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2017/04/10

「日本バレエを変える ─コーイチ・クボの挑戦」

意欲的な作品を次々と上演し、今乗りに乗っているNBAバレエ団。ハロウィンの時期に上演して大きな話題を呼んだ『ドラキュラ』、美空ひばりの生涯をバレエ化した『HIBARI』(文化庁芸術祭新人賞を受賞)、そして昨年の『スターズ・アンド・ストライプス』では日本のバレエカンパニーでは初めてこのバランシンの作品を全編上演し、さらにダレル・グランド・ムールトリーと平山素子さんの新作を上演するというトリプルビルを成功に導きました。
バレエ団のパフォーマンスのレベルも年々上がっており、バレエ団全体が勢いに乗って、ポジティブな若いエネルギーを発散させているのを感じます。

そのNBAバレエ団を率いるのが、久保綋一さん。16歳の時にモスクワ国際バレエコンクールで銀賞を受賞(金賞なし)し、コロラド・バレエに入団。2010年までプリンシパルとして活躍し続けました。帰国後はNBAバレエ団のバレエ・マスターを経て2012年に芸術監督に就任しています。

この久保綋一さんの自伝的な著書が、「日本バレエを変える ─コーイチ・クボの挑戦」です。バレエ一家に育った彼が、子ども時代からバレエに熱中し、様々な師匠にバレエを学びます。彼とほぼ同世代に、岩田守弘さん、熊川哲也さん、小嶋直也さんといった錚々たる男性ダンサーたちがいて、切磋琢磨しながら技術を磨き、国際コンクールに挑戦していきます。165cmと小柄な久保さんは、日本やヨーロッパよりもアメリカで踊ったほうがいいというお父さん、久保栄一さんの後押しもありました。

旧ソビエト、ペレストロイカの真っ最中に、岩田守弘さんと共に挑んだモスクワ国際コンクール、アメリカのバレエ団への挑戦。コロラド・バレエでの日々。アメリカのダンスマガジン誌の表紙を飾ったりニューヨークタイムズに舞台写真が大きく載って絶賛されるほどの大活躍を見せます。小柄なため合っているパートナーを探すのが大変だったものの、シャロン・ウェナーという魅力的なバレリーナとパートナーシップを築き上げました。やんちゃ坊主だった久保さんが、次第に成長していくさまが様々なエピソードで語られています。

順調に見えたコロラド・バレエでの日々でしたが、前十字靱帯損傷という大けが、彼の恩人である芸術監督マーティン・フリードマンの解雇など様々な波風もありました。そしてコロラド・バレエを退団して帰国。そこで日本のバレエ界の現状になじめず、反発します。久保さんは、やがて、自分で日本のバレエ界を変えてやろうという使命感を感じるようになりました。

バレエ団は東京に集中して数が多いのに、劇場の数が少なくて取り合いをしなければならないという問題。アメリカでは専用のオペラハウスがあり、ダンサーたちにチケットノルマもなく、シーズン中にはリハーサルをしながら本公演を次々とこなして技術を磨くことができる。給料も年金も雇用保険も傷害保険もあり、労働組合もあって職業人として守られている、そういう環境を、久保さんは日本でも実現したいと思っています。また日本の、そして世界の振付家をどんどん起用して、海外のカンパニーのようにバレエを進化させて、日本のバレエを変え、国内外でツアーを行いたいと願っています。その情熱は、本の行間からも伝わってきます。

この本は、久保さんのみならず、様々な関係者の証言が載っています。久保さんの両親始め、コロラド・バレエの団員だった篠崎玲子さん、マーティン・フリードマン、シャロン・ウェナーなど。そのため、多面的に久保さんの足跡をたどることができ、具体的に彼の活躍ぶりや人物像を実感することができます。今は、日本で活躍する日本人ダンサーも増えましたが、久保さんの時代はそこまで多くはなく、またプリンシパルまで上り詰めた人もまれで、ダンスマガジン誌の表紙まで飾った日本人男性ダンサーは他にはいなかったかと思います。小柄というハンディをどのように克服して、「ジゼル」のアルブレヒトや「白鳥の湖」の王子など貴公子役までも踊ることができたのか、また人間としてどのように成熟していったのかも、多くの具体的なエピソードを通して伝わってきます。自分を飾ることなく、失敗なども含めて非常に率直な物言いで語られているので、思わず久保さんに親近感も覚えてしまいます。写真も多数。

まだNBAバレエ団を通しての、久保さんの日本のバレエを変えていくチャレンジは始まったばかりで、もう少しこのあたりの彼の具体的な構想を読みたかった気もします。が、海外にチャレンジしたい若いダンサーにとっては、非常に参考になる一冊であり、アメリカのバレエ団はどのような活動をしているのかもよくわかります。

また、この本の付録には、久保さんの踊る映像が多数収録されているDVDがあります。バランシンの「スターズ・アンド・ストライプス」のように、版権がおそらく非常に高価なものまできっちり権利がクリアされており、彼がどれほどすごいダンサーであったかを、それらの映像を通して観ることができます。なかなか日本では観ることができない作品も入っており、まさにお宝映像というべきでしょう。このDVDがついてこの値段というのはお得です。

久保さんが夢見ている、日本のバレエ界の改革が早く実現するように祈るとともに、NBAバレエ団のこれからの発展がとても楽しみです。まずは、5月20日、21日にクリストファー・ウィールドン振付『真夏の夜の夢』 と、アンソニー・チューダー振付『葉は色褪せて』というこれまた大変魅力的なダブルビルが予定されています。

http://www.nbaballet.org/performance/2017/midsummer_nights_dream/

『真夏の夜の夢』
『葉は色褪せて』

日   時: 2017年5月20日(土)
   開場12:15・開演13:00
   開場17:15・開演18:00
2017年5月21日(日)
   開場13:15・開演14:00
会   場: 新国立劇場 中劇場
チケット料金: S席 8,640円
A席 6,480円
B席 5,400円
学生席 3,240円

この本を出版している株式会社チャイコの編集の方のブログも大変面白いです。
http://nuekoballet.jugem.jp/?eid=138

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コメント

本はまだ読んでいないのですが(汗)久保さんの今までの経歴や生き方、そして考えには共感しています、そして彼もほんと熱い人だなと。それが今のNBAバレエ団の姿にすごく現れている気がしてなりません。
このカンパニーの将来が楽しみですし、今多くの人に舞台を観てもらい、素晴らしさを体感してもらいたいですね!

たかまろさん、こんにちは!

本当に久保さん、そしてNBAバレエ団は頑張っているので、応援しなくちゃ!って気持ちになります。地元所沢を大事にしているところもいいですよね。そう、その久保さんの姿勢がバレエ団の姿に現れているんだと思います。実力もメキメキ上がっていますものね~。

ぜひ、多くの人達の彼らの舞台を観てもらいたい、って思います。魅力的なダンサーもたくさんいるし、レパートリーも攻めていますものね。

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