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映画

2021/08/17

映画『リル・バック ストリートから世界へ』

映画『リル・バック ストリートから世界へ』が8月20日より公開されます。

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http://moviola.jp/LILBUCK/

「人殺しになるより、ダンスがしたい」

ヨーヨー・マのチェロで踊った『瀕死の白鳥』スパイク・ジョーンズが撮影して投稿したことで、一躍有名になったダンサー、リル・バック。彼が育ったテネシー州メンフィスは、”メンフィス・ジューキン”というストリートダンスの発祥の地。クリスタル・パレスという名のローラースケートリンクでダンサーたちは毎週土曜日の夜に踊っており、リル・バックもジューキンに夢中になった。メンフィスは犯罪多発地帯であり、リル・バックも母親が父親に暴力を振るわれるというつらい体験をしたが、暴力と犯罪、貧困の世界から彼を遠ざけてくれたのがダンスだった。

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つま先を使って踊るジューキン。そのつま先の強化やバレエダンサーの強靭なテクニックを身に着け、ダンサーとして成長したくて、リル・バックは奨学金を得てバレエを本格的に学ぶ。ニュー・バレエ・アンサンブルというバレエ団では貧困家庭の子どもたちにダンス教育を施すため、ヒップホップのグループを招くという社会的なプログラムが提供されていた。芸術監督の提案で、クラシック音楽でジューキンを踊ってみることになり、彼のダンスを観たヨーヨー・マに招待されパーティで踊って映像を撮影されたことが、ブレイクのきっかけとなった。その後は、北京国家大劇院、ルイ・ヴィトン財団など数々の大きな舞台、マドンナとの共演などキャリアを積み重ねていく。メンフィスのルーツを大切にしている彼は、今も社会活動として、メンフィスで子どもたちにダンスを教えている。

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©️2020-LECHINSKI-MACHINE MOLLE-CRATEN “JAI” ARMMER JR-CHARLES RILEY

今や世界の数々の大きな舞台で踊っているリル・バックだが、人気のいないメンフィスの駐車場で踊る姿が一番美しくドラマティックに撮影されている。今は閉店してしまったクリスタル・バレスは、かつては若者たちが集まり毎晩のようにダンス合戦を行っていた伝説の場所。ここで様々なダンサーたちが踊っていた映像も美しく、失われてしまった光景なだけに、ノスタルジック。この作品自身が、メンフィスという街へのラブレターであるようだ。

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©️2020-LECHINSKI-MACHINE MOLLE-CRATEN “JAI” ARMMER JR-CHARLES RILEY

何より、リル・バックというダンサーのたぐいまれなダンスに惹きつけられる。とにかくつま先を強くしたくて朝から晩まで足が血だらけになるほど練習し、スニーカーを週に1足履きつぶしたという。「誰よりも長くつま先で踊れるようになってやる」。バレリーナがポワントで踊っているような、つま先立ちの踊りには驚かされる。さらに足首が柔らかく強靭で、強い軸を持っており、驚くほどしなやかでバランス感覚に優れている。そして床を滑るような動きも見せている。バレエのトレーニングを積んだことで、アカデミックな技術も身に着け、「瀕死の白鳥」に観られるような上半身の優雅でリリカルな動きには魅せられる。クラシックとストリートダンスが見事に融合した、これは彼にしかできない表現だろう。

 

パリ・オペラ座バレエの元芸術監督バンジャマン・ミルピエも彼の才能に惹かれた一人で、彼を「古典的なダンサー」と評した。パリのルイ・ヴィトン財団での公演にリル・バックを出演させ、これまた斬新だけど人形の苦悩が伝わってくる「ペトルーシュカ」を踊った。この公演にはパリ・オペラ座バレエのエトワール、マリ=アニエス・ジロも出演。そしてジョージアン・ダンスの超絶技巧の映像を「見て見て~」とミルピエがリル・バックにスマホで見せて彼が「わ~、すごい!」と興奮する場面がほほえましい。彼はバレエのみならず、いろんなジャンルのダンスを貪欲に取り入れている。

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©️2020-LECHINSKI-MACHINE MOLLE-CRATEN “JAI” ARMMER JR-CHARLES RILEY

「ストリートダンスは社会活動」

リル・バックはただただダンスが大好きで、踊ることを突き詰めて文字通り血のにじむような努力を重ねた結果、世界に羽ばたいた。しかしそこで決して彼は満足しない。新しい表現を追求すると共に、社会活動家として、メンフィスの子どもたち、青少年にもダンスを教えている。不景気が街を遅い、暴力、麻薬など犯罪が多いこの街で、ダンスに打ち込むことができれば、未来が開けるかもしれない。ダンスによって「無敵になれる」のだ。

心から愛したことに打ち込んで、ストリートダンスに革命をもたらし芸術にまで高めたリル・バック。困難な環境の中から夢を実現していく姿は、観る者にも希望を与えてくれて、胸を熱くさせてくれる。ダンスの躍動感も伝わってきて、ダンスを愛する人には特に大きく心を動かされるドキュメンタリーとなっている。

 

なお、Netflixで配信されているドキュメンタリー・シリーズ「Move -そのステップを紐解く-」のリル・バックとジョン・ブーズのエピソードも大変面白いので、ぜひこちらも併せて観ていただければ。

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©️2020-LECHINSKI-MACHINE MOLLE-CRATEN “JAI” ARMMER JR-CHARLES RILEY

8月20日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺他全国順次公開

原題:LIL BUCK REAL SWAN2019年|フランス・アメリカ|ドキュメンタリー|85

監督:ルイ・ウォレカン 配給:ムヴィオラ

公式サイト:http://moviola.jp/LILBUCK/

※先日、Zoomでリル・バックにインタビューさせていただきました。こちらのインタビューも後日お届けします。

2021/07/02

セルゲイ・ポルーニン出演映画『シンプルな情熱』7月2日より公開

7月2日より、Bunkamuraル・シネマほかにて、映画「シンプルな情熱」が公開されます。

アニー・エルノーの衝撃的なベストセラー小説を映画化。セルゲイ・ポルーニンがヒロインの情熱の対象を演じています。

http://www.cetera.co.jp/passion/

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©Julien Roche

アムールの国フランスの女性たちの深い共感を呼び、大ベストセラーを記録した「シンプルな情熱」、遂に映画化。ノーベル文学賞の候補にも名を連ねる作家アニー・エルノーが、1991年に発表した不世出の問題作、恋愛小説の傑作だ。エルノー自身の実体験が赤裸々に綴られ、日本でも人気作家から熱い支持を受け、大反響を巻き起こした。

 

昨年の九月以降、私は、ある男性を待つこと以外、何ひとつしなくなった―
パリの大学で文学を教えるエレーヌは、あるパーティでロシア大使館に勤めるアレクサンドルと出会い、たちまち恋におちる。自宅やホテルで逢瀬を重ね、彼との抱擁にのめり込んでいくエレーヌ。今まで通り、大学での授業をこなし、読書も続け、友達と映画館へも出かけたが、心はすべて彼に占められていた。年下で気まぐれ、既婚者でもある彼からの電話を待ちわびる日々の中、エレーヌが最も恐れていたことが起きる──。

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©Julien Roche

試写で拝見したこの作品に、コメントを寄せさせていただきました!

舞踊評論家 森菜穂美さん

恋にのめり込んで何も手につかなくなる状態を体験し、我が事のように感じた女性は多いのではないだろうか?
ポルーニンが残酷なほどに美しく撮られているので、彼のファンには見逃せない一本。

原作「シンプルな情熱」は、邦訳が出たときに買って読んで、衝撃を受けた一冊でした。打算もなく未来のことも一切考えず、ただひたすらに恋に夢中になった女性の心境が客観的な視点ながらも赤裸々に描かれている、恋愛小説の傑作でした。

この映画化は、原作の世界観を伝えながらも、描写は現代にアップデートされている部分も。大人の女性が一方的に恋にのめりこんで他のすべてのことを放り出し、愛する男性の連絡を待ちわびている姿は滑稽な部分もあります。一方で、過去形で語られているところで、自分を客観視し、これが刹那の恋であることを理解しているクールで分析的なところもあり、恋愛の真実も伝えています。大学教員でシングルマザーでもあるヒロインは、大切な一人息子をあわや轢き殺しそうになったり、放置してしまったりするほど恋に溺れます。せっせと下着やドレスを選ぶヒロインの様子が、恋に盲目的になっている様子をさらに強調しています。
その恋の相手であるアレクサンドルは謎めいたところのあるロシア人で、趣味趣向は全くヒロインと違うところにまた彼女は惹かれています。

アレクサンドル役のポルーニンは、今まで出演した劇映画の中で一番大きな役柄であり、フランス語も操っています。あまり感情をあらわにすることがなくミステリアスですが、ダンサーならではの鍛えられた肉体と洗練された身のこなしには説得力があり、この役柄にはぴったり。ヒロインが夢中になるのも理解できる残酷な美しさに満ちています。ラブシーンはかなり情熱的でエロティックなため、ファンの方は見逃せません。

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©Julien Roche

2020 年カンヌ国際映画祭 公式選出作品
2020 年サン・セバスティアン国際映画祭 コンペティション部門出品
原作:アニー・エルノー「シンプルな情熱」(ハヤカワ文庫/訳:堀茂樹)
監督:ダニエル・アービッド 出演:レティシア・ドッシュ、セルゲイ・ポルーニン、ルー=テモー・シオン、キャロリーヌ・デュセイ、グレゴワール・コラン/原題:Passion simple/フランス・ベルギー/フランス語・英語/2020/99分/日本語字幕:古田由紀子/R18/配給・宣伝:セテラ・インターナショナル/宣伝協力:テレザ ©2019 L.FP. Les Films Pelléas – Auvergne - Rhône-Alpes Cinéma - Versus production

 72日(金)Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

■公式サイト http://www.cetera.co.jp/passion/

絶版となっていた原作も、ハヤカワ文庫から発売されましたので、この機会にぜひ。

2021/02/11

マシュー・ボーンin シネマ「赤い靴」2月11日劇場公開

2月11日より、マシュー・ボーンin シネマ「赤い靴」(映画版)がBunkamuraル・シネマで劇場公開されます。(順次全国公開)

https://mb-redshoes.com/

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Photo by Johan Persson

アンデルセンの名作童話をもとに映画化されたクラシック映画の不朽の名作『赤い靴』。目くるめく幻想的な劇中劇シーンの美しさは、あらゆる映画のダンスシーンの中でも最も夢幻的で輝かしいものでした。この作品を舞台化したのがマシュー・ボーン。2016年に初演され、2017年にはローレンス・オリヴィエ賞で2部門受賞。米国ツアーではNYCBのサラ・マーンズ、当時ABTのマルセロ・ゴメスもゲスト出演しました。昨年夏に来日公演を行う予定が、コロナウィルス禍で残念ながら中止になってしまいましたが、2020年1月に収録された公演が映画館に上陸します。

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Photo by Johan Persson

名作映画をベースにしながら、ボーンならではの魔法のようなストーリーテリング手法が取られていて、とても見ごたえがあります。ボーン作品では欠かせないレズ・ブラザーストンの舞台美術が秀逸で、プロセニアム・アーチを活用して劇中劇の場面への転換が巧みに行われ、1940年代の当時のバレエ界の雰囲気を醸し出します。

オリジナルの映画「赤い靴」では、バレエ・リュスをモデルにしたバレエ団や登場人物が現れ、靴屋の役で登場するのはバレエ・リュスを代表するダンサー、振付家であるレオニード・マシーン。ヒロインのヴィクトリアは英国ロイヤル・バレエで活躍したモイラ・シアラーが演じました。そしてバレエ団の団長であるレルモントフは、バレエ・リュスを率いた興行師セルゲイ・ディアギレフがモデル。このレルモントフ役を、今回は20年ぶりにニュー・アドベンチャーズ作品に出演したアダム・クーパーが陰影たっぷりに演じます。

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Photo by Johan Persson

バレエ界が舞台なので、ボーン作品の中でもバレエ色が強く、題名通り赤いポワントシューズがモチーフなので、振付もバレエ寄りだけどボーンならではのユニークさは群舞に現れます。これはリファール作品か!とかバレエ・リュスらしさが衣装や装置に現れているので、この辺の知識がある人はニヤリとすることでしょう。最初のほうに出てくるのは、バレエ・リュス初期の作品「レ・シルフィード」。シャネルの衣装で知られるニジンスカの「青列車」そっくりの作品まで登場します。

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Photo by Johan Persson

ヒロインのバレリーナ、ヴィクトリアは踊ることを愛していると同時に、作曲家のジュリアンと恋に落ちて、バレエ、芸術への愛と個人としての愛に引き裂かれます。真の芸術家は芸術に身をささげるべきだというレルモントフの逆鱗に触れてバレエ団を去りますが、赤い靴に象徴される、バレエへの思いは断ち切りがたく…。一度赤い靴に魅せられたら、死ぬまでこの靴を脱ぐことはできず死ぬまで踊り続けなければならない、という芸術家の魂を描いています。アダム・クーパー演じるレルモントフは、ポワントを履いた足の彫像を愛でる偏執狂的な男で、ヴィクトリアに対する愛憎相容れた感情が見事に演じられていました。団員ロモラと結婚した愛人ニジンスキーを追放したディアギレフを思わせますが、ヴィクトリアに対する思いは、男女の愛ではなく、芸術を伝えるミューズ、手塩にかけて育てた芸術品に対する崇拝のようなものでした。

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Photo by Johan Persson

オリジナルの映画「赤い靴」は劇中劇の幻想的な美しさに圧倒されますが、ボーンはまた違った魔術的なアプローチで魅せてくれます。ヴィクトリアの劇中パートナーを演じるリアム・ムーアの踊りが魅惑的で、また靴屋/振付家のグレン・グラハムの濃いキャラクターによるダンスや群舞は強烈です。ヴィクトリア役のアシュリー・ショー、ジュリアンのドミニク・ノース、プリマ・バレリーナのミケーラ・メアッツァとニュー・アドベンチャーズのおなじみのダンサーたちが出演しているのもうれしいところです。

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Photo by Johan Persson

ボリス・レルモントフ(バレエ団プロデューサー)
アダム・クーパー
ヴィクトリア・ペイジ(新星バレリーナ)
アシュリー・ショー
ジュリアン・クラスター(苦悩の若き作曲家)
ドミニク・ノース
イリナ・ボロンスカヤ(プリマドンナ)
ミケラ・メアッツァ
イヴァン・ボレスラウスキー(プリンシパル)
リアム・ムーア
グリシャ・リュボフ(バレエマスター)
グレン・グラハム
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Photo by Johan Persson
演出・振付:マシュー・ボーン
舞台・衣装デザイン:レズ・ブラザーストン
照明:ポール・コンスタンブル
音響:ポール・グルーサス
音楽:バーナード・ハーマン
原作:映画『赤い靴』(監督:マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー)および、ハンス・クリスチャン・アンデルセンによる同名童話
先日、マシュー・ボーンのオンラインイベントが開催されました。そのアーカイブが今視聴できますので、ライブでご覧になれなかった方はぜひご覧ください。モデレーターはニュー・アドベンチャーズで活躍した友谷真実さんです。

このオンラインイベントの内容を一部紹介します。

マシュー・ボーンが初めてバレエに触れたのが、映画「赤い靴」だったとのことです。あまりバレエの舞台に接するような家庭に育っていなかったのでバレエとの出会いは映画でした。今まではバレエ作品を振り付けてきたけれども、今回はバレエ作品を離れて、映画をもとにバレエを作ろうと思ったとのこと。ドラマティックな物語であり、情熱と犠牲というテーマに惹かれてこの作品をバレエ化しようと思ったそうです。

アダム・クーパーは舞台版「赤い靴」のプレミアにやってきて、レルモントフ役を機会があれば演じたいとその時話しかけたそうです。「白鳥の湖」のリハーサルに手伝いしてきて、とても身体もよく動いて調子がよさそうだったので、出演をオファーしたとのこと。

映画をダンス化するにあたって、3人の人間関係をダンスを通して表現することに苦労されたとのこと。レズ・ブラザーストンとは感覚が似ており、美、芸術に対する感覚が似通っていて、調査のために一緒にモンテカルロにも出かけていきました。ボーンはヴィクトリアの衣装は作品の前半ではもっとつつましいものにしたいと思っていたのですが、彼はグラマラスなものにしたそうです。

昨年の来日公演は残念ながら中止になってしまいましたが、いずれこの作品は、来日公演に持って行きたいと願っているとのこと。映画からのインスピレーションに加えて、新しい要素も加えています。

音楽のバーナード・ハーマンはヒッチコックの「サイコ」や「めまい」などの映画音楽を手掛けており、別の作品で彼の音楽を使おうとしていたところ、「赤い靴」にぴったりだとボーンは気が付いたとのこと。彼の音楽は舞台作品では使われたことがないのだけど、とてもドラマティックでロマンティックでエキサイティングな音楽であり、これらの映画を見たことがない人、そして日本の皆さんにもこの音楽を楽しんでほしいと思っているそうです。

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Photo by Johan Persson

■配給:ミモザフィルムズ

■2021211日(木・祝)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開

撮影場所:サドラーズ・ウェルズ劇場/撮影時期:20201月/上映時間:97

提供:MORE2SCREEN/配給:ミモザフィルムズ/配給・宣伝協力:dbi inc.

後援:ブリティッシュ・カウンシル

© Illuminations and New Adventures Limited MMXX

【公式サイト】mb-redshoes.com

オリジナルの映画「赤い靴」劇中ダンスシーン(さすがにここだけは越えられなかった…)

2021/02/03

2月6日マシュー・ボーン出演『赤い靴』オンライントークイベント開催

英国バレエ界の鬼才マシュー・ボーンの話題作が映画『マシュー・ボーン IN CINEMA/赤い靴』として、2021211日(木・祝)よりBunkamuraル・シネマを皮切りに全国順次公開されます。

https://mb-redshoes.com/

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Photo by Johan Persson

クラシック映画の名作『赤い靴』(1948年)とアンデルセンの童話をもとに発表された本舞台は、2016年のワールドプレミアで開幕前にソールドアウトを記録、見事ローレンス・オリヴィエ賞2冠に輝き、「マシュー・ボーン史上、最高傑作」と評された話題作です。さらに20201月のロンドン公演を収録した本作では、世界的ダンサーのアダム・クーパーが20年振りにマシュー・ボーン作品に戻り、本作の象徴的なキャラクター、レルモントフを演じたことでも話題となりました。

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Photo by Johan Persson

『赤い靴』は、オリジナルの映画『赤い靴』の芸術への愛と現実世界の愛に引き裂かれるバレリーナの姿を描いているだけでなく、マシュー・ボーンならではのめくるめく魔術的な手法で、ダンスで雄弁に物語っていました。試写で拝見しましたが、ボーン作品の中でもダンスの比重が多く、胸に強く迫る作品でした。(後日作品評もアップします)アダム・クーパー演じるレルモントフはディアギレフをモデルとしているということもあり、登場する作品もバレエ・リュス的だったりして、バレエファンが観るとさらに面白いのではないかと思います。ボーン作品と言えば必ず美術を担当するレズ・ブラザーストンによる舞台装置も美しく効果的です。リアム・ムーア、アシュレー・ショー、ドミニク・ノース、グレン・グラハムらニューアドベンチャーズ作品に欠かせないキャストも、魅力を発揮していますし、なんといってもアダム・クーパーの渋く重厚な演技には圧倒されます。

この舞台版『赤い靴』は、2020年6月に日本公演が予定されていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて中止となってしまいました。しかし、この舞台を収録した映画が、今年2月11日に日本のスクリーンに初上陸します。

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Photo by Johan Persson

オンラインイベントについて

日本での映画公開を記念し、本作の振付・演出を手掛けたマシュー・ボーン氏をスペシャルゲストに迎え、オンライントークイベントの開催が決定しました。配給のミモザフィルムズのYouTube公式チャンネルから無料でライブ配信の予定です。マシュー・ボーンは、代表作『白鳥の湖』を始め、古典作品を斬新な解釈で甦らせてきた英国バレエ界を代表する振付家・演出家であり、イギリスの革新的なダンスカンパニー、ニュー・アドベンチャーズを主宰しています。

さらに、モデレーターとしてダンサー、振付家の友谷真実さんの参加も決定。友谷さんは、日本人で初めてニュー・アドベンチャーズに入団し、主役を演じた『くるみ割り人形』他、多くのマシュー・ボーン作品に出演しています。マシュー・ボーン氏本人をよく知る友谷さんの視点から、本作『赤い靴』の魅力について掘り下げていく予定です。また、イベントではファンからの質問コーナーも実施、事前に質問を受け付ける予定です。※期間限定でアーカイブ配信もある予定。

<マシュー・ボーン出演オンライントークイベント開催概要>

●日時:     26日(土)20:0021:00終了予定)

●配信方法:   ミモザフィルムズYouTube 公式チャンネルよりLive配信

         https://www.youtube.com/channel/UCQBeTDxe4Xx7uKUhpfjVT9g

●ゲスト:    マシュー・ボーン(振付家・演出家、ニュー・アドベンチャーズ主宰)

モデレーター: 友谷真実(ダンサー、振付家) *敬称略

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Photo by Johan Persson

【プロダクション】

演出・振付:マシュー・ボーン/舞台・衣装デザイン:レズ・ブラザーストン/照明:ポール・コンスタンブル

音響:ポール・グルーサス/音楽:バーナード・ハーマン

原作:映画『赤い靴』(監督:マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー)および、ハンス・クリスチャン・アンデルセンによる同名童話

【キャスト】

アダム・クーパー、アシュリー・ショー、ドミニク・ノース、ミケラ・メアッツァ、リアム・ムーア、グレン・グラハム 

撮影場所:サドラーズ・ウェルズ劇場/撮影時期:20201月/上映時間:97

提供:MORE2SCREEN/配給:ミモザフィルムズ/配給・宣伝協力:dbi inc./後援:ブリティッシュ・カウンシル

公式サイト https://mb-redshoes.com/

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Photo by Johan Persson

2021年211日(木・祝)よりBunkamuraル・シネマを皮切りに全国順次公開

2020/07/24

作曲家ハチャトゥリアンの実話を描いた映画「剣の舞 我が心の旋律」7月31日公開

第二次世界大戦下のソ連を舞台に、ロシアの音楽界を代表する巨匠、作曲家アラム・ハチャトゥリアンの若き日を描いた感動の実話「剣の舞 我が心の旋律」が7/31より公開されます。

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https://tsurugi-no-mai.com/

ハチャトゥリアンといえば、現在もコンサートでの演奏回数は屈指の名曲『剣の舞』を始め、浅田真央さんのバンクーバーオリンピックでメダルをもたらしたスケートプログラムでも有名な『仮面舞踏会』そしてボリショイ・バレエが今年予定されている来日公演で上演する『スパルタクス』など、数々の名曲を生み出した巨匠。実はこの『剣の舞』はわずか一晩で書き上げられたということで、その作曲にいたるまでのエピソードがこの映画です。

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<ストーリー>

 第二次世界大戦下のソ連。疎開中のキーロフ記念レニングラード国立オペラ・バレエ劇場は、10日後にお披露目するバレエ『ガイーヌ』のリハーサルに集中していた。しかし、アラムは振り付け家のニーナから修正を求められ、その上、文化省の役人プシュコフから曲を追加せよと難題を命じられる。過去にアラムとトラブルを起こしたプシュコフは、周囲を巻き込み復讐のチャンスを虎視眈々と狙っていたのだ。作曲家としての意地とアルメニア人としての誇りを胸にアラムはピアノに向かう。様々な感情が渦巻く中、鍵盤の上でひとつのリズムが踊り始めた。

第二次世界大戦中のソビエトで、粛清が吹き荒れるなど政治的な抑圧の中。当時はまだ新進作曲家だったハチャトゥリアンが、きわめて短い期日までに、新作バレエに、政治家の意図に沿う音楽を追加せよという理不尽な命令を受け、さらに監視までつけられながら自身のルーツであるアルメニアへの想いをこめて音楽を創造します。政治的な抑圧と自身の芸術家としての矜持の葛藤がテーマとなっています。隙あらば彼を失脚させようとする役人とスパイとして送り込まれたサキソフォン奏者もおり、追加振付を命じられた振付家とも衝突。この時代なので失敗すれば粛清か戦争の最前線に送られてしまうという絶対絶命のピンチで、ハチャトゥリアンは病気にもなってしまいます。

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緊張感あふれる描写の中、ひと時心を和ませてくれるのは、盟友である作曲家ショスタコーヴィチオイストラフが、陣中見舞いに来てくれたこと。3人の音楽家が楽団の演奏に飛び入りし、音楽談義をして楽しい時を過ごすシーンは非常に印象的です。

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バレエ作品の初演について描かれている作品なので、バレエシーンもところどころ挿入されています。これから最前線に送り込まれてしまう兵士たちのために、ダンサーたちが踊るシーンは切ない。そしてクライマックスの『剣の舞』は勇壮で大迫力の情熱の踊りが展開します。ハチャトゥリアンに想いを寄せるバレリーナ、サーシャも主要な登場人物として登場。もう一つのハチャトゥリアンの代表曲である「仮面舞踏会」が流れる中の二人の会話は、純粋な愛情と音楽の美しさが融合して何も起こらないのにとてもドラマティック。バレエファンにとっても当時の雰囲気が伝わってきて大変興味深いと思います。実際の撮影はハチャトゥリアンゆかりのアルメニア、エレバンの劇場で行われたとのこと。

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結果的にバレエ『ガイーヌ(ガヤネー)』の初演は大成功をおさめ、ハチャトゥリアンは巨匠への階段を昇って行くものの、その陰で涙を流し、押し潰されて散っていった人々の姿も描かれて苦さも残ります。また、映画『アララトの聖母』でも描かれた、トルコ軍による大虐殺という悲劇に見舞われたアルメニアに寄せるハチャトゥリアンの想いは胸を打ちます。

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バレエ『ガイーヌ(ガヤネー)』は現在では上演回数は少なくなってしまっていますが、作品が作られた経緯については、赤尾雄人さんの著書「これがロシア・バレエだ!」に詳しく書かれています。『剣の舞』パートはボリショイ・バレエ学校の来日公演やモスクワ音楽劇場バレエの来日公演で上演されたこともあるとのこと。振付は、ワイノーネン振付『パリの炎』の初演でテレーズ役を踊ったニーナ・アシ―ニモワ(キーロフ劇場の元キャラクターダンサーで、『ガイーヌ』の台本を書いた演劇学者コンスタンチン・ジェルジャーヴィィンの妻)。

初演は1942年12月9日、キーロフ劇場の疎開先であるモロトフ(現ペルミ)の劇場です。主役ガヤネー役はナタリア・ドゥジンスカヤ、アルメン役はコンスタンチン・セルゲーエフでアシーニモワも出演しました。初演は素晴らしい主演陣によって踊られ大成功を収めましたが、戦意高揚的な内容はやがて時代遅れとなり、1953年にボリショイ劇場で上演されるにあたってワイノーネンが振付けて大幅に改定され、音楽も全曲の3分の1をハチャトゥリアンが新しく作曲したとのことです。その後も新しい演出による上演がモスクワ音楽劇場、レニングラード・マールイ劇場、モスクワ国立クラシック・バレエなどで行われ、そのたびにハチャトゥリアンは手を入れたとのことです。

(これはボリショイ劇場、1964年の上演のワイノーネン版の映像で、ハチャトゥリアン自身が指揮しています)

(こちらはマリインスキー・バレエでの上演で、オリジナルのアシーニモワ振付。イスロム・バイムラードフ、カレン・イオアニシアンなどが出演、指揮はワレリー・オフジャニコフ)

アルメニア国立バレエ団が、マリインスキー劇場の白夜祭で上演した「ガヤネー」全幕。Vilen Galstyan振付、演奏はマリインスキー管弦楽団。

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<出演>

アンバルツム・カバニャン(アラム・ハチャトゥリアン)
ヴェロニカ・クズネツォーヴァ(サーシャ)
アレクサンドル・クズネツォフ(プシュコフ)
アレクサンドル・イリン(オイストラフ)
イヴァン・リジコフ(ブラーギン)
インナ・ステパーノヴァ(ニーナ・アニシモワ)
セルゲイ・ユシュケーヴィチ(デルジャーヴィン)

<スタッフ>

監督・脚本:ユスプ・ラジコフ
プロデューサー:ルベン・ディシュディシュヤン、カレン・ガザリャン、ティグラン・マナシャン
撮影技師: ユーリ・ミハイリシン
編集: デニス・ルザーノフ
音楽: アレクセイ・アルティシェフスキー、アンドラニク・ベルベリャン
配給:アルバトロス・フィルム

さて、私はこの映画の推薦コメントを寄せさせていただいています。バレエダンサーの柄本弾さん(東京バレエ団)、宮尾俊太郎さん(K-Ballet Company)、作曲家の池辺晉一郎さんなど錚々たるメンバーの中で大変恐縮していますが、大変な時にあっての芸術の素晴らしさと言論/表現の自由の大切さを謳っている素晴らしい作品なので、ぜひ音楽ファン、バレエファンはじめ多くの方に観ていただければと思っています。

永遠の名曲、美しくも勇壮なバレエの誕生秘話。ハチャトゥリアンの、芸術家としての、そして人間としての苦悩、政治と時代のうねりに押しつぶされていった名もなき芸術家たちの涙を、情熱みなぎる描写で、真摯に描く。
音楽を、芸術を、そしてバレエを愛する人に、今の時代だからこそ観てほしい、魂に深く響く名作。
森 菜穂美

劇場情報

7月31日(金)公開

新宿武蔵野館

kino cinema 立川高島屋 S.C.館

kino cinema 横浜みなとみらい

名演小劇場

他 シアター・キノ、テアトル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸、KBCシネマなど全国順次公開

 

2020/06/05

『マシュー・ボーン IN CINEMA/ロミオとジュリエット』6月5日より公開

新解釈版『白鳥の湖』でバレエ界に新風を巻き起こした英国バレエ界の鬼才、マシュー・ボーンの新作舞台『ロミオとジュリエット』が、いち早く日本のスクリーンに初登場します。試写を観たのはだいぶ前ですが、その激しさ、鮮烈さは忘れがたく、有料配信でもう一度観ました。

6.5(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショーされます。

http://mb-romeo-juliet.com/

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時代を超えて語り継がれてきたシェイクスピアの伝説的古典を、巨匠プロコフィエフの名曲に乗せてコンテンポラリー・バレエに大胆にアレンジした完全な新演出版。本プロジェクトのために新たに発掘された若い才能をスタッフ・キャストに迎え、不朽の名作に新たな風を吹き込んだ本作は、「2019年で最も待ち望まれた舞台!」と評され大絶賛をもって迎えられた。厳しい管理下に置かれ、自由を奪われ愛が禁じられた近未来を舞台に、運命に翻弄された2人の若き恋人たちの悲劇的な愛の物語が、まだ誰も見たことのない新世代の『ロミオとジュリエット』として蘇る。

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STORY

今からそう遠くない近未来、反抗的な若者たちを矯正する教育施設「ヴェローナ・インスティテュート」では、若者たちは男女別に分断、接触を禁じられ、厳しい監視下のもと自由を奪われて暮らしている。ジュリエットは、暴力的な看守のティボルトから目を付けられ、その脅威に怯えていた。ある日、有力政治家の両親から見放され施設に入れられたロミオは、施設で開催されたダンスパーティーでジュリエットと出会う。瞬く間に恋に落ちた2人は、看守の目を盗んで逢瀬を重ね、仲間たちに祝福されながら遂に愛を誓いあうのだった。しかし、幸せもつかの間、突如酒に酔ったティボルトが銃を振りかざして現れ、乱闘の挙句、仲間の1人マキューシオが命を落としてしまう。怒りに燃えるロミオとジュリエットたちは、ティボルトに立ち向かうも、さらなる悲劇が彼らを待ち受けていた…。

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様々な振付家が手掛けてきたバレエ版の『ロミオとジュリエット』。待ち望まれていたマシュー・ボーン版は、近未来の矯正施設に閉じ込められた若者たちの愛と死と暴力の物語。今まで見てきたどの『ロミオとジュリエット』よりも疾走感があって激しく、鮮烈で痛ましく残酷だ。真っ白い矯正施設のベッドの上で血まみれになってこと切れているロミオとジュリエットの死体が冒頭に映し出されるところからして強烈だ。

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矯正施設に閉じ込められて自由を奪われた若者たちを暴力で支配する残忍な看守のティボルト。裕福な両親によってこの施設に入れられてしまう気弱な青年ロミオ。奔放な魅力のある少女だがティボルトにしつこく目を付けられて怯えているジュリエット。マキューシオとバルサザールという男性カップル。若者たちのやり場のないエネルギーが全編ほとばしりパワフルなダンスが次から次へと繰り広げられる。ジュリエットとロミオのバルコニーのパ・ド・ドゥも情熱的で、内に秘めていた二人の思いが激しく炸裂している。二人が床の上を転がりながらもリフトも展開され、バルコニーも有効に使って力強い。極限状況の中でどうしようもなくお互いを求めあう熱情が伝わる最後のパ・ド・ドゥは痛ましくも美しい。レズ・ブラザーストンによる舞台装置はシンプルながら非常に効果的で、真っ白な矯正施設が行き場のない閉塞感を象徴している。白い制服を着せられたダンサーたちのなかで、赤い髪のジュリエット、そして流れる赤い血が鮮やかに浮かび上がる。暴力とトラウマがメーンのモチーフとなっていて、そのトラウマが結局恋人たちを破滅へと追いやってしまうのだ。

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音楽の順番を大胆に入れ替えた意外性とキャラクターの設定変更もユニークだ。1時間30分ほどの上演時間があっという間に通り過ぎ、見たことのない衝撃に心撃ちぬかれる、そんな痛ましくも熱情溢れる作品。ぜひ大スクリーンで体験してほしい。『シンデレラ』や『マシュー・ボーンの『白鳥の湖』『眠れる森の美女』などで主演してきた繊細さと大胆さのバランスが絶妙なコ―デリア・ブライスウェイト、やはり『シンデレラ』で頭角を現した若く美しいパリス・フィッツパトリックなど、若いキャストが活躍するのも、この作品の焦燥感、疾走感に寄与している。

恵比寿ガーデンシネマでの上映スケジュール
6月5日(金)〜11日(木)は
10:30/15:40/17:50

【プロダクション】演出・振付:マシュー・ボーン/舞台・衣装デザイン:レズ・ブラザーストン/照明:ポール・コンスタンブル/音響:ポール・グルースイス/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

【出演】ロミオ:パリス・フィッツパトリック/ジュリエット:コーデリア・ブライスウェイト/ティボルト:ダン・ライト/マキューシオ:ベン・ブラウン/バルサザー:ジャクソン・フィッシュ

撮影場所:サドラーズ・ウェルズ劇場/撮影時期:2019年/上映時間:91

提供:MORE2SCREEN 配給:ミモザフィルムズ 配給・宣伝協力:dbi inc.

後援:ブリティッシュ・カウンシル

© Illuminations and New Adventures Limited 2019

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2020/03/05

ロイヤル・バレエの映画『ロミオとジュリエット』金曜日より公開、ウィリアム・ブレイスウェルとフランチェスカ・ヘイワードにインタビュー

ケネス・マクミラン振付の名作を英国ロイヤル・バレエの若手ダンサーが出演し、ロケーションで撮影した映画『ロミオとジュリエット』が明日金曜日より公開されます。
https://romeo-juliet.jp/

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先日もこの映画の感想を書きましたが、主演のロイヤル・バレエ、ウィリアム・ブレイスウェルフランチェスカ・ヘイワードにインタビューしましたので、ご紹介します。

ウィリアム・ブレイスウェルのインタビュー(クラシカ・ジャパン)

https://www.classica-jp.com/column/14214/

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「輝く英国ロイヤル・バレエのスター達」で来日したウィリアム、実物は写真よりずっと素敵で年齢よりも若く少年っぽいところがロミオにピッタリです。本当に好青年でした。

こちらのウィリアムのインタビュー記事も担当しています。

http://www.astage-ent.com/cinema/romeo-juliet.html

こちらのウィリアムのインタビューは、高橋森彦さんによるもの

https://spice.eplus.jp/articles/265643

 

そして名作ミュージカルを映画化した話題作『キャッツ』に白猫のヴィクトリア役で主演したフランチェスカ・ヘイワードにもインタビューしました。『キャッツ』のキャンペーンで来日した時のものです。このインタビューの聞き手をしています。

フランチェスカとのインタビューの記事はこちらです。

https://www.fashion-press.net/news/58753

 

多忙なスケジュールの中でジャパン・プレミアや天皇皇后ご一家とのチャリティ試写会などを縫ってのインタビューでしたが、とても明るく感じよく、そして誰もが惹きつけられるような魅力の持ち主でした。天性の女優であることは映像を観て頂ければすぐにわかると思います。

バレエの『ロミオとジュリエット』を何回も観ている人も、全く新しい魅力を感じることができる映画です。バレエを観ていない方も、台詞のないバレエがこんなにも雄弁であることを知ってもらえると思います。劇映画ならではのカット割りや演出も新鮮ですが、監督のバレエ・ボーイズの二人はもともとロイヤル・バレエのダンサーであり、バレエを知り尽くしているため、的確にとらえてくれています。

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映画『ロミオとジュリエット(原題:ROMEO AND JULIET: Beyond Words)』

https://romeo-juliet.jp/
2020年3月6日(金)より、TOHOシネマズシャンテほか、全国ロードショー

■制作:マイケル・ナン、ウィリアム・トレヴィット
■監督:マイケル・ナン
■撮影監督:ウィリアム・トレヴィット
■エグゼクティブ・プロデューサー:ケヴィン・オヘア
■振付:ケネス・マクミラン
■音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
■美術:ニコラス・ジョージアディス
■指揮:クン・ケセルス
■管弦楽:英国ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団

■キャスト:
ジュリエット:フランチェスカ・ヘイワード
ロミオ:ウィリアム・ブレイスウェル
ティボルト:マシュー・ボール
マキューシオ:マルセリーノ・サンベ
ベンヴォーリオ:ジェームズ・ヘイ
パリス:トーマス・モック
キャピュレット卿:クリストファー・サンダース
キャピュレット夫人:クリステン・マクナリー
乳母:ロマニー・パイダク
ロレンス神父:ベネット・ガートサイド
ロザライン:金子扶生

2020/03/04

映画『ダンサー そして私たちは踊った」

スウェーデン・アカデミー賞(ゴールデン・ビートル賞)で【最多4部門受賞】(作品賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞)した映画「ダンサー、そして私たちは踊った」が公開中です。

http://www.finefilms.co.jp/dance/

昨年内覧試写で拝見したのでだいぶ時間が経ってしまったのですが、今も鮮烈な印象があって心を揺さぶられ、劇場公開されたらまた観たいと切実に感じました。ダンサーがなぜ踊るのかという根源的な問い、表現とは、踊ることとは何かを突きつけられる作品なので、ダンスに魅せられた人、そしてダンサーはぜひ観てほしいと思いました。

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ジョージアの国立民族舞踊団のジュニアカンパニーで稽古に励むメラブ。ある日彼の前に、新しく入団した男性ダンサー、イラクリが現れる。メーンダンサーに入団する座を争うライバルではあるものの、彼に惹かれてしまう気持ちを抑えられないメラブだったが…。

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ジョージアの文化、ジョージア民族舞踊では男性性が非常に重要であり、主人公メラブは華奢で繊細なダンサーで評価されにくい。同性愛がご法度の国で、舞踊団に現れた男性ダンサーに惹かれる気持ちが、彼を混乱させつつも解放していく。本当に自分らしく生きること、自分らしく踊りたいという切実な想いだ。

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メラブを演じたレヴァン・ゲルバヒアニが実際にジョージア舞踊、バレエを経験して今はコンテンポラリーダンサーであるということが生きている。特にラストシーンでの、最初は伝統的なダンスから、やがて発展していく、魂を解き放つような即興性の強いダンスは、彼の心情を何よりも強く物語って心を揺さぶり、なぜ私たちがダンスというものに惹かれてやまないのかを見せてくれる。恋愛はあくまでもメラブが変わっていくきっかけであって、この物語の主眼ではない。イラクリに譲られ、オーディションで着用した民族衣装は、とても美しいものであったが。

まだ21歳というレヴァン・ゲルバヒアニは演技未経験者とのことだけど、非常に寡黙ながらもしなやかな身体による雄弁な身体表現と繊細な目の演技でメラブの心境を語っていて、スウェーデン・アカデミー賞や、いくつもの映画祭で主演男優賞を受賞するなど高く評価されたのも納得。

ジョージア民族舞踊に限らず、ダンスというものが台詞の代わりに作品の世界観と物語性を伝えている。メラブとイラクリが一緒に練習するところの緊張感。友人の家に仲間で遊びに行ったときに、「Honey」に合わせてウィッグをかぶって奔放に踊るところ、兄の結婚式での伝統的な踊りの祝祭感、ゲイクラブでのダンス。ダンス映画としてとても秀逸な表現だ。ダンスとは、生きることで、命を削りながら踊るダンサーの姿がここにある。ABBAからスウェーデンのポップス、そして打楽器を多用した民族音楽まで、音楽もとても作品の世界観にマッチしていて良い。

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一方でこの映画は、現在のジョージア社会を見せてくれて興味深い。豊かな民族文化を感じさせる、伝統的で美しい結婚式が行われている一方で、誰もがスマホを使っている。貧富の差が激しく、メラブの父も海外の有名な劇場でも踊った国立舞踊団のダンサーだったのに今はとても貧しい。そして同性愛が禁忌で追放されたダンサーもいた。この国でダンサーとして生きる困難さも描かれている。貧しくてレストランのアルバイトを掛け持ちし、携帯電話代にも事欠き、自宅は頻繁に停電する。同居する家族ともそれほど仲良くない。ダンサーとしては、男性性が足りずジョージア舞踊の型にはまらず国立舞踊団のメインカンパニーに入れるかわからない。同性に惹かれる気持ちはこの社会では受け入れられない。過酷で出口の見えない現実。しかしダンサーは自分だけのダンスを踊り続けるしかないのだ。

幼い頃から一緒に踊ってきた女性ダンサーのマリと、トラブルメーカーながら男気はある兄との心の触れ合いには心温まるところもあって、青春のきらめきを伝える映画としても、とても心に響くものだった

映画『ダンサー そして私たちは踊った』
公開日:
・2020年2月21日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町およびシネマート新宿ほかにて全国公開 (劇場情報はこちら
監督:レヴァン・アキン
出演:レヴァン・ゲルバヒアニ、バチ・ヴァリシュヴィリ、アナ・ジャヴァヒシュヴィリ
原題:And Then We Danced
配給:ファインフィルムズ

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昨年12月の「のむコレ!」での舞台挨拶では、レヴァン・ゲルバヒアニが登場。すらっとしていて脚が長く、とても流暢できれいな英語を話していました。

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レヴァン・ゲルバヒアニは実は日本のアニメが好きで、「千と千尋の神隠し」のポスターが劇中に登場しますが、これは彼の私物です。カオナシのタトゥーも掘っているとのこと(見せられない場所にあるそうですが映画では少し見えます)。「デスノート」や「ワンピース」なども好きなのだそうです。劇中でメラブの心境の変化があり、部屋のポスターははがされていますが、この「千と千尋の神隠し」のポスターははがされないで残ります。彼の変わらない部分を象徴させているとのことでした。

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マリ役のアナ・ジャヴァヒシュヴィリは高校時代からの実際の友人で打ち解けた仲だそうです。イラクリ役バチ・ヴァリシュヴィリとはオーディションで出会い、撮影中に親しくなった。頭が切れて、ニュースやビデオを良くチェックしていて、とても良い人だけど物事に没頭していて、時間に遅れがちなんだそうです。

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彼はInstagramの投稿で監督に見いだされてオファーをされたのだけど、何回も断り、そして家族や友人にも相談したのですが、最終的には社会正義に関わることができるのではという気持ちで受諾したと語っていました。この作品はジョージアでは上映反対運動が起き、プレミア上映では反対する大きなデモまで起きたのですが、後悔はないし、結果としてジョージア社会を揺るがすことができたと。そのこともこの映画の目的とのことです。

サプライズで監督のレヴァン・アキンも登場しました。ジョージア系のスウェーデン人で、この作品はジョージアへのラブレターとのことです。

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やはりラストのシーンの伝統的なダンスからコンテンポラリーに移行していくところは、メラブが自由に解釈して即興的な部分を入れて、自分の心情を入れて踊るという場面だったとのことです。

困難な世界の中で、自分を貫き通し、新しい世界へと旅立っていく青年の葛藤をダンスを通して描いた青春映画の傑作、ぜひ観てほしいと思います。

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2019/06/06

映画「氷上の王 ジョン・カリー」

 「氷上の王 ジョン・カリー」

https://www.uplink.co.jp/iceking/

試写で拝見しており、Twitterに感想を書いただけでこちらには書いていなかったので、遅くなりましたがぜひ多くの方に観ていただきたいので、こちらにも書きます。

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高い芸術性でフィギュアスケートに革命をもたらし、1976年のインスブルック・オリンピックで金メダリストとなったジョン・カリーの栄光と孤独、苦悩を描く。バレエダンサーになりたかったが、父親に男らしくないと反対されたために、アスリートであるフィギュアスケート選手となったカリー。彼のスケーティングが圧倒的に美しく、その演技を観るだけで涙してしまう。多くの貴重な映像が登場している。

カリーのスケーティングはエレガント過ぎると当初は評価されず、最初はスーパーでアルバイトをするなど苦労した。だが美しさだけでなく音楽性も素晴らしく、オリンピック金メダルをもたらした「ドン・キホーテ」は美しく音楽的な上に、技術的にも見事だった。プロ転向後の「牧神の午後」の芸術性の高さはまさにバレエを見ているかのようで、ニジンスキー版やロビンス版よりも美しいと感じてしまうほどだ。「シェヘラザード」の官能性も見事で、フィギュアスケートでこのような表現ができるとは、驚くほどである。

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カリーは自身のカンパニーを率いてフィギュアスケートとバレエの融合を目指すという夢に身を捧げ、メトロポリタンオペラハウスやロイヤルアルバートホールで公演を実現し、幅広くツアーを行うも無一文となる。そして44歳の若さで、AIDSで命を落とす。

2019/02/06

ヌレエフの亡命劇を描く映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』5月劇場公開

何回かこちらのブログで紹介してきた、ヌレエフの亡命劇を描く映画『The White Crow』が、『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』の邦題で劇場公開されることになりました。

https://eiga.com/news/20190205/8/

レイフ・ファインズ監督によるこの作品は、昨年の第31回東京国際映画祭のコンペティション作品に選ばれ、私も上映を2回とも観ることができ、ファインズとプロデューサーのQ&Aセッションも聞くことができました。東京国際映画祭では、最優秀芸術貢献賞を受賞しました。
https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CMP16

20世紀のバレエ界を代表するバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフが1961年にパリで亡命を果たした亡命劇を中心に、故郷ウファでの幼年時代、ワガノワ・バレエ・アカデミーでの学生時代、そしてキーロフ・バレエ団に入団してから亡命するまで、という3つの時制を交互に描いています。

ヌレエフ役には、タタール歌劇場の現役プリンシパルダンサーであるオレグ・イヴェンコ。ヌレエフのワガノワ・バレエ・アカデミーでの師匠であるプーシキンを、レイフ・ファインズが流暢なロシア語を操って演じています。パリで友情をはぐくみ、亡命の手引きをするクララ・セイント役を「アデル、ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロス。プーシキンの妻クセニアには「ルナ・パパ」のチュルパン・ハマートヴァ、ピエール・ラコット役はラファエル・ペルソナ、そしてヌレエフのライバル、ユーリ・ソロヴィヨフをセルゲイ・ポルーニンが演じているのも話題です。

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<レビュー>

バレエ界に燦然と輝けるレジェンド、ルドルフ・ヌレエフ役を演じる俳優を見つけるのは簡単なことではなかったと思う。映画祭のQ&Aで、ファインズは、演技ができるダンサーを求めてロシア中でオーディションを行ったとのこと。イヴェンコはウクライナ出身だが、ヌレエフの頬骨が高いエキゾチックな顔立ちを少し思わせるところもあり、射貫くような大きな青い瞳が印象的。現役プリンシパルであると共に、テレビ番組「ビッグ・バレエ」にバレエ団を代表して出場するなど、バレエの実力も折り紙付き。若きヌレエフのギラギラした野心、自由を求めてやまない心、新しい文化を吸収していく生き生きとした様子を繊細に、そして大胆に演じており、とても初めて演技に挑戦するとは思えないほどだった。

この映画は、本物のバレエダンサーを使って、実際のワガノワ・バレエ・アカデミー、マリインスキー劇場、ガルニエ宮、エルミタージュ美術館、ルーヴル美術館でロケを行っているという本物志向のところがまず素晴らしい。ヌレエフ役のオレグ・イヴェンコはもちろんのこと、もう一人の伝説的なダンサー、ユーリ・ソロヴィヨフ役にセルゲイ・ポルーニン。ソロヴィヨフはパリでヌレエフと同室で、ラコットらとの外出にお目付け役として同伴しているものの、この映画の中では大きな役ではない。しかしながら、ポルーニンのクラスレッスンの時のひときわ大きな跳躍や、舞台の上で見せる踊りは華やかで、まさにスターのものである。(ユーリ・ソロヴィヨフは、30代半ばで自殺するという悲劇的な運命をたどる) イヴェンコの踊る場面も、伝説的なヌレエフのパリでの最初の踊り『ラ・バヤデール』はじめ、たくさん観ることができる。

さらに、伝説的なスター・バレリーナだったナタリア・ドゥシンスカヤ役を演じているのが、ハンブルグ・バレエの元プリンシパル、アンナ・ポリカルポヴァ。ポリカルポヴァはハンブルク・バレエに移籍する前には、マリインスキー・バレエで踊っており、美しい金髪のグラマラスなバレリーナで、ひときわ印象的。ヌレエフと踊る場面も出てくる。ドキュメンタリー映画『ボリショイ・バビロン』に出演していたボリショイ・バレエのソリスト、アナスタシア・メスコーワもバレリーナの一人として出演している。

ヌレエフの故郷での幼年時代、ワガノワ・バレエ・アカデミー時代、そしてパリと、3つの時制を行き来するという演出も、ヌレエフの内面を描くうえで実に効果的な演出となっている。映像のルックもそれぞれ異なっており、少年時代の寒々としてモノクロに近い映像、少し色あせた60年代風のパリの様子と時代の違いがよく分かるようにできている。

ワガノワ・バレエ・アカデミーのパートでは、最初なかなか伸びないヌレエフが直訴して、放校になりそうなところを名教師プーシキンのクラスに代えてもらい、ぐんぐん伸びて行く。ついには自宅にヌレエフを住まわせるプーシキンの、弟子に向ける愛情。映画の冒頭で、ヌレエフが亡命した後に尋問されるプーシキンの、困惑した表情が印象的だ。

パリのパートでは、初めて西側に渡って自由世界の空気を吸うヌレエフ。ルーヴル美術館の開館前に行ってジェリコ「メドゥース号の筏」に見入る。(対をなすように、エルミタージュ美術館ではレンブラントの「放蕩息子の帰還」を観ている。これは父親的な存在のプーシキンと、ヌレエフの関係を象徴させている) 振付家のピエール・ラコットと終演後のパーティで知り合い、親しく交流し、クララ・セイントにも出会う。パリの夜がグラマラスに、魅惑的に描かれている。その中で、ヌレエフは自由に生きたいという思いを募らせていく。鉄道の中で生まれたヌレエフが、パリで鉄道模型を買い集めるというエピソードはほほえましい。

そして空港での亡命シーンの息詰まるような緊迫感。ピエール・ラコット本人に取材して、実際に亡命の瞬間にヌレエフはどのように動いたかということまで再現してもらったとのこと。一人一人の登場人物が立体的に描かれて、手に汗を握る演出の手腕は見事なものだ。まさに自由への飛翔。

エンドロールでは、実際のヌレエフ本人が踊る映像が使われている。オレグ・イヴェンコはロシアのダンサーらしい、ダイナミックなテクニックの持ち主だけど、流石にバレエ界の伝説、ヌレエフのカリスマ性というのはなかなか再現するのは難しく感じた。

それでも、構想20年、ファインズの強い思い入れが感じられる、魂の感じられる作品であると思う。ファインズはロシア語を習得し、ロシアに足しげく通ってワガノワ・バレエ・アカデミー校長のニコライ・ツィスカリーゼとも親交を結び、資金を調達するために監督に専念するのではなく自らも出演。特にエルミタージュ美術館は、撮影許可を取るのが非常に困難だったところを、実現させた。(ソクーロフの『エルミタージュ幻想』での撮影でトラブルがあったので、長編映画の撮影を許可しない方針となったとのこと)台詞も、英語も登場するけどロシア人同士で話すシーンはロシア語を使ったり、本物のバレエダンサーを起用したり、そして史実にもほぼ忠実な内容となっていて、ファインズの深いバレエ愛が感じられる作品となっている。クララ・セイント本人にも取材し、プロデューサーは彼女と仲良しになったとのことだ。

また後日、東京国際映画祭でのQ&Aセッションの内容もご紹介します。


レイフ・ファインズのインタビュー
https://2018.tiff-jp.net/news/ja/?p=50586

『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』

5月、TOHOシネマズ シャンテ、シネクイント、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

監督:レイフ・ファインズ
脚本:デヴィッド・ヘアー
出演:オレグ・イヴェンコ、セルゲイ・ポルーニン、アデル・エグザルコプロス、ルイス・ホフマン、チュルパン・ハマートヴァ、ラファエル・ペルソナ、レイフ・ファインズ
配給:キノフィルムズ/木下グループ
(c)2019 BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND MAGNOLIA MAE FILMS

この映画の原作となったジュリー・カヴァナ著「Nureyev: The Life」 映画の中に登場するのは、亡命するまでですが、彼の死まで追っており、非常に面白い一冊です。邦訳出してほしいです。

Nureyev: The Life (Vintage)
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