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バレエの本

2017/11/30

12/1 NHK Eテレ らららクラシックで、「くるみ割り人形」特集

12月1日(金)、NHK Eテレ1 午後9時30分~ 午後10時00分までの「らららクラシック」は、

バレエまるわかりチャイコフスキーの“くるみ割り人形“です。

http://www4.nhk.or.jp/lalala/x/2017-12-01/31/13849/2133244/

宮本亜門も感激の傑作バレエ
(1)ロシアの至宝マリインスキー・バレエが描く少女の夢(2)バレエスタジオ潜入リポート(3)チャイコフスキーが取り入れた当時最新の楽器

クリスマスシーズンに世界各地で演じられるバレエ「くるみ割り人形」。その魅力を「夢」をキーワードに、ロシアのマリインスキー劇場バレエ団の素晴らしい映像でご紹介します。バレエの動きの意味を説き明かすのは、阿佐ヶ谷姉妹。「クラシック珍道中」で、バレエダンサーの技を体を張って徹底取材します。そして、チャイコフスキーが音楽で描いた「夢の世界」を、作曲家の池辺晋一郎が読み解きます。

【ゲスト】宮本亜門(演出家)

楽曲

「くるみ割り人形」
チャイコフスキー:作曲
(振付)ワシーリ・ワイノーネン、
マーシャ…(バレエダンサー)レナータ・シャキロワ、王子…(バレエダンサー)ダヴィド・ザレーエフ、(バレエ)マリインスキー劇場バレエ団、
(管弦楽)マリインスキー劇場管弦楽団、(指揮)ワレリー・ゲルギエフ
(1分50秒)
~マリインスキー劇場~

番組内で流れるマリインスキー・バレエの「くるみ割り人形」は、12月24日のNHK-BS プレミアムシアターで全編放映されます。
http://www4.nhk.or.jp/premium/


また、番組内で、スターダンサーズバレエ団に、阿佐ヶ谷姉妹が訪れてバレエを体験するところも登場します。



スターダンサーズ・バレエ団の「くるみ割り人形」

https://www.sdballet.com/performances/1712_thenutcracker/

12月 9日(土) 開演 14:00 / 開場 13:15 
クララ 渡辺恭子
王子 林田翔平

12月10日(日)① 開演 11:30 / 開場 10:45
クララ 西原友衣菜
王子 池田武志

12月10日(日)② 開演 16:00 / 開場 15:15
クララ 渡辺恭子
王子 林田翔平

(開演20分前より総監督・小山久美によるプレトークを行います)

テアトロ・ジーリオ・ショウワ
(小田急線新百合ヶ丘駅南口より徒歩4分)

演出・振付 鈴木 稔
舞台美術・衣裳 ディック・バード
音楽 P.I. チャイコフスキー
指揮 田中良和
管弦楽 テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ
コーラス ゆりがおか児童合唱団

2017/09/19

SWAN MAGAZINE 2017年秋号 Vol.49

SWAN MAGAZINE 2017年秋号 Vol.49が発売中です。次の号でいよいよ50号となるのですね。今回も充実した内容です。

http://swanmagazine.heibonsha.co.jp/

[巻頭カラー]パリ・オペラ座 エトワールに夢中!
3月の日本公演で見事にエトワールに昇進した、ユーゴ・マルシャンです。

入団当初は192cmという高い身長が仇となってなかなか配役されなかったこと。まだコリフェの時に「くるみ割り人形」のドロッセルマイヤー/王子役に抜擢されるけど、踊る相手や日程が次々と変わって大変だったこと。鮮やかな「マノン」デ・グリュー役でのデビュー…。膝が丈夫でプリエがしっかりしているので、大柄な体でも柔らかい着地ができるとのことです。オペラ座学校での卒業公演の『コッペリア』ではコール・ド・バレエで、主役を踊ったのは同期のジェルマン・ルーヴェと、マチュー・コンタでした。美しい舞台写真もたくさん掲載されています。

[特集] 来日60周年 ボリショイ・バレエ

6月のボリショイ・バレエの来日公演についての記事が充実しています。舞台写真はもとより、「ルグリ・ガラ」にも出演したオルガ・スミルノワとセミョーン・チュージンというボリショイの新しい顔の二人のインタビューが興味深い。卓越した技術で知られるチュージンをもってしても、ヌレエフ版の『白鳥の湖』は大変難しい作品とのことです。

また、7月に「バレエ・アステラス」やワークショップで来日したワガノワ・アカデミー校長のニコライ・ツィスカリーゼの話も面白いです。ワガノワ・アカデミーは、国の予算で無料で通学できる生徒が毎年3千人の志願者の中から、60人ほど入学し、それ以外に私費で通う学生(留学生など)が45名ほど。でも、私費学生でも将来性のない生徒には退学をしてもらうとのことです。ツィスカリーゼは、マリーナ・セミョノーワ、ピョートル・ペストフ、ガリーナ・ウラノワ、ニコライ・ファジェーチェフという4人の教師に学びましたが、中でも、日本好きだったというペストフの教えの内容が興味深かったです。「ジャンプの着地は桜の花が池に落ちるように」という表現をされていたとのこと。

[連載]
パリ・オペラ座バレエ学校の四季 入団&進級試験

土屋裕子さんによるこの連載では、入団試験や進級試験について詳細に紹介されていました。外部入団試験では二山治雄さんが4位となりましたが、実際、21日のシーズンオープニングのデフィレに二山さんが登場する予定になっていますので、短期契約団員となれたということですね。
オペラ座学校の進級試験については、ほとんどの学年で男女それぞれ1~2名が退学となっています。129人の生徒のうち外国人が22人、日系は6人だそうです。

ハンブルク便り13では、
ハンブルク・バレエの来日公演でも踊られる「ニジンスキー」のレポートと、菅井円加さんの「シンデレラ・ストーリー」主役デビューについてのレポートが掲載されています。5月25日、27日の「ニジンスキー」公演(リアブコ主演)は、収録されDVDとして発売されるそうです。また、ノイマイヤーの新作「アンナ・カレーニナ」のレポートも。こちらは、ボリショイ・バレエ、そしてナショナル・バレエ・オブ・カナダとの共同制作であり、3バレエ団で上演される作品となります。

世界の劇場から、こんにちは!
海外で活躍する日本人ダンサーを紹介するコーナー。今回は、2016年のヴァルナ国際バレエコンクールで銀賞を受賞した、 白井沙恵佳さん(カナダ ロイヤル・ウィニペグ・バレエ)のインタビュー。まだ入団2年目ですが、30人とあまり大きくないバレエ団のため、役をもらえる機会に恵まれているとのことです。

[連載 第13話]
「SWAN ─白鳥─ドイツ編 」有吉京子

いよいよ、ノイマイヤーの「オテロ」の幕が開き、オテロ役のレオン、デスデモーナ役の真澄がそれぞれの内面を掘り下げて役を深めていく過程が描かれます。二人の心理が細やかに、息詰まるように描写されて行きます。

プレゼントコーナーでは、ユーゴ・マルシャンのサイン入り「ラ・シルフィード」のプログラムが1名様に、映画「ポリーナ、私を踊る」の原作本、有吉京子さんの直筆サイン色紙、そして7月に来日したエヴァン・マッキーの特製カレンダーが3名の読者の方に当たるプレゼントがあります。なかなか手に入らない貴重なカレンダー、ぜひともご応募ください。

Evanbook1_3

SWAN MAGAZINE Vol.49: 2017年秋号SWAN MAGAZINE Vol.49: 2017年秋号
有吉京子ほか

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2017/09/17

「スカートはかなきゃダメですか?」名取寛人

現在来日公演中のトロカデロ・デ・モンテカルロ・バレエ団に、初の日本人ダンサーとして入団した名取寛人さんが、自らの半生を語る一冊が、「スカートはかなきゃダメですか?―ジャージで学校 」

スカートはかなきゃダメですか?―ジャージで学校 (世界をカエル―10代からの羅針盤)スカートはかなきゃダメですか?―ジャージで学校 (世界をカエル―10代からの羅針盤)
名取 寛人

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女性として生まれながら、中学生ごろから自分の性に違和感を覚えるようになり、やがて男性として生きようとする名取さん。体操選手として活躍しスポーツ推薦で高校に進学した名取さんは、高校卒業後、真田広之さんなどが所属していたJAC(ジャパン・アクション・クラブ)に通い、その後ショーダンサーとして活動。本格的にダンスを学ぼうと渡米し、29歳にしてバレエと出会う。

体操で培った身体能力、そして大変な努力はしたものの、名取さんはバレエをニューヨークで一年半学んだだけで、男性ばかりの団員で構成されたトロカデロ・デ・モンテカルロ・バレエ団のオーディションに合格して団員となり、7年間活躍する。女性であることを隠して入団した名取さんは、やがて女性であることがディレクターにわかってしまい、性適合手術を受けて身体も、戸籍上も男性となった。

自分の性に違和感を持っていたものの、女手ひとつで彼を育ててくれた母親など家族の理解とサポートに恵まれ、そしてクラスメイトや学校も理解があり、少しやんちゃではあるものの伸び伸びと育った名取さん。回り道をすることもあったけれども、努力を重ねて、男性ダンサーとして活躍をするという夢に向かって悩みながらもひたむきに進んでいった。年間150公演も行い世界中をツアーするトロカデロ・デ・モンテカルロ・バレエ(トロックス)で、生まれてはじめていじめを経験するけれども、そのことも自分の芸に集中するきっかけとなり、芸の肥やしとなった。

性適合手術も受けて、念願の男性となることもできたけれども、それでも本当に「男になった」わけではないという彼の言葉には重みがある。どんなに努力して、運に恵まれたとしても叶えられないことはある。そんな中で夢を追いかけること、自分らしく生きること、苦しい時にも物事のいい面を見ることでポジティブに生きていくということについて、この本は良い指針となると感じた。

この本を読むと、本当に名取さんという人は魅力的な人物であるというのが良く伝わってくる。中学、高校時代は人気者でよくモテたというのもわかるし、性別という大きな悩みを抱えながらも常に前向きで頑張る性格。この人柄が多くの幸運を引き寄せ、また素敵な出会いをもたらしてきたのだろう。やりたいことに向けてひたむきに努力してきた彼の生き方は、性に限らず悩める若い人(そして若くない人にも)に勇気を与えてくれる。率直で飾らない語り口、わかりやすい文章、とても読みやすい一冊だ。

トロカデロ・デ・モンテカルロ・バレエの内幕、そして日本のバレエ界の問題点についても触れてある部分があり、そういった意味でもとても面白い本。

名取さんは、2011年より、Hiroto’s showを立ち上げ、自己表現を模索する傍ら、舞台の演出、プロデュースを手がけ自らの新境地にチャレンジし続けている。バレエスタジオN ballet artsを主宰。今もなお、進化し続けているその姿には敬服するばかり。

名取寛人さんのブログ
https://hirotontr.wordpress.com/

告白を受け同級生ら全面的にバックアップ 性転換のバレエダンサー、地元鴻巣で公演へ 市民ダンサーと共演
http://www.saitama-np.co.jp/news/2017/09/13/09_.html

“男だけのバレエ団”日本人団員が語る「女性だった過去」
https://jisin.jp/serial/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84/social/24679

2017/08/01

セルゲイ・ポルーニン写真集『The Beginning of a Journey: Project Polunin』(ハービー・山口撮影)と写真展 

現在公開中のドキュメンタリー映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』、大ヒットしているようで、上映館も拡大しているとのことです。
http://www.uplink.co.jp/dancer/

バレエファンのみならず、多くの人を惹きつける普遍的な内容のこの映画、貧しい家庭に生まれた傑出した才能を持った青年が、その才能ゆえに背負う十字架、家族との葛藤、バレエに明け暮れたために普通の少年時代を送れなかったこと、そして孤独と重荷を描いています。セルゲイ・ポルーニンが踊る映像もふんだんに盛り込まれ、また幼い頃からの記録映像もたくさん登場して、心を打つドキュメンタリーとなっています。私もパンフレットに少し寄稿したということもあり、この作品のヒットがとても嬉しいです。配給のアップリンク、そしてパルコの宣伝も、上手くターゲットに響くもので、素晴らしい成果だと思いました。


さて、セルゲイ・ポルーニンは、自らのプロジェクト、「プロジェクト・ポルーニン」を立ち上げました。バレエという芸術がまだ敷居の高いイメージがあるがゆえ一般への広がりがないのでそれを打破すること、また常に怪我のリスクがありキャリアの短いダンサーたちを、様々な形で支援する組織とのことです。

そして、「プロジェクト・ポルーニン」という自らがプロデュースした公演も、今年の3月にロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で行いました。彼が大きくブレイクするきっかけとなったミュージック・ビデオ「Take Me to Church」を監督したデヴィッド・ラシャペルとのコラボレーションで、ナタリア・オシポワが共演していました。チケットはあっという間に売り切れましたが公演の内容については、ほとんどすべてのメディアで酷評されました。

その「プロジェクト・ポルーニン」の舞台裏とリハーサルを、ロックミュージシャンなどの撮影で知られる写真家のハービー・山口さんが撮影した写真集『The Beginning of a Journey: Project Polunin』が発売されました。
http://www.uplink.co.jp/dancer/



発売された時に、渋谷のギャラリーX BY PARCOでこの写真展が行われていたので、観に行ってきました。ハービー・山口さんもいらっしゃって話をすることもできました。バービー山口さんがダンサーを撮影するのは初めてだったとのことですが、彼独特の温かい視線で、真摯にリハーサルや打ち合わせに取り組むポルーニンをドラマティックに、心の奥底まで映し出すように捉え、また舞台リハーサルの様子は、美しい舞台照明、衣装そして肉体を、普通のバレエの舞台写真とは全く違った、グラマラスで陰影に富んだルックで写し出しています。

特にポルーニンやオシポワのファンではなくても、この写真集の写真には心をつかまれる方が多いのではないかと思います。バレエという一瞬で消えてしまう芸術の、その儚い瞬間の美がみごとに昇華されているように感じられました。

会場で流れていた、「プロジェクト・ポルーニン」リハーサル映像の予告編



セルゲイ・ポルーニン写真集
『The Beginning of a Journey: Project Polunin』 写真/ハービー・山口

2017年3月、ロンドンで上演されたセルゲイ・ポルーニンのオリジナルプロジェクトを、ハービー・山口が撮り下ろし。新たな旅の始まりです。

定価:3,500円(税別) パルコ出版/B5変型/上製/176頁
一般発売:7月22日(土)Amazon、全国書店ほか

ギャラリーXでの写真展は終了しましたが、代官山のT-SITEでも写真展が 8月9日(土)まで開催されています。
http://real.tsite.jp/daikanyama/event/2017/07/post-377.html

セルゲイ・ポルーニン 写真展
『ビギニング・オブ・ジャーニー』代官山

渋谷GALLERY X BY PARCOで開催された展示が代官山 北村写真機店に巡回します。

展覧会限定セット 8,000円(税抜)・写真集+2Lサイズ オリジナルプリント

会場:代官山 北村写真機店(代官山T-SITE GARDEN 4号棟)
会期:2017年7月28日(金)~8月09日(水)10:00~22:00
入場料:無料

セルゲイ・ポルーニン写真集 The Beginning of a Journey: Project Poluninセルゲイ・ポルーニン写真集 The Beginning of a Journey: Project Polunin
Sergei Polunin

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なお、「プロジェクト・ポルーニン」は今年の12月にロンドン・コロシアムでの公演が予定されています。8月2日にチケットは一般発売されますが、前回酷評されたとはいえ、今回もすぐに売り切れるものと思われます。
https://londoncoliseum.org/whats-on/project-polunin/

この公演の発表の際に、セルゲイ・ポルーニンはGuardian紙のインタビューを受けて、バレエはこのままでは死んでしまうこと、そしてダンサーを取り巻く厳しい状況について語っています。

https://www.theguardian.com/stage/2017/jul/29/sergei-polunin-ballet-must-get-rid-of-elitist-image

セルゲイ・ポルーニンというダンサーについては、賛否両論があり、特に英米のバレエ関連のジャーナリストは彼については厳しい見方をしている人が多いようです。批評や多くの人の感想を読む限り、確かに「プロジェクト・ポルーニン」の前回の公演のクオリティは高くなかったようです。また、最近のロイヤル・バレエでの『マルグリットとアルマン』ゲスト出演のキャンセル、そしてロイヤル・バレエにおける待遇などを今も批判していることや、一つのバレエ団に所属せずゲスト出演中心に活動していること、そしてハリウッド映画に出演するといった活動についても様々な意見があります。

バレエ界においては本当に様々な問題があり、それをはっきりと口に出して、状況を変えようと積極的に活動している彼の勇気は素晴らしいものだと思います。どうやったらもっと芸術家が尊重されるようになるのかは、日本にいる私たちも真剣に考えなければなりません。

この写真集に映し出されているポルーニンの姿は、間違いなく真摯な芸術家であると私は感じました。

2017/04/10

「日本バレエを変える ─コーイチ・クボの挑戦」

意欲的な作品を次々と上演し、今乗りに乗っているNBAバレエ団。ハロウィンの時期に上演して大きな話題を呼んだ『ドラキュラ』、美空ひばりの生涯をバレエ化した『HIBARI』(文化庁芸術祭新人賞を受賞)、そして昨年の『スターズ・アンド・ストライプス』では日本のバレエカンパニーでは初めてこのバランシンの作品を全編上演し、さらにダレル・グランド・ムールトリーと平山素子さんの新作を上演するというトリプルビルを成功に導きました。
バレエ団のパフォーマンスのレベルも年々上がっており、バレエ団全体が勢いに乗って、ポジティブな若いエネルギーを発散させているのを感じます。

そのNBAバレエ団を率いるのが、久保綋一さん。16歳の時にモスクワ国際バレエコンクールで銀賞を受賞(金賞なし)し、コロラド・バレエに入団。2010年までプリンシパルとして活躍し続けました。帰国後はNBAバレエ団のバレエ・マスターを経て2012年に芸術監督に就任しています。

この久保綋一さんの自伝的な著書が、「日本バレエを変える ─コーイチ・クボの挑戦」です。バレエ一家に育った彼が、子ども時代からバレエに熱中し、様々な師匠にバレエを学びます。彼とほぼ同世代に、岩田守弘さん、熊川哲也さん、小嶋直也さんといった錚々たる男性ダンサーたちがいて、切磋琢磨しながら技術を磨き、国際コンクールに挑戦していきます。165cmと小柄な久保さんは、日本やヨーロッパよりもアメリカで踊ったほうがいいというお父さん、久保栄一さんの後押しもありました。

旧ソビエト、ペレストロイカの真っ最中に、岩田守弘さんと共に挑んだモスクワ国際コンクール、アメリカのバレエ団への挑戦。コロラド・バレエでの日々。アメリカのダンスマガジン誌の表紙を飾ったりニューヨークタイムズに舞台写真が大きく載って絶賛されるほどの大活躍を見せます。小柄なため合っているパートナーを探すのが大変だったものの、シャロン・ウェナーという魅力的なバレリーナとパートナーシップを築き上げました。やんちゃ坊主だった久保さんが、次第に成長していくさまが様々なエピソードで語られています。

順調に見えたコロラド・バレエでの日々でしたが、前十字靱帯損傷という大けが、彼の恩人である芸術監督マーティン・フリードマンの解雇など様々な波風もありました。そしてコロラド・バレエを退団して帰国。そこで日本のバレエ界の現状になじめず、反発します。久保さんは、やがて、自分で日本のバレエ界を変えてやろうという使命感を感じるようになりました。

バレエ団は東京に集中して数が多いのに、劇場の数が少なくて取り合いをしなければならないという問題。アメリカでは専用のオペラハウスがあり、ダンサーたちにチケットノルマもなく、シーズン中にはリハーサルをしながら本公演を次々とこなして技術を磨くことができる。給料も年金も雇用保険も傷害保険もあり、労働組合もあって職業人として守られている、そういう環境を、久保さんは日本でも実現したいと思っています。また日本の、そして世界の振付家をどんどん起用して、海外のカンパニーのようにバレエを進化させて、日本のバレエを変え、国内外でツアーを行いたいと願っています。その情熱は、本の行間からも伝わってきます。

この本は、久保さんのみならず、様々な関係者の証言が載っています。久保さんの両親始め、コロラド・バレエの団員だった篠崎玲子さん、マーティン・フリードマン、シャロン・ウェナーなど。そのため、多面的に久保さんの足跡をたどることができ、具体的に彼の活躍ぶりや人物像を実感することができます。今は、日本で活躍する日本人ダンサーも増えましたが、久保さんの時代はそこまで多くはなく、またプリンシパルまで上り詰めた人もまれで、ダンスマガジン誌の表紙まで飾った日本人男性ダンサーは他にはいなかったかと思います。小柄というハンディをどのように克服して、「ジゼル」のアルブレヒトや「白鳥の湖」の王子など貴公子役までも踊ることができたのか、また人間としてどのように成熟していったのかも、多くの具体的なエピソードを通して伝わってきます。自分を飾ることなく、失敗なども含めて非常に率直な物言いで語られているので、思わず久保さんに親近感も覚えてしまいます。写真も多数。

まだNBAバレエ団を通しての、久保さんの日本のバレエを変えていくチャレンジは始まったばかりで、もう少しこのあたりの彼の具体的な構想を読みたかった気もします。が、海外にチャレンジしたい若いダンサーにとっては、非常に参考になる一冊であり、アメリカのバレエ団はどのような活動をしているのかもよくわかります。

また、この本の付録には、久保さんの踊る映像が多数収録されているDVDがあります。バランシンの「スターズ・アンド・ストライプス」のように、版権がおそらく非常に高価なものまできっちり権利がクリアされており、彼がどれほどすごいダンサーであったかを、それらの映像を通して観ることができます。なかなか日本では観ることができない作品も入っており、まさにお宝映像というべきでしょう。このDVDがついてこの値段というのはお得です。

久保さんが夢見ている、日本のバレエ界の改革が早く実現するように祈るとともに、NBAバレエ団のこれからの発展がとても楽しみです。まずは、5月20日、21日にクリストファー・ウィールドン振付『真夏の夜の夢』 と、アンソニー・チューダー振付『葉は色褪せて』というこれまた大変魅力的なダブルビルが予定されています。

http://www.nbaballet.org/performance/2017/midsummer_nights_dream/

『真夏の夜の夢』
『葉は色褪せて』

日   時: 2017年5月20日(土)
   開場12:15・開演13:00
   開場17:15・開演18:00
2017年5月21日(日)
   開場13:15・開演14:00
会   場: 新国立劇場 中劇場
チケット料金: S席 8,640円
A席 6,480円
B席 5,400円
学生席 3,240円

この本を出版している株式会社チャイコの編集の方のブログも大変面白いです。
http://nuekoballet.jugem.jp/?eid=138

日本バレエを変える─コーイチ・クボの挑戦日本バレエを変える─コーイチ・クボの挑戦
久保 綋一

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2017/03/16

SWAN MAGAZINE 2017年春号 Vol.47

SWAN MAGAZINE 2017年春号が発売になっています。

http://swanmagazine.heibonsha.co.jp/

毎回、この雑誌はパリ・オペラ座バレエ情報がとても充実しているのですが、今回は特に興味深い記事が多くて、来日公演を振り返ったり余韻に浸るのにもお勧めの号です。

冒頭は、「二人のプリンス、白鳥を語る」と題して、マチュー・ガニオ、そしてジェルマン・ルーヴェのインタビュー。

マチュー・ガニオも気が付けば首席エトワールとなり、ヌレエフ版の「白鳥の湖」を10年間踊り続けていることになります。ヌレエフ版は、他の「白鳥の湖」と違い、王子の心理面を深く掘り下げたバージョンなので、非常に難しいとのこと。また、昨年末の上演では、6回王子役を踊った後、ロットバルト役にも挑戦する予定だったものの、リハーサル中に怪我をしてしまって実際には舞台には立てませんでした。しかし、ロットバルト役をどのように作り上げて行ったかのプロセスについては興味深い話が読めます。ダンスール・ノーブル役で知られるマチューですが、今後はコンテンポラリー作品を踊る比重が高くなってくるそうです。

一方で、昨年末に王子役デビューをして、見事にエトワール昇進(それも飛び級)を果たした新星ジェルマン・ルーヴェ。本当に容姿の美しい、絵に描いたような麗しいプリンスです。エトワール昇進を告げられた時の気持ちなどを語ってくれました。非常に美しいポートレートも掲載されているので、ファンは必見です。

また、「白鳥の湖」特集として、昨年末の上演だけでなく、パリ・オペラ座での歴代の美しい舞台写真が掲載されています。イレール、ルテステュ、エルヴェ・モロー、ル=リッシュ、プラテルなど。


日本で上演された「白鳥の湖」としては、深川秀夫版の「白鳥の湖」と、東京小牧バレエ団の「白鳥の湖」のレビューも。
深川版「白鳥の湖」は、オデットとオディールを別のダンサーが踊り、二人が同時に舞台に立っていることもあるというユニークな演出。コール・ド・バレエの動きも独特で、ドラマティックな演出とのことで、機会があればぜひ観てみたいものです。
東京小牧バレエ団にゲスト出演した、ボストン・バレエの倉永美沙さんのインタビューも興味深い。身長156cmと小柄な彼女が、オデットの存在感を出すためにどのような工夫をしているのか、オデットとオディールの演じ分けなどについて語ってくれていて、これがまた読みごたえがあります。

さらに、オペラ座ファンにとっては懐かしいヤン・サイズ(元スジェ)の講習会レポート、スロベニア国立マリボール劇場の中島麻美さん(昨年のヴァルナ国際バレエコンクールで銅メダル受賞)のインタビュー、山本隆之さん、福岡雄大さん、福田圭吾さんが出演したKバレエスタジオ公演や、NBAバレエ団「スターズ&ストライプス」公演レビュー、がンブルグ・バレエ「大地の歌」のレビューなど、他ではなかなか読めないような記事があって、充実した号となっています。

連載「SWANドイツ編」(有吉京子さん)では、ノイマイヤー振付の「オテロ」に挑む真澄とレオンのエピソードが語られます。実在するバレエ団や振付家、作品が登場するという設定もまたとても面白いもので、この先の展開も楽しみですね。

SWAN MAGAZINE Vol.47
SWAN MAGAZINE Vol.47有吉京子ほか

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2016/12/16

世界が恋する10人のバレリーナ初のSTYLE BOOK 『Love Ballerina』

国内外で活躍する人気バレリーナ10人のSTYLE BOOK『Love Ballerina』(別冊家庭画報) が発売されました。

パリ・オペラ座バレエのオニール八菜さんや英国ロイヤル・バレエの高田茜さんなど、国内外で活躍するバレリーナ10人に密着したおしゃれでこだわり満載のスタイルBOOK。美しいビジュアルの撮りおろし写真に公演レポートやバレエ団での生活、メイクのHOW TOや食生活などの「知りたい!」トピックス、また、インタビューや対談企画など、盛りだくさんの内容です。

1ページ、「おすすめウェブサイト」の項目だけですが私も執筆しています。バレエが大好きな女性ファッション誌の編集者が編集したムックならではの斬新な切り口で、こんなことが知りたかった、という内容を網羅。今、輝いている10人のバレリーナの魅力がぎっしり詰まったとても素敵な1冊となっています。ぜひお買い求めいただければと思います。

相原舞さんとオニール八菜さんはニューヨーク、パリのお気に入りのお店、浅川紫織さんはバレエ教師として教える姿、飯島望未さんはファッショニスタぶり、石井久美子さんはマリインスキー・バレエの世界、日本舞踊を習っていたという小野絢子さんは気品あふれる着物姿で藤間蘭黄さんとの対談、川島麻実子さんは指揮者川瀬賢太郎酸との対談、倉永美沙さんは世界中を飛び回る様子、近藤亜香さんは同僚で婚約者であるチェンウ・グォや愛犬との生活、高田茜さんは先輩吉田都さんとの往復書簡、などそれぞれのダンサーごとに別の切り口での紹介がされているのも興味深いです。

また、今までクローズアップされていなかったそれぞれのダンサーのトリビアや意外な素顔も覗けたり、ファッションやメイクに対するこだわりが聞けたり。バレエ初心者が読んでも、写真やダンサーの美しさ、親しみやすい切り口でバレエ入門書としても最適です。ぜひシリーズ化してもらい、バレリーナ第2弾や男性編も読みたいな、って思います!


【Ballerina】
相原舞(ABT)
浅川紫織(Kバレエ カンパニー)
飯島望未(チューリッヒ・バレエ)
石井久美子(マリインスキー・バレエ)
オニール八菜(パリ・オペラ座バレエ)
小野絢子(新国立劇場バレエ団)
川島麻実子(東京バレエ団)
倉永美沙(ボストン・バレエ)
近藤亜香(オーストラリア・バレエ)
高田茜(英国ロイヤル・バレエ)

【Love Ballerina Column】
バレリーナのトウシューズをCHECK!
MY FAVORITE COSTUME
好きな役&いつか踊ってみたい役
SNSでわかるバレリーナなう
私のバイブル Ballet DVD
私の最愛コスメ for stage
BACK STAGE PHOTOS
me MOTTO is ×××

【Special】
近藤亜香さんが「カンタス航空」を愛する理由
英国ロイヤル・オペラ・ハウス 2016-17シネマシーズン
もっと知りたい!世界のバレエ団informathion
バレエに夢中♪になれるおすすめサイト
バレエ鑑賞初心者の疑問にお答えします
SHOP List


公式FacebookとInstagramでは、メイキングの写真も多数アップされています。

Love Ballerina ラブ・バレリーナ (別冊家庭画報)Love Ballerina ラブ・バレリーナ (別冊家庭画報)

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2016/12/05

吉田都「バレリーナ 踊り続ける理由」

50歳を迎えた今も、舞台に立つ回数こそ減ったものの、その軽やかさと確かな技術、豊かな音楽性と気品ある溢れる踊りで観客を魅了し続ける吉田都さん。その芸術性の高さと観る者を幸せにする踊りの美しさには、未だ比肩する者はいないほどです。

その吉田都さんの、新しい本が発売されました。

吉田都「バレリーナ 踊り続ける理由」

バレリーナを目指す人のみならず、若い人から都さんと同年代の女性まで、多くの人に勇気を、そしてしなやかに美しく生きる上でのヒントをたくさん与えてくれる本です。

都さんがトウシューズに憧れてバレエを始めた子供時代の時から、現在までの道のりを綴った一冊です。表紙のナチュラルな表情、本に掲載されているレオタードにチュチュボン姿も自然で飾り気のない笑顔がとても素敵です。

ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップを獲得してロイヤル・バレエスクールに留学するものの、体型などへのコンプレックス、言葉の問題などからホームシックに悩まされます。サドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエ(現バーミンガムロイヤル・バレエ)に入団してチャンスを迎えるものの怪我をして自己管理の大切さを知り、師であるピーター・ライトに表現の神髄を学びます。

”心が身体をどう動かしているのか”つまり内側の表現、その人ならではの表現の大切さ。今でも都さんは振付家やバレエ・ミストレスから指導を受ける時間を大切にして、人の心を動かす表現をつなげて行こうと努力しています。

プリンシパルとなり、さらに大きなバレエ団であるロイヤル・バレエに移籍してからは、公演に対して大きな責任を負うようになります。その中で、都さんはプレッシャーに負けず、評価に一喜一憂せず、他人と自分を比べないことで自分の心を鍛え、44歳でロイヤル・バレエを去るまで第一線で活躍し続けます。最大のライバルは、自分。自分の心と向き合い、マイナスの感情に負けないことの大切さも、都さんの経験談を聞くと実感として伝わってきます。

ジョナサン・コープ、イレク・ムハメドフ、フェデリコ・ボネッリなど一緒に踊ってきたパートナーたちとの話も興味深く、また、意外なことに、スヴェトラーナ・ザハロワについても、彼女を尊敬する気持ちについて語ってくれています。

結婚、K-Ballet Companyでの活動、ロイヤルを退団して拠点を日本に移したこと、そしてフリーランスのバレリーナとしての活動、様々な人生の転機がありました。ロイヤル・バレエ本拠地での最後の「シンデレラ」、そして日本でのロイヤル・バレエさよなら公演「ロミオとジュリエット」。人生での一つ一つの転換点を経てポジティブに人生を切り開いていきます。最近ではハンガリー国立バレエで、ピーター・ライト振付の「眠れる森の美女」の振付指導も担当しました。

膝の状態が悪くなって踊ることを断念しようと思ったことがあったものの、優れたトレーナーとの出会いで回復し、今も身体は進化し続けているそうです。堀内元さんとの「Ballet for the Future」で現代作品を踊る機会を得て、新境地を開きました。今も現役のバレリーナとして、日々のクラスやトレーニングで身体を整え、しっかりと食事をしてヘルシーな生活を送っています。

終章では、エレガントに生きるためのヒント、そして芸術が人生を生きる上でどれほど大切なものなのかが語られています。吉田都さんのようなバレリーナになれる人はほとんどいませんが、都さんの生き方は、多くの女性にとってのお手本でもあり、多くの学びを与えてくれます。このような素敵な人柄と、ひたむきな努力から、あのような感動的な踊りが生み出され、そしていつまでたってもチャーミングで内側から輝くような美しさが生まれるのだと実感されます。

文体もとても読みやすく、挿入された写真も都さん自身が撮影したものもあったりで、普段の生活の一端もうかがえます。たくさんの人に手に取ってほしい一冊です。

バレリーナ 踊り続ける理由バレリーナ 踊り続ける理由
吉田 都

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そういえば、グランプリ・ファイナル進出を決めたフィギュアスケートの宮原知子さんは、吉田都さんにバレエの指導を受けて表現力を向上させたようですね。
http://www.hochi.co.jp/sports/winter/20161127-OHT1T50053.html

2016/02/17

ジョージ朝倉「ダンス・ダンス・ダンスール」第一巻

週刊ビッグコミック・スピリッツに、バレエ・コミック「ダンス・ダンス・ダンスール」(ジョージ朝倉)が連載中です。そしてコミックの第一巻が発売されました。

http://spi-net.jp/weekly/comic057.html

村尾潤平、6歳。姉の発表会に出演したゲストダンサーの影響でバレエに魅了された彼は、周囲に揶揄されながらも、自らの衝動に付き従う。踊っている時だけ、少年の中で、星が爆ぜる――。 そんな彼を襲った、父の突然の訃報。「男らしくならねば」――悲壮な決意のもと、潤平はその道を諦めることに。そして数年後…中二になった潤平に、転校生の美少女・五代 都が近づく。「一緒にバレエやろうよ!」。彼の中の衝動が今、再び星を散らし爆発する!!

こちらで第一話の試し読みをすることができます。
http://spi.tameshiyo.me/DANCE01SPI

この試し読みが面白かったので、一巻を買ってみました。

映画化された『恋文日和』『ピース オブ ケイク』で知られるジョージ朝倉は、女性コミック中心の漫画家ですが、今回は、王道の少年コミック。普通の男の子が、バレエを習うのは恥ずかしい、男らしくないのでは、と悩みつつも身体の中の「踊りたい」という強い衝動、そして転校生の都(このネーミングが良いですよね)への淡い恋心から、バレエダンサーとしては遅い中学2年で本格的にバレエを始めることになります。謎のひきこもり天才バレエ少年ルオウなど、気になるキャラクターも登場します。

バレエの基本が全くできていないけれども、踊りたいという強い気持ちに突き動かされた潤平のダンスが、ダイナミックで生き生きとした作画で表現されています。本格的にプロを目指すには遅い年齢でのスタートで、果たして彼はどこまで行けるのか。これから先が楽しみです。

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2015/07/03

夢へ翔けて ~戦争孤児から世界的バレリーナへ~ ミケーラ・デプリンス/エレーン・デプリンス著

世界最大のバレエコンクール、YAGP(ユースアメリカグランプリ)の出場者を追ったドキュメンタリー映画「ファースト・ポジション―夢に向かって踊れ!」に出演して一躍有名になった、ミケーラ・デプリンス。シエラレオネの戦争孤児だった彼女がアメリカ人の養父母に引き取られ、バレリーナになるという夢をかなえました。その彼女の自伝「夢へ翔けて ~戦争孤児から世界的バレリーナへ~」が発売され、アメリカでは大きな話題となり、映画化も決定しています。その邦訳がこのたび発売されました。

この本がアメリカで発売された時には、ミケーラはまだ18歳で、オランダ国立バレエに入団したばかり。その若さで自伝を発売するのって早すぎるのでは、とその時には思いました。でも、この本はできるだけ早く発売され、できるだけ多くの若い人たちに読まれるべきなのではないかと読み終わった後に感じました。


ミケーラがシエラレオネの内戦で両親を失って孤児となってしまったということは、「ファースト・ポジション」の中でも語られていますが、シエラレオネでの内戦下の暮らしがあまりにも過酷だったことに驚きました。一夫多妻制で女性の扱いがひどく、女に教育なんてもってのほかという中で、ミケーラの両親は賢い彼女に早くから勉強を教えていました。

しかしデビルと呼ばれる反政府勢力(RUF)に父は殺され、母は飢えで亡くなってしまいます。おじは彼女を孤児院に入れますが、白斑がある彼女は悪魔の子と言われ、孤児院では疎んじられいじめられます。孤児院の先生もデビルに殺され、シエラレオネから脱出するときも、大勢の子供たちが殺されている姿を見るなど試練が続きますが、ミケーラと親友のミアは、アメリカ人の養父母に引き取られ、アメリカへ。

ミケーラとミアは、養父母の深い愛情に包まれて、アメリカでは幸福な生活を送ります。養父母はアフリカから6人の子供たちを養子として育てているだけでなく、3人の息子たちに加えて2人の血友病の男の子たちを養子に迎えており、その血友病の子たちはAIDSで亡くなってしまっていました。

孤児院にいたときに、風で飛ばされてきた、アメリカ人が持ち込んだバレエ雑誌の表紙がミケーラの運命を変えます。ポワントを履き、チュチュを着た美しいバレリーナが表紙を飾っていたのでした。いつか、私もバレリーナになりたいという夢がミケーラを支えます。

養父母はミケーラをバレエ教室に連れて行ってくれて、やがて彼女は頭角を現します。アメリカでも肌の色が黒いということで差別されたり、バレエの世界においても、黒人のバレリーナはほとんどいないという現実に直面します。バレエは白人のためのものであるという根強い偏見は今でもあります。それでも養母に励まされ、同じくバレエを習っていたミアと切磋琢磨して頑張るミケーラ。養母も、ミケーラのバレエ教育を全面的にサポートし、少ない予算の中で衣装を手作りし工夫もして彼女を支えます。

サマースクールに参加したダンス・シアター・オブ・ハーレムでは、初めてアフリカ系アメリカ人としてNYCBのプリンシパルとなったアーサー・ミッチェルに出会います。10歳でYAGPに初めて出場し、ABTのサマースクールへの参加、さらにYAGPへの出場を重ね、「ファースト・ポジション―夢に向かって踊れ!」にも出演。「ファースト・ポジション」に出演したことで一躍注目を浴びてマスコミにも登場するようになります。南アフリカでの公演に出演し、10数年ぶりにアフリカの地を踏みます。アフリカ、特にシエラレオネの女性や子供たちのために何ができるだろう、と思うようになります。そして、オランダ国立バレエに入団。クラシックバレエのバレエ団の団員になるという夢が実現しました。米ハフィントン・ポスト2012年「18歳以下の18人―年間最優秀ティーン」の一人にも選ばれました。

国連のボランティアとして、戦争に翻弄される子供たちの様子を伝える機会を与えられたこと、そして世界女性サミットに参加して自分の戦争に翻弄された経験を語ることができたことは、ミケーラにとって大きな出来事でした。戦争を逃れ、アメリカに渡ってバレリーナになることができた彼女は幸運でした。ミケーラに、養母は、恵まれている人間は分かち合う責任があると言います。養父母は、だからこそ、アフリカの孤児たちを引き取って愛情深く育てていったわけです。ミケーラは何を分かち合うべきなのか、自分自答した時に出てきた答えは、「希望」でした。困難な中を生きていく子供たちに希望を分け与えるために、彼女はこの若さで自伝を書いたわけです。

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戦争、両親の死と大変な苦難を生き抜き、アメリカに渡っても差別されるという現実に直面しながら、努力を重ねて夢の扉を開いたミケーラ。だけど、養母エレーンと共に書いたこの自伝では、等身大の彼女の姿が、素直な言葉で生き生きと綴られています。決して成功に酔うことなく、様々なトラウマや恐怖、姉妹となったミアとの友情と葛藤など、若い女の子ならではの視点で語られているので、とても好感度が高いのです。翻訳もとても読みやすく、ルビも振ってあって小学校高学年くらいでもスルスル読めてしまうし、ドラマティックで感動的で、面白い内容です。

また、日本人の留学生も多い名門バレエスクール、ロックスクールでのバレエ教育のこと、予選を経てYAGPのコンクールに参加する過程、衣装や振付の準備、芸術性をどうやって獲得していくか、バレエ団の就職活動など、バレリーナを目指す子にとっても参考となる話が出てきて、これもとても興味深いです。

子供にとって(大人にとっても)一番大切なことは、希望。生きるということは、困難な現実に直面し、悲しいことや苦しいことに出会い、思うようにいかないことも多いけど、でも頑張ればきっとそれは乗り越えられて、夢に近づくことができる。そして努力する姿を見て支えてくれる人たちが、必ずどこかにはいる。そのことをこの本は伝えてくれます。

これはアメリカ的な考え方なのかもしれませんし、キリスト教の影響も大きいと思うのですが、ミケーラの養母が実践している「恵まれている人間は分かち合う責任がある」という思想は素晴らしいことだと思いました。私も、決してものすごく恵まれているわけではありませんが、飢えてはいないし教育は受けることができたわけなので、やはり自分の持っているものを人々に分け与えることができればいいなと感じました。

この自伝は映画化も決定しているということで、こちらも大変楽しみです。東京小牧バレエ団三代目団長 菊池宗氏の推薦文つき。

夢へ翔けて: 戦争孤児から世界的バレリーナへ (ポプラせかいの文学)夢へ翔けて: 戦争孤児から世界的バレリーナへ (ポプラせかいの文学)
ミケーラ デプリンス エレーン デプリンス Michaela DePrince

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