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« マリインスキー・バレエ夏のロンドン公演のキャスト | トップページ | 新国立劇場バレエ団 2017/2018シーズンバレエ公演の主役キャスト追加決定 »

2017/03/22

英国ロイヤルオペラハウスシネマシーズン2016/17 「ウルフ・ワークス」

英国ロイヤルオペラハウスシネマシーズン2016/17、ロイヤル・バレエ『ウルフ・ワークス』が、3月31日より劇場公開されます。

http://tohotowa.co.jp/roh/movie/woolf_works.html

試写で拝見しました。

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オリビエ賞ほかに輝いたウェイン・マグレガー振付による舞台の再演!

マックス・リヒターの音楽が、ヴァージニア・ウルフの小説にインスパイアされた3つのバレエをつなぎ合わせる。

気鋭の振付家ウェイン・マグレガーによるバレエ三部作『ウルフ・ワークス』は、ヴァージニア・ウルフの小説にインスパイアされ、2015年に初演。より自由で個性的で現代的なリアリズムを追及した革新的なバレエは、批評家協会賞の最優秀クラシック振付賞、ローレンス・オリヴィエ賞の最優秀ニュー・バレエ賞を受賞。

ヴァージニア・ウルフの3つの小説——『ダロウェイ夫人』、『オーランドー』、『波』、そしてウルフ自身の手紙、エッセイ、日記にインスパイアされた3つのバレエは、ウェイン・マグレガーにとって、ロイヤル・バレエで初めての全長作品となる。電子音楽と管弦楽がとけあった音楽に心を揺さぶられ、作曲家マックス・リヒターによる美しい旋律が舞台を包み込む。

【振付】ウェイン・マグレガー
【音楽】マックス・リヒター
【指揮】クン・ケッセルス
【出演】アレッサンドラ・フェリ/サラ・ラム/ナタリア・オシポワ/高田茜/スティーヴン・マックレー
【上映時間】3時間8分

『ウルフ・ワークス』は、21世紀の物語バレエの代表作の一つと言っていいほどクオリティの高い作品なのだが、ヴァージニア・ウルフの作品や人生を知らないとややわかりにくい面がある。『ダロウェイ夫人』、『オーランドー』、『波』を全部読む必要はないと思うけど、あらすじ、そして『ダロウェイ夫人』の登場人物についての知識があったほうが間違いなく楽しめるので、予習していった方が良いと思う。

『ウルフ・ワークス』は3部で構成されている。
第一部「I now, I then」は、『ダロウェイ夫人』をモチーフにしている。
出演:アレッサンドラ・フェリ、ギャリー・エイヴィス、フェデリコ・ボネッリ、ベアトリス・スティクス=ブルネル、フランチェスカ・ヘイワード、エドワード・ワトソン、高田茜、カルヴィン・リチャードソン

ヒロインの社交界の花形夫人クラリッサ・ダロウェイ役はアレッサンドラ・フェリで、彼女の若き日を演じるのはベアトリス・スティクス=ブルネル。友人サリーは可憐で光り輝くようなフランチェスカ・ヘイワード、若い日の恋人ピーター・ウォルシュ役にフェデリコ・ボネッリ、戦争の幻影と友人の死に苦しむセプティマスにエドワード・ワトソン、死んだ友人エヴァンスにカルヴィン・リチャードソン、そして夫を演じるのはギャリー・エイヴィス。時制は常に変化し、過去と現在が交錯する。

アレッサンドラ・フェリが、驚くべき身体能力と圧倒的な表現力を見せてくれた。あり得ない方向に身体が動いたりするマクレガーの振付もなめらかにこなし、引退前と変わらない美しい身体のラインと強靭な踊りで、クラリッサの心境を繊細に伝えている。初演の時にはクラリッサと同じ52歳だったフェリは、大きく深い黒い瞳、成熟したキャラクターでこの役ははまり役。フェリ演じるクラリッサが友人サリー、フランチェスカ・ヘイワードにキスをする、妖艶で美しいシーンは特に印象的。若き日の恋人ピーターに再会してざわつく心理描写も見事。また、セプティマス役のエドワード・ワトソンが、戦死した友人エヴァンス(カルヴィン・リチャードソン)と踊るデュエットも、マクレガー作品を得意とする柔軟な肢体を持つワトソンならではの表現を観ることができる。大きな役ではないものの、1920年代風のレトロなヘアスタイルで装った高田茜さんもしなやかで美しい。マックス・リヒターの音楽、シンプルなセット、陰影のはっきりした照明も美しく、コンテンポラリーな振付でありながら物語性と情感が豊かで、心に残るパートだ。

第二部「Becomings」は、「オーランド」が原作。エリザベス朝に生まれた青年貴族オーランド―が、途中で女性に変身し、社交界で活躍し、文学者となって20世紀まで女性として生きるという作品で、サリー・ポッター監督の映画作品でも有名。

ここでは、ストーリーそのものはほとんど語られず、振付はマクレガーのスタイルを最も踏襲して激しく猛烈なスピードで、複雑なパートナーリングが観られる。スモークが炊かれた中、レーザー光線を使った照明、一風変わったメイクアップ(眉毛をつぶしているので顔を判別するのはなかなか大変)、エリザベス・カラーをつけたヴィクトリア時代的な華麗な衣装も登場する。ナタリア・オシポワのソロから始まり、彼女とスティーヴン・マックレーのパ・ド・ドゥへ。オシポワの身体能力の高さとスピード感はこの作品にうってつけ。マックレーとサラ・ラムのパ・ド・ドゥ、また高田茜さんもここでも登場してエドワード・ワトソンと踊る。金色に輝くヴィクトリアン衣装をまとったエリック・アンダーウッドも印象的。時代を超え、性別を超越したオーランドーの人生が、SF的なタッチで描かれている。

第三部Tuesday」は、『波』が原作。名優マギー・スミスがこの散文小説からの一説を朗読した録音が流れ、そしてヴァージニア・ウルフ自身の、溺死による自殺を図った時に書かれた遺書も(ジリアン・アンダーソンの声で)読まれる。水、波のイメージの振付を踊る群舞の前でのヴァージニア・ウルフ=フェリのソロ、そしてフェデリコ・ボネッリとサラ・ラムの踊りやサラ・ラムとフェリの踊り。人生の記憶が走馬灯のように駆け抜けていく中、ついにフェリは波に覆われて死を迎える。一転して静かな世界となっているのだが、バックで踊る群舞の動きは激しい。

ヴァージニア・ウルフの人生や小説のあらすじを理解していないとわかりにくい部分があるとはいえ、彼女の小説世界を全幕の現代的な物語バレエに作り上げるというマクレガーの意欲的な試みは見事に実を結んだと言える。何よりも、ヴァージニア・ウルフの分身としてのフェリを得たことが成功の最大の要因。また、ウズマ・ハメドというドラマトゥルグの力を得てしっかりと構成を練り、それに基づいて振付を行ったこと、この作品に委嘱されたマックス・リヒターの美しく効果的な音楽、ルーシー・カーターの照明、衣装と合わせ、総合芸術としての完成度が高い。このような大胆な試みをできるのが、今のロイヤル・バレエの強みなのだと実感した。

幕間のインタビューでは、ウェイン・マクレガー、作曲のマックス・リヒターのインタビューがあり、それぞれ興味深かった。マクレガーの作品の大部分は、プロットレスのコンテンポラリー作品だが、彼に言わせればストーリーのないバレエはないとのこと。あのような作風でも、雄弁で豊潤な物語バレエを作ることができるというのが、この作品の大きな発見だった。3つの幕が、それぞれ全く違った表現を使っていて変化があるもかかわらず統一感もあり、ヴァージニア・ウルフという作家の人生とその登場人物に多面的に光を当てて、心の奥底に訴えさせることに成功している。

最新作品で、なかなか来日公演には持っていきづらそうな作品を、日本で映画館で観られるのは本当に嬉しい。(オーストラリア・ツアーでロイヤル・バレエは「ウルフ・ワークス」を上演するとのことだが)


キャスト、リハーサルの写真など、詳しい情報を掲載したデジタル・プログラム。FREEWOOLFのコードで、無料で閲覧できる。
http://www.roh.org.uk/publications/woolf-works-digital-programme

「ウルフ・ワークス」マックス・リヒターの音楽もCDとして発売される。音楽だけで聴いても素晴らしいので、映画上映を観て気に入った方はぜひ。

3つの世界:ウルフ・ワークス(ヴァージニア・ウルフ作品集)より3つの世界:ウルフ・ワークス(ヴァージニア・ウルフ作品集)より
リヒター(マックス)

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