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2017/12/04

ハーグ王立音楽院、ヤン・リンケンス校長ワークショップ レポート

10月21日、22日に、S&H留学センター主催のオランダの名門、ハーグ王立音楽院、ヤン・リンケンス校長によるワークショップがありました。このワークショップは、リンケンス校長によるワークショップの他、ハーグ王立音楽院への入学オーディションも兼ねたものです。

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改めてハーグ王立音楽院についてご紹介すると、1825年にオランダ国王ウィレム1世によって設立された、音楽とダンスの高等教育を提供する学校です。世界のバレエ団で通用するダンサーを育成するためのクラシック・バレエやパ・ド・ドゥクラス、ポワントクラスに加えモダンやキャラクターのクラスも取り入れています。ローザンヌ国際バレエコンクールのパートナー校であり、スカラシップ生を受け入れています(元K-Ballet Companyの神戸里奈さんは、ローザンヌ国際コンクールで入賞し、この学校に留学しました)。ネザーランド・ダンス・シアター(NDT)のダンサーやディレクターによるレッスンも週2回設けられているのが大きな特徴です。

<世界的な巨匠のレパートリーを学ぶ貴重な経験>

今回のワークショップは、13~15歳と、16~20歳の2グループに分かれ、それぞれクラスレッスンと、オランダを代表する巨匠ハンス=ファン・マネン作品のレパートリークラスが行われました。

ファン=マネンの作品「Songs Without Words」を学ぶものです。世界中のバレエ団で踊られているファン=マネン作品は、クラシック・バレエのテクニックを使用しつつも、ターンインやオフバランス、上半身、特に腕の動き、床の上での動きなど独特の舞踊語彙を持つ現代的な要素の強いものです。メンデルスゾーンのピアノ曲を使用しているため、音楽性が非常に大きな意味を持ちます。ストーリーのない抽象的な作品ではありますが、その中にも密やかなドラマ性があります。男女のペアで構成されるグループで踊られる作品なので、お互いのアイコンタクトも必要であり、エポールマンや視線などによる表現力も求められます。

リンケンス校長が、作品の特性、ファン=マネン独特の舞踊語彙、音符に乗ることの重要性、歩くという動き一つをとってもエレガンスを表現することなどについて細やかに伝え、指導していきます。16~20歳のグループは、同じ作品を学びますがその中でパートナーリングといった要素も加わっていきます。

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日本のバレエ教育では、コンテンポラリーダンスの教育は不足している面が高く、このようにファン=マネンのおひざ元であるオランダの最高のダンス教育を東京で受講できるという意味でも、非常に価値のあるワークショップでした。クラシック・バレエのテクニックを中心に学んできた受講生たちにとっては、戸惑う面や不慣れな面もあったようでした。が、若い生徒たちは、2日間のワークショップで振付をほぼ完全に覚えて、自分たちの世界を表現できるようになっていたのが印象的でした。

クラスレッスンにおいても、リンケンス校長は内側からのターンアウト、指で床をつかむ感覚を把握するための独特なフラッペ、内腿の使い方、ピルエットの時のアームスの使い方など、細かくそして実践的な指導をしていき、みるみるそれらのコツを受講生たちがつかんでいく様子が見られました。


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とても濃い内容の二日間のワークショップの結果、13~15歳のAグループからは1名、16~20歳のグループからは3名の受講生が、ハーグ王立音楽院の留学許可を獲得しました。


<ヤン・リンケンス校長からのアドバイス>

最後に受講生に向けたリンケンス校長からのメッセージがありましたが、これからバレエを学んでいく人たちにとっては、非常に有意義なアドバイスが得られました。

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<ハーグ王立音楽院の紹介>

この学校はプロフェッショナルのダンサーを育てるための国立の学校です。16歳以下のカリキュラムでは、オランダ語で授業が行われ、一般的な学校の勉強を行いつつバレエ、音楽、ヴィジュアルアーツについて学びます。シラバスがあり、一年間でここからここまで学ぶ、と決められています。この段階では毎年多くの退学する生徒がいます。

6年間の学校を終えると、2年間のバチェラープログラムに進みます。ここでは9時から18時までダンスだけを学びます。バレエ、パ・ド・ドゥ、モダン、ポワント、ピラティス、ヨガなどを学習し、またバレエの歴史やキャリアプランについても学びます。一度入学したら退学させられることはありません。

最終学年には各バレエ団のオーディションを受け、契約を得られたら卒業となります。インターンシップを獲得した場合には学校に在籍しつつ、インターン先のカンパニーで働き、1年後に職を得られた場合には卒業となり、卒業証書を授与されます。バチェラープログラム在籍中に進路変更することになった場合にも卒業証書を得ることで、一般の大学に進学することができます。

<ヨーロッパでプロのダンサーになるために大切なこと>

<身体のケアと健康管理>

ヨーロッパにおいては多くのカンパニーがあり活動する場所があるので、そういう意味では恵まれた環境ですが、同時に多くの優秀なダンサーがおり、オーディションに500人のダンサーが応募して一人か二人しか合格しないというのが当たり前となっています。情熱も大事ですが、身体のケア、健康管理も非常に大事であり、そのためには正しいトレーニングが特に重要となります。正しいトレーニングを行わないと怪我をしてしまうからです。ダンサーの身体は楽器であり、プロになったら20年間踊り続けることになります。よく食べて寝て、休んでウォームアップをすることが必要です。

<英語力と自立できること>

ヨーロッパでダンサーとして活動するには、英語の能力が必須です。ハーグ王立音楽院のバチェラープログラムは英語で行われています。振付を学び分析するにも、公演を観てレポートを書くにも、英語力が必要です。日本からの留学生で、英語ができないために退学となった生徒もいたとのことです。また留学する場合には、この学校には寮がないために一人暮らしをしなければなりません。生徒数は120人と大きな学校ではないのですが、その分スタッフも大人数ではないため、自分で問題を解決する力が必要となります。この学校には現在4人の日本人留学生がいてお互い助け合っているそうです。

<コンテンポラリーダンスを踊ることができること、そして順応性>

ヨーロッパでプロのダンサーとして活躍するには、クラシックもコンテンポラリーも踊らなければならず、ダンスに対して心を広く開かなければなりません。現在ヨーロッパにおいては、クラシック・バレエだけのレパートリーを持つバレエ団はありません。バランシン、キリアン、ファン=マネンなどの作品を踊ることが必須で、オーディションで「ドン・キホーテ」のヴァリエーションだけ踊れればいいということではありません。またインプロヴィゼーション(即興)で踊ることもできなければなりません。新しいタイプのダンスへの順応性が求められています。

本当にプロのダンサーになりたいのか?ヨーロッパで踊りたいのか?と自ら問いかけることが必須となります。自分の生活を自分で管理し、自立しなければなりません。

多くのヨーロッパのカンパニーでは、1年に100公演ほど行い、またいろんな街を旅してまわるツアー公演も行います。オランダ国内だけでも7,8カンパニーあります。ある時は「白鳥の湖」や「ジゼル」、そしてある時にはコンテンポラリーを踊ります。ディレクターが求めているダンサーとは、どこでも機能する健康なダンサーです。

<日本の学生の長所と短所>

日本の学生の長所としては、規律正しい生徒が多く、それはバレエにおいてはとても大事なことです。どんな芸術監督もしつけのきちんとした人を求めています。先生がやっていることを受け入れられて、いろんな振付家と仕事をしなければなりません。順応するだけでなく、切り替えも上手くできなければならないからです。

日本人には、自分は十分上手ではないと思い込んで自信がない子が多いそうです。自分を信じること、ダンサーになりたいし、必ずなれると思うことが大切です。これが好きなこと、やりたいことであり情熱を持っていることだと信じていけば問題は解決されていきます。完璧なダンサーはいませんが、身体は自分たちの楽器なので問題があれば自分で解決して、次のステップにつなげなければならないのです。

※ヤン・リンケンス校長の貴重なインタビュー記事は、後日拙ブログ、そしてS&H留学センターのサイトでお届けする予定です。

**************

ハーグ王立音楽院は、熊川哲也オーチャードホール芸術監督 特別企画 オーチャード・バレエ・ガラ ~世界名門バレエ学校の饗宴~に参加するバレエ学校の一つです。2月11日、12日にオーチャード・ホールにて。この公演では、ワークショップでも学んだハンス・ファン=マネン振付「Songs Without Words(無言歌)」と、イリ・キリアンの作品を踊ります。


なお、S&H留学センターでは、多くのバレエワークショップや海外バレエ学校オーディションが予定されています。
http://shballet.jp/audition_info.html

【12月27日(水)~29日(金)】
国立ミュンヘン音楽舞台芸術大学バレエアカデミー
(ミュンヘン州立バレエ学校)
ワークショップ&オーディション

【2018年1月27日・28日】
ロシア国立ノヴォシビルスク・バレエ学校
   アレクサンドル・シェレーモフ副学長 来日
    ワークショップ&オーディション

【2018年2月23日・24日・25日】
スイス国立チューリッヒ芸術大学 タンツ・アカデミー・
    オリバー・マッツ芸術監督 来日
    ワークショップ&オーディション

【2018年4月4日(水)】
元ベルリン国立バレエ団 芸術監督
ウラジミール・マラーホフ 来日 ワークショップ

特に本格的なワガノワ・メソッドを採用している、ワガノワ、ボリショイ、ペルミと並びロシアトップのバレエ学校であるノヴォシビルスク・バレエ学校のワークショップは貴重な機会といえます。
約20人の外国人生徒が在籍しており(日本人含む)、少人数制の教育、設備も大変充実している学校です。
ノヴォシビルスクバレエ学校についての日本語の詳しい説明
ノヴォシビルスク・バレエの芸術監督はデニス・マトヴィエンコ、元K-Balletの福田昂平さんが在籍しています。


また、2018年4月1日~3日には、
第1回 パシフィック・インターナショナル・バレエ・コンペティション
を開催します。
http://pibcballet.com/
こちらについては、また別途ご紹介記事を書きますね。

ウラジーミル・マラーホフを審査委員長に、シオマラ・レイエス、(元ABTプリンシパル、ワシントン・スクール・オブ・バレエ校長)、ハンガリー国立アカデミーのジュルジ・サカーイ校長、東京シティ・バレエ芸術監督の安達悦子氏などの高名な審査員を迎えたコンクールで、スカラシップも多数用意されています。

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