ABTのプリンシパルで先日の来日公演でも大活躍したデヴィッド・ホールバーグがボリショイ・バレエに移籍することになったと、ニューヨークタイムズの記事で記述がありました。
A Ballet First: An American to Join the Bolshoi
http://artsbeat.blogs.nytimes.com/2011/09/20/a-ballet-first-an-american-to-join-the-bolshoi/
デヴィッド・ホールバーグの移籍話は、来日公演の際に行われたホールバーグのトークショーで彼自身が語っており、それ以降、移籍先はどこなのか、ゲスト出演もしているマリインスキーなのか、はたまたボリショイなのか、ということが周囲では噂になっていました。そして最近になって移籍先はボリショイという情報が本国から入ってきました。
ボリショイ・バレエで外国人のプリンシパルが誕生するのは初めてのこととなります。セルゲイ・フィーリンが芸術監督に就任してから、セミョーン・チュージンがダンチェンコから移籍してきましたし、即戦力となる男性プリンシパルを強化しようとしているのが感じられます。(余談ですが、実現しなかったものの別のカンパニーのプリンシパルにも移籍の打診があったようです)時代は確実に変わっていますね。
デヴィッド・ホールバーグは引き続き、ABTにも出演するとのことで、12月の「くるみ割り人形」やMETシーズンにも出演するようです。
しかしながら、このブログで何度も取り上げているトピックではありますが、ABTは深刻な男性プリンシパル不足に見舞われています。来シーズンからイーサン・スティーフェルがロイヤル・ニュージーランド・バレエの芸術監督に就任し、ABTには籍は置くものの出演する機会は激減すると思われます。ホセ・カレーニョは引退し、アンヘル・コレーラもコレーラ・バレエでの芸術監督業が忙しいわけです。そこへ来てデヴィッド・ホールバーグの移籍となると、ABTのプリンシパルはマルセロ・ゴメス、エルマン・コルネホ、コリー・スターンズの3人しか実質的に期待できなくなります。
先シーズンはシーズン中にエルマン・コルネホ、デヴィッド・ホールバーグが怪我をしたため、実際問題として主役を演じられる人がいなくなるという事態に陥り、ヨハン・コボー、イワン・ワシーリエフが急遽代役を務めることになったりしました。ABTの問題として、ゲストに頼りすぎて生え抜きのダンサーの育成を怠り、ソリストに主演をさせてみるという賭けに出ることも極めて少なかったため、今までのバレエ団を支えてきたプリンシパルたちからの世代交代が上手く行かなかったということがあります。
男性ダンサーだけでなく、女性ダンサーについても同じことが言えます。ジリアン・マーフィが婚約者のイーサン・スティーフェルとともにニュージーランドに移ってしまうため、やはり引き続きABTにも出演するとは言うものの、今までほどの出演回数が期待できなくなってしまうという問題があります。ミシェル・ワイルズも突然カンパニーを去ってしまい、ジュリー・ケントもそろそろ引退年齢が近づいていることですし。
ソリストのサシャ・ラデツキー、ダニール・シムキン、サラ・レーン、ミスティ・コープランドのうちの誰かがプリンシパルに昇格する可能性はあると思います。また最近主演する機会が出てきたヒー・セオの可能性もなきにしもあらず。また、来日公演のガラでヴェロニカ・パールトのパートナーを務めてパ・ド・ドゥを踊ったアレクサンドル・ハムーディは未だコール・ド・バレエなので彼がソリストに昇格する可能性は高いでしょう。
なお、NYTimesの別の記事で、少しだけ、ABTの来年METシーズンの予告が出ています。
http://www.nytimes.com/2011/09/18/arts/dance/congo-and-kabuki-and-salutes-to-mr-b.html
この記事の真ん中へん。
「真夏の夜の夢」「ジゼル」「アポロ」「明るい小川」のタイトルがあります。また、ラトマンスキー振付の新作「火の鳥」が上演されることも決まっているほか、ディアナ・ヴィシニョーワがインタビューで、ABTで「オネーギン」のタチヤーナ役を演じると語っていることから「オネーギン」、また来年2月のケネディ・センターでの公演で「ラ・バヤデール」が上演されることからこれもおそらくはMETで上演されることでしょう。
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New York Timesに、デヴィッドのコメント入りのより詳細な記事が掲載されました。
http://www.nytimes.com/2011/09/21/arts/dance/american-to-join-the-bolshoi-ballet.html
「このような歴史を持つカンパニーに加入することを誇らしいと感じると同時に、個人的に、アメリカ人として責任感を感じるよ」と彼は火曜日に語りました。「僕はカンパニーに何か新しいものをもたらすけれども、同時にボリショイの伝統にも敬意を払うだろう」
ボリショイ・バレエの新芸術監督セルゲイ・フィーリンは、Kings of the DanceのツアーとABTのモスクワ公演でデヴィッドの踊りを観て、彼に白羽の矢を当てたとのことです。「彼は傑出したロマンティックでクラシカルなダンサーです」と電話インタビューでフィーリンは語りました。
芸術監督に就任して2週間後、フィーリンはABTのモスクワ公演中のデヴィッドを昼食に招き、ボリショイのプリンシパルもしくはゲストのポジションをオファーしたとのことです。「かごの鳥にはさせないし自由に他でも踊っていい。でも、真剣にボリショイでの活動に取り組んでほしい」
デヴィッドのボリショイでのデビューは、11月4日の「ジゼル」となる予定です。そして「眠れる森の美女」と「ドン・キホーテ」にも出演します。また、来年1月、2月にもモスクワでボリショイの公演に出演します。
デヴィッドはABTでの踊る予定のうち4つは断らざるを得なくなりました。しかし12月の「くるみ割り人形」と、5月から7月までのMETシーズン、そしてその前のシカゴとオレンジ・カウンティでの公演には出演するそうです。
デヴィッドは、ナタリア・オシポワと踊ったことや、マリインスキー・バレエに客演したことが自身に大きな影響を与えたと語っています。「ロシアではどこへ行っても、踊ることは高尚な芸術であると評価されていると感じます。そしてカンパニー内での仕事はとてもインテリジェントで美しく行われています。ぼくがボリショイでの公演に参加されたときには、圧倒されてしまった。劇場の歴史はあまりにも重い。でも、おかげで少し成長することができました」
ボリショイに移籍した後のデヴィッドのパートナーは、オシポワのほか、スヴェトラーナ・ザハロワも予定されているそうです。
「ボリショイのスタイルは大きく、僕が好きな方向性において情感豊かです」とデヴィッドは語った。「踊るとともに演技も要求される役柄において僕が達成しようとしていた方向性に沿った、新鮮さと緊張感があります」
また、ボリショイの団員であることのメリットとしては、主役級のダンサーはマリインスキーと同様に、元ダンサーがフルタイムで教師を務めてくれることがあります。デヴィッドの教師は、アメリカでもカンパニーを率いていて英語を話すことのできる、元スターダンサーのアレクサンダー・ヴェトロフが務めることになります。
ボリショイは他の西洋人のダンサーを招くことがあるだろうかと聞かれたとき、フィーリンは「それはすごくいいね」と語りました。
早速ボリショイの公式サイトにも、デヴィッドの名前が登場しています。
http://www.bolshoi.ru/ru/theatre/people/detail.php?act26=info&id26=1422
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そして実際、80年代にはもう一人アメリカ人のダンサーがボリショイに加入することになりました。
http://articles.latimes.com/1989-11-18/entertainment/ca-1313_1_bolshoi-ballet
今年の春にボリショイ・アカデミーを卒業したマイケル・シャノンが、ソリストとしてボリショイ・バレエに入団しました。ロサンゼルス出身の彼は、ロシアスタイルでは従来8年間のカリキュラムを4,5年でマスターし、ボリショイのアメリカ公演に参加した後、入団が決定したとのことです。ブダペストのハンガリー国立バレエ学校で学んだ後、1年半前にボリショイ・アカデミーに転入し、このたび卒業とともに晴れて入団となったわけです。
これからのバレエの世界地図が大きく変わる一歩となりそうですね。
Twitterでのデヴィッドの報告もあわせて載せておきます。
David Hallberg
"The word is out. I will be joining the Bolshoi as a premier, marking an important step in my career and the Bolshoi's history. It has been....
....and will be an unforgettable ride, full of challenges and hopefully triumphs as well. I am so thrilled and honored... upwards and onwards."
http://twitter.com/#!/DavidHallberg
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