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2016/09/04

8/27、28 牧阿佐美バレヱ団 『飛鳥』

新制作/世界初演 飛鳥 ASUKA

牧阿佐美バレヱ団創立60周年記念公演-Ⅶ  
新制作/世界初演 飛鳥 ASUKA

改訂演出・振付 牧阿佐美 (「飛鳥物語」1957年初演台本・原振付:橘秋子)
音楽 片岡良和 
音楽監督:福田一雄
美術監督 絹谷幸二
映像演出 ZERO-TEN
照明デザイン 沢田祐二
衣装デザイン 石井みつる
指揮 デヴィッド・ガルフォース
演奏 東京フィルハーモニー交響楽団

http://www.ambt.jp/perform.html

Asuka

春日野すがる乙女 スヴェトラーナ・ルンキナ
岩足 ルスラン・スクヴォルツォフ
竜神 菊地 研

竜面の踊り 織山万梨子(28日)、米澤真弓(28日)、須谷まきこ(27日)、太田朱音(27日) 清滝千晴
竜剣の舞 青山季可
五色の布奉納舞 日高有梨 中川郁(27日) 高橋万由梨(28日) 成澤ガリムーリナ・マイカ
献舞使 逸見智彦、森田健太郎、塚田渉、京當 侑一籠
黒龍 佐藤かんな(27日) 茂田絵美子(28日)
雄竜(竜神の使い) ラグワスレン・オトゴンニャム

青竜 茂田絵美子(27日) 佐藤かんな(28日) 田切眞純美 三宅里奈
紅竜 織山万梨子(27日) 阿部裕恵(27日) 須谷まきこ(28日) 太田朱音(28日) 清滝千晴
銀竜 日高有梨 ラグワスレン・オトゴンニャム
金竜 青山季可


牧阿佐美バレヱ団の『飛鳥』は、バレエ団設立の翌年である1957年4月に橘秋子が振付け、その後幾たびか改訂されていった「飛鳥物語」をベースとしている。プログラムに、かなり詳しい上演の歴史と、どのように変更されていったかの記述があるが、「飛鳥物語」直近の上演である1986年版からどのような変更が加えられたのかは、明らかではない。片岡良和氏が1962年に作曲を行い、そして1976年に牧阿佐美が新しい演出振付を行ったということである。今回は、日本を代表する洋画家、絹谷幸二氏が本作のために作品「飛鳥に寄せて」を制作し、これを基にしたプロジェクションマッピング映像演出を行ったというのが大きな新機軸だ。

いにしえの都、大陸との交流盛んな国際都市・飛鳥。美(芸術)と権威の象徴である竜神を祀るお宮に仕える舞女たちの中で、春日野すがるをとめは一番の舞の手で大変美しい乙女でした。すがるをとめは竜神へ舞を奉納する栄誉を与えられますがそれは即ち、竜神の妃となり、二度と再び地上に戻ることは出来ないということ。すがるをとめは終生を芸術の神に仕えようと心に決めるのでした。一方、幼なじみの岩足(いわたり)は、美しく成長したすがるをとめの舞を見て思いを抑えらず、こぶしの花を差し出し愛の心を伝えますが、すがるをとめの決意は変わらず、竜神と共に昇天してゆきました。しかし竜の棲む深山に咲くこぶしの花を見つけると不意に、岩足への激しい慕情にかきたてられます……。


牧阿佐美バレヱ団が、自らのルーツを大事にして日本を題材にした作品を新制作し、美術などにも大変お金をかけて上演したのは英断である。片岡良和による音楽は、ハチャトゥリアンの影響を大きく受けているようだで、特に2幕の雄竜たちの群舞では、まるで「スパルタクス」を観ているようだったが、牧阿佐美氏が音楽の素晴らしさが新制作をしようと思ったきっかけだとパンフレットで語っているだけのことはある。スケールが大きくて変化に富み、初演の時に使っていたという雅楽を意識した東洋風の旋律も取り入れてよくできた音楽だ。

1962年版では3幕だった作品が、今回は2幕というシンプルな構成となった。1幕は、すがる乙女が竜神に舞を奉納して見初められ、岩足がこぶしの花を捧げるところまで。2幕は、竜の棲む山の中で王冠を受けて竜妃となったすがる乙女が、黒竜の嫉妬を逃れるものの、岩足を思い出して彼への想いを募らせるところから幕切れまでを描いている。1幕が人間の世界、2幕が竜たちの世界を中心に描いているというわけである。そのような地上と天上という世界観は、「ジゼル」や「ラ・バヤデール」に少し似ている感じがする。

人間の世界の中では、里の娘たちや男たちから女官や豪族たちまで登場し、華麗で繊細な衣装をまとったダンサーたちによる様々な踊りが展開される。日本的なモチーフを巧みにそして違和感なくバレエの衣装に取り込んでいるところが見られた。踊りの種類もバラエティに富んでおり、生き生きとしてエキゾチックな竜面の踊り、五色の布を使っての奉納舞や、重々しい宮廷舞踊をベテラン男性ダンサーたちが踊る献舞使の踊りなどは楽しめた。

ところが、2幕の竜たちの世界になると、ストーリーの部分は黒竜がすがる乙女に嫉妬し、竜王とすがる乙女の間に割って入ろうとするところと、終盤のすがる乙女が岩足を想い、そして結末まで至るところのみとなり、それ以外は本筋とあまり関係のないディヴェルティスマン大会となってしまう。人間の世界での衣装は美しかったのに、竜たちの衣装といえば、白いユニタードにヴェールがついているのみだ。牧阿佐美バレエ団のダンサーたちはみなスタイルがとても美しいので似合ってはいるのだが、ディヴェルティスマンの振付のバリエーションもあまりないうえ、竜たちに色の名前がついているけどヴェールに薄くその色が使われているだけで、区別もつきにくい。もう少し竜らしく見せる工夫をしてほしかったと思う。

また、ディヴェルティスマンも長すぎるように思えた。ダンスを通じて物語の風景を語ることについて、牧阿佐美氏はあまり得意ではないようだ。2幕のディヴェルティスマンがあまりに長いのに対して、物語の展開の部分が少なすぎる。また、1957年初演の作品なので致し方ないところだが、運命に立ち向かうことなくただ流されるヒロインを中心に据えた作品というのは、現代に上演するには人物像があまりに古い感じがする。キャラクター造形としては、竜王を愛しているが故にすがる乙女に歯向かう敵役の黒竜のほうが生き生きとしていて魅力的ですらある。

映像演出については、時々背景が目立ちすぎてしまうことはあったものの、派手な色彩を使った竜の絵は迫力があってドラマティックだった。竜の棲む世界を表す滝や雲などの山水画的な美術、故郷を懐かしむすがる乙女の脳裏に浮かぶ古都奈良の風景との対比も良い。初日は3階正面、二日目は1階やや前方で観たのだけど、3階席だと上部が少し切れてしまったし、サイドから見ていた人からは少し見づらいところがあったようだ。反面、上から見ると、こぶしの花を照明で表現していたり、映像の魔術師である沢田祐二氏による照明効果がとても美しいのだけど、1階からだとその効果は減ってしまう。プロジェクションマッピングは、舞台装置が場所を取らないということもあるので、ツアー公演にも持っていきやすく、これからきっとこのような演出は増えることだろうが、もう少し工夫の余地がある。

今回のゲストダンサーは、2月の「白鳥の湖」に続き、スヴェトラーナ・ルンキナとルスラン・スクヴォルツォフ。リリカルで繊細さのあるルンキナは、ロシア人ながら東洋の美を体現できていて適役だった。プロポーションの美しいダンサーが多い牧阿佐美バレヱ団の中にあっても、ひときわ抜きんでている存かい在で、竜王が選んだ相手にふさわしい。踊りには儚さの中にも確固たる技術によって凛とした強さがあり、神に身を捧げた女性らしさがある。ストイックな彼女が、不意に幼馴染の岩足を思い出して切ない想いにとらわれるものの、その想いはついに遂げられない、そんな悲痛さが伝わってくるエンディングは心を打った。高い精神性を感じさせる踊りと演技は、彼女の内面の成熟を物語っている。

ルスラン・スクヴォルツォフは、猟師の息子を演じるにはノーブルすぎる感じはあったが、端正な踊りはさすがボリショイのプリンシパルで、その端正さの中にも情熱は込められていた。1幕のソロの踊りはまるで「白鳥の湖」の王子のよう。ルンキナとはベストパートナーでパートナーリングも見事だった。終盤は、まるでマクミランの「ロミオとジュリエット」の墓場のシーンか、「マノン」の沼地を思わせた演出だったので、彼の深い嘆きも伝わってきた。1幕ではソロがあったりかなり踊るものの、2幕は最後の15分くらいしか出番がないのが惜しかった。

竜王の菊地研は、スクヴォルツォフと比べると線は細いけれど、カリスマ性を感じさせて踊りも安定。ルンキナとのパ・ド・ドゥもしっかりこなした。黒竜は佐藤かんなと茂田絵美子のダブルキャストで、二人ともいわば悪役であるこの役を魅力的に演じてキャラクターに命を吹き込んでいた。

ディヴェルティスマンでの踊りでもったいないのだけど、青山季可のソロはやはり圧倒するような華があるし、1幕の竜面の踊り、2幕の紅竜とパ・ド・トロワで活躍した清滝千晴の胸のすくような跳躍と美しい足先はいつ見ていても眼福である。27日の紅竜では、新入団の阿部裕恵のしなやかな踊りも観られて嬉しかった。

いろいろと注文はあるものの、バレエ団のレベルは総じて高かったし、この作品のために作曲された音楽もとても素晴らしいので、バレエ団の財産として改訂を加えながらレパートリーとして練り上げていってほしいと感じた。日本的なエキゾチシズムは外国人にも受ける要素がある。今回は、2公演のみで両公演ともゲスト主演だったけど、できれば日本人キャストでもう一日公演ができたら良かったのだが。


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