『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』 Michael Jackson THIS IS IT
監督:ケニー・オルテガ
振付:マイケル・ジャクソン、トラヴィス・ペイン
音楽監督:マイケル・ビアーデン/
公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/michaeljacksonthisisit/
2009年6月に急逝したマイケル・ジャクソン。その死の直前まで行われていた、幻のツアーリハーサルをドキュメンタリー映画化。100時間にも及ぶリハーサルを編集して作り上げたという。彼の死についてはまったく扱われていなくて、ほとんどがリハーサルシーンで、時々ダンサーやバックシンガー、ミュージシャン、そしてスタッフたちのコメントが入るという形式。
50歳になっていたマイケルの10年ぶりのコンサートツアー。その年齢と、この映像収録後に亡くなってしまったという事実が信じられないほど、マイケルの動きは人間離れしていて見事だ。カメラはマイケルの顔のクローズアップを避けて、踊る彼の全身を捉えてくれていることが多く、いかに彼が傑出したダンサーであったかということを再発見できる。と同時に、一つのステージが多くの人々の手を経て創り上げられていくプロセスを見ることができて、すごく面白い。
ダンサー、マイケルの凄さについては、作品冒頭の若いダンサーたちの熱いコメントが図らずも物語っている。彼のツアーで踊るダンサーのオーディションがあると聞いて、翌日には飛行機に飛び乗ったというオーストラリアのダンサー。世界中から、マイケルにあこがれ続けていた才能が集結した。オーディションのシーンも圧巻で、若く美しく才能溢れた大勢のダンサーたちがマイケルの前で踊る。踊りが上手くて、グラマラスな容姿を持っているだけではダメ、人の目を惹きつける華がないと、とオーディションの担当者は語る。そして選び抜かれた若いダンサーたちと踊っても、マイケルの踊りは傑出しているのだ。映画の終盤、「ビリー・ジーン」のリハーサルで何者かに取り付かれたように、神のように踊るマイケルを見て、出番を待つダンサーたちやスタッフたちが熱狂的な喝采を送る様子も印象的だった。
マイケル・ジャクソンが歌手、そしてダンサーとしてとてつもない才能の持ち主だったということだけでなく、プロデューサーとしても一流だったということがよくわかる。バックダンサーたちの振り付け、舞台演出、音の出し方まで細心の注意を払い、一つ一つ細かく、的確に指示している。舞台の演出はマジカルなイマジネーションで溢れている。「ビリー・ジーン」で、ダンサーが脱いだジャケットが燃えるなんて演出、見てみたかった。バックに使われる映像にしても、ブルーバックを使って大胆な演出を行っている。「ギルダ」のリタ・ヘイワースが投げた手袋を受け止めたり、「三つ数えろ」のハンフリー・ボガートに追われたり。圧巻だったのが「スリラー」で、3D映像であのPVを再現しているだけでなく、映像に続けて舞台の上にも墓場が出演してゾンビたちが踊るのだから!このコンサートツアーが実現していたら、どんなにとてつもない伝説的なステージになったことだろうか。
また、アマゾンの自然を中心に地球の環境を守らなくてはならないというマイケルの真摯なメッセージが伝わってくる「Earth Song」の映像にも、心を鷲づかみにするようなパワーがあった。
そんな「神」のようなマイケルだけど、謎とスキャンダルに包まれていた彼が、実際にはスタッフに細やかな気配りを忘れない、腰が低くて心優しい人柄であったという人間らしい素顔も見えてくる。細部にまでこだわるところには、彼の神経質なところも伺える。けれども、全身全霊をこのコンサートツアーに注ぎ込みつつも、大きな愛でスタッフを包み込み、彼らを家族同然に思っているのが伝わってくる。(「スリラー」の映像撮影を、チュパチャップスを舐めながら見ているマイケル、可愛い)だから、スタッフたちも、彼にアーティストとしての尊敬を隠さず、彼と仕事ができることを幸せに思っていると目を輝かせながらコメントしており、その中には嘘や偽りの一片もない。これらのコメントは、リハーサルの最中に取られたものなので、その時点では、彼らもマイケルがこんな形で急にこの世を去ってしまうということは夢にも思わなかっただろう。希望と喜びに満ちていた彼らが、突然の訃報にどれほど打ちひしがれていただろうかと思うと胸が痛む。スタッフ一人一人に焦点を当てている様子からも、彼がスタッフを大切にしていたのが伝わってきた。
リハーサルだけで、これほどまでに凄いインパクトがあって圧倒的なステージ、それが幻となってしまったこと、そしてマイケルがこの世にいないということが、この世界にとってとてつもなく大きな損失だったということを改めて実感させられた。リハーサルの映像だから、パフォーマンスには観客がいない。どんなにか、彼は観客の前で歌い踊りたかったことだろう。衣装デザイナーが衣装について語り製作に当たるシーンでは、きらびやかな石を縫い付けるためにサングラスが必要なほどと言っていたが、どんな衣装を着たのだろうかということも知りたかった。そして自分の声をセーブするために、マイケルが目いっぱいの力では歌わなかったところもある。相変わらず美しい声であるものの、少し声に衰えが見られるところもあったし。
この世を去ってしまった人を、現世によみがえらせることは無理ではあるけど、それが一晩だけでもできたらどんなにいいだろうか、と思ってしまった。
こんなにも多くの人々の心に響き、もの凄い才能を持った心優しきマイケルが生きていけないこの世の中って何だろう。でも、最後にこのような素晴らしい贈り物をファンに、周りの人々に残してくれて、そしてさまざまな愛に溢れたメッセージで世界を満たしてくれた彼に感謝。
































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