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ABT(アメリカン・バレエ・シアター)

2020/09/11

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)で アラン・ベル、カサンドラ・トレナリー、カルヴィン・ロイヤル3世、トーマス・フォースター、ジュウン・アン、スカイラー・ブラントがプリンシパルに

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の昇進が発表されています。

American Ballet Theater Promotes Dancers Despite Pandemic Slump

https://www.nytimes.com/2020/09/10/arts/dance/american-ballet-theater-promotions-pandemic.html

アラン・ベル(21)、カサンドラ・トレナリー(27)、カルヴィン・ロイヤル3世(31)、トーマス・フォースター(34)、ジュウン・アン(26)、スカイラー・ブラント(27)がプリンシパルに昇進しました。

また、ゲイブ・ストーン・シェイヤーがソリストに昇進しました。

アラン・ベルは、ドキュメンタリー映画「ファースト・ポジション」の最年少のメーンキャストで、デニス・ガニオ(マチュー・ガニオのお父さん)に指導されていた少年です。いつの間にか、長身の貴公子に成長していました。カルヴィン・ロイヤル3世は、ABT史上3人目のアフリカ系アメリカ人プリンシパルとなりました。(デズモンド・リチャードソン、ミスティ・コープランドに続き)長身でとてもハンサムなダンサーです。

カサンドラ・トレナリーは、2016年に開催されたジャパン・アーツ主催のガラ公演に、マルセロ・ゴメスのパートナーとして出演したテクニックの強いダンサー、スカイラー・ブラントはトレナリーと同じ年で、ロシアのバレエ番組「ビッグ・バレエ」にジュリアン・マッケイのパートナーとして出演していました。ジュウン・アンは韓国出身で、2013年のYAGPでゴールメダルを受賞しています。トーマス・フォースターはベテランで、すでにかなり主役を踊っているパートナーリングの上手いダンサー。ゲイブ・ストーン・シェイヤーもアフリカ系アメリカ人です。

なお、中止となったメトロポリタン・オペラハウスシーズンでは、プリンシパルのステラ・アブレラが引退公演を行う予定でしたが、中止となってしまったため、残念ながら引退公演なしで引退することになってしまいました。2021年のメトシーズンでは、オーストラリア・バレエの芸術監督に就任する予定のデヴィッド・ホールバーグが引退する予定となっています。

ABTには日本人団員として、現在はコール・ド・バレエに住谷健人さん、研修生として木村楓音さんが所属しています。






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And a HUGE congrats to my colleagues who were also promoted!!!

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カルヴィン・ロイヤル3世がセントラル・パークの四季の中で踊る動画。

コロナウィルス禍が北米で猛威を振るっており、3月からほとんどの舞台公演が中止に追い込まれてしまいました。ABTも恒例のメトロポリタン・オペラハウスでの春のシーズン、秋のシーズン、6つのツアー公演、くるみ割り人形とすべて中止になっています。2000万ドルの赤字となったとのこと。

今のところまだ北米ではいつ公演を行うことができるのかは不明です。特にニューヨークにはブロードウェイがあり、この街の経済にも大きく貢献しているわけですが、公演ができない状態であり、また観光客も来ることができません。舞台芸術界は大変な苦境に陥っています。この業界から足を洗わざるを得ないパフォーマーも多く出ているとのことです。いくつかのミュージカルは、来春幕が開くとのことですが、他のめどはたっていません。

https://www.washingtonpost.com/entertainment/theater_dance/new-york-city-cant-rebound-without-broadway-and-broadways-road-back-is-uncertain/2020/09/07/f3933444-e939-11ea-970a-64c73a1c2392_story.html

この記事の終わりの方に、(メトロポリタン・オペラハウスや、NYCBの本拠地がある)リンカーンセンターでは、ソーシャルディスタンスを取った400席の野外劇場を建てて、バレエなどを上演できる用意する計画があるとあります。

 

 

2018/10/27

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の2019年METシーズン、ボッレのABTフェアウェル

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の2019年春のメトロポリタン・オペラ(MET)シーズンが発表されています。

https://www.abt.org/abt-2019-spring-season-announced/

公演一覧
https://www.abt.org/performances/spring-season/

現在METシーズンは8週間開催されていますが、オペラ公演の需要が高く、一方巨大なメトロポリタン・オペラハウスを埋めるのが、現在のABTにとっては難しいという事情があり、2021年からは3週間短縮され、5週間となります。4000席もの劇場を満席にできるのは、ミスティ・コープランドと、現在はゲストとして時々出演するナタリア・オシポワだけとなっています。
https://www.dancemagazine.com/abt-met-season-2606238143.html

古典全幕作品が中心となっているMETシーズンですが、2019年は、新しい物語バレエがレパートリー入りすることになりました。ローザンヌ国際バレエコンクールのコンテンポラリー・ヴァリエーションの課題作品を提供している女性振付家、キャシー・マーストンがノーザン・バレエのために振付けた「ジェーン・エア」(シャーロット・ブロンテによる名作小説のバレエ化)で、ジョフリー・バレエとの共同制作となります。2016年に振付けられたこの作品は、非常に評価が高いものとなっています。

ノーザン・バレエでの「ジェーン・エア」作品紹介
https://northernballet.com/jane-eyre

アレクセイ・ラトマンスキーが常任アーティストに就任して10周年を記念して、新作が一作品振付けられ、オープニングガラで披露されると共に、ラトマンスキー作品の夕べとして上演されます。新作はグラズノフの「四季」に振付けられた作品。これに加えて、2009年にラトマンスキーが初めてABTのために振付けた「ドニエプル川の岸辺で」(音楽:プロコフィエフ)と、「Songs of Bukovina」(音楽:Leonid Desyatnikov)の3作品のトリプルビルが上演されます。

さらに、ラトマンスキー振付の全幕作品、「眠れる森の美女」、「アレキナーダ」、「ホイップクリーム」もぞれぞれ上演されます。

トリプルビルとしてはもう一つ、ABTとゆかりのあるトワイラ・サープ作品の夕べも上演されます。初めてABTのレパートリー入りする「Deuce Coupe」と、30人のダンサーによって踊られる「The Brahms-Haydn Variations」、そして世界中のバレエ団で踊られているハイパワーの人気作品「イン・ジ・アッパー・ルーム」の3作品です。

2007年に初めてABTの舞台に立ち、以後プリンシパルとして活躍してきたロベルト・ボッレが、ABTの舞台に別れを告げます。7月17日、20日の「マノン」公演です。ボッレはもちろん、引き続きダンサーとして活動を続けます。近年では本拠地のミラノ・スカラ座への出演だけでなく、世界中のバレエ団へのゲスト出演や、自身の「ロベルト・ボッレ&フレンズ」の活動などで忙しく、ABTへの出演は年1~2演目にとどまっていました。

「マノン」の他、「海賊」、「白鳥の湖」というおなじみの古典全幕作品も上演されます。


ABTは、METシーズンが発表されると共に、早々とキャスティングを発表する数少ないカンパニーの一つです。
注目のキャスティングをいくつか紹介します。

長い怪我との戦いの後復帰したデヴィッド・ホールバーグですが、ABTへの出演は「マノン」(2回)と「白鳥の湖」(1回)と極めて少ないものになっています。一方で、ロイヤル・バレエでは「ロミオとジュリエット」に出演するなど、ゲスト出演が多くなっています。

多くの人気スターが引退し、前述のように客を呼べるスターがミスティ・コープランドただ一人になってしまいました。ジリアン・マーフィーは技術の衰えは見られず、相変わらずのトップスターとしての活躍を見せてくれていますが、彼女も今や40歳。ダニール・シムキンはベルリンに本拠地を移し、ABTにも籍を残すものの、出演回数は減ってしまっています。若手ダンサーを育てるのが急務となっています。

その中で、注目されているのは、まだコール・ド・バレエのアラン・ベル。YAGPを扱ったドキュメンタリー映画「ファースト・ポジション」では小さくて可愛かった彼も、大人になりました。2016年にABTに研修生として入団し、2017年に正式団員に。そしていきなり「ロミオとジュリエット」のロミオ役に抜擢されます。今年の冬の「くるみ割り人形」では王子、そして2019年METシーズンでは、「白鳥の湖」のジークフリート王子、「眠れる森の美女」のデジレ王子、そして「海賊」のランケデムと主要な役に抜擢されました。長身でハンサムな彼が、次のスター候補性と目されているようです。

2017/12/22

マルセロ・ゴメスがABTを退団

NYCBの芸術監督、ピーター・マーティンスのセクハラ騒動が起こっている最中に、ABT(アメリカン・バレエ・シアター)の経営会議の議長より、プリンシパルのマルセロ・ゴメスが退団するという発表がありました。

https://www.nytimes.com/2017/12/21/arts/dance/marcelo-gomes-abt-sexual-misconduct-allegation.html

このプレスリリースによると、先週の土曜日にゴメスの8年前のsexual misconduct(性的な不正行為)が報告され、ABTは法律事務所に調査を依頼したとのことで、その調査期間中に彼は辞表を提出したそうです。当事者はゴメス以外にはABTの団員(過去、現在を問わず)はかかわっておらず、またABTでの仕事とは関係ないところで行われたとのことです。

現在のところ、それがどのような内容なのかは不明なので、なんともコメントも判断もしようがありませんが、とても悲しいことです。(この件はセクシュアル・ハラスメント、ではないことには留意しなければなりません)

ご存知の通り、マルセロ・ゴメスは、ABTのみならずバレエ界のトップスターで、世界バレエ・フェスティバルやABTの来日公演、ゲスト出演などで何回も来日しています。また、マシュー・ボーンの『白鳥の湖』に主演して東京で踊ったほか、ニューアドベンチャーズの『ザ・カーマン』『赤い靴』にもゲスト出演しています。

ブラジル出身の38歳。1997年に入団し、2002年にプリンシパルに昇進しました。今年でABT在籍20年を迎えて、それを祝う公演もありました。パリ・オペラ座バレエ学校でも学んだクラシックの技術の他、表現力、サポートの上手さ、パートナーへの気遣いでも良く知られており、ディアナ・ヴィシニョーワなど世界中のバレリーナが彼との共演を熱望していました。同性愛者であることも公表しています。

人柄の良さでも知られていただけに、この報道と退団にショックを受けた方は多いと思います。12月9日の「くるみ割り人形」の公演が、ABTでの最後のパフォーマンスとなってしまいました。

ABT、およびゴメスからの直接のコメントはありませんが、彼のスポークスパーソンは
「今はマルセロにとって自らを振り返る時期 です。彼は、家族、友人、同僚から支援を受けて感謝し力づけられています。現時点ではこれ以上のコメントはありません」と語っています。

彼を撮影したドキュメンタリー映画“Anatomy of a Male Ballet Dancer,”が完成し、いくつかの映画祭に出品されて受賞もしており、来年1月には劇場公開の予定となっています。

ワシントン・ポスト紙には、元ABTのプリンシパルで彼とよく共演し、現在はワシントン・バレエの芸術監督であるジュリー・ケントのコメントが掲載されていました。ゴメスは、ワシントン・バレエのために2018年3月に新作を振付ける予定となっています。

https://www.washingtonpost.com/entertainment/theater_dance/abt-principal-dancer-marcelo-gomes-resigns-amid-misconduct-investigation/2017/12/21/7574698e-e680-11e7-833f-155031558ff4_story.html

「私はマルセロを15歳の時から知っており、私が深く愛しいつでも応援する人であり続けます。彼の親切さ、気前の良さ、そして人間としての優しさを証言できますし、最も大切な友人であり続けます」

残念ながら、ゴメスのABTの出演予定は、ケネディセンター、メトロポリタン・オペラハウスでの公演からも消されてしまいました。長い怪我から復活したばかりのデヴィッド・ホールバーグ、来シーズンベルリン国立バレエに移籍するダニール・シムキン以外にはABTには男性スターダンサーはおらず、人気が高く女性ダンサーにも信頼されていたゴメスを失うことはABTにとっては大きな痛手です。


なお、NYCBのピーター・マーティンスのセクシュアル・ハラスメント疑惑については、性的ではない暴力の件なども含めて多くの告発が相次いでいます。しかしながら、現在のところまだマーティンスが辞任するかどうかは発表されていません。調査のために休職中の彼に代わって、現役のソリストで振付家のジャスティン・ペック、バレエ・マスターのクレイグ・ホール、レベッカ・クローン、ジョナサン・スタッフォードという4人のスタッフが芸術監督代行を務めています。辞任は避けられないとの見通しではあります。

バレエ界におけるセクシュアル・ハラスメントの事例は多いと言われており、今後もこのようなことは相次ぐことと思われます。

2017/10/30

ABTの2018年METシーズン、マクレガーの新作

ABT(アメリカン・バレエ・シアター)の2018年春~初夏のMETシーズンが発表されています。

https://www.nytimes.com/2017/10/26/arts/dance/american-ballet-theater-spring-season-wayne-mcgregor-alexei-ratmansky.html?_r=0

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=589

注目の新作は、ウェイン・マクレガーが振付ける「春の祭典」。“Afterite”というタイトルがついています。もともと、セルゲイ・フィーリンが芸術監督をしていた当時のボリショイ・バレエでマクレガーが「春の祭典」を振付ける予定となっていたのが、様々な騒動のために中止となっていたものです。マクレガーがABTに作品を提供するのは初めてのこと。5月21日が初演です。

また、もう一つ新作があります。ABTの常任振付家であるアレクセイ・ラトマンスキー振付による「アレキナーダ」。プティパが1900年に振付けたコミック・バレエの再振付となります。

それ以外は、ほぼ古典の全幕作品の上演となります。「ジゼル」、「ラ・バヤデール」(マカロワ版)、「ロミオとジュリエット」(マクミラン版)、「白鳥の湖」、「ドン・キホーテ」。そして、ラトマンスキーが今年初演し、ヒット作となった「ホイップクリーム」も再演されます。

最近、ABTはあまりゲストダンサーを呼びませんが、今回は、かつてこのバレエ団に所属していたナタリア・オシポワがゲストとして復帰します。デヴィッド・ホールバーグと「ジゼル」を踊ります。なお、デヴィッド・ホールバーグはロイヤル・バレエにゲスト出演し、ここでもオシポワと「ジゼル」を踊る予定です。

ABTはチケット発売前にキャストを発表する数少ないカンパニーの一つ。日ごとのキャストは、カレンダーを見ればわかります。
http://www.abt.org/calendar.aspx?startdate=5/1/2018

このシーズンでは、ロベルト・ボッレは「ジゼル」1公演しか踊らないのが少し寂しいところです。コール・ド・バレエのJoo Wan Ahnがソロル役に抜擢されています。韓国出身の若手ダンサーでYAGPで金賞、ヴァルナで銅賞を受賞しています。すでに「海賊」のアリとランケデムはABTで踊っています。

最近ABTは来日公演を行っていませんが、3月にはシンガポール公演を行います。(「白鳥の湖」)

なお、プリンシパルのイザベラ・ボイルストンは、今年12月のパリ・オペラ座の「ドン・キホーテ」にゲスト出演。ユーゴ・マルシャンと2公演を踊る予定です。

2017/07/08

ABTの昇進発表、サラ・レーン、デヴォン・トゥッシャー、クリスティーン・シェフチェンコがプリンシパルに

ABT(アメリカン・バレエ・シアター)は恒例のMETシーズンを7月8日で終えますが、シーズン終了直前に昇進の発表がありました。

サラ・レーン、デヴォン・トゥッシャー、クリスティーン・シェフチェンコがプリンシパルに、カルヴィン・ロイヤルIIIがソリストに昇進しました。

https://www.nytimes.com/2017/07/07/arts/dance/american-ballet-theater-promotes-4-dancers.html

今回昇進した4人は、全員が長年ABTで活躍してきた、いわば生え抜きのダンサーたちです。

サラ・レーンは2003年に研修生として入団し、2007年にソリストに昇進しました。ナタリー・ポートマンがアカデミー賞主演女優賞を受賞した映画「ブラック・スワン」で、ポートマンの吹き替えを行った件で有名になりました。身長が150cm台と小柄だったため、なかなか役に恵まれませんでした、ABTではエルマン・コルネホやダニール・シムキンといった小柄なプリンシパルがいて相手役を務め、今年のMETシーズンではマリア・コチェトコワの怪我降板もあって、「ジゼル」と「白鳥の湖」で主演しました。特に「ジゼル」では高い評価を得ました。

デヴォン・トゥッシャーは2007年に入団し、2014年にソリストに昇進しました。長身で美しいラインの持ち主であるトゥッシャーは、今年は「白鳥の湖」のオデット/オディール役を初めて演じて、表現力も技術も絶賛されました。

クリスティーン・シェフチェンコはウクライナ生まれですが、8歳でアメリカに移ります。もともとは新体操の選手でした。2006年にABTに入団して2014年にソリストに昇進しています。今年は「ドン・キホーテ」のキトリや「ジゼル」のミルタ役を演じました。

カルヴィン・ロイヤルIIIは、ABTのスタジオカンパニーを経て、2010年に研修生、2011年には正団員となります。アフリカ系で長身、とてもハンサムで強靭かつ優雅さもあるダンサーです。今年は、「白鳥の湖」の、3幕で登場する美貌のロットバルト役と「ドン・キホーテ」のエスパーダを演じました。まだコール・ド・バレエだったのかと驚かれる存在感がありました。

今年昇進したダンサーたちはいずれも実力派で、順当な昇進といえます。特に主役も多く演じてきて熱心なファンが多かったサラ・レーンが、長年の苦労が報われてついにプリンシパルとなったことで、喜こばしいことです。


ABTはしばらく来日公演がありませんでしたが、最近ではラトマンスキー振付の「ホイップクリーム」などの話題作もあり、久々に日本でも観られたらうれしいと思います。


一方で、今年は6月にディアナ・ヴィシニョーワがABTを去りました。以前もお知らせしたとおり、ヴィシニョーワは引退したわけではなく引き続きマリインスキー・バレエや自らのプロジェクトで踊りつづけます。

また、今秋突然に、同じくロシア出身のプリンシパル、ヴェロニカ・パールトが退団することが発表されました。
https://www.nytimes.com/2017/07/03/arts/dance/veronika-part-american-ballet-theater-announces-her-retirement.html

ワガノワ・アカデミーを経てマリインスキー・バレエのソリストからABTに移籍したパールトは、当初は美しいながらも技術的に不安定なところもありましたが、近年はその弱点も克服して成熟したダンサーとなっており、「白鳥の湖」のオデット/オディールに定評があって根強い人気がありました。しかし、上記ニューヨークタイムズの記事によれば、今回の退団は、39歳となった彼女の契約が更新されなかったからであったからとのことです。そのため、一部のファンは退団させないための署名活動を行っています。パールトの最後の公演は、7月8日マチネの「モーツァルティアーナ」です。

2017/06/23

ABTを去るディアナ・ヴィシニョーワ

ディアナ・ヴィシニョーワは、6月23日(金)の「オネーギン」の公演で、2005年からプリンシパルを務めて来たアメリカン・バレエ・シアター(ABT)を去ります。

といっても、もちろん引退するわけではなく、マリインスキー・バレエのプリンシパルとして、またゲスト・アーティストとして引き続き踊りつづけます。

マルセロ・ゴメスやグレーミン役のロマン・ザービンとの「オネーギン」のリハーサル、そして彼女のインタビューがナレーションとしてかかる美しい映像(一瞬、ニーナ・アナニアシヴィリも登場します)

Diana Vishneva’s Last Days with American Ballet Theatre
https://thescene.com/watch/thenewyorker/goings-on-about-town-diana-vishneva-s-last-days-with-american-ballet-theatre

今でこそ世界的なスターであるディアナ・ヴィシニョーワですが、この映像でのインタビューによれば、25歳までは自分は思ったほど素晴らしく踊ることができないので辞めようと思っていたとのことです。しかし、ダンスでしか伝えられない感情があるし、舞台に立てば時も人生も立ち止まり、魂の琴線に触れることができるし、それが私の人生であり運命であり、そのことに意味を見つけた、と語っています。

Diana Vishneva Bids Farewell to Ballet Theater, but Not to Dance
https://www.nytimes.com/2017/06/20/arts/dance/diana-vishneva-bids-farewell-to-ballet-theater-but-not-to-dance.html

ABTを去る理由として、ここで踊るのは時間もエネルギーも使うし、40歳となった今、自分の世代はほぼみな去ってしまった、この労力を別のことに注ぎたいから、だそうです。

ヴィシニョーワは、自身が主宰するコンテンポラリーダンスのフェスティバル、「Context」に情熱を注いでいます。最初、古典バレエの世界から来た彼女がコンテンポラリーのフェスティバルを開催するということで人々は驚きました。しかし回数を重ねるごとに、古典バレエとコンテンポラリーダンスは決して無縁ではない、結びつきがあることが理解されてきたそうです。

しかしながら、ABTで多く共演し、今回の「オネーギン」でもパートナーとなるマルセロ・ゴメスは特別な存在であり、このパートナーシップはABTを去ってからも、他で続けたいと語っています。

また、今の若い世代について、自分たちが若い頃と同じような勤勉さは失われてきたのではないかと危惧をしています。今は同じことを教えるにしても教師は10回も20回も繰り返し教えるけど、自分の時には1回ですべてを覚えなければならなかったそうです。同世代のダンサーたちは素晴らしい人ばかりだったし、当時の教師たちはとても怖かったけど尊敬できた。今は教師は生徒たちに依存しているのではないか、と語っています。彼女は、単なるダンサーではなく、芸術の言語の使い手になりたかったので、厳しい競争の中で努力してきました。

ディアナ・ヴィシニョーワは、マリインスキー・バレエのロンドン公演で、「アンナ・カレーニナ」に主演する予定です。しばらく来日していないので、成熟して無駄なものをそぎ落とした真の芸術家である今の彼女の舞台を日本でもぜひ観たいものです。

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2017/01/04

デヴィッド・ホールバーグ、ABTに復帰予定

怪我とそのリハビリのために2年半も舞台から遠ざかっていたデヴィッド・ホールバーグ。12月に、1年にわたってリハビリのために滞在していたオーストラリアで、オーストラリア・バレエの「コッペリア」に主演して舞台復帰を果たしました。
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2016/11/post-ee9a.html

「コッペリア」では長いブランクを感じさせず、良いパフォーマンスを見せることができたようです。

カーテンコールより。

Special show, special peeps. 💛❤️ @amber_e_scott @davidhallberger #ausballet #coppelia

Kate Longleyさん(@klongersklongers)が投稿した写真 -

公演のレビュー
https://deborahjones.me/2016/12/14/david-hallberg-in-coppelia/

ホールバーグのインタビュー記事
http://www.theaustralian.com.au/arts/stage/australian-ballet-rebuilds-international-superstar-david-hallberg/news-story/bf994411652bc0f0068f36a510fc56b1

金髪の美貌で貴公子のイメージの強いホールバーグですが、「コッペリア」のフランツ役という庶民的なキャラクターも魅力的に演じることができたようです。音楽性に優れ、美しい脚と高いルティレは健在。この時点では、まずはこの「コッペリア」での復帰だけを考え、そこより先のことはゆっくり考えると彼は語っていました。

しかし、このオーストラリア・バレエでの復帰が成功を収めたいうことで、古巣のABTへの復帰も発表されました。

David Hallberg Returns to American Ballet Theater
http://www.nytimes.com/2017/01/03/arts/dance/david-hallberg-returns-to-american-ballet-theater.html

1月10日よりABTでのクラスレッスンに参加し、5月からのMETシーズンでABTの舞台に復帰するそうです。まだ、どの作品に出演するかは決まっていませんが、2週間くらいでめどが立つそうです。このMETシーズンで新作「ホイップクリーム」が上演されるアレクセイ・ラトマンスキーとの仕事も楽しみにしているとのこと。

ABTの公演カレンダーを見ると、「ホイップクリーム」の他、「ジゼル」や「オネーギン」で主役男性のキャストが未定の日程があります。ここにホールバーグが出演する可能性は高いかもしれません。

2016/11/20

デヴィッド・ホールバーグがオーストラリア・バレエ「コッペリア」で舞台に復帰

怪我により長期にわたって舞台から遠ざかっていたデヴィッド・ホールバーグ(ABTおよびボリショイ・バレエのプリンシパル)がついに舞台に復帰するという嬉しいニュースがありました。

David Hallberg to return to the ballet stage in The Australian Ballet’s Coppélia

https://deborahjones.me/2016/11/20/david-hallberg-to-return-to-the-ballet-stage-in-the-australian-ballets-coppelia/

ホールバーグは、オーストラリア・バレエの「コッペリア」のシドニー・オペラハウスでの12月13, 16, 19、 21日の4公演に主演する予定です。これはオーストラリア・バレエの芸術監督であるデヴィッド・マッカリスターに確認済みのニュースとのことです。


ホールバーグは怪我により、2014年8月に左足首の手術を受けました。その回復のためのリハビリで、彼はオーストラリア・バレエのスタッフの力を借りていてオーストラリアに長期で滞在。そのため、復帰がオーストラリア・バレエとなったとのことです。

「コッペリア」のフランツ役はホールバーグにとって今回踊るのが初めてとのこと。貴公子役を得意としてきたホールバーグは、新境地を開くことになりそうです。


オーストラリア・ツアー中のヒューストン・バレエ、加治屋百合子さん、ジャレッド・マシューズと再会したデヴィッド・ホールバーグ (加治屋百合子さんのInstagramより)

オーストラリア・バレエの「コッペリア」、とてもいいプロダクションです。

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2016/10/30

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の2017年METシーズン

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の2017年メトロポリタン・オペラハウスでの春シーズンが発表されています。

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=562


以前にもお知らせしたとおり、アレクセイ・ラトマンスキー振付の新作「ホイップクリーム」(音楽と台本はリヒャルト・シュトラウス)がカリフォルニア州コスタ・メサでの初演を経て、メトロポリタン・オペラハウスでも上演されます。

先日のユニバーサル・バレエでのジュリエットも素晴らしかったアレッサンドラ・フェリが、今度は「オネーギン」のタチヤーナ役で2回(6月20日、22日)ゲスト出演します。同じ「オネーギン」で、6月23日にディアナ・ヴィシニョーワがタチヤーナ役を踊り、ABTのプリンシパルとては最後の舞台となります。

METシーズンでのゲストダンサーは、アレッサンドラ・フェリのみの予定となっています。
なお、プリンシパルの一覧からはポリーナ・セミオノワの名前が消えているので、退団したということになります。プリンシパル一覧にデヴィッド・ホールバーグの名前は残っているものの、現在のところMETシーズンでの出演予定はありません。

5月22日のガラ公演で、シーズンは幕を開けます。全幕の新作「ホイップクリーム」は、12回上演される予定となっています。


もう一つ、カンパニー初演作品があります。ラトマンスキー振付、音楽はチャイコフスキー(グラズノフ編曲)の「Souvenir d'un lieu cher(なつかしい土地の思い出)」がレパートリー入りします。2012年にデンマーク・ロイヤル・バレエで初演された作品です。
この作品は、「チャイコフスキー・スペクタキュラー」と題して、バランシン振付の「チャイコフスキーパ・ド・ドゥ」、「モーツァルティアナ」、マルセロ・ゴメス振付の「AfterEffect」、ラトマンスキー振付の「くるみ割り人形」のパ・ド・ドゥ、ラトマンスキー振付の「眠れる森の美女」の3幕「オーロラの結婚」(The Porcelain Trio、Three Ivansというバレエ・リュスで上演され、ラトマンスキーによって改訂振付された二つのディヴェルティスマンが加わる)の中から、組み合わせを変えて同時上演されます。


全幕作品は、5作品です。

「ドン・キホーテ」
「ジゼル」 (5月30日の公演は、マルセロ・ゴメスのカンパニー在籍20周年記念公演)
「金鶏」(ラトマンスキー振付)
「海賊」
「白鳥の湖」
「オネーギン」

ほとんどのキャストはすでにカレンダーで発表されています。
http://www.abt.org/calendar.aspx?startdate=5/1/2017

「ジゼル」では、ミスティ・コープランド、ジリアン・マーフィー、サラ・レーンがジゼル役デビューを飾ります。「ドン・キホーテ」ではミスティ・コープランドとクリスティーナ・シェフチェンコがキトリ役デビュー。「白鳥の湖」では、デヴォン・トゥーシャーがオデット/オディール役デビュー。「オネーギン」ではステラ・アブレラがタチヤーナ役デビューを飾ります。

かつては華やかなゲストダンサーが席巻していたABTですが、近年は内部のダンサーを育てることに方向性を転換したようです。ミスティ・コープランドの人気が高く、彼女の出演日はどんな大物スターよりも観客動員が見込めるということもあります。オールスター・バレエ・ガラに出演したカサンドラ・トレナリー、そしてクリスティーナ・シェフチェンコ、デヴォン・トゥーシャーなどは今後注目を集めることでしょう。また、ラトマンスキーが振付けた作品が多くレパートリーに加わることで、カンパニーとしての個性も出てきました。

2016/10/07

ABTでラトマンスキーが新作『Schlagobers(ホイップクリーム)』を振付

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)は、常任振付家であるアレクセイ・ラトマンスキーが、新作『Whipped Cream(ホイップクリーム)』を振り付けることを発表しました。

http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=561

『ホイップクリーム』は、全2幕の作品で、セットや衣装は著名なアーティストであるマーク・ライデンがデザインします。

初演は2017年3月15日にカリフォルニア州コスタ・メサのセガストロム芸術センターで行われる予定で、その後メトロポリタン・オペラハウスでのMETシーズンでも5月22日より上演されます。

『ホイップクリーム』は1924年にリヒャルト・シュトラウスがウィーン国立歌劇場での上演のために作曲して台本を書いた「Schlagobers」という作品を基にしています。その時はHeinrich Kröllerという振付家が振付けました。

物語は、ウィーンでのケーキ屋さんに子供たちが集まったところ、お菓子たちが命を得て踊りだします。一人の少年が夢中になるあまり倒れてしまい、幻覚の中でプラリネ姫の宴にやってきて、お酒やケーキも大騒ぎ、というものです。(Wikipediaより)

デザインを担当するマーク・ライデンは、ポップ・シュールレアリズムの父として知られており、マイケル・ジャクソンのアルバム「デンジャラス」や、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ「One Hot Minute」のジャケットを描いているので、目にした方も多いと思います。ライデンは、ウィーンのケーキ屋さんでケーキに夢中になっている少年の物語にふさわしいファンタスティックな世界をつくりあげることでしょう。

少し「くるみ割り人形」に似たストーリーですが、マーク・ライデンのデザインとラトマンスキーの振付で、独特のシュールでポップ、楽しい世界が展開しそうで、期待の作品と言えるでしょう。


こちらの動画は、ラトマンスキーの作品ではありませんが、「ホイップクリーム」をバレエ化したものです。ドイツ、ミュンヘンのゲルトナープラッツ州立劇場でKarl Alfred Schreinerが振付けたもの

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なお、マーク・ライデンの展覧会が、10月15日から11月1日まで、中野ブロードウェイのHidari Zingaroで開催されるとのことです。
http://www.markryden.com/news/index.html

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