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2017/01/21

トランプ合衆国大統領が、全米芸術基金と全米人文科学基金を廃止する意向

1月20日にアメリカ合衆国大統領に就任したドナルド・トランプ。

そのトランプは、もともと文化芸術および読書には関心がないことは広く知られていました。

米国の政治専門紙ザ・ヒルによると、トランプは就任したらすぐに文化芸術に関する予算を大幅に減らす計画であるとのことです。政権移行チームは、ホワイトハウスのスタッフとのミーティングの中で、全米芸術基金(NEA)と全米人文科学基金(NEH)を閉鎖すると同時に、公共放送機構(CPB)を民営化することを明らかにしました。

Trump Reportedly Plans To End National Arts Funding
http://www.huffingtonpost.com/entry/trump-reportedly-plans-to-end-national-arts-funding_us_5880de61e4b070d8cad0e184?

ザ・ヒルの報道によれば、保守派のシンクタンク、ヘリテージ財団が昨年公開した政権の青写真に近いものとなるとのことです。このシンクタンクはトランプの新生政権を形成する上で大きな影響力を持っているとされています。

「バランスのための青写真:2017年連邦予算」において、ヘリテージ財団は、NEAとNEHを閉鎖することについて1ページずつ割き、文化への公共投資を支援する人々を震え上がらせました。

ヘリテージ財団の青写真では、「政府は文化組織や活動を支援するために納税者の税金を使うべきではない」としてNHEを廃止すべきだと主張しています。また、NEAについては、「芸術のために納税者が負担を行うことは必要なことでもなければ賢明なことでもない。納税者は、その魅力や利益にかかわらず演劇や絵画、華やかなショー、学術雑誌のために税金を払うことを強制されるべきではない」としています。

ハフィントンポストは、NEAとNEHの広報担当者にメールで取材を試みましたが、このレポートについてコメントをすることは拒否されました。

NEAとNEHは1965年にリンドン・ジョンソン大統領が署名した法律に基づいて設立されました。科学技術の革新と発見によって急速に進歩する時代において、人文科学と芸術に対しても軽視せずに注目を続けるというムーブメントに対応したもので、大学がSTEM教育(科学・技術・工学・数学)に焦点を当てて人文科学への予算配分を削減している現代においても、必要なものと考えられています。

ヘリテージ財団の青写真は、芸術文化に対する資金はフィランソロピーによって置き換えられるべきであるし置き換えることは可能だとしているものの、NEAとNEHは独自の目的を有しています。個々の芸術への寄付に依存することは、人文科学の組織やクリエイターを、富裕層(たとえば自身の肖像画を何千ドルも払って購入するトランプや、お気に入りのオペラハウスに何百万ドルも寄付する裕福なニューヨーカー)の意のままにすることです。

NEAやNEHは、恵まれないコミュニティにおいて芸術や人文科学を支える役割を、州や地方の組織と組むイニシアチブを行ってきました。数あるレビューや反対意見に耐えうるような提案を提出してきた組織や個人に対しては、政府の予算は拠出されてきました。NEHは、16ものピュリッツァー賞受賞作品の誕生やドキュメンタリー映画の制作を支援してきたし、NEAはサンダンス映画祭の創立に貢献してきたのです。

このレポートに対して、人権団体PENアメリカは、これらの削減について「新しい暗い時代」の兆候であると批判しました。「2団体の廃止が検討されていること自体が、私たちの活気に満ちた文化に不吉な影を落としています」

もちろん、NEAとNEHを閉鎖することは、1月21日に発表された大統領令ほど単純なことではありません。政府機関への削減は、国会の承認が得られなければなりません。今月、選挙民が電話で陳情したことにより、共和党の議員たちが議員の不正行為を調査する議会倫理局の独立性を奪い権限を事実上弱める方針を撤回させたように、ザ・ヒルで報道された大幅な削減に反対する選挙民は、これを推進する議員たちに対抗することは可能だと考えられます。人文科学にとっての「暗い時代」の到来を憂慮する人々にとっては、NEAとNEHの閉鎖に反対する陳情の電話をかけることは明快で実践的な手段です。

********
同様の報道は、ワシントン・ポスト紙にも掲載されています。

A Trump attack on the arts would be more than just symbolic
https://www.washingtonpost.com/news/arts-and-entertainment/wp/2017/01/19/cutting-the-nea-is-first-move-to-eliminate-a-free-open-public-realm/

この記事によれば、ヘリテージ財団は「NEAは、文化エリートにとっての福祉機関である」ともったいぶって定義づけているとのことです。(記事を書いたのは、ピュリッツァー賞を受賞した、ワシントン・ポスト紙の文化/建築批評家Philip Kennicott)

「現代の政治において、実際の政策の変化よりも象徴的な勝利の方が大きな満足を得られることが多いのです。これらの組織から政府の予算を削減することは、累積赤字を解消することにはなりません。しかし、これは、強権と決意の表れと見る、口を出す選挙民をなだめることにはなるでしょう。ソーシャルメディアの時代において、誰かの個人的な快適な領域の外にある何かに対するデジタルな怨恨や腐食性の疑念、敵に対する小競り合いに勝つことは、私達が抱える問題を実際に修正する増分の改善を目撃することよりも気持ちの良いものです。製造業の衰退とブルーカラー労働者のコミュニティの士気喪失について学ぶには、PBSを視聴することのほうが、インターネットでの怒れる見出しを無作為にみることよりも多くを学ぶことができますが、PBSの放送内容に注意を払うことよりも、PBSを批判することの方がスッキリするのです」

「NEAを失うことは主に象徴的な意味を持ちます。しかし、それにNEHの廃止、CPBの民営化を伴うと、これらの予算削減は、市場の独占から独立していた公共領域の最後の名残を絶滅させようとする初期の、しかしながら不吉な大きな流れの一部であるのです。社会的なセーフティーネットと公立学校の予算削減は、公共領域に信頼を寄せていた社会的な契約に対する戦争における大きな動きとなります。アカデミアはもう一つのターゲットであり、照準を当てられています」

「現在行われている政治を含む商業的なエンターテインメントに対して、公共領域は、予測したり制御できないアイディア、情報、そして感情もつくりあげるものです。世界に対する尊敬されているような推測に挑戦し、権力者の失敗や盲目ぶり、私たちの世界の多くの場合目に見えない脆弱さを指摘するデータを生み出します。そして勝つことがすべてで消費は天国であるという市場の理解には含まれない幸福で倫理的な生活についての考えを提供します。また、お互いに対して、本に、芸術に、知識に対する信頼とコネクションを想像します。それらは逆説的に、完全な自由の源泉なのです」

「これらが失われてしまった時に、それに気が付く人はいるのでしょうか?何十年もアーティストに直接的に資金を提供していなかったNEAが完全に廃止された時に、アーティストにとってそれは問題になりますか?今後、より多くの不安と苦しみを生み出す社会へのほかの変化がある可能性もあります。NEAについて、アートの世界にいる人ですら、『これは起きるべきことだったし、負ける戦いを戦う必要はない』と欠伸をするかもしれません」


「もし実際にこれらのことが俎上にあり、もし議会が追従した場合には、より大きな文化のシフトにおける明らかな瞬間として記憶されることでしょう。非現実的で、エレガントで、直観で分かるものではない、手に負えないものとはうまくやっていけたことがないこの国においては特に、芸術はやり玉に挙げられやすいものです。やり玉に挙げられやすいものは、最初にやり玉に挙げられてしまいます。将来がより明らかになって行ったり、より厄介になっていくかどうかは、誰にもわかりません」

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コメント

いつも拝見しています。このブログのファンです。
国のトップがこういった考えなのは寂しく感じます。今やアメリカはバレエ人口にしたら世界一と言っても過言ではないと思いますし、素晴らしいバレエ団も数多く有ります。国としての歴史は浅いながらヨーロッパに引けを取らない芸術文化をこれからも発展させて行くのだと思っていましたが、残念です。

kotokoさん、こんにちは。

お返事が遅くなり申し訳ありません!思いがけず反響が大きな記事でした。確かにもともと北米は、ヨーロッパと比べると芸術への公共支出が少ない国で、バレエ団などは、富裕層や企業の寄付に大きく依存しているところがありますが、それにしても、これでは完全に0にするという感じですよね。北米のカンパニーは残念ながら上演回数などはどうしてもヨーロッパに負けるところはあるものの、それでもそのような情勢の中で頑張っているところもあるので(ボストン・バレエなどはレパートリーも素晴らしい)、この流れは実に残念です。4年間、トランプ政権が続くのかと思うと暗澹たる気持ちになりますよね。

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