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2017年5月

2017/05/31

ブノワ賞の受賞者発表

バレエ界のアカデミー賞とも呼ばれるブノワ賞の受賞者がモスクワで発表されました。

女性ダンサー
リュドミラ・パリエロ (パリ・オペラ座バレエ) アザー・ダンス
マリア・リチェット (ウルグアイ国立バレエ) オネーギン

男性ダンサー
ユーゴ・マルシャン (パリ・オペラ座バレエ) ロミオとジュリエット
デニス・ロヂキン (ボリショイ・バレエ) ラ・バヤデール

振付家
クリスタル・パイト「ザ・シーズンズ・カノン」パリ・オペラ座バレエ

ノミネートのリストはこちら
http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/29560/30328/87205990

日本人では倉永美沙さんがノミネートされていましたが惜しくも受賞には至りませんでした。

しかし3月のパリ・オペラ座バレエ来日公演でのリュドミラ・パリエロ、ユーゴ・マルシャンの素晴らしいパフォーマンスは記憶に新しいところですし、今週末から始まるボリショイ・バレエの来日公演ではロヂキンの踊りも観ることができますね。

マリア・リチェットはABTのソリストとして活躍していましたが、フリオ・ボッカがウルグアイ国立バレエの芸術監督に就任したのをきっかけに故国ウルグアイに帰ってプリマとして活躍しています。



2017/05/29

ローザンヌ国際バレエコンクール、6/3に放映

恒例のローザンヌ国際バレエコンクールのファイナルが、6月3日土曜日、午後3時よりNHKのEテレにて放映されます。

今年のスタジオゲストは元バーミンガムロイヤルバレエのファーストソリスト、山本康介さんです。


http://www.nhk.or.jp/hensei/sp/program/article/?area=001&date=2017-06-03&ch=31&eid=19630&f=3022http://www.nhk.or.jp/hensei/sp/program/article/?area=001&date=2017-06-03&ch=31&eid=19630&f=3022

2017/05/26

イングリッシュ・ナショナル・バレエのエマージング・ダンサーコンクール、金原里奈さんとアイトール・アリエッタが受賞

イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)のエマージング・ダンサーコンクールは、6人の若手ダンサーが競うものです。

https://www.ballet.org.uk/production/emerging-dancer/

現地時間25日の午後7時から生中継されました。

出場したのは、昨年に続いての金原里奈さん、イザベル・ブラウワーズ(3回目の出場)、マディソン・キースラー(2014年に続いての出場)、アイトール・アリエッタ、Guilherme Menezes、エミリオ・パヴァンです。

こちらに出場者の映像をまとめたチャンネルがあります。

そして結果が発表され、金原里奈さんとアイトール・アリエッタが受賞しました。この二人は、古典部門で組んで「エルメラルダ」パ・ド・ドゥを踊っています。現代部門では、金原さんはレイモンド・レベックの「Blind Dreams」を踊りました。


コールドバレエ賞は、サラ・クンデ


観客賞;ジョージア・ボールド (この二人はこのコンクールとは関係なし)

プログラム
https://issuu.com/englishnationalballet/docs/enb_emerging_dancer_2017_programme

金原里奈さんは皆さまもご存知と思いますが、プリンセス・グレース・アカデミーで学び2015年のローザンヌ国際コンクールで受賞してイングリッシュ・ナショナル・バレエに入団。2016年にはヴァルナ国際バレエコンクールでも銀賞に輝いています。「くるみ割り人形」のクララ、メアリー・スキーピング版「ジゼル」のドゥ・ウィリとペザントを踊っています。7月のENB来日公演では「海賊」でギュリナーラ役を踊る予定です。

アイトール・アリエッタは、スペイン出身。スペイン国立ダンスカンパニーを経て2016年にジュニア・ソリストとしてENBに入団。アクラム・カーンの「ジゼル」でアルブレヒト役、「くるみ割り人形」のくるみ割り人形役、メアリー・スキーピング版「ジゼル」のペザントを踊っています。

おめでとうございます。

2017/05/25

ボリショイ・バレエの2017-18シーズン

まもなく来日公演が始まるボリショイ・バレエですが、2017-18シーズンが発表されています。

http://www.bolshoi.ru/upload/medialibrary/a65/a655d67a780f3e199a03324fbbbdf031.pdf


新作としては、アレクセイ・ラトマンスキー振付の「ロミオとジュリエット」 これは、2011年にナショナル・バレエ・オブ・カナダで初演された作品です。2017年11月22日初演、映画館でも中継される予定です。

また、ジョン・ノイマイヤー振付の「アンナ・カレーニナ」もレパートリー入りします。今年の7月にハンブルグ・バレエで初演される予定で、ハンブルグ・バレエ、ナショナル・バレエ・オブ・カナダとの共同制作です。2018年3月23日初演

セルゲイ・ヴィハレフが復元した「コッペリア」も初演されます。2017年12月14日初演。

イリ・キリアンの「忘れられた土地」(音楽:ブリテン)がレパートリー入りします。2017年11月2日初演、ロビンスの「檻」とランダーの「エチュード」とのミックス・プロです。


DANCE INVERSIONというフェスティバルが開催され、モンテカルロ・バレエ、マルセイユ・バレエ、チューリッヒ・バレエ、ジェシカ・ラング・ダンスのほか、タンゴやフラメンコ、コンテンポラリーのカンパニーが招聘されて、9月25日から12月3日まで繰り広げられます。

ツアー公演としては、2018年3月に中国、北京で「海賊」と「パリの炎」(オペラの公演もあり)、2018年5月に韓国、ソウルで「ジゼル」、2018年7月にカリフォルニア州コスタ・メサで「じゃじゃ馬馴らし」と「現代の英雄」が上演されます。

2018年5月31日と6月1日には、マリウス・プティパ生誕200周年を記念してのワールド・バレエ・スター・ガラ・コンサートが開催されます。

また、プティパ生誕200周年記念で、2018年夏にラトマンスキー、ヴィハレフ、ブルラーカの3人の振付家がそれぞれプティパ作品(未定)1幕ずつを復元するというトリプルビルも予定されています。

ボリショイ・バレエのシネマシーズンについては、先日お知らせしたとおりです。
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2017/03/2017-18-2f45.html

「海賊」10月22日 中継(新収録)
「じゃじゃ馬馴らし」11月26日 再上映 2016年1月24日公演
「くるみ割り人形」12月17日 再上映 2014年12月21日公演
「ロミオとジュリエット」1月21日 新制作・中継(新収録)
「パリの炎」3月4日 新制作・中継(新収録)
「ジゼル」 4月8日 再上映 2015年10月11日公演
「コッペリア」6月10日 中継(新収録)

新作で全幕3作品を持ってくるというのは流石のボリショイの底力と言えることでしょう。来日公演もとても楽しみです。

ボリショイ・バレエ2017来日公演
http://www.japanarts.co.jp/bolshoi_b2017/theatre.html

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2017/05/24

シュツットガルト・バレエの2017/18シーズン、退団者

シュツットガルト・バレエの2017/18シーズンが発表されています。

https://www.stuttgart-ballet.de/schedule/17-18season/

全幕の新作はありませんが、5作品の新作を集めたミックスプロがあります。クリスチャン・シュプック振付「ルル」のリバイバル、クランコ作品のミックスプロも。

レパートリーとしては、「白鳥の湖」、「ラ・フィユ・マル・ガルデ」、作品が誕生して50年という節目の年となる「オネーギン」、そして今シーズン初演を迎えて好評だった、デミス・ヴォルピ振付・演出のブリテンのオペラ「ヴェニスに死す」が上演されます。(オペラとの共同制作)

正直、全体的に言えば低調なシーズンですが、このシーズンでリード・アンダーソンが芸術監督を退任し、タマシュ・ディートリッヒに引き継がれます。

なお、常任振付家のデミス・ヴォルピが契約を更新されずに退任します。「クラバート」という大ヒット作を生み出し、「サロメ」は今年のブノワ賞にノミネート、そして上記「ヴェニスに死す」も好評だったのですが、リード・アンダーソンは、ヴォルピの振付はどちらかといえば演劇寄りでダンスが少ないと考えていたそうで、むしろオペラの演出家の方が向いているのではないかとコメントしたそう。ヴォルピはシュツットガルトだけでなく、多くのバレエ団やオペラカンパニーで作品を手掛けている売れっ子なので仕事に困ることはないのですが。さらには、マルコ・ゲッケも退任するのではないかという報道もあります。

そしてたくさんのダンサーが退団します。プリンシパルのコンスタンチン・アレンとソリストのパブロ・フォン・ステネンフェルス(二人とも行先は未定)、ソリストのロバート・ロビンソンが南米でタンゴを学ぶために退団、プリンシパルのミリアム・サイモンがモントリオールのレ・グラン・カナディアンに移籍、アダム・ラッセル・ジョーンズがNDT2に移籍などです。

72年間もの間クランコ作品の振付指導を行ってきたバレエミストレスのジョルジェット・ツィンガリデスも退団します。

一方、ENBからは、昨年のENBエマージング・ダンサーコンクールのファイナリストだったDaniele Silingardi、オランダ国立バレエからMert Erdin、Teatro Municipal Rio de JaneiroからMoacir de Oliveiraが入団。そしてローザンヌ国際バレエコンクール研修生として、Diana Ionescu が入団するほか、研修生6人が正団員に、そして4人の研修生が入団します。

来年、シュツットガルト・バレエは来日公演がありますが、コンスタンチン・アレン、パブロ・フォン・ステネンフェルス、ミリアム・サイモンがいなくなると、かなり戦力ダウンという感じが否めません。

2017/05/21

バレエ・アステラス2017 (ワガノワ・アカデミーが『人形の精』で参加)

7月22日に開催される、バレエ・アステラス2017~海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて~の出演者が発表されていました。

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/28_010272.html

「バレエ・アステラス」は海外で活躍する若手日本人ダンサーを応援したいという願いを込めて、2009年より開催されています。 8回目となる今年は、世界各国から集まった7組のダンサーのほか、数々のスターダンサーを輩出してきた名門ワガノワ記念ロシア・バレエ・アカデミーの生徒たちも参加。

海外で活躍する日本人バレエダンサー

奥野 凜(ブカレスト国立歌劇場バレエ団)
with ボグダン・プロペアヌ(グァンジュ シティ バレエ)

『海賊』第1幕より 奴隷のパ・ド・ドゥ
 振付:M. プティパ


影山茉以 with ダヴィッド・チェンツェミエック(ポーランド国立歌劇場バレエ団)

『眠れる森の美女』第3幕より グラン・パ・ド・ドゥ
 振付:M. プティパ


上草吉子 with ルーゼンバーグ・サンダナ(カナダ ロイヤル ウィニペグ バレエ)

『エスメラルダ』より グラン・パ・ド・ドゥ
 振付:M. プティパ


菅野茉里奈 with リシャト・ユルバリゾフ(ベルリン国立バレエ)

『Multiplicity』より チェロのパ・ド・ドゥ
 振付:N. ドゥアト


桑原万奈 & 金指承太郎(ロシア国立クラスノヤルスクオペラバレエ劇場)

『ドン・キホーテ』第3幕より グラン・パ・ド・ドゥ
 振付:M. プティパ/A. ゴルスキー


高野陽年(ジョージア国立バレエ)

『Still of King』
 振付:J. エロ


中島麻美 & 大巻雄矢(スロヴェニア国立マリボル歌劇場)

『海賊』第2幕より グラン・パ・ド・ドゥ 
 振付:M. プティパ

※「海外で活躍する日本人バレエダンサー」は公募により選ばれました。


新国立劇場バレエ団

池田理沙子 & 井澤 駿

『ソワレ・ド・バレエ』
 振付:深川秀夫


A. Y. ワガノワ記念ロシア・バレエ・アカデミー生


『人形の精』組曲 日本における《セゾン・リュス(ロシアの季節)》参加作品
 振付:S.レガート/N.レガート


新国立劇場バレエ研修所

第13期・ 14期研修生、予科生

『トリプティーク~青春三章~』
 振付:牧 阿佐美


****
なんといってもワガノワ・バレエ・アカデミーが『人形の精』組曲で参加するのが楽しみです。

ワガノワ・バレエ・アカデミーは2019年1月に来日公演を行う予定ですが、その公式サイトに、『人形の精』の説明があります。
http://www.arstokyo.co.jp/organizer/archive/2018/the_fairy_doll-paquit.html

2016年6月の卒業公演、『人形の精』が衣装を一新し、フレッシュなステージがワガノワ・バレエ・アカデミーによって上演されました。『人形の精』は、もともと19世紀ウィーンで上演されていたバレエで、1903年に当時マリインスキー劇場のダンサーだったレガット兄弟によって演じられたものが元になっています。1989年に当時ワガノワ・バレエ・アカデミーの芸術監督だったコンスタンチン・セルゲーエフが、以前より温めてきたこの作品をワガノワの生徒のために演出しました。2013年にワガノワの校長に就任したニコライ・ツィスカリーゼは、古きよき伝統を復活させるという考えから、衣装を全てリニューアルし、自身の演出も加え、2016年の卒業公演に『人形の精』を上演しました。 セルゲーエフ、ツィスカリーゼによるバレエ『人形の精』は、登場人物も多く、キャラクターも多彩です。 低学年から最高学年まで、それぞれの能力と可能性をステージでいかんなく発揮できる作品となっています。 初演の伝統を引き継ぐ『くるみ割り人形』同様、ワガノワならではの作品であり、子どもたちの生き生きした踊りが魅力となっています。

ワガノワの卒業公演だけでなく、2016年11月のワガノワ国際バレエコンクールや、今年3月のThe Russian Ballet Icons Gala 2017でも上演されています。
http://www.vaganovaacademy.ru/index.php?id=836

*****
さて、「海外で活躍する日本人バレエダンサー」ですが、ポーランド国立歌劇場バレエの影山茉以さんは、以前はクロアチア国立バレエに所属していて、草刈民代さんがクロアチアを訪ねる番組に出演されていました。昨年のアクリ・堀本バレエアカデミーのガラ公演に、卒業生として『ラ・バヤデール』のガムザッティ役を踊っていたのを観ましたが、華やかで技術も強いダンサーです。ダヴィッド・チェンツェミエックは、元ロイヤル・バレエ、ルーマニア国立バレエで、昨年のバレエ・アステラスにも出演しています。

ロイヤル・ウィニペグ・バレエの上草吉子さんは、2012年のヴァルナ国際バレエコンクールのファイナリスト。ジョージア国立バレエの高野陽年さんは、今年3月の「ニーナ・アナニアシヴィリの軌跡」で「薔薇の精」等を踊り、スタイルが美しく技術にも優れた軽やかで美しい踊りを見せてくれました。ベルリン国立バレエの菅野茉里奈 さんは、前々回の「バレエ・アステラス」に出演して「アルルの女」でス馬場らしい表現力を見せてくれました。今年は、ナチョ・ドゥアトの「マルティプリシティ(バッハへのオマージュ)」を踊ってくれるので、こちらも楽しみです。中島麻美さんと大巻雄矢さんは2016年のヴァルナ国際バレエコンクールに出場し、共に銅賞に輝いています。

なかなか普段日本では観られない、海外で活躍する実力派のダンサーを見られるということで、こちらも楽しみです。

今年は日本のバレエ団からは新国立劇場バレエ団からの二人ですが、この人選については、ノーコメントということで。

2017年7月22日(土)15:00開演 オペラパレス (予定上演時間:約2時間45分(休憩含む))

<前売り開始日>

会員先行販売期間:2017年6月5日(月)10:00 ~ 6月13日(火)
一般発売日:2017年6月15日(木)10:00

【舞台監督】山田ゆか
【指  揮】デヴィッド・ガルフォース
【管 弦 楽】東京フィルハーモニー交響楽団

2017/05/18

K-BALLET COMPANY『海賊』リハーサル

K-Ballet Companyは、5月24日(水)より、Bunkamuraオーチャードホールにて、熊川哲也さん振付の『海賊』を上演します。2007年に初演のこの作品は、熊川さんならではの独創性とエンターテインメント性を高めた、スリリングで鮮烈なスペクタクル作品で高い人気を誇ります。
http://www.k-ballet.co.jp/performances/2017pirate

1週間後に初日を控えたカンパニーの、通し稽古を見せて頂きました。
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再演を重ねたこの作品、上演されるたびにアップデートされており、どんどん振付も難度が上がり、音にパを細かく当てはめていくようになったそう。それだけ、ダンサーたちの技術も上昇しているとのことです。

この日は、メドーラ:浅川紫織さん、コンラッド:宮尾俊太郎さん、アリ:山本雅也さんというキャストで、2幕部分を通しでリハーサルしました。ランケデムは篠宮佑一さん、ビルバントは一番下のアーティストという若手の西口直弥さんが抜擢されています。リハーサルディレクターの小林由明さんはじめ、パシャ役も演じるスチュアート・キャシディ、別キャストでコンラッド役の遅沢佑介さん、そして同じくプリンシパルの荒井祐子さんらが指導を行います。

全編に踊りが詰め込まれている『海賊』ですが、2幕は中でもこの作品で一番有名なパ・ド・トロワを始め、オダリスクの踊り、海賊たちのガン・ダンスなど華やかなクライマックスがいくつもあります。本番に近いので、メドーラ役の浅川さんは繊細で美しい本番用衣装を着用。『海賊』ならではの刀や銃器などの小道具も使われます。

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通し稽古なので本番通りの順番でリハーサルは進みます。海賊たちの踊りで始まるので、このカンパニーが誇る男性ダンサーたちが勇壮な群舞を見せてくれます。日本のカンパニーで男性ダンサーが最も充実しているK-Balletならではの、ダイナミックで迫力ある踊りが繰り広げられて、スタジオ内は大変な熱気がこもっています。みんなバンバン跳ぶし、男性同士のリフトなどもあって、気分は否が応でも上がります。『海賊』は充実した男性陣がいないと上演できない作品ですが、このバレエ団ではそんな心配は無用です。

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オダリスクの踊りは、中村春奈さん、矢内千夏さん、浅野真由香さんの3人。伸び盛りの若手である矢内さんは別キャストではメドーラ役、また浅野さんはグルナーラ役も別キャストで踊っているのでそれぞれの役のリハーサルもまた進められています。それぞれのソロはもちろん、3人で並んで踊るときには綺麗に動きがシンクロし、アラベスクの時も脚の高さが揃えられていてつま先に至るまで非常に美しい。アレグロの動きが多いので音楽性、スピードと高度なテクニックが求められるパートですが、主役も踊っているメンバーなので見ごたえがあります。ほっそりとして抜群のプロポーションの矢内さん、回転のテクニックが見事な中村さん、ドラマティックな表現力に長けている浅野さん、それぞれ魅力的です。

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パ・ド・トロワでは、まず浅川紫織さんの清楚で気品あふれる美しさに目を奪われます。長くて美しいライン、安定したグランフェッテ、リフトされているポーズもきれいに決まっています。宮尾俊太郎さんは、長身から繰り出されるダイナミックな跳躍、安定したリフト、海賊の首領らしい堂々とした佇まいでスターの風格を漂わせています。

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アリに抜擢された山本さんは、2013年ローザンヌ国際コンクール3位で、ロイヤル・バレエで研修したホープ。熊川版の『海賊』では、初演キャストが熊川さん自身だったこともあり、アリは奴隷たちを束ねるリーダーシップとカリスマ性がある存在です。山本さんは、若いながらも頼れるリーダー性を発揮していました。見せ場のアリのソロでは、高い跳躍と、軸のしっかりしたいつまでも回り続けられそうなピルエットで魅せてくれます。この見事なパ・ド・トロワ、リハーサルであることを忘れて思わず引き込まれて見入ってしまいました。

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ビルバントを中心に、大勢の男女が組んでのガン・ダンスでは、位置関係をしっかりとるために細かい確認が行われていました。この大人数でしかも男女ペアで構成されるダンスのあるパートなので、フォーメーションを美しく保ち、ぶつかったりしないように細心の注意が払われます。しかも今回は、大阪と香川というツアー公演もあり、それぞれの会場のサイズが違うわけです。これが実際の舞台で上演された時には、さぞかし壮観なことでしょう。

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終盤のハーレムのシーンでは、パシャ役のスチュアート・キャシディがコミカルな演技で和ませてくれます。キャシディは自ら演技をしながらも、演技や技術の指導もこなしています。ここから最後のドラマティックなクライマックスまでは、演技的な要素も多くて、一度通した後、タイミング、段取り、さらには表現のニュアンスまでも細かく確認しながら行われます。グルナーラとパシャの絡みは、浅野真由香さんと白石あゆ美さんの二人が同時にリハーサルをしていました。


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このプロダクションももう10年上演されているので、過去に何回も踊ってきた荒井祐子さん、遅沢佑介さんらが自らの経験を基に、実際に動いて見せて後輩に指導をしていきます。こうやって、バレエの芸術性は”手から手へ、足から足へ、口から口へ”受け継がれていくわけです。

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通しが終わった後も、細かい確認はずっと続いています。主役は3キャストが組まれており、一人でいくつもの役を踊るダンサーたちも多いのです。しかも、6月に上演される『ジゼル』のリハーサルも同時進行であるとともに、秋の新作『クレオパトラ』も始動しているので、ダンサーもスタッフも大忙し。しかしこのように新作を含むいろいろな作品を経験できる、このカンパニーのダンサーは日本にあって異例なほど幸せな存在と言えます。リハーサル全体からも、本番を控えて舞台への意欲に燃えるダンサーたちの熱い思いが伝わってきました。『海賊』本公演、素晴らしい出来になっていること間違いありません。楽しくて美しくて血沸き肉躍る、冒険活劇です。

Tetsuya Kumakawa
K-BALLET COMPANY
Spring Tour2017
『海賊』

http://www.k-ballet.co.jp/performances/2017pirate

<会場>
東京:Bunkamura オーチャードホール
大阪:フェスティバルホール
香川:レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール

日程
2017年5月24日~28日 Bunkamura オーチャードホール
6月10日 フェスティバルホール
6月17日 レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール

[お問い合わせ]
チケットスペース 03-3234-9999(東京) 
http://ints.co.jp
フェスティバルホール 06-6231-2221(大阪)

[チケット取り扱い]
東京
チケットスペース 03-3234-9999
http://ints.co.jp

K-Ballet Company のFacebookでも最新情報、リハーサルの模様などがアップされています。
https://www.facebook.com/kballet.company/

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リンカーンセンターフェスティバル、オペラ座、ボリショイ、NYCB合同公演『ジュエルズ』のキャスト

ニューヨークのリンカーンセンターの夏の恒例のリンカーンセンター・フェスティバル、大きな目玉は、パリ・オペラ座バレエ、ボリショイ・バレエ、ニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)の3カンパニー合同による『ジュエルズ』です。

オペラ座が「エメラルド」、NYCBが「ルビー」、ボリショイが「ダイヤモンド」が基本なのですが、NYCBとボリショイが入れ替わって、ボリショイが「ルビー」、NYCBが「ダイヤモンド」を踊る日もあります。

「エメラルド」で3公演で主役を務めるレティシア・プジョルは、このニューヨーク公演で引退する予定とのことです。

ボリショイの「ダイヤモンド」は、オルガ・スミルノワとセミョーン・チュージンが2公演で主役ですが、まだ入団して1年目のアリョーナ・コヴァレワと、ミラノ・スカラ座から移籍したジャコポ・ティッシが主役を務める日が一日あります。

Bolshoi Ballet, New York City Ballet, Paris Opera Ballet
Jewels
http://www.lincolncenter.org/lc-festival/show/jewels-2

Thursday, July 20 at 7:30 pm
Emeralds, Paris Opera Ballet
First Pas de Deux: Laëtitia Pujol (Étoile), Mathieu Ganio(Étoile)
Second Pas de Deux: Myriam Ould-Braham (Étoile), Mathias Heymann (Étoile)
Pas de Trois: Hannah O'Neill, Sae Eun Park, François Alu

Rubies, New York City Ballet
Leading Couple: Megan Fairchild (Principal), Joaquin De Luz (Principal)
Soloist: Teresa Reichlen (Principal)
Four Men: Harrison Coll, Spartak Hoxha, Ralph Ippolito, Giovanni Villalobos
Eight Women: Sara Adams, Likolani Brown, Baily Jones, Meagan Mann, Jenelle Manzi, Kristen Segin, Sarah Villwock, Claire Von Enck

Diamonds, Bolshoi Ballet
Leading Couple: Olga Smirnova (Prima Ballerina), Semyon Chudin (Principal)
Soloists: Olga Marchenkova, Yulia Grebenshchikova, Ana Turazashvili, Alena Kovaleva, Vladislav Kozlov, Artemy Belyakov, Klim Efimov, Ivan Alekseev

Friday, July 21 at 7:30 pm
Emeralds, Paris Opera Ballet
First Pas de Deux: Dorothée Gilbert (Étoile), Hugo Marchand (Étoile)
Second Pas de Deux: Léonore Baulac (Étoile), Germain Louvet (Étoile)
Pas de Trois: Valentine Colasante, Sae Eun Park, Marc Moreau

Rubies, Bolshoi Ballet
Leading Couple: Ekaterina Krysanova (Principal), Artem Ovcharenko (Principal)
Soloist: Yulia Grebenshchikova
Four Men: Mikhail Kemenov, Batyr Annadurdyev, Anton Savichev, Mikhail Kochan
Eight Women: Margarita Shrainer, Xenia Zhiganshina, Anastasia Denisova, Daria Lovtsova, Ilona Matsiy-Kiryushkina, Xenia Kern, Bruna Cantanhede Gaglianone, Victoria Litvinova

Diamonds, New York City Ballet
Leading Couple: Sara Mearns (Principal), Tyler Angle (Principal)
Soloists: Emily Gerrity, Laine Habony, Mary Elizabeth Sell, Lydia Wellington, Devin Alberda, Daniel Applebaum, Aaron Sanz, Andrew Scordato

Saturday, July 22 at 2:30 pm
Emeralds, Paris Opera Ballet
First Pas de Deux: Laëtitia Pujol (Étoile), Mathieu Ganio (Étoile)
Second Pas de Deux: Myriam Ould-Braham (Étoile), Mathias Heymann (Étoile)
Pas de Trois: Hannah O'Neill, Sae Eun Park, François Alu

Rubies, New York City Ballet
Leading Couple: Megan Fairchild (Principal), Joaquin De Luz (Principal)
Soloist: Teresa Reichlen (Principal)
Four Men: Harrison Coll, Spartak Hoxha, Ralph Ippolito, Giovanni Villalobos
Eight Women: Sara Adams, Likolani Brown, Baily Jones, Meagan Mann, Jenelle Manzi, Kristen Segin, Sarah Villwock, Claire Von Enck

Diamonds, Bolshoi Ballet
Leading Couple: Alena Kovaleva (Prima Ballerina), Jacopo Tissi (Principal)
Soloists: Olga Marchenkova, Yulia Grebenshchikova, Ana Turazashvili, Angelina Karpova, Vladislav Kozlov, Artemy Belyakov, Klim Efimov, Ivan Alekseev

Saturday, July 22 at 7:30 pm
Emeralds, Paris Opera Ballet
First Pas de Deux: Dorothée Gilbert (Étoile), Hugo Marchand (Étoile)
Second Pas de Deux: Léonore Baulac (Étoile), Germain Louvet (Étoile)
Pas de Trois: Valentine Colasante, Sae Eun Park, Marc Moreau

Rubies, New York City Ballet
Leading Couple: Megan Fairchild (Principal), Joaquin De Luz (Principal)
Soloist: Teresa Reichlen (Pricipal)
Four Men: Harrison Coll, Spartak Hoxha, Ralph Ippolito, Giovanni Villalobos
Eight Women: Sara Adams, Likolani Brown, Baily Jones, Meagan Mann, Jenelle Manzi, Kristen Segin, Sarah Villwock, Claire Von Enck

Diamonds, Bolshoi Ballet
Leading Couple: Olga Smirnova (Prima Ballerina), Semyon Chudin (Principal)
Soloists: Olga Marchenkova, Yulia Grebenshchikova, Ana Turazashvili, Alena Kovaleva, Vladislav Kozlov, Artemy Belyakov, Klim Efimov, Ivan Alekseev

Sunday, July 23 at 2:30 pm
Emeralds, Paris Opera Ballet
First Pas de Deux: Laëtitia Pujol (Étoile), Mathieu Ganio (Étoile)
Second pas de Deux: Myriam Ould-Braham (Étoile), Mathias Heymann (Étoile)
Pas de Trois: Hannah O'Neill, Sae Eun Park, François Alu

Rubies, Bolshoi Ballet
Leading Couple: Ekaterina Krysanova (Principal), Vyacheslav Lopatin (Principal)
Soloist: Olga Marchenkova
Four Men: Mikhail Kemenov, Batyr Annadurdyev, Anton Savichev, Mikhail Kochan
Eight Women: Margarita Shrainer, Xenia Zhiganshina, Anastasia Denisova, Daria Lovtsova, Ilona Matsiy-Kiryushkina, Xenia Kern, Bruna Cantanhede Gaglianone, Victoria Litvinova

Diamonds, New York City Ballet
Leading Couple: Sara Mearns (Principal), Tyler Angle (Principal)
Soloists: Emily Gerrity, Laine Habony, Mary Elizabeth Sell, Lydia Wellington, Devin Alberda, Daniel Applebaum, Aaron Sanz, Andrew Scordato

なお、今年のリンカーンセンター・フェスティバルでは、ボリショイ・バレエの「じゃじゃ馬馴らし」の公演があるほか、勅使川原三郎さんのKARASにオーレリー・デュポンがゲスト出演する「Sleeping Water」公演もあります。

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2017/05/16

イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)キャスト変更

7月のイングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)来日公演。こちらに出演予定のアリーナ・コジョカルが妊娠のため、7月の日本公演に参加できなくなったとのことです。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/2017-3.html

アリーナ・コジョカルがスワニルダ役を踊る予定だった7月8日(土)昼の「コッペリア」については、代わりましてナショナル・バレエ・オブ・カナダのプリンシパル、ユルギータ・ドロニナが踊ります。同様に7月17日(月・祝)の「海賊」については、代わりましてサンフランシスコ・バレエ団のプリンシパル、マリア・コチェトコワがメドーラ役を踊ります。
ドロニナ、コチェトコワともに、芸術監督のタマラ・ロホが日本公演で主役を任せられるベストの配役として選びました


【変更後の配役】

■「コッペリア」 
7月8日(土)13:00  
スワニルダ:アリーナ・コジョカル → スワニルダ : ユルギータ・ドロニナ 

■「海賊」
7月17日(月・祝)14:00  
メドーラ:アリーナ・コジョカル → メドーラ: マリア・コチェトコワ 


コジョカルの降板は残念ですが、おめでたいことでもありますし、「コッペリア」の代役がユルギータ・ドロニナなのはとても嬉しいです。以前、「アリーナ・コジョカル・ドリーム・プロジェクト」で来日した時に彼女の踊りを観た方もいると思いますが、テクニック、演技力共に大変優れたバレリーナです。

ナショナル・バレエ・オブ・カナダでは、ウィールドンの「冬物語」ハーマイオニー役で、とても思慮深く心を打つ演技を見せてくれました。また、2月に行われた、スヴェトラーナ・ルンキナの「カナダ・オールスター・ガラ」では、「ドン・キホーテ」のキトリ、「ラ・シルフィード」のシルフィードを踊り、このガラに出演した豪華な面々の中でも一番の喝さいをさらっていました。ENBには、メアリー・スキーピング版の「ジゼル」でゲスト出演しています。



イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)来日公演
http://www.nbs.or.jp/stages/2017/enb/index.html

2017/05/15

映画「ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」記者会見

7月15日から公開される映画「ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」のプロモーションのため、セルゲイ・ポルーニンが来日し、記者会見が行われました。

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ポルーニンさんは、9歳の時に初めて日本に来たと伺っています。その時の来日の理由は?

「9歳の時、キエフ・バレエ学校の生徒の時に、交換留学生として寺田バレエアートスクールと共演しました。キエフからは6人の男の子が選ばれました。キエフ・バレエのプリンシパルと日本人の主役の後ろでコール・ド・バレエとして「ジゼル」で踊りました。その時のプリンシパルを務めたのが、寺田宣弘さんでした」

映画「ダンサー」は、アメリカ、イギリスで公開され、その後「プロジェクト・ポルーニン」という自身のプロデュース公演があり、そののち日本で公開となります。日本公開に向けてのメッセージ。

「実はこの映画が完成する前に一番最初に手を挙げてこの映画の配給権を買ってくれたのは日本でした。監督は、「日本は本当に入るのが難しい市場なんだ」と言っていたものですから。それを聞いてスタッフ共々興奮したとともにやる気が盛り上がりました。高揚感のあるまま、最後まで一気に映画を作りきったのです」

「プロジェクト・ポルーニン」の具体的な活動について。ダンサーに対するサポートが足りないと考えられていると思いますが、バレエ界における問題点は?

「自分自身、「テイク・ミー・トゥ・チャーチ」を踊ってラストダンスにしてこの業界をやめようと思ったのは、もう少しましな業界、もう少し成熟した業界に移りたいとその時思ったからです。「テイク・ミー・トゥ・チャーチ」を撮影する時に時間がたっぷりあったのです。時間をかけて熟慮して、自分がこれからどうしたらいいのか、立ち止まって考えることができたのです。バレエに対して何が不満だったのか、やはりそれを考えたときに、今回のラストダンスを踊るときに強さを身につけることができました。いろんなことを考えることができて。さらに映画が出来上がってからも、この映画を通してもリサーチや旅といったものを経て、傘のようなものを作りたい、ダンサーたちが前に進むときにさしてあげられるような、雨をよけてくれるような傘、そしてダンサーたちが声を上げることができるような環境、観客がより多くダンサーたちを観ることができる、触れ合うことができる環境、つまり大事なことはバレエ、ダンスということではなくダンサーという一人の人間が大事なのではないかと。劇場、カンパニー、衣装といったものではなくて、生身の生きた人間の面倒を見る人が必要なのです。そのためのマネージャー、興行主が。

今のバレエ業界はたった一人の芸術監督によって90人から一人が選ばれて「お前がこれを踊れ」と言われてしまい、それをサポートするシステムがないわけです。俳優やスポーツ選手だったら、オペラ歌手だったら、その選手なり俳優を支えるチームが作られます。それぞれの演目に合わせてチームが作られる、そういうのが一切バレエにはないので、そういったものを作り、それをそのままほかのダンサーたちにも当てはめてあげたい。一種のインフラ整備というべきようなものです。そういった形で、広報担当者、経理担当などが必要となってきます。そういったきちっとしたシステムを作ってインフラ整備をしたいと思ったのが、今回のプロジェクトの目的です」

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ダンス界には様々な問題がありますが、その中でダンサーを目指す若い人へのアドバイス、メッセージは?

「バレエを学んでいる学生に対しては、とにかくたくさん練習してください、と言いたいです。しっかりと勉強してください。ミッキー・ロークと話している時に彼が言ったのは、本当に一生懸命努力した人のみが一流になれる。その努力は報われる、と。僕自身も非常に頑張ったお陰で、学校を出た後で踊りを楽しむというところまで行くことができた。劇場で踊るときに基本ができているから、演目を楽しめるし演技ができるのです。その過去の経験があるから演じるのも次の段階へと進むことができるのです。一生懸命やる、努力するというのはすべてにつながります。学校時代にはとにかく一生懸命やってください。

また、自分に正直でいるということ。自分は何者であり、何になりたいかを見失わないでください。先々で社会や周りの人たちやマスコミや噂に自分が破壊されてしまいそうな場面に出会うかもしれません。そういう時に信念があり、自分が何をやりたいかがしっかりとあれば、自分を見失わないと思います。そして勇敢であってください。次のステップに行くために打破する勇気を持ってください。新たに旅立つ勇気をもって、未知の世界へとどんどん行ってほしいと思います。

僕の好きなイメージは飛行機が離陸して上がっていく時のものです。ある程度の高さまで上昇すると降りて行きたくなりますが、その高さを頑張って保って維持していくことが好きです」


改めて、なぜ踊りつづけようと思ったのでしょうか?

「先ほど話したプロジェクトのように、何かをやればできる、変えられるという思いがあったからです。後ろに置いてくるのではなく、やりたいことをやって、やったことで変えられると思ったから「プロジェクト・ポルーニン」が一番の理由だと思います」


映画の中で登場するダンス作品で特に気に入っているものがあったら教えてください。どのようなカンパニーに客演したり、どういった振付家と作品を創ったり、どんなダンサーと共演したいですか。

「テイク・ミー・トゥー・チャーチ」のデヴィッド・ラシャペルがまた何かを撮るときにはまた一緒にやりたいという思いはあります。まだ未知数のところがありますが、今後また機会があれば嬉しいです。演目で言えば「ジゼル」には愛着があります。「マイヤリング」も好きですが、最初から好きだったわけではなくて、何回も踊っているうちに好きになりました。振付家については、クラシック系の振付家は多くが亡くなってしまいました。なので今は思いつく人がいません。これを探していくというのが自分の旅路になると思います。


ダンサーとしての夢、目標は何でしょうか。タトゥーについてはどのような想いがありますか。そして今抱えている苦悩は?

「「タトゥー」は自由を意味しています。自由人の証のようなもので、仕事とか生活と言った様々な制約から自由であること。やりたいことができる証という意味を持っています。見た目も好きだし、タトゥーを入れる過程も、刺青師と話すことも、タトゥーパーラーの雰囲気も全部好きでした。

ダンサーの夢としては、先ほど言ったように業界を変えていくということが一番大きな夢です。また更に素晴らしい振付家と出会って、ディレクターと出会い、素晴らしい音楽、そういったものと一体となった作品を創り上げることができたとしたら、それはまた素晴らしいと思います。苦悩についてですが、僕自身、心地よい環境にいる時にはこれは違う、と感じます。つまりそこに安住してはいけない。そういう時には次に行かなければならない。創造するためにもがく、戦おうと思います。戦う相手がいると人間は強くなります。安住してはいけない、戦い続けるというのが僕のパフォーマーとしての在り方なので、苦痛や苦悩はあります」


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この映画を観たときの印象は?作品の出来に満足していますか?

「この作品は当初観たくなかったので、編集作業を見るのも拒否しました。でも、デヴィッド・ラシャペルに上手く騙されて観たのです。でき上がった作品は質が高く良くできた映画だと思います。ただ自分個人としては、感情のジェットコースターに乗せられた気分でした。ある意味、自分にとって観ることが大変だったんです。でも観ることでいろいろ思い出しました。両親の僕に対する愛とか、友情の大切さとかを再認識させられて、それは素晴らしい経験でした」


ロンドンで「プロジェクト・ポルーニン」の公演がありましたが、日本でポルーニンさんの踊りを観る機会はいつあるのでしょうか?ロイヤル・バレエの先輩の熊川哲也さんは、若くして自らのカンパニーを立ち上げてますが、日本のバレエシーンについてどう思いますか?

「「プロジェクト・ポルーニン」については、自分が「これだ」と思う自信がある演目ができたらぜひ日本でも踊りたいと思います。日本では熱心なバレエファンがたくさんいるのは知っています。作品を引っ提げてツアーをする時には必ず日本は含めたいと思っています。熊川哲也さんについては、彼の踊りは何回も観たことがあるし、ニジンスキーより高く跳んでいたと思います。あんなに高く跳べた人は他にいないと。彼こそ、先ほど話したインフラ整備、バレエ学校まで作り、ダンサーたちの給与制度の改革も行われています。彼は男性のダンサーのための作品も考えているということで、バレエ界にとってのインスピレーションになっていると僕は認識しています」


俳優業に進出して、『オリエント急行殺人事件」のように大きな映画に出演を果たしていますが、俳優業に進出したことで、ダンサーとしての活動はどのように変わっていくのでしょうか?俳優としての目標は?

「演技の経験のみならずすべての人生の経験は、パフォーマーにとっては糧となると思います。いろんなことをより多く経験すればするほど、それだけ多く観客に語るべきものを持つことができると考えています。その中で、演技というものを僕は真剣に受け止めています。僕の中で、演技者となるのは多少の運も必要だと思います。努力だけではできません。しかしながら、より良い俳優になりたいということを強く信念として持っています。単なる、演技もできるダンサーではなく、きちんとした演技者としてのものを持ちたいと思っています。だからといってダンスを辞める気はまったくありません。踊るということもとても大事だし、先ほどの「プロジェクト・ポルーニン」で業界はいい方に変えて行けると思うし、変えるべきだと考えています。僕自身、表現するということを何よりも愛しています。踊るというのはその表現の一つでもあるわけです」


自分の舞台を親に見せないというエピソードが映画の中にありましたが、最後の方でご家族がロシアであなたの舞台を観ます。これはどのような心境の変化でしょうか。

「長い旅路を経て、この旅路そのものがセラピーのような存在となりました。これを通して成熟したことで、今まで目を背けて来たことを直視できるようになったので、親に会えるようになったのです。両親に会って話をして招くことができるようになったと。怖くて見られなかったというのが成長していなかった時の自分の姿で、やっと成長することによって現実を直視して自分の問題を観ることができるようになったのです。残念ながらダンサーというのは本当に厳しい仕事なので、日々スタジオの中で練習に明け暮れて、なかなか成熟する機会というのがなかったりします。その中で僕は変わったと思います。

学校時代には、学問などいろんなことを教わります。でも人生について教えてくれる人は誰もいないし、人生について教える科目もない。テレビを見ていても人生について教えてくれる番組はなかなかありません。そういう中で、社会では若い人を導いてくれる人が減っています。豊富な人生経験を持った人が、いろんな道があるんだよと指し示してくれることがなかなかありません。そのため、僕を含む若い人たちが困難な厳しい道を歩むことになってしまい、しなくていい苦労をすることになります。ライフレッスンというのがあってもいいと思います。部族社会の中では、儀式があって、たとえば狩猟の儀式で成功すると一人前の大人として認められます。西洋文化の中には大人になるための登竜門的なものはありません。自分をだましてしまって、現実を直視しないで生きてしまう人も多々いると思います」


映画の中では、公演の前に強烈なドリンクを飲まれていましたが、今はパフォーマンスの前の心境はどうなっていますか?

「昔ほどではないけれどもナーバスになることはあります。でも考え方がとても変わって、舞台の上こそが僕のいるべきところで、舞台の上が家だと思うようになってあの当時のように神経質になることはなくなりました。強いドリンク剤を飲んでいたのは、ベストのものを出しつくしたい、自分の持っている最高のものを見せたいと思ったからです。今の僕の考え方としてはそういったものの助けを借りなくても、最高のものを出さなくてはいけないと思っています。自分の力だけで最高のものを見せたいです」

韓国では、この映画は2週間前にアートシアター30館で劇場公開され、9日間で1万人動員するなど好評で多くの人生に迷う若い人たちを勇気づけました。セルゲイさんは、今は楽しく幸せに踊っていますか?

「人生ですから、いい時も悪い時もあります。その中で学んだのは、ポジティブに物事を見る術を身につけたことです。良いエネルギーを出す、それを皆さんとその良いエネルギーを交換できるような。内側からそういうエネルギーは生まれてくるものですから。さらにはどういう風に物事を考えるかによってそれはできると思います。もちろん、内面での格闘というのはりますが、踊ることは楽しんでいます。プラスに考えられるようになりましたし、踊ろうともう一度決心して、努力して踊っているから、踊ること自体は楽しんでいます。もちろん楽だということではないですが」

****

「バレエ界のバッドボーイ」という異名をとるセルゲイ・ポルーニンですが、素顔は思慮深く、非常に誠実でひたむきな印象を与えました。自分の辛かった、迷い続けた経験を生かしてダンサーたちにより良い環境を提供したいという熱い思いも伝わってきました。『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』、バレエに興味を持つ人のみならず、自分の人生について悩み苦しんでいる人や、家族との葛藤を抱えている人にもぜひ観ていただきたい、多くの人の心に訴える作品です。才能があることが呪いとなってしまい、心が折れて目標を見失った若者の苦悩と再生の軌跡です。ダンサーというのはいかに厳しく孤独な仕事であるかということも伝わってきます。もちろんセルゲイの圧倒的なダンスパフォーマンスもたくさん収められています。


東京芸術大学でのパフォーマンスイベント、箭内道彦さんと。
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http://www.uplink.co.jp/dancer/

2017年7月15日(土)より、Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督:スティーヴン・カンター
『Take Me To Church』演出・撮影:デヴィッド・ラシャペル
(2016年/イギリス・アメリカ/85分/原題:DANCER) 
配給:アップリンク・パルコ

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このDVDの中でセルゲイ・ポルーニンは、タマラ・ロホと「マルグリットとアルマン」で共演しています。しかしながら、残念ですが今年6月にロイヤル・バレエで上演される「マルグリットとアルマン」へのゲスト出演を、セルゲイはキャンセルしてしまいました。

ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣【Blu-ray初回生産限定版】ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣【Blu-ray初回生産限定版】
デヴィッド・ラシャペル

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2017/05/12

コンドルズ 埼玉公演2017 新作 『17's MAP』

昨年、『LOVE ME TenDER』で記念すべき10作目を迎えた、コンドルズの埼玉新作シリーズ公演 『17's MAP』が、5月20日、21日に開催されます。

http://www.saf.or.jp/stages/detail/3869

代名詞の学ラン姿で男性たちがステージいっぱいに繰り広げるダンス。笑いと遊び心たっぷりの、他に類をみないユニークさでパワーを振りまくコンドルズの舞台は、老若男女を虜にしています。

舞台、映画、TV等で数々の振付・演出を手がける主宰の近藤良平さんをはじめ、メンバー全員が多才。細やかさと大胆さ、懐かしさと斬新さを兼ね併せ、コント、人形劇、映像、生演奏、影絵がパノラミックに展開され、予想のできないシーンの連続にハラハラドキドキは尽きません。

コンドルズは 2006 年以来、埼玉公演では一貫して新作に挑戦してきました。恒例の新作シリーズも今年で 11 作目。主宰の近藤良平さんは彩の国さいたま芸術劇場での新作づくりについて「この劇場は不思議なところで、様々なダンスシーンが、必ずこちらが狙った以上の、心に残るものに変わっていく。毎回、彩の国さいたま芸術劇場でしかできない強度のある作品ができあがる。」と語っています。

昨年の『LOVE ME TenDER』ではこの劇場の広い舞台空間を活かし、ロープを回して男たちが飛び交うアクロバティックなシーンが大喝采を浴び、大きな反響を呼びました。また人形劇コントの面白さ、はじけるダンス、本当に楽しい!と心から思える舞台でした。

今回の作品は 2017 年にちなんで『17’s MAP』。80 年代に「10 代の教祖」「若者の代弁者」と呼ばれ、社会現象にまでなったシンガー、尾崎豊の『17 歳の地図』にオマージュを捧げたタイトルです。また、コンドルズのメンバーが17人であるほか、「地図」というコンセプトなど色々な意味が含まれています。

関連してこんな楽しい企画もあります。

★コンドルズメンバーリレーエッセイ「俺たちの17歳の地図」
http://blog.livedoor.jp/condors_saitama/
コンドルズ埼玉公演2017新作『17’s MAP』にちなんで「17歳の頃」をテーマにメンバーが綴るリレーエッセイ。
コンドルズメンバーが17歳の頃の自分を振り返る、貴重なエピソードの数々をお楽しみください。

★コンドルズ小道具展示(与野本町駅Beans)
毎回コンドルズ公演で大きな存在感を示す人形たち。実際の舞台で使用された貴重な小道具の数々を、
埼京線「与野本町駅」直結Beansの通路にて展示中!ぜひお立ち寄りください!
[期間] 2017年5月4日(木)~未定
[時間] 10:00~21:00
[料金] 入場無料

..................................................
コンドルズ埼玉公演2017新作
「17’s MAP」 セブンティーンズ・マップ
2017年5月20日(土)14:00/19:00、21日(日)15:00 ※開場は開演の30分前
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

全席指定 税込 前売 一般S席5,000円 A席3,500円
    U-25*S席3,000円 A席2,000円 / SAFメンバーズ S席4,500円 A席3,200円

*当日券は各席種ともに+500円。

■チケット取扱い 
◎SAFチケットセンター 0570-064-939 (休館日を除く10:00~19:00)
 窓口 彩の国さいたま芸術劇場 (休館日を除く10:00~19:00)
 PC http://www.saf.or.jp/ *PC画面でお席が選べます。
 携帯  http://www.saf.or.jp/mobile/
◎チケットぴあ 0570-02-9999 <Pコード:456-579> http://t.pia.jp/(PC&携帯)
◎イープラス http://eplus.jp/(PC&携帯)

■構成・映像・振付 近藤良平
■出演
 青田潤一(映像出演) 石渕聡 オクダサトシ 勝山康晴 香取直登 鎌倉道彦 ぎたろー(新人)
 古賀剛 小林顕作(声の出演) スズキ拓朗 田中たつろう 橋爪利博 平原慎太郎(映像出演)
 藤田善宏 安田有吾 山本光二郎 近藤良平

2017/05/11

ジュリアード音楽院の学長に、元NYCBダミアン・ワーツェルが就任

ジュリアード音楽院は、学長に、ニューヨークシティ・バレエ(NYCB)の元プリンシパル、ダミアン・ワーツェル(49歳)が就任することを発表しました。

Juilliard Names Damian Woetzel as Seventh President

https://www.juilliard.edu/presidentialsearch/home

https://www.nytimes.com/2017/05/10/arts/music/juilliard-names-damian-woetzel-as-its-new-president.html

年間1億1千万ドルの予算、10億の寄付、そして800人の生徒を抱える名門音楽大学に、アカデミックな管理職として働いたことがない人物が就任することは異例のことです。

しかしジュリアードのチェアマンのブルース・コイナーは、彼の芸術的なバックグラウンドと、2008年の引退後のキャリアについて強い印象を受けたとしています。現在、ヴェイル国際ダンスフェスティバルの芸術監督を務めているワーツェルは、このフェスティバルを生き返らせ、またハーバード大学で公共アドミニストレーションの修士号を取得し、ハーバード・ロースクールの客員教授を務め、オバマ大統領の芸術と人文学の委員会の一員として、公立学校へ芸術教育をもたらす仕事をしていました。

ワーツェルの就任は2018年の予定。ワーツェルは、NYCBに入団する前にジュリアード音楽院の中にあるスクール・オブ・アメリカン・バレエ(SAB)で学んでおり、ホームカミングの意味合いもあります。「初めてジュリアードの建物に入り、校舎の中で音楽を聴いて、ここは魔法のような場所だと思いました」

ジュリアード音楽院は、いくつもの大きな課題を抱えています。世界で最も権威のある音楽院であり、巨大な基金にも恵まれていますが、学費は継続的に上昇し、年間6万ドルもかかります。最高の教育を受けた芸術家にとっても、職を得ることが難しい時代において、これは大変なことです。競合するフィラデルフィアのカーティス音楽院や、イェール大学音楽学部は、才能ある学生は学費を無料としています。ジュリアードは、市立小中学校向けのカリキュラムを開発したり、オンライン教育の商品を開発したり、中国の天津に分校を設立する計画を立てるなどして、新しい収入源を模索しています。

ワーツェルは来年、次期学長として、現在のジョセフ・W・ポリシ学長と引継ぎを行います。ポリシは30年以上にわたってこの地位にあり、音楽院を深化させました。ワーツェルは、芸術家が自分自身のチャンスを作り出さなければならない「D.I.Yの世界」において、新しい世代を活躍させるために学校は努力しなければならない、それを実行したいとしています。

ワーツェルは、このような大きな機関の責任者となったことがありませんが、ヴェイルと、ハンター・カレッジのThe Aspen Institute Arts Programのディレクターの仕事、そしてハーバード大学での仕事を同時進行させることを通して、彼は、異なった利害関係者のニーズのバランスをうまく取ることを学んだとしています。「集中したことではありませんが、同時期に様々な種類の仕事に責任を持っており、これはオーケストラを合わせることと同じだと思います」と彼は語りました。

ジュリアード音楽院の卒業生で世界的なチェリストであるヨーヨー・マは、ワーツェルの就任は「見事で思慮深い選択」としています。ワーツェルとマは、シカゴの公立学校に芸術教育をもたらす仕事で共に働いたことがあり、マは、ワーツェルは芸術にとって称賛されるべき唱道者だと評価しています。

ワーツェルが大学の学長となるまでの道は異例のものでした。彼の父親は大学教授でしたが、彼がバレエを踊るために大学に進学しなかったことに驚きました。スクール・オブ・アメリカン・バレエで彼がクラスに参加している時に父親が訪ねて来た時のことをワーツェルは述懐しました。父が「君が入ろうとしている世界はとても美しいことを知っているか?」と語りかけて来たとのことです。「そして音楽が流れている開かれた教室の間を歩いていたから、そう語ったのであって、一つの場所に可能性の芸術が存在しているからだったのです」

ワーツェルは1967年生まれ。1989年にNYCBのプリンシパルとなり、2008年に41歳で引退するまで、カンパニーを代表する人気ダンサーでした。バランシンやロビンスの様々な作品に主演したほか、ロビンス、スーザン・ストローマン、トワイラ・サープ、クリストファー・ウィールドンなど多くの振付家の作品の初演キャストを務めています。引退公演では、「ファンシー・フリー」、「ルビー」そして「放蕩息子」を踊りました。

ダーシー・キースラーとダミアン・ワーツェルが主演したバランシン「くるみ割り人形」。子役時代のマコーレー・カルキンも出演しています。

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2017/05/10

Noism『Liebestod-愛の死』『Painted Desert』記者会見

4月26日、Noism芸術監督の金森穣さんと副芸術監督の井関佐和子さんが登壇し、新作『Liebestod―愛の死』/レパートリー『Painted Desert』の制作発表と、ルーマニア公演の報告会が開催されました。
ルーマニア公演の報告会に続き、『Liebestod―愛の死』/『Painted Desert』の制作発表をレポートします。

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5月26日よりNoism1の新作『Liebestod-愛の死』とレパートリー『Painted Desert』がりゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館で上演されます。りゅーとぴあでの上演の後、6月に彩の国さいたま芸術劇場でもこの2作品は上演されます。

http://noism.jp/liebestod_pd/

『Liebestod-愛の死』は、金森穣さんの最新作で、リヒャルト・ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』より前奏曲と終曲「愛の死」を用いて創る作品です。もう一つの『Painted Desert』は、Noism2専属振付家兼リハーサル監督である山田勇気さんがNoism2と共に創作し2014年に初演した作品で翌年には再演を果たしています。今回はレパートリー作品としてNoism1のメンバーが踊ります。


金森穣「『Painted Desert』はNoism2が創ってきた数々の作品の中で、自分にとって一番優れた作品であると思っています。優れているという根拠としては、単純に作品が持っている構造的な強度、振付の強度ももちろんですが、どの舞踊家が踊っても変わらない作品です。それがマイナスではなく、作品としての構造がしっかりしているからこそ、どの舞踊家が踊っても生きる作品があって、同時にそういう作品というのは、踊る舞踊家の力量を刺激する、その作品を踊ることでその舞踊家の新たな可能性を引き出す、平たく言えば舞踊家が良く見える作品なんです。

『Painted Desert』はそういう作品で、Noism2の舞踊家が踊っているのを見たときに、Noism2っぽくないと思いました。青臭さがなくて、単純に舞台芸術作品としてあっと思わせる作品で、これであればNoism1の舞踊家が踊ってもいけるだろうし、同時にNoism1の舞踊家は自分(金森さん)の作品ばかり踊っていましたので、そうではなく別の振付家が創った作品を踊ることで、彼ら自身が新しい可能性を自分で見出すことができるのではないかと。Noism1を観るお客さんにとっても新しい彼らが表現できるのではないかと思って、今回Noism1での再演としたわけです。

新作『Liebestod-愛の死』については、18歳の時から、最初にこの曲と出会った時からずっと好きでずっとあたためていた音楽なので、25年経って、ようやくこの音楽で創ろうと決意したわけです。その背景には、今回はたった二人しかいないということ、物語を持っていないということ、何か実験をしようとしているわけではないということ、単純に純粋にこの音楽から受けるインスピレーションによって、たった二人だけの作品を作りたいと思いました。その純粋な想い以外の何物でもない。

Noismを始めて15年間でいろいろな実験をしたり、10人のメンバーをどういう風に使うか、物語の構造をどうしていくか、演劇と舞踊をどう重ね合わせたり、いろんなチャレンジ、自分の創作的欲求と向学的な欲求と共に歩んできたので、もう一度20歳の時のデビュー作、『アンダー・ザ・マロンツリー』のようにピュアにその音楽に自分の舞踊を振付ける、舞踊とは何か、自分にとっての舞踊ってどういうものなのかというものを純粋に作りたい、それが今回の作品です」

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井関佐和子「この新作については言葉がいらないというのはわかっていただけたかと思いますが、この作品を作ることになると言った時の演出・振付家の目が忘れられません。あまりにも輝いて凄かったです、エネルギーが。俺はこれを創る、二人だけで創ると。で、出演が決まって、舞踊家としてこの上ない喜びですよね。普通に舞踊家だったら、振付家と一緒に作品を創っていくのですが、そこに自分を通して作品を見てくださって、それを私がお客さんに見せることができる、この振付家が感じている感動はこのようなものだと身体を通して出せるのは一番の喜びですよね。それ以上私も語るものがありません。自分自身、この話を聞いただけでも感動したのですが。

あとはクリエーションが、久しぶりに素直に楽しいクリエーションなんです。もちろん二人だけしかいないというのもそうなんで、3人でスタジオにこもってやっているんですが、穣さんの頭脳ではなく、心だけが見えるというクリエーションなのは久しぶりという感覚があって。それにただ私の心をぶつけて。この感覚を忘れずに舞台に立ちたいしお客さんに感動してほしいと思います」

Q.このワーグナーの曲のどんなところに魅力を感じられましたか?このタイミングで具体化しようと思ったきっかけは?

金森「18歳の時に感動したんです。ベジャールが使っていたんです。黛敏郎さんの編曲バージョンです。「M」という三島由紀夫を題材にした作品が、ちょうど自分がルードラに入って一年後の夏休みに帰って来た時に公演があって観てて、面白い作品だなと感銘を受けて自分も出たいなと思っていたんですが、一番最後のシーンでこの楽曲が使われていた時に、ベジャールには申し訳ないんだけどこの舞台で行われていることより、音楽に持っていかれて、この音楽がたまらないと。当然CDを買い、そこからずっとずっと聴いているんですが、何が好きかというと、わからないんです。感動したんです。ある音楽が、なぜ自分の魂にそれだけ触れてくるのか、わからないのです。それをわかろうと思ったら、自分は振付家だから作品を創るしかなかったんです、それが何なのかを知るために。

なぜ25年間もかかったのかというと、創ることができるとは思わなかったからです。とても感動したのですが、舞台が見えない。ある音楽に感動して、舞台が見える時と見えない時があるんです。それからいろんな作品を創って、実験をしていろんな勉強をして。『マッチ売りの話』と『passacaglia』も、結構頭を使った作品なんです。もちろん心も使ってますが。それを創った後で、ある人の話もあり、自分の心のありようもあり、一回頭を使って考えるのをやめようかと思ったんです。もっとピュアに、ある音楽が自分に何かを語ってくるので、語ってくるものを普遍的にお客さんに提示する才能がもし自分にあるのなら、振付家としての自分はそれだけで勝負したい。自分が感動したものを舞台で見せたい。理屈はいらない、というものを創りたいと思ったら、この曲しかなかったんです。

Q.今回の作品は「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲と「愛の死」を使っていますが、前奏曲では、「箱入り娘」で印象的だった吉崎裕哉さんがデュオで抜擢されています。彼の抜擢の理由は?

金森「いろんなことがあるのですが、一つに絞れることではなくて、それは言いたくないんですよ。舞台上で踊る彼を見ていただいて、その表現されているところを観てほしい。それは彼にも伝えているんです。「多分このことは聞かれるので、そう答えるから、よろしくね」と。自分が例えばそう思って発言したとして、「そういう風にして起用してくれたんだ、ではがんばろう」、というのではなくて、舞踊家自身が見出すべきだと思っています。今であれば、吉崎裕哉自身が、井関佐和子と二人だけのデュオで選ばれた、しかもこの作品で、なんで自分がそこにいるべきなのかということを、彼が今クリエイションを通して、稽古を通して見出すべきで、それがお客さんに伝わるはずなので。理由を知ってしまうと借りてきた猫みたいになってしまう。力量が足りてる、足りていないみたいな話には今回したくないんですよ。それが今回の作品を創る自分の、本当に心で創っているということと全く同じで。頭で創っていればいろいろ言えるのですが、それは言いたくなんですよね」

「今だいぶ稽古を重ねてきていて、あらかたラフスケッチは全部できていて、期待していいと思います」

Liebestod


Q.心の部分で作品を創るというのは、今までと感覚的にずいぶん違うものなんでしょうか?

金森「ガラッと違うわけではないんですが、比重の問題なんです。今回ワーグナーについてもリサーチしましたし、ワーグナーがこの曲を書くに至った、影響を受けたとされるショーペンハウワーの本も読みました。
ただ、それらが頭で理解した情報としてこの創作に結びついているというのは、ショーペンハウワーの「意志と表象の世界」の中の芸術論に非常に感銘を受けたからです。「愛の死」と同じくらい感動したんです。自分が感銘を受けたというのが今回何より重要で、それが頭で組み立てるための要素というよりは、感動したからショーペンハウワーの名前を出しているのです。だから今までのプロセスとは違います。言語化しようと思えばできるのですが、そうするのはこの作品に関しては、うそっぽくなるというか言語化できない部分があるのです。心の持ちようが今回は違いますね。

振りを創るときも、頭で考えて創らないようにしているので、出ない時には出ません。もちろん全部自分が創っていますし、100%もちろん振付ですし、そこに何かの方法論があるわけではなくて、本当にピュアに舞踊の振付家として、音楽を聴いて自分の体に来たら動く、それを振りとするというふうにしています。ストーリーを表現しようとはこれっぽちも思っていません」

「ASU」の時の動物として動いているのではなくて、人間として、舞踊家として動いています。自分が言うところの舞踊家ということは、そこにはバレエという自分を育ててくれた文脈も当然あり、またこの15年の間自分が身体と向き合う過程でして来たことも当然自分の体に入っており、全部それら、今の金森穣の身体が、今まで42年間培ってきたもの全部を用いて純粋に創っています」

Q.今回の原点回帰しようと思ったのは、ルーマニアで経験したことも関係していますか?

金森「ブカレストに行く前から、この作品のことは決めていたので関係はしていません。ただ、ブカレストで頂いた評価や、かけていただいた言葉が、あ、本当に「Liebestod」に続いていて良かったなと感じさせてくれたと思いました。それはやはり感動させたい、と。『バヤデール』ももちろん感動させたくて創ったのですが、ただそこにはいっぱい考えていることがありました。それらが伝わって感動させて掛けてもらった言葉なので、思考を否定しているわけではないんです。ただあまりにも概念にとらわれると、魂の部分、心の部分が見えづらくなる、感じづらくなってきた自分を感じたんです。いろいろ勉強して、いろんな考え方とか価値観、方法論を学んでくると、自分の魂に触れてくるものは何かということがちょっと忘れられそうになる、そこをなくしたらダメじゃない、と。一回ここに帰ったほうがいいんじゃないかという声が聞こえたので、そうしてみることにしました」


Q.「Liebestod」は物語はないということでしたが、前半、役名が「歓喜の女」「末期の男」という対照的なものとなっています。今の段階でどのような構成になっていますか?

金森「既存の物語はないということです。二人で純粋に踊っていますね。自分が死に行く存在、余命少ない男と、生きることの喜び、生命の輝きに満ち溢れている女がある瞬間に出会って愛し合う、というもので、男と女ということで愛なのですが、すごくトータルなものです。人生を肯定的に見て、生きていることが当たり前だと思って死を恐れるか、死ぬことを当たり前のことだと思って生命を喜ぶか、それは表裏一体で、つながっているわけです。それは男と女というものに当てはめて。「トリスタンとイゾルデ」もそういうところがあって。

それは神話から題材を取ってワーグナーが創っているわけであって。神話の重要性はワーグナーも著作で書いています。普遍的な、万物の真理のようなものに触れて物語が展開していくことが何より重要だと。私自身もそれは感じます。もちろん物語、ドラマはあります。物語を表現するために男性、女性がいるのではなく。男性と女性が大前提として存在し作品にポンと置いて、そこにワーグナーの音楽が流れてドラマが展開するというものです。


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いつもながら、金森穣さんの言葉には、真摯に作品に取り組み新しい挑戦を重ねる姿勢と鋭い知性、現代社会を見渡す目、芸術家としての覚悟が感じられます。「トリスタンとイゾルデ」の「愛の死」はその圧倒的な美しさやドラマティックさで、多くの振付家が取り組んできた音楽ですが、今回の作品も楽しみでなりません。

Noism1 
新作『Liebestod-愛の死』
レパートリー『Painted Desert』

演出振付:金森穣(愛の死)、山田勇気(Painted Desert)
出演:Noism1
---------------------
【新潟公演】
日時:2017.5.26(金)19:00、27(土)17:00、28(日)15:00 ※全3 回
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉
料金:一般 S席 4,000円、A席 3,000円
U25 S席 3,200円、A席 2,400円(全席指定)
※U25=25歳以下対象チケット
▼公演詳細
http://noism.jp/npe/n1_liebestod_pd_niigata/
---------------------
【埼玉公演】
日時:2017.6.2(金)19:00、3(土)17:00 、4(日)15:00 ※全3 回
会場:彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉
料金:一般 5,500円、U25 3,500円(全席指定)
※埼玉公演のU25はさいたま芸術劇場のみ取扱い。枚数制限あり
▼公演詳細
http://noism.jp/npe/n1_liebestod_pd_saitama/

2017/05/09

ザハロワ出演『トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2017』の『アモーレ』内容

昨年に続き、今年も9月に日本で『トランス=シベリア芸術祭 in Japan 』が開催され、スヴェトラーナ・ザハーロワがヴァイオリニスト ワディム・レーピンと夫婦共演をすることになったのは既報の通りです。

http://www.bunkamura.co.jp/topics/orchard/2017/04/_in_japan_2017.html

そのうちのザハーロワがプロデュースする『アモーレ』のプログラムは、日本だけでなく、ボリショイ劇場、そしてロンドンのコロシアム劇場でも上演されます。

ロンドン公演のプログラムについて詳細が載っていました。

http://www.broadwayworld.com/uk-regional/article/Svetlana-Zakharova-to-Bring-AMORE-Triple-Bill-to-London-Coliseum-20170508


「フランチェスカ・ダ・リミニ」
ユーリー・ポソホフ振付
FRANCESCA DA RIMINI / Running Time: 30 minutes
Music by PYOTR TCHAIKOVSKY
Choreographed by YURI POSSOKHOV
Set designer MARIA TREGUBOVA
Video designer YURY YARUSHNIKOV
Costume designer IGOR CHAPURIN
Lighting designer ANDREY ABRAMOV

Francesca - Svetlana Zakharova
Paolo - Denis Rodkin
Giovanni - Mikhail Lobukhin
Guardians of the Inferno -Karim Abdullin, Alexei Gainutdinov, Anton Gainutdinov
Court Ladies - Ana Turazashvili, Ekaterina Besedina, OlgaBarichka,
Ekaterina Smurova, Angelina Carpova


(こちらは、この作品がサンフランシスコ・バレエで上演された時の映像で、マリア・コチェトコワ、ホアン・ボアダが踊っています)



「The Rain Before It Falls」 
パトリック・ド・バナ振付。

RAIN BEFORE IT FALLS / Running Time: 25 minutes
Music by JOHANN Sebastian Bach, Ottorino Respighi, CARLOS QUINTANA-PINA
Choreographed by PATRICK DE BANA
Costume designer STEPHANIE BAEUERLE
Lighting designer JAMES ENGOT

Svetlana Zakharova, Denis Savin, Patrick De Bana


「Strokes Through the Tail」 マルグリット・ドンロン(Marguerite Donlon)振付

STROKES THROUGH THE TAIL / Running Time: 30 minutes
Music by WOLFGANG AMADEUS MOZART
Choreographed by MARGUERITE DONLON
Costume designer IGOR CHAPURIN
Light designer ANDREY ABRAMOV

Svetlana Zakharova, Mikhail Lobukhin, Denis Savin, Karim Abdullin, Alex Gainutdinov, Anton Gainutdinov

ポルトガル国立ダンスカンパニーで上演された時の映像

ボリショイ劇場でのプロモーション映像

「フランチェスカ・ダ・リミニ」は同名のチャイコフスキーの交響詩でダンテの「神曲」中にある詩を題材にしています。『オネーギン』の手紙のパ・ド・ドゥの曲としても良く知られていますね。

「The Rain Before It Falls」ではザハロワは紫色のドレスを着用、彼女とパトリック・ド・バナ、デニス・サヴィンとのパ・ド・トロワです。音楽はバッハと19世紀のイタリアの作曲家/ヴァイオリニストOttorino Respighi、そしてベネズエラの現代作曲家Carlos Quintana-Pinaの音楽を使用。

「Strokes Through the tai」lは、ザハロワの他5人の男性ダンサーが出演し、音楽はモーツァルトの交響曲第40番だそうです。マルグリット・ドンロンは、アイルランド出身の振付家で幅広いカンパニーの作品を提供。ドイツのザールブリュッケン州立バレエの元芸術監督です。

『トランス=シベリア芸術祭 in Japan 2017』

【公演日程】
2017年9月26日(火)、27日(水)、29日(金) 各日19:00開演

【会場】
Bunkamuraオーチャードホール

【プログラム・出演】
◆9/26(火)、27(水):ザハーロワ『アモーレ』
「Franceska Da Rimini」、「The Rain Before It Falls」、「Strokes Through The Tail」
スヴェトラーナ・ザハーロワ、ミハイル・ロブーヒン、デニス・ロヂキン 他

◆9/29(金):ザハーロワ&レーピン『パ・ド・ドゥ for Toes and Fingers』
「瀕死の白鳥」、「ライモンダ」より“グラン・アダージョ” 他
スヴェトラーナ・ザハーロワ、ワディム・レーピン(ヴァイオリン)、デニス・ロヂキン
フェスティバル・アンサンブル(室内オーケストラ) 他

【チケット料金】
S席¥17,000 A席¥13,000 B席¥9,000 C席¥6,000(税込)
※未就学児童入場不可
※やむをえない事情により出演者が変更になる場合がございます。

【チケット発売日】
MY Bunkamura先行販売:2017年5月16日(火)~29日(月)
一般発売:2017年5月30日(火)

【主催】 Bunkamura

【お問合せ】 Bunkamura 03-3477-3244 <10:00~19:00>

2017/05/07

Noismルーマニア公演報告会

メディア関係者に向けてNoism1最新公演、新作『Liebestod―愛の死』/レパートリー『Painted Desert』の制作発表と、ルーマニア公演の報告会が開催されました。Noism芸術監督の金森穣さん、副芸術監督の井関佐和子さんが出席しました。

ちょっと長くなってしまうので、まずはルーマニア公演の報告会についてのレポートをします。
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Noism劇的舞踊『ラ・バヤデール―幻の国』 2017.3.30
ルーマニア・ブカレスト公演 ブカレスト国立劇場

Noism1『マッチ売りの話』+『passacaglia』 :2017.4.5(水), 6(木)
ルーマニア・シビウ公演 ラドゥ・スタンカ国立劇場

Noismは、2017年3月27日より4月8日まで、ルーマニア公演を行いました。ルーマニアの首都ブカレストでは、『ラ・バヤデール―幻の国』を上演し、『マッチ売りの話』+『passacaglia』はシビウ国際演劇祭でも知られるシビウで上演されました。Noismにとってルーマニアでの公演は初めてのことでした。その報告から会見は始まりました。

金森穣
「Noismが設立されて14年が経ちますが、2007年から海外公演を行っています。ルーマニア公演は、Noism史上最も困難なツアーでした。ブカレストとシビウの2か所で公演したのですが、ブカレストは仕込みが間に合わず徹夜することになりました。開演時間も30分遅らせることになり、舞台が開かないのではないかと思うほど困難な公演でした。海外公演の場合には、現地の劇場にこういうものが必要です、とやり取りをするのですが、今回はなぜか、あると言っていたものがない、なら代わりにこれでやるか、と提案してもそれはできないと言われたり。海外公演だと大なり小なりこういうことはあるのですが、今回ほど大変だったことはありませんでした。

おかげさまで反響はものすごく良く、舞台評はとても深いレベルで私達の活動、創作についての姿勢を評価してくださったので、大変さが報われたと思いました。その後のシビウは、演劇祭をやっているところなのでスタッフも協力的だったのでいいツアーでした。

ブカレストは大変だったからこそ、劇場に何らかの形でもう一度戻ってリベンジしたい。凄くいい評価を得たものの、そこまで万全の照明とか美術とかを見せることができなかったので、その悔いが残ります。

そこから同時に、パフォーミングアーツにおいて、何が重要なのか学びました。照明とか美術などが完全に表現されることで、表現されるものがあると。ただ舞踊家たちがその瞬間、どれだけのエネルギーをかけてその瞬間を生き切れているか、その核となる部分がお客さんを感動させるのだと思うし、それがブカレストのお客さんに届いたと思っています。これからも細部にわたって、より高いレベルのものを舞台上に表現していきたいと思いますが、とても重要なものを学ぶ良い機会でした」

井関佐和子
「私の舞踊家人生の中でも、これほどぶっつけ本番な舞台はありませんでした。新人がたくさんいたので、彼らはなるべく舞台に立たせてあげたいという穣さんの想いもあったのですが、ダンサーには限られた時間しか与えられなくて。穣さんに「任せてください」と出て行ったのですが、それは口から出て来た言葉で、内心は、こんなに緊張するのかと思ったくらい緊張して舞台に立ちました。

もちろん自分はこの作品を良く知っていて分かっていて踊りながら照明が、などいろいろ感じていたのですが、終わった時に、お客さんが凄い熱気と共に熱い視線を送ってきてくれるのを感じました。ダイレクトでとてもわかりやすいのです。終わった後のレセプションなどでも、駆けつけてくれる感が日本と全然違う感じでした。自分自身辛かったのですが、日本ではなかなか味わえない称賛を頂いたり、自分自身が何を心に持って舞台に立っているかということをすごくわかってくれていました。見抜かれているというか。辛い分、自信がさらについたし本当に嬉しかったです。穣さんがおっしゃったように、何が舞台にとって重要なのかを改めて感じました」

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ルーマニアでの全3回の公演はすべて満席で、客席はオールスタンディングオベーションとなるほどの熱い反応がありました。各公演前に行われた記者会見では、作品の内容はもちろん、Noismメソッドなど訓練方法についても質問があり、カンパニーとして注目度の高さがうかがえたとのことです。

Q.観客層はどのような人たちでしたか?

金森「老若男女という感じでしたが、ブカレストはオペラハウスで国立劇場なので、バレエとか海外から来た大きな公演が上演されるような劇場なので、少しお洒落をした方たちが多いです。シビウは小さい劇場でしたし、演劇祭を行うようなところなので若い人が多く、もう少しカジュアルな客層でした。作品が違ったということもありましたが、ごちらでも好評でした。シビウは演劇祭をやっているので、見巧者が多かったと感じました。レセプションとか、終演後に交わす言葉の中に、あそこまで理解してくれているんだ、あそこを評価してくれるんだと言うところがいくつもあり非常に嬉しかったです。報われた気にはなりますよね。身体のトレーニング方法とか、メソッドのオリジナリティとか、そういう集団性みたいなものに、ものすごく感銘を受けてくれていて。

ブカレストにはNoism1のほかNoism2も行っていて、2は若くてまだプロの舞踊家になっていませんが、ルーマニアの人達に言わせれば彼らはすべて一流の舞踊家としてそこに立っているということを言ってくれるくらい。日本では良く揃っているのは当たり前と思われているのですが、それは実は当たり前のことではない。それもただ統率が取れているという次元ではなくて、身体の重心の位置とか、身体表現としての芯が文化的にとても培われていると。「クラシックバレエ的な要素」と向こうの人が言ったときには、いわゆる100年前に日本にクラシックバレエが入ってきたものとは意味合いが違うんです。それはやはり感じるし、逆に問題意識を、極東アジアで、日本人で持っているということにとても感銘を受けてくれました。下手したらルーマニアでバレエをやっている人より、バレエを愛しているのではないかと思ってくれたような」

Q。『ラ・バヤデール』は満州を舞台にした作品ですが、そのあたりの背景について現地ではどこまで理解されていましたか?

「『ラ・バヤデール』は台詞のある作品で、日本語で演じていました。大半のお客さんは字幕を出していたとはいえ、舞台を観ながら何かを感じているんです、「史実に基づいているんですよね」とか。ある高名な評論家の方に、「歴史的な考察を踏まえ、今の現代社会の問題意識と照らし合わせてしっかりとした政治的なメッセージも入っている」という感想をいただきました。なので届いてはいるんですよ。その人がどこまで史実的なことにこだわっているかは別にして。私たちも平田(オリザ)さんとこの作品を作るときに、反省をしようとかそのことがいいとか悪いとか言うことが私たちの目的ではなくて、ある種普遍的に、いつの時代でも人間としてありうること、まさに今社会がこのような状況になっている時において考えるべきこと、題材として枠組みを用いているのです。だから普遍的なものであるべきだし、問いかけるものです。我々がこうです、というものではないという認識を向こうが受け取ってくれているので、それは嬉しいですし、励みになりますね」


『マッチ売りの話』でも客席で泣いている方はいました。無言劇で仮面を使っていますよね。その中で感情表現をしっかり読み取って。で、意外と『パッサカリア』にどのようにつながっているか、違和感なくストレートに受け止めてくれて、それで涙してくれている人がいらっしゃったので。ダブルビルという感じが日本ほどしなかったです。日本から来ているということで、異文化から来るものとして、何が起こってもとりあえずそのものとして受容すると。大前提としてなんでこの二つ、という風には入らないで、ボーンとそのものをまずストレートに受け止めて、自分が何を感じてそこからどんな問題意識を感じるかという風に観ている気がします」

Q.今回の公演は国際交流基金の主催によるものですが、ルーマニアで行われたのはなぜでしょうか。

「ルーマニアに決まった経緯としては、国際交流基金の方から、いろんな各地の大使館とか劇場に問い合わせをしていく中で、大使館の方では、ルーマニアでは難しいのではないかという話もあったのですが、ルーマニアのJTIのジルダさんとシビウの演劇祭のキリアックさんから強い要望がありました。Noism呼べないんじゃないかという話になった時に、ジルダとキリアックでNoismの資料を見て、これは絶対に呼ばなければだめだと彼らが強く推したのです。キリアックは、シビウの演劇祭と絡めて無理やりでも呼びたいと。また今度の6月には、ワークショップでも来てほしいというラブコールもあります。独自の訓練法とか、洋の東西をどのように掛け合わせて身体に向き合っているのかということに対してものすごく関心があって、それをシビウやルーマニアの舞踊家に教えてほしいと。今は調整中なのですが」


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クラシック・バレエの伝統があるブカレストと、ヨーロッパ3大演劇祭にも数えられる著名なシビウ国際演劇祭のシビウで、Noismの斬新な作品が大好評を得たのは非常に大きな意味があると感じられます。日本のバレエやダンスカンパニーで海外公演を行うところはないわけではないのですが、Noismのようにバレエをベースにしながらも独自のメソッドを持ち、演劇性も高いオリジナルの現代作品を上演するカンパニーで海外公演を行うところは少ないでしょう。金森穣さんの振付、そしてNoismの高いクオリティのパフォーマンスを日本、そして世界中の多くの観客に観てほしいと切に思います。

Noism1 
新作『Liebestod-愛の死』
レパートリー『Painted Desert』
演出振付:金森穣(愛の死)、山田勇気(Painted Desert)
出演:Noism1
---------------------
【新潟公演】
日時:2017.5.26(金)19:00、27(土)17:00、28(日)15:00 ※全3 回
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉
料金:一般 S席 4,000円、A席 3,000円
U25 S席 3,200円、A席 2,400円(全席指定)
※U25=25歳以下対象チケット
▼公演詳細
http://noism.jp/npe/n1_liebestod_pd_niigata/
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【埼玉公演】
日時:2017.6.2(金)19:00、3(土)17:00 、4(日)15:00 ※全3 回
会場:彩の国さいたま芸術劇場〈大ホール〉
料金:一般 5,500円、U25 3,500円(全席指定)
※埼玉公演のU25はさいたま芸術劇場のみ取扱い。枚数制限あり
▼公演詳細
http://noism.jp/npe/n1_liebestod_pd_saitama/

2017/05/06

カナダ・ナショナル・バレエスクールのアセンブリ・インターナショナル

カナダ・ナショナルバレエスクールで、4年に1度、世界中のバレエ学校の生徒と教師が集まるアセンブリ・インターナショナルというカンファレンスが4月30日より5月6日まで開催中です。

http://www.nbs-enb.ca/Assemblee-Internationale

2009年に第一回が開催され、今回は3回目。世界中11か国から21校のバレエ学校、およそ100人の生徒が参加(さらに75人のカナダ・ナショナルバレエスクールの生徒たちも)。4つのパフォーマンスも行われます。

参加学校
http://www.nbs-enb.ca/NBS-Events-Performances/Assemblee-Internationale/Participating-Schools
<北米>
カナダ・ナショナル・バレエスクール、L’École supérieure de ballet du Québec(カナダ、ケベック)、ヒューストン・バレエ・アカデミー、キューバ国立バレエ学校、ロイヤル・ウィニペグバレエスクール(カナダ)、サンフランシスコ・バレエ・スクール、ボストン・バレエスクール、エイリー・スクール

<ヨーロッパ>
ハンブルグ・バレエ・スクール、Codarts Rotterdam(オランダ)、EESA/CPD de L’Institut del Teatre(スペイン、バルセロナ)、デン・ハーグ王立コンセルヴァトゥワール(オランダ)、オランダ国立バレエ学校、Palucca Hochschule für Tanz Dresden(ドイツ、ドレスデン)、パリ・オペラ座学校、ロイヤル・バレエ・スクール、デンマーク王立バレエ学校、カンヌ・ロゼラ・ハイタワー・エコール(フランス)、The Ballet Academy of the University of Music and Performing Arts(ドイツ、ミュンヘン)

<オセアニア>
オーストラリア・バレエ学校、ニュージーランド・バレエ学校

オペラ座学校、ロイヤル・バレエスクール、ハンブルグ・バレエ学校など著名なバレエスクールのクラス、そしてパフォーマンスがたくさん配信されており、アーカイブでも視聴できます。


映像アーカイブが素晴らしいです。続々と新しい映像がアップされています。無料で視聴可能。
http://capture.nbs-enb.ca/39/page/Home.aspx

パリ・オペラ座学校、エリザベット・プラテルのクラスも視聴できます。
http://capture.nbs-enb.ca/39/Watch/1398.aspx

パフォーマンスはこちらなど。
http://capture.nbs-enb.ca/39/Watch/1388.aspx

リサ・パヴァーヌ(オーストラリア・バレエ学校)、トーマス・ルンド(デンマーク王立バレエ学校)、パトリック・アルマン(サンフランシスコ・バレエ・スクール)、デボラ・ヘス(カナダ・ナショナル・バレエスクール)など著名教師によるリハーサルやクラスは勉強になると思います。キューバ国立バレエ学校の教師によるクラスなども観られます。

詳しい情報はこちらのOLIVEさんのブログでも!
https://ameblo.jp/mespetitsdanseurs3/

ミラノ・スカラ座バレエの芸術監督にフレデリック・オリヴィエリが復帰

2016年に、ボリショイ・バレエの芸術監督に就任したマハール・ワジーエフの後任として、ミラノ・スカラ座バレエの芸術監督にマウロ・ビゴンゼッティが就任しました。が、レパートリーが大幅にコンテンポラリー寄りとなったことでダンサーの大きな反発を食らい、デモが行われる事態となりました。そしてこのレパートリーは観客にも批評家にもそっぽを向かれてしまいました。

ビゴンゼッティは健康上の理由から、一シーズン目、2016年10月に早くも退任。芸術監督代行に、元芸術監督にフレデリック・オリヴィエリが就任していました。

そして、このオリヴィエリがスカラ座バレエの芸術監督に復帰することになりました。任期は3年。

http://www.adnkronos.com/intrattenimento/spettacolo/2017/05/05/frederic-olivieri-nuovo-direttore-corpo-ballo-della-scala_MnTGOjct4R4414lnzxFROO.html

Good news… Frédéric Olivieri’s back to head the La Scala Ballet

https://www.gramilano.com/2017/05/good-news-frederic-olivieris-back-head-la-scala-ballet/

スカラ座のアレクサンドル・ペレイラ総裁がオリヴィエリの就任を発表したところ、ダンサーたちは歓迎の意味を込めて大きな拍手を贈ったとのことです。

フレデリック・オリヴィエリは、パリ・オペラ座バレエ、モンテカルロ・バレエ、ハンブルグ・バレエで活躍。大けがで32歳の時にダンサーを引退しましたが、2002年から2007年までミラノ・スカラ座バレエの芸術監督となります。退任後は、ミラノ・スカラ座バレエ学校の校長を務めていました。講習会やコンクールの審査員などでたびたび来日しています。

2017-18シーズンの構想としては、アンナ・マリー・ホームズ版「海賊」の新プロダクション(美術はルイザ・スピナッテリ)が予定されているとのことです。また「ラ・バヤデール」もレパートリーに復帰するとのこと。

クラシック・バレエの歴史上大きな役割を果たしていたイタリアですが、現在ではクラシックを上演するバレエ団は、スカラ座とローマ歌劇場バレエのみとなってしまいました。前回の芸術監督時代も評判の良かったオリヴィエリは、クラシックの灯を守る重要な役割を果たすことになります。

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2017/05/04

ヌレエフの亡命事件を扱った映画「The White Crow」続報

ルドルフ・ヌレエフの亡命事件を扱った、レイフ・ファインズ監督の映画「The White Crow」が製作中ですが、いくつかの続報があります。

http://www.screendaily.com/5117358.article#

監督であるファインズ自身が、ヌレエフの恩師であるアレクサンドル・プーシキン役を演じるとのことです。

キャストですが、既報の通り、ヌレエフ役を演じるのはカザン劇場のオレグ・イヴェンコ。セルゲイ・ポルーニンは、彼のライバルでのちに悲劇的な最期を遂げるユーリ・ソロヴィヨフ役を演じます。また、ヌレエフの亡命を手助けしたクララ・セイントを演じるのは、「アデル ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロス。ロシアの人気女優チュルパン・ハマトーヴァ、「エル」で今年のセザール賞助演男優賞にノミネートされたローラン・ラフィットらが共演します。

撮影は2017年の夏からで、パリとサンクトペテルブルグで行われます。オペラ・ガルニエ、マリインスキー劇場での撮影も行われる予定で、レイフ・ファインズはしばしばワガノワ・アカデミーを訪れています。

原作は、ジュリー・カヴァナの「Rudolf Nureyev The Life」で、著名な脚本家デヴィッド・ヘアが脚色。BBCフィルムズが製作しており、プロデューサーは、セルゲイ・ポルーニンのドキュメンタリー「ダンサー セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」のガブルエル・ターナです。もともと、こちらの「The White Crow」でポルーニンに出会ったことがきっかけで、「ダンサー」が製作されたとのことです。

衣装デザインは「ジャッキー」のマデリーン・フォンテーン、音楽は「ダンサー セルゲイ・ポルーニン」のイラン・エシュケリ。

この作品のクラシックの振付の監修はイーゴリ・ゼレンスキーが行う一方で、クリストファー・ウィールドンがこの映画のための振付を担当するとのことです。

「The White Crow」は今年のカンヌ国際映画祭のマーケットに出品されます。

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2017/05/03

ロイヤル・バレエのアシュトン・トリプルビル リハーサルネット中継

ロイヤル・バレエのアシュトン・プログラム(「真夏の夜の夢」「シンフォニック・ヴァリエーションズ」「マルグリットとアルマン」のリハーサルのネット中継が5月3日、現地時間19:15、日本時間は4日早朝3:15 よりロイヤル・オペラハウスのYouTubeチャンネルで行われます。

http://www.roh.org.uk/news/watch-live-rehearsals-for-the-royal-ballets-forthcoming-programme-of-works-by-ashton

「マルグリットとアルマン」はゼナイダ・ヤノウスキー、「真夏の夜の夢」はフランチェスカ・ヘイワードとマルセリーノ・サンベがリハーサルする様子を視聴できるようです。

またアシュトンの遺産についてのパネルディスカッションとインタビューということで、芸術監督のケヴィン・オヘア、振付指導のレスリー・コリアも登場するそうです。

日本時間での生中継は早朝で辛い時間ですが、今までの例ですとこのリハーサルネット中継はアーカイヴとして視聴できているので、こちらも後で視聴可能かと思われます。

アシュトン・プログラムの予告編


なお、このアシュトン・プログラムの6月7日の公演で、ゼナイダ・ヤノウスキーがロイヤル・バレエを引退します。彼女がロベルト・ボッレと出演する「マルグリットとアルマン」を含む公演は、映画館で中継され、日本でもロイヤル・オペラハウスシネマシーズンで映画館で上映される予定です。

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「真夏の夜の夢/シンフォニック・ヴァリエーションズ/マルグリットとアルマン」は9月1日(金)より順次映画館上映の予定となっています。


勅使川原三郎 KARAS APPARATUS アップデイトダンスNo.45 「硝子の月」

4月30日まで上演されていた、勅使川原三郎さんと佐東利穂子さんの「トリスタンとイゾルデ」

KARAS APPARATUSで昨年上演されていた時も、勅使川原さんの最高傑作の一つで、この上なく美しく、圧倒的なダンスがドラマを紡ぎ出していた作品でしたが、シアターXでの再演でパワーアップしました。

ここでも魔術的なほどのコントロールされた照明で、漆黒の闇の中に無限の広がりを感じさせ、運命の恋人たちの愛と死をミニマルだかドラマティックに演出。APPARATUSほどの小空間ではなくても、照明効果でふっと人が消えたり現れたりして二人が別の空間に存在していることを象徴。勅使川原さんの公演の照明の見事さにはいつも魅せられます。

後半の佐東さんの爆発ぶりが凄まじい。勅使川原さんとの触れそうで触れ合わないのに周波数で同期するデュエットから、彼が消えた後に残されたコートを被り慟哭するソロ、そして終幕へ。狂おしいまでの熱情に包まれる、圧倒的なパフォーマンスに魂を掴まれました。この人は本当に人間なんだろうか、と思うほど佐東さんのダンスは凄絶でスピーディな中に情感がこもっていました。上演時間4時間の「トリスタンとイゾルデ」の世界を、1時間に凝縮して、愛と死の無限循環を見せてくれたステージ、心に残るものでした。

「トリスタンとイゾルデ」は、この後、イタリア、そしてフランスでの公演も予定されているとのことです。


さて、KARAS APPARATUSでは、アップデイトダンスNo.45 「硝子の月」を5月5日より上演します。
http://www.st-karas.com/camp0713-2/

“ガラス”や “月”というモチーフは勅使川原さんが創作を続ける中でこれまでも重要なモチーフとして扱ってきました。今年 4 作品目のアップデイトダンスは、原作を持たない全く独自の創作です。

アップデイトダンス作品は、「白痴」や今回の「トリスタンとイゾルデ」のように、クオリティの高い作品はシアターXなどより大きい舞台で上演され、さらに海外でのツアーでも上演されたりすることもあります。作品の誕生に、親密な空間で立ち会える機会、ぜひ体験してください。

出演 勅使川原三郎 佐東利穂子

演出 / 構成 勅使川原三郎

【日時】
2017年
5月5日(金)20:00
5月6日(土)20:00
5月7日(日)16:00
5月8日(月)20:00
5月9日(火)休演日
5月10日(水)20:00
5月11日(木)20:00
5月12日(金)20:00
5月13日(土)16:00
開演30分前より受付開始、客席開場は10分前

【会場】カラス・アパラタス/B2ホール
〒167-0051杉並区荻窪5-11-15 F1/B1/B2

【料金】(全席自由)
一般 予約 2500円 当日3000円 学生1500円(予約,当日共に)

【予約】メール updatedance@st-karas.com 
件名を「アップデイトNo.45」として、本文にご希望の日付・
一般または学生・枚数・郵便番号・住所・氏名・
日中連絡のつく電話番号をご記入ください。
予約は各回前日の24時まで受け付けています。

【問合せ】
TEL. 03-6276-9136


2017/05/02

NHK-BSプレミアム「プレミアムシアター」で5/21ロイヤル・バレエ『アナスタシア』 パリ・オペラ座バレエ『レイン』放映

5月22日(月)【5月21日(日)深夜】午前0時20分~NHK-BSプレミアム「プレミアムシアター」で

英国ロイヤル・バレエ『アナスタシア』
パリ・オペラ座バレエ『レイン』 (再放送)

があります。

http://www4.nhk.or.jp/premium/

◇英国ロイヤル・バレエ「アナスタシア」
<演 目>
バレエ「アナスタシア」(全3幕)
振付:ケネス・マクミラン
音楽:チャイコフスキー、ボフスラフ・マルティヌー

<出 演>
皇帝ニコライ2世:クリストファー・サウンダース
皇后アレクサンドラ:クリスティーナ・アレスティス
皇女アナスタシア/アナ・アンダーソン:ナターリア・オシポワ
ラスプーチン:ティアゴ・ソアレス
マチルダ・クシェシンスカヤ:マリアネラ・ヌニェス
クシェシンスカヤのパートナー:フェデリコ・ボネッリ
アナの夫:エドワード・ワトソン ほか

<舞台美術>ボブ・クロウリー
<照 明>ジョン・B・リード

<管弦楽>コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団
<指 揮>サイモン・ヒューイット

収録:2016年11月2日 コヴェントガーデン王立歌劇場(ロンドン)


◇パリ・オペラ座バレエ「レイン」

<演 目>
「レイン」
振付:アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル
音楽:「18人の音楽家のための音楽」 スティーブ・ライヒ 作曲

<出 演>
ヴァレンティーヌ・コラサンテ
ミュリエル・ズスペルギー
クリステル・グラニエ
パク・セウン
レオノール・ボーラック
アメリ・ラムルー
ローラ・バッハマン
ヴァンサン・シャイエ
ニコラ・ポール
ダニエル・ストークス

<歌>シナジー・ボーカルズ
<アンサンブル>アンサンブル・イクトゥス
<指 揮>ジョルジュ・エリー・オクトール

収録:2014年10月18日、21日 パリ・オペラ座 ガルニエ宮(フランス)


『アナスタシア』は英国ロイヤル・オペラハウスシネマシーズンで映画館上映されたので、ご覧になった方もいると思います。3幕でのナタリア・オシポワの鮮烈な演技がとても印象的でした。

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(試写で観た時の感想)
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2017/01/post-8843.html


なお、同じ5月21日(日)21時からEテレ「クラシック音楽館」にて、

NHKバレエの饗宴2017の放映もあります。

こちらも、新国立劇場バレエ団の「テーマとヴァリエーション」、貞松浜田バレエ団の「死の島」(森優貴振付)など素晴らしいパフォーマンスが行われた模様の収録なので、見逃せません。

K-BALLET COMPANY新作「クレオパトラ」

K-BALLET COMPANYが、今年の10月に、熊川哲也さん振付の『クレオパトラ』を初演します。

K-BALLET COMPANY Autumn Tour 2017公演・演目決定!
http://www.bunkamura.co.jp/topics/orchard/2017/03/k-ballet_company_autumn_tour_2017.html

『クレオパトラ』公演・出演者情報
http://www.k-ballet.co.jp/performances/2017cleopatra


K-BALLET COMPANY Autumn Tour 2017
「クレオパトラ」 <世界初演> 公演

2017年10月6日(金)~29日(日)東京・名古屋・大阪公演

演出・振付:熊川哲也
音楽:カール・ニールセン ほか
舞台美術デザイン:ダニエル・オストリング
衣裳デザイン:前田文子
照明:足立 恒


10月6日(金)Bunkamuraオーチャードホールでの公演を皮切りに、東京11公演(Bunkamuraオーチャードホール7回、東京文化会館4回)、大阪と名古屋で各1回公演と、合計13公演も行います。

クレオパトラ役に浅川紫織さんと中村祥子さん、プトレマイオス役に篠宮佑一さんと山本雅也さん、カエサル役にスチュアート・キャシディ、アントニウス役に宮尾俊太郎さんと栗山廉さん、オクタヴィアヌス役に遅沢佑介さんと杉野慧さん。

会場
東京:Bunkamura オーチャードホール/東京文化会館 大ホール
名古屋:愛知県芸術劇場大ホール
大阪:フェスティバルホール

一般発売日
東京:6/4(日)
名古屋:6/17(土)
大阪:6月(予定)

チケット情報
[お問い合わせ]
チケットスペース 03-3234-9999(東京)
CBCテレビ事業部 052-241-8118(名古屋)
フェスティバルホール 06-6231-2221(大阪)

全幕の全くの新作を振付け、製作し、これだけの公演数を上演する姿勢は素晴らしいですね。題材も面白そうですし、楽しみな作品です。


なおK-BALLET COMPANYは、

『海賊』
2017.5.24~6.17

『ジゼル』
2017.6.23~6.25

の上演も控えており、こちらも充実したパフォーマンスが観られることでしょう。

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