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バレエ公演感想

2017/04/19

YAGPガラ2017 "Stars of Today Meet the Stars of Tomorrow"

YAGPのファイナルの翌日は、恒例のガラ"Stars of Today Meet the Stars of Tomorrow"。

こちらは、第一部はYAGPの入賞者と、入賞していなくても注目を集めたダンサーが踊るというものです。

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"Stars of Today Meet the Stars of Tomorrow"

Brady Farrar プリ・コンペティティブ部門 ホープ賞 「タリスマン」
Linyue Zao 「Room」
Avery Gay(2016年プリコンペティティブ2位、グリシコ賞)、Antonio Casalinho(2016年ジュニアグランプリ賞) 「コッペリア」グラン・パ・ド・ドゥよりコーダ 
Classical Dance Academy 「Existence」
三宅琢未 ジュニア部門1位 「白鳥の湖」ヴァリエーション
Jan Spunda シニア部門3位、ダンス・ヨーロッパ誌 傑出した芸術性賞 「Swan」
Chloe Misseldine シニア部門2位 「ドン・キホーテ」より森の女王のヴァリエーション
Diogo Do Oliviera シニア部門TOP12 「Terra」
Madison Penney ジュニア部門 グランプリ 「エスメラルダ」
Luciano Perotto シニア部門TOP12 「ラクリモーサ」
倉智太朗 シニア部門1位 「ドン・キホーテ」

この時点では入賞者が発表されていなかったのですが、三宅さんと倉智さんがここでも踊ったということで、おそらくは入賞しているのだろうと思いました。特に倉智さんはトリだったし、ここでもずば抜けたパフォーマンスを見せ、一番盛大な歓声を受けたので、グランプリかなと思ったのです。ここで登場する皆さんは、すべてさすがの実力の持ち主でした。チェコ出身でENBのスクールに留学中のJan Spundaは、瀕死の白鳥の音楽で、男性版白鳥を踊りましたが、非常に美しく表現力があって、傑出した芸術性賞を受賞したのも納得です。ファイナルでは全員古典のヴァリエーションを踊りますが、こちらのガラでは、コンテンポラリーを踊った人も4人いて、やはり今のダンサーならコンテンポラリーを踊ることができないとだめだというのを実感しました。

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また、YAGPの特別功労賞が、元バレエ・ウェストおよび元ボストン・バレエの芸術監督で、ジャクソン国際コンクールの審査委員長を務めるなど活躍したブルース・マークスに贈られました。ABTとデンマークロイヤルバレエのプリンシパルとして活躍したのち、二つの重要なカンパニーの芸術監督を務め、さらにジャクソン国際コンクールだけでなくローザンヌ国際バレエコンクールなど多くの国際コンクールの審査員を務めました。80歳の今も、振付家、教師、NEA(全米芸術基金)のパネルメンバーとして活躍しています。賞のプレゼンターは、ニーナ・アナニアシヴィリでした。ニーナは、ジャクソン国際コンクールで初めて受賞した旧ソ連出身のダンサーだったのです。まだまだ若々しいマークスは、最後に、今危機に瀕しているNEAと芸術の重要性についての感動的なスピーチを行い、ともに立ち上がり戦いましょうと訴えました。

パート1の最後はグラン・デフィレ。アンサンブル部門を含むファイナリスト全員、300人もの出場者が踊ります。ニューヨークに来てからの短い期間で全員で合わせて練習するのですが、とても壮観です。最初はシニアから、次にジュニアの子たちが登場し、真ん中で数人のダンサーが踊ったり、フィナーレは1人の小さな少女ダンサーが男性たちにリフトされます。途中で倉智太朗さんが真ん中の中の真ん中を踊っていて、流石にとてもテクニックの切れ味があるので目立ちました。


パート2は、YAGPの出身者を含む世界のスターたちによるガラ公演です。


「回転木馬」Carousel(A Dance) 振付 クリストファー・ウィールドン、音楽Richard Rodgers
タイラー・ペック、Zachary Catazaro (ニューヨークシティ・バレエ)

ウィールドン振付の「回転木馬」は、とてもミュージカル的な作品だけど、リフトもたくさん登場していて、ロマンティックなムードがある。特に後ろ方向へと駆けていって持ち上げられるなど、パートナーリングが難しい作品なのだけどそのような難しさは全く感じさせなかった。全幕作品ではないのだが、全体を観てみたい作品だ。Zachary CatazaroはYAGPの2002年、2003年のジュニア部門1位。


「ベサメ・ムーチョ」
Brittany O'Connor、Paul Barris

ボールルームダンスの世界チャンピオンによるパフォーマンスで、ヴァイオリンとピアノは生演奏。タンゴの音楽でラテン的なダンスなのだけど、ブリタニー・オコナーは片足はハイヒールでもう片足はポワントを着用して踊った。パートナーを床の上に放り投げては持ち上げるなど、かなり高難度のパートナーリングを見せてくれた。


Tous Les Jours II. 振付 マルセロ・ゴメス 
ジェイムズ・ホワイトサイド(ABT) ピアノ演奏 ジョルジュ・ヴィラドムス

本来この作品はマリインスキー・バレエのザンダー・パリッシュが踊る予定だったのだが、ビザが間に合わなくて、土壇場で降板、代わりにABTのジェイムズ・ホワイトサイドが踊った。ピアノ演奏は、エルヴェ・モローの公演「月夜に煌めくエトワール」に出演したジョルジュ・ヴィラドムス。ホワイトサイドは軽やかな跳躍をたくさん見せてくれて、技術的にも素晴らしいし恵まれた体型の持ち主であることもよくわかったけど、この作品をパリッシュでも観てみたかったなと思った。高度な技術の中に、ちょっとしたユーモアも含まれていて、ドラッグクイーンとしても活動しているホワイトサイドだと、少しあくが強い印象はあった。でもとても楽しいソロだし、ゴメスらしいチャーミングさと音楽の使い方のセンスの良さを感じさせた。


「春の水」 振付:アサフ・メッセレル 音楽:ラフマニノフ
スカイラー・ブラント、ゲイブ・ストーン・シェイヤー(ABT)

ブラント、シェイヤーともYAGPの過去の出場者。ABTのダンサーだけど、ソビエト時代の作品「春の水」に挑戦した。ダイナミックなリフトが多用される作品だ。若手のホープであるこの二人は元気いっぱいで、高度なテクニックを見せてくれた。女性ダンサーが大胆に飛び込んで行ったり、男性が中途半端な高さで相手を持ち上げながらぐるぐる回ったり、ひょいっと回りながらリフトしたりと、大変難しいパートナーリングがてんこもり。フレッシュな二人がとても良かっただけに、一番最後に男性が片手で相手を高くリフトするところを失敗して、もうすぐで落としそうになったのが残念。でも持ち直して、捌けて行くところではしっかり片手でリフトしたまま走り去って行けたので良かった。

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「白鳥の湖」 振付 デヴィッド・ドーソン 音楽:チャイコフスキー
スヴェトラーナ・ルンキナ、エヴァン・マッキー(ナショナル・バレエ・オブ・カナダ)

ワールド・バレエ・デーライブでスコティッシュ・バレエがリハーサルシーンを見せた、デヴィッド・ドーソン振付のコンテンポラリー版「白鳥の湖」の、2幕パ・ド・ドゥ。現代作品ではあるものの、ルンキナはポワントを履いて、チュチュではないものの白鳥を思わせる赤い宝石を胸につけたレオタードを着用(衣装デザインは、竹島由美子さん)。男性の衣装は、まるで普段着みたいであまりかっこよくはない。面白いのは、まず登場する男性ダンサーも、腕を大きく動かし、背中を反らせてまるでオデットのように踊るところ。オデットが二人いるような振付で、二人が組み合わさって円を描くようにポジションを変えながら動いていく。古典の「白鳥の湖」も絶品であるルンキナなので、チュチュでなくてもその動きは繊細でエレガント、とても高貴な印象があるとともに、現代作品も得意な彼女らしい、モダンなセンスが光っていた。二人ともポール・ド・ブラが柔らかく大きく美しく、特にルンキナの背中の表現力には魅せられた。全幕で観てみたい作品。

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くしくもスコティッシュ・バレエもニューヨークのジョイス・シアターで公演中で、関係者お互いのパフォーマンスを観られなかったのが残念。


「コート」 振付 デヴィッド・パーソンズ 音楽:ロバート・フリップ
イアン・スプリング (デヴィッド・パーソンズ・ダンス)

デヴィッド・パーソンズの代表作である「コート」。日本でも、ウラジーミル・マラーホフがこの作品を踊るのを観た方は多いと思う。ストロボの点滅の効果を使って、ダンサーがまるで宙に浮いていたり、空中を歩いているかのように見える作品だ。照明の技術を借りているとはいえ、やはりこの作品は生で観るとインパクトは絶大だし、ストロボの点滅のタイミングを合わせて高速で跳躍しなければならないダンサーの技術も素晴らしい。YAGPに出場した若いダンサーたちは、もちろんこの名作に熱狂的な歓声と拍手を贈った。


「ライト・レイン」 振付:ジェラール・アルピノ、音楽Douglas Adamz、 Russ Gauthier
ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ

3年前のYAGPガラでもこのペアはこの作品を踊ったはず、だけど3年間の間に、今は40代のラカッラが全然変わっていないのはすごい。エキゾチックな打楽器中心の音楽に合わせて、ラカッラがその柔軟にしなる細長い肢体をいろんな方向に伸ばしたりポーズする、官能的な作品。一つ一つの動きやポーズは完璧にコントロールされている。これはこの二人でないと踊ることができないものなのかもしれない。


「海賊」  振付:プティパ 音楽 ミンクス
タマラ・ロホ、セザール・コラレス(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)

3年前のYAGPでグランプリを受賞し、3年間でENBを代表するスターに育ったセザール・コラレス。540を3連発したり、巧みにコントロールされたピルエット、強靭なばねのある身体から繰り出される超絶技巧、ガラ公演にはぴったりのダンサーだ。ENBの来日公演も「海賊」なので、日本でもきっと大喝さいを浴びることだろう。タマラ・ロホは、へそ出しの衣装だとウェストがかなり太くなってしまっていたのがわかったけど、踊りそのものは全盛期と変わらず、相変わらずの、トリプルを連発してのグランフェッテ、見事なバランス、コントロールの利いた動き。芸術監督を兼ねて意欲的なプログラムに取り組みながらも、これだけしっかりと技術を保っているのは奇跡的ともいえる。7月の来日公演が楽しみだ。

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全体的なレベルも高く、少し異分野のダンサーが出演したり、生演奏の演目もあったりで、とても楽しめたガラだった。翌日のフリオ・ボッカへのオマージュ・ガラも行きたかったし行く予定だったのだが、家庭の都合で行けなくなってしまったのが残念。観客席もとても華やかで、オルセン姉妹などのセレブレティもたくさん顔を見せていた。

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Dance Magazine誌のレビュー
http://www.dancemagazine.com/three-more-nycb-stars-are-headed-to-broadway-2365234725.html

2017/04/17

英国ロイヤル・オペラハウス2016/17シネマシーズン「眠れる森の美女」

英国ロイヤル・オペラハウス2016/17シネマシーズン「眠れる森の美女」を試写で拝見しました。

http://tohotowa.co.jp/roh/movie/the_sleeping_beauty.html

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【振付】マリウス・プティパ
【音楽】ピョートル・チャイコフスキー
【指揮】クン・ケセルス
【出演】マリアネラ・ヌニェス(オーロラ姫)
ワディム・ムンタギロフ(王子)
クレア・カルヴァート(リラの精)
クリステン・マクナリー(カラボス)
【上演時間】3時間25分



ロイヤル・バレエでの初演にあたる1946年の『眠れる森の美女』の上演から70年となる記念碑的作品。あの名作がプリンシパルたちの競演 によって映画館で鮮やかに蘇る!

第二次世界大戦後、ロイヤル・オペラ・ハウスが再開された1946年。オリジナルの楽曲から綿密に作り上げられ、豪華な舞台デザインでマーゴ・フォンティーンがオーロラ姫を魅惑的に演じた『眠れる森の美女』。瞬く間にロイヤル・バレエを代表する演目となり、バレエ団が国際的名声を築くのに貢献した作品となった。

今回はそのロイヤル・バレエでの初演から70年となる記念碑的な上演。邪悪な妖精の呪いによって眠り続ける王女と、彼女を救おうとする王子。チャイコフスキーによる音楽と、マリウス・プティパによる振付がすべての年代の観客に愛され魅了し続けてきた伝統あるバレエ。ロイヤル・バレエが誇るプリンシパルたちが競演するこの不朽の名作を見逃してはならない。

デジタルプログラム
http://www.roh.org.uk/publications/the-sleeping-beauty-digital-programme
プロモコード FREEBEAUTY

Choreography Marius Petipa
Additional choreography Anthony Dowell
Additional choreography Frederick Ashton
Additional choreography Christopher Wheeldon
Production Monica Mason
Production Christopher Newton
Music Pyotr Il'yich Tchaikovsky
Original designs Oliver Messel
Additional designs Peter Farmer
Lighting design Mark Jonathan
Staging Christopher Carr

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Princess Aurora Marianela Nuñez
Prince Florimund Vadim Muntagirov
King Florestan XXIV Christopher Saunders
His Queen Elizabeth McGorian
Cattalabutte, Master of Ceremonies Alastair Marriott
Carabosse Kristen McNally
Lilac Fairy Claire Calvert

Fairy of the Crystal Fountain Yuhui Choe
Her Cavalier Luca Acri
Fairy of the Enchanted Garden Akane Takada
Her Cavalier Valeri Hristov
Fairy of the Woodland Glade Yasmine Naghdi
Her Cavalier Nicol Edmonds
Fairy of the Song Bird Meaghan Grace Hinkis
Her Cavalier Solomon Golding
Fairy of the Golden Vine Anna Rose O'Sullivan
Her Cavalier Fernando Montaño
Lilac Fairy's Cavalier Ryoichi Hirano

The English Prince Gary Avis
The French Prince Johannes Stepanek
The Indian Prince Valeri Hristov
The Russian Prince Thomas Whitehead

Princess Aurora's Friends Isabella Gasparini, Tierney Heap, Meaghan Grace Hinkis, Mayara Magri, Yasmine Naghdi, Demelza Parish, Anna Rose O'Sullivan, Leticia Stock

The Countess Christina Arestis
Gallison Jonathan Howells
Florestan and his Sisters Marcelino Sambé, Yasmine Naghdi, Mayara Magri
Puss-in-Boots and The White Cat Paul Kay, Leticia Stock
Princess Florine and The Bluebird Akane Takada, Alexander Campbell
Red Riding Hood and The Wolf Gemma Pitchley-Gale, Tomas Mock

ロイヤル・バレエの「眠れる森の美女」は、1946年にニネット・ド・ヴァロワが振付け、オリヴァー・メッセルがデザインしたプロダクションをベースに、初演60周年を記念して2006年にピーター・ファーマーの手を入れて復元したもの。さらに2011年に衣装デザインをさらにオリジナルに近いものに更新した。

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この舞台映像で際立つのは、なんといってもマリアネラ・ヌニェスの光り輝く存在感。1幕で登場したときのキラキラと光を放つさま、アレグロのステップの正確さと音楽性も見事で、難しい振付をいともたやすく踊っているように見える。天性の明るさと温かさに恵まれた彼女を観ると、誰でも笑顔になることだろう。ローズ・アダージオのバランスも全く危なげなく、少しもハラハラするところがない安定感。一点の曇りもなく闊達なキャラクターはオーロラがぴったり。2幕の幻影のロマンティックな美しい幻、3幕のすべての人に祝福された幸福なプリンセス。これ以上は望めないほどの素晴らしさで、観る者をも幸せにしてくれた。

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ワディム・ムンタギロフの王子も、佇まいが貴公子なだけでなく、伸びやかで美しい脚と正確な技術、エレガンスと非の打ち所がない。目立ちすぎることなく、上手くパートナーを引き立てるところがまた王子にふさわしい。この二人のパートナーシップも良くて、ロイヤル・バレエきってのキラキラペアだと感じられた。

映画館中継ということで脇のキャストも豪華で、プロローグの妖精にはプリンシパルの高田茜さんを投入、さらに崔由姫さん、ヤスミン・ナグディ、アナ・ローズ・オサリバンなど実力派や注目の若手も起用し、リラの精のお付きにもプリンシパルの平野さん。ローズ・アダージオの締めにはギャリー・エイヴィス。ロイヤル・バレエらしく、カラボスから脇役に至るまで皆さん演技もとても達者で、舞台の上に立っている全員が細かく演技していてキャラクターになり切っている。

そして3幕のディヴェルティスマンもなかなか豪華で、まずフロレスタンとその姉妹で、フロレスタン役の、柔らかくゴムまりのように高く軽く跳ぶマルセリーノ・サンベが魅力的だった。ブルーバードにアレクサンダー・キャンベル、フロリナにはここでも高田茜さん。高田さんはプリンシパルに昇進してから、自信が増したのか堂々の存在感で、長い手脚、正確なポジション、しなやかな腕使いと優雅なフロリナ姫だった。

主演キャストも脇キャストも素晴らしく、華やかなグランドバレエの「眠れる森の美女」でクラシックバレエの神髄を楽しめたのだけど、唯一不満があるとしたら2011年に改訂されたという衣装。リラの衣装がやや古めかしく、また3幕のオーロラの衣装は地味で角のようなティアラの形が奇妙だった。フロレスタンの姉妹たちの首の回りのカラーは、ダンサーたちの首を短く見せる効果しかなくてゴテゴテしているし、花のワルツの衣装はジゼルのペザントですか、という地味さだった。初演の衣装を復元するのも善し悪しだと実感した。しかし、当代きってのトップダンサーであるヌニェスとムンタギロフ、さらに脇に至るまで踊りも演技もクオリティが高く、ロイヤル・バレエが好きな人だったら間違いなく楽しめるはず。

また、8月のルグリ・ガラにヌニェスとムンタギロフは出演するので、予習として観るのも良いと思う。

TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、TOHOシネマズららぽーと横浜など都内近郊、関西、名古屋は5月12日から、北海道、東北、九州は5月13日からの公開です。

白鳥の湖(2009)、くるみ割り人形(2009)、眠れる森の美女(2006) 英国ロイヤル・バレエ(3BD)白鳥の湖(2009)、くるみ割り人形(2009)、眠れる森の美女(2006) 英国ロイヤル・バレエ(3BD)
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2017/04/09

KARAS APPARATUS アップデイトダンスNo.44 「パフューム」

KARAS APPARATUS アップデイトダンスNo.44は、勅使川原三郎さん振付、佐東利穂子さんのソロ「パフューム」。

http://www.st-karas.com/camp0713-2/

2014年にアパラタスで初演し、同年にシアターXで再演したとのことですが、私は今回が初見。

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「パフューム」 / 2014年シアターX公演より
photo by Kotaro Nemoto (STAFF TES)

普段はパンツ姿のことが多い佐東利穂子さんが、白いノースリーブのミニドレスで現れる。旋回するような超高速ダンスを今回は封印し、腕の表現を中心にしたゆったりとした動き。音楽には水滴の音が重なって、洞窟の中でたゆたっているようなイメージも。佐東さんの表現者としての引き出しの多さ、今まであまり見せたことがないような深くて幻惑させられるような踊りが圧巻でした。

「パフューム」という題名にあるように、香水のように、時間とともに香りが変化し変容し、受け止める側によってもイメージや匂いが変わるダンス。露出した佐東さんの美しい脚、長くしなやかな腕の繊細な表現、そして赤とブルーを基調とした、圧倒的な照明効果に酔いしれてクラクラしました。終盤に流れるマーラーの「アダージェット」、佐東さんの横たわりゆっくりと四肢をうごかす様子が官能的で、匂いはしないのに立ち上る濃密な香りに満たされていくよう。舞台が終わった後の佐東さんのトークも、この独特の赤とブルーの照明の中で余韻に満たされ、そして会場を後にしても、夢の中にそのままいるような気持でした。

KARAS APPARATUSでの公演は、独特の親密な小宇宙のようなスペース、小さな黒い箱の中で完全に光をコントロールしたパフォーマンスなので、いつも完全に別世界に連れていかれて、他のすべてのことを忘れてしまうような、ある意味癒しの空間ともなっています。公演を重ねるごとに、この「パフューム」も変容していくと思われるので、その変容を見届けたい、そんな気持ちにもなります。

ぜひこの「パフューム」体験してみてください。

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写真:「パフューム」 / 2014年シアターX(カイ)公演より

アップデイトダンスNo.44

「パフューム」

出演 佐東利穂子 

演出 / 照明 勅使川原三郎

【日時】2017年
4月8日(土)20:00
4月9日(日)16:00
4月10日(月)20:00
4月11日(火)休演日
4月12日(水)20:00
4月13日(木)20:00
4月14日(金)20:00
4月15日(土)16:00
開演30分前より受付開始、客席開場は10分前

【会場】カラス・アパラタス/B2ホール
〒167-0051杉並区荻窪5-11-15 F1/B1/B2

【料金】(全席自由)
一般 予約 2500円 当日3000円 学生1500円(予約,当日共に)

【予約】メール updatedance@st-karas.com 
件名を「アップデイトNo.44」として、本文にご希望の日付・
一般または学生・枚数・郵便番号・住所・氏名・
日中連絡のつく電話番号をご記入ください。
予約は各回前日の24時まで受け付けています。

【問合せ】
TEL. 03-6276-9136
当日券は開演30分前より受付にて発売します。
お電話での当日券のお取り置きもできますのでお問い合わせください。

*********

4月26日~30日は両国のシアターXで「トリスタンとイゾルデ」公演もあります。昨年のKARAS APPARATUS アップデイトダンスでの上演が、これまた圧倒的に見事だった作品が、少し大きなシアターXのために改訂されての上演。

この「トリスタンとイゾルデ」は海外公演も予定されているとのことです。

構成 振付 照明 美術 衣装 選曲 勅使川原三郎
出演 佐東利穂子 勅使川原三郎

日時 2017年
4月26日(水)19:30
4月27日(木)19:30
4月28日(金)19:30
4月29日(土)16:00
4月30日(日)16:00


料金(全席自由・税込・入場整理券番号付) 一般/前売り 3500円 当日4000円 学生・シニア(65歳以上)2500円
※各回20枚・KARASでの予約のみ取扱,未就学児童の入場不可

予約 KARAS メール:ticket@st-karas.com
※公演日時・作品名・枚数・住所・電話番号を明記してお送りください。
チケットはシアターX/Confetti/チケットぴあでも発売中です。
詳しくは公演情報ホームページをご確認ください。

劇場 東京・両国シアターX
東京都墨田区両国2-10-14

問合せ KARAS 電話 03-6276-9136 メール ticket@st-karas.com

2017/03/23

新国立劇場バレエ団 2017/2018シーズンバレエ公演の主役キャスト追加決定

2017/2018シーズンバレエ公演の主役キャスト追加決定と追加公演決定のお知らせが発表されていました。

また、「シンデレラ」公演は12月20日(水)13:00開演公演の追加公演が決定しました。

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/detail/26_010016.html

2017年10月~11月「くるみ割り人形」

10月28日(土) 14:00 【クララ】小野絢子 【王子】福岡雄大
10月29日(日) 14:00 【クララ】米沢 唯  【王子】井澤 駿
10月31日(火) 13:30  【クララ】池田理沙子  【王子】奥村康祐
11月3日(金・祝) 13:00 【クララ】米沢 唯     【王子】ワディム・ムンタギロフ
11月3日(金・祝) 18:00 【クララ】小野絢子 【王子】福岡雄大
11月4日(土) 14:00 【クララ】木村優里  【王子】渡邊峻郁
11月5日(日) 14:00  【クララ】米沢 唯 【王子】ワディム・ムンタギロフ

※なお、10月31日公演は貸し切りのために一般発売なし


2017年12月「シンデレラ」
12月16日(土) 13:00 【シンデレラ】米沢 唯 【王子】井澤 駿
12月16日(土) 18:00  【シンデレラ】小野絢子 【王子】福岡雄大
12月17日(日) 14:00 【シンデレラ】柴山紗帆 【王子】渡邊峻郁
12月20日(水) 13:00 【シンデレラ】未定 【王子】未定
12月22日(金) 19:00 【シンデレラ】小野絢子 【王子】福岡雄大
12月23日(土・祝) 13:00 【シンデレラ】米沢 唯 【王子】井澤 駿
12月23日(土・祝) 18:00 【シンデレラ】木村優里 【王子】中家正博
12月24日(日) 14:00   【シンデレラ】未定   【王子】奥村康祐


2018年1月「ニューイヤー・バレエ」
<主な出演者(全日程出演)>
 小野絢子、米沢 唯、寺田亜沙子、池田理沙子、奥田花純、木村優里、柴山紗帆、細田千晶
 奥村康祐、菅野英男、福岡雄大、井澤 駿、福田圭吾、木下嘉人、中家正博、渡邊峻郁


2018年2月「ホフマン物語」
2月9日(金) 19:00 【ホフマン】福岡雄大 【オリンピア】池田理沙子 【アントニア】小野絢子 【ジュリエッタ】米沢 唯
2月10日(土) 14:00 【ホフマン】菅野英男 【オリンピア】柴山紗帆 【アントニア】未定 【ジュリエッタ】本島美和 
2月11日(日・祝)14:00 【ホフマン】井澤 駿 【オリンピア】奥田花純 【アントニア】米沢 唯 【ジュリエッタ】木村優里


2018年4月~5月「白鳥の湖」
4月30日(月・祝) 14:00 【オデット/オディール】米沢 唯 【ジークフリード】井澤 駿
5月3日(木・祝) 13:00 【オデット/オディール】米沢 唯 【ジークフリード】井澤 駿
5月3日(木・祝) 18:00 【オデット/オディール】小野絢子 【ジークフリード】福岡雄大
5月4日(金・祝) 14:00 【オデット/オディール】木村優里 【ジークフリード】渡邊峻郁
5月5日(土・祝) 14:00 【オデット/オディール】未定  【ジークフリード】奥村康祐
5月6日(日) 14:00    【オデット/オディール】小野絢子 【ジークフリード】福岡雄大

2018年6月「眠れる森の美女」
6月9日(土) 14:00  【オーロラ姫】米沢 唯 【デジレ王子】井澤 駿
6月10日(日) 14:00 【オーロラ姫】未定 【デジレ王子】未定
6月16日(土) 13:00 【オーロラ姫】未定 【デジレ王子】未定
6月16日(土) 18:30 【オーロラ姫】小野絢子 【デジレ王子】福岡雄大
6月17日(日) 14:00 【オーロラ姫】未定 【デジレ王子】未定

*やむを得ない事情により出演者等が変更になる場合がございます。
未定部分のキャストについては決定次第、発表いたします。


『くるみ割り人形』にワディム・ムンタギロフがゲスト出演するのは嬉しいのですが、新しい抜擢がなくて、どうも面白みに欠けるキャスティングです。せっかくプリンシパルに昇格した奥村さんの相手役がほとんど決まっていなかったり。主役を踊る実力があり、主役を踊ったことがある細田千晶さんや中家正博さんといった実力派の名前が、いまのところないのが残念ですよね。
また、小野絢子さんと福岡雄大さん、米沢唯さんと井澤 駿さんという組み合わせて固定されているのも(米沢さんはムンタギロフとも踊りますが)、良いパートナーシップとは思いつつ、別のバートナーと組んだところも観てみたいと思っています。


3月18,19日に中劇場で上演された中村恩恵さん振付『ベートーヴェン・ソナタ』は、新国立劇場バレエ団の中でも実力ある豪華キャストを揃え、全幕の新作に挑んだ意欲的な作品でした。作品自体の完成度も高くてダンサーそれぞれの魅力も生かされ、またチケットの売れ行きも大好評でした。このような演目が来シーズンになくて、『シンデレラ』と『眠れる森の美女』は今シーズンのリピートなのは残念なことです。来来シーズンに期待しましょう。

チャコットのYouTubeチャンネルにアップされている、小野絢子さん、寺田亜沙子さん、細田千晶さん、玉井るいさん、益田裕子さんの美しいバーレッスンとセンターの動画。惚れ惚れするほど美しいです

2017/03/20

3/18 ニーナ・アナニアシヴィリの軌跡~最後のクラシック・ガラ Aプロ

ニーナ・アナニアシヴィリの軌跡~最後のクラシック・ガラ Aプロ
東京文化会館 

http://www.tbs.co.jp/event/nina-ananiashvili/

ニーナ・アナニアシヴィリの最後のクラシック・ガラと銘打たれたこの公演、ニーナが観客に寄せる愛、12年間育てて来たジョージア国立バレエに寄せる愛、そして観客からニーナへの愛と、深い愛に包まれた温かい舞台だった。ガラ公演と言いつつ、Aプロについては幕を丸ごと見せてくれて、立派な舞台装置、コール・ド・バレエもついたパフォーマンスなので、全幕を観たような充実感があった。


第一部
『白鳥の湖』より 第2幕・4幕

 オデット     ニーナ・アナニアシヴィリ
 ジークフリード マルセロ・ゴメス(アメリカン・バレエ・シアター)
 ロットバルト   ダヴィッド・アナネリ

昨年夏のオールスター・ガラではふっくらしていたニーナだったが、今回の公演のために体型も絞られており、オデットの衣装が良く似合う。甲の出た美しい足先、脚のラインの美しさ、そして彼女のトレードマークである、柔らかく波打つような腕使いは健在。コーダのアントルシャや連続パッセ、ピケターンも見事なもので技術的な衰えはほとんど感じられない。これで今月54歳になるとはとても思えない。わずかに、背中の柔軟性が少しだけ失われているくらいだ。何より、ニーナの白鳥は台詞が聞こえてくるくらい情感豊かで、ドラマティックで、オデットなのに温かみを感じさせてくれる。パートナーのマルセロ・ゴメスの優しく紳士的なサポートで二人の心が通じ合っているのが感じられるのも大きい。4幕も終幕まで上演してくれたので、「白鳥の湖」の全幕を観たような満足感があった。おなじみアレクセイ・バクランの指揮によるシアター・オーケストラ・トーキョーの演奏も、ドラマを盛り上げてくれた。

そしてジョージア国立バレエ(グルジア国立バレエ)のクオリティが向上したことに驚かされた。コール・ド・バレエのダンサーたちは、手脚が長くプロポーションが美しくて容姿端麗。揃っていない部分もあるものの、ロシアバレエの伝統をしっかりと引き継いでいて見ごたえがあった。4幕でオデットを守るべくフォーメーションを組んだ白鳥たちの姿はドラマティックで、しっかりと主役を引き立てていた。ロットバルトのダヴィッド・アナネリは跳躍がとても大きい。ニーナが踊らなくなっても、このバレエ団を今後も観られたらいいと感じた。


第二部
『セレナーデ』 
ジョージ・バランシン振付
舞台指導 バート・クック、マリア・カレガリ

エカテリーナ・スルマーワ、ヌツァ・チェクラシヴィリ、ニノ・サマダシヴィリ
ダヴィッド・アナネリ、フィリップ・フェードゥロフ

ニーナもゲストも出演しない、オール・ジョージア国立バレエによる『セレナーデ』。これがとてもクオリティの高い上演だった。この演目に出演しているダンサーたちは体型も非常に美しく、冒頭の6番ポジションで腕を上げたポーズが絵になる。特に女性の主役の3人のエレガンスには惹きつけられた。なんともいえない詩情、豊かな音楽性、そしてほのかに漂うドラマ。バランシンは、もちろんジョージアにルーツがあるわけで、そのバランシンの魂を連れて帰ったような心震える舞台となった。男性のアンサンブルの中に日本人男性もいたけれども、他のダンサーと引けを取らないプロポーションの持ち主だった。


第三部
『眠れる森の美女』3幕より 

 オーロラ姫  ニーナ・アナニアシヴィリ
 デジレ王子  アレクサンドル・ヴォルチコフ(ボリショイ・バレエ)
 リラの精    ニノ・サマダシヴィリ

 ダイヤモンドの精 ヌツァ・チェクラシヴィリ サファイアの精 ナタリア・リグヴァ―ワ
 金の精 タマア・バクタゼ  銀の精 ニア・ゲラゼ

 白い猫 ニア・グロルダーワ 長靴を履いた猫 ディエゴ・ブッティリオーネ
 フロリナ姫 マリアム・エロシュヴィリ  青い鳥 高野陽年
 シンデレラ エカテリーナ・スルマーワ フォーチュン王子 フランク・ファン・トンガレン

『眠れる森の美女』3幕は、豪華な舞台装置、そして日本人の子役も多数出演した華麗な舞台となった。ニーナは金髪の鬘をかぶってお姫様そのものの愛らしさ。温かい笑顔と気品ある動きはまぶしいオーラを放っていた。アレクサンドル・ヴォルチコフもサポートは完璧で、お似合いの美しいカップル。彼のヴァリエーションも、東京文化会館の舞台が狭く感じられるほどのダイナミックさだった。最後にニーナがサポートされながらパンシェをしてポーズをして顔を客席に向けたときの可愛らしさと言ったら、言葉にできないほどだった。特にリラの精や宝石の精のダンサーたちはとても美しくて技術もしっかりとしていた。また、青い鳥を踊った高野陽年さんは、長身でラインも美しく、浮かび上がるような高い跳躍やブリゼ・ボレの細かい足先などが見事でこの役はぴったりだった。

ニーナファンが大勢駆け付けたこの日の公演は、たくさんの公演が重なった日だったのに客の入りも良く、当然カーテンコールでは総立ちとなった。カーテンの前でも、ニーナはサポートされてのパンシェのポーズを披露。大きな愛と幸せに満たされた、とても素敵な公演だった。まだまだ古典を踊る技術も保っているニーナだけど、ここは引き際の美学を優先させたのだろう。クラシック・ガラ、グランドバレエを踊るのは最後とのことだけど、また彼女の明るく華やかな舞台を観続けたいと思う。まずはBプロが楽しみ。

ジョージア国立バレエ
指揮 アレクセイ・バクラン
管弦楽 シアター・オーケストラ・トーキョー

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2017/02/02

1/28.29 東京小牧バレエ団「白鳥の湖」倉永美沙、奥村康祐

東京小牧バレエ団の「白鳥の湖」は、バレエ団創立70周年記念公演。ボストン・バレエから倉永美沙さん、新国立劇場バレエ団から奥村康祐さんを迎えての上演。

オデット/オディール:倉永美沙(ボストン・バレエ プリンシパル)
王子:奥村康祐(新国立劇場バレエ団プリンシパル)
ロットバルト:アルタンフヤグ・ドゥガラー
家庭教師ヴォルフガング:夏山周久
皇后:森理世(ミス・ユニバース2007世界一)
ベンノ:梅澤紘貴
王子の友人:平野玲、今勇也、宮本祐宜、五十嵐耕司、周藤壱、香野竜寛
パ・ド・トロワ:金子綾、山口麗子、梅澤紘貴
二羽の白鳥:佐藤侑里、水谷彩乃
四羽の白鳥:西村美紀、矢部李沙、西村仁美、真嶋菫(28日)、中村絢名(29日)
スペイン:周東早苗、五十嵐耕司、香野竜寛
ルスカヤ:金子綾(ソリスト)、西村美紀、矢部李沙、西村仁美、中村絢名(28日)、眞嶋菫(29日)
ナポリ:藤瀬梨菜、宮本祐宜
マズルカ:嶺岸葵、ビャンバ・バットボルド、髙浦美和子、平野玲、中尾優妙、今勇也
チャルダッシュ(ソリスト):深山美香、梅澤紘貴

演出・振付 佐々保樹
指揮 マーク・チャーチル(ボストン交響楽団)
演奏 東京オーケストラMIRAI

1946年8月9日~30日に帝劇において、「白鳥の湖」日本初演の演出・振付を小牧正英さんが行いロットバルト役を演じており、それ以来このバレエ団のレパートリーとして上演されてきた。

基本的にはオーソドックスな演出だが、1幕のワルツのコール・ド・バレエのフォーメーションはなかなかユニークで見ごたえがある。道化はいなくて、道化が踊る音楽のところで女性ダンサーたちの真ん中で踊るのは家庭教師。東京バレエ団で活躍した夏山周久さんが華麗なステップを見せてくれた。元東京バレエ団のダンサーも数人入る王子の友人たちは1幕と、2幕最初の湖畔のシーンで活躍する。
2、3幕もベーシックな振付で、3幕は王子とロットバルトは戦うものの、オデット、そして王子は身を投げて死を選ぶ悲劇版。新国立劇場やマリインスキーなど、最近観ている「白鳥の湖」はハッピーエンドが多かったので、久しぶりに悲劇版を観るのも良かった。

オデット/オディールの倉永美沙さんは、これぞワールド・レベルの白鳥。身長156cmとコール・ド・バレエに交じっても小柄なのに、その小ささを感じさせない。腕や脚を長く見せる術に長けているし、首や背中、胸の使い方をとても工夫していて、非常に踊りの表情が豊かでドラマティックなオデットを見せてくれた。冒頭のマイムはないのに、まるで台詞が聞こえてくるかのようにオデットの心情が伝わってくる。生き生きとしていて雄弁で、鳥というか動物なのだけど同時に女性として部分もある。これだけきっちりと作りこんで、強い存在感とドラマ性のある白鳥もいないのではと思うほど。悲劇的なのだけど、儚い存在ではなくて、逆境の中でも自分の運命を切り開こうとする意志を感じさせ、それは特にコーダの連続パッセに感じられた。

倉永さんのオディールは艶やかで魅惑的。緩急の付け方がくっきりとしているので一つ一つのポーズが映えるし、アンドゥオールも完璧でアラベスクなどのラインが美しい。鉄壁の技術は言うまでもなく、ヴァリエーションではピルエット2回回った後でそのまま3回目はアティチュードに脚を持って行って回るのを2セット。グランフェッテは、前半は全部ダブル、後半はシングル、ダブルの繰り返しで1日目はダブルの時に片手アンオ―で安定感抜群、パーフェクトだった。オデットの振りをするところで一瞬にして白鳥に変身するところはぞくぞくするほどの変貌ぶりだった。しっかりとこの役を自分のものにしており、これから先、どんなふうにさらに進化させられるのかが楽しみだ。

奥村さんの王子は、とてもイノセントでまっすぐなのだが、ほんの少し孤独の影が漂い、1幕や湖畔の最初で友人数人といるところでも少し断絶を感じさせている。そんな彼の前に現れたオデットこそがその孤独を癒してくれる存在なのであっという間に恋に落ちる。子供の時から地主薫バレエ団で倉永さんと学んできた奥村さんなので、二人のパートナーシップはとても自然で息もよく合っているしサポートも万全。3幕でオデットそっくりのオディールが現れたときの嬉しそうな様子と言ったら。

奥村さんは踊りの方も絶好調で、特に3幕のヴァリエーションは見事だった。軽やかで美しい跳躍、トゥールザンレールではしっかりとプリエを効かせて完璧な5番に着地。ラインもエレガントで、これぞダンスールノーブルというパフォーマンスで、世界中どこに出しても恥ずかしくないレベル。オディールの正体を知った時の悔やみ悲しむ様子、ロットバルトに戦いを挑む4幕での情熱、貴公子らしさの中でも情熱を感じさせて、たとえ悲劇に終わったとしても、このような熱い想いで愛を貫くことができて彼は幸せだったのだろうと思わせてくれた。新国立劇場バレエ団では、プリンシパルであるにもかかわらずなかなかパートナーに恵まれていない彼だが、倉永さんという互角のパートナーだとここまで輝くのだと実感。

モンゴルからのゲスト、アルタンフヤグ・ドゥガラーのロットバルトは、踊る場面はそれほどないのだが、美しい身体のライン、妖しさを感じさせる存在感はさすがだった。ベンノ役に元東京バレエ団の梅澤紘貴さん、彼も貴公子らしいダンサーで、この版はベンノもかなり活躍するので一瞬彼が王子だったっけ?と思うほど。友人たちにも、平野玲さん、宮本祐宜さん、周藤壱さんと東京バレエ団OB組がいて充実したメンバーだった。王妃役には、元ミスユニバースの森理世さん。さすがに美貌で長身の立ち姿に威厳があり、ダンススクールで教えているだけあってマイムも美しかった。王子の実母には若いので、王の後妻なのかな、と思わせるところも面白い。パ・ド・トロワの金子綾さん、山口麗子さんも足先などのパがクリアで良かった。

特筆すべきはコール・ド・バレエのクオリティ。非常に良く鍛えられていて綺麗に揃っていた。4羽の小さな白鳥は特に一つ一つの動きが見事にシンクロしていたし、大きな白鳥の二人も伸びやかで美しい。4幕で幕が開き、アシメントリーに配置された白鳥たちがポーズしている姿がうっとりするほどの美しさで、思わず大きな拍手が出たほど。オデットと王子が身を投げた後、白鳥たちがロットバルトも死に追いやるのだが、それだけの一丸となった力を感じることができた。年に1、2回しか公演を行わない団体でも、これだけのクオリティのコール・ド・バレエをつくりあげることができるのだと感銘を受けた。

ボストン・バレエでも指揮をしていたマーク・チャーチルを指揮者として招聘していたので、音楽のクオリティも高かった。ダンサーをよく見て指揮をしているし、2幕コーダのオデットのソロでは途中まで音の速度を極限まで落として、最後にスピードを上げることでとても効果的で、倉永さんの踊りの持ち味を存分に見せることができていた。

コール・ド・バレエの美しさ、そして世界トップレベルの主演による見事な公演で、「白鳥の湖」という作品の魅力を存分に味わえて、心を動かされたパフォーマンスだった。奇をてらった演出をしなくても、きっちりとつくりあげて、息の合った主演ペアがいて演奏が良ければ、バレエで感動を味わえるという見本のような舞台。

2017/01/27

1/22夜 日本バレエ協会「ラ・バヤデール」長田佳世さんのさよなら公演

1/21と22日の昼・夜は、日本バレエ協会の「ラ・バヤデール」公演。初日の酒井はなさんも観たかったけど、22日昼公演は私の先生がソリストで出演しているし、夜公演は長田佳世さんの引退公演なので、決して見逃してはいけなかった。

昼公演の瀬島五月さん、法村珠里さんの関西2大プリマ・バレリーナが火花を散らした昼公演も、とても素晴らしかったけど、夜の長田さんの公演は、これほど心に残るパフォーマンスはなかったと言えるほどの公演だった。バレエの神が下りて来たと思うほど見事だった。


ニキヤ:長田佳世
ソロル:橋本直樹
ガムザッティ:馬場彩
バラモンの高僧(大僧正):マイレン・トレウバエフ
ドゥグマンタ(ラジャ):桝竹眞也
黄金の神像:高橋真之
苦行僧マグダヴェヤ:土方一生
アイヤ:鈴木裕子
神に捧げる踊り:輪島拓也
壺の踊り:桝谷まい子
太鼓の踊り:楠元結花,佐藤祐基,下島功佐
影のソリスト:増原聖、阿部碧、平尾麻美

音楽:レオン・ミンクス
原振付:マリウス・プティパ
改定振付・演出:法村牧緒

指揮:アレクセイ・バクラン
管弦楽:ジャパン・バレエ・オーケストラ


改訂振付の法村牧緒さんは、1966年に「ラ・バヤデール」が日本初演された時のソロル役。今回の上演は、マリインスキー劇場版をベースに、元ミハイロフスキー劇場バレエマスターのユーリ・ペトゥホフによる結婚式での神殿の崩壊の場面が加わっている。オーソドックスではあるが、最終幕ではニキヤの怨霊が出てくるなどドラマティックさもあった。

ニキヤ役の長田さんは、どんな瞬間を切り取っても精確で美しく、技術的に完璧なのは言うまでもないのだが、精神性がものすごく高く、一つ一つの動きに魂がこもっていて語りかけてくれるのが素晴らしい。1幕では本当に神に身を捧げた聖なる巫女でありながら恋する女でもあった。ニキヤってものすごく生身の女というキャラクターなのだけど、長田さんの解釈ではニキヤも聖性を強く感じさせている。控えめで奥ゆかしいのに、強い想いは伝わってくる。2幕の花籠の踊りは、全身から涙を流しているような悲痛な心情を歌いあげていたけど、ソロルからという花籠を手渡されて、花開いたように表情が明るくなる。ハイテンポの踊りで高揚したのちに仕込まれた蛇に噛まれ、歓び転じての絶望と死。歓びが大きかっただけに、ソロルに裏切られた悲しみが深かったことを感じさせた。

長田さんの影の王国でのこの世のものならざる存在感も見事だった。阿片に酩酊したソロルが最初に見るニキヤの幻と、実際に降りて来たニキヤの幻影ですら、別の存在として舞台の上に立っている。魂だけの存在になっていて、足音も全くさせていなくて浮遊感があり、幻だと感じさせるのだが、一方で死をも超えた強い想いは伝わってきた。技術的に難しい、ヴェールを持った回転のパ・ド・ドゥも完璧に仕上げていた。ほっそりとした肢体で、アラベスクのラインもアカデミックで美しく、見事なアンドゥオールで、音楽性も豊か。影の王国のコーダでは、ニキヤは柔らかい微笑みを浮かべていた。この場面で微笑みながら踊る人というのを見たのは初めてだが、最後に会心の踊りを行うことができた満足感もあったのかもしれない。

この日の長田さん、素晴らしいパフォーマンスで終えることができた幸せが舞台からにじみ出ていた。だからカーテンコールでも、新国立劇場のさよなら公演「シンデレラ」の時のような涙よりも、涙の中でも笑顔が輝いてた。ソロル役には、K-Ballet時代の同僚橋本直樹さん、大僧正には新国立劇場のマイレン・トレウバエフ、神に捧げる踊りのパートナーは、K-Balletと新国立劇場で同僚だった輪島拓也さん。気心の知れたパートナーたちと踊ることができたのも功を奏したのだろう。ボリショイ・アカデミーで学び、ロシアバレエの神髄を知る長田さんにとって、「ラ・バヤデール」が最後の舞台となった意味もよく分かった。

心技体と最も充実していて、ダンサーとしてのピークのところで引退されてしまうのは実にもったいないし、彼女は若いダンサーにとっては素晴らしいお手本となることだっただろう。フェリやイザベル・ゲランのようにいつか戻ってきてくれたらいいのに、と思った。日本には、大人のバレリーナが活躍できる場が少ないのが惜しい。その数少ない場に、この日本バレエ協会の公演があった。(観ることができなかったけど、前日の酒井はなさんのニキヤも素晴らしかったとのこと)

ガムザッティ役は、馬場彩さん。米国アーツバレエシアターオブフロリダ所属で、昨年のヴァルナ国際コンクールでは2回戦まで進出した若手ダンサー。色白で美しいけど世間知らずのわがままなお嬢様という雰囲気がぴったり。ヴァルナだけでなく、ローザンヌやYAGPでもスカラシップを受賞しているだけあって、技術に優れており、特に2幕の婚約式でのイタリアンフェッテからグランフェッテへの流れは見事だった。綺麗にピタッと止まるイタリアンフェッテは特に素晴らしかった。個人的には、ニキヤとガムザッティが同レベルだった昼公演の方がバランスが取れていたとは思うものの、馬場さんという魅力的な若手ダンサーを見ることができたのは良かった。

ソロルは橋下直樹さん。K-Ballet時代の同僚であるだけでなく、彼もボリショイ・アカデミーでバレエを学んでいただけあって、長田さんとの相性もよくパートナーリングがとても良かった。ソロル役は似合っており、途中まではとても良かったのだけど、影の王国のコーダ、ドゥーブルアッサンブレは難所だったようで、ダブルになっていなかったのが惜しい。ソロル役というのがいかにハードな役柄かというのがよくわかった。とはいえ、物語性はしっかりと感じさせてくれたし、長田さんへの敬意が伝わってきたもの良かった。

バラモンの高僧(大僧正)には、マイレン・トレウバエフ。実に濃厚な演技でドラマを盛り上げてくれた。最初から、ニキヤに対する燃え滾る熱い想いを隠せない様子。ラジャとの密談の中でも、ラジャが彼女を亡き者にしようという意図を読み取って慌てるし、婚約式の花籠の踊りの時の落ち着かない様子や、ニキヤの死で見せた深い嘆きと後悔。本当にニキヤを愛していたのはソロルより大僧正ではなかったのか?と思ってしまうほどだった。この版では、最後のシーン、寺院の崩壊で全員死んだ後で、一人大僧正が生き残り、寺院のがれきの上で祈りを捧げる。長田さんの同僚だったマイレンが最後に舞台を締めくくってくれたのも、感動的だった。

ブロンズアイドルには、NBAバレエ団の高橋真之さん。少し故障していたようで前半着地がずれるところはあったものの、後半の伸びやかで軽やかな踊りは流石。太鼓の踊りも大迫力だった。

影の王国は、オーディションで集めたダンサーたちだったけど、とても良く揃っていた。バレエミストレスの杉山聡美さんを始め、新国立劇場の楠元郁子さんと千歳美香子さん、そして佐藤真左美さんによる指導が行き届いていた模様。スロープは2段だがかなり傾斜があった。スロープを降りた後のエカルテではどうしてもぐらつく人が出てきたものの、全体的にはとても美しかった。第一ヴァリエーションの増原聖さんが、とてもやわらかくて強靭で、足音をさせない踊りで素晴らしかった。

すっかりおなじみとなったアレクセイ・バクランの指揮ぶりは熱く、国内メジャーオケの精鋭から構成されたジャパン・バレエ・オーケストラの演奏もとても良かった。長田さんの引退公演にふさわしい、感動的で美しい舞台に仕上がったと思う。カーテンコールは鳴りやまず、最後は会場内は総立ちになり涙が止まらなくなった。本当に数々の素晴らしい舞台を、長田さん、ありがとうございました。特に去年の「子どものための白鳥の湖」「シンデレラ」そして「ラ・バヤデール」は、心の中の宝物となるような美しく忘れがたい舞台だった。いつでも戻って来られるのを待っています。

Dance Squareで「ラ・バヤデール」3公演の舞台写真を見ることができる。
http://dance-square.jp/tbb1.html

2016/10/31

10/15 イスラエル・ガルバン「FLA.CO.MEN」

「FLA.CO.MEN」【日本初演】

10月15日(土)17:30
名古屋市芸術創造センター
主催:
あいちトリエンナーレ実行委員会
公益財団法人名古屋市文化振興事業団(名古屋市芸術創造センター)

振付・演出・ダンス Israel Galván
歌 David Lagos, Tomás de Perrate
ヴァイオリン・バス Eloísa Cantón
ギター・歌 Caracafé、 Proyecto Lorca
サクソフォン Juan Jiménez
パーカッション Antonio Moreno

http://aichitriennale.jp/artist/israelgalvan.html

5月にアクラム・カーンと共演する「TOROBAKA」で来日する予定だったイスラエル・ガルバンだったが、怪我で公演が中止となってしまった。この前の週にやはりあいちトリエンナーレで上演された「Solo」があまりに評判が良く、急きょ観ることにしたのだった。

舞台の上には、パーカッション、ドラムセット、そして譜面台。そこへなぜか白いエプロンをかけたイスラエル・ガルバンが足を小刻みに動かしながら登場し、そして女性ヴァイオリン奏者エロイサ・カントンが登場。ガルバンが歌うようにダイアローグを述べると、ヴァイオリン奏者が日本語に通訳するユーモラスなやり取り。やがて彼は、目にも止まらないようなものすごく速い動きでサパテオ(フラメンコの足の動き)を見せる。

フラメンコの革命児と呼ばれるガルバンは、なるほど自由奔放で型破り、大胆な動きを見せてくれる。しかしそれは、しっかりとしたサパティアードの技術に基づいたもの。素早い足の動きはタップダンスのようでもあるが、上半身の動きはエレガントで、また手の表現も細やかで豊かだ。細身の身体がとてもしなやかで、長い腕で見せる一つ一つのキメポーズが実にスタイリッシュ。しっかりした軸とアプロンがあるので、すべてが美しい。フットペダルをサパテオで踏んでドラムを演奏したり、木の箱を叩いて鳴らしたりブーツを楽器代わりにしたり、舞台の上に小銭をばらまいてその上で踊ったり、舞台上を縦横無尽に駆け回ったかと思えば、椅子に座って休んで水を飲んだり何か食べていたりする。フラメンコが地面を踏んだり手を叩いて音を出すダンスであることもあって、彼の音楽性はずば抜けており、だからこそドラム演奏だってすごいわけなのだ。

一見フラメンコを脱構築し、型破りでゆるいように見えて、しっかりと構成された作品である。1人ずつミュージシャンが入場してきて演奏を始め、楽器の数が増えて音楽が厚くなっていくところからしてうまい。明暗と色彩を巧みに使った照明も場面転換として機能し、構成を見せるのに効果的で見事だ。そしてミュージシャンたちも個性的で魅力的。ガルバンと舞台上で絶妙なやり取りを展開するだけでなく、音楽がダンスそのものをつくりあげているということを実感させるし、ガルバンも音楽と一体化している。

それだけでなく、ミュージシャンなのに皆やけに踊りが上手くて、途中でガルバンと一対一で踊ってちゃんとついて行ける人もいるし、パーカッション奏者などは途中で上半身裸になって、自分の上半身を叩きながらステップを踏みソロダンスまで見せてくれるのだ。フラメンコに欠かせない歌は、哀愁は帯びているもののウェットにはなりすぎない上に、歌手が抜群のリズム感を持っているからとても楽しく、時にはラップのようでもある。ダンスと歌、演奏の掛け合いも決まっていて、ジャズのインプロヴィゼーション・セッションのような雰囲気となる。

途中、ガルバンは客席まで降りて行って歩き回り、客席の通路でも見事なサパディアードやピルエットを見せた上で、客いじりまでしてチャーミングさを発揮してくれた。

クライマックスでは、ヴァイオリン奏者が奏でるリコーダーの音色で、ミュージシャンたちが全員で踊り、まるでハーメルンの笛吹きについていくかのように舞台を去っていく。そしてカーテンコールで踊りながら登場したガルバンは、白に赤い水玉のドレスを着て、そのドレスが脱げそうになるまでノリノリで踊ってくれてしまいには床に転がったた。ここが名古屋でなく、スペインのどこかの広場にいるかのような気持ちになり、幸せで満たされた。

イスラエル・ガルバン、超絶技巧の持ち主であるけど、いたずらっ子のようにチャーミングで、セクシーで、お茶目で大胆で、圧倒的な魅力の持ち主だった。クラクラさせられるような彼のダンスをまた観られる日が近いうちにあることを祈る。


今年9月のリヨン・ビエンナーレでの映像をarteで視聴できる。
http://concert.arte.tv/fr/flacomen-disrael-galvan-la-biennale-de-la-danse-de-lyon

2016/10/20

あいちトリエンナーレ ヴェルテダンス『CORRECTION』

10月15日は、名古屋に日帰りであいちトリエンナーレに行ってきて、3公演観てきました。9月のプロデュースオペラ「魔笛」に続くトリエンナーレでです。

ヴェルテダンスの『CORRECTION』は、東京の Dance New Air でも上演されたのですが、時間が合わなくて観に行けなかったのでした。(Dance New Air では、3公演観ました。10月のダンス公演の多さといったら殺人的な勢いで、10月18日現在、10月に18本もパフォーマンスを観たことになります)愛知で観ることができて良かったです。

ヴェルテダンス(チェコ共和国)
VerTeDance, Jiří Havelka, Clarinet Factory
『CORRECTION』(2014)
http://dancenewair.tokyo/program0104

演出:イジー・ハヴェルカ
振付・出演:ヴェロニカ・クニトロヴァー、テレザ・オンドロヴァー、マルチナ・ハイディラ・ラツォヴァー、カロリーナ・ヘイノヴァー、ロボ・ニジュニーク、ヤロ・オンドルシュ、ペトル・オパフスキー
音楽:クラリネットファクトリー(インドジフ・パヴリシュ、ルジェク・ボゥラ 、ヴォイチェフ・ニードル、ペトル・ヴァラーシェク)

会場に入ると、すでに7人のダンサーが舞台に立っている。等間隔で立っている彼らの靴は床に釘づけられており、その場から歩き出す自由を奪われている。ダンサーたちは、それでも必死に動こうとして、自分の影と格闘する。足を動かすことができないという、ダンスの大前提となる脚の動きを封じ込められた状態でどんなダンスができるのか。

背後にいるクラリネットのカルテットが奏でるちょっととぼけたミニマルな音楽に乗せて、ダンサーたちは様々な動きを見せる。お互いを突っつき合ったり、もたれかかったり、どついたり、ドミノ倒しのように倒れたり。絶妙な間合いとやり取りは、パントマイム劇を見ているようでもある。足が動かないからといって動けないと思ったら大間違いで、前へ後ろへ横へ、身体を大きく反らしたり、映画「マトリックス」の弾除けシーンのようにのけぞったり。床にぎりぎりつかない中途半端な高さのまま浮かんでいたり、足が固定された状態で倒れてしまって、必死に腹筋や背筋を駆使して元の立った体勢に戻ろうとしたり。台詞はなくても、視線やポーズで会話が聞こえてきそう。

時にはバナナや靴などの小道具も登場したり、ユーモアと不条理なセンスが最高に楽しい。様々な違うパターンの動きがあるので、時間が経つのも忘れて食い入るように見入っていた。

靴が床に釘づけられていて足の動きを封じ込められている、というのは一発アイディアのようだけど、それにとどまらず、いろいろと膨らませていて、センス・オブ・ワンダーを感じさせた。横一列に立って一歩も動けないのに、いろんな工夫をしてユニークな振付ができるものだ。とともに、ダンサーたちの驚異的な強靭さ、身体能力にも驚かされた。人間って凄いな~としみじみ感心したし、とても楽しかった。世界中のフェスティバルで大人気を呼んでいる演目だというのも納得。


あいちトリエンナーレのパフォーミングアーツ公演は、どれもキュレーター唐津さんの目利きによって充実したプログラムとなった。遠方から来た人でも、一日に3公演ハシゴすることが可能となっていたので交通費をかけただけの満足感が得られた、優れたプログラミングだったと思う。残りの公演もできるだけレビューできれば、と思う。(22日には、Co.山田うんの「いきのね」を観に再び名古屋へ)

2016/09/25

9/17 あいちトリエンナーレ プロデュースオペラ 勅使川原三郎「魔笛」

あいちトリエンナーレ2016プロデュースオペラ
W.A.モーツァルト作曲『魔笛』

(全2幕・ドイツ語上演・日本語字幕付き・日本語ナレーション)
公演日時: 2016年9月17日(土)、19日(月・祝)各日15:00開演
会  場: 愛知県芸術劇場 大ホール

【指揮】 ガエタノ・デスピノーサ
【演出・美術・照明・衣裳】 勅使川原 三郎
【合唱】 愛知県芸術劇場合唱団
【管弦楽】 名古屋フィルハーモニー交響楽団
【キャスト】
賢者ザラストロ:妻屋 秀和
夜の女王:髙橋 維
王子タミーノ:鈴木 准
王女パミーナ:森谷 真理
鳥刺しパパゲーノ:宮本 益光
弁者&神官Ⅰ:小森 輝彦
恋人パパゲーナ:醍醐 園佳
侍女Ⅰ:北原 瑠美、侍女Ⅱ:磯地 美樹、侍女Ⅲ:丸山 奈津美
従者モノスタトゥス:青栁 素晴
神官Ⅱ:高田 正人
武士Ⅰ:渡邉 公威、武士Ⅱ:小田桐 貴樹
童子Ⅰ:井口 侑奏、童子Ⅱ:森 季子、童子Ⅲ:安藤 千尋
【ダンサー】
佐東 利穂子
渡辺理恵 川島麻実子 奈良春夏 沖香菜子 吉川留衣 矢島まい 三雲友里加 政本絵美
秋元康臣 宮川新大 氷室友 岡崎隼也 松野乃知 永田雄大 入戸野伊織 高橋慈生

http://aichitriennale.jp/artist/index.html#op

あいちトリエンナーレ2016のプロデュースオペラは、勅使川原三郎さん演出による『魔笛』。東京二期会を中心とした歌手陣、佐東利穂子さん、そして東京バレエ団のダンサーたちが参加しての舞台となった。

ゲネプロの舞台写真はこちらで観ることができる。
http://natalie.mu/stage/news/201978

http://ebravo.jp/archives/29017

愛知県芸術劇場の大空間に勅使川原さんがデザインした舞台装置はシンプルだ。3つの大きさが異なる金属製の輪が3組宙に浮かび動いて重なり合ったりして、時にはザラストロの神殿となったり壁となったりと様々な図形を描く。2幕では、もう一つ大きな輪も登場する。『魔笛』ならではの三位一体の世界観を巧みに象徴させている。夜の女王と三人の侍女は羽根と毛皮をあしらった黒のゴージャスなドレス、ダンサーたちは白いレオタードの上にシースルーのレースのぴったりとした衣装、パミーナ、パパゲーノ、パパゲーナは白(パミーナは青いタイツ)、ザラストロも白と基本的にモノトーンなのだが、タミーノは鮮やかなオレンジで戦隊モノのヒーローのような姿。

ここまではスタイリッシュなのだが、それ以外のキャラクターの姿はなかなか強烈だ。ぬりかべから大きな手が突き出たモノスタトゥスの滑稽な姿はあまりにもインパクトが大きいし、マシュマロマンというかテレタビーズのような着ぐるみ姿の愛らしい童子たち、エジプトの壺のような神官。タミーノを神殿まで導きながら、よちよち歩きをする童子たちの姿は実にキュートでフィギュアが欲しくなるほどだし、つま先で横歩きする神官たちの大真面目な姿も可笑しい。人間とそれ以外のキャラクターとの差別化がくっきりできていた。『魔笛』って歌詞はよく見てみるとかなりユーモラスなわけで、こういう面白おかしさを衣装で表現するのは、幅広い年齢層の観客にアピールするうえでも効果的だった。(前日には、中学生向けの招待公演も行われたとのこと)

今回勅使川原さんが採った演出手法は、本来歌手が言う台詞をカットして、日本語のナレーションを佐東さんに語らせるというもの。その間歌手はマイムをしたり、振付けられた動きをするものの、基本的には歌唱に集中し、ダンサーたちがキャラクターの心情を表現したり世界観をつくりあげる。ダンサー一人一人が登場人物と対になっているわけではなく、時にはタミーノを襲う大蛇に化けたりする。佐東さんのナレーションは滑舌もきれいで声もよく通りわかりやすいし、物語も理解しやすい。だが、日本語ナレーションでストーリーを説明するという演出については、作品の流れを少し阻害するところがあって、賛否両論はあるようだが、ゴテゴテとなりがちなオペラにあって、そぎ落とした簡素さで作品の本質を伝えようとしている。

東京バレエ団のダンサーたちは、バレエ団内でオーディションを行って16人の精鋭を選抜し、春からワークショップを行ったとのこと。普段踊っているようなクラシックバレエの動きではなく、勅使川原さん独特の重心が低い中で空間を上半身を大きく切り裂くように動かす振付で、慣れるのに苦労はあったと思うが、ダンサーたちは見事にモノにしていて、見ごたえがあった。さすがに佐東さんは群舞になってもその鮮やかな動きとスピード感で際立っているが、彼女とペアになって踊った入戸野伊織さん、岡崎隼也さんには存在感があったし、秋元康臣さんの動きの美しさも格別。ただ、1幕ではダンスのシーンが多いものの、2幕では冒頭と終盤くらいだったし、女性ダンサーの活躍のシーンが少なく、もう少しダンスを観たかった気もする。合唱団の背後にチラチラ見えるダンサーたちの姿は、ちらっとしか見えないのにとても効果的ではあったが。

歌手陣は大変充実していた。特にパミーナの森谷真理さんはパワフルな歌声の持ち主で、パミーナに強い意志を持たせていたし、パパゲーノの宮本益光は愛嬌ある演技がこのキャラクターにもぴったりで、すばしっこくダンサー顔負けに良く動いていた。パパゲーノと、とても魅力的なパパゲーナ役の醍醐園佳さんの「パパパパ…パパゲーノ」の二重唱も聴きごたえがあった。鈴木准さんのタミーノもはまり役。妻屋秀和さんの重厚な歌声はザラストロにふさわしい。ガエタノ・デスピノーサの指揮もとても良かったと思う。

レベルの高い歌手陣に演奏、そして勅使川原さんの演出にダンスと、大変充実して見ごたえ、聴きごたえのあった楽しい公演。総合芸術としてのオペラの価値とは何かということを考えさせられた。東京バレエ団と勅使川原さんのコラボレーションも、今後継続するといいと思う。


この勅使川原版『魔笛』は来年3月に神奈川県民ホールと大分のiichiko総合文化センターで、指揮者やオーケストラ、一部の歌手を入れ替えて再演される。オペラファンも、ダンスファンも観て損のない舞台だ。


神奈川県民ホール・iichiko総合文化センター・東京二期会・神奈川フィルハーモニー管弦楽団 共同制作公演
神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2017
W.A.モーツァルト作曲 魔笛 全2幕

公演日時: 2017年03月18日(土)~2017年03月19日(日)    開演:14:00 (13:15開場)

【指揮】川瀬賢太郎 【演出・装置・照明・衣裳】勅使川原三郎
【出演】18日/19日
ザラストロ:大塚博章/清水那由太 夜の女王:安井陽子/高橋維
タミーノ:鈴木准/金山京介 パミーナ:嘉目真木子/幸田浩子

両日出演/パパゲーノ:宮本益光 パパゲーナ:醍醐園佳
侍女Ⅰ:北原瑠美 侍女Ⅱ:磯地美樹 侍女Ⅲ:石井藍
弁者&神官:小森輝彦 モノスタトス:青栁素晴 神官Ⅱ:升島唯博
武士Ⅰ:渡邉公威 武士Ⅱ:加藤宏隆

ダンス:佐東利穂子 東京バレエ団 合唱:二期会合唱団
管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

チケット発売 10/1(土)  かながわメンバーズKAme先行発売(インターネット受付のみ)9/17(土)
チケットかながわ 0570-015-415(10:00~18:00)http://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/
【チケット購入者特典】公開リハーサルとステージ見学:公演直前のいずれかの日程で開催予定。詳細は12月下旬頃ホームページにて発表予定。
【プレレクチャー】青島広志のたのしい名作オペラ講座 オペラ「魔笛」の魅力 2017年2月4日(土)14:00 小ホール

http://www.kanagawa-kenminhall.com/detail?id=34583


iichiko総合文化センター・神奈川県民ホール 共同制作公演
勅使川原三郎 演出 モーツァルト 作曲
オペラ『魔笛』

3月11日(土)

出演
川瀬賢太郎(指揮) 
神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(管弦楽)
二期会合唱団(合唱)
http://www.emo.or.jp/img_file/information/145681304929412-2.pdf

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