K-BALLET COMPANY「カルメン」公開リハーサル/6月1日より上演、全キャスト配信あり
先日、6月1日からBunkamuraオーチャードホールで上演される、K-BALLET COMPANYの熊川哲也振付「カルメン」、報道向けの公開リハーサルがあり、行ってきました。
写真:Ayumu Gombi
左より、石橋奨也、日高世菜、高橋裕哉、浅川紫織、小林美奈、堀内將平、成田紗弥、山本雅也
https://www.k-ballet.co.jp/contents/2022carmen
2014年に熊川哲也振付で初演された本作は、「カルメン」を全3幕のグランド・バレエとしたもの。メトロポリタン・オペラなどのプロダクションのデザインを手がけたダニエル・オストリングが舞台美術を手掛け、鮮やかでスリリングな激情のドラマとして高く評価されました。
今回は、怪我により2018年に惜しまれながら一度は引退したプリンシパルの浅川紫織が、けがを克服して復帰を果たし、4年ぶりに主演を飾ることが話題となっています。
公開リハーサルでは、今回主演する4組のペアのそれぞれの演技を見せて、見比べるというユニークな試みを行いました。日高世菜と石橋奨也、成田紗弥と山本雅也、小林美奈と堀内將平の3組は、ラストのドン・ホセがカルメンを手にかけるシーン、そして浅川紫織、高橋裕哉組は、群舞を従えての「ハバネラ」のシーンのリハーサルを見せてくれました。
写真:Ayumu Gombi
熊川哲也芸術監督は、このドン・ホセがカルメンを手にかけてしまうシーンを見比べるという意図について説明しました。
「「カルメン」や「クレオパトラ」はクラシックバレエとは違ったドラマティック・バレエです。役の解釈については、あえて口を出さないところがあります。教えた通りにやったからと言って満足するかと言ったらそうではない。僕が初演で演じた時、怒りで殺したというところはあったけど、ゲストのロベルタ・マルケスとやったときにはそうではなかった。あとはそれぞれが、成長していく上での経験があったり、恋愛だったり、出会いと別れがあったりで変わってくる。このシーンでは、それぞれの“死にざま”や“殺(あや)めざま”があるはず。複雑に入り混じる心情をどう表現するかはキャスト一人ひとりに委ねている。自分なりの見せ方で踊って欲しい」
確かに3組3様の解釈の違いが見られて、大変興味深かったです。特にドン・ホセがどのように苦悩し、嫉妬し、愛する女を殺してしまうのか、手にかけてしまった彼女を目にしての後悔…。リハーサルが終わった後、一人一人の出演者が役の解釈について語りました。
日高世菜、石橋奨也 2022年6月2日(木)18;30、5日(日)13:00公演
写真:Ayumu Gombi (2点とも)
熊川「最後殺す時どういう気持ちで殺しているの?」
石橋「それは、怒りが強い」
熊川「あーやっぱり。確信的なの?」
石橋 「プロローグの時からすでに決めています」
石橋さんは、感情を内に秘めているタイプで、でも言葉の通り強い怒り、裏切られた哀しみを感じさせて、傷ついた獣の目をして強い決意で感情をカルメンにぶつけています。日高さんは手脚がとても長く身体の表現が大きく、音楽性も豊か。どうしてこんなことになったのか、おびえるような気持ちも現れています。震えのような細かいパ・ド・ブレが美しい。
日高「オペラをバレエにした作品なので、歌うように踊れたらと思っていて。カルメンはいろいろ誘惑します。自由奔放なのですが、歌うように踊れたらいいと思っています。」
成田紗弥、山本雅也 2022年6月2日(木)14:00、4日(土)13:00公演
写真:Ayumu Gombi (2点とも)
熊川「プロローグの時にピストルを頭につけるんだけど、その時には、この世にはもう誰も残っていないから、死ぬ前に思いを伝えたいってストーリー。雅也はどういう想いで彼女を殺すの?」
山本「僕も怒りです。序盤は悲しみがあります。」
4組の中で最年少の山本さんは、少年のようなナイーブさを感じさせる一方、踊りはダイナミックで華があり、輪郭がはっきりしています。カルメンを手にかけた後の打ちひしがれた表情が印象的です。成田さんのカルメンは、実に小悪魔で強い生命力があり、最後まで彼を翻弄しています。二人ともシェネがとても美しい。
成田「わたしのカルメンはホセにはあまり情はなくて、ワンナイトラブなのにホセがしつこいと思っています。」
小林美奈、堀内將平 2022年6月3日(金)14:00公演
写真:Ayumu Gombi (2点とも)
堀内「僕は、真面目な青年が全部を彼女のために捨ててきたのに、捨てられてしまい、傷ついた心で、そのうちに愛を伝えようとするんだけどそのうちに混乱して最後は殺してしまいます」
その言葉の通り真面目で内向的な青年ホセで、殺してしまってから銃を落として手の震えが止まらない演技、茫然として、カルメンを抱きかかえ、とぼとぼ歩くさまがリアルで悲しみがこもってした。小林さんのカルメンは、強い女を気取りつつも、3人の中では一番ホセへの情がにじみ出ているように感じられました。
小林「カルメンは自由奔放で、自分の意志のまま、ストレートに思いを伝えて生きている女性だと思います。翻弄して周りを巻き込んでいます。
浅川紫織、高橋裕哉 2022年6月1日(水)14:00、4日(土)17:30公演
写真:Ayumu Gombi (3点とも)
浅川紫織は、「ハバネラ」のシーンを群舞を従えて踊りました。彼女を崇拝する多くの男性たちを従え、コケティッシュで妖艶な魅力で惑わせていきます。ケガで一度は引退し、ブランクがあったとは思えない鮮やかでダイナミックさに加えて、優雅さもあります。
浅川「わたしはK-Balletのカルメンという作品自体が大好きで、初演は2014年だったので踊るのは8年ぶりになります。とても光栄なことです。どういうカルメンかはまだ本番まで探りたいと思います。先ほど世菜さんが言っていた、オペラの中にある歌詞で、「今日はわからない、明日かもしれないし一生ないかもしれない。私のことを惚れるのはみんなの自由だけど気をつけなさい」というのがとても印象に残っています。そういう感じなのを常に意識して気持ちとして。どういう風になるかは劇場に行って確かめていただければ。
この場面ではカルメンにどうしようもなく惹かれている男性の一人としてのホセを演じている髙橋さん。
高橋「闘牛場に行くまでにかなり思考回路がおかしくなる、カオスというか、かなりダークな方面での接し方の結果、彼女を殺してしまいます」
熊川「深いですね。最後殺して独り占めにしたいと思う、みたいな。誰にも渡さない、と」
写真:Ayumu Gombi
4キャストそれぞれが異なった個性、解釈で愛と激情のドラマを伝えてくれる、熊川哲也版「カルメン」。演技力もバレエのテクニックも優れたトップダンサーたちの競演は見逃せません。
私も初演はじめ何回も観ていますが、数ある「カルメン」のバレエ化作品の中でも、バレエらしい作品であり、またクライマックスの演出のドラマは他の「カルメン」とは全く違ったもので、思わず引き込まれてしまう傑作です。熊川さんの演出だけあって、ドン・ホセの心理描写、ダンスにも比重が置かれているのもほかにない特徴だと思います。
◎公演日程
2022年6月1日(水)14:00
2022年6月2日(木)14:00/18:30
2022年6月3日(金)14:00
2022年6月4日(土)13:00/17:30
2022年6月5日(日)13:00
主催 | TBS |
---|---|
会場 | Bunkamuraオーチャードホール |
日程 | 2022年6月1日(水)~6月5日(日) |
チケット料金 (税込) |
S:¥15,000
学生券:¥3,500 ※A親子席・学生券はTBSチケット・チケットぴあWEBにて取り扱い |
怪我を克服して復帰した浅川紫織さんについてのドキュメンタリーもぜひ。
なお、千穐楽となる、6月5日(日)13時公演を、オンラインライブ配信することが決定しています。
TBS が誇る高い映像制作技術、高精細4Kカメラで撮影された大迫力の映像です。
https://www.k-ballet.co.jp/contents/526906
また今回カルメン役として、カンパニーを代表する豪華キャストが名を連ね、いずれも見逃せません。そのそれぞれの魅力を味わっていただけるよう、今回に限り4組すべてのキャストを特別にライブ配信(スイッチングなしで、舞台全景を楽しんでいただく固定カメラ)します。全キャストをお楽しみいただくためのお得なセット券もあります。
■TBS が誇る高い映像制作技術、高精細4Kカメラで撮影された大迫力の映像で!
ライブ配信<4Kカメラ・スイッチングあり>
◆配信日時
2022年6月5日(日)13:00公演 ※6月6日(月)23:59 まで視聴可能
出演:カルメン / 日髙世菜、ドン・ホセ / 石橋奨也、他 Kバレエ カンパニー
◆視聴チケット料金
3,800円(税込)
◆購入先
TBSチケット / U-NEXT ※6月6日(月)21:00まで購入可能
■カンパニーを代表する顔ぶれが連ねる主演4キャスト。演劇的バレエのさらなる境地に挑む!
ライブ配信<固定カメラ・スイッチングなし> ※舞台全体を観ていたいという方々向けの映像となります。
◆配信日時
① 2022年6月3日(金)14:00公演
出演:カルメン/小林美奈、ドン・ホセ / 堀内將平、他 Kバレエ カンパニー
※同日23:59 まで視聴可能
② 2022年6月4日(土)13:00公演
出演:カルメン / 成田紗弥、ドン・ホセ / 山本雅也、他 Kバレエ カンパニー
※同日23:59 まで視聴可能
③2022年6月4日(土)17:30公演
出演:カルメン / 浅川紫織、ドン・ホセ / 髙橋裕哉、他 Kバレエ カンパニー
※同日23:59 まで視聴可能
視聴方法・お問い合わせ等
TBSチケット:https://tickets.tbs.co.jp/tbs/streaming/
※推奨環境:J-Stream Equipmediaをご確認下さい。
U-NEXT: https://help.unext.jp/info/info420
④2022年6月5日(日)13:00公演
出演:カルメン / 日髙世菜、ドン・ホセ / 石橋奨也、他 Kバレエ カンパニー
※同日23:59 まで視聴可能
◆視聴チケット料金
1キャスト券 / 各2,500円(税込)
4キャストすべてお楽しみいただく セット券 / 8,500円(税込)
◆購入先:【TBSチケット】
※それぞれの配信当日20:00まで(セット券のみ6月3日(金)正午まで)購入可能
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