソナタ」も収録した)盤を買って聴いていた。レーピンも、一昨年ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲をサンクトペテルブルグ・フィルとの共演で聴いていて、技巧派の天才だと思った凄い人。この豪華なメンバーで整然とした演奏、すごく聞き応えのある一枚。でも、クラシック音楽も、どんな名盤でも生の感動には敵わないなあ、とLFJに行って思った。

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 クロイツェルベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 クロイツェル
レーピン(ワディム) ベートーヴェン ムーティ(リッカルド)

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