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2017/03/21

振付家トリシャ・ブラウン逝去

ポスト・モダンダンスの旗手、振付家で、トリシャ・ブラウン・カンパニーを率いているトリシャ・ブラウンが亡くなったと、カンパニーのサイトとニューヨークタイムズに訃報が掲載されました。

https://www.trishabrowncompany.org/

Trisha Brown, Choreographer and Pillar of American Postmodern Dance, Dies at 80
https://mobile.nytimes.com/2017/03/20/arts/dance/trisha-brown-dead-modern-dance-choreographer.html

トリシャ・ブラウンは、3月18日にサンアントニオで逝去しました。享年80歳。2011年以来、脳血管性認知症の治療を受けていたそうです。2012年12月に、2011年に振付けた2つの作品が最後のものであると発表されていました。

30年以上にわたって、トリシャ・ブラウンは振付家として国際的に活躍しました。パリ・オペラ座バレエに作品を振付け、ミハイル・バリシニコフとコラボレーションを行い、ロバート・ラウシェンバーグなどのビジュアルアーティストに舞台美術を依頼するなど幅広く活動していました。彼女ほどの影響力が大きく、ダンスの知性と官能的な面を組み合わせたクリエーターは少なかったとされています。21世紀にいたるまで、主にニューヨークで発表された彼女の作品は、モダンダンスの創造者たちの新世代を作り上げることに貢献しました。

1983年の『セット・アンド・リセット』でアメリカだけでなく、ヨーロッパでも高い評価を得ました。音楽はローリー・アンダーソン、舞台美術はロバート・ラウシェンバーグに委嘱したこの官能的な作品は、ポスト・モダンダンス作品ではもっとも愛された作品の一つです。

1988年にフランス政府はトリシャ・ブラウンにレジオン・ドヌール勲章のシェヴァリエを授与。2000年には同勲章のオフィシエ、2004年にはコマンドゥールを授与されました。

トリシャ・ブラウンは1936年11月25日にワシントン州に生まれました。1961年にニューヨークに拠点を移し、ジャドソン・ダンス・シアター・グループの創設メンバーに加わります。共に活動したデヴィッド・ゴードン、スティーヴ・パクストン、イヴォンヌ・レイナー同様、超絶技巧、アカデミックなテクニック、演技、音楽性といったマーサ・グレアムなどが切り開いたモダンダンスの特徴(バレエの影響も)を遮断した作品を創造しました。

1970年には自らのトリシャ・ブラウン・カンパニーを設立。これらの年代においては、ブラウンは、通常考えられない場所において、音楽なしの作品を創造しました。1970年代終わりまで、「ポスト・モダンダンス」という言葉は確立されておらず、後年になって、ブラウンやジャドソン・ダンス・シアターグループのメンバーたちがモダニズムの過激さの中にダンス界をリードしていたことが認識されています。

ブラウンが尊敬していた振付家マース・カニンガムは、ダンスを音楽とデザインから独立した存在としました。そして彼女は、さらにそれを進めてダンスを技術の負荷から自由なものとし、70年代には音楽の伴奏なしでそれを見せたのです。これが「デモクラティック・ダンス」であり、新しいコンビネーションを使っているにもかかわらず、ダンスの訓練を受けていない平均的なダンサーができる動きで構成されていました。いくつかのダンスは裸足で上演され、他のダンスはスニーカーでの上演でした。

1971年にブラウンが振付けた歴史的な3作品は、その題名だけで内容を物語っています。『建物の壁を歩く』『ルーフ・ピース』『累積』。『建物の壁を歩く』は、ダンサーがハーネスで吊るされて壁の間を歩く作品、『ルーフ・ピース』はソーホーの10のブロックにおける12の屋根の上にダンサーたちを広げ、重力を使って反重力に挑みました。『累積』は、動きの単位が一つずつ加算されては元に戻って反復される、正確なカウントと記憶を要求する数学的なシステムに従った作品です。これらの作品に体現されたその時代の実験的なダンスは、従来の美学に対抗するものでありましたが、ブラウンは、新時代の巨匠となったのです。

バービカン・センターで『建物の壁を歩く』が上演された時の映像

しかし1979年からは方向性を転換し、新しいダンスシアターの形態を作り上げます。ラウシェンバーグのようなデザイナーとコラボレーションし、ローリー・アンダーソンやほかの音楽家のスコアを使い、今までの純粋さを新しい演劇性のなかに転換する魅惑的で新奇な作品群を振付けました。「なぜ音楽のない作品を振付けるのをやめたのですか?」と問われ、「観客が咳をするのを聞くのにうんざりしたからよ」と彼女は答えました。

80年代に振付けた作品群は、大きな熱狂を呼びました。これらの作品は発明的な振付に基づく純粋なダンスの創造ではあったのですが、音楽、衣装や舞台芸術によって、演劇性も持ち、視覚効果や音楽によって強い雰囲気を持ちました。

特に『セット・アンド・リセット』は、ブラウンに新しい世界的な名声をもたらし、彼女のカンパニーはニューヨークのシティ・センター、ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で定期的に公演を行い、フランスのダンス界でも高い人気を獲得しました。そしてこのスタイルは、2011年の最後の作品『I’m going to toss my arms — if you catch them they’re yours』まで維持されました。この作品は、夫バート・バーが舞台美術を担当し、アルヴィン・カランの音楽を使用していました。バート・バーは昨年11月に亡くなっています。

1980年代末からは、ブラウンは次のフェーズ、クラシック音楽との新しい関係を築きます。モンテヴェルディ、バッハ、シューベルト、ラモー、ビゼーの音楽を使いながらも、彼女の音楽への反応は音楽性においても演劇性においても、型にはまったものとは違っていました。2002年にはシューベルトの『冬の旅』を振付けましたが、バリトンのスター歌手、サイモン・キーンリーサイドが出演し、素晴らしい動きを見せました。

ブラウンはダンサーとしても非常に優れていました。1989年にミハイル・バリシニコフがバレエからアメリカのモダンダンスを探求することに方向転換した際に、彼はブラウンとコラボレートすることを好みました。『You Can See Us』(1996)では、二人はデュエットを踊り、バリシニコフは前を向いていますが、ブラウンは観客に背を向けたまま動きませんでした。

2011年が彼女の最後の活動となるというニュースは、2009年のマース・カニンガムの死と2011年12月に彼のカンパニーが解散するというニュースと共に、一つの時代の終わりを告げました。それまでにブラウンは100以上の作品を振付け、多くは映像として収録されています。彼女のカンパニーの今後の計画も発表されていました。

2016年1月に、ブルックリン・アカデミー・オブ・アーツ(BAM)が彼女のカンパニーの「プロセニアム」シリーズ最後の公演を行いました。2015年以降、「In Plain Site」というシーズンはいくつかの特別の場所で開催され、彼女のレパートリーからダンスの抜粋を作り、様々なダンスを観るためにいろんな部屋を歩く回るように観客に求めるという形で上演されています。これはブラウンのアイディアによるものです。

1980年代以降、ブラウンの作品は他のカンパニーでも上演されてきました。『セット・アンド・リセット』は、フランスのダンスを学ぶ学生の学校カリキュラムに加えられています。パリ・オペラ座バレエでは、『O zlozony / O composite』(2004)が委嘱され、レパートリー入りしています。

トリシャ・ブラウン・カンパニーは引き続き、旺盛な活動を行っています。
しかしながら、ブラウンの作品を分析するのは難しく、20世紀のカジュアルな舞踊言語を知らない世代にとっては、彼女の作品の舞踊言語は理解しにくいものであるかもしれません。すべてのダンスの遺産は脆弱であり、彼女の作品についてもそうかもしれません。

パリ・オペラ座のダンサーたちが2013年に名作「Glacial Decoy」(1979)をリハーサルする様子を捉えたドキュメンタリー映画「IN THE STEPS OF TRISHA BROWN」が製作され2017年2月にプレミアを迎えたばかり、現在各地の映画祭で上映されています。
http://icarusfilms.com/new2017/trisha.html

ダンス界は偉大なアーティストを失いました。

トリシャ・ブラウン「ダブル・ビル」は、クラシカ・ジャパンでかなり頻繁に放映されています。これはリヨン・オペラ・バレエのダンサーが『M.G.へ:映画』(1991年)『ニューアーク』(1987年)を踊っている映像です。
http://www.classica-jp.com/program/detail.php?classica_id=CNT1402

桜井圭介さんによる「 トリシャ・ブラウン初期作品集 1966-1979 」
http://d.hatena.ne.jp/sakurah/20160320/p1

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