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バレエの本

2017/04/10

「日本バレエを変える ─コーイチ・クボの挑戦」

意欲的な作品を次々と上演し、今乗りに乗っているNBAバレエ団。ハロウィンの時期に上演して大きな話題を呼んだ『ドラキュラ』、美空ひばりの生涯をバレエ化した『HIBARI』(文化庁芸術祭新人賞を受賞)、そして昨年の『スターズ・アンド・ストライプス』では日本のバレエカンパニーでは初めてこのバランシンの作品を全編上演し、さらにダレル・グランド・ムールトリーと平山素子さんの新作を上演するというトリプルビルを成功に導きました。
バレエ団のパフォーマンスのレベルも年々上がっており、バレエ団全体が勢いに乗って、ポジティブな若いエネルギーを発散させているのを感じます。

そのNBAバレエ団を率いるのが、久保綋一さん。16歳の時にモスクワ国際バレエコンクールで銀賞を受賞(金賞なし)し、コロラド・バレエに入団。2010年までプリンシパルとして活躍し続けました。帰国後はNBAバレエ団のバレエ・マスターを経て2012年に芸術監督に就任しています。

この久保綋一さんの自伝的な著書が、「日本バレエを変える ─コーイチ・クボの挑戦」です。バレエ一家に育った彼が、子ども時代からバレエに熱中し、様々な師匠にバレエを学びます。彼とほぼ同世代に、岩田守弘さん、熊川哲也さん、小嶋直也さんといった錚々たる男性ダンサーたちがいて、切磋琢磨しながら技術を磨き、国際コンクールに挑戦していきます。165cmと小柄な久保さんは、日本やヨーロッパよりもアメリカで踊ったほうがいいというお父さん、久保栄一さんの後押しもありました。

旧ソビエト、ペレストロイカの真っ最中に、岩田守弘さんと共に挑んだモスクワ国際コンクール、アメリカのバレエ団への挑戦。コロラド・バレエでの日々。アメリカのダンスマガジン誌の表紙を飾ったりニューヨークタイムズに舞台写真が大きく載って絶賛されるほどの大活躍を見せます。小柄なため合っているパートナーを探すのが大変だったものの、シャロン・ウェナーという魅力的なバレリーナとパートナーシップを築き上げました。やんちゃ坊主だった久保さんが、次第に成長していくさまが様々なエピソードで語られています。

順調に見えたコロラド・バレエでの日々でしたが、前十字靱帯損傷という大けが、彼の恩人である芸術監督マーティン・フリードマンの解雇など様々な波風もありました。そしてコロラド・バレエを退団して帰国。そこで日本のバレエ界の現状になじめず、反発します。久保さんは、やがて、自分で日本のバレエ界を変えてやろうという使命感を感じるようになりました。

バレエ団は東京に集中して数が多いのに、劇場の数が少なくて取り合いをしなければならないという問題。アメリカでは専用のオペラハウスがあり、ダンサーたちにチケットノルマもなく、シーズン中にはリハーサルをしながら本公演を次々とこなして技術を磨くことができる。給料も年金も雇用保険も傷害保険もあり、労働組合もあって職業人として守られている、そういう環境を、久保さんは日本でも実現したいと思っています。また日本の、そして世界の振付家をどんどん起用して、海外のカンパニーのようにバレエを進化させて、日本のバレエを変え、国内外でツアーを行いたいと願っています。その情熱は、本の行間からも伝わってきます。

この本は、久保さんのみならず、様々な関係者の証言が載っています。久保さんの両親始め、コロラド・バレエの団員だった篠崎玲子さん、マーティン・フリードマン、シャロン・ウェナーなど。そのため、多面的に久保さんの足跡をたどることができ、具体的に彼の活躍ぶりや人物像を実感することができます。今は、日本で活躍する日本人ダンサーも増えましたが、久保さんの時代はそこまで多くはなく、またプリンシパルまで上り詰めた人もまれで、ダンスマガジン誌の表紙まで飾った日本人男性ダンサーは他にはいなかったかと思います。小柄というハンディをどのように克服して、「ジゼル」のアルブレヒトや「白鳥の湖」の王子など貴公子役までも踊ることができたのか、また人間としてどのように成熟していったのかも、多くの具体的なエピソードを通して伝わってきます。自分を飾ることなく、失敗なども含めて非常に率直な物言いで語られているので、思わず久保さんに親近感も覚えてしまいます。写真も多数。

まだNBAバレエ団を通しての、久保さんの日本のバレエを変えていくチャレンジは始まったばかりで、もう少しこのあたりの彼の具体的な構想を読みたかった気もします。が、海外にチャレンジしたい若いダンサーにとっては、非常に参考になる一冊であり、アメリカのバレエ団はどのような活動をしているのかもよくわかります。

また、この本の付録には、久保さんの踊る映像が多数収録されているDVDがあります。バランシンの「スターズ・アンド・ストライプス」のように、版権がおそらく非常に高価なものまできっちり権利がクリアされており、彼がどれほどすごいダンサーであったかを、それらの映像を通して観ることができます。なかなか日本では観ることができない作品も入っており、まさにお宝映像というべきでしょう。このDVDがついてこの値段というのはお得です。

久保さんが夢見ている、日本のバレエ界の改革が早く実現するように祈るとともに、NBAバレエ団のこれからの発展がとても楽しみです。まずは、5月20日、21日にクリストファー・ウィールドン振付『真夏の夜の夢』 と、アンソニー・チューダー振付『葉は色褪せて』というこれまた大変魅力的なダブルビルが予定されています。

http://www.nbaballet.org/performance/2017/midsummer_nights_dream/

『真夏の夜の夢』
『葉は色褪せて』

日   時: 2017年5月20日(土)
   開場12:15・開演13:00
   開場17:15・開演18:00
2017年5月21日(日)
   開場13:15・開演14:00
会   場: 新国立劇場 中劇場
チケット料金: S席 8,640円
A席 6,480円
B席 5,400円
学生席 3,240円

この本を出版している株式会社チャイコの編集の方のブログも大変面白いです。
http://nuekoballet.jugem.jp/?eid=138

日本バレエを変える─コーイチ・クボの挑戦日本バレエを変える─コーイチ・クボの挑戦
久保 綋一

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2017/03/16

SWAN MAGAZINE 2017年春号 Vol.47

SWAN MAGAZINE 2017年春号が発売になっています。

http://swanmagazine.heibonsha.co.jp/

毎回、この雑誌はパリ・オペラ座バレエ情報がとても充実しているのですが、今回は特に興味深い記事が多くて、来日公演を振り返ったり余韻に浸るのにもお勧めの号です。

冒頭は、「二人のプリンス、白鳥を語る」と題して、マチュー・ガニオ、そしてジェルマン・ルーヴェのインタビュー。

マチュー・ガニオも気が付けば首席エトワールとなり、ヌレエフ版の「白鳥の湖」を10年間踊り続けていることになります。ヌレエフ版は、他の「白鳥の湖」と違い、王子の心理面を深く掘り下げたバージョンなので、非常に難しいとのこと。また、昨年末の上演では、6回王子役を踊った後、ロットバルト役にも挑戦する予定だったものの、リハーサル中に怪我をしてしまって実際には舞台には立てませんでした。しかし、ロットバルト役をどのように作り上げて行ったかのプロセスについては興味深い話が読めます。ダンスール・ノーブル役で知られるマチューですが、今後はコンテンポラリー作品を踊る比重が高くなってくるそうです。

一方で、昨年末に王子役デビューをして、見事にエトワール昇進(それも飛び級)を果たした新星ジェルマン・ルーヴェ。本当に容姿の美しい、絵に描いたような麗しいプリンスです。エトワール昇進を告げられた時の気持ちなどを語ってくれました。非常に美しいポートレートも掲載されているので、ファンは必見です。

また、「白鳥の湖」特集として、昨年末の上演だけでなく、パリ・オペラ座での歴代の美しい舞台写真が掲載されています。イレール、ルテステュ、エルヴェ・モロー、ル=リッシュ、プラテルなど。


日本で上演された「白鳥の湖」としては、深川秀夫版の「白鳥の湖」と、東京小牧バレエ団の「白鳥の湖」のレビューも。
深川版「白鳥の湖」は、オデットとオディールを別のダンサーが踊り、二人が同時に舞台に立っていることもあるというユニークな演出。コール・ド・バレエの動きも独特で、ドラマティックな演出とのことで、機会があればぜひ観てみたいものです。
東京小牧バレエ団にゲスト出演した、ボストン・バレエの倉永美沙さんのインタビューも興味深い。身長156cmと小柄な彼女が、オデットの存在感を出すためにどのような工夫をしているのか、オデットとオディールの演じ分けなどについて語ってくれていて、これがまた読みごたえがあります。

さらに、オペラ座ファンにとっては懐かしいヤン・サイズ(元スジェ)の講習会レポート、スロベニア国立マリボール劇場の中島麻美さん(昨年のヴァルナ国際バレエコンクールで銅メダル受賞)のインタビュー、山本隆之さん、福岡雄大さん、福田圭吾さんが出演したKバレエスタジオ公演や、NBAバレエ団「スターズ&ストライプス」公演レビュー、がンブルグ・バレエ「大地の歌」のレビューなど、他ではなかなか読めないような記事があって、充実した号となっています。

連載「SWANドイツ編」(有吉京子さん)では、ノイマイヤー振付の「オテロ」に挑む真澄とレオンのエピソードが語られます。実在するバレエ団や振付家、作品が登場するという設定もまたとても面白いもので、この先の展開も楽しみですね。

SWAN MAGAZINE Vol.47
SWAN MAGAZINE Vol.47有吉京子ほか

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2016/12/16

世界が恋する10人のバレリーナ初のSTYLE BOOK 『Love Ballerina』

国内外で活躍する人気バレリーナ10人のSTYLE BOOK『Love Ballerina』(別冊家庭画報) が発売されました。

パリ・オペラ座バレエのオニール八菜さんや英国ロイヤル・バレエの高田茜さんなど、国内外で活躍するバレリーナ10人に密着したおしゃれでこだわり満載のスタイルBOOK。美しいビジュアルの撮りおろし写真に公演レポートやバレエ団での生活、メイクのHOW TOや食生活などの「知りたい!」トピックス、また、インタビューや対談企画など、盛りだくさんの内容です。

1ページ、「おすすめウェブサイト」の項目だけですが私も執筆しています。バレエが大好きな女性ファッション誌の編集者が編集したムックならではの斬新な切り口で、こんなことが知りたかった、という内容を網羅。今、輝いている10人のバレリーナの魅力がぎっしり詰まったとても素敵な1冊となっています。ぜひお買い求めいただければと思います。

相原舞さんとオニール八菜さんはニューヨーク、パリのお気に入りのお店、浅川紫織さんはバレエ教師として教える姿、飯島望未さんはファッショニスタぶり、石井久美子さんはマリインスキー・バレエの世界、日本舞踊を習っていたという小野絢子さんは気品あふれる着物姿で藤間蘭黄さんとの対談、川島麻実子さんは指揮者川瀬賢太郎酸との対談、倉永美沙さんは世界中を飛び回る様子、近藤亜香さんは同僚で婚約者であるチェンウ・グォや愛犬との生活、高田茜さんは先輩吉田都さんとの往復書簡、などそれぞれのダンサーごとに別の切り口での紹介がされているのも興味深いです。

また、今までクローズアップされていなかったそれぞれのダンサーのトリビアや意外な素顔も覗けたり、ファッションやメイクに対するこだわりが聞けたり。バレエ初心者が読んでも、写真やダンサーの美しさ、親しみやすい切り口でバレエ入門書としても最適です。ぜひシリーズ化してもらい、バレリーナ第2弾や男性編も読みたいな、って思います!


【Ballerina】
相原舞(ABT)
浅川紫織(Kバレエ カンパニー)
飯島望未(チューリッヒ・バレエ)
石井久美子(マリインスキー・バレエ)
オニール八菜(パリ・オペラ座バレエ)
小野絢子(新国立劇場バレエ団)
川島麻実子(東京バレエ団)
倉永美沙(ボストン・バレエ)
近藤亜香(オーストラリア・バレエ)
高田茜(英国ロイヤル・バレエ)

【Love Ballerina Column】
バレリーナのトウシューズをCHECK!
MY FAVORITE COSTUME
好きな役&いつか踊ってみたい役
SNSでわかるバレリーナなう
私のバイブル Ballet DVD
私の最愛コスメ for stage
BACK STAGE PHOTOS
me MOTTO is ×××

【Special】
近藤亜香さんが「カンタス航空」を愛する理由
英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2016-17シネマシーズン
もっと知りたい!世界のバレエ団informathion
バレエに夢中♪になれるおすすめサイト
バレエ鑑賞初心者の疑問にお答えします
SHOP List


公式FacebookとInstagramでは、メイキングの写真も多数アップされています。

Love Ballerina ラブ・バレリーナ (別冊家庭画報)Love Ballerina ラブ・バレリーナ (別冊家庭画報)

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2016/12/05

吉田都「バレリーナ 踊り続ける理由」

50歳を迎えた今も、舞台に立つ回数こそ減ったものの、その軽やかさと確かな技術、豊かな音楽性と気品ある溢れる踊りで観客を魅了し続ける吉田都さん。その芸術性の高さと観る者を幸せにする踊りの美しさには、未だ比肩する者はいないほどです。

その吉田都さんの、新しい本が発売されました。

吉田都「バレリーナ 踊り続ける理由」

バレリーナを目指す人のみならず、若い人から都さんと同年代の女性まで、多くの人に勇気を、そしてしなやかに美しく生きる上でのヒントをたくさん与えてくれる本です。

都さんがトウシューズに憧れてバレエを始めた子供時代の時から、現在までの道のりを綴った一冊です。表紙のナチュラルな表情、本に掲載されているレオタードにチュチュボン姿も自然で飾り気のない笑顔がとても素敵です。

ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップを獲得してロイヤル・バレエスクールに留学するものの、体型などへのコンプレックス、言葉の問題などからホームシックに悩まされます。サドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエ(現バーミンガムロイヤル・バレエ)に入団してチャンスを迎えるものの怪我をして自己管理の大切さを知り、師であるピーター・ライトに表現の神髄を学びます。

”心が身体をどう動かしているのか”つまり内側の表現、その人ならではの表現の大切さ。今でも都さんは振付家やバレエ・ミストレスから指導を受ける時間を大切にして、人の心を動かす表現をつなげて行こうと努力しています。

プリンシパルとなり、さらに大きなバレエ団であるロイヤル・バレエに移籍してからは、公演に対して大きな責任を負うようになります。その中で、都さんはプレッシャーに負けず、評価に一喜一憂せず、他人と自分を比べないことで自分の心を鍛え、44歳でロイヤル・バレエを去るまで第一線で活躍し続けます。最大のライバルは、自分。自分の心と向き合い、マイナスの感情に負けないことの大切さも、都さんの経験談を聞くと実感として伝わってきます。

ジョナサン・コープ、イレク・ムハメドフ、フェデリコ・ボネッリなど一緒に踊ってきたパートナーたちとの話も興味深く、また、意外なことに、スヴェトラーナ・ザハロワについても、彼女を尊敬する気持ちについて語ってくれています。

結婚、K-Ballet Companyでの活動、ロイヤルを退団して拠点を日本に移したこと、そしてフリーランスのバレリーナとしての活動、様々な人生の転機がありました。ロイヤル・バレエ本拠地での最後の「シンデレラ」、そして日本でのロイヤル・バレエさよなら公演「ロミオとジュリエット」。人生での一つ一つの転換点を経てポジティブに人生を切り開いていきます。最近ではハンガリー国立バレエで、ピーター・ライト振付の「眠れる森の美女」の振付指導も担当しました。

膝の状態が悪くなって踊ることを断念しようと思ったことがあったものの、優れたトレーナーとの出会いで回復し、今も身体は進化し続けているそうです。堀内元さんとの「Ballet for the Future」で現代作品を踊る機会を得て、新境地を開きました。今も現役のバレリーナとして、日々のクラスやトレーニングで身体を整え、しっかりと食事をしてヘルシーな生活を送っています。

終章では、エレガントに生きるためのヒント、そして芸術が人生を生きる上でどれほど大切なものなのかが語られています。吉田都さんのようなバレリーナになれる人はほとんどいませんが、都さんの生き方は、多くの女性にとってのお手本でもあり、多くの学びを与えてくれます。このような素敵な人柄と、ひたむきな努力から、あのような感動的な踊りが生み出され、そしていつまでたってもチャーミングで内側から輝くような美しさが生まれるのだと実感されます。

文体もとても読みやすく、挿入された写真も都さん自身が撮影したものもあったりで、普段の生活の一端もうかがえます。たくさんの人に手に取ってほしい一冊です。

バレリーナ 踊り続ける理由バレリーナ 踊り続ける理由
吉田 都

河出書房新社 2016-11-25
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そういえば、グランプリ・ファイナル進出を決めたフィギュアスケートの宮原知子さんは、吉田都さんにバレエの指導を受けて表現力を向上させたようですね。
http://www.hochi.co.jp/sports/winter/20161127-OHT1T50053.html

2016/02/17

ジョージ朝倉「ダンス・ダンス・ダンスール」第一巻

週刊ビッグコミック・スピリッツに、バレエ・コミック「ダンス・ダンス・ダンスール」(ジョージ朝倉)が連載中です。そしてコミックの第一巻が発売されました。

http://spi-net.jp/weekly/comic057.html

村尾潤平、6歳。姉の発表会に出演したゲストダンサーの影響でバレエに魅了された彼は、周囲に揶揄されながらも、自らの衝動に付き従う。踊っている時だけ、少年の中で、星が爆ぜる――。 そんな彼を襲った、父の突然の訃報。「男らしくならねば」――悲壮な決意のもと、潤平はその道を諦めることに。そして数年後…中二になった潤平に、転校生の美少女・五代 都が近づく。「一緒にバレエやろうよ!」。彼の中の衝動が今、再び星を散らし爆発する!!

こちらで第一話の試し読みをすることができます。
http://spi.tameshiyo.me/DANCE01SPI

この試し読みが面白かったので、一巻を買ってみました。

映画化された『恋文日和』『ピース オブ ケイク』で知られるジョージ朝倉は、女性コミック中心の漫画家ですが、今回は、王道の少年コミック。普通の男の子が、バレエを習うのは恥ずかしい、男らしくないのでは、と悩みつつも身体の中の「踊りたい」という強い衝動、そして転校生の都(このネーミングが良いですよね)への淡い恋心から、バレエダンサーとしては遅い中学2年で本格的にバレエを始めることになります。謎のひきこもり天才バレエ少年ルオウなど、気になるキャラクターも登場します。

バレエの基本が全くできていないけれども、踊りたいという強い気持ちに突き動かされた潤平のダンスが、ダイナミックで生き生きとした作画で表現されています。本格的にプロを目指すには遅い年齢でのスタートで、果たして彼はどこまで行けるのか。これから先が楽しみです。

ダンス・ダンス・ダンスール 1 (ビッグ コミックス)ダンス・ダンス・ダンスール 1 (ビッグ コミックス)
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2015/07/03

夢へ翔けて ~戦争孤児から世界的バレリーナへ~ ミケーラ・デプリンス/エレーン・デプリンス著

世界最大のバレエコンクール、YAGP(ユースアメリカグランプリ)の出場者を追ったドキュメンタリー映画「ファースト・ポジション―夢に向かって踊れ!」に出演して一躍有名になった、ミケーラ・デプリンス。シエラレオネの戦争孤児だった彼女がアメリカ人の養父母に引き取られ、バレリーナになるという夢をかなえました。その彼女の自伝「夢へ翔けて ~戦争孤児から世界的バレリーナへ~」が発売され、アメリカでは大きな話題となり、映画化も決定しています。その邦訳がこのたび発売されました。

この本がアメリカで発売された時には、ミケーラはまだ18歳で、オランダ国立バレエに入団したばかり。その若さで自伝を発売するのって早すぎるのでは、とその時には思いました。でも、この本はできるだけ早く発売され、できるだけ多くの若い人たちに読まれるべきなのではないかと読み終わった後に感じました。


ミケーラがシエラレオネの内戦で両親を失って孤児となってしまったということは、「ファースト・ポジション」の中でも語られていますが、シエラレオネでの内戦下の暮らしがあまりにも過酷だったことに驚きました。一夫多妻制で女性の扱いがひどく、女に教育なんてもってのほかという中で、ミケーラの両親は賢い彼女に早くから勉強を教えていました。

しかしデビルと呼ばれる反政府勢力(RUF)に父は殺され、母は飢えで亡くなってしまいます。おじは彼女を孤児院に入れますが、白斑がある彼女は悪魔の子と言われ、孤児院では疎んじられいじめられます。孤児院の先生もデビルに殺され、シエラレオネから脱出するときも、大勢の子供たちが殺されている姿を見るなど試練が続きますが、ミケーラと親友のミアは、アメリカ人の養父母に引き取られ、アメリカへ。

ミケーラとミアは、養父母の深い愛情に包まれて、アメリカでは幸福な生活を送ります。養父母はアフリカから6人の子供たちを養子として育てているだけでなく、3人の息子たちに加えて2人の血友病の男の子たちを養子に迎えており、その血友病の子たちはAIDSで亡くなってしまっていました。

孤児院にいたときに、風で飛ばされてきた、アメリカ人が持ち込んだバレエ雑誌の表紙がミケーラの運命を変えます。ポワントを履き、チュチュを着た美しいバレリーナが表紙を飾っていたのでした。いつか、私もバレリーナになりたいという夢がミケーラを支えます。

養父母はミケーラをバレエ教室に連れて行ってくれて、やがて彼女は頭角を現します。アメリカでも肌の色が黒いということで差別されたり、バレエの世界においても、黒人のバレリーナはほとんどいないという現実に直面します。バレエは白人のためのものであるという根強い偏見は今でもあります。それでも養母に励まされ、同じくバレエを習っていたミアと切磋琢磨して頑張るミケーラ。養母も、ミケーラのバレエ教育を全面的にサポートし、少ない予算の中で衣装を手作りし工夫もして彼女を支えます。

サマースクールに参加したダンス・シアター・オブ・ハーレムでは、初めてアフリカ系アメリカ人としてNYCBのプリンシパルとなったアーサー・ミッチェルに出会います。10歳でYAGPに初めて出場し、ABTのサマースクールへの参加、さらにYAGPへの出場を重ね、「ファースト・ポジション―夢に向かって踊れ!」にも出演。「ファースト・ポジション」に出演したことで一躍注目を浴びてマスコミにも登場するようになります。南アフリカでの公演に出演し、10数年ぶりにアフリカの地を踏みます。アフリカ、特にシエラレオネの女性や子供たちのために何ができるだろう、と思うようになります。そして、オランダ国立バレエに入団。クラシックバレエのバレエ団の団員になるという夢が実現しました。米ハフィントン・ポスト2012年「18歳以下の18人―年間最優秀ティーン」の一人にも選ばれました。

国連のボランティアとして、戦争に翻弄される子供たちの様子を伝える機会を与えられたこと、そして世界女性サミットに参加して自分の戦争に翻弄された経験を語ることができたことは、ミケーラにとって大きな出来事でした。戦争を逃れ、アメリカに渡ってバレリーナになることができた彼女は幸運でした。ミケーラに、養母は、恵まれている人間は分かち合う責任があると言います。養父母は、だからこそ、アフリカの孤児たちを引き取って愛情深く育てていったわけです。ミケーラは何を分かち合うべきなのか、自分自答した時に出てきた答えは、「希望」でした。困難な中を生きていく子供たちに希望を分け与えるために、彼女はこの若さで自伝を書いたわけです。

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戦争、両親の死と大変な苦難を生き抜き、アメリカに渡っても差別されるという現実に直面しながら、努力を重ねて夢の扉を開いたミケーラ。だけど、養母エレーンと共に書いたこの自伝では、等身大の彼女の姿が、素直な言葉で生き生きと綴られています。決して成功に酔うことなく、様々なトラウマや恐怖、姉妹となったミアとの友情と葛藤など、若い女の子ならではの視点で語られているので、とても好感度が高いのです。翻訳もとても読みやすく、ルビも振ってあって小学校高学年くらいでもスルスル読めてしまうし、ドラマティックで感動的で、面白い内容です。

また、日本人の留学生も多い名門バレエスクール、ロックスクールでのバレエ教育のこと、予選を経てYAGPのコンクールに参加する過程、衣装や振付の準備、芸術性をどうやって獲得していくか、バレエ団の就職活動など、バレリーナを目指す子にとっても参考となる話が出てきて、これもとても興味深いです。

子供にとって(大人にとっても)一番大切なことは、希望。生きるということは、困難な現実に直面し、悲しいことや苦しいことに出会い、思うようにいかないことも多いけど、でも頑張ればきっとそれは乗り越えられて、夢に近づくことができる。そして努力する姿を見て支えてくれる人たちが、必ずどこかにはいる。そのことをこの本は伝えてくれます。

これはアメリカ的な考え方なのかもしれませんし、キリスト教の影響も大きいと思うのですが、ミケーラの養母が実践している「恵まれている人間は分かち合う責任がある」という思想は素晴らしいことだと思いました。私も、決してものすごく恵まれているわけではありませんが、飢えてはいないし教育は受けることができたわけなので、やはり自分の持っているものを人々に分け与えることができればいいなと感じました。

この自伝は映画化も決定しているということで、こちらも大変楽しみです。東京小牧バレエ団三代目団長 菊池宗氏の推薦文つき。

夢へ翔けて: 戦争孤児から世界的バレリーナへ (ポプラせかいの文学)夢へ翔けて: 戦争孤児から世界的バレリーナへ (ポプラせかいの文学)
ミケーラ デプリンス エレーン デプリンス Michaela DePrince

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ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ! [DVD]ファースト・ポジション 夢に向かって踊れ! [DVD]

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2015/03/26

SWAN MAGAZINE 2015 春号 Vol.39 (スワンマガジン)

SWAN MAGAZINE 2015 春号が発売されました。

http://swanmagazine.heibonsha.co.jp/

今回は「エトワールに夢中」はお休みで、代わりにパリ・オペラ座で年末に上演された2演目、「泉」と「くるみ割り人形」を巻頭で大きく取り上げています。
「くるみ割り人形」に主演した、注目の若手(スジェ)のレオノール・ボーラックのインタビューが掲載されています。金髪に小さな顔に大きな瞳、愛くるしいレオノールは、「ダフニスとクロエ」でも目立つ役を踊っていました。彼女だけでなく、「くるみ割り人形」では、11月の昇進試験でスジェに昇進したジェルマン・ルーヴェ、ユーゴ・マルシャンも主演し、また「泉」ではやはりスジェのパク・セウンが抜擢されるなど、若手の起用が目立ちます。

特集は「ロシア・バレエに夢中!」

年末から年始にかけて来日したロシア系カンパニー、ボリショイ・バレエとミハイロフスキーバレエを大きく取り上げています。また、キエフ・バレエの「バレエ・リュスの祭典」の公演のレビューも。ボリショイは、瀬戸秀美さんの美しい写真がたくさんあり、世界最高峰のバレエを見せてくれた公演を懐かしく反芻することができます。

ミハイロフスキー・バレエについては、公演の紹介とともに、レオニード・サラファーノフとイリーナ・ペレンというカンパニーを代表するプリンシパルのインタビューがあります。サラファーノフは「白鳥の湖」が大嫌いだと語り、「ジゼル」のアルブレヒトは意志が弱くて無責任、ダメな男だと言いきったりしていて、本音が見えて面白いインタビューでした。サラファーノフ、ペレンとも、ナチョ・ドゥアトが芸術監督を務め、彼の作品を踊ったことでいろんな表現を手に入れ、新しい目で作品を理解することができるようになったと語っていたのも印象的でした。

また、来日公演で旋風を引き起こした二人の若手、ヴィクトル・レベデフとアナタスタシア・ソボレワに着目し、彼らのメッセージも掲載しています。ワガノワ・バレエ学校ではトップだったのにもかかわらず敢えてマリインスキーではなくミハイロフスキーに入団したレベデフ、ボリショイ・バレエから移籍したソボレワ。二人が共演した「ジゼル」はとても初々しく、伸び盛りの2人のきらめきを観ることができた素敵な公演でした。

今年の一月には、パリのオペラ・ガルニエでスウェーデン王立バレエ団によるマッツ・エック振付「ジュリエットとロミオ」の公演がありました。この作品で栄えあるブノワ賞に輝いた木田真理子さんが主演し、また第2キャストでは、鳴海令那さんもジュリエット役を演じたということで、鳴海さんのインタビューが掲載されています。マッツ・エックは振りは全部彼が踊って見せてくれているのだそうですね。このジュリエット役を創ったのが木田さんなのですが、鳴海さんは彼女自身のアプローチで演じたそうなので、2キャストを観た方は、より一層この作品を楽しめたことでしょう。

「世界の劇場から、こんにちは」、はヒューストンバレエのソリスト、飯島望未さんをインタビュー。
ヒューストン・バレエは団員数55人と比較的大きなカンパニーで、日本人は、昨年移籍したプリンシパルの加治屋百合子さんをはじめ7人。飯島さんは昨年ソリストに昇格し、「白鳥の湖」のオデット/オディール、デヴィッド・ビントレー振付「アラジン」のプリンセスなどの主役も踊っています。現在は疲労骨折で舞台を休んでいるそうですが、そのような逆境の中でも強い気持ちを持ち、自分にしかできないことをやっていこうという気概で前進し続けています。

[連載] ハンブルク便りも5回目となりました。

今回は、来シーズンよりノイマイヤーに指名され芸術監督代理となるロイド・リギンスが初めて振付けた「ナポリ」を紹介。ブルノンヴィルのオリジナルをベースにしながら、失われた2幕をリギンスが復元。デンマークロイヤルバレエで7年間踊り、ブルノンヴィルに精通した彼ならではの、ブルノンヴィルテイストの2幕に仕上がったようです。

https://youtu.be/TtRlarA_hTM

また、団員の石崎双葉さんのインタビューが掲載されています。ローザンヌ国際コンクールでファイナリストとなり、ハンブルグ・バレエ学校を経て2011年に入団しました。学校時代から見込まれ、オーディションを受けずに入団で来て順調満帆だった彼女ですが、ノイマイヤーからは内面の感情を表現することの大切さを学んだそうです。いろいろな踊りを踊ってみたいという意欲を持つ彼女、「ナポリ」ではパ・ド・シス、「ジゼル」ではドゥ・ウィリを踊るなど活躍しています。
そしてちょうど昨日、トロントで行われた、権威あるエリック・ブルーンプライズ・コンクールに石崎さんはハンブルグ・バレエを代表して出場しました。「ジゼル」とコンテンポラリー作品を同僚のクリストファー・エヴァンスと踊りました。ナショナル・バレエ・オブ・カナダ、ハンブルグ・バレエ、ロイヤル・デンマーク・バレエ、サンフランシスコ・バレエ、ボストン・バレエを代表して若手ダンサーが1組ずつ出場するコンクール、1回目はロイド・リギンスも出場しました。石崎さんは残念ながら受賞は逃したものの、素晴らしいパフォーマンスを見せたようです。

有吉京子さんの連載「SWAN ドイツ編」は第三回に。
ノイマイヤーの「オテロ」を巡り、レオンの今まで見られなかった意外な側面が描かれます。謎の美青年、クリスも登場し、あっと驚くどきどきの展開となります。これはぜひ手に取ってお読みください。

SWAN MAGAZINE 2015 春号 Vol.39 (スワンマガジン)SWAN MAGAZINE 2015 春号 Vol.39 (スワンマガジン)

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2015/02/26

「バレエの世界へようこそ:あこがれのバレエ・ガイド」

英国ロイヤル・バレエ全面監修のバレエ・ガイド「Ballet Spectacular」。

ロイヤル・バレエの美しい舞台写真をふんだんに使い、バレエの歴史から主な演目の紹介、チュチュやトウシューズの秘密、バレエのテクニック、舞台の裏方の仕事からバレエ学校、ダンサーの生活まで、これ一冊でバレエのすべてを網羅しています。

この美しい本の日本語版が3月4日に発売されます。

「バレエの世界へようこそ
あこがれのバレエ・ガイド」

英国ロイヤル・バレエ 監修
リサ・マイルズ 著
斎藤 静代 訳

B01073usaea3tt
photo: Akiko Tominaga

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309275352/

そして、僭越ながら、そして少しですが、こちらの本の翻訳協力をさせていただきました。どんな本ができるのか、わくわくし続けた半年でしたが、大判の素敵な本が出来上がりました。大人から子供まで楽しめる一冊で、子供でも読めるようにやさしい言葉遣い、漢字にはルビも振ってあります。元の「Ballet Spectacular」も持っていますが、オリジナルの本にとても忠実に丁寧に作られています。

英国ロイヤル・バレエ監修ならではの、作品紹介もロイヤルのレパートリー中心なのが面白いですし、プリンシパルのローレン・カスバートソンが怪我にどうやって対処したか、といったインタビューも載っています。他にも、若手のダンサーや振付家のインタビューもあるし、ロイヤル・バレエではどんな裏方の人が働いているのかも分かって、大人にとっても興味深く、マニアックな知識までも仕入れられます。

2013年のロイヤル・バレエ来日公演「白鳥の湖」の際の、舞台から客席を撮った写真は、まるで日本のファンへのプレゼントのようですね。

何より、絵本のような夢いっぱいで華やかなビジュアルが美しい。バレエの魔法のような世界へと導いてくれます。舞台やダンサーの貴重な写真がたくさん載っているので、ロイヤル・バレエのファンにとっては嬉しいこと間違いないです。特に、バレエを習い始めたり、バレエに興味を持ち始めたお子さんへのプレゼントにとても喜ばれると思います。新国立劇場バレエ団の小野絢子さんの推薦帯つき。

自分が関わっていなかったとしても、この本はすべてのバレエファンにお勧めです。こんなに綺麗なバレエ本は日本ではいまだかつてなかったと思います。大型の豪華本なのに、値段も2,916円と抑え目でお得です。

バレエの世界へようこそ:あこがれのバレエ・ガイドバレエの世界へようこそ:あこがれのバレエ・ガイド
リサ・マイルズ 英国ロイヤル・バレエ

河出書房新社 2015-03-03
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Ballet Spectacularの発売記念イベントに登場した、ローレン・カスバートソン、ヤスミン・ナジ、マルセリーノ・サンベ(3人ともこの本にインタビューが掲載)をフィーチャーした記事と写真。ローレンの脚のギブスはこの時は痛々しいです。
http://dancetabs.com/2014/10/book-ballet-spectacular-a-childrens-guide-to-ballet-and-an-insight-into-a-magical-world/
https://www.flickr.com/photos/dancetabs/sets/72157648480468650/

オリジナルの英語版はこちら。

Ballet Spectacular: A Young Ballet Lover's Guide and an Insight into a Magical WorldBallet Spectacular: A Young Ballet Lover's Guide and an Insight into a Magical World
Lisa Miles

Barrons Juveniles 2014-11-01
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なお、Ballet Spectacularという題名の、ロイヤル・バレエのDVD-BOXも発売されています。これは、ロイヤル・バレエの「ジゼル」(コジョカル、コボー主演)、「コッペリア」(ベンジャミン、アコスタ主演)、「ラ・フィユ・マル・ガルデ」(ヌニェス、アコスタ主演)の3枚のDVDをカップリングしたお買い得なDVDセットです。

Ballet Spectacular [DVD] [Import]Ballet Spectacular [DVD] [Import]
Herold Adam Delibes Acosta Benjamin

BBC / Opus Arte 2015-01-27
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2015/02/10

『ディアギレフ・バレエ年代記 1909ー1929』セルゲイ・グリゴリエフ 著

『ディアギレフ・バレエ年代記 1909ー1929』

セルゲイ・グリゴリエフ 著
薄井憲二 監訳、森瑠衣子 ほか訳

http://www.heibonsha.co.jp/book/b178293.html

セルゲイ・ディアギレフのバレエ・リュスの設立当初から、ディアギレフが1929年に亡くなるまで、舞台監督として、そして彼の右腕として彼を支えたのがセルゲイ・グリゴリエフ。ディアギレフの前を多くのダンサーや振付家、スタッフが来ては通り過ぎて行ったが、最初から最後まで彼のところにいたのは、唯一グリゴリエフだった。

作品の構想、振付、リハーサル、舞台化、宣伝、興行とすべてにかかわっていてすべてを知り尽くしている彼ならではの逸話の数々をここで読むことができる。

マリインスキー劇場のキャラクターダンサーだった彼が、友人のミハイル・フォーキンの紹介でディアギレフに出会ったのが1909年。前の年にディアギレフがパリでのオペラ「ボリス・ゴドノフ」を成功させ、今度はバレエも含めたプログラムをパリで上演しようという時だった。ディアギレフのアパルトマンで関係者を集めて開かれた「ディアギレフ委員会」のくだりからワクワクさせられる。

第一回のバレエ・リュスのパリ公演が成功裏に終わった時、グリゴリエフは、「このパリの出来事はお伽噺だった、夢だったんだ、二度目はないのだ」と思いつつディアギレフと別れたという。しかし、それは、バレエの歴史、アートの歴史を変えた20年間の始まりだったのだ。

ディアギレフは天才的な興行師であり、また新しいものを先取りしたり、様々な分野の芸術を合せて新しい芸術を作り上げる素晴らしい才覚を持っていた。その一方で、あまりにも先進的なところがあったり、独断的なところもあって彼についていけない人たちも出てくる。芸術家同士なので、エゴのぶつかり合いもある。特定のダンサーを偏愛したことで軋轢も生まれた。

バレエ・リュスは最初はフォーキンのエキゾチックな作品が人気を呼んだが、やがてディアギレフは、フォーキンの作品は古いと感じるようになり、ニジンスキーの斬新さに魅かれるようになる。結果的にフォーキンはバレエ・リュスを去る。ニジンスキーは、ロモラと結婚したことでディアギレフを激怒させ、バレエ・リュスを解雇される。その後にディアギレフのお気に入りとなったレオニード・マシーンにしても、振付家、ダンサーとして大成したもののやはり後にディアギレフに追われる。ディアギレフの作品を美術面で支えたブノワやバクストにしても、ディアギレフとのちに決裂している。特に振付家が去った後、次の振付家を探すのには、ディアギレフも、グリゴリエフも大変苦労をした。

このように、ディアギレフは魅力的な人物ではあるものの、決して一筋縄ではいかず難しい面も多々あったのだが、グリゴリエフは一貫として彼を支え続けた。芸術的に妥協することを決してしないディアギレフは、それぞれのプロダクションに湯水のようにお金を注ぎ、観客動員には成功しても財政は常に火の車であったし、赤字のかたに衣装や舞台装置を差し押さえられたり、劇場を確保するのにも苦労した。人間関係も複雑怪奇で、様々な足の引っ張り合いがあった。そういった裏方の仕事を一手に引き受けたのがグリゴリエフである。

しかし、このように想像を絶する苦労を重ねたグリゴリエフなのだが、この本の中には彼の泣き言はほとんどない。淡々と仕事をこなし、そして様々な労苦にしても、終わってみればまるで学園祭がずっと続いていて本当に楽しかった、革命を起こすことができて幸せだった、という思いが伝わってくる。特に誰に肩入れすることもなく、公平な観点で見ていたのがわかるし、エゴイストでなかったことが、これだけ長い期間、バレエ・リュスを支え続けることができた理由だろう。ビザが下りずヴェネチアでのディアギレフの葬儀に参列できなかった彼が、8年後にようやく墓参りを果たすことができたくだりは感動的だ。

バレエ・リュス関係の書物の多くは伝記で、記録と取材を基に書かれているのだが、この本は、当事者の記録ということで非常に貴重である。ニジンスキーについても、多くの本では彼がバレエ・リュスを解雇された時の記述で終わっているのだが、実はその後も何回かアメリカのツアーに参加し、様々なトラブルを経て、ついには狂気に陥ってしまった様子が、第三者の目から冷静に(しかし同情的に)描かれている。

「年代記」とあるように、バレエ・リュスの20年間、1年ずつが時系列につづられている。どの一年も平穏なことは何もなく波乱万丈に過ぎていき、当事者は大変だっただろうが、読む立場の私たちにとっては一度読みだしたら止まらなくなるような面白さにあふれている。実際、読み終わった後で、もう一度最初から読み始めてしまったほどの面白さなのだ。

そしてバレエ・リュスを深く知り、愛情を持っている薄井憲二氏が監訳を手掛けたことで、この書物はより生き生きと躍動感があり、読みやすい一冊に仕上がった。

ディアギレフ・バレエ年代記 1909-1929ディアギレフ・バレエ年代記 1909-1929
セルゲイ グリゴリエフ Sergey Grigoriev

平凡社 2014-07-25
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2014/12/18

SWAN MAGAZINE 38 2014年冬号

SWAN MAGAZINE 38 2014年冬号が発行されました。

http://swanmagazine.heibonsha.co.jp/

冬らしい、ミッドナイトブルーと白が印象的な美しい表紙。

巻頭連載のパリ・オペラ座 エトワールに夢中!は
Vol.21 ジェレミー・ベランガールです。

最近はあまり踊っていない印象がありますが、来年3月の「白鳥の湖」ではロットバルト役を踊る予定。個性派の彼は古典よりは現代作品の印象が強く、フォーサイスと「パ・パーツ」のリハーサルに入るという時点でのインタビューでした。また、ミュージシャンとしての一端も見せ、ポートレートもバレエダンサーというよりはミュージシャンのようです。引退まで3年ですが、引退してもダンスは止めないそうです。

特集は新国立劇場バレエ団。

新制作「眠れる森の美女」で2014/2015シーズン開幕
新国立劇場バレエ研修所 発表公演
大原永子舞踏芸術監督インタビュー
2014/2015シーズン公演ラインナップ
[Review] CLOUD/CROWD ダンス公演ラインナップ

「眠れる森の美女」の写真がふんだんに使われており、主役だけでなくて、3幕のキャラクターロールのダンサーたちの舞台写真も載っているので、新しいダンサーたちの顔を覚えるのにもとても役に立ちます。

公演ラインアップや大原新芸術監督へのインタビューは、もっと突っ込んだ内容にした方が良かったと思いますが。(今回のラインアップも、「眠れる森の美女」も、ダンサーのクオリティは高いけど、疑問符がたくさん、と思う方が多いですから)

観に行くことができなかった「CLOUD/CROWD」のレビューも読めたのは良かったです。

〔連載] ハンブルク便り4
いつの間にか連載になっていたハンブルグ・バレエだよりは、「ジゼル」と「ヴェニスに死す」のレポート。ノイマイヤー版の「ジゼル」は一般的なコラーリ&ペロー版をベースにしつつも、ひねった設定や振付もあるようなので、大変興味深いです。日本に来ないうちに、ハンブルグ・バレエもだいぶ世代交代しているようで、「ジゼル」にも「ヴェニスに死す」にも、最近プリンシパルに昇進したばかりのアレクサンダー・トリシュが主演していました。アリーナ・コジョカルがジゼル役でゲスト出演しているのも話題でした。

ハンブルグ・バレエでは、ソリストとして、そして振付家としても活躍する大石裕香さんのほか、有井舞耀さん、石崎双葉さん、さらに今シーズンからは菅井円加さんと日本人ダンサーが増えてきました。その中で、今回は2007年に入団した有井さんのインタビューが掲載されています。「ジゼル」ではドゥ・ウィリの一人ズルマ役を踊っています。ノイマイヤーとの共同作業についても語ってくれていて、これもまた興味深いです。


日本人初のブノワ賞に輝き、先日はノーベル賞授賞式でも踊った木田真理子さんのインタビューもあります。大変な栄誉をつかむ前には、様々な試行錯誤があり、ブノワ賞受賞を招いた作品「ロミオとジュリエット」も初演キャストということでマッツ・エックと創り上げた役ですが、怪我をしたり、初日が近づいているのにジュリエットという役がわからないと苦しんだり、様々な苦悩があったそうです。

さらにもう一つ、デンマークのペーター・シャウフス・バレエのプリンシパル、高橋陽子さんのインタビューも面白かったです。往年のスターダンサーであるシャウフスは現在自らのカンパニーを率いており、ナタリア・オシポワとイワン・ワシーリエフをゲストに招いてアシュトン版「ロミオとジュリエット」を上演したり、シャウフスのオリジナル作品をロンドンのコロシアム劇場などで上演しています。彼の振付けたチャイコフスキー三大バレエは、イレク・ムハメドフをゲストに迎え、大胆な演出が賛否両論を呼びました。普通のバレエ団とは違った私設カンパニーならではのエピソードが読めます。

ハンガリー国立バレエに移籍したSHOKOこと中村祥子さんからの便りも。元気で活躍されている様子が伝わってきます。

そして「SWANドイツ編」は第二話。ノイマイヤーの「オテロ」のオーディションを真澄とレオンは受けますが、レオンは不合格、真澄はデスデモーナ役の代役に選ばれます。レオンは、どの役を踊っても彼にしか見えないというのが不合格の理由だったとのこと。そして、二人の間に亀裂が入ります。さて、レオンは、真澄は、そして「オテロ」はどうなるのでしょうか?

番外編である「SWAN 白鳥の祈り」愛蔵版(全二巻)も発売されました。この愛蔵版だけの、書下ろしエピソードも加えられているので、SWANファンは必読です。

SWAN MAGAZINE 38 2014年冬号SWAN MAGAZINE 38 2014年冬号
有吉京子ほか

平凡社 2014-12-17
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SWAN 白鳥の祈り 愛蔵版 1
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