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2017/05/07

Noismルーマニア公演報告会

メディア関係者に向けてNoism1最新公演、新作『Liebestod―愛の死』/レパートリー『Painted Desert』の制作発表と、ルーマニア公演の報告会が開催されました。Noism芸術監督の金森穣さん、副芸術監督の井関佐和子さんが出席しました。

ちょっと長くなってしまうので、まずはルーマニア公演の報告会についてのレポートをします。
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Noism劇的舞踊『ラ・バヤデール―幻の国』 2017.3.30
ルーマニア・ブカレスト公演 ブカレスト国立劇場

Noism1『マッチ売りの話』+『passacaglia』 :2017.4.5(水), 6(木)
ルーマニア・シビウ公演 ラドゥ・スタンカ国立劇場

Noismは、2017年3月27日より4月8日まで、ルーマニア公演を行いました。ルーマニアの首都ブカレストでは、『ラ・バヤデール―幻の国』を上演し、『マッチ売りの話』+『passacaglia』はシビウ国際演劇祭でも知られるシビウで上演されました。Noismにとってルーマニアでの公演は初めてのことでした。その報告から会見は始まりました。

金森穣
「Noismが設立されて14年が経ちますが、2007年から海外公演を行っています。ルーマニア公演は、Noism史上最も困難なツアーでした。ブカレストとシビウの2か所で公演したのですが、ブカレストは仕込みが間に合わず徹夜することになりました。開演時間も30分遅らせることになり、舞台が開かないのではないかと思うほど困難な公演でした。海外公演の場合には、現地の劇場にこういうものが必要です、とやり取りをするのですが、今回はなぜか、あると言っていたものがない、なら代わりにこれでやるか、と提案してもそれはできないと言われたり。海外公演だと大なり小なりこういうことはあるのですが、今回ほど大変だったことはありませんでした。

おかげさまで反響はものすごく良く、舞台評はとても深いレベルで私達の活動、創作についての姿勢を評価してくださったので、大変さが報われたと思いました。その後のシビウは、演劇祭をやっているところなのでスタッフも協力的だったのでいいツアーでした。

ブカレストは大変だったからこそ、劇場に何らかの形でもう一度戻ってリベンジしたい。凄くいい評価を得たものの、そこまで万全の照明とか美術とかを見せることができなかったので、その悔いが残ります。

そこから同時に、パフォーミングアーツにおいて、何が重要なのか学びました。照明とか美術などが完全に表現されることで、表現されるものがあると。ただ舞踊家たちがその瞬間、どれだけのエネルギーをかけてその瞬間を生き切れているか、その核となる部分がお客さんを感動させるのだと思うし、それがブカレストのお客さんに届いたと思っています。これからも細部にわたって、より高いレベルのものを舞台上に表現していきたいと思いますが、とても重要なものを学ぶ良い機会でした」

井関佐和子
「私の舞踊家人生の中でも、これほどぶっつけ本番な舞台はありませんでした。新人がたくさんいたので、彼らはなるべく舞台に立たせてあげたいという穣さんの想いもあったのですが、ダンサーには限られた時間しか与えられなくて。穣さんに「任せてください」と出て行ったのですが、それは口から出て来た言葉で、内心は、こんなに緊張するのかと思ったくらい緊張して舞台に立ちました。

もちろん自分はこの作品を良く知っていて分かっていて踊りながら照明が、などいろいろ感じていたのですが、終わった時に、お客さんが凄い熱気と共に熱い視線を送ってきてくれるのを感じました。ダイレクトでとてもわかりやすいのです。終わった後のレセプションなどでも、駆けつけてくれる感が日本と全然違う感じでした。自分自身辛かったのですが、日本ではなかなか味わえない称賛を頂いたり、自分自身が何を心に持って舞台に立っているかということをすごくわかってくれていました。見抜かれているというか。辛い分、自信がさらについたし本当に嬉しかったです。穣さんがおっしゃったように、何が舞台にとって重要なのかを改めて感じました」

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ルーマニアでの全3回の公演はすべて満席で、客席はオールスタンディングオベーションとなるほどの熱い反応がありました。各公演前に行われた記者会見では、作品の内容はもちろん、Noismメソッドなど訓練方法についても質問があり、カンパニーとして注目度の高さがうかがえたとのことです。

Q.観客層はどのような人たちでしたか?

金森「老若男女という感じでしたが、ブカレストはオペラハウスで国立劇場なので、バレエとか海外から来た大きな公演が上演されるような劇場なので、少しお洒落をした方たちが多いです。シビウは小さい劇場でしたし、演劇祭を行うようなところなので若い人が多く、もう少しカジュアルな客層でした。作品が違ったということもありましたが、ごちらでも好評でした。シビウは演劇祭をやっているので、見巧者が多かったと感じました。レセプションとか、終演後に交わす言葉の中に、あそこまで理解してくれているんだ、あそこを評価してくれるんだと言うところがいくつもあり非常に嬉しかったです。報われた気にはなりますよね。身体のトレーニング方法とか、メソッドのオリジナリティとか、そういう集団性みたいなものに、ものすごく感銘を受けてくれていて。

ブカレストにはNoism1のほかNoism2も行っていて、2は若くてまだプロの舞踊家になっていませんが、ルーマニアの人達に言わせれば彼らはすべて一流の舞踊家としてそこに立っているということを言ってくれるくらい。日本では良く揃っているのは当たり前と思われているのですが、それは実は当たり前のことではない。それもただ統率が取れているという次元ではなくて、身体の重心の位置とか、身体表現としての芯が文化的にとても培われていると。「クラシックバレエ的な要素」と向こうの人が言ったときには、いわゆる100年前に日本にクラシックバレエが入ってきたものとは意味合いが違うんです。それはやはり感じるし、逆に問題意識を、極東アジアで、日本人で持っているということにとても感銘を受けてくれました。下手したらルーマニアでバレエをやっている人より、バレエを愛しているのではないかと思ってくれたような」

Q。『ラ・バヤデール』は満州を舞台にした作品ですが、そのあたりの背景について現地ではどこまで理解されていましたか?

「『ラ・バヤデール』は台詞のある作品で、日本語で演じていました。大半のお客さんは字幕を出していたとはいえ、舞台を観ながら何かを感じているんです、「史実に基づいているんですよね」とか。ある高名な評論家の方に、「歴史的な考察を踏まえ、今の現代社会の問題意識と照らし合わせてしっかりとした政治的なメッセージも入っている」という感想をいただきました。なので届いてはいるんですよ。その人がどこまで史実的なことにこだわっているかは別にして。私たちも平田(オリザ)さんとこの作品を作るときに、反省をしようとかそのことがいいとか悪いとか言うことが私たちの目的ではなくて、ある種普遍的に、いつの時代でも人間としてありうること、まさに今社会がこのような状況になっている時において考えるべきこと、題材として枠組みを用いているのです。だから普遍的なものであるべきだし、問いかけるものです。我々がこうです、というものではないという認識を向こうが受け取ってくれているので、それは嬉しいですし、励みになりますね」


『マッチ売りの話』でも客席で泣いている方はいました。無言劇で仮面を使っていますよね。その中で感情表現をしっかり読み取って。で、意外と『パッサカリア』にどのようにつながっているか、違和感なくストレートに受け止めてくれて、それで涙してくれている人がいらっしゃったので。ダブルビルという感じが日本ほどしなかったです。日本から来ているということで、異文化から来るものとして、何が起こってもとりあえずそのものとして受容すると。大前提としてなんでこの二つ、という風には入らないで、ボーンとそのものをまずストレートに受け止めて、自分が何を感じてそこからどんな問題意識を感じるかという風に観ている気がします」

Q.今回の公演は国際交流基金の主催によるものですが、ルーマニアで行われたのはなぜでしょうか。

「ルーマニアに決まった経緯としては、国際交流基金の方から、いろんな各地の大使館とか劇場に問い合わせをしていく中で、大使館の方では、ルーマニアでは難しいのではないかという話もあったのですが、ルーマニアのJTIのジルダさんとシビウの演劇祭のキリアックさんから強い要望がありました。Noism呼べないんじゃないかという話になった時に、ジルダとキリアックでNoismの資料を見て、これは絶対に呼ばなければだめだと彼らが強く推したのです。キリアックは、シビウの演劇祭と絡めて無理やりでも呼びたいと。また今度の6月には、ワークショップでも来てほしいというラブコールもあります。独自の訓練法とか、洋の東西をどのように掛け合わせて身体に向き合っているのかということに対してものすごく関心があって、それをシビウやルーマニアの舞踊家に教えてほしいと。今は調整中なのですが」


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クラシック・バレエの伝統があるブカレストと、ヨーロッパ3大演劇祭にも数えられる著名なシビウ国際演劇祭のシビウで、Noismの斬新な作品が大好評を得たのは非常に大きな意味があると感じられます。日本のバレエやダンスカンパニーで海外公演を行うところはないわけではないのですが、Noismのようにバレエをベースにしながらも独自のメソッドを持ち、演劇性も高いオリジナルの現代作品を上演するカンパニーで海外公演を行うところは少ないでしょう。金森穣さんの振付、そしてNoismの高いクオリティのパフォーマンスを日本、そして世界中の多くの観客に観てほしいと切に思います。

Noism1 
新作『Liebestod-愛の死』
レパートリー『Painted Desert』
演出振付:金森穣(愛の死)、山田勇気(Painted Desert)
出演:Noism1
---------------------
【新潟公演】
日時:2017.5.26(金)19:00、27(土)17:00、28(日)15:00 ※全3 回
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉
料金:一般 S席 4,000円、A席 3,000円
U25 S席 3,200円、A席 2,400円(全席指定)
※U25=25歳以下対象チケット
▼公演詳細
http://noism.jp/npe/n1_liebestod_pd_niigata/
---------------------
【埼玉公演】
日時:2017.6.2(金)19:00、3(土)17:00 、4(日)15:00 ※全3 回
会場:彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉
料金:一般 5,500円、U25 3,500円(全席指定)
※埼玉公演のU25はさいたま芸術劇場のみ取扱い。枚数制限あり
▼公演詳細
http://noism.jp/npe/n1_liebestod_pd_saitama/

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コメント

詳細な報告を読ませて頂き、感謝です。
ルーマニアまでは行けませんでしたが、
国民性の違いや
言葉の壁を越えて大きな感動が伝わったことなど、
臨場感をもって伝わってきました。
丁寧な採録に頭が下がります。

しもしんさん、こんにちは。

報告会の内容、本当にとても面白いものでした!現地に行かないとなかなか感じられないことですが、この報告を聞くと、やはり臨場感があって、国は違って言葉が通じないことがあっても、素晴らしい芸術は国境も文化も越えるんだな~と思いますよね。金森さんの話は本当に面白いので、やはりこれはできるだけ彼の言葉そのままを伝えたいと思って、ほとんど編集せずにそのまま載せています。

「Liebestod」楽しみですよね!待ちきれません。

とても興味深く読ませていただきました。オリジナリティに富んだダンスが現地でも受け入れられたことは嬉しいですね。
ただブカレストの劇場は以前吉田周平くんが所属していた時のゴタゴタが相変わらず続いているんでしょうか。残念なことです。

Shingoさん、こんにちは。

「ラ・バヤデール」はここにもあるように台詞もある作品だし、舞台を日本占領時の満州に置くなどの設定がある作品ですが、実際非常にオリジナリティがあるとともにクラシック・バレエのラ・バヤデールをうまく換骨奪胎していて見ていて興奮した一作でした。やはりすぐれた作品は国境や文化を超えるんだなと思った次第です。また観てみたいです。
確かに、ブカレスト歌劇場は、バレエ団のゴタゴタが昨年ありましたが、そういうのも関係していそうですよね…。ラドゥ・スタンカ劇場は昨年、「オイディプス」という演劇が来日したので観に行ったのですが、非常に面白くて、演劇においてはルーマニアはとても進んでいると思いました。

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