ニューヨークシティ・バレエ(NYCB)の新芸術監督決定
昨年頭に、長年芸術監督を務めていたピーター・マーティンスがパワハラの疑いをかけられ、退任したニューヨークシティ・バレエ(NYCB)。以後、芸術監督の座が空席となっており、複数の芸術監督代行を置いて運営されていました。
そして、新しい芸術監督がようやく決定しました。
https://www.nycballet.com/NYCB/media/NYCBMediaLibrary/PDFs/Press/2019-02-28_NYCB_SAB_New-Artistic-Leadership-Announcement.pdf
New York City Ballet is thrilled to announce the appointment of Jonathan Stafford as Artistic Director of NYCB and the School of American Ballet, and Wendy Whelan as Associate Artistic Director of NYCB.
— New York City Ballet (@nycballet) February 28, 2019
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芸術監督代行の一員だったジョナサン・スタッフォードが新芸術監督に、そして副芸術監督には、30年にわたってNYCBで活躍した元プリンシパルで、カンパニーを代表するスターだったウェンディ・ウェーランが就任します。
NYCBは、マーティンスのパワハラ騒動の他、スクール・オブ・アメリカン・バレエ(SAB)の生徒だった女性ダンサーを盗撮し、わいせつな写真を閲覧していたことで3人の男性プリンシパルダンサーが解雇されるという騒動も昨年ありました。そのうち2人は人気ダンサーでした。
新芸術監督のスタッフォードは主にカンパニーの運営に関すること、人事やカンパニーの方針などを担当するとともに、カンパニーのクラスレッスンの指導やリハーサル指導、そしてスクール・オブ・アメリカン・バレエの芸術監督としても活動します。
ウェーランは、カンパニーの年間レパートリーの決定、新作の委嘱を行い振付家や作曲家などのアーティストとのコラボレーションを担当するなど、主に芸術面の仕事を行います。またリハーサル指導も担当します。
スタッフォードはNYCBでは幅広いレパートリーで主役を踊り、特にパートナーリングの技術の高さで評価されたダンサーでした。現在、彼の妹であるアビ・スタッフォードもNYCBでプリンシパルとして活躍しています。NYCBでバレエ・マスターとして働くと共に、SABの教師でもありました。また、SABでは、ダンサーたちのキャリアをサポートするProfessional Placement Managerという地位にもありました。
ウェーランは、NYCBを代表するスターダンサーとして30年にわたって活躍。NYCBの歴史で、最も多くの作品の初演ダンサーを務めるなど、新作で振付家と仕事をすることが多く、ロビンス、サープ、フォーサイスなどの作品のクリエーションに携わり、またラトマンスキーやウィールドンとの仕事もたくさんありました。2014年に退団した後には、主にコンテンポラリーダンスの分野で活躍し、エドワード・ワトソンと組むなど、自身の公演を行うとともに、世界中の芸術機関とのコラボレーションを行ってきました。
NYCBは、米国最大のダンス機関です。年間予算は8800万ドルと巨額で、スタッフとダンサーを合わせると450人がここで働いています。芸術監督の候補は20人おり、最終的に、この二人の役割分担とすることとなりました。
スタッフォードとウェーランは就任にあたって、インタビューを行いました。
https://www.nytimes.com/2019/02/28/arts/dance/new-york-city-ballet-jonathan-stafford-wendy-whelan.html
スタッフォード
「私たちは、ダンサーを進化させ、豊かにさせ、芸術家として、そして人間として本当に豊かになれるように安全な場所を提供することに同意しました。それは彼らが劇場の中だけではなく、個人的な人生においても豊かになれるようにするということです」
ウェーラン
「より多くの女性が振付けに挑む機会を与えられ、舞台上でのダイバーシティを進め、より大きなアイディア、オープンなアイディア、大胆なアイディアを進めるために新作の委嘱を進めます」
スタッフォードもウェーランも、ジョージ・バランシンと仕事をしたことがないダンサーです。スタッフォードは38歳とまだ若く、51歳のウェーランは、SABで初めてバランシン作品を踊ったその日(1983年)にバランシンが亡くなったのでした。また、二人とも、マーティンスとは異なり、振付家ではありません。ただし、二人ともSABで学び、NYCBで踊っていたのでカンパニーのことは知り尽くしています。
4人の芸術監督代行であり、次期芸術監督の候補でもあった常任振付家(かつ現役のソリスト)のジャスティン・ペックは、アーティスティック・アドバイザーの肩書が加わることになりました。31歳とまだ若いペックは、ブロードウェイ・ミュージカルの振付を行っているだけでなく、現在撮影中の、スティーヴン・スピルバーグ監督による「ウェストサイド物語」のリメイクの振付も担当しており、現在最も注目されている振付家の一人です。ペックは、新芸術監督と副芸術監督と密接に働き、常任振付家の役割に加え、レパートリーの選定や新作の振付や委嘱に携わることになります。そしてこの春シーズンが終わるとダンサーを引退して新しい役割に集中します。
年齢が離れており、踊るレパートリーが異なっていたため、スタッフォードとウェーランは共演したことは数えるほどしかありませんでした。古典やバランシンが多かったスタッフォードに対して、ウェーランは現代作品を得意としていたからです。しかしながら、スタッフォードがバランシンの「ダイヤモンド」を覚えようとしていた時に、すでにスターだったウェーランがやってきて一緒に踊ったところ上手くいったことがあったそうです。次期芸術監督を選定するプロセスの中で、二人はお互いと一緒にこの仕事をしたいと語っていたとのことです。ひとりで行うには、芸術監督の仕事は大変すぎるので、チーム体制で取り組むそうです。
スタッフォードは、監督代行として、カンパニーが非常に困難な時期に直面していた時のリーダーシップを称賛されました。ダンサーとのコミュニケーションを改善し、よりオープンになることを促し、年度の面接を担当していたとのことです。ダンサーがマネジメントと話し合っていることによって、パフォーマンスのレベルも高まったと評価されました。
バランシンを直接知らないリーダーによって、新しいカンパニーとなるNYCB、今後の展開が楽しみです。また久しぶりに来日公演も行ってほしいものです。
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