シュツットガルト・バレエの2016-17シーズン
ヨーロッパの劇場では、次シーズンを発表するのが一番遅いシュツットガルト・バレエの2016-17シーズンが発表されています。
http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2016-17-season/
新作としては、注目の若手振付家、現在新作「サロメ」の初日(6月10日)を目前としているデミス・ヴォルピの「ヴェニスに死す」。
シュツットガルト州立歌劇場オペラとの共同制作作品で、ブリテンの同名オペラ作品となります。ヴォルピは「クラバート」の大成功で一躍名を挙げ、20代半ばの若さでシュツットガルト・バレエの常任振付家となりましたが、オペラの振付もすでにいくつか手掛けており、2014年にはハイデルベルグ・オペラで「Fetonte」の演出をしています。オペラの演出としては2作目ですが、今回はバレエ団との共同制作なのでダンサーも出演します。シュツットガルト・バレエとオペラの共同制作作品としては、クリスチャン・シュプック演出の「オルフェオとエウリディーチェ」がありました。
もう一作、全幕の新作としては、マルコ・ゲッケの「カフカ」(仮題)があります。
これは、「くるみ割り人形」と「オルランド」に続きゲッケの3つめの全幕作品となります。オーストリアのJohannes Maria Staud という作曲家に音楽を委嘱。もちろん作家フランツ・カフカについての作品ですが、カフカの著作と、カフカという人物の両方の面からのアプローチとなるようです。ゲッケ独特の痙攣するような動きや暗い照明などは、なるほどカフカの世界に合っているかもしれません。
さらに、ミックスプロの2プログラムが用意されています。
SEDUCTION!
バレエ団のデミ・ソリストでもあるカタルツィナ・コツィエルスカの新作、シディ・ラルビ・シェルカウイの「牧神」、マルコ・ゲッケの「薔薇の精」そして、ベジャールの「ボレロ」です。
コツィエルスカの作品は、セルゲイ・プロコフィエフの孫であるガブリエル・プロコフィエフに音楽を委嘱。「牧神の午後」「薔薇の精」は、バレエ・リュスの作品が有名ですが、その現代版が上演されます。そしてあまりにも有名なベジャールの「ボレロ」で締めて、音楽の持つ魅惑的な力を表現したプログラムとしています。
Night Pieces
こちらは、中劇場での上演。エドワード・クラグの「SSSS ...」は、一部が日本でのガラでも上演されている作品でショパンのノクターンを使用。イリ・キリアンの「フォーリン・エンジェル」の音楽はスティーヴ・ライヒ。そしてもう一作品は、バレエ団の若手デミ・ソリストで昨年の来日公演でも活躍したルイス・シュテーンズの新作(バレエ団のプログラムとしては2作目)
リバイバルとしては、
マキシミリアーノ・グエラ振付の「ドン・キホーテ」
デミス・ヴォルピの大ヒット作「クラバート」
クランコの「じゃじゃ馬馴らし」
クランコの「ロミオとジュリエット」
「Kammerballette」と題されたミックスプロ(中劇場での上演、ハンス・ファン・マネンの「カンマ―バレエ」、グレン・テトリーの「アリーナ」、そしてカタルツィナ・コツィエルスカの作品で今年の3月に初演されたばかりの「NEURONS」)
なお、2017年4月7、8、9日の3日間、東京バレエ団がツアーでシュツットガルト州立劇場でブルメイステル版「白鳥の湖」を上演します。
このほか、恒例の若手振付家の夕べ、ジョン・クランコ・スクールの公演、そして劇場前の公園で舞台の中継を観られる「バレエ・イン・ザ・パーク」もあります。
ヨーロッパの劇場が素晴らしいのは、毎年全幕の新作を1~2作品初演し、ミックスプログラムも新作含めて複数上演し、さらにレパートリーの公演が数多くあることで、公演数も演目も少ない北米と比較すると、ヨーロッパの文化の成熟度は桁外れであり、やはりバレエってヨーロッパの文化だと実感する次第です。国(ドイツの場合は州政府)が文化にそれだけお金を支出しており、そしてこのレベルの高い文化を求めて海外からも観客がやってくるわけですね。
なお、かつてシュツットガルト・バレエで活躍し、ウラジーミル・マラーホフともよく踊った名花イズール・レンドヴァイが、シュツットガルト・バレエにバレエ・ミストレスとして帰ってくるとのことです。
7月22日の「オネーギン」公演で、スージン・カンが引退します。オランダ国立バレエに移籍するダニエル・カマルゴはすでに「貴婦人と道化師」でさよなら公演を終えています。
今年はリード・アンダーソンの芸術監督就任20周年記念ということで、7月にはフェスティバルが行われ、日替わりで様々なプログラムが上演されます。7月24日には、ガラ公演も行われてシーズンが締めくくられます。
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