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映画

2017/10/12

「ミスター・ガガ 心と身体を解き放つダンス」

イスラエルを代表するコンテンポラリーダンスカンパニーのバットシェバ舞踊団

「ミスター・ガガ 心と身体を解き放つダンス」は1990年から芸術監督・振付家を務めるオハッド・ナハリン(1952〜)に8年間に渡って長期密着取材したドキュメンタリー映画。その人生を振り返る貴重な資料映像と、代表的な公演の記録映像を数多く使用したダンスシーンとで構成されます。

また、「GAGA(ガガ)」と呼ばれる独自の身体能力開発メソッドを考案し、現代人の身体感覚や直感的な感性を目覚めさせてきたその世界に肉迫。本作を通して「ミスター・ガガ」と呼ばれるナハリンの創作の秘密が明らかになります。

http://mrgaga-movie.com/

作品のクラウドファンディングに参加したので、オンラインで視聴。オハッド・ナハリンの振付、そしてバットシェバ舞踊団のダンス、ダンスの無限の可能性と面白さを教えてくれる鮮烈な作品ばかりで、できる限りその作品は見続けていた。今月末にも、バットシェバ舞踊団の来日公演が予定されている。

この映画に登場するナハリンの半生は実に波乱万丈なもの。イスラエルのキブツに生まれ、徴兵されて第四次中東戦争に従軍する。遅い年齢でダンスを本格的に始めるものの、バットシェバ舞踊団に入団。そこに教えに来たマーサ・グラハムの目に留まり、ニューヨークのマーサ・グラハム舞踊団に入るものの、うまくいかず、ジュリアード音楽院とスクール・オブ・アメリカン・バレエ(SAB)でバレエを学び、彼のハンサムな容姿に惹かれたベジャールに見いだされて20世紀バレエ団に入団する。しかしここも合わずアルヴィン・エイリー舞踊団へ。ここで活動した後、自らのカンパニーを設立、そしてイスラエルに戻ってバットシェバの芸術監督に就任した。

ナハリンの半生が記録映像で、本人の語りによって伝えられるとともに、彼の代表的な作品の映像が挿入される。どれもダンサーたちの強靭な踊り、パワフルでメッセージ性のある振付、実にユニークで鮮烈な舞台づくりが魅力的に捉えられていて、ますます彼の作品を観たくなる。徴兵されての従軍での過酷な経験、ニューヨークでの苦労、愛する妻梶原まりの死、イスラエル建国50周年セレモニーでの出来事、それらを生き抜いた彼の強さとどこか漂ってくる優しさが印象的だ。巨匠なのにあくまでも穏やかで、すべての人々がダンスを楽しめて心を開放する独特のGAGAメソッドを指導する姿は実に楽しそう。

この作品を観て感じるのは、ダンスというのはすべての人々にとって、生きる力になりうるということ。ナハリンの幼少時のエピソードで、彼には自閉症の双子の兄弟がいて、彼とコミュニケーションをするために祖母が踊って見せたことに触発されて自分もダンスを始めた、と語っているのだが、実はこのエピソードは彼の創作によるものであることが明かされる。(こういう、どこか人を食ったところがあるところもナハリンらしい) だけど、ダンスにはそういった力があるということがこの映画を通じて伝わってくる。

イスラエル出身のハリウッド女優、ナタリー・ポートマンもイスラエルに戻った時にGAGAメソッドに出会って魅せられたと劇中で語っている。GAGAメソッドは、ダンサーだけでなく様々な年齢の一般の人々にも、自分の身体の無限の可能性と出会い、身体と心を開放させてくれるものだ。以前の来日公演で、実際にナハリンが指導するGAGAのクラスを受講したことがあったけれども、目から鱗が落ちるような新鮮でワクワクするような経験だった。

65歳になったナハリンは、先日、バットシェバ舞踊団の芸術監督を退くことを発表した。しかしながら、引き続きカンパニー専属振付家としての活動、そしてGAGAの普及活動は続けるという。来日公演「ラスト・ワーク」が楽しみでたまらない。そしてその前には、映画館の大きな画面で再び「ミスター・ガガ」を観て、ナハリンの作り出すダンスを味わいたいと思う。


監督:トメル・ハイマン/出演:オハッド・ナハリン、ナタリー・ポートマン、マーサ・グラハム、モーリス・ベジャール、マリ・カジワラ
2015年/イスラエル/100分/配給:アクシー株式会社、プレイタイム

2017年10月14日(土)ロードショー
シアター・イメージフォーラム他
http://www.imageforum.co.jp/theatre/movies/980/


バットシェバ舞踊団/オハッド・ナハリン
『Last Workーラスト・ワーク』

彩の国さいたま芸術劇場大ホール
2017年10月28日(土)、29日(日)各15時開演

世界はどこに向かっているのか。
わたしたちに今できることは何か―
オハッド・ナハリンのクールな知性と豊穣なイマジネーションが
バットシェバ舞踊団の強靭なダンサーたちとつくりあげた
現代へのひそやかなメッセージ。

http://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/4012

2017/08/03

ディズニーの実写版『くるみ割り人形』、ラッセ・ハルストレム監督、キーラ・ナイトレイ、ミスティ・コープランド、セルゲイ・ポルーニンら出演

ディズニーが実写版映画『くるみ割り人形』を製作するというニュースは以前に発表されていましたが、キャスト、公開日程が明らかになっています。

http://www.insidethemagic.net/2017/07/d23-expo-2017-nutcracker-four-realms-release-date-announced-walt-disney-studios/

http://www.slashfilm.com/the-nutcracker-and-the-four-realms-details-revealed/

http://www.imdb.com/title/tt5523010/

監督はラッセ・ハルストレム(『ギルバート・グレイプ』『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』『砂漠でサーモン・フィッシング』)。
出演は、金平糖の精にキーラ・ナイトレイ、ドロッセルマイヤーにモーガン・フリーマン、ジンジャーおばさんにヘレン・ミレン、クララにマッケンジー・フォイと、とても豪華です。

そしてミスティ・コープランドがバレリーナ役、役名は書いていませんがセルゲイ・ポルーニンも出演者の中に名前があります(踊る役なので金平糖の王子ではないかと)。

CGをふんだんに使ったプロダクションで、ねずみの王様は1000匹以上のねずみで表現されるのだけど、とても驚異的でクールな動きをさせるために、リル・バックのダンスの動きを捉えて表現させたとのことです。

題名は‘The Nutcracker and the Four Realms’ で、2018年11月2日公開予定です。

2017/07/15

『パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち』エトワールインタビューコメント

パリ・オペラ座バレエが、その輝かしい伝統を継承していく姿を舞台裏から捉えたドキュメンタリー映画『パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち』が7/22(土)よりいよいよ公開となります。

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http://backstage-movie.jp/

古今東西、世界中のダンサーが憧れ、バレエファンに愛され続けているバレエの殿堂“パリ・オペラ座”。
創立から356年という長きに渡り、なぜ“パリ・オペラ座”が最高峰であり続けてきたのか? それはダンサー個人の素質や才能だけでなく、“オペラ座”の伝統を伝えようとする指導者たちの情熱だった!

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本編内に登場するパリ・オペラ座バレエ団、最高位であるエトワールを務める人気ダンサー、アマンディーヌ・アルビッソンとジョシュア・オファルトから、同バレエ団で活躍する気鋭の日本人ダンサー、オニール八菜について、そしてバレエを学ぶ子どもたちへの温かい応援メッセージが届いています。


■アマンディーヌ・アルビッソン(エトワール) 

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1989年生まれ。1999年にパリ・オペラ座学校に入学し、2006年にパリ・オペラ座バレエ団に入団。2014年、25歳の若さでエトワールに任命される。伸びやかな長身を生かして「白鳥の湖」オデット/オディール役など古典作品から、ミルピエ振り付け「ダフニスとクロエ」など現代作品も得意とし、幅広いレパートリーを持つ。

Q:本作内「ラ・バヤデール」で共演したオニール八菜さんについては?

彼女については良いことしか語れません。優しくて心が広く、気持ちがシンプルで潔い人です。おそらくこれから素晴らしいキャリアを歩む、大きな可能性に満ちていると思います。

Q:あなたが考えるパリ・オペラ座の伝統と魅力とは?

クラシック・バレエや現代的なヌレエフの作品などの演目そのものを受け継いでいくこと、そしてダンサーたちの実力も伝統だと思います。私たちには古典も現代作品も、同じようにたやすく踊らなければならない使命があります。

オペラ座は仕事場として世界一美しい場所です。私はオフィスと呼んでいますが(笑)毎朝出勤する時に見上げて、なんて私は恵まれているんだろうと思います。


Q:オペラ座に憧れるバレエを学ぶ子どもたちに伝えたいことは何でしょうか。

とにかく踊ることを、情熱をもって思い切り楽しんでほしいです。ただ、バレエはすごくハードです。毎日休むことなく努力するという覚悟が必要です。ただ、それを続けて形にすることができたときには、信じられないような感覚を舞台で味わうことができるので、ぜひそのことを知ってほしいです。

■ジョシュア・オファルト(エトワール)

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1998年、パリ・オペラ座学校に入学。2002年に18歳で同バレエ団に入団し、スジェ時代から王子役など主役を踊る。2012年、エトワールに任命。自身のダンスウェアブランド「Hoffalt」のデザインを手がけ、世界中のダンサーから愛用されている。

Q:エトワールとしての責任感と誇りとは?

エトワールであることは、自分に自信を与えてくれることもありますが、役によっては、責任の重みを感じ過ぎて負担になってしまうこともあります。宝石店のショーウィンドーに飾ってある旬の宝石がエトワールだと感じていて、自分はパリ・オペラ座のそれだという意識でいつも踊っています。

Q:パリ・オペラ座を目指す子どもたちに伝えたいメッセージは?

可能性というのはどこまでもあるものです。“ここまでしかできない”とは決して思わないでほしい。僕自身、裕福でない家庭に生まれ、まさかパリ・オペラ座バレエ団の一員として世界中で踊る日が来るとは思っていませんでした。何でもできるんだよ、と伝えたいです。ダンスに限らず、情熱をもって打ち込めるものを見つけてほしいと思います。

*******
こちら2名のエトワールのインタビューについては、今年3月のパリ・オペラ座バレエ来日公演の際に、私が取材をさせていただきました。より詳しいインタビューについては、劇場用パンフレットに掲載されていますので、ご覧いただければ幸いです。劇場用パンフレットでは、他に演目紹介、出演者紹介も書かせていただいています。

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監督:マレーネ・イヨネスコ 『ロパートキナ 孤高の白鳥』

出演:マチュー・ガニオ/アニエス・ルテステュ/ウリヤーナ・ロパートキナ/オニール八菜/バンジャマン・ペッシュ/ウィリアム・フォーサイス

2016/フランス/86分/原題:BACKSTAGE/字幕翻訳:古田由起子/字幕監修:岡見さえ

配給:ショウゲート/協力:(公財)日本舞台芸術振興会 ©Delange Production 2016

公式サイト:backstage-movie.jp

7/22(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー


2017/06/27

「ポリーナ、私を踊る」フランス映画祭2017

バスティアン・ヴィヴェスのバンドデシネ(グラフィックノベル)を原作にした映画「Polina, danser sa vie」は、「ポリーナ、私を踊る」という邦題で、今年10月28日より劇場公開されることが決定しています。
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2017/04/polina-danser-s.html

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かねてから注目していたこの作品、フランス映画祭2017で上映されるというので観に行ってきました。共同監督のアンジュラン・プレルジョカージュとヴァレリー・ミュラーもゲストとして来日していました。

http://unifrance.jp/festival/2017/films/polina-danser-sa-vie

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ボリショイ・バレエ団のバレリーナを目指すロシア人の女の子ポリーナは、厳格な恩師ボジンスキーのもとで幼少の頃から鍛えられ、将来有望なバレリーナへと成長していく。かの有名なボリショイ・バレエ団への入団を目前にしたある日、コンテンポラリーダンスと出会い、全てを投げうってフランスのコンテンポラリーダンスカンパニー行きを決める。新天地で新たに挑戦するなか、練習中に足に怪我を負い彼女が描く夢が狂い始めていく。ダンスを通して喜びや悲しみ、成功と挫折を味わい成長していく少女。彼女が見つけた自分らしい生き方とは…。

原作は、BD書店賞とACBD批評賞を受賞しているバスティアン・ヴィヴェスのグラフィックノベル。ポリーナ役には本作で映画初出演となるアナスタシア・シェフツォワ、コンテンポラリーダンスカンパニーの振付家の役にジュリエット・ビノシュ、さらにパリ・オペラ座エトワールのジェレミー・ベランガールらが出演。


ポリーナ役のアナスタシア・シェフツォワはワガノワ・アカデミーを卒業後、マリインスキー・バレエの研修生となった現役バレリーナ。途中で彼女が入団するコンテンポラリーダンスのカンパニーの振付家役を演じたジュリエット・ビノシュはもちろんスター女優だけど、アクラム・カーンと「in-i」というダンス作品で共演しているということもあって、プロのダンサーと見間違うほどの表現力がある。また、アントワープでポリーナが出会う振付家/ダンサーのカールを演じるのは、パリ・オペラ座のエトワール、ジェレミー・ベランガール。さらに、ポリーナがボリショイ・バレエ入団を捨ててコンテンポラリーダンスを目指そうと思うきっかけ、プレルジョカージュ振付の「白雪姫」の舞台で踊るのは、バレエ・プレルジョカージュの津川友利江さん。

アフタートークでもプレルジョカージュが言っていましたが、この作品においては吹き替えは一切使わず、すべて本物のダンスで構成されているとのことで、ダンスシーンはそれぞれリアルで見事だし、映像としても非常に美しく撮られています。世界有数の振付家であるプレルジョカージュが共同監督をしているだけのことはあります。バレエ学校での厳しいクラス、雪の中でポリーナが踊るダンス、ジュリエット・ビノシュのソロ、アントワープのダンサーが見せる即興のダンス、そしてラストシーン、ポリーナとベランガール演じるカールが踊るパ・ド・ドゥでは、幻想的な演出も美しい。ダンスを扱う映画では、”本物のダンス”というのはとても大切な要素だと思います。

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原作に比較的忠実に作っているものの、いくつかの変更点があります。原作ではあまり多く描かれていない、ポリーナの両親とのエピソードが加えられていること、そしてエクサンプロヴァンスのダンスカンパニーの芸術監督が女性であること、そしてポリーナが最終的に目指すのはコンテンポラリーダンスのダンサーではなく、振付家であること。でも、しっかりと原作のスピリットは描かれていると思います。

ロシアの貧しい家庭で育ったポリーナが、本人の希望というよりは両親の「娘をボリショイのプリマ・バレリーナにする」という期待を背負ってバレエ学校に入り、そして両親はそのために大きな犠牲を払うものの、彼女自身が途中で目標を見失って挫折を経験するというストーリーは、ドキュメンタリー「ダンサー セルゲイ・ポルーニン」を思わせるものがあります。ポリーナがボリショイに入団しないという決心を聞いた時の母の取り乱し方は強烈でした。一方で、無一文でアントワープにいるポリーナが、父からの電話にすべてうまくいっている、と嘘をつくシーンも胸を締め付けます。

バレエ学校に入ったばかりのころは決して際立った生徒ではなく、いつもおびえたような様子を見せていたポリーナ。やがて頭角を現すものの、ものすごくバレエに燃えていたわけではなかった彼女が初めて惹かれたのが、コンテンポラリー・ダンスです。しかしそこで怪我や失恋といった挫折を経験し、アントワープへ。そこでも仕事が見つからずお金も底をつき、クラブでアルバイトをしながら荒んだ生活をしていた彼女が、今度はダンスを創造していくことに喜びを見出して目の輝きを取り戻し、自分らしい生き方を見つけていくという再生の物語は、心を揺さぶるものがあります。ボリショイ・バレエ学校で彼女を指導していた厳格な教師ポジンスキーの姿が最後に一瞬登場するというのも、原作を上手くアレンジしていると感じました。

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ヒロイン、ポリーナを演じたアナスタシア・シェフツォワは、ワガノワを卒業したダンサーとしての実力もさることながら、吸い込まれそうな大きな瞳と透明感が魅力的。フランス、モスクワ、サンクトペテルブルグでのオーディションで500人の中から選ばれたという。映画の中ではポリーナはどちらかといえば寡黙であまり自分のことを話しませんが、「人が振付けた作品をそのまま踊るのは嫌」という台詞には説得力がありました。アントワープで、すべてを失い、寝る場所すらなくしてしまった彼女が街をさまよう姿の中にも、強い意志が感じられ、モスクワでの弱弱しかった彼女が確実に成長して自由である姿を見ることができました。

出演者の多くは、半年間のダンストレーニングを経たとのことですが、特にジュリエット・ビノシュのダンスの見事さには驚かされました。しっかりとしたダンサーの肉体をもっていて、振付家、ダンサーとしての表現力を備えたダンスです。ポリーナには厳しく接するものの、ポリーナが将来目指すべき道のロールモデルとしての役割を果たしていました。トークでプレルジョカージュは、ピナ・バウシュなどの女性振付家へのオマージュを捧げるとともに、ダンス界にはもっと女性振付家が活躍してほしいという願いを込めて、ビノシュをキャスティングし、ポリーナも振付家を目指す設定にさせたと語っていました。

そしてもちろん、アントワープで登場するジェレミー・ベランガールは、パリ・オペラ座のエトワールでありながら異色のキャリアを歩み、オペラ座引退公演でも、自らの即興作品を踊ったという才人。一般の人達に即興でダンスを踊ることを教える振付家/ダンサーであるという設定がベランガール自身と重なり合うところがあり、またダンサーとしての魅力も大きく発揮されていて、二人が踊るシーンでもリードをしてます。彼の出会いを通してポリーナが再生していくという説得力がありました。

雪に包まれたロシア、華麗なるボリショイ劇場、衣裳部屋でのラブシーン、南仏エクサンプロヴァンスの自然、アントワープの港の夕焼け、ロシアでの少女時代を想起させるラストの幻想的なダンスシーンと映像も美しい。一人の少女の成長物語として、ダンスへの愛を語る作品として、心に残る一本でした

映画『ポリーナ、私を踊る』公式
@polina__jp

https://twitter.com/polina__jp

監督:アンジュラン・プレルジョカージュ、ヴァレリー・ミュラー
出演:アナスタシア・シェフツォワ、ニールス・シュナイダー、ジェレミー・ベランガール、ジュリエット・ビノシュほか

2016年/フランス/フランス語、ロシア語/108分/DCP/2.35/5.1ch
配給:ポニーキャニオン

10月28日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次公開

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バスティアン・ヴィヴェス 原正人

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2017/06/23

Bunkamuraル・シネマのダンス関連映画ラインナップ

Bunkamuraル・シネマの今年下半期のラインナップが発表されています。

http://www.bunkamura.co.jp/cinema/

そして今年は特にダンス関係の映画の上映が多いんですよね。

上映中~6月30日まで

「ザ・ダンサー」
世界を熱狂させた天才ダンサー ロイ・フラーとイサドラ・ダンカン、ふたりの情熱がぶつかり合う、夢と愛の行方は──?


7月15日(土)より
ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣
19歳で英ロイヤル・バレエ団の史上最年少プリンシパルとなるも、人気のピークで電撃退団。バレエ界きっての異端児の知られざる素顔に迫ったドキュメンタリー。


7月22日(土)より
パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち
世界最古にして最高峰のバレエ団、パリ・オペラ座。356年の夢と伝統はどうやって守られてきたのか?指導者たちがトップダンサーへと引き継ぐ豊かなインスピレーションと秘めたる想いが今、明かされる!


8/12(土)~9/1(金)
※各作品の詳しい上映スケジュールは7月下旬発表予定
ボリショイ・バレエinシネマ Season2016-2017
【上映作品】
①くるみ割り人形
②眠れる森の美女
③白鳥の湖
④明るい小川
⑤現代の英雄
⑥コンテンポラリー・イブニング
⑦ゴールデンエイジ


8/19(土)より
パッション・フランメンコ
声よ、届け!
パコ・デ・ルシア、アントニオ・ガデス、カルメン・アマジャ、カマロン・デ・ラ・イスラ、エンリケ・モレンテ、モライート・チーコ、フラメンコ界に燦然と輝く6人のマエストロに現代フラメンコ界最高のフラメンコダンサー、サラ・バラスが捧げた奇跡の舞台


今冬ロードショー予定
J: BEYOND FLAMENCO
『カルメン』『フラメンコ・フラメンコ』のスペインの名匠カルロス・サウラ最新作。自身の故郷アラゴンで生まれた「フラメンコ」と並ぶスペインの伝統的舞踊「ホタ」の魅力に迫る。


今冬ロードショー予定
新世紀、パリ・オペラ座
フランスが誇るパリ・オペラ座は波乱に満ちていた。バレエ団芸術監督ミルピエ突然の退任、オレリー・デュポン新芸術監督の誕生、オペラ初日直前の主要キャスト降板……。そんな中行われたオーディションに綺羅星のごとく現れたロシア人青年歌手ミハイル。規格外の音域と奇跡の声を放つ若き天才――!フランス本国で『パリ・オペラ座のすべて』を超える大ヒットを記録。絢爛豪華なステージの舞台裏を描く、圧巻のドキュメンタリー。


これだけたくさんのバレエ/ダンス関連の映画が一つの映画館でロードショー公開されるのは本当に嬉しい限りですよね。

さらに、英国ロイヤル・オペラハウスシネマシーズン、7月1日から東京都写真美術館で公開される「アントニオ・ガデス舞踊団 in シネマ」、また2017年8月12日 新宿ピカデリー他にて全国ロードショーされる、パリ・オペラ座を舞台にしたアニメーション映画「フェリシーと夢のトウシューズ」、フランス映画祭で上映され、10月28日に劇場公開される「ポリーナ、私を踊る」と、本当にたくさんのバレエ/ダンス関連の映画やライブビューイングがあり、映画館でバレエ、ダンスを楽しむというのも定着してきた感じがします。

2017/06/17

ザ・ダンサー La Danseuse

ベル=エポックの時代に、”サーペンタイン・ダンス(蛇のダンス)”と呼ばれる斬新なパフォーマンスを行い、一世を風靡したダンサー、ロイ・フラー。ロートレックやリュミエール兄弟も魅了し、モダン・ダンスの先駆者だった彼女の前半生を描いた映画が、この「ザ・ダンサー」である。

http://www.thedancer.jp/



アメリカで女優を目指していたマリー・ルイーズ・フラーは、「インチキ医者」という芝居に出演して催眠術にかけられた女性の役を演じたときに、偶然、空気をはらんだスカートで刻々と形を変えるダンスを発見する。ロイと名乗った彼女は研究を重ね、大きな白いスカートを内側から棒で操って、様々な色の照明も用いて蝶や百合の花などを表現した。ロイのダンスは評判を呼び、彼女は単身パリに渡る。ミュージックホール「フォリー・ベルジェール」のマネージャー、ガブリエルにロイのダンスは認められ、そしてパリでは一夜にして大スターに。やがてパリ・オペラ座の舞台に立つチャンスも与えられる。自分のダンスに飽き足らずにさらに研究を重ね、そして自ら育てた若いダンサーたちとも共演するロイ。その中に、野心にあふれ、身一つのダンスで人々を魅了するイザドラ・ダンカンもいた。一方で、肉体を酷使して消耗し、さらに、まだ発明されたばかりの照明で目の病気にもなったロイは、自分は踊りそのものより、特殊効果を使ったスペクタクルとして人気を呼んでいるだけなのではないかと苦悩を深めていく。

冒頭で”実話に基づく”という字幕が出るけれども、実際のところはかなり創作の部分が多くて、そのあたり伝記映画としてはどうなのかというのは感じてしまった。具体的にはまずアメリカでのエピソード、母親との関係などは創作である。そしてギャスパー・ウリエルが演じたルイ伯爵というのは実在していない人物であるし、イザドラ・ダンカンとの関係にしても、相当自由に翻案したというか、実際にはあのような同性愛的な感情などはなかったはずだし、ダンカンをかなり悪意のある描写で描いているところにも疑問を感じる。途中で川上貞奴とおぼしき日本人が登場するが、貞奴と出会ったのはパリ万博であって、パリ・オペラ座ではない。人間関係の描写については、あまり演出も冴えていない作品ではある。



監督のステファニー・ディ・ジューストはもともと写真家だったということもあり、ビジュアルイメージの表現に関してはとても才能を発揮した。何より、ロイ・フラーをスターに押し上げたサーペンタイン・ダンスの映像表現は非常に美しく、大画面の中で衣装が花や蝶のように大きく花開いたり、魔法のように刻々と形を変えていく様子を観るだけでも、まるで夢の中にいるように幻惑され、この映画を観る価値はあるのではないかと感じた。また、ロイ・フラー役のソーコは大熱演。ロイ・フラーはかなりしっかりとした身体を持っていた人ということで、説得力のある肉体を彼女自身もつくりあげていたし実際にダンスを自分で踊っている。また、自分の芸術を追及するために一心不乱に研究を重ね、舞台装置や衣装も自分でデザインして製作し、まだ登場したばかりの電気照明を工夫を凝らして取り入れていく様子はしっかりと描かれている。新しいダンスを作り出すことに取りつかれて、身体も限界まで酷使し、失明の恐怖にもとらわれて苦悩する姿は心を打つ。実際には不器用で人見知りなフラーという人物像もしっかりと体現していた。

アメリカ時代のエピソードで、母親との問題があって休演している間に別のダンサーに勝手に作品を踊られてしまうというものがあったが、フランスならダンスも著作権を登録できるということが、フラーがフランスへと渡った理由として描かれている。最後の方で、ついに彼女のサーペンタイン・ダンスの著作権が認められたということが、一つの勝利として描かれているのは印象的だった。

一方、イザドラ・ダンカン役のリリー=ローズ・デップが登場するのは、物語も中盤過ぎてからのこと。非常に野心的な女性で不敵な笑みを浮かべたこの映画のダンカンは魅力的ではあるけれども、描かれ方としては一面的で、ソーコ演じるロイ・フラーの説得力の前では取るに足らない存在にしか見えなかった。(ガルニエの中で薄い衣装一枚で人々を魅了するダンカンのダンスが現れるけど、踊りそのものは別のダンサーによって吹き替えられている)

最初ロイ・フラーのパトロンとして現れて彼女の渡仏に力を貸し、パリではフラーの稽古場を提供するルイ・ドルセ―伯爵は実在の人物ではないが、ギャスパー・ウリエルが独特の病んだような繊細さで演じていて、作品に陰影を与えている。また、ロイの才能を見抜きマネージャーとして献身的に彼女を支えるガブリエル役のメラニー・ティエリーもいい。

光と陰影、衣装の表現、野外撮影などの美しさは、さすがミュージッククリップ、そして写真家出身のステファニー・ディ・ジューストの作品だけのことはある。ストーリーや脚本に疑問を感じるところはあるけれども、とにかくダンスシーンの幻惑されるような見事さと撮影の美しさ、ソーコの熱演もあり映画館のスクリーンで観る価値はある。最後の方の鏡のダンスのシーンは実際にオペラ・ガルニエで撮影されたとのことだ。

監督 ステファニー・ディ・ジュースト
キャスト ソーコ、リリー=ローズ・メロディ・デップ、ギャスパー・ウリエル、メラニー・ティエリー
作品情報 2016年/フランス・ベルギー・チェコ/108分受賞
ノミネート 第69回カンヌ国際映画祭 ある視点部門正式出品
Bunkamuraル・シネマ、シネスイッチ銀座にて公開中 

2017/06/08

アントニオ・ガデス舞踊団 in シネマ 7月1日より劇場公開

アントニオ・ガデス舞踊団 in シネマ

『カルメン』 『血の婚礼/フラメンコ組曲』

2017年7月1日(土)より、東京都写真美術館ホール
ほか順次全国公開

http://www.tk-telefilm.co.jp/gades/

Incinema

フラメンコ史を塗り替えた舞踊家アントニオ・ガデスの芸術を受け継ぐ名門舞踊団の、
マドリード王立劇場における特別公演を収録したライブ映像を上映する、
《アントニオ・ガデス舞踊団 in シネマ  『カルメン』 『血の婚礼/フラメンコ組曲』》を
7月1日より、東京都写真美術館ホールほか、順次全国公開されます。

■『カルメン』

有名な歌劇「カルメン」の原作となったメリメの小説に着想を得て、アントニオ・ガデスとスペイン映画の巨匠カルロス・サウラが共同で作り上げた1983年の映画「カルメン」を舞台化した、スペイン舞踊史上最大のヒット作。

【出演】バネッサ・ベント、アンヘル・ヒル、ハイロ・ロドリゲス、ほか
【芸術監督】ステラ・アラウソ
【映像監督】アンヘル・ルイス・ラミレス
【詳細】[収録]2011年マドリード王立劇場/スペイン/1時間39分/16:9
【コピーライト】(c)Teatro Real MMXI
【配給】T&Kテレフィルム


■『血の婚礼/フラメンコ組曲』

『血の婚礼』はスペインを代表する詩人ガルシア・ロルカの戯曲を原作として、フラメンコを芸術へと昇華させた記念碑的傑作。『フラメンコ組曲』はデュオ、群舞とフラメンコの代表的形式を揃え、フラメンコの歴史を見せる古典的な名作。

【出演】[血の婚礼]クリスティーナ・カルネロ、アンヘル・ヒル、ホアキン・ムレーロ、ほか 
    [フラメンコ組曲]ステラ・アラウソ、ミゲル・ララ、ほか
【芸術監督】ステラ・アラウソ
【映像監督】アンヘル・ルイス・ラミレス
【詳細】[収録]2011年マドリード王立劇場/スペイン/1時間53分(血の婚礼+フラメンコ組曲)/16:9
【コピーライト】(c)Teatro Real MMXI
【配給】T&Kテレフィルム


<アントニオ・ガデス舞踊団について>

アントニオ・ガデス舞踊団は、フラメンコ史を塗り替えた偉大な舞踊家アントニオ・ガデスの遺志を受け継ぎ、その芸術と作品を伝えるために、ガデスが死の直前に設立した財団によって 2004 年に再結成された。
ガデスの愛弟子のステラ・アラウソ芸術監督のもと、最高峰のスペイン舞踊団として世界中で公演活動を続けており、2016 年には 7 年ぶりの来日公演を行い、満場の観客から熱狂的な喝采を浴びたことは記憶に新しい。


東京都写真美術館ホールでの上映タイムテーブル
http://www.tk-telefilm.co.jp/gades/screen/screen.html


昨年のアントニオ・ガデス舞踊団来日公演『カルメン』を観たのですが、これは本当にフラメンコ・ファンのみならずダンスが好きな人だったら興奮すること間違いなしの、ドラマティックで素晴らしい作品でありパフォーマンスです。ぜひ大スクリーンでご覧ください。

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2017/05/15

映画「ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」記者会見

7月15日から公開される映画「ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」のプロモーションのため、セルゲイ・ポルーニンが来日し、記者会見が行われました。

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ポルーニンさんは、9歳の時に初めて日本に来たと伺っています。その時の来日の理由は?

「9歳の時、キエフ・バレエ学校の生徒の時に、交換留学生として寺田バレエアートスクールと共演しました。キエフからは6人の男の子が選ばれました。キエフ・バレエのプリンシパルと日本人の主役の後ろでコール・ド・バレエとして「ジゼル」で踊りました。その時のプリンシパルを務めたのが、寺田宣弘さんでした」

映画「ダンサー」は、アメリカ、イギリスで公開され、その後「プロジェクト・ポルーニン」という自身のプロデュース公演があり、そののち日本で公開となります。日本公開に向けてのメッセージ。

「実はこの映画が完成する前に一番最初に手を挙げてこの映画の配給権を買ってくれたのは日本でした。監督は、「日本は本当に入るのが難しい市場なんだ」と言っていたものですから。それを聞いてスタッフ共々興奮したとともにやる気が盛り上がりました。高揚感のあるまま、最後まで一気に映画を作りきったのです」

「プロジェクト・ポルーニン」の具体的な活動について。ダンサーに対するサポートが足りないと考えられていると思いますが、バレエ界における問題点は?

「自分自身、「テイク・ミー・トゥ・チャーチ」を踊ってラストダンスにしてこの業界をやめようと思ったのは、もう少しましな業界、もう少し成熟した業界に移りたいとその時思ったからです。「テイク・ミー・トゥ・チャーチ」を撮影する時に時間がたっぷりあったのです。時間をかけて熟慮して、自分がこれからどうしたらいいのか、立ち止まって考えることができたのです。バレエに対して何が不満だったのか、やはりそれを考えたときに、今回のラストダンスを踊るときに強さを身につけることができました。いろんなことを考えることができて。さらに映画が出来上がってからも、この映画を通してもリサーチや旅といったものを経て、傘のようなものを作りたい、ダンサーたちが前に進むときにさしてあげられるような、雨をよけてくれるような傘、そしてダンサーたちが声を上げることができるような環境、観客がより多くダンサーたちを観ることができる、触れ合うことができる環境、つまり大事なことはバレエ、ダンスということではなくダンサーという一人の人間が大事なのではないかと。劇場、カンパニー、衣装といったものではなくて、生身の生きた人間の面倒を見る人が必要なのです。そのためのマネージャー、興行主が。

今のバレエ業界はたった一人の芸術監督によって90人から一人が選ばれて「お前がこれを踊れ」と言われてしまい、それをサポートするシステムがないわけです。俳優やスポーツ選手だったら、オペラ歌手だったら、その選手なり俳優を支えるチームが作られます。それぞれの演目に合わせてチームが作られる、そういうのが一切バレエにはないので、そういったものを作り、それをそのままほかのダンサーたちにも当てはめてあげたい。一種のインフラ整備というべきようなものです。そういった形で、広報担当者、経理担当などが必要となってきます。そういったきちっとしたシステムを作ってインフラ整備をしたいと思ったのが、今回のプロジェクトの目的です」

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ダンス界には様々な問題がありますが、その中でダンサーを目指す若い人へのアドバイス、メッセージは?

「バレエを学んでいる学生に対しては、とにかくたくさん練習してください、と言いたいです。しっかりと勉強してください。ミッキー・ロークと話している時に彼が言ったのは、本当に一生懸命努力した人のみが一流になれる。その努力は報われる、と。僕自身も非常に頑張ったお陰で、学校を出た後で踊りを楽しむというところまで行くことができた。劇場で踊るときに基本ができているから、演目を楽しめるし演技ができるのです。その過去の経験があるから演じるのも次の段階へと進むことができるのです。一生懸命やる、努力するというのはすべてにつながります。学校時代にはとにかく一生懸命やってください。

また、自分に正直でいるということ。自分は何者であり、何になりたいかを見失わないでください。先々で社会や周りの人たちやマスコミや噂に自分が破壊されてしまいそうな場面に出会うかもしれません。そういう時に信念があり、自分が何をやりたいかがしっかりとあれば、自分を見失わないと思います。そして勇敢であってください。次のステップに行くために打破する勇気を持ってください。新たに旅立つ勇気をもって、未知の世界へとどんどん行ってほしいと思います。

僕の好きなイメージは飛行機が離陸して上がっていく時のものです。ある程度の高さまで上昇すると降りて行きたくなりますが、その高さを頑張って保って維持していくことが好きです」


改めて、なぜ踊りつづけようと思ったのでしょうか?

「先ほど話したプロジェクトのように、何かをやればできる、変えられるという思いがあったからです。後ろに置いてくるのではなく、やりたいことをやって、やったことで変えられると思ったから「プロジェクト・ポルーニン」が一番の理由だと思います」


映画の中で登場するダンス作品で特に気に入っているものがあったら教えてください。どのようなカンパニーに客演したり、どういった振付家と作品を創ったり、どんなダンサーと共演したいですか。

「テイク・ミー・トゥー・チャーチ」のデヴィッド・ラシャペルがまた何かを撮るときにはまた一緒にやりたいという思いはあります。まだ未知数のところがありますが、今後また機会があれば嬉しいです。演目で言えば「ジゼル」には愛着があります。「マイヤリング」も好きですが、最初から好きだったわけではなくて、何回も踊っているうちに好きになりました。振付家については、クラシック系の振付家は多くが亡くなってしまいました。なので今は思いつく人がいません。これを探していくというのが自分の旅路になると思います。


ダンサーとしての夢、目標は何でしょうか。タトゥーについてはどのような想いがありますか。そして今抱えている苦悩は?

「「タトゥー」は自由を意味しています。自由人の証のようなもので、仕事とか生活と言った様々な制約から自由であること。やりたいことができる証という意味を持っています。見た目も好きだし、タトゥーを入れる過程も、刺青師と話すことも、タトゥーパーラーの雰囲気も全部好きでした。

ダンサーの夢としては、先ほど言ったように業界を変えていくということが一番大きな夢です。また更に素晴らしい振付家と出会って、ディレクターと出会い、素晴らしい音楽、そういったものと一体となった作品を創り上げることができたとしたら、それはまた素晴らしいと思います。苦悩についてですが、僕自身、心地よい環境にいる時にはこれは違う、と感じます。つまりそこに安住してはいけない。そういう時には次に行かなければならない。創造するためにもがく、戦おうと思います。戦う相手がいると人間は強くなります。安住してはいけない、戦い続けるというのが僕のパフォーマーとしての在り方なので、苦痛や苦悩はあります」


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この映画を観たときの印象は?作品の出来に満足していますか?

「この作品は当初観たくなかったので、編集作業を見るのも拒否しました。でも、デヴィッド・ラシャペルに上手く騙されて観たのです。でき上がった作品は質が高く良くできた映画だと思います。ただ自分個人としては、感情のジェットコースターに乗せられた気分でした。ある意味、自分にとって観ることが大変だったんです。でも観ることでいろいろ思い出しました。両親の僕に対する愛とか、友情の大切さとかを再認識させられて、それは素晴らしい経験でした」


ロンドンで「プロジェクト・ポルーニン」の公演がありましたが、日本でポルーニンさんの踊りを観る機会はいつあるのでしょうか?ロイヤル・バレエの先輩の熊川哲也さんは、若くして自らのカンパニーを立ち上げてますが、日本のバレエシーンについてどう思いますか?

「「プロジェクト・ポルーニン」については、自分が「これだ」と思う自信がある演目ができたらぜひ日本でも踊りたいと思います。日本では熱心なバレエファンがたくさんいるのは知っています。作品を引っ提げてツアーをする時には必ず日本は含めたいと思っています。熊川哲也さんについては、彼の踊りは何回も観たことがあるし、ニジンスキーより高く跳んでいたと思います。あんなに高く跳べた人は他にいないと。彼こそ、先ほど話したインフラ整備、バレエ学校まで作り、ダンサーたちの給与制度の改革も行われています。彼は男性のダンサーのための作品も考えているということで、バレエ界にとってのインスピレーションになっていると僕は認識しています」


俳優業に進出して、『オリエント急行殺人事件」のように大きな映画に出演を果たしていますが、俳優業に進出したことで、ダンサーとしての活動はどのように変わっていくのでしょうか?俳優としての目標は?

「演技の経験のみならずすべての人生の経験は、パフォーマーにとっては糧となると思います。いろんなことをより多く経験すればするほど、それだけ多く観客に語るべきものを持つことができると考えています。その中で、演技というものを僕は真剣に受け止めています。僕の中で、演技者となるのは多少の運も必要だと思います。努力だけではできません。しかしながら、より良い俳優になりたいということを強く信念として持っています。単なる、演技もできるダンサーではなく、きちんとした演技者としてのものを持ちたいと思っています。だからといってダンスを辞める気はまったくありません。踊るということもとても大事だし、先ほどの「プロジェクト・ポルーニン」で業界はいい方に変えて行けると思うし、変えるべきだと考えています。僕自身、表現するということを何よりも愛しています。踊るというのはその表現の一つでもあるわけです」


自分の舞台を親に見せないというエピソードが映画の中にありましたが、最後の方でご家族がロシアであなたの舞台を観ます。これはどのような心境の変化でしょうか。

「長い旅路を経て、この旅路そのものがセラピーのような存在となりました。これを通して成熟したことで、今まで目を背けて来たことを直視できるようになったので、親に会えるようになったのです。両親に会って話をして招くことができるようになったと。怖くて見られなかったというのが成長していなかった時の自分の姿で、やっと成長することによって現実を直視して自分の問題を観ることができるようになったのです。残念ながらダンサーというのは本当に厳しい仕事なので、日々スタジオの中で練習に明け暮れて、なかなか成熟する機会というのがなかったりします。その中で僕は変わったと思います。

学校時代には、学問などいろんなことを教わります。でも人生について教えてくれる人は誰もいないし、人生について教える科目もない。テレビを見ていても人生について教えてくれる番組はなかなかありません。そういう中で、社会では若い人を導いてくれる人が減っています。豊富な人生経験を持った人が、いろんな道があるんだよと指し示してくれることがなかなかありません。そのため、僕を含む若い人たちが困難な厳しい道を歩むことになってしまい、しなくていい苦労をすることになります。ライフレッスンというのがあってもいいと思います。部族社会の中では、儀式があって、たとえば狩猟の儀式で成功すると一人前の大人として認められます。西洋文化の中には大人になるための登竜門的なものはありません。自分をだましてしまって、現実を直視しないで生きてしまう人も多々いると思います」


映画の中では、公演の前に強烈なドリンクを飲まれていましたが、今はパフォーマンスの前の心境はどうなっていますか?

「昔ほどではないけれどもナーバスになることはあります。でも考え方がとても変わって、舞台の上こそが僕のいるべきところで、舞台の上が家だと思うようになってあの当時のように神経質になることはなくなりました。強いドリンク剤を飲んでいたのは、ベストのものを出しつくしたい、自分の持っている最高のものを見せたいと思ったからです。今の僕の考え方としてはそういったものの助けを借りなくても、最高のものを出さなくてはいけないと思っています。自分の力だけで最高のものを見せたいです」

韓国では、この映画は2週間前にアートシアター30館で劇場公開され、9日間で1万人動員するなど好評で多くの人生に迷う若い人たちを勇気づけました。セルゲイさんは、今は楽しく幸せに踊っていますか?

「人生ですから、いい時も悪い時もあります。その中で学んだのは、ポジティブに物事を見る術を身につけたことです。良いエネルギーを出す、それを皆さんとその良いエネルギーを交換できるような。内側からそういうエネルギーは生まれてくるものですから。さらにはどういう風に物事を考えるかによってそれはできると思います。もちろん、内面での格闘というのはりますが、踊ることは楽しんでいます。プラスに考えられるようになりましたし、踊ろうともう一度決心して、努力して踊っているから、踊ること自体は楽しんでいます。もちろん楽だということではないですが」

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「バレエ界のバッドボーイ」という異名をとるセルゲイ・ポルーニンですが、素顔は思慮深く、非常に誠実でひたむきな印象を与えました。自分の辛かった、迷い続けた経験を生かしてダンサーたちにより良い環境を提供したいという熱い思いも伝わってきました。『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』、バレエに興味を持つ人のみならず、自分の人生について悩み苦しんでいる人や、家族との葛藤を抱えている人にもぜひ観ていただきたい、多くの人の心に訴える作品です。才能があることが呪いとなってしまい、心が折れて目標を見失った若者の苦悩と再生の軌跡です。ダンサーというのはいかに厳しく孤独な仕事であるかということも伝わってきます。もちろんセルゲイの圧倒的なダンスパフォーマンスもたくさん収められています。


東京芸術大学でのパフォーマンスイベント、箭内道彦さんと。
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http://www.uplink.co.jp/dancer/

2017年7月15日(土)より、Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:スティーヴン・カンター
『Take Me To Church』演出・撮影:デヴィッド・ラシャペル
(2016年/イギリス・アメリカ/85分/原題:DANCER) 
配給:アップリンク・パルコ

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このDVDの中でセルゲイ・ポルーニンは、タマラ・ロホと「マルグリットとアルマン」で共演しています。しかしながら、残念ですが今年6月にロイヤル・バレエで上演される「マルグリットとアルマン」へのゲスト出演を、セルゲイはキャンセルしてしまいました。

2017/05/04

ヌレエフの亡命事件を扱った映画「The White Crow」続報

ルドルフ・ヌレエフの亡命事件を扱った、レイフ・ファインズ監督の映画「The White Crow」が製作中ですが、いくつかの続報があります。

http://www.screendaily.com/5117358.article#

監督であるファインズ自身が、ヌレエフの恩師であるアレクサンドル・プーシキン役を演じるとのことです。

キャストですが、既報の通り、ヌレエフ役を演じるのはカザン劇場のオレグ・イヴェンコ。セルゲイ・ポルーニンは、彼のライバルでのちに悲劇的な最期を遂げるユーリ・ソロヴィヨフ役を演じます。また、ヌレエフの亡命を手助けしたクララ・セイントを演じるのは、「アデル ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロス。ロシアの人気女優チュルパン・ハマトーヴァ、「エル」で今年のセザール賞助演男優賞にノミネートされたローラン・ラフィットらが共演します。

撮影は2017年の夏からで、パリとサンクトペテルブルグで行われます。オペラ・ガルニエ、マリインスキー劇場での撮影も行われる予定で、レイフ・ファインズはしばしばワガノワ・アカデミーを訪れています。

原作は、ジュリー・カヴァナの「Rudolf Nureyev The Life」で、著名な脚本家デヴィッド・ヘアが脚色。BBCフィルムズが製作しており、プロデューサーは、セルゲイ・ポルーニンのドキュメンタリー「ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」のガブルエル・ターナです。もともと、こちらの「The White Crow」でポルーニンに出会ったことがきっかけで、「ダンサー」が製作されたとのことです。

衣装デザインは「ジャッキー」のマデリーン・フォンテーン、音楽は「ダンサー セルゲイ・ポルーニン」のイラン・エシュケリ。

この作品のクラシックの振付の監修はイーゴリ・ゼレンスキーが行う一方で、クリストファー・ウィールドンがこの映画のための振付を担当するとのことです。

「The White Crow」は今年のカンヌ国際映画祭のマーケットに出品されます。

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2017/04/19

映画「Polina, danser sa vie」が「ポリーナ、私を踊る」の邦題で10月に公開

こちらのブログでも何回かご紹介している、バスティアン・ヴィヴェスのバンドデシネ(グラフィックノベル)を原作にした映画「Polina, danser sa vie」。

グラフィック・ノベル原作のバレエ映画「ポリーナ」、予告編映像/追記あり
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2016/08/post-83a0.html

ボリショイ・バレエのバレリーナを目指すロシア人の女の子ポリーナを主人公に、恩師のボジンスキーとの交流、友人、恋人との関係を通して、そしてコンテンポラリーダンサーへと転身して成長していく様を描いた「ポリーナ」は高い評価を得たグラフィック・ノベルで、邦訳も出版されています。BD書店賞、ACBD批評賞という二つの大きな賞を本国フランスで受賞しています。

この映画「ポリーナ」は、「ル・パルク」などで知られる著名な振付家のアンジュラン・プレルジョカージュが、妻の映画監督Valérie Müller-Preljocajと共同監督し、主演に、ワガノワ・バレエアカデミーの卒業生であるアナスタシア・シェフツォワを迎え、コンテンポラリーダンスカンパニーの振付家の役にジュリエット・ビノシュ、さらにパリ・オペラ座エトワールのジェレミー・ベランガールが出演しています。またバレエ・プレルジョカージュの津川友利江さんも登場しているそうです。

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http://www.allocine.fr/film/fichefilm_gen_cfilm=234760.html

作品はエクサンプロヴァンス、パリ、そしてモスクワで撮影されました。フランスのテレビ局TF1の配給により、11月16日にフランスで公開されました。

この作品が、「ポリーナ、私を踊る」の邦題で、東京・ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて10月28日より全国公開されることになりました。配給はポニーキャニオン。

バンドデシネ「ポリーナ」原作の映画公開、ジュリエット・ビノシュが出演
http://natalie.mu/eiga/news/229359

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アナスタシア・シェフツォワは、マリインスキー・バレエの舞台でも踊っています。600人もの候補者から主演に選ばれたこの作品で、彼女はセザール賞の新人女優賞のプレ・ノミネーションを受けています。

アナスタシア・シェフツォワのインタビュー記事
https://www.lesechos.fr/10/11/2016/LesEchosWeekEnd/00053-014-ECWE_anastasia--ballerine-plein-cadre.htm#

こちらは英語のインタビュー記事
http://www.balletinsider.com/en/archive/young_talent/1851

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