コンドルズ 埼玉公演『18TICKET』 近藤良平さん独占インタビュー
6月2日(土)、6月3日(日)に彩の国さいたま芸術劇場で、コンドルズ 埼玉公演『18TICKET』 が開催されます。
トレードマークの学ラン姿でダンス、生演奏、人形劇、映像、コントを展開するコンドルズ。
ステージいっぱいに繰り広げられる熱いパフォーマンス、予測のつかない展開、斬新かつちょっぴり懐かしいシーンの数々――。
昨年の『17's MAP』でも新たな展開をみせたコンドルズの埼玉新作シリーズ、12作目のさらなる挑戦が始まります。2018 年の新作タイトルは『18TICKET』。これは青春 18 切符を意味するとのことです。
http://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/4876
このコンドルズを率いる、近藤良平さんに先日インタビューをさせていただき、劇場への愛や、この公演に寄せる意気込みを伺いました。近藤さんは、本当に魅力的な方で、とにかく笑いの絶えない、とても楽しいインタビューでした。
さいたま芸術劇場での公演も12回目となりました。この劇場の魅力はどういったところにあるのでしょうか?
これだけ広い稽古場が取れるところは他にはありません。コンドルズ22年間の活動の中でも、稽古場が一番広いんです。普段は流浪の民なので(笑)。舞台の原寸大で稽古ができるのは大きなメリットです。ここはプロデューサーに佐藤まいみさんがいるのも大きい。彼女との付き合いは長いのですが、新作頑張って!とハッパをかけられています。
この劇場は、奥行きも天井も高い劇場なので、ここでしかできないことができるし、ここだからやりたいことができます。舞踊空間としてどんなに広く使ってもさほど問題がないように思えてきます。ぼくはどちらかといえばダンス寄りの人間ですが、メンバーによっては芝居の人だったりして。でもここでやると「ダンス」をやっているという感じになります。そういう感覚に陥るのはいいな、と思うんですよね。小さいところは小さいところでいいんですけどイベントチックになってしまうんですよね。もともとこの劇場はキリアンやピナ・バウシュを上演している劇場なわけですから。他で思い浮かべてもなかなかできないことがここではできます。
去年の「17's map」のような巨大な壁とかね。あれは僕的には、コンドルズとしてはリアルな壁でしたね。南米に住んでいて日本に帰国した時、おばあちゃんの家が府中だったんです。三億円事件の府中刑務所があんな感じで、舞台のために壁を作ってみたら、あ、府中刑務所だ!と思いました(笑)
そして、この劇場は闇の暗い部分がきれいに出るんですよ。ほかの劇場ではここまで出せない。
ここでの公演は他のコンドルズの公演とは客層も少し違う気がします。地元の方も多いのでしょうか?
最初はいろんなところからお客さんが来ていましたが、今はおそらく半分くらいは地元の方なのではないかと思います。
このシリーズには「さいたま愛」というべきものが感じられるのですが、埼玉に対する思い入れもあるのでしょうね。
若手メンバーの中には、埼玉大学出身の人もいますね。また今年入るメンバーで、埼玉県の東松山にある大東文化大学出身者もいます。この劇場の前に大きく公演の看板を掲出してくれていますよね。普段、なかなかこんな大きな掲示はできないので単純に嬉しいし、さいたまの人に観てほしい!という気持ちになります。車で前を通ってもおお!と思って面白いし。それから、与野本町駅のところに小道具の人形たちがずっと置きっぱなしの状態で展示されているんですよ。この駅を通勤通学で使っている人たちは確実に一回はあの人形たちを見ているはずなんで、さいたまの人達には結構晒しているなって(笑)。気になる人形しかないし。あの人形たちは早稲田大学演劇博物館でも展示されているんですよ。
話はずれますが、僕たちの小物は段ボールで作ったりしているんですが、あそこで初めてナンバリングというのをされたんですよね。展示物として半永久的に保存すると言われました。まだその頃って6畳間に住んでいたのですが、置くところもなかったんですよね。
「ストロベリー・フィールズ」を上演した時には、近藤さんがソロを踊っている時に大き目の地震がありましたよね。吊られていた舞台装置も大きく揺れましたが、近藤さんは踊るのをやめませんでしたよね。
けっこうドキドキでしたよ。あとで聞いたら、あと2,3秒揺れが続いていたら、自動的にシステムが止まっていたらしいんです。その後無音から音が出るシーンだったんですが、音を出す担当の者が「行っちゃえ~」といいタイミングで音を出してくれました。去年は去年で、埼京線が止まってしまって開演が遅れたんですよね。そのため開演までメンバーで尾崎豊についてのトークをやりました。毎年ハプニングが起きますね(笑)。
『ストロベリーフィールズ』(2015)より(C)HARU_1020
今回の公演タイトルは「18ticket」ですが、この「チケット」に込めた思いは?
チケットってよく使う言葉なんですが、人によって思い浮かべることが違うんですよね。コンサートのチケットって思う人が多くて、切符を思い浮かべる人は意外と少ないんです。僕の中では「Ticket to ride」という感じの乗り物のチケットや、何かを許されるためのものというのが強いです。まあ、交通違反切符みたいなマイナスのイメージのものもありますが(笑)普通はポジティブなものを思い浮かべますが、ネガティブも面白いかもしれませんね。
日本では、200円くらいの切符を無賃乗車して見つかると10倍位払わされますが、海外の違反金はものすごいですよね。検札も少ないし改札もなかったりするのに。僕がポーランドに行ったときには検札がきて、一斉に見られて、無賃乗車だと同行させられてしまうから焦りました。海外では乗車のシステムもわからないので、見つからないか、ものすごくドキドキするんです。
「チケット」には旅のイメージがありますよね。もちろん近藤さんはじめコンドルズの皆さんもたくさん旅をされてきたわけですが。
でも旅って皆さんしますよね。僕たちも海外公演などに行くわけですが、半分は公演のためにで、空き時間もありますよね。その空き時間の過ごし方というのはメンバーによってすごく違っていて。オクダサトシさんは美術の人なので必ず美術館に行くし、美術館だけでなくて、美術館がらみの図書館などにも。藤田善宏は古道具市、骨董市に行くし、どんなに小さな市でも地図でずっと行き方を調べているんです。それで何も買ってこなかったりして。
でも舞台で使っている人形は、基本的に海外で買ってきたものばかりです。一つと同じものがないような人形ですよね。あと僕が弾いている楽器なども海外で買ってきていますね。僕は楽器が好きなのですが、メキシコは楽器天国で、この間も買ってきましたよ。小さいお店でも結構楽器があるんですよね。絶対何かあるだろうと思ったら、カエルの形をした笛があったり、買うんだけど別になんてことはないんだよね。そういうのがうちにいっぱいありますね。
コンドルズのメンバーは、振付をやったり個別での活動もされていたりして、皆さん個性豊かですが、どうやってまとめ上げていますか?
まとめる気持ちもないんですが、コンドルズは、例えば小劇場の劇団には似ていないんですよ。みんな志向性もバラバラですし。日本ではダンスはかなりユニット式が多くてカンパニー意識がないんです、悪い意味で。ユニット式で手軽なんですけどカンパニーというものを背負わなくて、劇団の方がよほど背負っていて素敵だなって思います。コンドルズってその両方の要素があるんですよ。実際コンドルズしか出ていない人もいるわけだし。コンドルズのメソッドってわけではないんですがコンドルズの踊りしかできなかったりして(笑)。それがコンドルズのやり方なんです。命令形でやっているかっていうと違うし、ぐじゃぐじゃかと言ったら、もう大人だから休む時は風邪を引いたから休むとちゃんと言ってくるわけで、無駄な頑張りとかはしないんです。要するにお互いやりやすい方法でやっています。
さいたま公演では安定した条件のいい稽古場があるので集う場所があるのがいいですね。そこで集って実験して創作できます。毎年6月の上演で年間スケジュールにも組み込まれていますし。コンドルズの20数年の歴史のうち、もう半分はさいたまでの公演が続いているわけです。こういう独特の、べったりしないつながりがあるから、今まで続いているんでしょうね。佐藤まいみさんがフランスにいらっしゃっていて、ドゥクフレなどもまいみさんを通して知ったわけで、僕からすると、ドゥクフレなんかも、「あ、これでいいんだ」と思うわけで。こういう作品も面白いなあ、と。通常のバレエだけではなくてフォーサイスとかもやったり。
もし、キリアンみたいな作品ばっかりを観ていたら、コンドルズはやっていないと思います。この劇場には立てないと思ってしまっていただろうし。まいみさんは、振れ幅が広い人だし、その上ピナ・バウシュなども上演しているから、僕としては、コンドルズはやっていいんだ、と思う段階が早かったです。なかなかこう思って自由に創らせてくれる人はいませんからね。他では、その劇場がやりたいことになってしまって、僕らがやりたいことはできなかったりしますから。また技術スタッフも優秀ですし付き合いが長いです。
コンドルズは、ダンスの枠にとらわれないような、人形劇や影絵、コントなどを取り入れたりして、客層の幅も広いと思いますが、ダンス公演にどうやったら新しい観客が来て貰えるようになると思われますか?
それは僕もいつも考えていることです。お客さんと対話をすることでしょうかね。僕たちがほかの人の作品を観ても、対話をしたくならない作品はつまらないですし。ハテナマークでもいいんですよ。わからないと言えるような作品だったらまだいい。言えない、それ以前の作品もありますからね。対話をする気があるかないかが大事だと思います。こちらは少なくとも、メンバーが物販をやっているし(笑)そういうことも大事な気がするんですよね。どういう風に対話して人の話を聞いて作品を作るか、そう思って作るしかないですね。僕たちも、人が喜んでくれないと元気なくなっちゃうから。サービス精神が旺盛なメンバーが多いと思います。
2016年の「LOVE ME TenDER」では、回っている縄の下を次々にダンサーがくぐるというシーンがある作品がありましたが、あれも僕たち的には、新しい競技を発明したような気がするんです。でもそれこそ大きな舞台、稽古場でないと生まれない振付ですよね。稽古場が広くないと、あんなことをやってみようなんて気になりません。
本当に毎回いろんなアイディアが盛り込まれていますが、これが一つの作品に収斂していっているのが素晴らしいと思います。
去年の公演の、すごく大きな人形を取り入れるというのも初めての試みでした。計算以上にデカかったです(笑)。舞台で見えている以上にいろんなシーンがあるんです。僕自身はピースをいっぱい作る人なんで、今日も稽古だったのですが、3つくらいシーンができます。でも10日もやったら30シーンになってしまいますよね。全部入れられないので、自分でやってみてそれ以上盛り上がらないものは削っていきます。自分がこうしたい、というものではなくて、このメンバーでやってみると違うところに行っちゃうから、そこが面白いですよね。
NHKホールの公演でも、そして今回の公演でも、0歳から観られる公演を実施するという試みに取り組まれていますね。
それはぜひやりたかったことなんです。NHKホール公演もそうですし、今遊育計画というのをやっていて、遊育計画というのは、家族と0歳児からの子どもというコンセプトで元から子供向けにやっています。0歳児もOKということもあるんですが、25歳から35歳くらいまでのお母さん方が、育児のため舞台を観たくても観られないということが判明したので。子供は舞台で怖いのは暗転くらいなんですよ。あとは音が大きいのが苦手なくらいで、他は大丈夫だと思います。
コンドルズは20年以上活動しているので、若い時から観ている方が家族を持って、というパターンも多いと思います。あと、自分のお父さん、お母さんを連れて行くというパターンもありますね。
そしてこの劇場は蜷川さんの功績もあると思いますが、お客さんと出演者の距離が近いんですよね。去年は「17's Map」なので尾崎豊の曲をかけながら客席から出てきたら、「キャー」なんて言われちゃったりして。そういうのも前よりゆるくなったかもしれません。気負うことなく、楽しみに来ているお客さんが増えたんですよね。
最後に意気込みをお願いします。
今年は今年で、今までと違うことを考えているので、それは来てのお楽しみです!全体的に言うと、ここでしかできないことをやります。さいたま公演ではそこが一番面白いことなんで。今年は新しいメンバーも入りました。ダンスのシーンも多いので、ダンスが好きな人も笑いたい人も、人生に悩んでいる人も、いいチケットなんで、是非いらしてください。
公演日時
2018年6月2日(土) 開演14:00/19:00
6月3日(日) 開演15:00
※開場は開演の30分前です。
※演出の都合により、開演時間に遅れますと入場をお待ちいただく場合がございます。
予めご了承ください。
※6月2日(土)14:00の回のみ、0歳から入場可能です。
会場
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
構成・映像・振付
近藤良平
出演
コンドルズ
主催
公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
http://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/4876
【特別チケット販売決定!】
◆100席限定セット券
コンドルズ埼玉公演2018新作『18TICKET』&フィリップ・ドゥクフレ/DCA『新作短編集(2017)-Nouvelles Pièces Courtes』(2018/6/29~7/1)のお得なセット券です。*フィリップ・ドゥクフレ/DCA公演詳細はこちら
◆未就学児チケット
6月2日(土)14:00の回のみ、0歳から入場が可能です。
コンドルズ Condors
男性のみで結成されたダンスカンパニー。舞台衣装は学ラン。ダンス、生演奏、人形劇、映像、コントを大胆に展開するジャンル横断的な手法で、独自の世界観に溢れる舞台を創り出す。国内はもとより、これまでに世界約30ヶ国で公演。ダンスだけでなく演劇、TV、ラジオ、映画、ファッションショーへの出演・振付も多数。コンドルズメンバーがボーカルをつとめるバンド計画FF0000も精力的に活動中。2013年秋の東京国体では、開会式典の総合演出を担当した。日本の舞台芸術界で異彩を放つ注目のダンス・グループ。2016年に結成20周年を迎え、20周年記念超特別大感謝公演として、NHKホールで2日間の単独公演を行った。 http://www.condors.jp/
近藤良平(こんどう・りょうへい)
コンドルズ主宰・振付家・ダンサー
ペルー、チリ、アルゼンチン育ち。第四回朝日舞台芸術賞寺山修司賞受賞。NHK教育『からだであそぼ』内「こんどうさんちのたいそう」、NHK総合『サラリーマンNEO』内「テレビサラリーマン体操」などで振付出演。野田秀樹演出、NODA・ MAPの四人芝居『THE BEE』で鮮烈役者デビュー。NHK連続TV小説『てっぱん』オープニング、三池崇史監督映画『ヤッターマン』などの振付も担当。女子美術大学、立教大学などで非常勤講師を務める。愛犬家。
【チケット取扱い】
■SAFチケットセンター
・電話 0570-064-939(彩の国さいたま芸術劇場休館日を除く10:00~19:00)
※一部IP電話からは、ご利用いただけません。
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・埼玉会館(休館日を除く10:00~19:00) アクセス
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・チケットぴあ http://t.pia.jp
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【お問い合わせ先】
SAFチケットセンター 0570-064-939(彩の国さいたま芸術劇場休館日を除く10:00~19:00)
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