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« シルヴィ・ギエムの最新映像 | トップページ | 新国立劇場のバレエ、ダンス2017/18シーズンラインアップ/オペラ「松風」サシャ・ヴァルツ振付・演出 »

2017/01/12

ロイヤル・オペラハウスシネマシーズン「アナスタシア」(ロイヤル・バレエ)

英国ロイヤル・オペラハウス2016・17シネマシーズン、バレエ作品第一弾、ケネス・マクミラン振付の「アナスタシア」が1月13日(金)より公開されます。

http://tohotowa.co.jp/roh/movie/anastasia.html

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今でも根強い人気を持つ著名な振付家ケネス・マクミランによる3幕の全長版バレエ『アナスタシア』。ロマノフ朝14代皇帝ニコライ2世の娘、若き皇女アナスタシアは、家族とともにロシア革命の嵐に巻き込まれ、その特権的な生活に終止符が打たれる。そして家族全員が殺された後、死んだはずのアナスタシアだと名乗るアナ・アンダーソンという女性が現れる。記憶なのか妄想なのか、定かでないアナの回想。悪夢に悩まされながらも、自分がアナスタシアだという彼女の信念は揺るがなかった。アナは本当のアナスタシアなのか、それとも--。

映画『追想』(1956)などでも題材となった、皇女アナスタシア伝説をモチーフに描かれたバレエの名作。

【振付】ケネス・マクミラン
【音楽】ピョートル・チャイコフスキー&ボフスラフ・マルティヌー
【指揮】サイモン・ヒューエット
【出演】アナスタシア/アナ・アンダーソン:ナタリア・オシポワ
マチルダ・クシェシンスカヤ:マリアネラ・ヌニェス
ラスプーチン:ティアゴ・ソアレス
【上演時間】3時間5分(休憩時間は13分と14分の計2回)

皇帝ニコライ2世 クリストファー・サウンダース
皇妃アレクサンドラ・フェオドロヴィナ クリスティーナ・アレスティス 
皇太子アレクセイ ローリー・トムズ
皇女オルガ オリヴィア・カウリー
皇女タチヤーナ ベアトリス・スティックス=ブルネル
皇女マリー ヤスミン・ナグティ
皇女アナスタシア ナタリア・オシポワ

ラスプーチン ティアゴ・ソアレス
4人の将校 平野亮一、ヴァレリー・ヒリストフ、アレクサンダー・キャンベル、エドワード・ワトソン

<一幕>
3人の将校 アクリ瑠嘉、トリスタン・ダイヤー、マルセリーノ・サンベ

<二幕>

マチルダ・クシェシンスカヤ マリアネラ・ヌニェス
そのパートナー フェデリコ・ボネッリ
革命家たち ヴィンチェンゾ・ディ・プリモ、ロイヤル・バレエ団の団員

<三幕>
アナ・アンダーソン ナタリア・オシポワ
アナの夫 エドワード・ワトソン
夫の兄弟 トリスタン・ダイヤー
寮母、農婦 クリステン・マクナリー

振付指導を担当したヴィヴィアナ・デュランテをダーシー・バッセルがインタビュー

「アナスタシア」は、マクミランがドイツオペラ・ベルリンバレエ団のために1967年に、現在の3幕部分である1幕版を振付けたのが初演。1971年に、1幕と2幕を追加した作品をロイヤル・バレエに振付けた。アナスタシア/アナ役を初演したのはリン・シーモア。音楽は、1幕、2幕はチャイコフスキーの交響曲1番と3番。3幕はマルティヌーの交響曲6番と電子音楽が使われている。

1幕と2幕はロマノフ王朝末期、華やかな皇室で平穏な生活をしているニコライ2世一家、そしてその末娘の若きアナスタシアが描かれる。2幕では、アナスタシアの社交界デビューを祝った宴で、ニコライ2世の元愛人で、プリマ・バレリーナ・アッソールタの称号を持つマチルダ・クシェシンスカヤが、劇中劇として華麗なグラン・パ・ド・ドゥを踊る。この2幕の終わりにロシア革命で一家は皆殺しにされる。3幕では、戦後、ベルリンの精神病院で自分こそが逃げ延びた皇女アナスタシアと名乗る女性アナ・アンダーソンが登場する。家族が皆殺しにされたこと、戦争、ある兄弟によって助けられたこと、結婚、出産、夫の死…様々な記憶にさいなまれて混乱し、現実と妄想の間を揺れ動くアナの姿が描かれる。(1994年に、最終的にアナ・アンダーソンはアナスタシアではないと証明された)

ナタリア・オシポワのリハーサル風景とインタビュー

「アナスタシア」がロイヤル・バレエで上演されるのは久しぶりのこと。3幕が最初に振付けられて、のちに1幕、2幕が振付けられたこと、音楽が1、2幕と3幕の作曲家が異なること、振付言語も古典バレエ的な1、2幕と現代的な3幕ではまるで違っていることなどもあり、ややちぐはぐな印象がある作品という評価がある。実際に観てみると、確かにそういった部分は否めないのだが、1,2幕に登場した人物や場面が3幕にアナスタシアの記憶として登場するなど、「記憶」をテーマとした3幕の作品としてしっかりとした構造にはなっている。

実際のアナスタシアの映像で始まる1幕では、4人の将校たちの踊りやアナスタシアのソロなどが見せ場となっている。特に将校たちは一人一人ソロを踊ってくれる。さすがに平野亮一さんは長身で見栄えがするので制服姿も決まっている。美しい白いドレスに身を包んだ4姉妹と最年少の皇太子。この皇太子は難病にかかってしまっていたのだが、怪僧ラスプーチンが奇跡的に彼の病気を治したことから、ニコライ2世は彼に絶大な信頼を置くようになる。踊りの見せ場はたくさんあるのだけど、やや冗長な1幕。ナタリア・オシポワのアナスタシアは、技術は言うまでも素晴らしく軽やかに踊り、好奇心が旺盛で活発な少女として目を輝かせて生き生きとしているけれど、この場面ではさほどの深みはない。

2幕は、アナスタシアの社交界デビューの宴で、この宴の客人の中には、ロシアの伝統的な民族衣装に身を包んだ女性たちもいてエキゾチックで華やかだ。シャンデリアが斜めに歪んだ形になっているのは、年若いアナスタシアが下から見たシャンデリアの記憶だからとのこと。この宴では、マリインスキー劇場で絶大な人気を誇ったバレリーナ、マチルダ・クシェシンスカヤが男性ダンサーとパ・ド・ドゥを踊る。クシェシンスカヤはニコライ2世が結婚する前に交際していたことでも有名であり、踊っている最中も盛んにニコライ2世に流し目を送り、この二人の関係が明白なものと感じられて、アナスタシアは戸惑う。クシェシンスカヤを演じたマリアネラ・ヌニェスの華やかさ、これぞプリマという圧倒的なオーラ、そしていわくありげな視線の妖艶さ。パートナーのフェデリコ・ボネッリにはソロはないが、非常に難しいリフトなどパートナーリングは見事。この後、クシェシンスカヤとパートナー、ニコライ2世と皇妃、さらにラスプーチンも参加しての息詰まるようなダンスが繰り広げられる。そして最後の革命のシーンで、無残に皇帝一家や貴族たちは殺戮され、宴が繰り広げていた宮殿は実は精神病院の中であったことが明らかになる。

ワールド・バレエ・デーライブでヴィヴィアナ・デュランテとギャリー・ハリスに指導されるナタリア・オシポワ

何年かのち、精神病院の中。電子音が鳴り響き、ベッドが一つ置いてあるだけの殺風景な中に一人ぽつりとたたずむアナ。一家の殺戮、そして救出された時のことが再現され、このあたりの回想は「マノン」の沼地のシーンの序曲を思わせる。ポワントを履いているものの、動きはコンテンポラリーダンスに近い。アナはエドワード・ワトソン演じる夫や、ラスプーチンの幻影と踊る。大きく見開かれた瞳には強い力がある。自分自身が何者なのか、アイデンティティの喪失に苦しむ、その苦悩を表現するように体を震わせ、ゆがませ、その捻じ曲げられた身体からエネルギーをものすごいスピードで解き放つさまは壮絶。赤ん坊を抱いて夫とパ・ド・ドゥを踊るものの、子どもは奪い去られてしまい、夫も死んでしまってたった一人で残されるアナ。

ここでのオシポワは、圧倒的な身体能力を生かしてアナの葛藤や混乱、苦悩や絶望を描き切り、心を打つような大熱演だった。休憩時間に、振付指導を担当したヴィヴィアナ・デュランテのインタビューが流れる。デュランテは、初演キャストのリン・シーモアに指導されたとのことだが、「醜くなることを恐れるな」とアドバイスされたそう。その教えがオシポワにも伝わっていて、作り物ではない本物の感情が現れた、見事なパフォーマンスを見せてくれた。オシポワがある意味自分の殻を破ることに成功したような、この踊りと演技を観るだけでも、映画館に観に行く価値があると感じた。

「アナスタシア」は日本では2012年に小林紀子バレエシアターが日本初演しているが、ロイヤル・バレエでも
久しぶりの上演であり、DVD映像も発売されていない。このように滅多に観られない作品を大画面で観ることができるのが、英国ロイヤル・オペラハウス2016・17シネマシーズンの魅力である。

リハーサル映像、詳細なキャストやあらすじ、写真などを見たり読んだりできるデジタル・プログラムがロイヤル・オペラハウスのサイトで閲覧できる。プロモコードFREEANAを入力すること。
http://www.roh.org.uk/publications/anastasia-digital-programme


「アナスタシア」は1/13(金)より、TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズ六本木ヒルズ他で上映。

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