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ABT(アメリカン・バレエ・シアター)

2017/07/08

ABTの昇進発表、サラ・レーン、デヴォン・トゥッシャー、クリスティーン・シェフチェンコがプリンシパルに

ABT(アメリカン・バレエ・シアター)は恒例のMETシーズンを7月8日で終えますが、シーズン終了直前に昇進の発表がありました。

サラ・レーン、デヴォン・トゥッシャー、クリスティーン・シェフチェンコがプリンシパルに、カルヴィン・ロイヤルIIIがソリストに昇進しました。

https://www.nytimes.com/2017/07/07/arts/dance/american-ballet-theater-promotes-4-dancers.html

今回昇進した4人は、全員が長年ABTで活躍してきた、いわば生え抜きのダンサーたちです。

サラ・レーンは2003年に研修生として入団し、2007年にソリストに昇進しました。ナタリー・ポートマンがアカデミー賞主演女優賞を受賞した映画「ブラック・スワン」で、ポートマンの吹き替えを行った件で有名になりました。身長が150cm台と小柄だったため、なかなか役に恵まれませんでした、ABTではエルマン・コルネホやダニール・シムキンといった小柄なプリンシパルがいて相手役を務め、今年のMETシーズンではマリア・コチェトコワの怪我降板もあって、「ジゼル」と「白鳥の湖」で主演しました。特に「ジゼル」では高い評価を得ました。

デヴォン・トゥッシャーは2007年に入団し、2014年にソリストに昇進しました。長身で美しいラインの持ち主であるトゥッシャーは、今年は「白鳥の湖」のオデット/オディール役を初めて演じて、表現力も技術も絶賛されました。

クリスティーン・シェフチェンコはウクライナ生まれですが、8歳でアメリカに移ります。もともとは新体操の選手でした。2006年にABTに入団して2014年にソリストに昇進しています。今年は「ドン・キホーテ」のキトリや「ジゼル」のミルタ役を演じました。

カルヴィン・ロイヤルIIIは、ABTのスタジオカンパニーを経て、2010年に研修生、2011年には正団員となります。アフリカ系で長身、とてもハンサムで強靭かつ優雅さもあるダンサーです。今年は、「白鳥の湖」の、3幕で登場する美貌のロットバルト役と「ドン・キホーテ」のエスパーダを演じました。まだコール・ド・バレエだったのかと驚かれる存在感がありました。

今年昇進したダンサーたちはいずれも実力派で、順当な昇進といえます。特に主役も多く演じてきて熱心なファンが多かったサラ・レーンが、長年の苦労が報われてついにプリンシパルとなったことで、喜こばしいことです。


ABTはしばらく来日公演がありませんでしたが、最近ではラトマンスキー振付の「ホイップクリーム」などの話題作もあり、久々に日本でも観られたらうれしいと思います。


一方で、今年は6月にディアナ・ヴィシニョーワがABTを去りました。以前もお知らせしたとおり、ヴィシニョーワは引退したわけではなく引き続きマリインスキー・バレエや自らのプロジェクトで踊りつづけます。

また、今秋突然に、同じくロシア出身のプリンシパル、ヴェロニカ・パールトが退団することが発表されました。
https://www.nytimes.com/2017/07/03/arts/dance/veronika-part-american-ballet-theater-announces-her-retirement.html

ワガノワ・アカデミーを経てマリインスキー・バレエのソリストからABTに移籍したパールトは、当初は美しいながらも技術的に不安定なところもありましたが、近年はその弱点も克服して成熟したダンサーとなっており、「白鳥の湖」のオデット/オディールに定評があって根強い人気がありました。しかし、上記ニューヨークタイムズの記事によれば、今回の退団は、39歳となった彼女の契約が更新されなかったからであったからとのことです。そのため、一部のファンは退団させないための署名活動を行っています。パールトの最後の公演は、7月8日マチネの「モーツァルティアーナ」です。

2017/06/23

ABTを去るディアナ・ヴィシニョーワ

ディアナ・ヴィシニョーワは、6月23日(金)の「オネーギン」の公演で、2005年からプリンシパルを務めて来たアメリカン・バレエ・シアター(ABT)を去ります。

といっても、もちろん引退するわけではなく、マリインスキー・バレエのプリンシパルとして、またゲスト・アーティストとして引き続き踊りつづけます。

マルセロ・ゴメスやグレーミン役のロマン・ザービンとの「オネーギン」のリハーサル、そして彼女のインタビューがナレーションとしてかかる美しい映像(一瞬、ニーナ・アナニアシヴィリも登場します)

Diana Vishneva’s Last Days with American Ballet Theatre
https://thescene.com/watch/thenewyorker/goings-on-about-town-diana-vishneva-s-last-days-with-american-ballet-theatre

今でこそ世界的なスターであるディアナ・ヴィシニョーワですが、この映像でのインタビューによれば、25歳までは自分は思ったほど素晴らしく踊ることができないので辞めようと思っていたとのことです。しかし、ダンスでしか伝えられない感情があるし、舞台に立てば時も人生も立ち止まり、魂の琴線に触れることができるし、それが私の人生であり運命であり、そのことに意味を見つけた、と語っています。

Diana Vishneva Bids Farewell to Ballet Theater, but Not to Dance
https://www.nytimes.com/2017/06/20/arts/dance/diana-vishneva-bids-farewell-to-ballet-theater-but-not-to-dance.html

ABTを去る理由として、ここで踊るのは時間もエネルギーも使うし、40歳となった今、自分の世代はほぼみな去ってしまった、この労力を別のことに注ぎたいから、だそうです。

ヴィシニョーワは、自身が主宰するコンテンポラリーダンスのフェスティバル、「Context」に情熱を注いでいます。最初、古典バレエの世界から来た彼女がコンテンポラリーのフェスティバルを開催するということで人々は驚きました。しかし回数を重ねるごとに、古典バレエとコンテンポラリーダンスは決して無縁ではない、結びつきがあることが理解されてきたそうです。

しかしながら、ABTで多く共演し、今回の「オネーギン」でもパートナーとなるマルセロ・ゴメスは特別な存在であり、このパートナーシップはABTを去ってからも、他で続けたいと語っています。

また、今の若い世代について、自分たちが若い頃と同じような勤勉さは失われてきたのではないかと危惧をしています。今は同じことを教えるにしても教師は10回も20回も繰り返し教えるけど、自分の時には1回ですべてを覚えなければならなかったそうです。同世代のダンサーたちは素晴らしい人ばかりだったし、当時の教師たちはとても怖かったけど尊敬できた。今は教師は生徒たちに依存しているのではないか、と語っています。彼女は、単なるダンサーではなく、芸術の言語の使い手になりたかったので、厳しい競争の中で努力してきました。

ディアナ・ヴィシニョーワは、マリインスキー・バレエのロンドン公演で、「アンナ・カレーニナ」に主演する予定です。しばらく来日していないので、成熟して無駄なものをそぎ落とした真の芸術家である今の彼女の舞台を日本でもぜひ観たいものです。

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2017/01/04

デヴィッド・ホールバーグ、ABTに復帰予定

怪我とそのリハビリのために2年半も舞台から遠ざかっていたデヴィッド・ホールバーグ。12月に、1年にわたってリハビリのために滞在していたオーストラリアで、オーストラリア・バレエの「コッペリア」に主演して舞台復帰を果たしました。
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2016/11/post-ee9a.html

「コッペリア」では長いブランクを感じさせず、良いパフォーマンスを見せることができたようです。

カーテンコールより。

Special show, special peeps. 💛❤️ @amber_e_scott @davidhallberger #ausballet #coppelia

Kate Longleyさん(@klongersklongers)が投稿した写真 -

公演のレビュー
https://deborahjones.me/2016/12/14/david-hallberg-in-coppelia/

ホールバーグのインタビュー記事
http://www.theaustralian.com.au/arts/stage/australian-ballet-rebuilds-international-superstar-david-hallberg/news-story/bf994411652bc0f0068f36a510fc56b1

金髪の美貌で貴公子のイメージの強いホールバーグですが、「コッペリア」のフランツ役という庶民的なキャラクターも魅力的に演じることができたようです。音楽性に優れ、美しい脚と高いルティレは健在。この時点では、まずはこの「コッペリア」での復帰だけを考え、そこより先のことはゆっくり考えると彼は語っていました。

しかし、このオーストラリア・バレエでの復帰が成功を収めたいうことで、古巣のABTへの復帰も発表されました。

David Hallberg Returns to American Ballet Theater
http://www.nytimes.com/2017/01/03/arts/dance/david-hallberg-returns-to-american-ballet-theater.html

1月10日よりABTでのクラスレッスンに参加し、5月からのMETシーズンでABTの舞台に復帰するそうです。まだ、どの作品に出演するかは決まっていませんが、2週間くらいでめどが立つそうです。このMETシーズンで新作「ホイップクリーム」が上演されるアレクセイ・ラトマンスキーとの仕事も楽しみにしているとのこと。

ABTの公演カレンダーを見ると、「ホイップクリーム」の他、「ジゼル」や「オネーギン」で主役男性のキャストが未定の日程があります。ここにホールバーグが出演する可能性は高いかもしれません。

2016/11/20

デヴィッド・ホールバーグがオーストラリア・バレエ「コッペリア」で舞台に復帰

怪我により長期にわたって舞台から遠ざかっていたデヴィッド・ホールバーグ(ABTおよびボリショイ・バレエのプリンシパル)がついに舞台に復帰するという嬉しいニュースがありました。

David Hallberg to return to the ballet stage in The Australian Ballet’s Coppélia

https://deborahjones.me/2016/11/20/david-hallberg-to-return-to-the-ballet-stage-in-the-australian-ballets-coppelia/

ホールバーグは、オーストラリア・バレエの「コッペリア」のシドニー・オペラハウスでの12月13, 16, 19、 21日の4公演に主演する予定です。これはオーストラリア・バレエの芸術監督であるデヴィッド・マッカリスターに確認済みのニュースとのことです。


ホールバーグは怪我により、2014年8月に左足首の手術を受けました。その回復のためのリハビリで、彼はオーストラリア・バレエのスタッフの力を借りていてオーストラリアに長期で滞在。そのため、復帰がオーストラリア・バレエとなったとのことです。

「コッペリア」のフランツ役はホールバーグにとって今回踊るのが初めてとのこと。貴公子役を得意としてきたホールバーグは、新境地を開くことになりそうです。


オーストラリア・ツアー中のヒューストン・バレエ、加治屋百合子さん、ジャレッド・マシューズと再会したデヴィッド・ホールバーグ (加治屋百合子さんのInstagramより)

オーストラリア・バレエの「コッペリア」、とてもいいプロダクションです。

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2016/10/30

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の2017年METシーズン

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の2017年メトロポリタン・オペラハウスでの春シーズンが発表されています。

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=562


以前にもお知らせしたとおり、アレクセイ・ラトマンスキー振付の新作「ホイップクリーム」(音楽と台本はリヒャルト・シュトラウス)がカリフォルニア州コスタ・メサでの初演を経て、メトロポリタン・オペラハウスでも上演されます。

先日のユニバーサル・バレエでのジュリエットも素晴らしかったアレッサンドラ・フェリが、今度は「オネーギン」のタチヤーナ役で2回(6月20日、22日)ゲスト出演します。同じ「オネーギン」で、6月23日にディアナ・ヴィシニョーワがタチヤーナ役を踊り、ABTのプリンシパルとては最後の舞台となります。

METシーズンでのゲストダンサーは、アレッサンドラ・フェリのみの予定となっています。
なお、プリンシパルの一覧からはポリーナ・セミオノワの名前が消えているので、退団したということになります。プリンシパル一覧にデヴィッド・ホールバーグの名前は残っているものの、現在のところMETシーズンでの出演予定はありません。

5月22日のガラ公演で、シーズンは幕を開けます。全幕の新作「ホイップクリーム」は、12回上演される予定となっています。


もう一つ、カンパニー初演作品があります。ラトマンスキー振付、音楽はチャイコフスキー(グラズノフ編曲)の「Souvenir d'un lieu cher(なつかしい土地の思い出)」がレパートリー入りします。2012年にデンマーク・ロイヤル・バレエで初演された作品です。
この作品は、「チャイコフスキー・スペクタキュラー」と題して、バランシン振付の「チャイコフスキーパ・ド・ドゥ」、「モーツァルティアナ」、マルセロ・ゴメス振付の「AfterEffect」、ラトマンスキー振付の「くるみ割り人形」のパ・ド・ドゥ、ラトマンスキー振付の「眠れる森の美女」の3幕「オーロラの結婚」(The Porcelain Trio、Three Ivansというバレエ・リュスで上演され、ラトマンスキーによって改訂振付された二つのディヴェルティスマンが加わる)の中から、組み合わせを変えて同時上演されます。


全幕作品は、5作品です。

「ドン・キホーテ」
「ジゼル」 (5月30日の公演は、マルセロ・ゴメスのカンパニー在籍20周年記念公演)
「金鶏」(ラトマンスキー振付)
「海賊」
「白鳥の湖」
「オネーギン」

ほとんどのキャストはすでにカレンダーで発表されています。
http://www.abt.org/calendar.aspx?startdate=5/1/2017

「ジゼル」では、ミスティ・コープランド、ジリアン・マーフィー、サラ・レーンがジゼル役デビューを飾ります。「ドン・キホーテ」ではミスティ・コープランドとクリスティーナ・シェフチェンコがキトリ役デビュー。「白鳥の湖」では、デヴォン・トゥーシャーがオデット/オディール役デビュー。「オネーギン」ではステラ・アブレラがタチヤーナ役デビューを飾ります。

かつては華やかなゲストダンサーが席巻していたABTですが、近年は内部のダンサーを育てることに方向性を転換したようです。ミスティ・コープランドの人気が高く、彼女の出演日はどんな大物スターよりも観客動員が見込めるということもあります。オールスター・バレエ・ガラに出演したカサンドラ・トレナリー、そしてクリスティーナ・シェフチェンコ、デヴォン・トゥーシャーなどは今後注目を集めることでしょう。また、ラトマンスキーが振付けた作品が多くレパートリーに加わることで、カンパニーとしての個性も出てきました。

2016/10/07

ABTでラトマンスキーが新作『Schlagobers(ホイップクリーム)』を振付

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)は、常任振付家であるアレクセイ・ラトマンスキーが、新作『Whipped Cream(ホイップクリーム)』を振り付けることを発表しました。

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=561

『ホイップクリーム』は、全2幕の作品で、セットや衣装は著名なアーティストであるマーク・ライデンがデザインします。

初演は2017年3月15日にカリフォルニア州コスタ・メサのセガストロム芸術センターで行われる予定で、その後メトロポリタン・オペラハウスでのMETシーズンでも5月22日より上演されます。

『ホイップクリーム』は1924年にリヒャルト・シュトラウスがウィーン国立歌劇場での上演のために作曲して台本を書いた「Schlagobers」という作品を基にしています。その時はHeinrich Kröllerという振付家が振付けました。

物語は、ウィーンでのケーキ屋さんに子供たちが集まったところ、お菓子たちが命を得て踊りだします。一人の少年が夢中になるあまり倒れてしまい、幻覚の中でプラリネ姫の宴にやってきて、お酒やケーキも大騒ぎ、というものです。(Wikipediaより)

デザインを担当するマーク・ライデンは、ポップ・シュールレアリズムの父として知られており、マイケル・ジャクソンのアルバム「デンジャラス」や、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ「One Hot Minute」のジャケットを描いているので、目にした方も多いと思います。ライデンは、ウィーンのケーキ屋さんでケーキに夢中になっている少年の物語にふさわしいファンタスティックな世界をつくりあげることでしょう。

少し「くるみ割り人形」に似たストーリーですが、マーク・ライデンのデザインとラトマンスキーの振付で、独特のシュールでポップ、楽しい世界が展開しそうで、期待の作品と言えるでしょう。


こちらの動画は、ラトマンスキーの作品ではありませんが、「ホイップクリーム」をバレエ化したものです。ドイツ、ミュンヘンのゲルトナープラッツ州立劇場でKarl Alfred Schreinerが振付けたもの

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なお、マーク・ライデンの展覧会が、10月15日から11月1日まで、中野ブロードウェイのHidari Zingaroで開催されるとのことです。
http://www.markryden.com/news/index.html

2016/09/16

ディアナ・ヴィシニョーワが2017年6月にABTでさよなら公演

ディアナ・ヴィシニョーワが、2017年6月にABTでのさよなら公演を行うことが発表されました。

DIANA VISHNEVA TO GIVE FINAL PERFORMANCES WITH ABT
http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=560

ヴィシニョーワは、2017年6月19日と23日に「オネーギン」のタチヤーナ役を踊ります。オネーギン役はマルセロ・ゴメス。6月23日がさよなら公演となります。

2003年のMETシーズン「ロミオとジュリエット」で初めてABTにゲスト出演したヴィシニョーワは、アンヘル・コレーラとのペアで大センセーションを起こします。2005年にはABTのプリンシパルとなりました。

ABTでは、ジュリエットの他、「マノン」のマノン、「ジゼル」のジゼル、「真夏の夜の夢」のタイターニア、「ラ・バヤデール」のニキヤ、「椿姫」のマルグリット、「シルヴィア」のシルヴィアなど多くの主役を踊り、またラトマンスキーが振付けた「眠れる森の美女」では初演キャストを務めました。NYでは絶大な人気があり、彼女が主演する日は、大きなメトロポリタン・オペラハウスもいつもソールドアウトとなるほどでした。

近年、ヴィシニョーワはABTへのゲスト出演は続けながらも、自身の活動に軸を移しつつあり、出演回数が減ってきていました。ABTも最近はゲストをあまり呼ばず、自前のダンサー中心のキャスティングを行うようになってきています。

今年の7月に40歳を迎えたヴィシニョーワは、マリインスキー・バレエや自身のプロジェクトなどで引き続き踊り続けることになると思われます。が、アンヘル・コレーラ、ウラジーミル・マラーホフ、そしてマルセロ・ゴメスとの素晴らしいパートナーシップによるドラマティックな彼女の舞台がABTで観られなくなるのは寂しいことですね。METで観た幾多の名舞台の思い出が蘇ります。

http://www.nytimes.com/2016/09/16/arts/dance/diana-vishneva-to-leave-american-ballet-theater-in-june.html

New York Timesの記事には、彼女のコメントがあります。

「古典を踊るのをやめるわけではありません!」たくさんのプロジェクトがありすぎたので、退団することを選んだとのことです。「単に自分自身の100%をABTに捧げることが不可能となっただけです」 タチヤーナ役を踊るのを選んだのは、その力強くてドラマティックな内容と、彼女が最も信頼するパートナーの一人であるマルセロ・ゴメスと踊ることができるからとのこと。

またヴィシニョーワは、この2017年6月の公演が公式なさよなら公演となるものの、今後、ABTに単発のゲストとして出演する可能性は残したいとのことです。


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2016/07/03

ジェフリー・シリオがABTのプリンシパルに昇進

2015年8月にボストン・バレエから移籍しABTにソリストとして入団したジェフリー・シリオが、プリンシパルに昇進することが発表されました。

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=554

Jeffrey Cirio Promoted to Principal Dancer at ABT
http://pointemagazine.com/news/jeffrey-cirio-principal-dancer-abt/

ボストン・バレエではプリンシパルだったジェフリー・シリオでしたが、ABTにはソリストとして入団しました。しかし、移籍後、「海賊」のアリ、「眠れる森の美女」の青い鳥、「ロミオとジュリエット」のマキューシオ、そして「ラ・フィユ・マル・ガルデ」のコーラス役を演じて好評でした。特に、怪我をしたアルバン・レンドルフの代役で演じたコーラス役は、New York Timesでも絶賛されました。

小柄ですがテクニックには定評のあるシリオ。ボストン・バレエ時代は、倉永美沙さんのパートナーを務めることが多く、昨年6月に日本で開催された「スター・ガラ2015 ボストン・バレエの精鋭たちによる饗宴」にも出演していたことは記憶に新しいところです。昨年末のボストン・バレエの「くるみ割り人形」では古巣ボストンにゲスト出演して、再び倉永さんと踊りました。

フィリピン系アメリカ人の彼は、2006年にYAGPとジャクソン国際バレエコンクールで金賞、2009年のヘルシンキ国際バレエコンクールでも金賞受賞など華麗な受賞歴を誇っています。振付も手掛け、ボストン・バレエのために2作品を創作し、また自身のツアーグループ「シリオ・コレクティブ」を結成して夏の間にフェスティバルに出演しています。なお、フィリピン系のABTのプリンシパルは、ステラ・アブレラに続いて二人目。

なお、コール・ド・バレエのブレイン・ホーヴェンはソリストへの昇進が発表されました。入団13年目という遅咲き。「ジゼル」のペザント、「ロミオとジュリエット」のベンヴォーリオ、「白鳥の湖」のベンノ、「真夏の夜の夢」のボトム、「オネーギン」のレンスキー役などで活躍してきました。今年は、「シルヴィア」のアミンタ役で全幕初主演を果たしました。信頼性の高いダンサーで、もっと早くソリストに昇進させるべき存在でした。


さて、ABTは現在、ラトマンスキー振付の「眠れる森の美女」を上演しています。この「眠れる森の美女」で主演デビューを果たしたソリストのカサンドラ・トレナリーのオーロラが大きな評判を呼んでいます。注目の存在のようでNew York Timesでも特集記事になっていました。彼女は、今年の夏の「オールスター・ガラ」にマルセロ・ゴメスの推薦で出演するので、観るのが楽しみですね。

2015/10/17

ABTの2016年METシーズンのキャスト

ABTの来年春のMETシーズンのキャストがメトロポリタン歌劇場のサイトで発表されています。

http://www.metopera.org/calendar#/all-events?year=2016&month=4

5月9日、12日 「シルヴィア」 マーフィ、ゴメス、ホワイトサイド
5月10日、14日昼 「シルヴィア」 セミオノワ、ボッレ、スターンズ
5月11日 14日夜 「シルヴィア」 ボイルストン、レンドルフ、シムキン
5月13日 「シルヴィア」 コチェトコワ、コルネホ、シムキン

5月16日 ガラ

5月17日、21日夜 ショスタコーヴィッチ3部作(ラトマンスキー)
コルネホ、ゴメス、セミオノワ、未定、コチェトコワ、シムキン、マーフィー、スターンズ

5月18日昼、19日 ラトマンスキーの新作、セブン・ソナタ、「火の鳥」
パールト、コルネホ、ゴラック、レーン、ホーヴェン、セオ、コープランド、レンドルフ、未定、アブレラ
5月18日夜、21日昼 ラトマンスキーの新作、セブン・ソナタ、「火の鳥」
アブレラ、パリス、スコット、ロイヤル、未定、シェフチェンコ、ボイルストン、ゴメス、ザービン、パールト

5月20日、23日 ショスタコーヴィッチ3部作(ラトマンスキー)
ボッレ、シリオ、パールト、ホワイトサイド、ロイヤル、シェイヤー、シェフチェンコ

5月24日、27日 「ラ・フィユ・マル・ガルデ」 ボイルストン、レンドルフ
5月25日昼、28日夜 「ラ・フィユ・マル・ガルデ」 マーフィ、スターンズ
5月25日夜、28日昼 「ラ・フィユ・マル・ガルデ」 コープランド、コルネホ
5月26日、29日 「ラ・フィユ・マル・ガルデ」 アブレラ、未定

5月31日、6月2日 「海賊」 コチェトコワ、コルネホ、レーン、シリオ、シムキン
6月1日昼、4日夜 「海賊」 パールト、スターンズ、トゥッシャー、ホワイトサイド、アン
6月1日夜、4日昼 「海賊」 マーフィ、レンドルフ、アブレラ、シムキン、シェイヤー
6月3日 「海賊」 セオ、ホワイトサイド、コープランド、未定、レンドルフ

6月6日、9日 「金鶏」(ラトマンスキー) パールト、ブラント
6月7日、10日 「金鶏」(ラトマンスキー) アブレラ、トレナリー
6月8日昼、11日夜 「金鶏」(ラトマンスキー) セオ、レーン
6月8日夜、11日昼 「金鶏」(ラトマンスキー) コープランド、コチェトコワ

6月13日、18日昼 「白鳥の湖」 セミオノワ、ゴメス
6月14日 「白鳥の湖」 ボイルストン、レンドルフ
6月15日昼 「白鳥の湖」 コープランド、シムキン 
6月15日夜 「白鳥の湖」 パールト、ホワイトサイド
6月16日 「白鳥の湖」 セオ、ボッレ
6月17日昼 「白鳥の湖」 マーフィ、スターンズ
6月18日夜 「白鳥の湖」 コチェトコワ、コルネホ

6月20日 「ロミオとジュリエット」 セオ、スターンズ
6月21日、25日夜 「ロミオとジュリエット」 ヴィシニョーワ、ゴメス
6月22日昼 「ロミオとジュリエット」 ボイルストン、未定
6月22日夜 「ロミオとジュリエット」 マーフィ、未定
6月23日 「ロミオとジュリエット」 フェリ、コルネホ
6月24日 「ロミオとジュリエット」 セミオノワ、ボッレ
6月25日昼 「ロミオとジュリエット」 コープランド、未定

6月27日、7月2日昼 「眠れる森の美女」 ボイルストン、ゴラック
6月28日 「眠れる森の美女」 マーフィ、スターンズ
6月29日昼 「眠れる森の美女」 トレナリー、ホワイトサイド
6月29日夜、7月2日夜 「眠れる森の美女」 セオ、未定
6月30日 「眠れる森の美女」 アブレラ、ゴメス
7月1日 「眠れる森の美女」 レーン、コルネホ

ABTのサイトにも、日ごとのキャストがアップされています。
http://www.abt.org/calendar.aspx?startdate=5/1/2016

全幕作品7本、そしてトリプルビル2本、さらにはガラと2か月弱の期間にギュッと詰まって大変なスケジュールのMETシーズンです。

2015年はとにかくロシア系のゲストが多かったのですが、今年はなんとロシアンゲストは0です。ゲストダンサーは現在のところ、「ロミオとジュリエット」1公演に出演するアレッサンドラ・フェリのみ。ABTとしては画期的と言えます。コチェトコワ、レンドルフ、シリオが移籍で加入し、アブレラ、コープランドがプリンシパルに昇進しました。また、ソリストに昇格したばかりのカサンドラ・トレナリーが「眠れる森の美女」に主演します。

一方で、現在のところ、デヴィッド・ホールバーグの出演予定がありません。ボリショイ・バレエとの出演の調整、そしてけがの回復の具合を待って、未定の枠に入ってくるのではないかと思われます。(「ラ・フィユ・マル・ガルデ」、「ロミオとジュリエット」、「眠れる森の美女」に男性ダンサーが未定の日程があります)また、ヴィシニョーワの出演予定が「ロミオとジュリエット」2公演のみと極端に少なくなっています。

例年、過酷なスケジュールのMETシーズンはけが人が続出して、外部のダンサーの助けを借りる羽目になっていますが、とりあえず今回は内部ダンサー中心のキャストが組めたので、今年ほどの深刻な事態にならないと思われます。(ならないでほしいですね)

2015/10/10

ミスティ・コープランドのドキュメンタリー映画と、ヨーヨ・マとの共演

ABTで初のアフリカ系アメリカ人プリンシパルとなった、ミスティ・コープランド。彼女の生い立ちから今までを追ったドキュメンタリー映画「A Ballerina’s Tale」が10月14日に全米で封切られ、またオンデマンドでもリリースされます。

http://www.huffingtonpost.com/entry/misty-copeland-documentary_56153872e4b021e856d30330

映画の予告編

その公開に先駆けて、ミスティはいろいろなメディアに登場しています。CBSの人気番組「レイト・ナイト・ウィズ・スティーヴン・コルベア」では、チェリストのヨーヨー・マと共演して、マルセロ・ゴメスが振付けた作品を踊りました。

番組では、トークもしています。

TIME誌のサイトでは、この時に踊ったゴメスの作品は、どんな音楽でもミスティはぴったり合わせることができる、という面白い動画が紹介されています。
http://time.com/4066214/misty-copeland-dance-secret/

「人々は、私が黒人であるという事実のほか、胸が大きい、筋肉質であるということという事実に基づいて判断していると私は思っています。でも、クラシック・バレエの世界には変化が求められています、この芸術は滅びようとしていると人々は考えているからです。変化がなければ、バレエは進化しないし存在し続けることができません。変化は起きなくてはならないのです」
映画は、ミスティの貧しい生い立ち、バレエを始めたのは13歳という遅いスタート、キャリアをもうすぐで終わらせるところだった大きな怪我との戦い、そして世間の偏見といったところを描いています。


New York Timesの記事によれば、2年前のテレビのパーソナリティ主催のパーティで、怪我から回復する途中だった彼女は映画監督のネルソン・ジョージに出会ったとのことです。ネルソン・ジョージはヒップホップやアフリカ系アメリカン・カルチャーについての映画で知られている存在でした。「彼女は、バリシニコフ以来のバレエ界のポップスターになると確信していたよ」

http://www.nytimes.com/2015/10/11/arts/dance/misty-copeland-on-pushing-ballets-boundaries.html

この記事の中での、二人の間の会話は興味深いものです。

Q この映画はどのような作品ですか?

ジョージ 「この映画は、伝記ではなくて、危機に直面している瞬間のアーティストを捉えたものなのです」

コープランド 「そして、バレエ界における多様性の欠如、アフリカ系アメリカ人のバレリーナが少ないことについて、詳しく語っているのです。これが、最初から私が求めていたことです」

Q あなたは、自分が黒人のバレリーナであるという事実を強調しているということについて、キャリア的に後悔したことはありませんか?

コープランド 「全くありません。それは必要なことだったのです。過去のダンサーたちもそのことについて話してきましたが、私のようなプラットフォームによりものではなくて、それは大きな違いです。私が黒人であることは私の一部であり、私の人生とそこでの苦闘における経験の一部です。今までの道のりは簡単なものではなくて、その理由の多くは、私がアフリカ系アメリカ人であり、私たちの多くはそのためにいろんな経験をしてきました。私が一定の知名度を得たり成功したことは、偶然のことではないし、黒人であることは今でも私の一部です。私が今プリンシパルになれたことで、そのことが消えてなくなるわけではありません」

ジョージ 「もし、彼女が『私はちょっと黒人の血が入っていて、こういう人です』という態度だったら、人々は、そうか、彼女は単にゲームに参加しているだけだと思うでしょう。でも、彼女にとってはゲームではなかったのです。黒人であるという点が重要だという事実から彼女は逃げませんでした。もし、彼女が自分の血を受け入れて大事にしていなかったら、そのことはここまで重視されなかったことでしょう」

Q この映画の中で、ABTの前エグゼクティブ・ディレクター、レイチェル・ムーアのような人々が、あなたはもっと集中すべきことがあると感じていたのがわかります。同じようにあなたは感じていましたか?

コープランド 「この映画が撮影され始めた時、私は体重を落とすようにと言われていました。私は、道に迷っていて、何に集中すればいいのかわからなくなっていました。どのように自分を扱うべきかわからなくなっていました。誰も私を導いてくれなかったし、仕事の時も、ここが私のいるべき場所だと思えなくなってきて、漂い始めていました。多くのダンサーがこのような経験をしています。私たちは大人になっていません。バレエに集中していてばかりいたので、大人になるための技術を得られていませんでした」

ジョージ 「彼女の物語は、並外れた枠組みの中での、ありふれたものです。これはすべてのダンサーに起こりえることです。怪我をする可能性、『私はプリンシパルになれるのかしら?』という不安。でも、ここで人種問題が出てくると、すべてのことがより厳しい賭けになっていきます。そしてこの映画は、そのことを扱っているのです。『彼女は今怪我をしてしまいました。これは、どんなダンサーでも経験することです』。その通りです。でも、その側面においては、ありふれた話なのです」

Q クラスレッスンの時、フラストレーションを見せていますね。「どうしてこの映画を撮影することに同意したのか?」と思いませんでしたか?

コープランド 「いえ、私はそのように感じませんでした。彼がそこにいたからではなく、その時に、フラストレーションがあるプロセスだったのです。Steps(NYのオープンクラスのスタジオ)の端に座って、何日も泣いていました。何が起きるかわからなかったからです。それは無理だ、と思いました」

ジョージ 「この映画は最もハッピーと思える終わり方をしますが、そのように終わるという保証は、その時はなかったんです」

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プリンスとの共演、再生回数933万回を記録したアンダーアーマーのCMへの出演、TIME誌の表紙、そしてABTのプリンシパルへの昇格と映画の公開。ミスティ・コープランドは間違いなく知名度では全米でナンバーワンのバレリーナとなったようです。今までバレエを観たことがなかった層や、若い人たちが劇場に詰めかけるようになって、彼女が出演する日のチケットはソールドアウトになっているようです。メジャーなメディアにバレリーナがたくさん露出することは素晴らしいことですし、人種の壁を越えて努力したことも素晴らしい功績です。

ただ、ミスティを一人のバレエダンサーとして見たときには、まだ技術的に物足りない部分や、まだ自分のものにできない役柄があることも否めません。とはいえ、まだ彼女はプリンシパルに昇格したばかり。これからどのように成長していき、実力も歴史に残るようなバレリーナになっていく過程を見守っていければと思います。

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