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2019/02/06

ヌレエフの亡命劇を描く映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』5月劇場公開

何回かこちらのブログで紹介してきた、ヌレエフの亡命劇を描く映画『The White Crow』が、『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』の邦題で劇場公開されることになりました。

https://eiga.com/news/20190205/8/

レイフ・ファインズ監督によるこの作品は、昨年の第31回東京国際映画祭のコンペティション作品に選ばれ、私も上映を2回とも観ることができ、ファインズとプロデューサーのQ&Aセッションも聞くことができました。東京国際映画祭では、最優秀芸術貢献賞を受賞しました。
https://2018.tiff-jp.net/ja/lineup/film/31CMP16

20世紀のバレエ界を代表するバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフが1961年にパリで亡命を果たした亡命劇を中心に、故郷ウファでの幼年時代、ワガノワ・バレエ・アカデミーでの学生時代、そしてキーロフ・バレエ団に入団してから亡命するまで、という3つの時制を交互に描いています。

ヌレエフ役には、タタール歌劇場の現役プリンシパルダンサーであるオレグ・イヴェンコ。ヌレエフのワガノワ・バレエ・アカデミーでの師匠であるプーシキンを、レイフ・ファインズが流暢なロシア語を操って演じています。パリで友情をはぐくみ、亡命の手引きをするクララ・セイント役を「アデル、ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロス。プーシキンの妻クセニアには「ルナ・パパ」のチュルパン・ハマートヴァ、ピエール・ラコット役はラファエル・ペルソナ、そしてヌレエフのライバル、ユーリ・ソロヴィヨフをセルゲイ・ポルーニンが演じているのも話題です。

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<レビュー>

バレエ界に燦然と輝けるレジェンド、ルドルフ・ヌレエフ役を演じる俳優を見つけるのは簡単なことではなかったと思う。映画祭のQ&Aで、ファインズは、演技ができるダンサーを求めてロシア中でオーディションを行ったとのこと。イヴェンコはウクライナ出身だが、ヌレエフの頬骨が高いエキゾチックな顔立ちを少し思わせるところもあり、射貫くような大きな青い瞳が印象的。現役プリンシパルであると共に、テレビ番組「ビッグ・バレエ」にバレエ団を代表して出場するなど、バレエの実力も折り紙付き。若きヌレエフのギラギラした野心、自由を求めてやまない心、新しい文化を吸収していく生き生きとした様子を繊細に、そして大胆に演じており、とても初めて演技に挑戦するとは思えないほどだった。

この映画は、本物のバレエダンサーを使って、実際のワガノワ・バレエ・アカデミー、マリインスキー劇場、ガルニエ宮、エルミタージュ美術館、ルーヴル美術館でロケを行っているという本物志向のところがまず素晴らしい。ヌレエフ役のオレグ・イヴェンコはもちろんのこと、もう一人の伝説的なダンサー、ユーリ・ソロヴィヨフ役にセルゲイ・ポルーニン。ソロヴィヨフはパリでヌレエフと同室で、ラコットらとの外出にお目付け役として同伴しているものの、この映画の中では大きな役ではない。しかしながら、ポルーニンのクラスレッスンの時のひときわ大きな跳躍や、舞台の上で見せる踊りは華やかで、まさにスターのものである。(ユーリ・ソロヴィヨフは、30代半ばで自殺するという悲劇的な運命をたどる) イヴェンコの踊る場面も、伝説的なヌレエフのパリでの最初の踊り『ラ・バヤデール』はじめ、たくさん観ることができる。

さらに、伝説的なスター・バレリーナだったナタリア・ドゥシンスカヤ役を演じているのが、ハンブルグ・バレエの元プリンシパル、アンナ・ポリカルポヴァ。ポリカルポヴァはハンブルク・バレエに移籍する前には、マリインスキー・バレエで踊っており、美しい金髪のグラマラスなバレリーナで、ひときわ印象的。ヌレエフと踊る場面も出てくる。ドキュメンタリー映画『ボリショイ・バビロン』に出演していたボリショイ・バレエのソリスト、アナスタシア・メスコーワもバレリーナの一人として出演している。

ヌレエフの故郷での幼年時代、ワガノワ・バレエ・アカデミー時代、そしてパリと、3つの時制を行き来するという演出も、ヌレエフの内面を描くうえで実に効果的な演出となっている。映像のルックもそれぞれ異なっており、少年時代の寒々としてモノクロに近い映像、少し色あせた60年代風のパリの様子と時代の違いがよく分かるようにできている。

ワガノワ・バレエ・アカデミーのパートでは、最初なかなか伸びないヌレエフが直訴して、放校になりそうなところを名教師プーシキンのクラスに代えてもらい、ぐんぐん伸びて行く。ついには自宅にヌレエフを住まわせるプーシキンの、弟子に向ける愛情。映画の冒頭で、ヌレエフが亡命した後に尋問されるプーシキンの、困惑した表情が印象的だ。

パリのパートでは、初めて西側に渡って自由世界の空気を吸うヌレエフ。ルーヴル美術館の開館前に行ってジェリコ「メドゥース号の筏」に見入る。(対をなすように、エルミタージュ美術館ではレンブラントの「放蕩息子の帰還」を観ている。これは父親的な存在のプーシキンと、ヌレエフの関係を象徴させている) 振付家のピエール・ラコットと終演後のパーティで知り合い、親しく交流し、クララ・セイントにも出会う。パリの夜がグラマラスに、魅惑的に描かれている。その中で、ヌレエフは自由に生きたいという思いを募らせていく。鉄道の中で生まれたヌレエフが、パリで鉄道模型を買い集めるというエピソードはほほえましい。

そして空港での亡命シーンの息詰まるような緊迫感。ピエール・ラコット本人に取材して、実際に亡命の瞬間にヌレエフはどのように動いたかということまで再現してもらったとのこと。一人一人の登場人物が立体的に描かれて、手に汗を握る演出の手腕は見事なものだ。まさに自由への飛翔。

エンドロールでは、実際のヌレエフ本人が踊る映像が使われている。オレグ・イヴェンコはロシアのダンサーらしい、ダイナミックなテクニックの持ち主だけど、流石にバレエ界の伝説、ヌレエフのカリスマ性というのはなかなか再現するのは難しく感じた。

それでも、構想20年、ファインズの強い思い入れが感じられる、魂の感じられる作品であると思う。ファインズはロシア語を習得し、ロシアに足しげく通ってワガノワ・バレエ・アカデミー校長のニコライ・ツィスカリーゼとも親交を結び、資金を調達するために監督に専念するのではなく自らも出演。特にエルミタージュ美術館は、撮影許可を取るのが非常に困難だったところを、実現させた。(ソクーロフの『エルミタージュ幻想』での撮影でトラブルがあったので、長編映画の撮影を許可しない方針となったとのこと)台詞も、英語も登場するけどロシア人同士で話すシーンはロシア語を使ったり、本物のバレエダンサーを起用したり、そして史実にもほぼ忠実な内容となっていて、ファインズの深いバレエ愛が感じられる作品となっている。クララ・セイント本人にも取材し、プロデューサーは彼女と仲良しになったとのことだ。

また後日、東京国際映画祭でのQ&Aセッションの内容もご紹介します。


レイフ・ファインズのインタビュー
https://2018.tiff-jp.net/news/ja/?p=50586

『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』

5月、TOHOシネマズ シャンテ、シネクイント、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

監督:レイフ・ファインズ
脚本:デヴィッド・ヘアー
出演:オレグ・イヴェンコ、セルゲイ・ポルーニン、アデル・エグザルコプロス、ルイス・ホフマン、チュルパン・ハマートヴァ、ラファエル・ペルソナ、レイフ・ファインズ
配給:キノフィルムズ/木下グループ
(c)2019 BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND MAGNOLIA MAE FILMS

この映画の原作となったジュリー・カヴァナ著「Nureyev: The Life」 映画の中に登場するのは、亡命するまでですが、彼の死まで追っており、非常に面白い一冊です。邦訳出してほしいです。

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コメント

はじめまして。この映画、横浜の映画祭でみました。すごく素敵な映画だったので日本でも公開されてとても嬉しいです。
それと、1つ教えて欲しいことがあるのですが、パリ・オペラ座のバレエ公演(2019-20シーズン)の予定はいつ発表になるかご存知でしょうか?旅行の計画にバレエ鑑賞を組み込みたく、スケジュール次第で日程を決めたいと考えているので…。

鈴木さん、こんにちは。

オペラ座のシーズンがいつ発表されるのかはまだわからないんです。昨年は2月1日に発表されているので、そろそろ、いつ発表になるかが明らかになっていてもおかしくないのですが…。とにかくもうそろそろだと思います!あまりご参考にならず申し訳ありません。

そうなんですね!
ありがとうございます。もう少し待ってみます♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪
それと、ホワイトクロウを観たのは横浜ではなくて六本木でした笑

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