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2020年3月

2020/03/22

劇場閉鎖に伴う、バレエ/ダンス映像のオンライン公開

新型コロナウィルスの世界的な流行により、ヨーロッパ、北米など世界中の劇場が閉鎖されています。日本でも新国立劇場の公演の多くが中止になったり、多くの舞台芸術公演が中止/延期となり、舞台芸術は大きな危機を迎えています。

そんな中で、多くの観客が芸術に飢えているわけですが、いくつかの劇場やオーケストラでは、映像を無料で配信して観客にサービスを提供してくれています。コロナウィルス流行で、不要不急の外出を控えるように言われていたり、在宅する人が増えているということもあります。多くは期間限定ですが、貴重な映像を観ることができます。お早めに!

 

K-Ballet Company 熊川哲也、ダーシー・バッセル「若者と死」

プティ振付『若者と死』全編【熊川哲也 出演】
新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防のために開催中止となった、K-BALLET COMPANY「トリプル・ビル 2020」で上演を予定していたプティ振付『若者と死』を全編公開いたします。
このような先が見えぬ苦しいときだからこそ、人々の心を潤す芸術が必要であると思慮し、この度の公開に踏み切りました。
観客の皆様に拍手喝采をいただけることが当たり前のことではなく、いかに恵まれ、幸せなことであるかを噛み締める一方で、芸術は豊かな時にのみ嗜むものでは決してなく、いかなる時も人々の心の支えとなり得るものと強く信じています。
出演者ならびに関係者一同、この状況に屈することなく未来に向けて歩んで参りたいと思います。
また、今後も皆様からのあたたかいご支援をいただけますと幸甚にございます。
最後になりましたが、この度の新型コロナウイルス感染症に罹患された方々、および関係者の方々へ心よりお見舞いを申し上げます。

<プティ振付『若者と死』>
若者 熊川哲也
黄色いドレスの女 ダーシー・バッセル
振付 ローラン・プティ
台本 ジャン・コクトー

デンマーク・ロイヤル・バレエ「ナポリ」

ニコライ・ヒュッベ&ソレラ・イングルンド振付、アレクサンドラ・ロ・サルロ、アルバン・レンドルフ主演

https://kglteater.dk/kgl/xtra/forestilling-napoli/?section=31109

(画質は非常に綺麗ですが、時々とまることがあります。舞台を20世紀に設定していてとても面白いです)

 

キエフ・バレエ初夢ガラ(今年1月3日の来日公演の舞台)3月19日より2週間公開

エレーナ・フィリピエワの至芸を堪能できる「ライモンダ」、男性ダンサーのポワント技を楽しめる、ユーモラスな「フィガロの結婚」、ウクライナのバレエ団ならではの勇壮な「ゴパック」など新春にふさわしい、とても楽しくて華やかなガラ公演でした。

マリインスキー・バレエ

マリインスキー国際バレエフェスティバルの『ウラジーミル・シクリャーロフの夕べ』がネット中継され、その録画が視聴できます。前半はユーリ・スメカロフ振付の新作、後半はプティの「若者と死」

 

ペルミ・バレエ「ジゼル」ナタリア・オシポワ主演

3月20日にライブ配信されたものです。

→削除されてしまいました。

 

ローマ歌劇場バレエ「ドン・キホーテ」 

ローラン・イレール振付(バリシニコフ版に基づく)、ヤーナ・サレンコ、イザック・エルナンデス主演

https://www.raiplay.it/programmi/balletto-donchisciotteteatrodelloperadiroma

衣装がかなり変わっていますが、見ごたえあります。

 

キエフ・バレエ「くるみ割り人形」

アナスタシア・モスカレンコ、ニキータ・スハルコフ主演、アレクセイ・バクラン指揮

DVDになっていますが、楽しいプロダクションです。

フランス、パリのシャイヨー劇場

バットシェバ舞踊団の「Sadeh 21」や「デカダンス」、勅使川原三郎の「鏡と音楽」、ダミアン・ジャレの「VESSEL」、ロシオ・モリーナの「ダンサオーラ」などの作品を視聴することができます。

http://theatre-chaillot.fr/fr/chaillotchezvous

ロイヤル・オペラハウス

ロイヤル・オペラハウスのYouTubeチャンネルでいくつかの作品がビデオオンデマンドで視聴できます。バレエでは次の2本(プラス1本)

3月27日 「ピーターと狼」(マシュー・ハート振付、セルゲイ・ポルーニン出演)

4月3日 「エイシスとガラテア」(ヘンデルのオペラですがウェイン・マクレガー振付、ローレン・カスバートソン、エドワード・ワトソンが出演)

4月17日 「変身」(アーサー・ピタ振付、エドワード・ワトソン出演)

 

バイエルン州立歌劇場(ミュンヘン・バレエ)

4月19日まで様々な作品がストリーミングされています。バレエでは、ちょうど現在「ジュエルズ」3月21日(土曜)現地時間19:30(日本は22日午前3時半 )から28時間時間限定でビデオオンデマンドで視聴可能。アリーナ・ソーモワ、ウラジーミル・シクリャーロフ、アシュレイ・ボーダーがゲスト出演しています。

https://www.staatsoper.de/en/news/online-schedule-until-19-april.html

イングリッシュ・ナショナル・バレエ

タマラ・ロホが指導するクラスレッスンをライブ配信。録画も視聴できます。

ハンブルク・バレエ

https://www.hamburgballett.de/de/news/online_programm.php

3月20日と22日に若手振付家の夕べのコンピレーションを作成、また23日には、ロイド・リギンスが菅井円加さんを指導する、バーチャルクラスを提供するとのことです。また26/28/29/29の4日にわたって、ノイマイヤーが「ガラスの動物園」のクリエーションのインサイトを見せてくれるとのこと。

ウィーン国立歌劇場

https://www.wiener-staatsoper.at/en/staatsoper/news/detail/news/the-wiener-staatsoper-is-closed-but-continues-to-play-daily-online/

日替わりでオペラ、バレエ作品を配信しています。バレエは、4月2日にエドワード・クルーグ振付の「ペール・ギュント」を配信。(https://www.staatsoperlive.com/ で登録が必要)

 

パリ・オペラ座

https://www.operadeparis.fr/actualites/spectacles-de-lopera-de-paris-a-redecouvrir-en-ligne

現在ジオブロックがかかっていて日本からは視聴できませんが、今後いくつかは視聴可能になる予定です。

バレエは3月30日から4月5日まで「白鳥の湖」、4月13日から19日まで「ジェローム・ロビンズの夕べ」。現在も「ジゼル」は8月5日まで視聴できる予定です。(「ジゼル」はアルビッソン、ガニオ主演)

アメリカのダンスマガジン

https://www.dancemagazine.com/dance-performances-online-2645501079.html

世界中のダンサーから提供された情報を元に、オンライン視聴できるダンスのリンク集を作りました。すごく重たいページですが、ダンス映像が満載です。ポーランド国立バレエの影山茉以さんが、ルグリ振付「海賊」のギュリナーラのソロを踊るリハーサル映像も紹介されています。

 

UbuWeb

ピナ・バウシュ、ベジャール、フォーサイス、ローザス、ジェローム・ベル、シディラルビ・シェルカウイ、アクラム・カーン、マッツ・エック、山海塾、勅使川原三郎などなど、世界を牽引する現代振付家60名以上の作品映像を全部無料で見ることができます。シルヴィ・ギエムが踊るエックの「Wet Woman」なども。

http://ubu.com/dance/

 

marquee.tv

現在、30日間無料で様々なオペラ、ダンス、演劇が視聴できます。ロイヤル・オペラハウス、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー、そのほかいろいろ。サドラーズ・ウェルズ劇場で上演されたクリスタル・パイトの作品なども観られます。(要登録)

https://www.marquee.tv/

 

ミラノ・スカラ座バレエ

劇場がコロナウィルス蔓延のためにクローズしてしまったミラノ・スカラ座バレエのダンサーたちが、自宅でレッスンする様子の映像。子どもをウェイト代わりに持ち上げたり、ペットと一緒だったり、微笑ましくユーモラスな映像で困難にめげないイタリア人の明るさ、ポジティブさが感じられていて素敵です。おうちトレーニングの参考にも。

 

このほかにもカバーしきれない映像がたくさんあります。さらに、メトロポリタン・オペラ、ベルリン・フィル、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーなど多くの団体が素晴らしい映像を提供しています。随時追加して行ければと思います。しかし早くこの事態が解決して、安心して生の舞台を観られるようになってほしいですね。

 

2020/03/06

パリ・オペラ座バレエの2020-21シーズン

パリ・オペラ座バレエ団は現在来日公演中で、コロナウィルス問題で多くの公演が中止・延期になる中、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれています。

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そのパリ・オペラ座バレエの来シーズンが発表されています(ただし、まだ公式サイトには出ていません)

昨年11月から始まり、現在も継続中のパリ・オペラ座のストのため、多くの公演がキャンセルされ、予定されていたピエール・ラコット振付の新作「赤と黒」がキャンセルされてしまいました。(オペラの「イェヌーファ」も)

 

「ラ・バヤデール」(ルドルフ・ヌレエフ)2020年12月10日から2021年1月2日

「ロミオとジュリエット」(ルドルフ・ヌレエフ)2021年6月9日から30日

「ノートルダム・ド・パリ」(ローラン・プティ)(from March 29 to May 7 in Bastille) 

ローラン・プティの夕べ「若者と死」「カルメン」「ランデヴー」 (from May 30 to June 26) 

「ル・パルク」(アンジュラン・プレルジョカージュ)※今シーズンストで1公演も行われなかったため、キャンセルされた「赤と黒」の代わりに上演。2021年3月9日から4月16日

ホフェッシュ・シェクターThe Art of Not Looking Back」ジェローム・ロビンス「イン・ザ・ナイト」クリスタル・パイト「シーズンズ・カノン」(9月22日はガラ公演、このプログラムに加えてデフィレがあります)2020年9月25日から10月17日

新作「シェヘラザード」(シディ・ラルビ・シェルカウイ)、「牧神の午後」(シャロン・エイアール)、カンパニープレミア 「ラプソディ」(フレデリック・アシュトン)(from 27 October to 14 November 2020)

「小さな死」「六つの踊り」(イリ・キリアン)ほかキリアン4作品 (from December 4, 2020 to January 1, 2021 in Garnier). 、

「Sadeh 21」(オハッド・ナハリン) (from February 4 to 27, 2021 in Garnier). 

ゲストカンパニーはピーピング・トム「Diptych」

https://sceneweb.fr/actu-la-saison-2020-2021-de-lopera-national-de-paris/

 

2020/03/05

ロイヤル・バレエの映画『ロミオとジュリエット』金曜日より公開、ウィリアム・ブレイスウェルとフランチェスカ・ヘイワードにインタビュー

ケネス・マクミラン振付の名作を英国ロイヤル・バレエの若手ダンサーが出演し、ロケーションで撮影した映画『ロミオとジュリエット』が明日金曜日より公開されます。
https://romeo-juliet.jp/

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先日もこの映画の感想を書きましたが、主演のロイヤル・バレエ、ウィリアム・ブレイスウェルフランチェスカ・ヘイワードにインタビューしましたので、ご紹介します。

ウィリアム・ブレイスウェルのインタビュー(クラシカ・ジャパン)

https://www.classica-jp.com/column/14214/

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「輝く英国ロイヤル・バレエのスター達」で来日したウィリアム、実物は写真よりずっと素敵で年齢よりも若く少年っぽいところがロミオにピッタリです。本当に好青年でした。

こちらのウィリアムのインタビュー記事も担当しています。

http://www.astage-ent.com/cinema/romeo-juliet.html

こちらのウィリアムのインタビューは、高橋森彦さんによるもの

https://spice.eplus.jp/articles/265643

 

そして名作ミュージカルを映画化した話題作『キャッツ』に白猫のヴィクトリア役で主演したフランチェスカ・ヘイワードにもインタビューしました。『キャッツ』のキャンペーンで来日した時のものです。このインタビューの聞き手をしています。

フランチェスカとのインタビューの記事はこちらです。

https://www.fashion-press.net/news/58753

 

多忙なスケジュールの中でジャパン・プレミアや天皇皇后ご一家とのチャリティ試写会などを縫ってのインタビューでしたが、とても明るく感じよく、そして誰もが惹きつけられるような魅力の持ち主でした。天性の女優であることは映像を観て頂ければすぐにわかると思います。

バレエの『ロミオとジュリエット』を何回も観ている人も、全く新しい魅力を感じることができる映画です。バレエを観ていない方も、台詞のないバレエがこんなにも雄弁であることを知ってもらえると思います。劇映画ならではのカット割りや演出も新鮮ですが、監督のバレエ・ボーイズの二人はもともとロイヤル・バレエのダンサーであり、バレエを知り尽くしているため、的確にとらえてくれています。

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映画『ロミオとジュリエット(原題:ROMEO AND JULIET: Beyond Words)』

https://romeo-juliet.jp/
2020年3月6日(金)より、TOHOシネマズシャンテほか、全国ロードショー

■制作:マイケル・ナン、ウィリアム・トレヴィット
■監督:マイケル・ナン
■撮影監督:ウィリアム・トレヴィット
■エグゼクティブ・プロデューサー:ケヴィン・オヘア
■振付:ケネス・マクミラン
■音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
■美術:ニコラス・ジョージアディス
■指揮:クン・ケセルス
■管弦楽:英国ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団

■キャスト:
ジュリエット:フランチェスカ・ヘイワード
ロミオ:ウィリアム・ブレイスウェル
ティボルト:マシュー・ボール
マキューシオ:マルセリーノ・サンベ
ベンヴォーリオ:ジェームズ・ヘイ
パリス:トーマス・モック
キャピュレット卿:クリストファー・サンダース
キャピュレット夫人:クリステン・マクナリー
乳母:ロマニー・パイダク
ロレンス神父:ベネット・ガートサイド
ロザライン:金子扶生

マルセロ・ゴメス、ソフィアン・シルヴがドレスデン・バレエにプリンシパル兼バレエマスターとして移籍

元アメリカン・バレエ・シアターのマルセロ・ゴメスと、オランダ国立バレエ、ニューヨーク・シティ・バレエを経て現在サンフランシスコ・バレエのプリンシパルとして活躍しているソフィアン・シルヴが、ドレスデン・バレエに移籍することが発表されました。

 

プレスリリース(ドイツ語)

なお、リンク先のリリースにあるように、デヴィッド・ドーソンがアソシエイト振付家に就任し、また同じくサンフランシスコ・バレエのプリンシパルであるCarlo Di Lannoも入団します。マルセロ・ゴメスはABT退団後、ワシントン・バレエ、サラソタ・バレエなど各地のバレエ団にゲスト出演してきましたが、ドレスデンでも客演、その実績を買われたのだと思います。ソフィアン・シルヴも、非常に芸術性の高い素晴らしいバレリーナです。

ドレスデン・バレエの2020/21シーズンラインアップは興味深く、クリスタル・パイトの「Plot Point」ウィリアム・フォーサイスの「Playlist」、そして全幕のヨハン・インガー振付「ペール・ギュント」がカンパニープレミアとなります。レパートリーでは、「白鳥の湖」「ラ・バヤデール」「くるみ割り人形」のほか、ドレスデン・バレエのためにアレクサンダー・エクマンが振付けた「COW」も再演されます。ゲストにはマリア・コチェトコワ(白鳥の湖)とドミトリー・セミオノフ(「ラ・バヤデール」)。シーズンの終わりには台北へのツアーも予定されています。(バランシン「セレナーデ」、フォーサイス「Plyalist」、ドーソン「四季」)

 

2020/03/04

映画『ダンサー そして私たちは踊った」

スウェーデン・アカデミー賞(ゴールデン・ビートル賞)で【最多4部門受賞】(作品賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞)した映画「ダンサー、そして私たちは踊った」が公開中です。

http://www.finefilms.co.jp/dance/

昨年内覧試写で拝見したのでだいぶ時間が経ってしまったのですが、今も鮮烈な印象があって心を揺さぶられ、劇場公開されたらまた観たいと切実に感じました。ダンサーがなぜ踊るのかという根源的な問い、表現とは、踊ることとは何かを突きつけられる作品なので、ダンスに魅せられた人、そしてダンサーはぜひ観てほしいと思いました。

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ジョージアの国立民族舞踊団のジュニアカンパニーで稽古に励むメラブ。ある日彼の前に、新しく入団した男性ダンサー、イラクリが現れる。メーンダンサーに入団する座を争うライバルではあるものの、彼に惹かれてしまう気持ちを抑えられないメラブだったが…。

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ジョージアの文化、ジョージア民族舞踊では男性性が非常に重要であり、主人公メラブは華奢で繊細なダンサーで評価されにくい。同性愛がご法度の国で、舞踊団に現れた男性ダンサーに惹かれる気持ちが、彼を混乱させつつも解放していく。本当に自分らしく生きること、自分らしく踊りたいという切実な想いだ。

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メラブを演じたレヴァン・ゲルバヒアニが実際にジョージア舞踊、バレエを経験して今はコンテンポラリーダンサーであるということが生きている。特にラストシーンでの、最初は伝統的なダンスから、やがて発展していく、魂を解き放つような即興性の強いダンスは、彼の心情を何よりも強く物語って心を揺さぶり、なぜ私たちがダンスというものに惹かれてやまないのかを見せてくれる。恋愛はあくまでもメラブが変わっていくきっかけであって、この物語の主眼ではない。イラクリに譲られ、オーディションで着用した民族衣装は、とても美しいものであったが。

まだ21歳というレヴァン・ゲルバヒアニは演技未経験者とのことだけど、非常に寡黙ながらもしなやかな身体による雄弁な身体表現と繊細な目の演技でメラブの心境を語っていて、スウェーデン・アカデミー賞や、いくつもの映画祭で主演男優賞を受賞するなど高く評価されたのも納得。

ジョージア民族舞踊に限らず、ダンスというものが台詞の代わりに作品の世界観と物語性を伝えている。メラブとイラクリが一緒に練習するところの緊張感。友人の家に仲間で遊びに行ったときに、「Honey」に合わせてウィッグをかぶって奔放に踊るところ、兄の結婚式での伝統的な踊りの祝祭感、ゲイクラブでのダンス。ダンス映画としてとても秀逸な表現だ。ダンスとは、生きることで、命を削りながら踊るダンサーの姿がここにある。ABBAからスウェーデンのポップス、そして打楽器を多用した民族音楽まで、音楽もとても作品の世界観にマッチしていて良い。

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一方でこの映画は、現在のジョージア社会を見せてくれて興味深い。豊かな民族文化を感じさせる、伝統的で美しい結婚式が行われている一方で、誰もがスマホを使っている。貧富の差が激しく、メラブの父も海外の有名な劇場でも踊った国立舞踊団のダンサーだったのに今はとても貧しい。そして同性愛が禁忌で追放されたダンサーもいた。この国でダンサーとして生きる困難さも描かれている。貧しくてレストランのアルバイトを掛け持ちし、携帯電話代にも事欠き、自宅は頻繁に停電する。同居する家族ともそれほど仲良くない。ダンサーとしては、男性性が足りずジョージア舞踊の型にはまらず国立舞踊団のメインカンパニーに入れるかわからない。同性に惹かれる気持ちはこの社会では受け入れられない。過酷で出口の見えない現実。しかしダンサーは自分だけのダンスを踊り続けるしかないのだ。

幼い頃から一緒に踊ってきた女性ダンサーのマリと、トラブルメーカーながら男気はある兄との心の触れ合いには心温まるところもあって、青春のきらめきを伝える映画としても、とても心に響くものだった

映画『ダンサー そして私たちは踊った』
公開日:
・2020年2月21日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町およびシネマート新宿ほかにて全国公開 (劇場情報はこちら
監督:レヴァン・アキン
出演:レヴァン・ゲルバヒアニ、バチ・ヴァリシュヴィリ、アナ・ジャヴァヒシュヴィリ
原題:And Then We Danced
配給:ファインフィルムズ

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昨年12月の「のむコレ!」での舞台挨拶では、レヴァン・ゲルバヒアニが登場。すらっとしていて脚が長く、とても流暢できれいな英語を話していました。

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レヴァン・ゲルバヒアニは実は日本のアニメが好きで、「千と千尋の神隠し」のポスターが劇中に登場しますが、これは彼の私物です。カオナシのタトゥーも掘っているとのこと(見せられない場所にあるそうですが映画では少し見えます)。「デスノート」や「ワンピース」なども好きなのだそうです。劇中でメラブの心境の変化があり、部屋のポスターははがされていますが、この「千と千尋の神隠し」のポスターははがされないで残ります。彼の変わらない部分を象徴させているとのことでした。

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マリ役のアナ・ジャヴァヒシュヴィリは高校時代からの実際の友人で打ち解けた仲だそうです。イラクリ役バチ・ヴァリシュヴィリとはオーディションで出会い、撮影中に親しくなった。頭が切れて、ニュースやビデオを良くチェックしていて、とても良い人だけど物事に没頭していて、時間に遅れがちなんだそうです。

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彼はInstagramの投稿で監督に見いだされてオファーをされたのだけど、何回も断り、そして家族や友人にも相談したのですが、最終的には社会正義に関わることができるのではという気持ちで受諾したと語っていました。この作品はジョージアでは上映反対運動が起き、プレミア上映では反対する大きなデモまで起きたのですが、後悔はないし、結果としてジョージア社会を揺るがすことができたと。そのこともこの映画の目的とのことです。

サプライズで監督のレヴァン・アキンも登場しました。ジョージア系のスウェーデン人で、この作品はジョージアへのラブレターとのことです。

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やはりラストのシーンの伝統的なダンスからコンテンポラリーに移行していくところは、メラブが自由に解釈して即興的な部分を入れて、自分の心情を入れて踊るという場面だったとのことです。

困難な世界の中で、自分を貫き通し、新しい世界へと旅立っていく青年の葛藤をダンスを通して描いた青春映画の傑作、ぜひ観てほしいと思います。

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2020/03/03

デヴィッド・ホールバーグが、オーストラリア・バレエの芸術監督に就任

オーストラリア・バレエは、今年の12月に芸術監督を退任するデヴィッド・マカリスターの後任に、デヴィッド・ホールバーグが決定したと発表しました。

プレスリリース

デヴィッド・ホールバーグは2010年からゲストとしてオーストラリア・バレエに出演してきました。大けがをした時に14か月間、オーストラリアに滞在してオーストラリア・バレエのリハビリ・チームで治療を行ったことでけがを克服。2016年の舞台への復帰も、オーストラリア・バレエへのゲスト出演で果たし、レジデント・ゲスト・アーティストとして定期的に出演してきました。ホールバーグはアメリカン・バレエ・シアターのインキュベーター・プログラム ABT Incubatorで、振付家の育成活動などにも携わってきました。来年1月に就任する前に、マカリスターとの引継ぎを行うとのことです。

ニューヨークタイムズの記事

https://www.nytimes.com/2020/03/02/arts/dance/david-hallberg-artistic-director-australian-ballet.html

ここでホールバーグに電話でインタビューしていますが、20代半ばで芸術監督になりたいという意欲が芽生えて、少しずつ育ってきたそうです。その中で、オーストラリア・バレエでの仕事が最も正しいタイミングであり機会だと感じたとのこと。ダンサーとしてのキャリアには満足したので、キャリアの転換の機が熟したと感じたそうです。

2021年のアメリカン・バレエ・シアターでのMETシーズンで、ABTでのさよなら公演が行われるそうです。オーストラリア・バレエでも芸術監督就任後はここでは踊る予定はないそうで、今後踊る機会は限られているようです。

オーストラリア・バレエでは、デヴィッド・マカリスターの退任が決まってから、次期芸術監督を募集しており、50人以上の応募者があったとのこと。ホールバーグはオーストラリア・バレエとの縁が深くカンパニーに愛着を持っているということが大きなプラス要素だったそうです。また、彼のアーティスティックなビジョンに感銘を受け、さらに世界の重要なカンパニーなどの組織や振付家、ダンサーたちとのつながりがあることも大きかったようです。オーストラリアは北米やヨーロッパと距離的に離れているため、最新の情報や状況を彼を通してアップデートしていきたいという希望もあるそうです。

今後オーストラリア・バレエをどうしていくかということについてはまだホールバーグは語っていませんが、オーストラリアでまだ上演されていない振付家の作品を取り入れるとともに、バレエ文化をオーストラリア社会や文化に根付かせることも進めて行きたいとのこと。より社会と密接になれるように、離れた場所にバレエをもたらし、バレエ団以外のダンスカンパニーや組織ともかかわっていきたいとのこと。

デヴィッド・マカリスターは長年の芸術監督としての活動で大きな成果を上げてきました。「ワールド・バレエ・デー・ライブ」での中継を通して、カンパニーのクオリティの高さや独自性は知られているところですし、来日公演も行ってきました。今後オーストラリア・バレエがどうなっていくかは大変興味深いです。

なお、ホールバーグはロイヤル・バレエのゲスト・プリンシパルを今シーズン務めており、「白鳥の湖」にオシポワと出演する予定です。おそらく来年夏くらいまでがダンサーとしての活動は見納めなのではないか、と思われますので、それまでに来日してほしいですよね。

 

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4月19日(日)プレミアムシアター ハンブルク・バレエ『ベートーベン・プロジェクト』マリインスキー・バレエ『バフチサライの泉』が放映

4月19日(日)午後11時20分~ (4月から放送時間が少し変わります)
NHK BSプレミアム プレミアムシアターにて、

ハンブルク・バレエ『ベートーベン・プロジェクト』

マリインスキー・バレエ『バフチサライの泉』(再放送)が放映されます。

来年のハンブルク・バレエの来日公演、京都公演のみで予定されている『ベートーベン・プロジェクト』には、菅井円加さんが出演しています。

https://www4.nhk.or.jp/premium/

4月19日(日)午後11時20分~
◇ハンブルク・バレエ『ベートーベン・プロジェクト』
◇マリインスキー・バレエ
『バフチサライの泉』


ハンブルク・バレエ「ベートーベン・プロジェクト」
<演 目>
バレエ「ベートーベン・プロジェクト」
音楽:ベートーベン
振付・照明・衣装:ジョン・ノイマイヤー

<出 演>
アレイズ・マルティネス
エドヴィン・レヴァツォフ
ボルハ・バムデス
菅井円加
アンナ・ラウデール ほか
ハンブルク・バレエ団

<管弦楽>ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団
<指 揮>サイモン・ヒューイット

収録:2019年10月3・4日 バーデン・バーデン祝祭劇場(ドイツ)

◇マリインスキー・バレエ
「バフチサライの泉」
<演 目>
バレエ「バフチサライの泉」(全4幕)
振付:ロスチスラフ・ザハロフ
音楽:ボリス・アサフィエフ

<出 演>
アダム公爵(ポーランドの貴族):アンドレイ・ヤコブレフ
マリア(アダム公爵の娘):アナスタシア・マトヴィエンコ
ヴァーツラフ(マリアの花婿):ザンダー・パリッシュ
ギレイ(クリミア・ハン国の王):ロマン・ベルヤコフ
ザレマ(ギレイの妻):ヴィクトリア・テリョーシキナ
ヌラリ(ギレイの臣下):グリゴーリ・ポポフ ほか
マリインスキー劇場バレエ団

<管弦楽>マリインスキー劇場管弦楽団
<指 揮>ボリス・グルージン

収録:2017年5月27・28日 マリインスキー劇場(サンクトペテルブルク)


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2020/03/01

ドラマ『ファインド・ミー~パリでタイムトラベル~』NHK Eテレで4月10日スタート

パリ・オペラ座を舞台にした海外ドラマ『ファインド・ミー~パリでタイムトラベル~』がNHK Eテレで4月10日スタートします。

毎週金曜 午後7時25分)

https://www4.nhk.or.jp/findme/

明日のプリマを夢見る若手バレリーナのレナが、1905年から現代にタイムトラベル!パリのオペラ座を舞台に繰り広げられる、ダンスいっぱいの青春ストーリー。(全26回)

時は1905年。ロシアのプリンセスであるレナ・グリスキーは、パリのオペラ座にバレエ留学中。才能を高く評価されていたが、ヘンリーという庶民の青年と恋におちたことから、ロシアに連れ戻されそうになる。レナはヘンリーとオペラ座から逃げようとするが、レナがあるドアをすり抜けると、そこはなんと2018年のオペラ座だった!ヘンリーを過去の世界に残し、一人、未来の世界へ行ってしまったレナ。ぼう然とするヘンリーに彼の父親が驚きの事実を告げる…。

原題:Find Me in Paris
制作:2018年~ フランス・ドイツほか

このドラマはドイツのZDF製作で、Huluで2018年8月より放映(全26回)、第2シーズン(全26回)まで放映されていて、今年第3シーズンも予定されているそうです。130か国で視聴されているほどの人気があるそうです。実際にガルニエ宮やパリ国立オペラ で撮影されています。

【出演者】
若手人気声優による、豪華吹き替えキャスト
主人公・レナ役に内田真礼。さらにヘンリーの声を野津山幸宏が演じるほか、バレエ学校の生徒役で人気の若手声優が多数出演
<ほか、声の出演> 小泉瀬奈、白石晴香、石井孝英、内田雄馬、小松昌平、宮内敦士

https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/422593.html

 

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