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« コンドルズ 埼玉公演2017 新作 『17's MAP』 | トップページ | イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)キャスト変更 »

2017/05/15

映画「ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」記者会見

7月15日から公開される映画「ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」のプロモーションのため、セルゲイ・ポルーニンが来日し、記者会見が行われました。

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ポルーニンさんは、9歳の時に初めて日本に来たと伺っています。その時の来日の理由は?

「9歳の時、キエフ・バレエ学校の生徒の時に、交換留学生として寺田バレエアートスクールと共演しました。キエフからは6人の男の子が選ばれました。キエフ・バレエのプリンシパルと日本人の主役の後ろでコール・ド・バレエとして「ジゼル」で踊りました。その時のプリンシパルを務めたのが、寺田宣弘さんでした」

映画「ダンサー」は、アメリカ、イギリスで公開され、その後「プロジェクト・ポルーニン」という自身のプロデュース公演があり、そののち日本で公開となります。日本公開に向けてのメッセージ。

「実はこの映画が完成する前に一番最初に手を挙げてこの映画の配給権を買ってくれたのは日本でした。監督は、「日本は本当に入るのが難しい市場なんだ」と言っていたものですから。それを聞いてスタッフ共々興奮したとともにやる気が盛り上がりました。高揚感のあるまま、最後まで一気に映画を作りきったのです」

「プロジェクト・ポルーニン」の具体的な活動について。ダンサーに対するサポートが足りないと考えられていると思いますが、バレエ界における問題点は?

「自分自身、「テイク・ミー・トゥ・チャーチ」を踊ってラストダンスにしてこの業界をやめようと思ったのは、もう少しましな業界、もう少し成熟した業界に移りたいとその時思ったからです。「テイク・ミー・トゥ・チャーチ」を撮影する時に時間がたっぷりあったのです。時間をかけて熟慮して、自分がこれからどうしたらいいのか、立ち止まって考えることができたのです。バレエに対して何が不満だったのか、やはりそれを考えたときに、今回のラストダンスを踊るときに強さを身につけることができました。いろんなことを考えることができて。さらに映画が出来上がってからも、この映画を通してもリサーチや旅といったものを経て、傘のようなものを作りたい、ダンサーたちが前に進むときにさしてあげられるような、雨をよけてくれるような傘、そしてダンサーたちが声を上げることができるような環境、観客がより多くダンサーたちを観ることができる、触れ合うことができる環境、つまり大事なことはバレエ、ダンスということではなくダンサーという一人の人間が大事なのではないかと。劇場、カンパニー、衣装といったものではなくて、生身の生きた人間の面倒を見る人が必要なのです。そのためのマネージャー、興行主が。

今のバレエ業界はたった一人の芸術監督によって90人から一人が選ばれて「お前がこれを踊れ」と言われてしまい、それをサポートするシステムがないわけです。俳優やスポーツ選手だったら、オペラ歌手だったら、その選手なり俳優を支えるチームが作られます。それぞれの演目に合わせてチームが作られる、そういうのが一切バレエにはないので、そういったものを作り、それをそのままほかのダンサーたちにも当てはめてあげたい。一種のインフラ整備というべきようなものです。そういった形で、広報担当者、経理担当などが必要となってきます。そういったきちっとしたシステムを作ってインフラ整備をしたいと思ったのが、今回のプロジェクトの目的です」

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ダンス界には様々な問題がありますが、その中でダンサーを目指す若い人へのアドバイス、メッセージは?

「バレエを学んでいる学生に対しては、とにかくたくさん練習してください、と言いたいです。しっかりと勉強してください。ミッキー・ロークと話している時に彼が言ったのは、本当に一生懸命努力した人のみが一流になれる。その努力は報われる、と。僕自身も非常に頑張ったお陰で、学校を出た後で踊りを楽しむというところまで行くことができた。劇場で踊るときに基本ができているから、演目を楽しめるし演技ができるのです。その過去の経験があるから演じるのも次の段階へと進むことができるのです。一生懸命やる、努力するというのはすべてにつながります。学校時代にはとにかく一生懸命やってください。

また、自分に正直でいるということ。自分は何者であり、何になりたいかを見失わないでください。先々で社会や周りの人たちやマスコミや噂に自分が破壊されてしまいそうな場面に出会うかもしれません。そういう時に信念があり、自分が何をやりたいかがしっかりとあれば、自分を見失わないと思います。そして勇敢であってください。次のステップに行くために打破する勇気を持ってください。新たに旅立つ勇気をもって、未知の世界へとどんどん行ってほしいと思います。

僕の好きなイメージは飛行機が離陸して上がっていく時のものです。ある程度の高さまで上昇すると降りて行きたくなりますが、その高さを頑張って保って維持していくことが好きです」


改めて、なぜ踊りつづけようと思ったのでしょうか?

「先ほど話したプロジェクトのように、何かをやればできる、変えられるという思いがあったからです。後ろに置いてくるのではなく、やりたいことをやって、やったことで変えられると思ったから「プロジェクト・ポルーニン」が一番の理由だと思います」


映画の中で登場するダンス作品で特に気に入っているものがあったら教えてください。どのようなカンパニーに客演したり、どういった振付家と作品を創ったり、どんなダンサーと共演したいですか。

「テイク・ミー・トゥー・チャーチ」のデヴィッド・ラシャペルがまた何かを撮るときにはまた一緒にやりたいという思いはあります。まだ未知数のところがありますが、今後また機会があれば嬉しいです。演目で言えば「ジゼル」には愛着があります。「マイヤリング」も好きですが、最初から好きだったわけではなくて、何回も踊っているうちに好きになりました。振付家については、クラシック系の振付家は多くが亡くなってしまいました。なので今は思いつく人がいません。これを探していくというのが自分の旅路になると思います。


ダンサーとしての夢、目標は何でしょうか。タトゥーについてはどのような想いがありますか。そして今抱えている苦悩は?

「「タトゥー」は自由を意味しています。自由人の証のようなもので、仕事とか生活と言った様々な制約から自由であること。やりたいことができる証という意味を持っています。見た目も好きだし、タトゥーを入れる過程も、刺青師と話すことも、タトゥーパーラーの雰囲気も全部好きでした。

ダンサーの夢としては、先ほど言ったように業界を変えていくということが一番大きな夢です。また更に素晴らしい振付家と出会って、ディレクターと出会い、素晴らしい音楽、そういったものと一体となった作品を創り上げることができたとしたら、それはまた素晴らしいと思います。苦悩についてですが、僕自身、心地よい環境にいる時にはこれは違う、と感じます。つまりそこに安住してはいけない。そういう時には次に行かなければならない。創造するためにもがく、戦おうと思います。戦う相手がいると人間は強くなります。安住してはいけない、戦い続けるというのが僕のパフォーマーとしての在り方なので、苦痛や苦悩はあります」


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この映画を観たときの印象は?作品の出来に満足していますか?

「この作品は当初観たくなかったので、編集作業を見るのも拒否しました。でも、デヴィッド・ラシャペルに上手く騙されて観たのです。でき上がった作品は質が高く良くできた映画だと思います。ただ自分個人としては、感情のジェットコースターに乗せられた気分でした。ある意味、自分にとって観ることが大変だったんです。でも観ることでいろいろ思い出しました。両親の僕に対する愛とか、友情の大切さとかを再認識させられて、それは素晴らしい経験でした」


ロンドンで「プロジェクト・ポルーニン」の公演がありましたが、日本でポルーニンさんの踊りを観る機会はいつあるのでしょうか?ロイヤル・バレエの先輩の熊川哲也さんは、若くして自らのカンパニーを立ち上げてますが、日本のバレエシーンについてどう思いますか?

「「プロジェクト・ポルーニン」については、自分が「これだ」と思う自信がある演目ができたらぜひ日本でも踊りたいと思います。日本では熱心なバレエファンがたくさんいるのは知っています。作品を引っ提げてツアーをする時には必ず日本は含めたいと思っています。熊川哲也さんについては、彼の踊りは何回も観たことがあるし、ニジンスキーより高く跳んでいたと思います。あんなに高く跳べた人は他にいないと。彼こそ、先ほど話したインフラ整備、バレエ学校まで作り、ダンサーたちの給与制度の改革も行われています。彼は男性のダンサーのための作品も考えているということで、バレエ界にとってのインスピレーションになっていると僕は認識しています」


俳優業に進出して、『オリエント急行殺人事件」のように大きな映画に出演を果たしていますが、俳優業に進出したことで、ダンサーとしての活動はどのように変わっていくのでしょうか?俳優としての目標は?

「演技の経験のみならずすべての人生の経験は、パフォーマーにとっては糧となると思います。いろんなことをより多く経験すればするほど、それだけ多く観客に語るべきものを持つことができると考えています。その中で、演技というものを僕は真剣に受け止めています。僕の中で、演技者となるのは多少の運も必要だと思います。努力だけではできません。しかしながら、より良い俳優になりたいということを強く信念として持っています。単なる、演技もできるダンサーではなく、きちんとした演技者としてのものを持ちたいと思っています。だからといってダンスを辞める気はまったくありません。踊るということもとても大事だし、先ほどの「プロジェクト・ポルーニン」で業界はいい方に変えて行けると思うし、変えるべきだと考えています。僕自身、表現するということを何よりも愛しています。踊るというのはその表現の一つでもあるわけです」


自分の舞台を親に見せないというエピソードが映画の中にありましたが、最後の方でご家族がロシアであなたの舞台を観ます。これはどのような心境の変化でしょうか。

「長い旅路を経て、この旅路そのものがセラピーのような存在となりました。これを通して成熟したことで、今まで目を背けて来たことを直視できるようになったので、親に会えるようになったのです。両親に会って話をして招くことができるようになったと。怖くて見られなかったというのが成長していなかった時の自分の姿で、やっと成長することによって現実を直視して自分の問題を観ることができるようになったのです。残念ながらダンサーというのは本当に厳しい仕事なので、日々スタジオの中で練習に明け暮れて、なかなか成熟する機会というのがなかったりします。その中で僕は変わったと思います。

学校時代には、学問などいろんなことを教わります。でも人生について教えてくれる人は誰もいないし、人生について教える科目もない。テレビを見ていても人生について教えてくれる番組はなかなかありません。そういう中で、社会では若い人を導いてくれる人が減っています。豊富な人生経験を持った人が、いろんな道があるんだよと指し示してくれることがなかなかありません。そのため、僕を含む若い人たちが困難な厳しい道を歩むことになってしまい、しなくていい苦労をすることになります。ライフレッスンというのがあってもいいと思います。部族社会の中では、儀式があって、たとえば狩猟の儀式で成功すると一人前の大人として認められます。西洋文化の中には大人になるための登竜門的なものはありません。自分をだましてしまって、現実を直視しないで生きてしまう人も多々いると思います」


映画の中では、公演の前に強烈なドリンクを飲まれていましたが、今はパフォーマンスの前の心境はどうなっていますか?

「昔ほどではないけれどもナーバスになることはあります。でも考え方がとても変わって、舞台の上こそが僕のいるべきところで、舞台の上が家だと思うようになってあの当時のように神経質になることはなくなりました。強いドリンク剤を飲んでいたのは、ベストのものを出しつくしたい、自分の持っている最高のものを見せたいと思ったからです。今の僕の考え方としてはそういったものの助けを借りなくても、最高のものを出さなくてはいけないと思っています。自分の力だけで最高のものを見せたいです」

韓国では、この映画は2週間前にアートシアター30館で劇場公開され、9日間で1万人動員するなど好評で多くの人生に迷う若い人たちを勇気づけました。セルゲイさんは、今は楽しく幸せに踊っていますか?

「人生ですから、いい時も悪い時もあります。その中で学んだのは、ポジティブに物事を見る術を身につけたことです。良いエネルギーを出す、それを皆さんとその良いエネルギーを交換できるような。内側からそういうエネルギーは生まれてくるものですから。さらにはどういう風に物事を考えるかによってそれはできると思います。もちろん、内面での格闘というのはりますが、踊ることは楽しんでいます。プラスに考えられるようになりましたし、踊ろうともう一度決心して、努力して踊っているから、踊ること自体は楽しんでいます。もちろん楽だということではないですが」

****

「バレエ界のバッドボーイ」という異名をとるセルゲイ・ポルーニンですが、素顔は思慮深く、非常に誠実でひたむきな印象を与えました。自分の辛かった、迷い続けた経験を生かしてダンサーたちにより良い環境を提供したいという熱い思いも伝わってきました。『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』、バレエに興味を持つ人のみならず、自分の人生について悩み苦しんでいる人や、家族との葛藤を抱えている人にもぜひ観ていただきたい、多くの人の心に訴える作品です。才能があることが呪いとなってしまい、心が折れて目標を見失った若者の苦悩と再生の軌跡です。ダンサーというのはいかに厳しく孤独な仕事であるかということも伝わってきます。もちろんセルゲイの圧倒的なダンスパフォーマンスもたくさん収められています。


東京芸術大学でのパフォーマンスイベント、箭内道彦さんと。
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http://www.uplink.co.jp/dancer/

2017年7月15日(土)より、Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:スティーヴン・カンター
『Take Me To Church』演出・撮影:デヴィッド・ラシャペル
(2016年/イギリス・アメリカ/85分/原題:DANCER) 
配給:アップリンク・パルコ

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このDVDの中でセルゲイ・ポルーニンは、タマラ・ロホと「マルグリットとアルマン」で共演しています。しかしながら、残念ですが今年6月にロイヤル・バレエで上演される「マルグリットとアルマン」へのゲスト出演を、セルゲイはキャンセルしてしまいました。

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コメント

こんにちは、みかんと申します。
いつもnaomi様の記事、楽しく拝読しております。
いつも貴重なお話、ありがとうございます。
「マルグリットとアルマン」をテレビで見て以来、ポルーニンのファンです。
6月にロイヤルに客演すると聞いて楽しみにしていたのですが
キャンセルだなんて、残念です。
どうしたのでしょうか?ちょっと心配です。

今日は、お願いがあってコメントしております。
数あるポルーニンの来日インタビューの記事の中でも
naomi様の記事が一番いいと思うので
私のブログでリンクしてご紹介したいのですが、よろしいでしょうか?
コメントでご返信していただけると幸いです。
どうぞ、よろしくお願いいたします。

追伸
先ほど、同じコメントを途中で誤送信したかもしれません。
お手数ですが、手違いですので、削除してください。すみません。

みかんさん、こんにちは。

お返事が大変遅くなってしまって申し訳ありません。火曜日から39度の熱でダウンしておりまして(インフルエンザではありません)PCに久しぶりに向かいました。

もちろん、リンクしてくださってOKです!ありがとうございます。

ロイヤルの「マルグリットとアルマン」のキャンセル、心配ですよね。一説には、共演する予定だったナタリア・オシポワと別れたからという噂もあるのですが、真偽は不明です。とても真摯な若者と感じましたし、頑張ってほしいと思います。

Naomiさま
こんにちは、お返事ありがとうございます。
39度の発熱だなんて、大変でしたね。
体調がすぐれない中、お返事を頂き恐縮しております。
くれぐれもお大事になさってください。

早速、記事を書いてリンクさせていただきます。

セルゲイ・・・私も頑張ってほしいです。
舞台上での彼のパートナーに対するサポートが
私は素晴らしいと思っているので
きっと、やさしいいい人なんだと思っています。
プロジェクトポルーニンの成功を祈るばかりです。

それでは、また、記事を楽しみにしています。

ありがとうございました。

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