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2017/06/17

ザ・ダンサー La Danseuse

ベル=エポックの時代に、”サーペンタイン・ダンス(蛇のダンス)”と呼ばれる斬新なパフォーマンスを行い、一世を風靡したダンサー、ロイ・フラー。ロートレックやリュミエール兄弟も魅了し、モダン・ダンスの先駆者だった彼女の前半生を描いた映画が、この「ザ・ダンサー」である。

http://www.thedancer.jp/



アメリカで女優を目指していたマリー・ルイーズ・フラーは、「インチキ医者」という芝居に出演して催眠術にかけられた女性の役を演じたときに、偶然、空気をはらんだスカートで刻々と形を変えるダンスを発見する。ロイと名乗った彼女は研究を重ね、大きな白いスカートを内側から棒で操って、様々な色の照明も用いて蝶や百合の花などを表現した。ロイのダンスは評判を呼び、彼女は単身パリに渡る。ミュージックホール「フォリー・ベルジェール」のマネージャー、ガブリエルにロイのダンスは認められ、そしてパリでは一夜にして大スターに。やがてパリ・オペラ座の舞台に立つチャンスも与えられる。自分のダンスに飽き足らずにさらに研究を重ね、そして自ら育てた若いダンサーたちとも共演するロイ。その中に、野心にあふれ、身一つのダンスで人々を魅了するイザドラ・ダンカンもいた。一方で、肉体を酷使して消耗し、さらに、まだ発明されたばかりの照明で目の病気にもなったロイは、自分は踊りそのものより、特殊効果を使ったスペクタクルとして人気を呼んでいるだけなのではないかと苦悩を深めていく。

冒頭で”実話に基づく”という字幕が出るけれども、実際のところはかなり創作の部分が多くて、そのあたり伝記映画としてはどうなのかというのは感じてしまった。具体的にはまずアメリカでのエピソード、母親との関係などは創作である。そしてギャスパー・ウリエルが演じたルイ伯爵というのは実在していない人物であるし、イザドラ・ダンカンとの関係にしても、相当自由に翻案したというか、実際にはあのような同性愛的な感情などはなかったはずだし、ダンカンをかなり悪意のある描写で描いているところにも疑問を感じる。途中で川上貞奴とおぼしき日本人が登場するが、貞奴と出会ったのはパリ万博であって、パリ・オペラ座ではない。人間関係の描写については、あまり演出も冴えていない作品ではある。



監督のステファニー・ディ・ジューストはもともと写真家だったということもあり、ビジュアルイメージの表現に関してはとても才能を発揮した。何より、ロイ・フラーをスターに押し上げたサーペンタイン・ダンスの映像表現は非常に美しく、大画面の中で衣装が花や蝶のように大きく花開いたり、魔法のように刻々と形を変えていく様子を観るだけでも、まるで夢の中にいるように幻惑され、この映画を観る価値はあるのではないかと感じた。また、ロイ・フラー役のソーコは大熱演。ロイ・フラーはかなりしっかりとした身体を持っていた人ということで、説得力のある肉体を彼女自身もつくりあげていたし実際にダンスを自分で踊っている。また、自分の芸術を追及するために一心不乱に研究を重ね、舞台装置や衣装も自分でデザインして製作し、まだ登場したばかりの電気照明を工夫を凝らして取り入れていく様子はしっかりと描かれている。新しいダンスを作り出すことに取りつかれて、身体も限界まで酷使し、失明の恐怖にもとらわれて苦悩する姿は心を打つ。実際には不器用で人見知りなフラーという人物像もしっかりと体現していた。

アメリカ時代のエピソードで、母親との問題があって休演している間に別のダンサーに勝手に作品を踊られてしまうというものがあったが、フランスならダンスも著作権を登録できるということが、フラーがフランスへと渡った理由として描かれている。最後の方で、ついに彼女のサーペンタイン・ダンスの著作権が認められたということが、一つの勝利として描かれているのは印象的だった。

一方、イザドラ・ダンカン役のリリー=ローズ・デップが登場するのは、物語も中盤過ぎてからのこと。非常に野心的な女性で不敵な笑みを浮かべたこの映画のダンカンは魅力的ではあるけれども、描かれ方としては一面的で、ソーコ演じるロイ・フラーの説得力の前では取るに足らない存在にしか見えなかった。(ガルニエの中で薄い衣装一枚で人々を魅了するダンカンのダンスが現れるけど、踊りそのものは別のダンサーによって吹き替えられている)

最初ロイ・フラーのパトロンとして現れて彼女の渡仏に力を貸し、パリではフラーの稽古場を提供するルイ・ドルセ―伯爵は実在の人物ではないが、ギャスパー・ウリエルが独特の病んだような繊細さで演じていて、作品に陰影を与えている。また、ロイの才能を見抜きマネージャーとして献身的に彼女を支えるガブリエル役のメラニー・ティエリーもいい。

光と陰影、衣装の表現、野外撮影などの美しさは、さすがミュージッククリップ、そして写真家出身のステファニー・ディ・ジューストの作品だけのことはある。ストーリーや脚本に疑問を感じるところはあるけれども、とにかくダンスシーンの幻惑されるような見事さと撮影の美しさ、ソーコの熱演もあり映画館のスクリーンで観る価値はある。最後の方の鏡のダンスのシーンは実際にオペラ・ガルニエで撮影されたとのことだ。

監督 ステファニー・ディ・ジュースト
キャスト ソーコ、リリー=ローズ・メロディ・デップ、ギャスパー・ウリエル、メラニー・ティエリー
作品情報 2016年/フランス・ベルギー・チェコ/108分受賞
ノミネート 第69回カンヌ国際映画祭 ある視点部門正式出品
Bunkamuraル・シネマ、シネスイッチ銀座にて公開中 

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