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映画

2020/06/05

『マシュー・ボーン IN CINEMA/ロミオとジュリエット』6月5日より公開

新解釈版『白鳥の湖』でバレエ界に新風を巻き起こした英国バレエ界の鬼才、マシュー・ボーンの新作舞台『ロミオとジュリエット』が、いち早く日本のスクリーンに初登場します。試写を観たのはだいぶ前ですが、その激しさ、鮮烈さは忘れがたく、有料配信でもう一度観ました。

6.5(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショーされます。

http://mb-romeo-juliet.com/

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時代を超えて語り継がれてきたシェイクスピアの伝説的古典を、巨匠プロコフィエフの名曲に乗せてコンテンポラリー・バレエに大胆にアレンジした完全な新演出版。本プロジェクトのために新たに発掘された若い才能をスタッフ・キャストに迎え、不朽の名作に新たな風を吹き込んだ本作は、「2019年で最も待ち望まれた舞台!」と評され大絶賛をもって迎えられた。厳しい管理下に置かれ、自由を奪われ愛が禁じられた近未来を舞台に、運命に翻弄された2人の若き恋人たちの悲劇的な愛の物語が、まだ誰も見たことのない新世代の『ロミオとジュリエット』として蘇る。

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STORY

今からそう遠くない近未来、反抗的な若者たちを矯正する教育施設「ヴェローナ・インスティテュート」では、若者たちは男女別に分断、接触を禁じられ、厳しい監視下のもと自由を奪われて暮らしている。ジュリエットは、暴力的な看守のティボルトから目を付けられ、その脅威に怯えていた。ある日、有力政治家の両親から見放され施設に入れられたロミオは、施設で開催されたダンスパーティーでジュリエットと出会う。瞬く間に恋に落ちた2人は、看守の目を盗んで逢瀬を重ね、仲間たちに祝福されながら遂に愛を誓いあうのだった。しかし、幸せもつかの間、突如酒に酔ったティボルトが銃を振りかざして現れ、乱闘の挙句、仲間の1人マキューシオが命を落としてしまう。怒りに燃えるロミオとジュリエットたちは、ティボルトに立ち向かうも、さらなる悲劇が彼らを待ち受けていた…。

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様々な振付家が手掛けてきたバレエ版の『ロミオとジュリエット』。待ち望まれていたマシュー・ボーン版は、近未来の矯正施設に閉じ込められた若者たちの愛と死と暴力の物語。今まで見てきたどの『ロミオとジュリエット』よりも疾走感があって激しく、鮮烈で痛ましく残酷だ。真っ白い矯正施設のベッドの上で血まみれになってこと切れているロミオとジュリエットの死体が冒頭に映し出されるところからして強烈だ。

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矯正施設に閉じ込められて自由を奪われた若者たちを暴力で支配する残忍な看守のティボルト。裕福な両親によってこの施設に入れられてしまう気弱な青年ロミオ。奔放な魅力のある少女だがティボルトにしつこく目を付けられて怯えているジュリエット。マキューシオとバルサザールという男性カップル。若者たちのやり場のないエネルギーが全編ほとばしりパワフルなダンスが次から次へと繰り広げられる。ジュリエットとロミオのバルコニーのパ・ド・ドゥも情熱的で、内に秘めていた二人の思いが激しく炸裂している。二人が床の上を転がりながらもリフトも展開され、バルコニーも有効に使って力強い。極限状況の中でどうしようもなくお互いを求めあう熱情が伝わる最後のパ・ド・ドゥは痛ましくも美しい。レズ・ブラザーストンによる舞台装置はシンプルながら非常に効果的で、真っ白な矯正施設が行き場のない閉塞感を象徴している。白い制服を着せられたダンサーたちのなかで、赤い髪のジュリエット、そして流れる赤い血が鮮やかに浮かび上がる。暴力とトラウマがメーンのモチーフとなっていて、そのトラウマが結局恋人たちを破滅へと追いやってしまうのだ。

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音楽の順番を大胆に入れ替えた意外性とキャラクターの設定変更もユニークだ。1時間30分ほどの上演時間があっという間に通り過ぎ、見たことのない衝撃に心撃ちぬかれる、そんな痛ましくも熱情溢れる作品。ぜひ大スクリーンで体験してほしい。『シンデレラ』や『マシュー・ボーンの『白鳥の湖』『眠れる森の美女』などで主演してきた繊細さと大胆さのバランスが絶妙なコ―デリア・ブライスウェイト、やはり『シンデレラ』で頭角を現した若く美しいパリス・フィッツパトリックなど、若いキャストが活躍するのも、この作品の焦燥感、疾走感に寄与している。

恵比寿ガーデンシネマでの上映スケジュール
6月5日(金)〜11日(木)は
10:30/15:40/17:50

【プロダクション】演出・振付:マシュー・ボーン/舞台・衣装デザイン:レズ・ブラザーストン/照明:ポール・コンスタンブル/音響:ポール・グルースイス/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

【出演】ロミオ:パリス・フィッツパトリック/ジュリエット:コーデリア・ブライスウェイト/ティボルト:ダン・ライト/マキューシオ:ベン・ブラウン/バルサザー:ジャクソン・フィッシュ

撮影場所:サドラーズ・ウェルズ劇場/撮影時期:2019年/上映時間:91

提供:MORE2SCREEN 配給:ミモザフィルムズ 配給・宣伝協力:dbi inc.

後援:ブリティッシュ・カウンシル

© Illuminations and New Adventures Limited 2019

http://mb-romeo-juliet.com/


2020/03/05

ロイヤル・バレエの映画『ロミオとジュリエット』金曜日より公開、ウィリアム・ブレイスウェルとフランチェスカ・ヘイワードにインタビュー

ケネス・マクミラン振付の名作を英国ロイヤル・バレエの若手ダンサーが出演し、ロケーションで撮影した映画『ロミオとジュリエット』が明日金曜日より公開されます。
https://romeo-juliet.jp/

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先日もこの映画の感想を書きましたが、主演のロイヤル・バレエ、ウィリアム・ブレイスウェルフランチェスカ・ヘイワードにインタビューしましたので、ご紹介します。

ウィリアム・ブレイスウェルのインタビュー(クラシカ・ジャパン)

https://www.classica-jp.com/column/14214/

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「輝く英国ロイヤル・バレエのスター達」で来日したウィリアム、実物は写真よりずっと素敵で年齢よりも若く少年っぽいところがロミオにピッタリです。本当に好青年でした。

こちらのウィリアムのインタビュー記事も担当しています。

http://www.astage-ent.com/cinema/romeo-juliet.html

こちらのウィリアムのインタビューは、高橋森彦さんによるもの

https://spice.eplus.jp/articles/265643

 

そして名作ミュージカルを映画化した話題作『キャッツ』に白猫のヴィクトリア役で主演したフランチェスカ・ヘイワードにもインタビューしました。『キャッツ』のキャンペーンで来日した時のものです。このインタビューの聞き手をしています。

フランチェスカとのインタビューの記事はこちらです。

https://www.fashion-press.net/news/58753

 

多忙なスケジュールの中でジャパン・プレミアや天皇皇后ご一家とのチャリティ試写会などを縫ってのインタビューでしたが、とても明るく感じよく、そして誰もが惹きつけられるような魅力の持ち主でした。天性の女優であることは映像を観て頂ければすぐにわかると思います。

バレエの『ロミオとジュリエット』を何回も観ている人も、全く新しい魅力を感じることができる映画です。バレエを観ていない方も、台詞のないバレエがこんなにも雄弁であることを知ってもらえると思います。劇映画ならではのカット割りや演出も新鮮ですが、監督のバレエ・ボーイズの二人はもともとロイヤル・バレエのダンサーであり、バレエを知り尽くしているため、的確にとらえてくれています。

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映画『ロミオとジュリエット(原題:ROMEO AND JULIET: Beyond Words)』

https://romeo-juliet.jp/
2020年3月6日(金)より、TOHOシネマズシャンテほか、全国ロードショー

■制作:マイケル・ナン、ウィリアム・トレヴィット
■監督:マイケル・ナン
■撮影監督:ウィリアム・トレヴィット
■エグゼクティブ・プロデューサー:ケヴィン・オヘア
■振付:ケネス・マクミラン
■音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
■美術:ニコラス・ジョージアディス
■指揮:クン・ケセルス
■管弦楽:英国ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団

■キャスト:
ジュリエット:フランチェスカ・ヘイワード
ロミオ:ウィリアム・ブレイスウェル
ティボルト:マシュー・ボール
マキューシオ:マルセリーノ・サンベ
ベンヴォーリオ:ジェームズ・ヘイ
パリス:トーマス・モック
キャピュレット卿:クリストファー・サンダース
キャピュレット夫人:クリステン・マクナリー
乳母:ロマニー・パイダク
ロレンス神父:ベネット・ガートサイド
ロザライン:金子扶生

2020/03/04

映画『ダンサー そして私たちは踊った」

スウェーデン・アカデミー賞(ゴールデン・ビートル賞)で【最多4部門受賞】(作品賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞)した映画「ダンサー、そして私たちは踊った」が公開中です。

http://www.finefilms.co.jp/dance/

昨年内覧試写で拝見したのでだいぶ時間が経ってしまったのですが、今も鮮烈な印象があって心を揺さぶられ、劇場公開されたらまた観たいと切実に感じました。ダンサーがなぜ踊るのかという根源的な問い、表現とは、踊ることとは何かを突きつけられる作品なので、ダンスに魅せられた人、そしてダンサーはぜひ観てほしいと思いました。

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ジョージアの国立民族舞踊団のジュニアカンパニーで稽古に励むメラブ。ある日彼の前に、新しく入団した男性ダンサー、イラクリが現れる。メーンダンサーに入団する座を争うライバルではあるものの、彼に惹かれてしまう気持ちを抑えられないメラブだったが…。

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ジョージアの文化、ジョージア民族舞踊では男性性が非常に重要であり、主人公メラブは華奢で繊細なダンサーで評価されにくい。同性愛がご法度の国で、舞踊団に現れた男性ダンサーに惹かれる気持ちが、彼を混乱させつつも解放していく。本当に自分らしく生きること、自分らしく踊りたいという切実な想いだ。

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メラブを演じたレヴァン・ゲルバヒアニが実際にジョージア舞踊、バレエを経験して今はコンテンポラリーダンサーであるということが生きている。特にラストシーンでの、最初は伝統的なダンスから、やがて発展していく、魂を解き放つような即興性の強いダンスは、彼の心情を何よりも強く物語って心を揺さぶり、なぜ私たちがダンスというものに惹かれてやまないのかを見せてくれる。恋愛はあくまでもメラブが変わっていくきっかけであって、この物語の主眼ではない。イラクリに譲られ、オーディションで着用した民族衣装は、とても美しいものであったが。

まだ21歳というレヴァン・ゲルバヒアニは演技未経験者とのことだけど、非常に寡黙ながらもしなやかな身体による雄弁な身体表現と繊細な目の演技でメラブの心境を語っていて、スウェーデン・アカデミー賞や、いくつもの映画祭で主演男優賞を受賞するなど高く評価されたのも納得。

ジョージア民族舞踊に限らず、ダンスというものが台詞の代わりに作品の世界観と物語性を伝えている。メラブとイラクリが一緒に練習するところの緊張感。友人の家に仲間で遊びに行ったときに、「Honey」に合わせてウィッグをかぶって奔放に踊るところ、兄の結婚式での伝統的な踊りの祝祭感、ゲイクラブでのダンス。ダンス映画としてとても秀逸な表現だ。ダンスとは、生きることで、命を削りながら踊るダンサーの姿がここにある。ABBAからスウェーデンのポップス、そして打楽器を多用した民族音楽まで、音楽もとても作品の世界観にマッチしていて良い。

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一方でこの映画は、現在のジョージア社会を見せてくれて興味深い。豊かな民族文化を感じさせる、伝統的で美しい結婚式が行われている一方で、誰もがスマホを使っている。貧富の差が激しく、メラブの父も海外の有名な劇場でも踊った国立舞踊団のダンサーだったのに今はとても貧しい。そして同性愛が禁忌で追放されたダンサーもいた。この国でダンサーとして生きる困難さも描かれている。貧しくてレストランのアルバイトを掛け持ちし、携帯電話代にも事欠き、自宅は頻繁に停電する。同居する家族ともそれほど仲良くない。ダンサーとしては、男性性が足りずジョージア舞踊の型にはまらず国立舞踊団のメインカンパニーに入れるかわからない。同性に惹かれる気持ちはこの社会では受け入れられない。過酷で出口の見えない現実。しかしダンサーは自分だけのダンスを踊り続けるしかないのだ。

幼い頃から一緒に踊ってきた女性ダンサーのマリと、トラブルメーカーながら男気はある兄との心の触れ合いには心温まるところもあって、青春のきらめきを伝える映画としても、とても心に響くものだった

映画『ダンサー そして私たちは踊った』
公開日:
・2020年2月21日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町およびシネマート新宿ほかにて全国公開 (劇場情報はこちら
監督:レヴァン・アキン
出演:レヴァン・ゲルバヒアニ、バチ・ヴァリシュヴィリ、アナ・ジャヴァヒシュヴィリ
原題:And Then We Danced
配給:ファインフィルムズ

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昨年12月の「のむコレ!」での舞台挨拶では、レヴァン・ゲルバヒアニが登場。すらっとしていて脚が長く、とても流暢できれいな英語を話していました。

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レヴァン・ゲルバヒアニは実は日本のアニメが好きで、「千と千尋の神隠し」のポスターが劇中に登場しますが、これは彼の私物です。カオナシのタトゥーも掘っているとのこと(見せられない場所にあるそうですが映画では少し見えます)。「デスノート」や「ワンピース」なども好きなのだそうです。劇中でメラブの心境の変化があり、部屋のポスターははがされていますが、この「千と千尋の神隠し」のポスターははがされないで残ります。彼の変わらない部分を象徴させているとのことでした。

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マリ役のアナ・ジャヴァヒシュヴィリは高校時代からの実際の友人で打ち解けた仲だそうです。イラクリ役バチ・ヴァリシュヴィリとはオーディションで出会い、撮影中に親しくなった。頭が切れて、ニュースやビデオを良くチェックしていて、とても良い人だけど物事に没頭していて、時間に遅れがちなんだそうです。

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彼はInstagramの投稿で監督に見いだされてオファーをされたのだけど、何回も断り、そして家族や友人にも相談したのですが、最終的には社会正義に関わることができるのではという気持ちで受諾したと語っていました。この作品はジョージアでは上映反対運動が起き、プレミア上映では反対する大きなデモまで起きたのですが、後悔はないし、結果としてジョージア社会を揺るがすことができたと。そのこともこの映画の目的とのことです。

サプライズで監督のレヴァン・アキンも登場しました。ジョージア系のスウェーデン人で、この作品はジョージアへのラブレターとのことです。

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やはりラストのシーンの伝統的なダンスからコンテンポラリーに移行していくところは、メラブが自由に解釈して即興的な部分を入れて、自分の心情を入れて踊るという場面だったとのことです。

困難な世界の中で、自分を貫き通し、新しい世界へと旅立っていく青年の葛藤をダンスを通して描いた青春映画の傑作、ぜひ観てほしいと思います。

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2019/06/06

映画「氷上の王 ジョン・カリー」

 「氷上の王 ジョン・カリー」

https://www.uplink.co.jp/iceking/

試写で拝見しており、Twitterに感想を書いただけでこちらには書いていなかったので、遅くなりましたがぜひ多くの方に観ていただきたいので、こちらにも書きます。

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高い芸術性でフィギュアスケートに革命をもたらし、1976年のインスブルック・オリンピックで金メダリストとなったジョン・カリーの栄光と孤独、苦悩を描く。バレエダンサーになりたかったが、父親に男らしくないと反対されたために、アスリートであるフィギュアスケート選手となったカリー。彼のスケーティングが圧倒的に美しく、その演技を観るだけで涙してしまう。多くの貴重な映像が登場している。

カリーのスケーティングはエレガント過ぎると当初は評価されず、最初はスーパーでアルバイトをするなど苦労した。だが美しさだけでなく音楽性も素晴らしく、オリンピック金メダルをもたらした「ドン・キホーテ」は美しく音楽的な上に、技術的にも見事だった。プロ転向後の「牧神の午後」の芸術性の高さはまさにバレエを見ているかのようで、ニジンスキー版やロビンス版よりも美しいと感じてしまうほどだ。「シェヘラザード」の官能性も見事で、フィギュアスケートでこのような表現ができるとは、驚くほどである。

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カリーは自身のカンパニーを率いてフィギュアスケートとバレエの融合を目指すという夢に身を捧げ、メトロポリタンオペラハウスやロイヤルアルバートホールで公演を実現し、幅広くツアーを行うも無一文となる。そして44歳の若さで、AIDSで命を落とす。

2019/02/06

ヌレエフの亡命劇を描く映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』5月劇場公開

何回かこちらのブログで紹介してきた、ヌレエフの亡命劇を描く映画『The White Crow』が、『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』の邦題で劇場公開されることになりました。

https://eiga.com/news/20190205/8/

レイフ・ファインズ監督によるこの作品は、昨年の第31回東京国際映画祭のコンペティション作品に選ばれ、私も上映を2回とも観ることができ、ファインズとプロデューサーのQ&Aセッションも聞くことができました。東京国際映画祭では、最優秀芸術貢献賞を受賞しました。
https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CMP16

20世紀のバレエ界を代表するバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフが1961年にパリで亡命を果たした亡命劇を中心に、故郷ウファでの幼年時代、ワガノワ・バレエ・アカデミーでの学生時代、そしてキーロフ・バレエ団に入団してから亡命するまで、という3つの時制を交互に描いています。

ヌレエフ役には、タタール歌劇場の現役プリンシパルダンサーであるオレグ・イヴェンコ。ヌレエフのワガノワ・バレエ・アカデミーでの師匠であるプーシキンを、レイフ・ファインズが流暢なロシア語を操って演じています。パリで友情をはぐくみ、亡命の手引きをするクララ・セイント役を「アデル、ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロス。プーシキンの妻クセニアには「ルナ・パパ」のチュルパン・ハマートヴァ、ピエール・ラコット役はラファエル・ペルソナ、そしてヌレエフのライバル、ユーリ・ソロヴィヨフをセルゲイ・ポルーニンが演じているのも話題です。

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<レビュー>

バレエ界に燦然と輝けるレジェンド、ルドルフ・ヌレエフ役を演じる俳優を見つけるのは簡単なことではなかったと思う。映画祭のQ&Aで、ファインズは、演技ができるダンサーを求めてロシア中でオーディションを行ったとのこと。イヴェンコはウクライナ出身だが、ヌレエフの頬骨が高いエキゾチックな顔立ちを少し思わせるところもあり、射貫くような大きな青い瞳が印象的。現役プリンシパルであると共に、テレビ番組「ビッグ・バレエ」にバレエ団を代表して出場するなど、バレエの実力も折り紙付き。若きヌレエフのギラギラした野心、自由を求めてやまない心、新しい文化を吸収していく生き生きとした様子を繊細に、そして大胆に演じており、とても初めて演技に挑戦するとは思えないほどだった。

この映画は、本物のバレエダンサーを使って、実際のワガノワ・バレエ・アカデミー、マリインスキー劇場、ガルニエ宮、エルミタージュ美術館、ルーヴル美術館でロケを行っているという本物志向のところがまず素晴らしい。ヌレエフ役のオレグ・イヴェンコはもちろんのこと、もう一人の伝説的なダンサー、ユーリ・ソロヴィヨフ役にセルゲイ・ポルーニン。ソロヴィヨフはパリでヌレエフと同室で、ラコットらとの外出にお目付け役として同伴しているものの、この映画の中では大きな役ではない。しかしながら、ポルーニンのクラスレッスンの時のひときわ大きな跳躍や、舞台の上で見せる踊りは華やかで、まさにスターのものである。(ユーリ・ソロヴィヨフは、30代半ばで自殺するという悲劇的な運命をたどる) イヴェンコの踊る場面も、伝説的なヌレエフのパリでの最初の踊り『ラ・バヤデール』はじめ、たくさん観ることができる。

さらに、伝説的なスター・バレリーナだったナタリア・ドゥシンスカヤ役を演じているのが、ハンブルグ・バレエの元プリンシパル、アンナ・ポリカルポヴァ。ポリカルポヴァはハンブルク・バレエに移籍する前には、マリインスキー・バレエで踊っており、美しい金髪のグラマラスなバレリーナで、ひときわ印象的。ヌレエフと踊る場面も出てくる。ドキュメンタリー映画『ボリショイ・バビロン』に出演していたボリショイ・バレエのソリスト、アナスタシア・メスコーワもバレリーナの一人として出演している。

ヌレエフの故郷での幼年時代、ワガノワ・バレエ・アカデミー時代、そしてパリと、3つの時制を行き来するという演出も、ヌレエフの内面を描くうえで実に効果的な演出となっている。映像のルックもそれぞれ異なっており、少年時代の寒々としてモノクロに近い映像、少し色あせた60年代風のパリの様子と時代の違いがよく分かるようにできている。

ワガノワ・バレエ・アカデミーのパートでは、最初なかなか伸びないヌレエフが直訴して、放校になりそうなところを名教師プーシキンのクラスに代えてもらい、ぐんぐん伸びて行く。ついには自宅にヌレエフを住まわせるプーシキンの、弟子に向ける愛情。映画の冒頭で、ヌレエフが亡命した後に尋問されるプーシキンの、困惑した表情が印象的だ。

パリのパートでは、初めて西側に渡って自由世界の空気を吸うヌレエフ。ルーヴル美術館の開館前に行ってジェリコ「メドゥース号の筏」に見入る。(対をなすように、エルミタージュ美術館ではレンブラントの「放蕩息子の帰還」を観ている。これは父親的な存在のプーシキンと、ヌレエフの関係を象徴させている) 振付家のピエール・ラコットと終演後のパーティで知り合い、親しく交流し、クララ・セイントにも出会う。パリの夜がグラマラスに、魅惑的に描かれている。その中で、ヌレエフは自由に生きたいという思いを募らせていく。鉄道の中で生まれたヌレエフが、パリで鉄道模型を買い集めるというエピソードはほほえましい。

そして空港での亡命シーンの息詰まるような緊迫感。ピエール・ラコット本人に取材して、実際に亡命の瞬間にヌレエフはどのように動いたかということまで再現してもらったとのこと。一人一人の登場人物が立体的に描かれて、手に汗を握る演出の手腕は見事なものだ。まさに自由への飛翔。

エンドロールでは、実際のヌレエフ本人が踊る映像が使われている。オレグ・イヴェンコはロシアのダンサーらしい、ダイナミックなテクニックの持ち主だけど、流石にバレエ界の伝説、ヌレエフのカリスマ性というのはなかなか再現するのは難しく感じた。

それでも、構想20年、ファインズの強い思い入れが感じられる、魂の感じられる作品であると思う。ファインズはロシア語を習得し、ロシアに足しげく通ってワガノワ・バレエ・アカデミー校長のニコライ・ツィスカリーゼとも親交を結び、資金を調達するために監督に専念するのではなく自らも出演。特にエルミタージュ美術館は、撮影許可を取るのが非常に困難だったところを、実現させた。(ソクーロフの『エルミタージュ幻想』での撮影でトラブルがあったので、長編映画の撮影を許可しない方針となったとのこと)台詞も、英語も登場するけどロシア人同士で話すシーンはロシア語を使ったり、本物のバレエダンサーを起用したり、そして史実にもほぼ忠実な内容となっていて、ファインズの深いバレエ愛が感じられる作品となっている。クララ・セイント本人にも取材し、プロデューサーは彼女と仲良しになったとのことだ。

また後日、東京国際映画祭でのQ&Aセッションの内容もご紹介します。


レイフ・ファインズのインタビュー
https://2018.tiff-jp.net/news/ja/?p=50586

『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』

5月、TOHOシネマズ シャンテ、シネクイント、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

監督:レイフ・ファインズ
脚本:デヴィッド・ヘアー
出演:オレグ・イヴェンコ、セルゲイ・ポルーニン、アデル・エグザルコプロス、ルイス・ホフマン、チュルパン・ハマートヴァ、ラファエル・ペルソナ、レイフ・ファインズ
配給:キノフィルムズ/木下グループ
(c)2019 BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND MAGNOLIA MAE FILMS

この映画の原作となったジュリー・カヴァナ著「Nureyev: The Life」 映画の中に登場するのは、亡命するまでですが、彼の死まで追っており、非常に面白い一冊です。邦訳出してほしいです。

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2018/03/14

ミケーラ・デ・プリンスの自伝「夢へ翔けて ~戦争孤児から世界的バレリーナへ~」がマドンナにより映画化

YAGP(ユースアメリカグランプリ)の出場者を追ったドキュメンタリー映画「ファースト・ポジション―夢に向かって踊れ!」に出演して一躍有名になった、ミケーラ・デプリンス。現在はオランダ国立バレエのソリストとして活躍しています。

シエラレオネの戦争孤児だった彼女がアメリカ人の養父母に引き取られ、バレリーナになるという夢をかなえたその波乱に満ちた半生をつづった自伝「夢へ翔けて ~戦争孤児から世界的バレリーナへ~」が映画化されることになりました。しかも、この本を読んで感銘を受けたビッグスター、マドンナが自らメガホンを取り、監督することになりました。スタジオはMGMで2015年より準備が進められてきました。

http://variety.com/2018/film/news/madonna-directing-ballerina-movie-taking-flight-1202725212/

「ミケーラの旅路は、アーティストとしての私だけでなく、逆境を知っている活動家としての私の心にも深く響きました。シエラレオネに光を当て、ミケーラと共に育った孤児たちを代弁する存在としての彼女に、声を与えたいと思います。彼女の物語に命を与える機会を得られて誇りに思っています」とマドンナはコメントしています。

マドンナは、2008年の映画『ワンダーラスト』で映画監督デビューし、2011年には『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』を監督。これが3本目の作品となります。

「夢へ翔けて ~戦争孤児から世界的バレリーナへ~」は、多くの方に読んでいただきたい、とても勇気と希望を与えてくれる一冊です。養母エレインとの共著ですが、18歳の時にこれを書いたというのは素晴らしい文才です。

(私の感想)
戦争、両親の死と大変な苦難を生き抜き、アメリカに渡っても差別されるという現実に直面しながら、努力を重ねて夢の扉を開いたミケーラ。だけど、養母エレーンと共に書いたこの自伝では、等身大の彼女の姿が、素直な言葉で生き生きと綴られています。決して成功に酔うことなく、様々なトラウマや恐怖、姉妹となったミアとの友情と葛藤など、若い女の子ならではの視点で語られているので、とても好感度が高いです。翻訳もとても読みやすく、ルビも振ってあって小学校高学年くらいでもスルスル読めてしまうし、ドラマティックで感動的で、面白い内容です。

ミケーラ・デ・プリンスを追ったアメリカNBCのドキュメンタリー

オランダ国立バレエで「コッペリア」のスワルニダをリハーサルする映像。

オランダ国立バレエでの活躍の他、ENBの「ジゼル」にミルタ役でゲスト出演したり、ビヨンセのLemonadeのPVに出演するなどの活躍もしています。2年ほど前にKLMオランダ航空に載った時には、彼女が機内誌の表紙を飾っていました。

ミケーラ・デ・プリンスの公式サイト
http://www.michaeladeprince.com/

素晴らしい原作なだけに、映画化がとても楽しみです。

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2017/12/20

カルロス・サウラ監督『J:ビヨンド・フラメンコ』

『血の婚礼』(’81)、『カルメン』(’83)、最近では『イベリア 魂のフラメンコ』(’05)、『フラメンコ・フラメンコ』 (’10)などで知られる巨匠カルロス・サウラ監督の最新作が、『J:ビヨンド・フラメンコ』

http://j-beyond-flamenco.com/

待望、5年ぶりの日本公開となる最新作『J:ビヨンド・フラメンコ』で描かれるのは、監督の生まれ故郷、スペインのアラゴン地方が発祥とされる「ホタ」。フラメンコのルーツのひとつである「ホタ」を通し、フラメンコのフィールドの彼方に広がる、つつましくも陽気な民俗舞踊の多彩なスタイルを紹介。その奥深い魅力に迫る、至福のダンス&音楽エンターテインメントがここに完成した。めくるめく映像美で描かれる数々のダンスシーンは、絢爛豪華なエンターテインメントショーか、あるいはアート空間か──観る者を魅惑の世界へと誘うだろう。

「ホタ」という音楽の名前は初めて聞いたけど、フラメンコのルーツであるとはいうものの、非常に洗練されていて聴きやすい音楽であり踊りへと進化していた。この映画の中では、時代とともに進化していったホタの様々なスタイルを見せてくれる。土着的なものもあれば、とても現代的なものも。ノスタルジックだけど陽気で耳馴染みのいい音楽であり、出演する歌い手たちも魂がこもっていて素晴らしい。

少年少女たちがホタの基本ステップを学ぶレッスン風景から始まり、ラストは、町の広場のシーンで人々が祭りに繰り出すところで終わる。ホタがアラゴン地方では老若男女に愛され、生活に密着している様子がうかがえる。

ダンスのスタイルとしては、フラメンコ的な足を打ち鳴らす系というよりは軽やかな足捌き、そして上半身を高く保ち腕を高い位置に置いて優雅に保つ。チェロの独奏と共演する『ボッケリーニのファンダンゴ』では、男性ダンサー(元スペイン国立バレエ団でスペイン舞踊界のスターであるバレリアーノ・パニョス)のダンスが鮮やかで、クラシックバレエ的なテクニックも駆使している。女性群舞による『タランチュラ』は照明効果も駆使してとても洗練されて美しい。さらに大スターであるサラ・バラスとミゲル・アンヘル・ベルナのペアによる踊りは、情熱的で息が止まるほど目が吸い寄せられる。『町はずれ』は現代的で、ネオクラシックのバレエのパ・ド・ドゥを観ているようだ。

カルロス・サウラ監督の、映像の魔術師のような美しい照明とスタイリッシュな切り取り方で、多様なアプローチのダンスと音楽がめくるめくように繰り広げられて飽きない。その中で異色なのは、スペイン内戦後の授業風景を再現したパートで、ルイス・ブニュエル監督が脚本を手掛けたスペイン内戦初期のドキュメンタリーを引用している。また、最初の方では、1935年の「気高いアラゴン人の娘」というモノクロ映画のシーンも引用されていてホタの歴史をうかがい知ることができる。

フラメンコ界のトップダンサーも出演しているこの映画、フラメンコやスペイン音楽のみならず、音楽やダンスが好きな人だったら至福の時間を送ることができるだろう。めくるめく映像美、人々の日々の営み、喜びや悲しみと寄り添ってきたホタの心躍るリズムとメロディに酔いしれ、いくつもの舞台を観たような気になる贅沢な90分間だった。


監督 カルロス・サウラ
キャスト サラ・バラス/カニサレス/カルロス・ヌニェス/ミゲル・アンヘル・ベルナ
作品情報 2016年/スペイン/90分
受賞ノミネー ト第41回トロント国際映画祭 マスターズ部門正式出品
配給 レスペ

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2017/11/29

映画「新世紀、パリ・オペラ座」

パリ・オペラ座を支える人々を追ったドキュメンタリー映画新世紀、パリ・オペラ座が12月9日より劇場公開されます。

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http://gaga.ne.jp/parisopera/

フランスが誇る芸術の殿堂パリ・オペラ座は迷っていた。ルイ14世の時代から350年以上にわたる伝統を守ってきた彼らにも、時代の波は容赦なく押し寄せる。選ぶべき道は、歴史の継承か、新時代の表現か。

さらに史上最年少でバレエ団芸術監督に大抜擢され、"ナタリー・ポートマンの夫"としても注目を集めていたバンジャマン・ミルピエの1年半での電撃退任と、カリスマ・エトワール:オレリー・デュポン就任というマスコミをも巻き込んだ大騒動。

そして2015年11月、パリの劇場が襲撃された同時多発テロ。混迷を極めた今の時代に、彼らは自問し続ける。「今、オペラ座に求められるものは何なのか──?」

今までパリ・オペラ座を扱ったドキュメンタリー映画はたくさんありましたが、この作品はオペラを中心に描いています。でも、バレエファンであっても、劇場を愛する人にとっては面白いことこの上ないドラマが描かれています。

2015年1月から1年半ほどの期間で撮影されたこの作品。歌手育成プログラム、パリ・オペラ座アカデミーで学ぶ若いバス・バリトン歌手ミハイル・ティモシェンコ。教育プログラム「学校とオペラの10か月」で学ぶ子どもたち。そしてオペラ座総裁ステファン・リスナー。彼らのエピソードを中心に、激動の1年半を乗り切った劇場とそれを取り巻く人々が描かれます。

シーズンはじめのストライキでの公演中止、同時多発テロ、新制作『ニュルンベルクのマイスタージンガー』主演歌手の初日2日前のドタキャン、さらにバンジャマン・ミルピエの退任騒動と、よくもまあこれだけのトラブルが続いたものです。文化相からの圧力、チケット代金を値上げするべきかどうかという、劇場の存亡をかけた議論も登場します。なんとか劇場を走り続けさせようと奔走し、懸命に働く人々。そこには劇場と芸術への深い愛が感じられます。主演歌手が降板した場合にはこうやって代役を探すのか、というプロセスもとても興味深いです。

中でも印象的だったのが、ロシアの田舎から出てきたバス・バリトン歌手ミハイル・ティモシェンコの純朴さと真摯さ。大スター、ブリン・ターフェルのリハーサルを食い入るようにキラキラとした瞳で見入って素敵な会話を交わしたり、衣装合わせをしている時のワクワクした様子。誰もが彼を応援せずにはいられないことでしょう。そしてシーズン・オープニングのロメオ・カステルッチ演出『モーゼとアロン』に登場する「イージーライダー」という名前の巨大な雄牛は強烈なインパクトを残します。牛も演技指導をされてしまうとは!『ファウストの劫罰』のリハーサルでは、超人気テノール、ヨナス・カウフマンの姿も見られます。

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強烈といえば、もう一つの大きなドラマは、バンジャマン・ミルピエの退任の件。ダンサーたちから不満の声が上っていたミルピエに辞任を迫るリスナーの電話の様子が記録され、そして退任とオーレリー・デュポン新芸術監督の就任の記者会見の模様も登場します。退任を告げた時に誰もねぎらう様子がなくて、オペラ座の怖さが伝わる一瞬でした。同じくドキュメンタリー『ミルピエ パリ・オペラ座に挑んだ男』と併せて観るとより一層味わい深いところです。

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バレエのパートは少ないものの、怪我でなかなか舞台を観ることが難しい人気エトワール、エルヴェ・モローがミルピエの振付作品『La nuit s'achève』をリハーサルする様子が記録されているのは、ファンにとっては嬉しいこと。また、『ラ・バヤデール』ニキヤ役をリハーサルするアマンディーヌ・アルビッソン、そして影の王国のコール・ド・バレエを踊るスジェのファニー・ゴルスの舞台リハーサルも登場します。

華麗なパリ・オペラ座の舞台の裏で、多くの人が困難を乗り越えて劇場を支えていることが伝わる好ドキュメンタリー。それも、驚くほどドラマティックで面白いエピソードばかり。パリ・オペラ座バレエのファンにも、オペラファンにも、舞台芸術ファンにもぜひ観ていただきたい作品です。

Photo


「新世紀、パリ・オペラ座」

2017/12/9(土)よりBunkamuraル・シネマほかにてロードショー
上映劇場リスト
http://gaga.ne.jp/parisopera/theater/index.php


こちらはアメリカ版の予告編

監督ジャン=ステファヌ・ブロン
キャスト
<オペラ座総裁>ステファン・リスナー
<バレエ団芸術監督>オレリー・デュポン、バンジャマン・ミルピエ
<音楽監督>フィリップ・ジョルダン
<オペラ歌手>ブリン・ターフェル、ヨナス・カウフマン、オルガ・ペレチャッコ、ジェラルド・フィンリー、ミヒャエル・クプファー・ラデツキー、ミハイル・ティモシェンコ、ブランドン・ヨヴァノヴィッチ
<バレエダンサー>アマンディーヌ・アルビッソン、エルヴェ・モロー、ファニー・ゴルス

作品情報 2017年/フランス・スイス/111分受賞
ノミネート 2017年モスクワ国際映画祭 ドキュメンタリー映画賞受賞
配給 ギャガ

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2017/10/12

「ミスター・ガガ 心と身体を解き放つダンス」

イスラエルを代表するコンテンポラリーダンスカンパニーのバットシェバ舞踊団

「ミスター・ガガ 心と身体を解き放つダンス」は1990年から芸術監督・振付家を務めるオハッド・ナハリン(1952〜)に8年間に渡って長期密着取材したドキュメンタリー映画。その人生を振り返る貴重な資料映像と、代表的な公演の記録映像を数多く使用したダンスシーンとで構成されます。

また、「GAGA(ガガ)」と呼ばれる独自の身体能力開発メソッドを考案し、現代人の身体感覚や直感的な感性を目覚めさせてきたその世界に肉迫。本作を通して「ミスター・ガガ」と呼ばれるナハリンの創作の秘密が明らかになります。

http://mrgaga-movie.com/

作品のクラウドファンディングに参加したので、オンラインで視聴。オハッド・ナハリンの振付、そしてバットシェバ舞踊団のダンス、ダンスの無限の可能性と面白さを教えてくれる鮮烈な作品ばかりで、できる限りその作品は見続けていた。今月末にも、バットシェバ舞踊団の来日公演が予定されている。

この映画に登場するナハリンの半生は実に波乱万丈なもの。イスラエルのキブツに生まれ、徴兵されて第四次中東戦争に従軍する。遅い年齢でダンスを本格的に始めるものの、バットシェバ舞踊団に入団。そこに教えに来たマーサ・グラハムの目に留まり、ニューヨークのマーサ・グラハム舞踊団に入るものの、うまくいかず、ジュリアード音楽院とスクール・オブ・アメリカン・バレエ(SAB)でバレエを学び、彼のハンサムな容姿に惹かれたベジャールに見いだされて20世紀バレエ団に入団する。しかしここも合わずアルヴィン・エイリー舞踊団へ。ここで活動した後、自らのカンパニーを設立、そしてイスラエルに戻ってバットシェバの芸術監督に就任した。

ナハリンの半生が記録映像で、本人の語りによって伝えられるとともに、彼の代表的な作品の映像が挿入される。どれもダンサーたちの強靭な踊り、パワフルでメッセージ性のある振付、実にユニークで鮮烈な舞台づくりが魅力的に捉えられていて、ますます彼の作品を観たくなる。徴兵されての従軍での過酷な経験、ニューヨークでの苦労、愛する妻梶原まりの死、イスラエル建国50周年セレモニーでの出来事、それらを生き抜いた彼の強さとどこか漂ってくる優しさが印象的だ。巨匠なのにあくまでも穏やかで、すべての人々がダンスを楽しめて心を開放する独特のGAGAメソッドを指導する姿は実に楽しそう。

この作品を観て感じるのは、ダンスというのはすべての人々にとって、生きる力になりうるということ。ナハリンの幼少時のエピソードで、彼には自閉症の双子の兄弟がいて、彼とコミュニケーションをするために祖母が踊って見せたことに触発されて自分もダンスを始めた、と語っているのだが、実はこのエピソードは彼の創作によるものであることが明かされる。(こういう、どこか人を食ったところがあるところもナハリンらしい) だけど、ダンスにはそういった力があるということがこの映画を通じて伝わってくる。

イスラエル出身のハリウッド女優、ナタリー・ポートマンもイスラエルに戻った時にGAGAメソッドに出会って魅せられたと劇中で語っている。GAGAメソッドは、ダンサーだけでなく様々な年齢の一般の人々にも、自分の身体の無限の可能性と出会い、身体と心を開放させてくれるものだ。以前の来日公演で、実際にナハリンが指導するGAGAのクラスを受講したことがあったけれども、目から鱗が落ちるような新鮮でワクワクするような経験だった。

65歳になったナハリンは、先日、バットシェバ舞踊団の芸術監督を退くことを発表した。しかしながら、引き続きカンパニー専属振付家としての活動、そしてGAGAの普及活動は続けるという。来日公演「ラスト・ワーク」が楽しみでたまらない。そしてその前には、映画館の大きな画面で再び「ミスター・ガガ」を観て、ナハリンの作り出すダンスを味わいたいと思う。


監督:トメル・ハイマン/出演:オハッド・ナハリン、ナタリー・ポートマン、マーサ・グラハム、モーリス・ベジャール、マリ・カジワラ
2015年/イスラエル/100分/配給:アクシー株式会社、プレイタイム

2017年10月14日(土)ロードショー
シアター・イメージフォーラム他
http://www.imageforum.co.jp/theatre/movies/980/


バットシェバ舞踊団/オハッド・ナハリン
『Last Workーラスト・ワーク』

彩の国さいたま芸術劇場大ホール
2017年10月28日(土)、29日(日)各15時開演

世界はどこに向かっているのか。
わたしたちに今できることは何か―
オハッド・ナハリンのクールな知性と豊穣なイマジネーションが
バットシェバ舞踊団の強靭なダンサーたちとつくりあげた
現代へのひそやかなメッセージ。

http://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/4012

2017/08/03

ディズニーの実写版『くるみ割り人形』、ラッセ・ハルストレム監督、キーラ・ナイトレイ、ミスティ・コープランド、セルゲイ・ポルーニンら出演

ディズニーが実写版映画『くるみ割り人形』を製作するというニュースは以前に発表されていましたが、キャスト、公開日程が明らかになっています。

http://www.insidethemagic.net/2017/07/d23-expo-2017-nutcracker-four-realms-release-date-announced-walt-disney-studios/

http://www.slashfilm.com/the-nutcracker-and-the-four-realms-details-revealed/

http://www.imdb.com/title/tt5523010/

監督はラッセ・ハルストレム(『ギルバート・グレイプ』『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』『砂漠でサーモン・フィッシング』)。
出演は、金平糖の精にキーラ・ナイトレイ、ドロッセルマイヤーにモーガン・フリーマン、ジンジャーおばさんにヘレン・ミレン、クララにマッケンジー・フォイと、とても豪華です。

そしてミスティ・コープランドがバレリーナ役、役名は書いていませんがセルゲイ・ポルーニンも出演者の中に名前があります(踊る役なので金平糖の王子ではないかと)。

CGをふんだんに使ったプロダクションで、ねずみの王様は1000匹以上のねずみで表現されるのだけど、とても驚異的でクールな動きをさせるために、リル・バックのダンスの動きを捉えて表現させたとのことです。

題名は‘The Nutcracker and the Four Realms’ で、2018年11月2日公開予定です。

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