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2019年1月

2019/01/30

吉田都さんが引退、8月に引退公演

2020年9月より新国立劇場バレエ団の芸術監督に就任することが決定している、吉田都さん。

英国ロイヤルバレエ団で長年プリンシパルを務め、退団後も日本に拠点を移して、引き続きフリーランスで舞台に立っていました。
1月25日には、石神井バレエ・アカデミーの公演「バレリーナ吉田都からのメッセージ」に出演し、「ナイチンゲールのワルツ」と「エスメラルダ」で、音楽性に優れた繊細な踊りを見せてくれたところです。

53歳の今も、若いダンサーの手本になるような正確なテクニック、表現力、精神性の高さが立ち上るパフォーマンスを見せてくださっていましたが、芸術監督就任への準備に専念するとのことです。

吉田都さんのFacebookより。

1月25日の公演にお越し下さった皆様
有難うございました! 
素晴らしいメンバーとの舞台に感動し、力をもらいました。
プログラムに載っていましたように、今年の夏の舞台を最後に引退することを決めました。
長年応援してくださった皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。
本当に今まで有難うございました。
そしてお世話になった先生方やスタッフの皆様にも心よりお礼を申し上げます。
最後の舞台に向けて精進致します。
そして、その後は今度は私が若いダンサーたちの応援をしたいと思っておりますので、
今後ともどうぞ宜しくお願い致します!

●公開内容のお知らせ●

「NHKバレエの饗宴」特別企画

吉田都引退公演 Last Dance(仮)

・開催日時:2019年8月7日(水)14時公演

      2019年8月8日(木)19時公演

・会場:新国立劇場オペラパレス

※詳細は追ってお知らせいたします。


世界的バレエダンサーの吉田都さん、今夏公演で引退表明
https://www.asahi.com/articles/ASM1Z3VZRM1ZUCVL005.html


私も昨年の夏に開催されたチャコット主催、堀内元さんとの「Ballet for the Future」公演の公演パンフレットのために、吉田都さんにインタビューさせていただきました。
都さんのバレエに向ける深い愛、バレエを踊る喜び、バレエが人々に与えてくれるもの、若いダンサーたちへの応援の気持ち、そしてこれからの日本のバレエ界をどのように支えて行きたいかということについてのお話は素晴らしく、これからの新国立劇場バレエ団での活動についての期待が高まりました。何よりも腰が低く飾らない素敵なお人柄、立派な方こそ、このように優しく低姿勢で等身大でいらっしゃるのだと感じた次第です。

吉田都さんの舞台を観る時は、毎回毎回大きな喜び、幸せを感じていましたが、それも終わりが来る日が来てしまいます。石神井バレエ・アカデミーの公演を観ている時も、一つ一つの動きについて、その美しさ、繊細さ(細やかなパ・ド・ブレや足捌き、つま先は絶品でした)、音楽を豊かに伝えて行く動きに見とれながらも、あと何回観られるのだろうと思ったら胸がいっぱいになって、言葉にならない想いが押し寄せてきました。(NHKでドキュメンタリー番組を撮影していたようでした)

ロイヤル・バレエのプリンシパルとしての活躍に加え、最近ではピーター・ライトのアシスタントとして彼の作品の振付指導にも関わり、また今年のローザンヌ国際バレエコンクールでは審査員となるなど、国際的な活躍をして来た都さん。その経験と人脈を生かしての今後の活動を楽しみにしたいと思います。まずはこのさよなら公演は見逃してはなりませんね。

英国ロイヤル・バレエ団 「くるみ割り人形」(全2幕 ライト版) [DVD]
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バレリーナ 踊り続ける理由
吉田 都
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2019/01/29

ローザンヌ国際バレエコンクール 2019 のインターネット生中継

恒例のローザンヌ国際バレエコンクールも第47回となりました。
https://www.prixdelausanne.org/

今年は、2月3日(日)~10日(日)に開催されます。


ネット生中継も、今年は一日6時間と長くなりました。
https://www.prixdelausanne.org/multimedia/live-streaming/

中継サイト
https://www.arte.tv/fr/videos/arte-concert/

スケジュールは現地時間です。日本との時差は8時間(日本時間は+8時間です)。

2月4日(月)
10am – 11.30am: クラシック・ヴァリエーションの通し稽古 女子グループA
12pm – 1.15pm: コンテンポラリー・クラスレッスン 男子グループB
2.30pm – 4.15pm: クラシック・クラスレッスン 女子グループB
4.30pm – 6.15pm: クラシック・クラスレッスン 男子グループB

2月5日(火)
9am – 10.25am: コンテンポラリーの指導 女子グループB
11.30am – 12.45pm: クラシック・クラスレッスン 男子グループB
2pm – 3.30pm: クラシック・クラスレッスン 女子グループA
4pm – 4.45pm: コンテンポラリー・クラスレッスン 男子グループ A

2月6日(水)
9.30am – 10.50am: クラシック・クラスレッスン 女子グループA + B
11.30am – 12.45pm: コンテンポラリー・クラスレッスン 男子グループ A
2pm – 3.15pm: コンテンポラリーの指導 男子グループ A + B
4pm – 5pm: クラシックの指導 女子グループ B

2月7日(木)
9.30am – 10.45am: コンテンポラリー・クラスレッスン 女子グループ A
1pm – 2.25pm: クラシックの指導 女子グループ A
3pm – 4.15pm: クラシックの指導 男子グループ A + B
4.30pm – 5.30pm: コンテンポラリーの指導 女子グループ A + B

2月8日(金)
From 9.30am: ジュニア準決勝
From 2.30pm: シニア準決勝
From 6.45pm: 準決勝結果発表

2月9日(土)
From 2.30pm: 決勝


今年の審査員

審査委員長はカルロス・アコスタ
(元ロイヤル・バレエプリンシパル、アコスタ・ダンサ芸術監督、バーミンガムロイヤル・バレエ次期芸術監督)1990年スカラシップ受賞

副審査委員長はイヴァン・ジル・オルテガ (元シュツットガルト・バレエ、元オランダ国立バレエ プリンシパル) 1994年ファイナリスト

フリオ・ボッカ (元ABTプリンシパル、ウルグアイ国立バレエ前芸術監督)2016年審査委員長

ジリアン・マーフィー (ABTプリンシパル) 1995年スカラシップ受賞

マデリーン・オン (フィンランド国立バレエ芸術監督)

ギャリー・トリンダー (ニュージーランド・スクール・オブ・ダンス芸術監督)

エリック・ヴ=アン (ニース・ミディタラネ・バレエ芸術監督、元パリ・オペラ座スジェ)

サミュエル・ヴルステン (オランダ・ダンス・フェスティバル芸術監督)

吉田都 (元ロイヤル・バレエ プリンシパル、新国立劇場バレエ団次期芸術監督)

出場者は80人です(女子44人、男子36人)。今年から、出場可能な年齢が引き下げられ、ジュニアとシニアがグループA、グループBと分けられました)

出場者のリスト

https://www.prixdelausanne.org/wp-content/uploads/2018/11/Liste-candidats-selectionnes-2019_5nov2018.pdf

日本からは14人と、国別では一番多くなっています。(もう一人選ばれたものの、辞退しています)応募者は89人。
ビデオ審査の他、YAGP 2018、ワガノワ国際バレエコンクール、ブラジルでの予選で9人選ばれています。


千葉ゆきの GIRLS A
Kishibe Ballet Studio Japan


永原ありさ GIRLS A
K-Grace Ballet Japan


淵山隼平 BOYS A
Acri Horimoto Ballet Academy Japan


定免泰成 BOYS B
Conservatoire National Supérieur de Musique et de Danse de Paris France

北井僚太 BOYS B
Tanz Akademie Zürich Switzerland

孝多佑月 BOYS B
Symphony Ballet Studio Japan

松田アンリ GIRLS B
Tanaka Chikako Ballet Japan


長瀬桃華 GIRLS B
Ecole de Ballet MU Japan


仲原真和 GIRLS A
Acri Horimoto Ballet Academy Japan

酒井陽菜 GIRLS A
Koike Ballet Studio Japan


佐々木須弥奈 GIRLS B
Tanz Akademie Zürich Switzerland

住山美桜 GIRLS B
Tanz Akademie Zürich Switzerland

脇塚優 BOYS B
Noriko Tokunaga - Ballet School Japan

山田れん GIRLS A
Kitamura Ballet Studio Japan


今年はファイナルの休憩時間に、パリ・オペラ座バレエのプルミエール・ダンスーズで、2009年のローザンヌ国際コンクールでスカラシップを獲得(1位)したオニール八菜さんが、「ライモンダ」のハンガリーの踊りを踊ります。

また、リヨンオペラ座バレエの2人のダンサーが、ラッセル・マリファントの『クリティカル・マス』を踊ります。https://www.prixdelausanne.org/interlude-2019/

さらに今年は、振付プロジェクトの第2回として、ディディ・ヴェルドマン振付作品を、コンクールのパートナー校13校を代表する26人のダンサーが踊ります。彼らはコンクールの期間の間に作品を覚えます。

2019/01/25

大前 仁 「ボリショイ卒業: バレエダンサー岩田守弘 終わりなき夢の旅路」

大前 仁 さんがボリショイの元ファーストソリストで現ウラン・ウデ劇場バレエ芸術監督岩田守弘さんの7年を追った労作「ボリショイ卒業: バレエダンサー岩田守弘 終わりなき夢の旅路」が発売されています。

著者は現在毎日新聞のモスクワ支局に勤務する記者である大前仁さん。モスクワ駐在中に岩田さんと知り合い、10年にわたって取材を続けてきた。そして、この本は、これぞジャーナリストの仕事というべき読み応えのある一冊。大前さんは岩田さんに魅せられ、親しく付き合い敬愛する一方で、記者らしくがっぷり四つに取り組み食らいつきぶつかっていく。
岩田さんのバレエに寄せる深い愛情と、どんな逆境にも負けずに挑戦し続ける不屈の精神が見事に掬い取られている。

「どうして僕はこんなにバレエのことが好きなのかな」

ボリショイ・バレエ初の日本人団員として入団し、身長が低いというハンディを抱えながらもファースト・ソリストにまで昇格した岩田さん。『ラ・バヤデール』のブロンズ・アイドル、『白鳥の湖』の道化などのテクニックを要求される役柄で高く評価されてきた。だが2011年、入団16年目に、芸術監督であるセルゲイ・フィーリンより退団を勧告される。フィーリンはボリショイ・バレエでは先輩であるものの同い年であり、親しい間柄だった。悩みつつも、そしてのちには引き止められながらも、退団を決意し、新しい人生へと踏み出す決意をする。その決断に至るまでの心の動き、変わってしまったボリショイ・バレエへの想い。変わらぬバレエへの愛。ボリショイ劇場での引退公演、そしてシベリア、ブリヤート共和国のウラン・ウデ劇場芸術監督を引き受けて、新しい扉が開く。

岩田さんの光の部分だけでなく、影の部分、苦悩や挫折もしっかり描き、今まで明らかにされてなかった葛藤が綴られている。聞きづらいことも取材できているのは流石だ。取材対象に友愛を感じながらも、冷静な視点を保っている。特にボリショイ劇場での特別引退公演については、長年取材対象として接してきた大前さんならではの、生き生きとして臨場感あふれる描写で綴られている。


それにしても岩田守弘さんはとてつもない大それた人物である。バレエでは決して他人には負けたくないという気持ちを、40代後半となった今でも持っている。ダンサーとして一線を退いても踊ることがやめられない。そして、名脇役だった彼だが、本当はプリンシパルとなり、王子役を踊るのが夢だったし、それは叶う夢だと信じていたのだったのだ。だが、その夢は表に出すことはなかった。そのことに深く葛藤していたのである。背が低いことを恨んだこともあったが、この身体だったからこそ、努力に耐えられたのだと今は感謝しているのだという。

その不屈の精神は今、いつかウラン・ウデ歌劇場バレエをボリショイを超えるバレエ団に育てたいという気持ちへと結びついている。ウラン・ウデに着任した時には、レベルの違いに衝撃を受けた。それでもひとりで戦い、バレエ団のレベルを向上させた。世界制覇をしたいという野望を今は抱いている。本当にあきらめの悪い男なのだ。

感動的なエピソードがいくつも現れる。ウラン・ウデ歌劇場は日本人のシベリア抑留者によって建てられた。この地に抑留されていた90歳を超えた旧日本兵との邂逅、それは抑留者をモチーフにした作品の振付へと結びついていく。ボリショイ・バレエで彼に引導を渡したフィーリンとの交流。かつて共演した時に彼の手を振り払ったバレリーナや、ガリーナ・ステパネンコ、イーゴリ・ツヴィルコなどのトップダンサーたちがノーギャラで引退特別公演に出演してくれた、そして小嶋直也、久保紘一といった同期の友人たちとの友情など。不器用さのある岩田さんだけど、皆、彼の人間力に魅せられていくのだ。

ロシア人にとってバレエとはどんな存在なのか、という文化論でもある。ボリショイ・バレエの内幕と変貌、そしてロシア・バレエそのものの変化も描かれている。ウラン・ウデ劇場を育てる苦労の話も興味深い。

岩田守弘さんはインタビュー記事やテレビ番組出演も多いが、そこでは明るみに出ていなかった心境が綴られ、臨場感ある描写が新聞記者ならではの見事な筆致。バレエファンやバレエを学ぶ人のみならず、多くの人に、この熱い生きざまに触れてほしい。きっと励まされ、勇気付けられることでしょう。

ボリショイ卒業: バレエダンサー岩田守弘 終わりなき夢の旅路
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1月15日に、ロシア、サンクトペテルブルグにて、岩田さんが振付け、ファルフ・ルジマトフ、日本舞踊の藤間蘭黄さんが出演した「信長-Samurai-」が上演された。この舞台は日本で初演された作品だが、今回はサンクトペテルブルグだけでなく、ウラン・ウデ劇場と、モスクワのクレムリンにある劇場でも上演された。この公演のレポートを、大前さんが書かれています。写真、動画もあるのでぜひご覧ください。

https://mainichi.jp/articles/20190119/mog/00m/030/007000c

クレムリンで日本舞踊×バレエ

http://news.tbs.co.jp/sp/newseye/tbs_newseye3582533.htm

2019/01/24

キューバ国立バレエの芸術監督補にヴィエングゼイ・ヴァルデスが就任

キューバ国立バレエは、1948年にカンパニーが設立されて以来、伝説のプリマ・バレリーナ・アッソールタ、アリシア・アロンソが芸術監督を務めてきています。

現在98歳と高齢のアロンソは、ほぼ失明状態ではありますが、未だ現役の芸術監督として仕事をしてきました。ドキュメンタリー映画『ホライゾン』の中でも、『ジゼル』の指導をかくしゃくと行う様子が映っています。

しかしながらさすがに98歳というのは超高齢であり、また今年のハバナ国際フェスティバルには健康上の理由で姿を見せなかったことから、後継者は誰になるべきかということが話題になっていました。

後継者の有力候補であった、キューバ出身のカルロス・アコスタはバーミンガムロイヤル・バレエの芸術監督に就任することが発表されました。

そしてようやく、後継者が発表されました。
https://www.dancemagazine.com/viengsay-valdes-2626747779.html?rebelltitem=1#rebelltitem1

キューバ国立バレエのプリマ・バレリーナで、国際的にも活躍し、世界バレエ・フェスティバルにも3回出演するなど、キューバを代表するダンサーであるヴィエングゼイ・ヴァルデスです。バレエを愛するキューバの国民にも大変人気があるダンサーです。

ヴァルデスは、上記のドキュメンタリー映画『ホライゾン』にも出演し、アロンソに指導される様子も映っています。キューバ人バレリーナらしい、超絶技巧の持ち主であるヴァルデスも、現在42歳。引退年齢が近づいてきていました。

キューバの地元紙の記事
https://www.prensa-latina.cu/index.php?o=rn&id=246565&SEO=nombran-a-viengsay-valdes-subdirectora-de-ballet-nacional-de-cuba

芸術監督の地位に引き続きアロンソはとどまりますが、実際の芸術面での方向性を決めてカンパニーを運営するのはヴァルデスが行うことになります。

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ヴィエングゼイ・ヴァルデス

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アリシア・アロンソ
(映画『ホライゾン』より)

映画『ホライゾン』公式サイト
http://horizontes-film.ch/en/
http://www.tk-telefilm.co.jp/horizontes/

クラシック・バレエの素晴らしい伝統を持つキューバ国立バレエですが、レパートリーはほぼ古典作品で、現代作品がほとんどなく、時代に取り残された部分もあります。それゆえ、西側に亡命し、西側のカンパニーで活躍するダンサーも多いのが現状です。まだヴァルデスがどのような方向性を持って運営するのかはわかりませんが、42歳という若い芸術監督補が就任することになり、確実に世代交代は行われます。

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2019/01/23

愛知県芸術劇場の芸術監督に勅使川原三郎が就任

愛知県芸術劇場の芸術監督にダンサー、振付家の勅使川原三郎さんが就任することが発表されました。
今まで同劇場では芸術監督がいなかったので、初めてのこととなります。

https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/news/000160.html

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09年に紫綬褒章、17年にフランス芸術文化勲章オフィシエを受章し、愛知県芸術劇場では「睡眠」、オペラ「魔笛」などの作品を発表してきた勅使川原さん。

国際的な活躍については、当ブログでも何回も取り上げてきましたが、特にパリ・オペラ座では「AIR」「暗闇は黒い馬を隠す」「Grand miroir」と3つの作品を委嘱されて発表しています。精力的に海外公演を行い、昨年はフランス、ロシア、スウェーデン、イタリア、キューバと文字通り世界中で公演を行いました。日本をホームグラウンドとする日本人の振付家で、これだけ海外で活動している人もいないと思われます。

一方で、東京・荻窪では自らのスペースKARAS APPARATUSにおいて、「アップデイト・ダンス」シリーズを展開。小さな空間で8日間の公演を行い、日々作品をアップデートしており、最新作「ハリー」で58作品目となります。世界的な振付家・ダンサーの作品を親密な空間で身近に観られるのも魅力的です。ここで生まれた作品が、イタリア、フランス、ロシアなどで上演されています。年間90公演くらいをここで開催しているというのは驚異的なことです。

愛知県芸術劇場では、2020年度より、ダンサー・振付家・演出家として国際的に活躍し、国内外から高い評価を得ている勅使川原三郎氏が芸術監督に就任します。企画力の向上及び発信力の更なる強化を図ることにより、全国トップクラスの劇場にふさわしい事業を行い、知名度の向上を目指してまいります。

なお、勅使川原氏には芸術監督に就任するまでの間(2019年4月1日~2020年3月31日)、「愛知県芸術劇場アドバイザー」として、2020年度以降の劇場主催事業の方向性等についてのアドバイスやサポートをいただきます。

一方、愛知県芸術劇場は、シニアプロデューサーの唐津絵理さんの下、コンテンポラリーダンスを中心とするダンス公演を数多く企画・招聘してきました。日本のダンス界にとっては最も重要な劇場の一つです。ここでしか上演されない作品もあったり、ミニセレという小規模なダンス公演も行っています。鑑賞&レビュー講座、カフェトークといった、鑑賞者を育てる機会も開催。

今年3月には、マニュエル・ルグリを中心とした「Stars In Blue」公演を企画制作。さらに3年に一度開催されているあいちトリエンナーレのメーン会場として、2016年には勅使川原さんのオペラ「魔笛」を始め、今年2月に再演される山田うん振付の「いきのね」、イスラエル・ガルバンの「Fla.co.men」など、意欲的なプログラムも開催してきました。さらに、彩の国さいたま芸術劇場など、国内劇場とのネットワークも構築しています。

これからますます、この劇場の存在感は高くなっていくことでしょう。

 
【愛知県芸術劇場 芸術監督 就任予定者】
勅使川原 三郎(てしがわら さぶろう)
就任予定日:2020年4月1日[任期:4年間]
 

--勅使川原三郎コメント--

愛知県芸術劇場の芸術監督に就任することは、私の新たな冒険心をかきたてるきっかけとなるでしょう。美の発見を巡る予感、幾多の予期せぬ事と出会う予感ほど感情を揺さぶるものはありません。未来を予定として待つのではなく、固定した認識を覆すのみの古臭い前衛ではない、未知なる謎へ向かって身体が作りだす感情の通路を作りましょう。劇場は喜びへの予感と惑いと共に生きる。私はスタッフと共に来場する観客の皆さんの呼吸が声になり感情が響き渡る感情の通路を準備したいと思います。


愛知県芸術劇場の芸術監督という大きい役割を担う勅使川原さん、今後のKARAS APPARATUSでの活動や海外での活動はどうなるのか、気になるところもありますが、これで日本のパフォーミング・アーツ界は活性化されることでしょう。


*******
なお、1月28日からKARAS APPARATUSにおいて、勅使川原三郎振付、佐東利穂子が踊る「ハリー」がアップデイト・ダンスシリーズとして上演されます。
これは再演作品で、両国のシアターXでも上演されたことがありますが、レムの小説「ソラリス」(タルコフスキーの映画「惑星ソラリス」の原作)に触発された作品で、ハリーとは主人公の死んだ妻の名前です。
シアターXでの上演を観ていますが、佐東利穂子さんのパフォーマーとしての引き出しの多さに圧倒されました。「ソラリス」なのでSF的な風味もあります。

1/28(月)より
アップデイトダンスNo.58「ハリー」
小説『ソラリス』より
No.58_0106-01

「ハリー」
小説『ソラリス』より

佐東利穂子のソロ「ハリー」はポーランドの小説家レムの「ソラリス」
を基に、夫に殺された妻の復活、死と生を超越する死者の再生、
二度は死ねない妻の苦悩、愛は何を解決できるか?セリフが身体
から剥がされ奪われたダンス生命体-佐東利穂子の宇宙的極限。


アップデイトダンスNo.58
「ハリー」
小説『ソラリス』より

出演 佐東利穂子 勅使川原三郎
演出 照明  勅使川原三郎

【日時】2019年 
1月28日(月)20:00
1月29日(火)20:00
1月30日(水)20:00
1月31日(木)20:00
2月1日(金)休演日
2月2日(土)16:00
2月3日(日)16:00
2月4日(月)20:00
2月5日(火)20:00
*受付開始は30分前、客席開場は10分前

【料金】
一般 予約 3,000円 当日3,500円
学生 2,000円 *予約・当日共に

【予約】
・電話:03-6276-9136
・メール:updatedance@st-karas.com
件名を「アップデイトNo.58」とし、本文にご希望の日付・
一般または学生・枚数・住所・氏名・日中連絡のつく電話番号をご記入ください。
*予約は前日の24時まで受付けています。

【劇場】
カラス・アパラタス/B2ホール
JR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線 荻窪駅
西口改札 徒歩3分
〒167-0051 東京都杉並区荻窪5-11-15 F1/B1/B2


2019/01/18

ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン、ロイヤル・バレエ「ラ・バヤデール」

ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン、ロイヤル・バレエ「ラ・バヤデール」が、1月18日より劇場公開されます。

http://tohotowa.co.jp/roh/movie/?n=la-bayadere

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試写を見せていただきました。とにかく今回はキャストが豪華。ニキヤにマリアネラ・ヌニェス、ガムザッティにナタリア・オシポワ、ソロルにワディム・ムンタギロフというトップスターを揃え、大僧正にはギャリー・エイヴィス。ブロンズ・アイドルにアレクサンダー・キャンベル、影のヴァリエーションに崔 由姫、ヤスミン・ナグディ、高田 茜とプリンシパルを中心に配役するという、通常では考えられない贅沢さです。マグダヴェーヤ(苦行僧)がアクリ瑠嘉なのも嬉しい。

そして主演陣の素晴らしいこと。別の日には、ニキヤ役にオシポワ、ガムザッティにヌニェスと役を交換するということもしたというので、そちらも興味深い。現代最高のバレリーナが一人の男をめぐって対決すると考えただけでもわくわくし、実際にも二人の思いの激しいぶつかり合いが観られて手に汗を握りました。気高く凛としたヌニェスのニキヤは、影の王国のヴァリエーションの難しいバランスと回転も完璧。秘められた恋に身を焦がし、裏切りに苦しみ絶望し、愛に殉じる演技に感情移入させられます。

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一方のオシポワのガムザッティはゴージャスで、権力者の娘ゆえの誇り高さと強さの一方で、ソロルに純粋に恋し、ニキヤとの関係を知って慟哭。別の女を彼が愛していることを知り、そこから恐ろしい策略に手を染めるまでの心の動きがよく表現されていました。『ラ・バヤデール』はやはり、ニキヤとガムザッティが同等の実力のあるダンサーが演じないとつまらない。その点で、これほどまでにハマったキャスティングはありません。もちろん彼女の輝かしいテクニックは健在です。

ムンタギロフは、戦士を演じるには少し線が細いものの、ふたりの女性の間で揺れるソロルの優柔不断さと後悔を巧みに演じる一方で、バレエの美しさは天下一品。影の王国のコーダの6連続ドゥーブル・アッサンブレは高さも着地も申し分のない素晴らしさです。

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影の王国のヴァリエーションは三人三様の素晴らしさだけど、特に第一ヴァリエーションの崔 由姫さんの音楽性とクリアな動きは絶品でした。影の王国のコール・ド・バレエも、ロイヤル・バレエにしてはよく揃っています。

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さらに大僧正のギャリー・エイヴィスは、ニキヤの美しさにメロメロになって、それゆえ嫉妬に身を焦がし、結果的にニキヤ殺害計画の引き金を引いてしまう聖職者の苦悶を濃厚に演じてくれて、演技派ぶりを見せてくれました。

裏切り、陰謀、毒殺という愛憎入り混じる心理劇、華麗な婚約式の踊り、影の王国の幽玄で静謐な美しさ、ブロンズ・アイドルの超絶技巧とバレエの面白さがつまった『ラ・バヤデール』、お勧めです。マカロワ版は、さらにドラマティックな第4幕があるのも特徴的です。

幕間の映像では、ナタリア・マカロワが主役にリハーサルをする場面も観られます。また、日本でのお馴染みノオルガ先生のインタビュー、影の王国のコール・ド・バレエのリハーサルなども。24人のコール・ド・バレエのうち20人は、今回これを踊るのが初めてだそうです。映像の中で、今シーズン入団したばかりの前田紗江さんの姿も観られます。

【振付】マリウス・プティパ
【追加振付】ナタリア・マカロワ
【音楽】レオン・ミンクス
【指揮】ボリス・グルージン

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【出演】
ニキヤ(神殿の舞姫):マリアネラ・ヌニェス
ソロル(戦士):ワディム・ムンタギロフ
ガムザッティ(ラジャの娘):ナタリア・オシポワ
ハイ・ブラーミン(大僧正):ギャリー・エイヴィス
ラジャ(国王):トーマス・ホワイトヘッド
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):アクリ瑠嘉
アヤ(ガムザッティの召使):クリステン・マクナリー
ソロルの友人:ニコル・エドモンズ

【第1幕】
ジャンベの踊り:
マヤラ・マグリ、ベアトリス・スティクス=ブルネル

パ・ダクシオン:
エリザベス・ハロッド、ミーガン・グレース・ヒンキス
アナ・ローズ・オサリヴァン、ロマニー・パジャック
クレア・カルヴァート、金子扶生
マヤラ・マグリ、ベアトリス・スティクス=ブルネル
リース・クラーク、ニコル・エドモンズ

【第2幕】
影の王国(ヴァリエーション1): 崔 由姫
影の王国(ヴァリエーション2): ヤスミン・ナグディ
影の王国(ヴァリエーション3): 高田 茜

【第3幕】
ブロンズ・アイドル:アレクサンダー・キャンベル

【上映時間】3時間18分(予定)

【劇場】
北海道 ディノスシネマズ札幌 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)
宮城 フォーラム仙台 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)
東京 TOHOシネマズ日比谷 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)
東京 TOHOシネマズ日本橋 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)
東京 イオンシネマ シアタス調布 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)
千葉 TOHOシネマズ流山おおたかの森 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)
神奈川 TOHOシネマズららぽーと横浜 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)
愛知 TOHOシネマズ名古屋ベイシティ 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)
京都 イオンシネマ京都桂川 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)
大阪 大阪ステーションシティシネマ 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)
兵庫 TOHOシネマズ西宮OS 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)
福岡 中洲大洋映画劇場 2019/1/18(金)~2019/1/24(木)

タイムテーブル
http://tohotowa.co.jp/roh/news/2019/01/16/%E8%87%AA%E5%8B%95%E4%B8%8B%E6%9B%B8%E3%81%8D/

英国ロイヤル・バレエ団「ラ・バヤデール」(全3幕・マカロワ版) [DVD]
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2019/01/17

新国立劇場バレエ団 2019-20 バレエ、ダンスのラインアップ発表

新国立劇場バレエ団 2019-20ラインアップが発表されました。大原永子監督最後のシーズンとなります。

https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_013294.html

https://www.nntt.jac.go.jp/release/press/upload_files/lineup_ballet_dance_2019-2020.pdf

<Ballet
2019/2020 シーズン ダンス ラインアップ>

2019 年 10 月
ロメオとジュリエット
7回公演

2019 年 12 月
くるみ割り人形
9回公演

2020 年 1 月
ニューイヤー・バレエ
「セレナーデ」、「ライモンダ」よりパ・ド・ドゥ、「海賊」よりパ・ド・ドゥ、
「DGV Danse à Grande Vitesse」(ウィールドン振付)

3回公演

2020 年 2 月~3 月
マノン
5回公演

2020 年 5 月
ドン・キホーテ
6回公演

2020 年 6 月
不思議の国のアリス
8回公演

英国的なレパートリーで占められたラインアップとなりました。次期芸術監督が吉田都さんとなることも、関係しているのかもしれません。

マクミランのドラマティック・バレエが2作品入るのが嬉しいところです。特に久しぶりの「マノン」楽しみですね。

大好評だった「不思議の国のアリス」の再演も早速入りました。完全にソールドアウトを記録した「アリス」、8公演では足りないかもしれませんね。

恒例となってきた「ニュー・イヤー・バレエ」は、「セレナーデ」の再演も嬉しいところです。また、クリストファー・ウィールドン振付の「DGV Danse à Grande Vitesse」がレパートリー入りします。

ロイヤル・バレエで2006年に初演され、NYCB、そしてボリショイ・バレエのレパートリーにもなっている作品で、音楽はマイケル・ナイマンです。


〈1演目 8公演〉
2019 年 7 月
こどものためのバレエ劇場 2019
白鳥の湖

8回公演


<Dance
2019/2020 シーズン ダンス ラインアップ>

〈計3演目 11公演〉
2019 年 11 月~12 月
中村恩恵×新国立劇場バレエ団
「ベートーヴェン・ソナタ」

2回公演

2020 年 3 月
新国立劇場バレエ団
「DANCE to the Future 2020」

4回公演

2020 年 6 月
小野寺修二 カンパニーデラシネラ
「ふしぎの国のアリス」

5回公演


やはり好評だった「ベートーヴェン・ソナタ」の再演も喜ばしいことです。

今シーズン復活した「「DANCE to the Future 」では、アドヴァイザーに遠藤康行さんを迎えます。

いずれにしても、とても楽しみな新シーズンとなりました。ドラマティック・バレエを加えることで、ダンサーたちの表現力もますます向上するのではないかと期待します。

2019/01/16

マシュー・ボーンの「白鳥の湖」、2019年7月来日公演のスケジュールとチケット

2019年7月に来日する、マシュー・ボーンの「白鳥の湖」の公演スケジュール&チケット詳細が決定しています。

http://hpot.jp/stage/swanlake2019

イギリス人演出・振付家であるマシュー・ボーン氏は、古典バレエ作品に斬新な解釈を加えることで新たな光を当て、数々の金字塔を打ち立ててきた。そんな彼が一躍世界に名を知られた作品、それが『白鳥の湖~スワン・レイク~』だ。

スワン役を全員男性が演じるという斬新な演出で、ダンス公演としては異例の4ヶ月というロングラン記録を打ち立て、1998年にはブロードウェイに進出。1999年には、演劇界最高の栄誉であるトニー賞において、最優秀ミュージカル演出賞、振付賞、衣裳デザイン賞の3冠に輝き、またローレンス・オリヴィエ賞他30以上の国際的な演劇賞に輝いた。


期間:2019年7月11日(木)~21日(日)<全16回> (詳しい日程はリンク先にて)

劇場:Bunkamura オーチャードホール

主催:ホリプロ/TBS

【チケット料金】
S席:13,000円
A席:9,500円
B席:6,000円

【ステージ・メンバーズ先着先行販売】(有料会員)
受付期間:2月2日(土)9:00~2月8日(金)23:59

【オンラインチケット抽選先行販売】(無料会員)
受付期間:2月9日(土)12:00~2月17日(日)23:59
抽選日:2月20日(水)

【オンラインチケット先着先行販売】(無料会員)
受付期間:2月23日(土)12:00~3月14日(木)23:59

【一般販売】
3月16日(土)10:00

キャストは未定のようです。

英国では、このニューアドベンチャーズの「白鳥の湖」のツアーはすでに9月23日より始まっています。12月4日から1月27日まではサドラーズ・ウェルズ劇場、5月25日までは英国内のツアーです。
https://new-adventures.net/swan-lake


現在のニューアドベンチャーズ「白鳥の湖」での大きな話題は、ザ・スワン/ザ・ストレンジャーに、ロイヤル・バレエの若きプリンシパル、マシュー・ボールがキャスティングされていることですが、ロイヤル・バレエは2019年6月に来日公演を行う予定であり、7月にはロサンゼルスのツアーもあることから、今回の「白鳥の湖」来日公演マシュー・ボールの参加はちょっと難しそうです。

英国での公演でやはりザ・スワン/ザ・ストレンジャーを演じているマックス・ウェストウェルは、元イングリッシュ・ナショナル・バレエで、退団後は「パリのアメリカ人」に主演してきました。また、映画「くるみ割り人形と秘密の王国」では、花のワルツのキャバリエ役で出演しています。もう一人のウィル・ボジアーは、「赤い靴」「眠れる森の美女」「シザーハンズ」といったボーン作品に出演してきたほか、ミュージカルへの出演経験もあるダンサー。

また、現在の英国ツアーでは、昨年10月に来日した「マシュー・ボーンのシンデレラ」でエンジェル役を演じたリアム・ムーアが王子役で出演しており、非常に評価が高い模様です。リアム・ムーアは、ミュージカル「ビリー・エリオット」の初代ビリー役でも知られており、とてもカリスマ性の高い、素晴らしいダンサーです。

バーミンガム・ロイヤル・バレエの次期芸術監督にカルロス・アコスタ

24年間もの間、バーミンガム・ロイヤル・バレエの芸術監督を務めているデヴィッド・ビントレーが、今シーズン末、2019年7月に退任し、振付に専念すると発表されていました。

退任発表後、後任探しが行われていましたが、このほど後任がカルロス・アコスタ(元ロイヤル・バレエ プリンシパル)に決定したことが発表されてました。アコスタは2020年の1月に芸術監督として就任します。

https://www.brb.org.uk/post/carlos-acosta-appointed-as-new-director-of-birmingham-royal-ballet

カルロス・アコスタのコメント

「バーミンガムロイヤル・バレエの芸術監督に就任することは大きな名誉です。サー・ピーター・ライトによって築かれた素晴らしい基礎の上に、デヴィッド・ビントレーが、このバレエ団を英国をリードする代表的なクラシック・バレエ・カンパニーの一つとしての地位を確立させた努力に大きな敬意を払っています。
私は、このクラシック・バレエの伝統の上に、レパートリーを拡大し、より新しく多様性に富んだ観客に向けてアウトリーチする意欲を持っています。21世紀における、世界をリードするクラシック・バレエ・カンパニーとは何かを、このカンパニーを通じて見せたいと思っています」


キューバのハバナの貧しい家庭の、11人兄弟の末っ子として生まれたアコスタは、キューバ国立バレエ学校で学び、16歳でローザンヌ国際バレエコンクールで優勝しました。以来30年間、世界を代表するバレエ・カンパニーで活躍し、ロイヤル・バレエのプリンシパルとして17年間君臨しました。現在45歳。

2016年にロイヤル・バレエを引退後、キューバに自らのダンスカンパニー、アコスタ・ダンサを設立し、またハバナに自身のダンスアカデミーを開いて2017年9月に最初の生徒を受け入れました。2007年に書いた自伝はベストセラーに。また、 ローレンス・オリヴィエ賞、ブノワ賞、英国ナショナル・ダンス・アワードなど数々の賞に輝くほか、ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンスから、ダンス界におけるもっとも影響力のある人物の一人として、エリザベス女王戴冠賞を授与されています。

New York Timesでは、アコスタへの電話インタビューが掲載されています。

https://www.nytimes.com/2019/01/15/arts/dance/carlos-acosta-birmingham-royal-ballet.html

「大きな挑戦だけど、挑戦することは好きです。カンパニーに変革をもたらして、現代にマッチしたものにすることができると思います。世界に、バーミンガムにはワールド・クラスのクラシック・バレエ・カンパニーがあるというメッセージを伝えたい」

アコスタは、フレデリック・アシュトンやケネス・マクミランといった英国バレエの伝統を大切にしつつ、ロイヤル・バレエでは見落とされている振付家の作品も取り入れたり、今まで気づかれていなかったようなダンサーや作品も探したいと語っています。「様々な分野からレパートリーを持っていき、様々なダンスや伝統を通して、ダンスにおける女性の貢献にも敬意を表し、普段バレエを観ないような観客を育てて行きたいと思います」

英国においては、アーツ・カウンシルを通してバレエ/ダンスへの助成は多く設けられているものの、多分に漏れず助成金は削減されている傾向にあり、特にBrexitによってEUからの助成を受けられなくなるといった問題があります。アコスタは、カンパニーの資金的な問題についてはまだ十分知らないところもあるものの、今後も助成を受けられるように明確なビジョンを表明し、アーツカウンシルやバーミンガム市と話し合いたいと語っています。

アコスタ・ダンサがアソシエイト・カンパニーであるサドラーズウェルズ劇場の支配人、アラステア・スポルディングはアコスタがどんなに素晴らしいダンサーなのかは誰もが知っており、それだけでなく、彼はダンスを見せるためのエキサイティングなやり方についてよく考えており、クリエイティブな思考を持っていると共に、教師としても素晴らしいと評価しています。また、貧しい出自から世界的なスターになったバックグラウンドがあるアコスタは、様々な階層のダンサーや観客を惹きつける必要があることをよく理解しているとも。


カルロス・アコスタは、ロイヤル・バレエでは「カルメン」や「ドン・キホーテ」を振付けています。彼の振付家としての評価は必ずしも高くはないものの、自ら率いるアコスタ・ダンサはキューバ出身のダンサーたちが最先端の振付家の作品を上演して、ヨーロッパなどでツアーを行うなど成功を収めています。昨年は、勅使川原三郎がこのカンパニーに新作を振付け、勅使川原三郎、佐東利穂子が客演するというユニークなトリプル・ビルが上演されました。こちらの活動も引き続き行うとのことです。

世界的な知名度の高いスター・ダンサーが芸術監督に就任するとあって、バーミンガムロイヤル・バレエの注目度は上がることでしょう。まずは、今年6月のロイヤル・バレエの来日公演でのアコスタ振付「ドン・キホーテ」の上演が楽しみです。

英国ロイヤルバレエ「ドン・キホーテ」(作曲:ミンクス)[Blu-ray]
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NHK-BSプレミアムシアターで、ロイヤル・バレエ、リアム・スカーレット振付「白鳥の湖」他放映

NHK-BSプレミアムの「プレミアムシアター」では、たくさんのバレエ公演を放映する予定があります。

なかでも、昨年初演された、ロイヤル・バレエの30年ぶりの新しい「白鳥の湖」(リアム・スカーレット振付)が2月18日に放映されるのは嬉しいことです。豪華絢爛な舞台装置や衣装、ドラマティックな演出が大きな話題を呼び、映画館での上映は大ヒットしました。主演にマリアネラ・ヌニェスとワディム・ムンタギロフ、そして王子の妹役で高田茜さんとフランチェスカ・ヘイワードが出演しています。
(私の感想はこちら

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http://www4.nhk.or.jp/premium/

1月21日(月)【1月20日(日)深夜】午前0時00分~

◇ミラノ・スカラ座バレエ
「恋人たちの庭」
【再放送】

バレエ「恋人たちの庭」(全1幕)
振付:マッシミリアーノ・ヴォルピーニ
音楽:モーツァルト

<出 演>
女:ニコレッタ・マンニ
男:ロベルト・ボッレ
夜の女王:マルタ・ロマーニャ
ドン・ジョヴァンニ:クラウディオ・コヴィエッロ
レポレッロ:スティアン・ファジェッティ
アルマヴィーヴァ伯爵:ミック・ゼーニ
伯爵夫人:エマヌエラ・モンタナーリ
フィガロ:ワルテル・マダウ
スザンナ:アントネッラ・アルバーノ
グリエルモ:ヴァレリオ・ルナデイ
フェランド:アンジェロ・グレコ
フィオルディリージ:ヴィットリア・ヴァレリオ
ドラベルラ:マルタ・ジェラーニ ほか
ミラノ・スカラ座バレエ団

<演 奏>ミラノ・スカラ座管弦楽団のメンバーによる室内楽

収録:2016年4月9日 ミラノ・スカラ座(イタリア)


1月28日(月)【1月27日(日)深夜】午前0時00分~午前3時25分

◇ニューヨーク・シティ・バレエ in パリ

「バランシン・ガラ」(1:42:00~3:25:00)
<演 目>
「ワルプルギスの夜」 歌劇「ファウスト」バレエ音楽 グノー 作曲
「ソナチネ」 ラヴェル 作曲
「高貴で感傷的なワルツ」 ラヴェル 作曲
「ラ・ヴァルス」 ラヴェル 作曲
「シンフォニー・イン・C」 交響曲 第1番 ハ長調 ビゼー 作曲

<出 演>
サラ・マーンズ
アドリアン・ダンチヒ・ウォリング
ローレン・ラヴェット
ミーガン・フェアチャイルド
ホアキン・デ・ルス
スターリング・ヒルティン
ジャレッド・アングル
アマル・ラマサール
タイラー・ペック
アンドリュー・ヴィエット
テレサ・ライクレン
タイラー・アングル
アルストン・マクギル
アンソニー・ハクスリー
ブリタニー・ポラック
テイラー・スタンリー ほか
ニューヨーク・シティ・バレエ団

<ピアノ>エレーン・シェルトン
<管弦楽>オーケストラ・プロメテ
<指 揮>ダニエル・キャップス

収録:2016年7月12・16日 シャトレ座(パリ)

2月11日(月)【2月10日(日)深夜】午前0時00分~
◇ロイヤル・フランダース・バレエ公演「ラヴェル」【再放送】
(「展覧会の絵」はシディ・ラルビ・シェルカウイ振付)
「ラヴェル」
バレエ音楽「展覧会の絵」 ラヴェル 作曲
バレエ音楽「マ・メール・ロワ」 ラヴェル 作曲

<出 演>
王妃(マ・メール・ロワ):ナンシー・オスバルデストン
王(マ・メール・ロワ):アレグザンダー・バートン
アルマ(マ・メール・ロワ):ドリュー・ジャコビー ほか
ロイヤル・フランダース・バレエ団

<管弦楽>フランダース・オペラ管弦楽団
<指 揮>ヤニス・プスプリカ収録:2016年6月3・4日 フランダース歌劇場(ベルギー アントワープ)


2月18日(月)【2月17日(日)深夜】午前0時00分~
◇英国ロイヤル・バレエ『白鳥の湖』
◇ボリショイ・バレエ『黄金時代』【再放送】

◇英国ロイヤル・バレエ「白鳥の湖」

バレエ「白鳥の湖」(全4幕)
原振付:マリウス・プティパ、レフ・イワノフ
改定振付:リアム・スカーレット、フレデリック・アシュトン
チャイコフスキー 作曲

<出 演>
オデット/オディール:マリアネラ・ヌニェス
ジークフリート王子:ワディム・ムンタギロフ
王妃:エリザベス・マクゴリアン
悪魔ロットバルト:ベネット・ガートサイド
ベンノ(道化):アレグザンダー・キャンベル
ジークフリート王子の妹たち:高田 茜、フランチェスカ・ヘイワード ほか
英国ロイヤル・バレエ団

<管弦楽>英国ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団
<指 揮>コーエン・ケッセルス

収録:2018年6月12日 英国ロイヤル・オペラ・ハウス(ロンドン)

◇ボリショイ・バレエ「黄金時代」【再放送】
バレエ「黄金時代」(全2幕)
振付:ユーリ・グリゴローヴィチ
音楽:ドミートリ・ショスタコーヴィチ

<出 演>
リタ(若い踊り子):ニーナ・カプツォーワ
ボリス(若い漁師):ルスラン・スクヴォルツォフ
ヤーシュカ(ギャングのリーダー):ミハイル・ロブーヒン
リューシカ(ギャングの仲間):エカテリーナ・クリサノワ ほか
ボリショイ劇場バレエ団

<管弦楽>ボリショイ劇場管弦楽団
<指 揮>パヴェル・クリニチェフ

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2019/01/02

金森穣(Noism) 第60回毎日芸術賞 受賞

第60回(2018年度)毎日芸術賞(特別協賛・信越化学工業株式会社)の受賞者が決まりました。

毎日芸術賞は、毎日新聞社が主催する賞で、前年の11月からその年の10月までに国内で行われたあらゆる芸術文化活動を対象に、特に優秀、かつ新鮮な業績をあげたと認められる芸術家個人・団体に贈られます。

https://noism.jp/mainichi_kanamori/

毎日新聞の社告
http://mainichi.jp/articles/20190101/ddm/001/040/097000c

金森穣さん(演出振付家・舞踊家)Noism公演「Mirrorring Memoriesーそれは尊き光のごとく」(東京文化会館小ホール)、Noism×SPAC「ROMEO & JULIETS(ロミオとジュリエットたち)」(りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館など4会場)の演出・演技

栗木京子さん(歌人)歌集「ランプの精」(現代短歌社)

内藤礼さん(現代美術家)個展「内藤礼-明るい地上には あなたの姿が見える」(水戸芸術館現代美術ギャラリー)

永井愛さん(劇作家)二兎社公演「ザ・空気 ver.2 誰も書いてはならぬ」(東京芸術劇場シアターイーストなど)の作・演出

宮本輝さん(作家)小説「流転の海」(新潮社)シリーズ完結 全9部

特別賞
 大林宣彦さん(映画監督) 映画「花筐/HANAGATAMI」


というわけで、Noismの芸術監督、金森穣さんが受賞しました。

これは、金森個人の創作活動に留まらず、日本初、そして今なお唯一の劇場専属舞踊団であるNoismを15年間率いて続けてきた活動が認められ、評価されたからこその受賞であり、Noismにとっても今後の活動に大きな励みとなります。
https://noism.jp/mainichi_kanamori/より

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(金森穣さん)

「ROMEO & JULIETS(ロミオとジュリエットたち)」は、かなり実験的な作風でテキストもフィーチャーされており、SPACの俳優たちも参加しているだけでなく、ジュリエットが複数出演しているなど決してわかりやすい作品ではありませんが、観客におもねることなく、考えさせてくれる芸術性の高い作品は非常に刺激的で面白かったです。


前回、第59回は熊川哲也さんが受賞した賞です。また、第52回は吉田都さん、第23回は森下洋子さんが受賞しています。

*******
Noismは、2018年は過去の代表作をアレンジした「Mirroring Memories-それは尊き光のごとく」、そして新作「ROMEO&JULIETS」(Noism1×SPAC 劇的舞踊)を上演したほか、ロシア・サンクトペテルブルグのディアギレフ・フェスティバルで「ラ・バヤデール−幻の国」を上演して、現地でも絶賛を浴びました。

また、副芸術監督、バレエ・ミストレスである井関佐和子さんは、昨年ニムラ賞を受賞しています。

その一方で、新潟市の財政難もあり、Noismの活動延長がなかなか決まらないという困難にも直面していました。昨年12月15日になってようやく、2020年8月末迄、一年間延長の線で「調整中」ということがようやく決まったと報道されています。
(Noism Supporters Unofficialより)
http://noism-supporters-unofficial.info/supporters-blog/shin/4580/

「Noism」活動、18年度末までに検討
新潟市議会、担当部長が答弁
https://www.niigata-nippo.co.jp/news/politics/20180306378780.html

新潟市に寄せられた要望

ぜひノイズムの存続を
https://www.city.niigata.lg.jp/smph/shisei/mayor/tegami_top/tegami/tegami_30top/30_3kyouiku/H30-3-1.html

Noism に対する力強い支援をお願いします
http://www.city.niigata.lg.jp/smph/shisei/mayor/tegami_top/tegami/tegami_29top/29_3kyouiku/H29-3-29.html

新潟市の市長選挙が昨年10月に行われ、新しい市長は必ずしも積極的にNoismを支援する政策ではなかったようなのですが、ひとまず安心とはいうものの、今までの活動期間よりも短い一年間というのは不安が残ります。今回の受賞が、活動継続に向けての大きな一押しとなったと言えることでしょう。


今後の活動も目白押しです。新作『R.O.O.M.』/『鏡の中の鏡』の他、7月にはもう一つ新作が予定されており、『カルメン』ロシア・モスクワ公演、シビウ国際演劇祭にも『R.O.O.M.』/『鏡の中の鏡』の上演が予定されているなど、国際的な活動も続きます。


◆Noism1 実験舞踊vol.1『R.O.O.M.』/『鏡の中の鏡』

新潟公演: 1月25日(金)- 2月17日(日)※全13回 
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
(1月25,26,27日 前売完売)

東京公演: 2月21日(木)- 2月24日(日)※全5回
会場:吉祥寺シアター(前売完売)




◆Noism2定期公演vol.10

3月15日(金)- 17日(日)※全5回
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館

◆Noism2札幌公演
4月19日(金)- 20日(土)※全2回
会場:札幌文化芸術劇場 hitaru

チェーホフ国際演劇祭2019
◆Noism劇的舞踊『カルメン』ロシア・モスクワ公演

5月29日(水)- 31日(金)
会場:Helikon Opera

シビウ国際演劇祭2019
◆Noism1実験舞踊vol.1『R.O.O.M.』/『鏡の中の鏡』

ルーマニア・シビウ公演(予定)
6月中旬

◆Noism新作(予定)
新潟公演:7月19日(金)- 21日(日)
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸文化会館

東京公演:7月27日(土)- 28日(日)
会場:目黒パーシモンホール

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