ベルリン国立バレエ、サシャ・ヴァルツ芸術監督就任の波紋/追記あり
ベルリン国立バレエが、現在の芸術監督であるナチョ・ドゥアトの契約を更新せず、任期が切れる2019年より、サシャ・ヴァルツと、現スウェーデン王立バレエ芸術監督のJohannes Öhmanが就任することについては、いろいろと波紋を呼んでいます。
Nacho Duato Out, Sasha Waltz In at Staatsballett Berlin
http://dancemagazine.com/news/nacho-duato-sasha-waltz-staatsballett-berlin/
サシャ・ヴァルツとJohannes Öhmanの次期芸術監督決定の件は、ベルリンの市長より発表されました。
また記者会見が開かれました。サシャ・ヴァルツとJohannes Öhmanは、古典と現代作品の両方から構成されるレパートリーとする予定です。また、ヴァルツは自身のベルリンをベースに活動するカンパニー、サシャ・ヴァルツ&ゲスツでの活動も続けます。
Johannes Öhmanが主に経営と管理業務を中心に行う共同芸術監督となるため、ヴァルツは今後も振付活動を行うことが可能になると、彼女は記者会見で語っています。二人は5年契約を結びました。ヴァルツは毎年、彼女のカンパニーの既存の作品を一作品、ベルリン国立バレエで上演し、5年の任期の間に3作品新作を振付けることになります。
ところで、この決定に対して、ベルリン国立バレエのダンサーたちは反発しているとのことです。
http://www.morgenpost.de/kultur/article208219065/Etwas-wird-passieren-Es-gaert-beim-Staatsballett.html
ベルリン国立バレエは、88人の団員で構成されている、ドイツ最大のバレエ・カンパニーです。全員がクラシック・バレエ出身です。ナチョ・ドゥアトの契約が更新されないことを、彼らは9月7日(水)に聞かされましたが、サシャ・ヴァルツとJohannes Öhmanが次期芸術監督となることは、新聞記事で知ったとのことです。直接そのことを知らされず、関係者の中で最後に報道で知ることになったことに対して、団員は不信感を持ちました。「ベルリン・フィルは主任指揮者を自分たちで選ぶことができるのに、なぜ自分たちはできないんだ?」
また、2019年と3年後の芸術監督交代が今決定したことも、不信感を広げる結果となっています。こんな状況では踊りには集中するのも難しい、3年後、どうなるのかわからないカンパニーに誰が入団したがるのだろう、と団員たちは思っているとのことです。
「ウラジーミル・マラーホフは、芸術監督となる前からここで仕事をしていました。ナチョ・ドゥアトも、就任する前から仕事をしてマラーホフからも引継ぎを受けました。でも、サシャ・ヴァルツはこのバレエ団に興味を持っているのだろうか?このバレエ団について何を知っているのだろう」とバレエ団のスポークスパーソンは語りました。
(なお、サシャ・ヴァルツの「ロミオとジュリエット」は、ベルリン国立バレエのレパートリーに入っています)
ベルリン国立バレエの団員たちは、今年待遇の向上を求めて団結し、ストを行いました。その結果、ダンサーたちの待遇は改善し、全員が複数年契約を勝ち取ることができたのです。この勝利は、彼らに自信を与えました。「失うものなど何もない」と彼らは語っているとのことです。「青天の霹靂で決まったこの決定は、覆すことだってできる」と。
日曜日には、ナチョ・ドゥアトの「バッハへのオマージュ」がコーミッシュ・オペラで上演されますが、ここで団員によるデモが予定されて実施されました。
デモについての記事。公演開始一時間前に行われました。写真には、プリンシパルのナディア・サイダコワが写っています。
http://www.morgenpost.de/kultur/article208223359/Staatsballett-demonstriert-gegen-Sasha-Waltz.html
また、サシャ・ヴァルツとJohannes Öhmanの次期芸術監督就任に反対するオンライン署名活動もchange.orgで始まっており、すでに5000人の署名が集まっています。(日本からも署名することは可能)日本語での説明もあります。
https://www.change.org/p/rettet-das-staatsballett-save-staatsballett
【ベルリン国立バレエ団のために力をお貸しください!】ベルリン国立バレエ団は現在、ドイツ国内で最も規模が大きく、かつ、ベルリンで唯一のクラシックバレエ団です。現在の組織の前身も含めると100年以上の歴史をもっています。それゆえに、私たちベルリン国立バレエ団所属ダンサー一同は、2019/20年期に予定されているサシャ・ヴァルツ氏とヨハネス・エーマン氏による共同監督体制を拒否いたします。
この任命は残念ながら、例えるならば、テニストレーナーをサッカーのコーチに起用したり、美術館館長をオーケストラの首席指揮者に採用するのと同じようなものです。 ミヒャエル・ミュラー市長およびティム・レンナー氏によるこの判断は、ダンスやバレエについての伝統や成長過程に関してまったく無知であることを露見させています。
特に言及すべきは、このような発表が3年も前になされたことであり、それはバレエ界では前代未聞であるばかりでなく、バレエ団にとって侮辱であり、今後のバレエ団の活動に影響を及ぼすものです。この発表が選挙選のさなかに行われたことは、私たちにとって、芸術の発展よりも政治的都合が優先され、私たちバレエ団や、私たちの伝統、私たちの芸術のあり方、そして私たちの観客に対する配慮が欠如しているように思われてなりません。
そして、私たちは共同監督という考えに対して断固反対いたします。
候補者は、鮮明な芸術的ビジョンを持ち成功に導くことができる人材が、バレエ団の方向性を明確に整理していけるよう、一名だけが立てられるべきです。
そのことから私たちは、現在のような三者構造ではなく、総監督一人の就任を要請します。
私たちはサシャ・ヴァルツ氏の活動に対して敬意を抱いていますが、私たちバレエ団を率いるという点ではまったく不適任であると判断しています。サシャ・ヴァルツ氏は、モダンダンス劇場の振付家です。氏の求める舞台の形には、クラシックバレエのダンサーが培ってきたものとはまた違った資質が求められます。
サシャ・ヴァルツ氏のベルリン国立バレエ団への共同監督への任命そのものが、世界で認められてきたクラシックバレエ団の評判を損ない、世間の目だけでなく、特にクラシックバレエとして鍛錬を積んできたバレエダンサーや振付家にまで影響を及ぼすことになります。
これらの事実を考慮した上で、ベルリン市長兼文化評議員のミヒャエル・ミュラー氏および次官ティム・レンナー氏に、今回の任命の撤回を要求いたします。
私たちは、ベルリンオペラ財団の財団理事会に、承認しないよう提案いたします。
むしろ、2018/19年のナチョ・デュアト氏の後任としてベルリン国立バレエ団総監督を選出するための委員会設立を求めます。
この委員会に、政治や行政に並び、私たちバレエ団に所属するバレエやダンスの専門家が加わることを強く望みます。
これまでの経験により私たちは、新しい監督選出にいたる過程に参与できるようになることを要求いたします。
私たち、ベルリン国立バレエ団のダンサーたちは、議員のみなさま、世界中のバレエの仲間たち、そしてなにより、私たちの大切な観客の皆様に、この署名運動へのご協力をお願いいたします。
なお、上記の署名は、ベルリン国立バレエの公式Facebookページでも告知がされており、ここでもダンサーたちの動きが支援されているようです。
New York Timesにも記事が出ていました。
http://www.nytimes.com/2016/09/17/arts/dance/dancers-protest-new-leadership-plans-at-staatsballett-berlin.html
サシャ・ヴァルツのインタビューが載っています。
サシャ・ヴァルツはこのような反響があるとは思っていなかったそうです。「クラシック・バレエ出身のヨハネスが共同監督となるので、良いバランスが取れるはずです。私たちは古典を踊るのはやめると明言していないし、50%は古典とする予定です。バレエ団では、私の舞踊言語が中心となるという懸念があるようですが、5年間の間に3作品しか私の新作は上演しませんし、一年に1作品しか私の旧作は上演されません。残りはネオクラシック、モダンとコンテンポラリーとなり、そんなに狂気じみたことではありません」
また、ヴァルツは、Öhmanと彼女の就任のための交渉は1年前からあり、選挙を控えての早急な決断ではなかったと加えました。Öhman氏は、バレエ団のダンサーの代表との意見交換を長い期間でしており、二人は来週ダンサーたちと会うとのことです。「彼らの懸念が和らぐことを期待しています」と彼女は語りました。
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