10/15 イスラエル・ガルバン「FLA.CO.MEN」
「FLA.CO.MEN」【日本初演】
10月15日(土)17:30
名古屋市芸術創造センター
主催:
あいちトリエンナーレ実行委員会
公益財団法人名古屋市文化振興事業団(名古屋市芸術創造センター)
振付・演出・ダンス Israel Galván
歌 David Lagos, Tomás de Perrate
ヴァイオリン・バス Eloísa Cantón
ギター・歌 Caracafé、 Proyecto Lorca
サクソフォン Juan Jiménez
パーカッション Antonio Moreno
http://aichitriennale.jp/artist/israelgalvan.html
5月にアクラム・カーンと共演する「TOROBAKA」で来日する予定だったイスラエル・ガルバンだったが、怪我で公演が中止となってしまった。この前の週にやはりあいちトリエンナーレで上演された「Solo」があまりに評判が良く、急きょ観ることにしたのだった。
舞台の上には、パーカッション、ドラムセット、そして譜面台。そこへなぜか白いエプロンをかけたイスラエル・ガルバンが足を小刻みに動かしながら登場し、そして女性ヴァイオリン奏者エロイサ・カントンが登場。ガルバンが歌うようにダイアローグを述べると、ヴァイオリン奏者が日本語に通訳するユーモラスなやり取り。やがて彼は、目にも止まらないようなものすごく速い動きでサパテオ(フラメンコの足の動き)を見せる。
フラメンコの革命児と呼ばれるガルバンは、なるほど自由奔放で型破り、大胆な動きを見せてくれる。しかしそれは、しっかりとしたサパティアードの技術に基づいたもの。素早い足の動きはタップダンスのようでもあるが、上半身の動きはエレガントで、また手の表現も細やかで豊かだ。細身の身体がとてもしなやかで、長い腕で見せる一つ一つのキメポーズが実にスタイリッシュ。しっかりした軸とアプロンがあるので、すべてが美しい。フットペダルをサパテオで踏んでドラムを演奏したり、木の箱を叩いて鳴らしたりブーツを楽器代わりにしたり、舞台の上に小銭をばらまいてその上で踊ったり、舞台上を縦横無尽に駆け回ったかと思えば、椅子に座って休んで水を飲んだり何か食べていたりする。フラメンコが地面を踏んだり手を叩いて音を出すダンスであることもあって、彼の音楽性はずば抜けており、だからこそドラム演奏だってすごいわけなのだ。
一見フラメンコを脱構築し、型破りでゆるいように見えて、しっかりと構成された作品である。1人ずつミュージシャンが入場してきて演奏を始め、楽器の数が増えて音楽が厚くなっていくところからしてうまい。明暗と色彩を巧みに使った照明も場面転換として機能し、構成を見せるのに効果的で見事だ。そしてミュージシャンたちも個性的で魅力的。ガルバンと舞台上で絶妙なやり取りを展開するだけでなく、音楽がダンスそのものをつくりあげているということを実感させるし、ガルバンも音楽と一体化している。
それだけでなく、ミュージシャンなのに皆やけに踊りが上手くて、途中でガルバンと一対一で踊ってちゃんとついて行ける人もいるし、パーカッション奏者などは途中で上半身裸になって、自分の上半身を叩きながらステップを踏みソロダンスまで見せてくれるのだ。フラメンコに欠かせない歌は、哀愁は帯びているもののウェットにはなりすぎない上に、歌手が抜群のリズム感を持っているからとても楽しく、時にはラップのようでもある。ダンスと歌、演奏の掛け合いも決まっていて、ジャズのインプロヴィゼーション・セッションのような雰囲気となる。
途中、ガルバンは客席まで降りて行って歩き回り、客席の通路でも見事なサパディアードやピルエットを見せた上で、客いじりまでしてチャーミングさを発揮してくれた。
クライマックスでは、ヴァイオリン奏者が奏でるリコーダーの音色で、ミュージシャンたちが全員で踊り、まるでハーメルンの笛吹きについていくかのように舞台を去っていく。そしてカーテンコールで踊りながら登場したガルバンは、白に赤い水玉のドレスを着て、そのドレスが脱げそうになるまでノリノリで踊ってくれてしまいには床に転がったた。ここが名古屋でなく、スペインのどこかの広場にいるかのような気持ちになり、幸せで満たされた。
イスラエル・ガルバン、超絶技巧の持ち主であるけど、いたずらっ子のようにチャーミングで、セクシーで、お茶目で大胆で、圧倒的な魅力の持ち主だった。クラクラさせられるような彼のダンスをまた観られる日が近いうちにあることを祈る。
今年9月のリヨン・ビエンナーレでの映像をarteで視聴できる。
http://concert.arte.tv/fr/flacomen-disrael-galvan-la-biennale-de-la-danse-de-lyon
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