バーミンガム・ロイヤル・バレエの次期芸術監督にカルロス・アコスタ
24年間もの間、バーミンガム・ロイヤル・バレエの芸術監督を務めているデヴィッド・ビントレーが、今シーズン末、2019年7月に退任し、振付に専念すると発表されていました。
退任発表後、後任探しが行われていましたが、このほど後任がカルロス・アコスタ(元ロイヤル・バレエ プリンシパル)に決定したことが発表されてました。アコスタは2020年の1月に芸術監督として就任します。
https://www.brb.org.uk/post/carlos-acosta-appointed-as-new-director-of-birmingham-royal-ballet
We’re delighted to announce the appointment of @CAcostaOfficial as Birmingham Royal Ballet’s new Director. Read the full announcement over on our website at https://t.co/dh0eBGctQu#WeAreBRB #CarlosAcosta #Announcement pic.twitter.com/krjdXDylZZ
— Birmingham Royal Ballet (@BRB) January 15, 2019
カルロス・アコスタのコメント
「バーミンガムロイヤル・バレエの芸術監督に就任することは大きな名誉です。サー・ピーター・ライトによって築かれた素晴らしい基礎の上に、デヴィッド・ビントレーが、このバレエ団を英国をリードする代表的なクラシック・バレエ・カンパニーの一つとしての地位を確立させた努力に大きな敬意を払っています。
私は、このクラシック・バレエの伝統の上に、レパートリーを拡大し、より新しく多様性に富んだ観客に向けてアウトリーチする意欲を持っています。21世紀における、世界をリードするクラシック・バレエ・カンパニーとは何かを、このカンパニーを通じて見せたいと思っています」
キューバのハバナの貧しい家庭の、11人兄弟の末っ子として生まれたアコスタは、キューバ国立バレエ学校で学び、16歳でローザンヌ国際バレエコンクールで優勝しました。以来30年間、世界を代表するバレエ・カンパニーで活躍し、ロイヤル・バレエのプリンシパルとして17年間君臨しました。現在45歳。
2016年にロイヤル・バレエを引退後、キューバに自らのダンスカンパニー、アコスタ・ダンサを設立し、またハバナに自身のダンスアカデミーを開いて2017年9月に最初の生徒を受け入れました。2007年に書いた自伝はベストセラーに。また、 ローレンス・オリヴィエ賞、ブノワ賞、英国ナショナル・ダンス・アワードなど数々の賞に輝くほか、ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンスから、ダンス界におけるもっとも影響力のある人物の一人として、エリザベス女王戴冠賞を授与されています。
New York Timesでは、アコスタへの電話インタビューが掲載されています。
https://www.nytimes.com/2019/01/15/arts/dance/carlos-acosta-birmingham-royal-ballet.html
「大きな挑戦だけど、挑戦することは好きです。カンパニーに変革をもたらして、現代にマッチしたものにすることができると思います。世界に、バーミンガムにはワールド・クラスのクラシック・バレエ・カンパニーがあるというメッセージを伝えたい」
アコスタは、フレデリック・アシュトンやケネス・マクミランといった英国バレエの伝統を大切にしつつ、ロイヤル・バレエでは見落とされている振付家の作品も取り入れたり、今まで気づかれていなかったようなダンサーや作品も探したいと語っています。「様々な分野からレパートリーを持っていき、様々なダンスや伝統を通して、ダンスにおける女性の貢献にも敬意を表し、普段バレエを観ないような観客を育てて行きたいと思います」
英国においては、アーツ・カウンシルを通してバレエ/ダンスへの助成は多く設けられているものの、多分に漏れず助成金は削減されている傾向にあり、特にBrexitによってEUからの助成を受けられなくなるといった問題があります。アコスタは、カンパニーの資金的な問題についてはまだ十分知らないところもあるものの、今後も助成を受けられるように明確なビジョンを表明し、アーツカウンシルやバーミンガム市と話し合いたいと語っています。
アコスタ・ダンサがアソシエイト・カンパニーであるサドラーズウェルズ劇場の支配人、アラステア・スポルディングはアコスタがどんなに素晴らしいダンサーなのかは誰もが知っており、それだけでなく、彼はダンスを見せるためのエキサイティングなやり方についてよく考えており、クリエイティブな思考を持っていると共に、教師としても素晴らしいと評価しています。また、貧しい出自から世界的なスターになったバックグラウンドがあるアコスタは、様々な階層のダンサーや観客を惹きつける必要があることをよく理解しているとも。
カルロス・アコスタは、ロイヤル・バレエでは「カルメン」や「ドン・キホーテ」を振付けています。彼の振付家としての評価は必ずしも高くはないものの、自ら率いるアコスタ・ダンサはキューバ出身のダンサーたちが最先端の振付家の作品を上演して、ヨーロッパなどでツアーを行うなど成功を収めています。昨年は、勅使川原三郎がこのカンパニーに新作を振付け、勅使川原三郎、佐東利穂子が客演するというユニークなトリプル・ビルが上演されました。こちらの活動も引き続き行うとのことです。
世界的な知名度の高いスター・ダンサーが芸術監督に就任するとあって、バーミンガムロイヤル・バレエの注目度は上がることでしょう。まずは、今年6月のロイヤル・バレエの来日公演でのアコスタ振付「ドン・キホーテ」の上演が楽しみです。
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