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2016年5月

2016/05/30

5/28 江口・宮アーカイヴ「プロメテの火」

「プロメテの火」

1950年初演で50年ほど上演が途絶えていた作品が、2011年の一部上演に続き金井芙三枝氏らにより復元された。伊福部昭の音楽によるもので、今回主演は首藤康之と中村恩恵。

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「プロメテの火」は、伊福部と日本現代舞踊の礎を築いた舞踊家の江口隆哉が共同制作したもので、上田仁指揮の東宝交響楽団(現、東京交響楽団)により、帝国劇場(東京)で1950年に初演された。人間に火を与えたとされるギリシャ神話のプロメテウスの物語を題材に、人間の悩みや苦しみと希望を描いた作品で、戦後の混迷期にあった当時の日本人を勇気づけたといわれる。迫力ある美しい群舞などが大きな反響を呼び、川端康成の長編小説『舞姫』にも公演の様子が描かれている。1960年までの間に全国で100回近く上演されたが、その後は再演が途絶えていた。

オーケストラの総譜は長年行方不明になっていたため、伊福部ファンの間では、「幻の作品」とされてきた同作品であるが、2009年に江口の関係者によってスコアが発見され、2011年以降、江口の門下生や研究者らによって、再演に向けた準備が進められてきた。(日本コロムビア)http://tower.jp/article/feature_item/2013/12/05/1102

「プロメテの火」上演に先立ち、金井芙三枝氏によるトークがあり、大変興味深いものだった。

2011年の5月の第3景の上演の際には、昔の江口・宮の生徒たちが注文を付けた上演となったそうだが、今回は、記録から解き放ち、自由に踊られたとのことである。

1960年までの間に全国で100回近く上演されたが、1960年からは舞台上で火を使うことが消防法により不可能となってしまった。江口は本物の火を使って松明を持ち、髪を焦がしたり、スリリングな上演だった。その後一回だけ、偽物の松明を使ったものの、江口は「もうこの作品は踊れない」と言ったとのこと。その後小道具の技術が進歩して、ドイツで開発された装置を使うことで本物に近い松明を再現できるようになったため、再演ができるようになった。

伊福部昭は、「プロメテの火」以外にも「日本の太鼓の獅子踊り」などいくつも舞踊用の音楽を作曲している。今までは、作曲家と振付家が同時にクリエーションを行ったということになっていたようだが、実際には、江口は理論家だったため先に踊りを創り、それに見合った音楽を作曲してほしいと伊福部に依頼したそうだ。伊福部は苦労し、必死になって曲を作った。上記の通り、2009年にスコアが発見され、東京交響楽団によって演奏会上演された。

上演されていた当時は、舞台装置の転換に時間がかかったため、間奏曲が長く、第4景「コーカサスの山巓」のところが一番長くなっている。舞台機構も進化したので、舞台転換に時間はかからなくなったものの、間奏曲はほぼそのまま使っている。舞台装置は大掛かりだったので、地方公演を行う時には、江口は2階席の一番後ろに立って装置の指示をした。その位置から見えるギリギリの高さまで、第4景の山巓を高くするためである。

第3景の火の群舞は、帝劇での初演当時は63人、日比谷公会堂での芸術祭参加の時には83名もいたそうだが、2011年の上演では30名、今回は40名となった。初演時はダンサーの技術があまり高くなかったのでたくさん出演させて量で勝負したが(なお、女優の岸田今日子も群舞に出演したことがあったとのこと)、今はテクニックも向上し、ダンサーの手脚も長くなったので40名でも十分見ごたえがある。ただ、「今の人は技術は凄いが心がない、火を手に入れた喜びを見せてほしい」という評も、2011年の時には出た。

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なお、青森県野辺地町出身の江口は、その地に伝わっていた「ささ踊り」を復興させようと熱心に活動した。その成果もあり、現在でもこの「ささ踊り」は踊られており、この地でしかこの踊りは観られない。今年2月に金井氏ら4人が野辺地で実際のささ踊りの取材に行き、「ささ踊り保存会」の50人の踊りを観ることができた。そして今回出演している江口門下の松本直子氏が、この踊りの一部を見せてくれたが、手の独特の繊細な回し方や、足を摺って出すところなどはかなり難しそうだった。これが今は当地では正確に踊られているとのことで、野辺地町の町長さんも会場であいさつに見えた。

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ドイツでマリー・ヴィクマン舞踊学校に学び日本のモダンダンスの始祖となった江口隆哉と宮操子。ビデオ映像などの資料がない時代のものを、門下生の記憶により復元した。1950年の作品の復元ということで、舞踊語彙の少ないところはある。だが、戦後5年しか経っていない時に、音楽もオリジナルで1時間の大作を作り上げたというのは凄いことだ。初演当時の熱気も伝わってきた。スケール感の大きな伊福部の音楽(やはり彼が作曲した怪獣映画の音楽を連想させる)、40人もの群舞で力強く展開するスペクタクルで見応えがあった。

第一景は、火を持たない人間たちによる闇の中の混沌としたプリミティブな踊り。重心の低い、いかにもモダンダンス的な動き。やはり今のダンサーたちはプロポーションも向上していて美しく、動きもそれにふさわしくアップデートした部分を感じられた。その中で白いドレスをまとった清らかな少女イオ役の中村恩恵さんの動きがエレガントで美しい。しかし彼女は、牛の姿に変えられてしまう。耳と尻尾をつけた中村さんが思いのほか愛らしい。

第2景は、火を盗んだプロメテの8分にわたる長いソロが中心。首藤康之さんは、江口隆哉の動きを相当よく研究したのだと思われ、残された写真にもよく似ている。バレエとは異なった、やはり重心は低く表現主義的な動き、ゆっくりしているけどその分しっかりとしたキープ力が必要。江口隆哉は歌舞伎の動きからもかなり影響を受けているとのことだが、盗み出した火の松明を掲げて長くポーズする姿は圧巻だった。

火を手に入れて歓喜する人々の40人もの群舞からなる第3景は一大スペクタクル。新国立劇場の中劇場の舞台狭しとダンスが繰り広げられ、6人の男性ダンサーたちによる跳躍が繰り返される動きも大迫力。第4景「コーカサスの山巓」は、火を盗んだことをとがめられ、山巓の岩に鎖で縛りつけられ、黒鷲についばまれるプロメテの姿を描く。そこへ通りかかる牛に変えられたイオと、プロメテの邂逅。言葉はなくとも視線を交わすと心は通じ合い、プロメテに希望をもたらす。そしてそのプロメテを崇める地上の人々が集ってくる。血を流しぼろぼろに痛めつけられるプロメテの首藤さんは、被虐美よりも崇高さを感じさせ、奇妙な牛の姿をしながらも清らかで美しい中村さんと交わす視線と、両手を広げた佇まいが心に残った。プロメテを痛めつける黒鷲の男性ダンサーたちにもう少し力強さが欲しかった感はある。

なお、11/12に、第2景、第3景のみの抜粋版の再演が今回と同じ新国立劇場中劇場で予定されている。佐々木大主演、今回も参加している坂本秀子舞踊団による上演。

乗越たかおさんによる首藤康之さんのインタビュー記事。
http://ebravo.jp/archives/25687

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なお、第一部では、宮操子「春を踏む」(坂本秀子)、江口隆哉「スカラ座のまり使い」(木原浩太)、宮操子「タンゴ」(中村恩恵)の上演もピアノの伴奏つきであった。ピンクのドレスが風をはらむ「春を踏む」、ユーモラスでジャグリングの要素を含む「スカラ座のまり使い」、そして中村恩恵さんの強くカリスマ性たっぷりの「タンゴ」と、それぞれとても興味深く面白い作品だった。

ダンスへの熱い想い、戦争による破壊から立ち上がる強い意志と希望を伝える「プロメテの火」。先人による意欲的でスケールの大きな作品が再演されたのは素晴らしいことだと感じた。

『プロメテの火』
原案 菊岡久利
構成・振付  江口隆哉・宮 操子
音楽  伊福部 昭
使用曲「プロメテの火」舞踊作品用特別版
演奏 東京交響楽団   指揮:広上淳一
録音 日本コロムビア株式会社

装置・衣装原案 河野国夫
美術・衣装・特殊効果 江頭良年
芸術監督・演出 金井芙三枝
演出助手 中田 杏  内田和子
ダンスミストレス 坂本秀子 吉垣恵美  松本直子
坂本秀子舞踊団
日本女子体育大学モダンダンス部

1950年初演 於:帝国劇場
1951年芸術祭参加公演(於:日比谷公会堂)により芸術祭奨励賞受賞

伊福部昭:舞踊音楽《プロメテの火》伊福部昭:舞踊音楽《プロメテの火》
広上淳一指揮、東京交響楽団

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2016/05/28

ヘルシンキ国際バレエコンクール開催中

1984年から開催されている歴史ある国際バレエコンクール、ヘルシンキ国際バレエコンクールが開催中です。

http://ibchelsinki.fi/en/

4年に一回開催のこのコンクール。過去の入賞者には、ヤンヤン・タン、ダニール・シムキン(2005年グランプリ)、ヤーナ・サレンコ、ユルギータ・ドロニナ、ティアゴ・ボアディン、ブルックリン・マック、ジェフリー・シリオらがいます。日本からは、第1回の牛尾 和美さん(ジュニア3位、松山バレエ団)を始め、2001年に金田洋子さんがジュニア3位、福岡雄大さんがジュニア2位を受賞しています。

今年のコンクールは5月23日から6月2日まで開催されています。

審査員の顔ぶれが豪華です。
http://ibchelsinki.fi/en/the-jury/

審査委員長に、フィンランド国立バレエ芸術監督のケネス・グレーヴ
ニーナ・アナニアシヴィリ (ジョージア国立バレエ芸術監督)
アンヘル・コレーラ (ペンシルヴァニア・バレエ芸術監督)
ヨルマ・エロ (振付家)
マイナ・ギールグッド (ハンガリー国立バレエ芸術アドバイザー、振付指導者)
Hae Shik Kim 韓国芸術大学 舞踊学部学部長
フェン・イン 中国国立バレエ芸術監督

さて、審査の方は一次予選が行われ、ジュニア部門21名、シニア部門20人に絞り込まれました。この後28日、29日に準決勝が行われ、決勝戦とガラ公演が6月2日に開催されることになっています。

準決勝進出者

http://ibchelsinki.fi/en/results/

日本人では、

ジュニア
畑戸利江子さん(塚本洋子テアトル・ド・バレエカンパニー&アカデミー)、森川礼央さん(田川陽子 バレエ アカデミー)
シニア
待山貴俊さん(ベラルーシ国立バレエ)、上草吉子さん(ロイヤル・ウィニペグ・バレエ)、西岡憲吾さん(ベオグラード国立歌劇場バレエ団)、吉本絃人さん(ポーランドグランドシアターポズナン)

の皆さんがセミファイナリストとなりました。

待山隆俊さんは、今年の「バレエ・アステラス2016」に出演します。

畑戸利江子さんの所属する塚本洋子テアトル・ド・バレエカンパニー&アカデミーのブログで、舞台裏を少し見ることができます。
http://theater-de-ballet.jp/tbc-blog/

また公式Facebookサイトにも、いろいろと写真がアップされています。
https://www.facebook.com/ibchelsinki/

コンクールのプロモーションビデオ。フィンランド国立バレエのダンサー2人と、フィンランド国立バレエ学校の生徒1人(ケネス・グレーヴの息子さんSchonan Greve)が出演しています。

2016/05/27

イギリス発コンテンポラリー・ダンス・サマースクールのご紹介

ダンス公演や学校の紹介、日本における講習会やオーディションの開催、イギリスでのサマーコースや留学生サポート等を行っているThe Wells(ザ・ウェルズ)。
昨年も開催された、コンテンポラリー・ダンスのサマースクールが好評につき帰ってきました。

マシュー・ボーンのニューアドベンチャーズでダンサーとして活躍した2名(リー・スマイクル、ダミアン・スターク)が講師です。

バレエ・コンテ・振付・創作、ダンス学生にとってなくてはならないフルコースです。
上級者用プロコース2日間も用意されています。

ローザンヌ国際コンクールなど、バレエコンクールにおいても近年特にコンテンポラリー・ダンスが重視されていますが、日本のバレエを学ぶ生徒の多くは、コンテンポラリーに親しんでいないため、不得手な人が多いのが現状です。イギリスのバレエ学校では、現在イギリスで主流とされる、「カニンガム」や「グレアム」、また「リリース」と呼ばれるコンテンポラリー・ダンスのテクニックを学ぶ授業がありますが、日本ではそれを学ぶ機会がなかなかありません。このサマースクールは、イギリスで行われているコンテンポラリーのサマースクールを日本で学ぶ貴重な機会です。


イギリス発コンテンポラリー・ダンス・サマースクール
Lee Smikle×SYD SPIRIT in Japan 2016

http://thewells.co.jp/dance

スケールもパワーもより大きくなって、リー・スマイクルとSYDダンサーによるワークショップが新宿村に帰ってきます!本場イギリスのダンス教育機関で行われているサマースクールをそっくりそのまま日本で体験できる、こだわりのプログラムに加え、最高の講師、そしてミュージシャンが揃って来日します。ロンドン・コンテンポラリー・ダンス・スクール在籍中のSYDダンサーも2名来日。クリエイティヴでエキサイティングなコースをお届けします。


コンテンポラリー・ダンス・サマースクール(5日間または3日間)
2016年7月19日 (火) – 23 (土)
毎日10:00~16:30

新たな身体表現としてコンテンポラリー・ダンスを学びたい方、英国コンテンポラリー・ダンス教育を体験したい方のためのコース。
*対象:中学生以上の男女、ダンス経験のある方、ジャンル不問

【タイムテーブル・内容】
*午前中はテクニック、午後は振付や創作に重点が置かれる構成です。
*全クラス音楽はサビオ・ヤニャックによるライブ伴奏です。
*時間割は5日間共通ですが、内容は少しずつ変わります。
*3日間コースには下記全ての内容は含まれません。


10:00 – 11:15 バレエ:ダンスの基礎となる体幹、アライメントにフォーカスし、コンテンポラリーの動きを多用する楽しいバレエクラスです。バレエ未経験でも安心して受けられます。(バレエ用シューズがなくても靴下でOK。)

11:30 – 12:45
コンテンポラリー:ムーブメントのフレーズ、アライメント、移動を伴う動きにフォーカスし、呼吸、重心、流れ、ダイナミクスに関する自然な感覚を養います。低重心、重心の移動、更には、クリアで正確、そして無駄のないムーブメントを維持するという考え方の重要性を学びます。

12:45 – 13:15 ランチ(各自持参してください。)

13:15 – 16:30
振付/創作:サポートも充実した楽しい雰囲気の中で、実践的で内容豊富な創作の基礎を学びます。即興やタスクなど、多方面から振付に取り組み、時間、空間、ダイナミクス、そして相手との関係性などの使い方を研究します。短いソロ、またグループワークも創作します。
レパートリー:ソロ/デュエットなどSYDのレパートリーを習得します。

【参加費用】
5日間(全日):75,000円(税込81,000円) *5日間参加者のみ5大特典付き!
3日間(21、22、23日):52,500円(税込56,700円)
1日6.5時間、ランチ休憩1日30分を含みます。


コンテンポラリー・ダンス・インテンシヴコース(2日間)
2016年7月23日 (土) & 24日 (日)
23日17:00~21:00
24日16:00~20:00

コンテンポラリー・ダンサーとしてのキャリアを目指したい方、ライブ・ミュージックに合わせて、とにかく頭と身体を動かしたいダンス上級者の方ための、とてもユニークなインテンシヴコースです。
*対象:16歳以上の男女、コンテンポラリー・ダンス経験のある方

【内容】
ロンドンのコンテンポラリー・ダンス教育と創作現場をたっぷり体験します。バレエ(1日目のみ)、コンテンポラリーのクラスから始まり、その後は振付のワークショップを通して個々のムーブメント言語を模索し発展させるセッションです。即興やタスクの他、多方面から創作に取り組みますが、特に動きながら創作しつつ、低重心、重心の移動、クリアで正確な、無駄のないムーブメントを維持する重要性にフォーカスします。全てのクラスはサビオ・ヤニャックによる熱いライブ伴奏です。午後のワークショップではSYDダンサーの二人もサポートします。積極的に挑戦すること、そして他人と協力して創作作業することを楽しむダンサーの方むけのコースです。

【参加費用】
2日間(7月23日、24日):25,000円(税込27,000円)
全8時間


【お申込み方法】
The Wells のホームページから

【プロフィール】
リー・スマイクル(Lee Smikle) :コンテンポラリークラス、午後クラス担当
レジデント・アーティスト(マシュー・ボーンのニュー・アドベンチャーズ/リボーン)、ダンス講師、振付家、芸術監督、プロデューサー

英国西ヨークシャー出身。ニュー・アドべンチャーズの中心的存在として、長年ダンサーとして国内外で活躍した後、1997年より教師兼リハーサルアシスタントとして、数々のプロジェクトに参加。後にマシュー・ボーンの教育プログラム「リボーン(Re:Bourne)」設立に携わり、ダンス未経験者へのダンス講習会や教師用プログラムの構築と実践を担う。2015年からは同カンパニーのレジデント・アーティスト。一方、ロンドンのコンテンポラリー・ダンス界を牽引するカンパニーや学校へ、ゲスト講師並びに振付家、審査員として招聘され、ロンドンダンス教育界の中堅として活躍している。

また、自らが主宰する15歳から21歳のダンサーによる「ショーディッチ・ユース・ダンス(SYD)」は設立から7年目を迎え、若手ダンサーの育成に成果を上げている。SYDにおいては、自ら指導、また作品を振付けるだけでなく、その広い人脈と信頼から国内外の著名な振付家やダンス講師を招聘して、国内公演、また国内外ダンスフェスティバルへの参加を実施している。設立当初からのパトロン、マシュー・ボーンに加え、今年新たにリー・アンダーソンをパトロンに迎え、今後の活動に注目が集まる。
ウェブサイト:http://www.smikleproject.com/


ダミアン・スターク(Damien Stirk) PDTD(RAD):バレエクラス担当

フリーランス・バレエ講師
英国西ヨークシャー出身。ルドルフ・ヌレエフ奨学金を受けイングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールで学ぶ。イングリッシュ・ナショナル・バレエ団、イスラエル・バレエ団、マルセイユ・バレエ団で踊った後、マシュー・ボーンのニュー・アドベンチャーズにて代表作「白鳥の湖」の主要キャストとして10年間出演する。

ロンドンのRADにてプロフェッショナル・ダンサーズ・トレーニング・ディプロマを取得し、ニュー・アドベンチャーズ、ランベール・バレエ・アンド・コンテンポラリー・ダンス・スクール、ザ・プレイス、トリニティ・ラバンなど、英国における主要なダンス教育機関にてバレエクラスを教える。また国際的にもゲスト講師としてイスラエル、ブラジル、香港など各地で指導を続けている。

サビオ・ヤニャック(Sabio Janiak):全クラス伴奏
作曲家、プロデューサー、マルチ楽器奏者
ポーランド出身。アカデミー・オブ・ミュージック(クラシック・パーカッション課)、ロンドン・センター・オブ・コンテンポラリー・ミュージック(音楽プロダクション課)を卒業。150の楽器を自在に操るという類まれなる才能に恵まれ、著名な芸術家とのコラボレーションを重ねることにより、独特の音楽世界を構築している。
2008年から英国また海外において、ダンサーや振付家、その他芸術家とのとのコラボレーションによる伴奏、作曲、パフォーマンスを続けている。ダンス関係では、Hagit Yakira Dance, The Place, Trinity Laban, Roehampton Univ., RAD, Richard Alston Dance Company, New Adventures, Shoreditch Youth Dance, Deborah Galloway他、多数。
ウェブサイト:http://sabiomusic.com/

エイミ・レゲット(Eimi Leggett):
ロンドン・コンテンポラリー・ダンス・スクール2年在学中

ダンサー(Shoreditch Youth Dance)
オーストラリア出身。3歳からバレエを始め、日本バレエ協会公演「くるみ割り人形」にてクララを踊る。2010年渡英、Centre for Advance Training (CAT-Trinity Laban)にて初めてコンテンポラリー・ダンスに出会い、Lee Smikle に師事。17才でロンドン・コンテンポラリー・ダンス・スクールに合格したため、飛び級でCATを卒業、同時にショーディッチ・ユース・ダンスに参加する。”Murmur” (Mafalda Davis), “Eclipse”(John Ross), “Onwards” (Lee Smikle)などを初演。

ジョーイ・バートン(Joey Barton)
ロンドン・コンテンポラリー・ダンス・スクール1年在学中

ダンサー(Shoreditch Youth Dance)
2008年13才でCentre for Advance Training (CAT-Trinity Laban)にて初めてコンテンポラリー・ダンスに出会い、Lee Smikle に師事。2015年CAT卒業後、ショーディッチ・ユース・ダンスに参加。9月よりロンドン・コンテンポラリー・ダンス・スクールへ入学。
“Murmur”(Mafalda Davis), “Eclipse”(John Ross), “Onwards”(Lee Smikle)などを初演。2014年マシュー・ボーンの新作「蠅の王」ロンドン初演キャスト。


The Wellsのブログでは、イギリスに現在留学中のバレエ学生による、コンテンポラリーダンスを学ぶメリットについての生の声を読むことができます。大変に参考になりますので、ぜひ。
http://thewells.co.jp/category/blog

また、The Wellsのホームページではイギリスでのダンス留学についての情報もたくさん掲載されていますので、留学を考えている方には参考になると思います。
http://thewells.co.jp/category/studyinfo

2016/05/26

ローザンヌ国際コンクール2016のスカラシップ受賞者の進路

ローザンヌ国際コンクール2016のスカラシップ受賞者の進路が発表されています。

http://www.prixdelausanne.org/2016-prize-winners-choices/

1. Hang Yu  于航– China – School chosen: Royal Ballet School

2. Madison Young – USA – Company chosen: Houston Ballet

3. Vincenzo Di Primo – Italy – Company chosen: Royal Ballet

4. Leroy Mokgatle – South Africa – School chosen: Dutch National Ballet Academy

5. Laura Fernandez – Switzerland マリインスキー・バレエ入団が決まったため、スカラシップを使用せず。
代わりにSeu Kim金世友 – South Korea – Company chosen: Royal Swedish Ballet

6. Junnosuke Nakamura – Japan – School chosen: Canada’s National Ballet School

7. Dingka Bai 白鼎愷 – China – School chosen: Royal Ballet School


日本から出場して6位に入賞した中村淳之介くんはカナダのナショナルバレエスクールに留学することになりました。

南アフリカから出場して観客賞に輝いたリロイ・モクガトルはオランダ国立バレエアカデミーに、1位のハン・ユー于航 と7位のディンカ・バイ白鼎愷(中国)はロイヤル・バレエスクールに留学します。

<追記>
5位のローラ・フェルナンデスの代わりにスカラシップ権利を得た金世友さんは、三重県四日市在住の韓国籍の方です。スウェーデン王立バレエで研修することになります。

ミュンヘン・バレエ、ラカッラら大量退団/追記あり

来シーズンより、18年間芸術監督を務めたイヴァン・リスカに代わり、イーゴリ・ゼレンスキーが芸術監督に就任するミュンヘン・バレエ(バイエルン州立バレエ)。

マリインスキー・バレエより、サバティバルを取得したウラジーミル・シクリャーロフとマリーヤ・シリンキナが移籍するのは既報の通りです。

そして、ゼレンスキーの就任に伴い、29人と大量のダンサーが退団することが発表されました。

Dance EuropeのFacebookより
https://www.facebook.com/DanceEurope/photos/a.762806220476174.1073741828.762675407155922/1035181209905339/?type=1&theater


退団するダンサーのリスト

プリンシパルとソリスト
Daria Sukhorukova, Ekaterina Petina, Lukas Slavický, Cyril Pierre, Zuzana Zahradníková, Catherine Markowskaja, Léonard Engel, Stephanie Hancox, Ilia Sarkisov, Maxim Chashchegorov, Lucia Lacarra and Marlon Dino

デミソリストとコール・ド・バレエ
Magdalena Lonska, Joana de Andrade, Martina Balabanova, Donna Mae Burrows, Lisa Gareis, Nagisa Hatano, Julia Reid, Alisa Scetinina, Maud Hélèn Treille, Ilenia Vinci and Marcella Zambon and Vittorio Alberton, Zoltan Mano Beke, Luca Giaccio, Ilya Shcherbakov, Olzhas Tarlanov and Shawn Throop

ミュンヘン・バレエ最大の大スターであるルシア・ラカッラ、彼女のパートナーであるマーロン・ディノ、ラカッラの元パートナーであるシリル・ピエール、元マリンスキー・バレエで、ラトマンスキーが振付けた話題作「パキータ」の初演キャストを務めたダリア・スホルコワ、ガラ公演で来日しているカテリーナ・マルコフスカヤ、ルーカス・スラヴィツキーらが退団します。また、コール・ド・バレエでは、波多野渚砂さんも退団します。

29人の退団というのは、バレエ団全体のおよそ半分、プリンシパルは3分の2(9人のうち6人)、ソリストに至っては4分の3(8人のファーストソリストのうち6人)という割合です。その分、新しい団員がたくさん入ってくるのでしょうが。

ミュンヘン・バレエは来シーズンのプログラムも発表されていますが、グリゴローヴィッチ版「スパルタクス」がレパートリー入りするなど、古典色の強いレパートリーとなっています。全く新しいバレエ団に変わってしまうという感じでしょうね。


なお、6月12日の現地時間午後6時からは、ミュンヘン・バレエの「海賊」のインターネット中継が予定されています。これはイヴァン・リスカ版なので、今後レパートリーから消えてしまうかもしれませんね。
https://www.staatsoper.de/en/staatsopertv.html


<追記>
ミュンヘン・バレエの公式サイトに、プレスリリースが載っています。
https://www.staatsoper.de/en/press/press-information/press-information-ballet/news/news/june-farewells.html

ルシア・ラカッラとマーロン・ディノのコメントも掲載されていました。「過去14年間、バイエルン州立バレエは私たちが唯一所属していたカンパニーで、家のようなものでした。世界中のどのような素晴らしい舞台に招かれたとしても、ここに帰ってくることが幸せでした。いま私たちは別の方向へ向かうという決断を下しました。エキサイティングなプロジェクトを追い続け、それは私たちのキャリアを次の次元へと連れて行ってくれるでしょう。近いうちに発表します」

コール・ド・バレエのダンサーたちは、シュツットガルトや東京のカンパニーなど、他のカンパニーへ移籍します。また他のダンサーは、教師として経験を次の世代へと伝えて行きます。また、フリーランスのダンサーとして活動したり、家庭に入るダンサーもいるとのことです。

またゼレンスキーのコメントも。
「今までの人生を通して、バレエという芸術に私は奉仕してきました。まずはダンサーとして、そして10年以上、複数のバレエ団の芸術監督として。世界中の14の劇場で経験を積んできました。マリインスキー、NYCB、ロイヤル・バレエなどです。今までの経験を、バイエルン州立バレエ団と分かち合うことを楽しみにしています。このカンパニーを創設したコンスタンツェ・ヴァーノン、そして発展させて国際的な名声を確立させたイヴァン・リスカに感謝をします。このバレエ団の新しい芸術監督としての役割は、この発展を継続することであり、さらなる功績を残すことができるようにカンパニーを導くことです。そのために、この数か月で、素晴らしい新しいダンサーたちと契約を結びました。ミュンヘンでの観客がカンパニーのこれらの新しいメンバーを喜びと興味によって歓迎し、心の中に迎え入れることを確信しています」

そして、注釈として以下の文言がつけ加えられています。

「バイエルン州立バレエを退団するカンパニーのメンバーの名前が記述されていますが、ダンサー自身の決断で退団するのか、新しい芸術監督の意向によって退団するのかは明確にはしません」

(なお、ドイツの州立歌劇場では、外国人は15年以上雇われる場合には終身雇用としなければならないというルールがあります。そのため、15年になる前に雇い止めになるダンサーが多く、今回、4,5人はこれに該当しているとのことです)


なお、退団する一人、プリンシパルのルカス・スラヴィツキー(2003年ブノワ賞最優秀男性ダンサー、2010年、2013年に東京での「ローザンヌ・ガラ」に出演)は、母国チェコの南ボヘミア劇場バレエの芸術監督に就任することがすでに発表されています。

ご参考として、ノイマイヤーが1973年にハンブルグ・バレエの芸術監督に就任する際には、16人のダンサーが解雇され、当時は大きな批判にさらされました。しかしながら、ノイマイヤーは大きな成果を上げて、彼の判断が正しかったことが証明されたのです。果たして今回はどうなることでしょうか。

2016/05/25

8/7 横浜バレエフェスティバル2016開催概要

2015年8月19日に開催された横浜バレエフェスティバルは、充実した演目や出演者によるガラ公演で大変楽しかったです。そして2016年8月7日(日)に第2回公演を開催することとなりました。

http://yokohamaballetfes.com/outline/

今年も、世界で活躍する日本人トップダンサーや、これからの活躍が期待される若手まで、選りすぐった出演者による公演となります。

また、オーディションで選ばれたダンサー2名が出演する「フレッシャーズ・ガラ」もこの公演ならではの特徴です。昨年第一回の横浜バレエフェスティバルのフレッシャーズ・ガラに出演した永久メイさんは、その後マリインスキー・バレエのファテーエフ芸術監督に見いだされて、マリインスキー国際フェスティバルの「ラ・バヤデール」の壺の踊りで特別出演。来シーズンよりマリインスキー・バレエに入団することが決まりました。

芸術監督:遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト/振付家)
プロデューサー:吉田智大

【上演予定作品】

【第1部】(フレッシャーズガラ)

■クラシックバレエ作品のヴァリエーション(オーデイション合格者2名)

■エスメラルダのヴァリエーション
みこ・フォガティ

■「ラ・シルフィード」よりパ・ド・ドゥ
菅井円加(ハンブルク・バレエ団)
二山治雄(白鳥バレエ学園)

【第2部】 World Premium 1

■新作(タイトル未定)
高瀬譜希子
演奏:佐藤健作


■「ライモンダ」第1幕よりパ・ド・ドゥ
米山実加 (ボルドー・オペラ座バレエ団)
高岸直樹(元東京バレエ団)

■新作(タイトル未定)
みこ・フォガティ
二山治雄(白鳥バレエ学園)

■瀕死の白鳥
倉永美沙(ボストン・バレエ団)

■Lilly 振付:+81
青木尚哉(ダンサー・振付家)
柳本雅寛(コンテンポラリーダンサー・ +81主宰)

【第3部】 World Premium 2

■新作(タイトル未定)
米沢唯(新国立劇場バレエ団)
遠藤康行(元フランス国立マルセイユ・バレエ団 ソリスト・ 振付家)

■「エスメラルダ」よりダイアナとアクティオンのグラン・パ・ド・ドゥ
近藤亜香(オーストラリア・バレエ団)
チェンウ・グオ(オーストラリア・バレエ団)

■ロメオとジュリエットより死のパ・ド・ドゥ 振付:アンジェラン・プレルジョカージュ
津川友利江(バレエ・プレルジョカージュ)
バティスト・コワシュー(バレエ・プレルジョカージュ)

■※未定(クラシックバレエ作品の予定)
倉永美沙(ボストン・バレエ団)
清水健太(ロサンゼルス・バレエ団)

このガラのために振付けられる新作もあるなど、充実したラインアップです。特にプレルジョカージュの「ロミオとジュリエット」は、一度世界バレエフェスティバルのガラ公演で、オーレリー・デュポンとローラン・イレールが踊りましたが、なかなか日本では観ることができない鮮烈な作品です。米沢唯さんと遠藤康行さんが踊る、遠藤さんの新作にも注目ですね。

チケットの詳細はこちら
http://yokohamaballetfes.com/ticket/

【チケット価格】
S席:前売り10,800円(当日:11,000円)
A席:前売り 8,640円(当日: 9,000円)
B席:前売り 5,460円(当日: 6,000円)
親子券(B席):前売り 6,480円 (大人券1枚+子ども1枚)
※B席、および親子券は「チケットかながわ」のみでのお取扱いになります。
※残席がある場合に限り、当日学生券を販売します。

【プレイガイド】
横浜バレエフェスティバルチケットセンター ←こちらにて詳細をご確認の上、ご購入ください。
◆ チケットかながわ http://www.kanagawa-arts.or.jp/tc/
Tel 0570-015-415(10:00~18:00)
◆ イープラス   http://eplus.jp/

また、2016年7月20日(水)-22日(金)の3日間、
高瀬譜希子によるウェイン・マクレガー(Wayne McGregor、ロイヤル・バレエ常任振付家)
日本初の特別ワークショップが開催されます。
http://yokohamaballetfes.com/workshop/

高瀬譜希子さんは、ユニクロのCMやAtoms for Peaceのミュージックビデオでもその卓越した身体能力を見せてくれた、マクレガーのCompany Wayne McGregorの団員。今回のフェスティバルでも、自作を踊ります。

高瀬譜希子プロフィール
NY生まれ日本育ち、母・高瀬多佳子に師事。
文化庁在外研修員として3年間Rotterdam Dance Academy, London Contemporary school at the Placeで更にトレーニングを重ねる。
2006年よりHenry Oguike Dance Companyに4年間所属後、フリーランスを経て2011年よりStudio Wayne McGregor(現Company Wayne McGregor)に所属、世界各地で公演、 振付、ダンス教育に携わる。

6/13にNHK-BSでパリ・オペラ座「ミルピエ、ロビンス、バランシン」他放映

6/13(月)【12日(日)深夜】にNHK-BSプレミアムのプレミアムシアターで、パリ・オペラ座バレエの「ミルピエ、ロビンス、バランシン」が放映されます。

http://www4.nhk.or.jp/premium/

6月13日(月)【6月12日(日)深夜】午前0時~

◇ パリ・オペラ座バレエ公演
コンテンポラリー ナイト
~ミルピエ、ロビンス、バランシンを踊る~【5.1サラウンド】
◇パリ・オペラ座バレエ公演『レイン』 【5.1サラウンド】

◇パリ・オペラ座バレエ公演
コンテンポラリー ナイト
~ミルピエ、ロビンス、バランシンを踊る~

<演 目>
「クリア、ラウド、ブライト、フォワード」
<振 付>バンジャマン・ミルピエ
<音 楽>ニコ・マーリー 作曲
<出 演>パリ・オペラ座バレエ団

「作品19/ドリーマー」
<振 付>ジェローム・ロビンス
<音 楽>バイオリン協奏曲第1番 ニ長調 作品19
セルゲイ・プロコフィエフ 作曲
<出 演>アマンディーヌ・アルビッソン
マチアス・エイマン ほか

「テーマとバリエーション」
<振 付>ジョージ・バランシン
<音 楽>組曲第3番 ト長調 作品55 最終楽章
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー 作曲
<出 演>ローラ・エケ
ジョシュア・オファルト ほか

<管弦楽>パリ・オペラ座管弦楽団
<指 揮>マクシム・パスカル

収録:2015年10月1日 パリ・オペラ座 ガルニエ宮(フランス)

◇パリ・オペラ座バレエ公演「レイン」
<演目>
「レイン」

振付:アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル
音楽:18人の音楽家のための音楽
スティーブ・ライヒ 作曲

<出 演>
ヴァレンティーヌ・コラサンテ
ミュリエル・ズスペルギー
クリステル・グラニエ
パク・セウン
レオノール・ボーラック
アメリ・ラムルー
ローラ・バッハマン
ヴァンサン・シャイエ
ニコラ・ポール
ダニエル・ストークス

<合 唱>シナジー・ボーカルズ
<演 奏>アンサンブル・イクトゥス
<指 揮>ジョルジュ・エリー・オクトール

収録:2014年10月18、21日 パリ・オペラ座 ガルニエ宮(フランス)

なお、この収録日の細かいキャストはこちらのリンク先で見られます。
https://www.operadeparis.fr/en/season-15-16/ballet/balanchine-millepied-robbins/distribution#head

*Clear, Loud, Bright, Forward
Danseuse
Léonore Baulac
Eleonore Guérineau
Aubane Philbert
Marion Barbeau
Letizia Galloni
Laurène Levy
Roxane Stojanov
Ida Viikinkoski

Danseur
Axel Ibot
Florimond Lorieux
Germain Louvet
Allister Madin
Hugo Marchand
Marc Moreau
Yvon Demol
Jérémy-Loup Quer

*Opus 19/ The dreamer
Soliste femme
Amandine Albisson
Soliste homme
Mathias Heymann

*Thème et variations
Soliste femme
Laura Hecquet
Soliste homme
Josua Hoffalt

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Paris Opera Ballet

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下の映像では、「クリア、ラウド、ブライト、フォワード」の舞台上に入り込み、視点を変更しながら観ることができます。

ジャン=ギョーム・バールが、ヤコブソン・バレエ(サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエ)に新作「眠れる森の美女」を振付

ロシア・バレエの歴史上において重要な活躍をした振付家のレオニード・ヤコブソンが1966年に設立した、ロシア国立サンクトペテルブルグ・アカデミー・バレエ(ヤコブソン・バレエ)。

現在は、マリインスキー・バレエのプリンシパルとして活躍したアンドリアン・ファジェーエフが芸術監督を務めており、来日公演も行っています。正統派の古典バレエ、レオニード・ヤコブソンの振付作品、そして新しい作品という3本の柱でレパートリーは構成されています。
「ロシア国立サンクトペテルブルク・アカデミー・バレエ」とは?
http://www.kyoto-art.ac.jp/blog-theater/2011/10/3986/

このヤコブソン・バレエに、パリ・オペラ座バレエの元エトワール、ジャン=ギョーム・バールが新しい「眠れる森の美女」を振付けることになりました。2016年10月29日に初演されることになります。
http://www.yacobsonballet.ru/en/afisha/premiere

ジャン=ギョーム・バールは、ダンサーを引退後バレエ教師、そして振付家として活躍しています。特に彼がオペラ座に振付けた「泉(La Source)」(アルテュール・サン・レオン振付作品の復元)は大好評で、再演も行われました。

リハーサルの様子
http://www.yacobsonballet.ru/en/news/jean-guillaume-bart-rehearses-sleeping-beauty-members-yacobson-ballet-company

ヤコブソン・バレエのWebサイトにバールのコメントが載っているのでご紹介します。

「古典はいつの世も必要とされています。
私は伝統が好きです。
私はロシアの伝統が好きです。
そして私は古典バレエが好きです。

この新作を創作する時の目標は、伝統を復活させ、そしてオリジナルに沿ったものでありながら、広くアピールするものとすることでした。クラシック・バレエは歴史のあるアカデミックな様式に根差していますが、私たちは、クラシック・バレエを、現代に振付けられた作品であるかのように舞台化しなければなりません。そうでなければ古めかしく、古色蒼然としてしまいます。時代によって人々の好みは異なり、芸術において不朽のものを作るのは非常に難しいのです。スタイルや時代は移り変わりますが、クラシック・バレエの表現の意味は世界共通のものであり続けます。私が今までのキャリアの中でそうしてきたように、クラシックバレエのボディランゲージの語彙に基づいて創作することにより、私は、このプロダクションを現代的で洗練されたルックのものにしたいと思います。必要なダンスのスタイルを達成するためには、あらゆるツールや戦略を駆使することに高い関心を持っています。ゆっくりしたもの、速いもの、地面に近いものや空中のもの、そして最も重要なのは、論理的で一貫しており、オーケストラの生の音楽に完全に合っているものであること。

このバレエにより深みと意味を与えるために、私は台本にプロローグのさらに前となる部分を追加することにして、なぜ、オーロラ姫に呪いをかけた妖精カラボスがこのような憎しみを抱くようになったのか、そのきっかけを観客が見ることができるようにしました。王と王妃に復讐を行おうという彼女の欲望は、ある意味現代社会のメタファーにもなります。カラボスは破壊的な力であり、彼女のキャラクターはあらゆる混乱を体現しています。それに対して、リラの精は調和と生命力をもたらします。

それに加えて、演技をより強調するために、より生き生きとしていて表現力のあるパントマイムによって表現するシーンを重視しました。私は、演劇の演出家が行うようなリハーサルを行います。すべての登場人物について、詳細にダンサーたちと話し合い、彼らの取った選択についての論理を決め、彼らの感情と行動をもたらしたのは何かということを探し出すために。私は、有名な演劇のスタニスラフスキー・システムをダンスにも適用させています。「眠れる森の美女」を振付けている間、私は男性の役柄、特にデジレ王子にスポットライトを当てたいと思っています。登場人物として、デジレ王子はオーロラ姫同様、ふくらみを持たせたいと思っています。また、カラボスの二つの面を観客に魅せたいと思っています。プティパのオリジナルの意図である男性らしさと、女性らしさです。最初のパートはキャラクターとしての演技に卓越したダンサーによって巧みに演じられ、第二部では、カラボスは非常に美しい女性に変身します。これは、このキャラクターに対する伝統的なアプローチとは異なりますが、主眼としているのは、カラボスはマイムだけではなく実際に踊るキャラクターとしたいのです。

今までの話で、ダンサーたちや観客を混乱させようとは思っていません。私は、挑発的なことは何もするつもりはありません。全く反対のことで、私は、クラシック・バレエは正しく演じられれば、圧倒的に美しい芸術であると信じています。」

大変興味深いコメントです。ヤコブソン・バレエ(サンクトペテルブルク・アカデミー・バレエ)は数年に一回は来日公演を行っているので、ぜひこの新しいバール版「眠れる森の美女」を観てみたいと思います。

2016/05/24

ボリショイ・バレエ「ドン・キホーテ」(映画館上映)

少し感想が遅くなってしまいましたが、ただいまBunkamuraル・シネマで「ボリショイ・バレエ in シネマ」がアンコール上映中なので、「ドン・キホーテ」の感想を書いておきますね。

ドン・キホーテ / Don Quixote 2016年4月収録

キトリ エカテリーナ・クリサノワ
バジル セミューン・チュージン
ドン・キホーテ アレクセイ・ロパレーヴィチ
エスパーダ ルスラン・スグヴォルツォフ
森の女王 オリガ・スミルノワ
キューピッド ダリア・ホフロワ
街の踊り子 アンナ・チホミロワ
メルセデス クリスティーナ・カラショーワ
キトリの友達 アンナ・オクネワ
         クセニア・ジガンシナ
ジプシーの踊り アンナ・アントロポワ
第一ヴァリエーション アンナ・チホミロワ
第二ヴァリエーション ユリア・ステパノワ 

音楽:レオン・ミンクス
振付:アレクセイ・ファジェーチェフ
原振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴールスキー
台本:マリウス・プティパ
原作:ミゲル・デ・セルバンテス

ボリショイ・バレエの「ドン・キホーテ」は新国立劇場バレエ団で上演されているアレクセイ・ファジェーチェフ版(新国立版とは、3幕キューピッドの踊りがカットされているなど、多少異なる部分もある)。新国立劇場での上演の感想の時にも書いたけれども、2幕の順番が酒場→ロマの野営地→夢の場面となっているのが、ストーリーの上では整合性がないという問題がある。今回は新しく改訂したとのことだが、演出として酒場のシーンにジークという踊りも追加してある。しかし、この踊りがあまり面白くない上そのために冗長になっていたうえ、さらにギターの踊りもあるため、中だるみして上演時間が必要以上に長くなってしまった。また衣装も装置も地味で垢抜けないものとなってしまった。

イントロダクションと幕間の休憩時間に、ファジェーチェフのインタビューがあり、「ドン・キホーテ」という作品については参考になる話が入っていたのは興味深かった。キトリの3幕ヴァリエーションの曲は、実はオリジナルの「ドン・キホーテ」の曲ではなく、「ロクサーヌ」という別のバレエ作品のためにミンクスが作曲したとのこと。ギターの踊りとジークはザハーロフの振付(音楽もミンクスではなく、V. Soloviev-Sedoy)、2幕ジプシーの踊りもゴレイゾフスキーの振付、Zhelobinskyの音楽、ファンダンゴは振付シマチョフで音楽は E. Napravnikとのこと。また、モスクワでの初演では、夢のシーンはなく、サンクトペテルブルグでの初演で追加されたそう。

キトリ役のエカテリーナ・クリサノワはテクニックが素晴らしい。グランフェッテも前半全部ダブルで超高速でコマのように回り、2幕の飛び込むところの勢いもポーンと凄くて飛距離も長く跳んでいる。1幕カスタネットの踊りの連続フェアテのスピードも猛烈に速い。天を突き刺すバットマン、彼女のキトリは元気良いというか、手の付けられないじゃじゃ馬という感じだが、気風の良さと情熱が現れている。とても個性的だけど、生命力が迸っており、非常にインパクトがあって魅力的なキトリだ。

クリサノワが踊るドルシネアは、ドルシネアの割にはお姫様度が低いというか、特に後半はほとんどキトリって感じだった。腕の使い方はきれいだし、グランジュッテはとても高いけど、もう少しエレガントに踊ってほしい気もした。

森の女王には、最近キトリ役デビューも果たしたオルガ・スミルノワ。スミルノワは安定していて綺麗だけど、ワガノワな優雅な部分が抜けてすっかりボリショイのバレリーナとなり、やや残念な気もしてしまった。非常に溜めの効いた、大げさで派手な上半身の動きはダイナミックで映えるけど、首の動きがやりすぎな印象を与えてしまうのである。

スミルノワと同じ元ワガノワ組として、1幕にはまだ入団2年目のクセニャ・ジガンシナがキトリの友達として、そして3幕の第2ヴァリエーションではマリインスキーからモスクワ音楽劇場を経て昨年移籍してきたユリア・ステパノワが出演。ジガンシナはまだ際立ったところはないけれども、ボリショイでのキトリの友達は、とても生き生きとしていてスパイスとなる役。これを観ると、新国立劇場バレエ団でのキトリの友達役はおとなしかった、と感じてしまう。

一方、ステパノワはここに来て急に抜擢が続いており、ロンドン公演では「白鳥の湖」のオデット・オディールなどの主演が予定されている。彼女のポジションの正確さやポールドブラの美しさは目を引き、おそらく来年の来日公演でも大活躍することだろう。

第一ヴァリエーションのアンナ・チホミロワは、1幕では街の踊り子も演じた。艶やかな美貌のチホミロワは、キャラクター的にも、踊り的にも街の踊り子役の方が似合っていてこちらはとても素敵だったけど、ヴァリエーション観ると細かいことを気にしていなのが、ステパノワとの対比でわかってしまった。

もう一方の主役、バジル。セミョーン・チュージンは王子タイプであまりバジルタイプダンサーではないのだが、この人は踊りは実にうまい。つま先も綺麗だし、ピルエットはコントロールが効いてきれいに回るし、とても軽やかに飛ぶし着地も美しい。片手リフトもとても長くしっかりと支え、ものすごい勢いで飛び込むクリサノワも的確にキャッチ。技術的には文句なし。相変わらず口が歪んでいるけど、ドヤ顔はしっかり見せていた。ユーモアのセンスがもう少しあれば、もっとバジルらしくみえるかもしれない。

エスパーダはルスラン・スグヴォルツォフ。今回のファジェーチェフ版でのエスパーダの振付って、エスパーダの見せ場をわざわざ削っているような印象を受けてしまった。マントを振り回しながら背中反らせる振付がなかったのが残念。でもルスランは足技綺は麗だし、プリンシパルだけあってスター闘牛士らしい存在感もしっかり、大人っぽいけど魅力的で、チホミロワとの並びも良かった。

新国立劇場バレエ団の「ドン・キホーテ」ももちろん、とてもクオリティの高い上演だった。だけど、やはりボリショイが演じると脇役まで生き生きとしていて、ロシア人なのにラテン気質も見せてくれて、映画館のスクリーンからも勢いが伝わってくる。

Bunkamuraル・シネマでのアンコール上映は、6/3(金)19:15開演とあと1回。まだの方は、ぜひ。
http://www.bunkamura.co.jp/topics/cinema/2016/05/bol2016.html

5月26日(木) 19:15~『ジゼル』
5月27日(金) 19:15~『椿姫』
※26日(木) 19:15~『ジゼル』、27日(金) 19:15~『椿姫』は、両日ともにシネマ1,2両スクリーンで同時に上映となります。シネマ1,2ともに同内容で、スクリーンの大きさもほぼ同等となります。

5月28日(土) 19:15~『スパルタクス』
6月2日(木)  19:15~『じゃじゃ馬ならし』
6月3日(金)  19:15~『ドン・キホーテ』
6月4日(土)  19:15~『ジゼル』
6月9日(木)  19:15~『くるみ割り人形』
6月10日(金) 19:15~『スパルタクス』

★全作品予告編なし、本編からの上映

≪料金≫ 3,000円均一(税込・各種割引は対象外となります。)  

2016/05/21

バレエ・アステラス 2016

今年の夏はガラ公演がたくさんありますね。恒例のバレエ・アステラス 2016も開催されます。

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/160520_008572.html

バレエ・アステラス」は、海外で活躍する若手日本人ダンサーを応援したいという願いを込めて、2009年より開催されています。 7回目となる今回は、アメリカ、ベラルーシ、ポーランド、ロシア、クロアチアなど世界各国で活躍しているダンサーと、日本のバレエ団からもダンサーが集い、古典から現代作品まで多彩な演目が揃いました。

2016年7月31日(日)15:00開演 オペラパレス

<出演者・演目(五十音順)>

●海外で活躍する日本人バレエダンサー

新井誉久 with アナイス・ブエノ(ジョフリーバレエ団)
『ロミオとジュリエット』バルコニーのパ・ド・ドゥ  振付:K.パストール

石原古都 with ヴィトア・ルイズ(サンフランシスコバレエ団)
『ジゼル』第2幕 パ・ド・ドゥ  振付:H.トマソン

浦邉玖莉夢 & 待山貴俊(ベラルーシ国立ボリショイ劇場)
『海賊』第1幕 奴隷のパ・ド・ドゥ  振付:M.プティパ

海老原由佳 with ダヴィッド・チェンツェミエック(ポーランド国立歌劇場バレエ団)
※作品未定

小池沙織 with モトゥゾフ・イェゴール(クレムリン・バレエ)
『タリスマン』パ・ド・ドゥ  振付:M.プティパ

鈴木 里依香(クロアチア国立劇場)with タマシュ・ダライ(アウグスブルグバレエ団)
『アンナ・カレーニナ』より  振付:L. ムイチ

宮崎たま子 with アンディーレ・ンドルフ(ワシントン バレエ)
※作品未定


●日本のバレエ団で活躍するバレエダンサー

阿部真央 & 源 小織(井上バレエ団)& 中ノ目 知章(ゲスト出演)
『コンセルヴァトワール』パ・ド・トロワ  振付:A.ブルノンヴィル

岡田亜弓 & 大森康正 (NBAバレエ団)
『葉は色褪せて』  振付:A.チューダー

木村優里 & 井澤 駿 (新国立劇場バレエ団)
『海賊』第2幕 グラン・パ・ド・ドゥ  振付:M.プティパ


新国立劇場バレエ研修所

第12期, 13期研修生
「ワルツ」 振付:牧阿佐美


海外からの出演で注目は、まずはサンフランシスコ・バレエのソリスト、石原古都さん。「ダンサーの宝箱」で石原さんのインタビューが掲載されています。
http://odoritai.exblog.jp/25151183/
パートナーのヴィトー・ルイズは、マリア・コチェトコワのパートナーを務めることが多く、『オネーギン』なども踊っています。

ロイヤル・バレエからブカレスト国立バレエに移籍し、この間の騒動で退団してポーランド国立バレエに移籍したダヴィッド・チェンツェミエックの出演も注目ですね。海老原由佳さんは、2013年にもこの「バレエ・アステラス」に出演しています。その時のパートナーは、先日のハンブルグ・バレエ『真夏の夜の夢』にゲスト出演したウラジーミル・ヤロシェンコでした。

そしてワシントン・バレエの宮崎たま子さんは、2014年にジャクソン国際コンクールで銀賞に輝いています。

日本のバレエ団枠の方で出演する中ノ目 知章さんは、ハンブルグ・バレエスクール出身でノルウェー国立バレエなどを経てドイツ国立デュッセルドルフ歌劇場・デュイスブルク歌劇場バレエ団ソリスト。井上バレエ団の「コッペリア」にもゲスト出演予定です。彼のインタビューも、「バレエの宝箱」で読むことができます。
http://odoritai.exblog.jp/23892506/

「バレエ・アステラス」は、なかなか日本では観る機会のない、海外で活躍するダンサーたちを観る良い機会ですよね。なので、日本のバレエ団で活躍するダンサー枠というのは、特になくてもいいんじゃないかと思ってしまいます。特に、新国立劇場バレエ団のペアは昨年も出ていたわけですしね。

2016/05/20

【吉田都×堀内元 Ballet for the Future 2016】今夏、再演決定

昨年夏に行われた【吉田都×堀内元 Ballet for the Future】は、とても素晴らしい公演でした。

吉田都さん、堀内元さんというバレエ界のレジェンド二人に加えて、堀内さん率いるセントルイスバレエのダンサーたち、日本のホープたち、さらに加治屋百合子さん、ジャレッド・マシューズ、飯島望未さんというメンバーで、堀内さんの作品を中心にフレッシュな息吹を伝えてくれました。吉田都さん、堀内元さんは、50歳前後という年齢が信じられないほどの、美しく若々しさにも満ちた至芸を見せてくれて、あまりの感動に涙がにじんできてしまうほどでした。

この「 Ballet for the Future」、プログラムも新たに待望の再演が決定しました。新国立劇場バレエ団の米沢唯さん、奥村康祐さんという、日本のバレエ界を代表するトップダンサーが「チャイコフスキーパ・ド・ドゥ」を踊ります。吉田都さん、堀内元さんの踊りは、決して見逃してはならない機会です。必見です。バレエの素晴らしさ、歓びが詰まっています。

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吉田都×堀内元Ballet for the Future 2016

http://www.chacott-jp.com/j/special/ticket/bff/index.html

特別ゲスト 吉田都(元英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
芸術監督・出演 堀内元(セントルイス・バレエ芸術監督、元ニューヨーク・シティ・バレエプリンシパル)
出演 米沢唯(新国立劇場バレエ団プリンシパル)/森ティファニー(セントルイス・バレエ)/木村綾乃(ワシントン・バレエ)奥村康祐(新国立劇場バレエ団ファースト・ソリスト)/岡田兼宜(ダズル・ダンスカンパニー出身)/上村崇人(セントルイス・バレエ出身)
ほか、国内外で活躍する気鋭のダンサー達

東京公演 2016年8月31日(水) 開場17:45 開演18:30 東京文化会館(東京・上野)
主催:チャコット/イープラス
お問い合わせ:チケットスペース 03-3234- 9999 (月〜土10:00-12:00/13:00- 18:00)


金沢公演 2016年9月3日(土) 開場17:45 開演18:30 本多の森ホール(石川・金沢)
主催:北國新聞文化センター/チャコット  共催:北國新聞社
お問い合わせ:北國新聞文化センター 076-260- 3535

協力:ブルーミングエージェンシー/バレエスタジオ ミューズ/セントルイス・バレエ/兵庫県立芸術文化センタ―/株式会社ビデオ
企画制作:チャコット/オフィス・エイツー

20世紀最大の振付家バランシンに直接薫陶を受けてきた堀内元の作品を踊る吉田都の輝きは、まさに“バレエ界の至宝”、必見です。また、世界の名だたるスターダンサーが踊り継いできたバランシンの名作「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」を、日本バレエ界を牽引するスター米沢唯・奥村康祐が踊ります。スピーディー、シャープ、ダイナミック、エネルギッシュ、エキサイティング、エンターテインニング、バレエの新しい価値観や楽しさがいっぱいです。昨夏公演には、出演者への感動の声とともに、「バレエがこんなにも面白いとは」「バレエの見方が変わりました」といった驚きの声も多数いただき、オン・ステージ新聞では、2015年間ベスト5公演に2名の舞踊評論家より選出された注目の公演です。見所満載、お見逃しなく!
公演プログラム(予定)

「Romantique」(振付:堀内元)出演:吉田都、堀内元、他

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(振付:ジョージ・バランシン/バランシン・トラスト上演許可取得)出演:米沢唯、奥村康祐

「More Morra」(振付:堀内元)

他    

※上演時間:約2時間(休憩含む)/音楽:録音音源

<スタッフ>
バレエミストレス:宗田静子/バレエマスター:夏山周久  
舞台監督:堀尾由紀/照明:山本英明/音響:矢野幸正

<チケット発売情報>

チャコットWebサイト最速先行実施中! 詳細は、チャコットWebサイト特設ページをご覧ください。

東京公演 2016年8月31日(水) 開場17:45 開演18:30 東京文化会館(東京・上野)

<一般発売:2016年6月21日(火)10:00より>

チケット: S席9,400円/A席7,900円/B席6,400円/C席4,900円/学生券3,000円(税込)
発売所: e+(イープラス) http://eplus.jp/BFF/
チケットスペース 03-3234- 9999(オペレーター)、チケットスペースオンライン 
チケットぴあ 0570-02- 9999 Pコード:451-926、http://pia.jp/
ローソンチケット 0570-084-003 ;Lコード:31483;、0570-000- 407 (オペレーター)、http://l-tike.com/
東京文化会館チケットサービス 03-5685- 0650

お問い合わせ:チケットスペース 03-3234- 9999 (月〜土10:00-12:00/13:00- 18:00)


金沢公演 2016年9月3日(土) 開場17:45 開演18:30 本多の森ホール(石川・金沢)

チケット: S席7,800円/A席6,300円/B席4,800円(税込)

発売所:  北國新聞文化センター(金沢本部事務局、金沢南スタジオ、野々市スタジオ、白山スタジオ、アピタ松任店スタジオ、小松教室、七尾教室、高岡スタジオ)
北國新聞読者サービスセンター
香林坊大和
石川県立音楽堂チケットボックス
e+(イープラス) http://eplus.jp/
チケットぴあ 0570-02- 9999 http://pia.jp/
ローソンチケット 0570-084- 005&l、0570-000-407 (オペレーター)、http://l-tike.com/
お問い合わせ:北國新聞文化センター 076-260- 3535

公式Webサイト BFF チャコット 検索

http://www.chacott-jp.com/j/special/ticket/bff/index.html

※ 公演当日まで、チャコットWebサイト特設ページ記載の内容が最新情報となります。


奥村康祐さんは、「チャイコフスキーパ・ド・ドゥ」を金子扶生さん(ロイヤル・バレエ)と踊って、モスクワ国際コンクールで銀賞を受賞しました。その踊りがここで米沢唯さんと観られるのですから、これは本当にもう楽しみですよね。

シクリャーロフ、シリンキナがミュンヘン・バレエと契約

マリインスキー・バレエのウラジーミル・シクリャーロフと、彼の妻であるマリア・シリンキナが、ミュンヘン・バレエに移籍するのではないかという噂がこのところずっとありました。マリインスキー国際フェスティバルにおいても、その話で持ち切りだったのです。

そして、ついに、シクリャーロフは、ロシアのカザンでインタビューに答え、ミュンヘン・バレエと契約を結んだことを明らかにしました。
http://www.evening-kazan.ru/articles/vladimir-shklyarov-v-mariinskom-teatre-ya-uzhe-stanceval-vse-chto-hotel.html

カザンで開かれている第29回ルドルフ・ヌレエフ・フェスティバルで、シリンキナが「シュラーレ」に出演していました。そこでシクリャーロフに対して行われたインタビューです。それによると、来シーズン、この二人はイーゴリ・ゼレンスキーに招かれ、ミュンヘン・バレエと1年契約を結んだとのことです。そしてこの契約は、もう一年延長される可能性が高いとのことです。

ただし、彼らはマリインスキー・バレエを退団するわけではなく、籍を残したまま、1年間のサバティカル(休暇)を取るという形になりそうだとのこと。シクリャーロフはマリインスキー・バレエに入団して14年経ち、現在31歳とクラシックダンサーとしてのキャリアの頂点にいます。さらに成長して、今できる最大限のことをしたい、マリインスキー・バレエでは踊りたい役をすべて踊る機会に恵まれたので、新しいカンパニーで、レパートリーを広げたいと考えたとのこと。アーティストは自分自身だけではなくて、バレエの世界で何が起きているかに興味を持たなくてはならない、そういう姿勢があってこそのプロだと考えているそうです。

シクリャーロフらは、マリインスキー・バレエを退団するわけではないので、マリインスキー・バレエのツアー公演などでシクリャーロフを観る機会はあると思われます。ただ、マリインスキー・バレエは、男性ダンサーが不足しているので、最大のスターであるシクリャーロフが期間限定とはいえ、いなくなってしまうのは損失であることでしょう。

マリインスキーでの明るいニュースとしては、もちろんキミン・キムがブノワ賞で最優秀男性ダンサーに輝いたことがあります。パリ・オペラ座へのゲスト出演、マリインスキー国際フェスティバルでの活躍(同じくブノワ賞を受賞したオニール八菜さんと共演)と今は飛ぶ鳥を落とす勢いです。確かに彼の技術の高さは、当代一、二を争うレベルですね。

シクリャーロフは、「バレエの王子さま」公演で7月に東京で観ることができます。こちらは楽しみですね。
http://www.nbs.or.jp/stages/2016/prince/index.html

◆公演日時
7月15日(金)19:00
7月16日(土)14:00
7月17日(日)14:00
7月18日(月・祝)14:00

◆予定される出演者

【予定される王子さま】 
レオニード・サラファーノフ Leonid Sarafanov(ミハイロフスキー劇場バレエ) 
ダニール・シムキン Daniil Simkin(アメリカン・バレエ・シアター) 
ウラジーミル・シクリャローフ Vladimir Shklyarov(マリインスキー・バレエ) 
エドワード・ワトソン Edward Watson(英国ロイヤル・バレエ団)

【予定されるお姫さま】 
サラ・ラム Sarah Lamb(英国ロイヤル・バレエ団)
マリア・コチェトコワ Maria Kochetkova(サンフランシスコ・バレエ)

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2016/05/19

ミラノ・スカラ座バレエ2016-17シーズン

マウロ・ビゴンゼッティが芸術監督に就任した、ミラノ・スカラ座バレエの2016-17シーズンが発表されています。

http://www.teatroallascala.org/en/season/2016-2017/balletto/index.html

December 20, 1016 - January 19, 2017
Coppélia (Bigonzetti)
「コッペリア」 (マウロ・ビゴンゼッティ振付)

11 February 2017 - 1 March 2017
Evening Stravinsky: The Rite of Spring (Glen Tetley) / Petrushka (Mikhail Fokine)
「ストラヴィンスキーの夕べ」 「春の祭典」(グレン・テトリー)、「ペトルーシュカ」(ミハイル・フォーキン)

April 19, 2017 - May 13 2017
La Valse (George Balanchine) / Symphony in C (George Balanchine) / Scheherazade (Eugenio Scigliano)
「ラ・ヴァルス」(ジョージ・バランシン振付)、「シンフォニー・インC」(ジョージ・バランシン振付)、「シェヘラザード」(Eugenio Scigliano振付)

April 22, 2017 - April 30, 2017
ballet school of La Scala Show
ミラノ・スカラ座バレエ学校公演

May 20, 2017 - June 1, 2017
Handel Project (Bigonzetti ) with Svetlana Zakharova (20, 23, 24, 25 May)
「ヘンデル・プロジェクト」(マウロ・ビゴンゼッティ振付)、5月20,23,24,25にはスヴェトラーナ・ザハロワが出演

June 28, 2017 - July 22, 2017
a Midsummer night's Dream (George Balanchine)
「真夏の夜の夢」(ジョージ・バランシン振付)

8-21 July 2017
Swan Lake (directed by Alexei Ratmansky)
「白鳥の湖」(アレクセイ・ラトマンスキー振付)

September 23, 2017 - October 18, 2017
Romeo and Juliet (Kenneth MacMillan) with Roberto Bolle (23, 26, September 28) Etoile Guest: Marianela Nunez
「ロミオとジュリエット」(ケネス・マクミラン振付)、9月23,26,28日にはロベルト・ボッレが主演、ゲストにマリアネラ・ヌニェス


さて、ビゴンゼッティが選んだ来シーズンのレパートリーですが、ミラノ・スカラ座のダンサーたちに大ブーイングを浴びています。

http://www.gramilano.com/2016/05/la-scala-dancers-protest-planned-new-ballet-season/

こちらのラインアップは、5月10日の記者会見で発表されたのですが、この記者会見の場に50人のスカラ座のダンサーたちが集まり、抗議を行いました。ビゴンゼッティの芸術監督は、総裁であるアレクサンドル・ペレイラが任命したのですが、古典作品中心にスカラ座にとって、ビゴンゼッティの現代作品路線はあまりそぐわないものであると多くの人が懸念していました。そして、実際にレパートリーのふたを開けてみると、その懸念通りのものが出てきたわけです。

今までミラノ・スカラ座の芸術監督は、その前にはマリインスキー・バレエの芸術監督だったマハール・ワジーエフが務めていたわけです。ワジーエフは、古典バレエを強化するとともに、ヴィハレフによる「ライモンダ」の復元、そしてラトマンスキーによる「眠れる森の美女」、そして「白鳥の湖」という原振付を基にした新制作を導入し、(白鳥~は6月の上演ですが、共同制作のチューリッヒ・バレエでは大評判となりました)好評を博してきました。またカンパニーのレベルも確実に向上しました。ワジーエフが、スカラ座での成功の後ボリショイ・バレエへと転出した後、全く違った路線の、現代作品の振付家であるビゴンゼッティが後任となったわけです。

スカラ座の来シーズンは、7プログラムで構成されています。そのうち一つは、今シーズン初演されたものの、大不評だったビゴンゼッティの「コッペリア」の再演。そして新作は、やはりビゴンゼッティ振付の「ヘンデル・プロジェクト」。「シェヘラザード」を振付けるEugenio Sciglianoも、ビゴンゼッティの盟友です。残る4演目のうち一つは、グレン・テトリーとフォーキンという20世紀の作品。

そしてバランシンの「真夏の夜の夢」、バランシンを含むミックスビル、マクミランの「ロミオとジュリエット」、ラトマンスキーの「白鳥の湖」というレパートリーなので、この中で純粋な古典作品は、「白鳥の湖」だけとなります。この「真夏の夜の夢」「白鳥の湖」という大規模な作品が同じ時期に上演されるため、ダンサーにとっての負担は大きなものととなります。

また、ダンサーたちは、シーズンの始まりから6月の終わりまでは古典作品を踊らないため、クラシックの技術が低下するという懸念があると訴えています。

ダンサーたちは以下のような声明を発表しています。
「現在の編成は、他の重要な国際的なカンパニーと同様古典作品に基づいているミラノ・スカラ座バレエ団のアイデンティティと本質を無視して、コンテンポラリーや現代作品を優先させるものとなっています。スカラ座は、一人の振付家のためのカンパニーに変質させられています」

また、今まではミラノ・スカラ座の公演では、ロシア系を中心とした多くの国際スターがゲストダンサーとして出演してきたのですが、来シーズン、カンパニーの外からのゲストはマリアネラ・ヌニェス一人のみ。あとはロベルト・ボッレ(「ロミオとジュリエット」とスヴェトラーナ・ザハロワ(「ヘンデル・プロジェクト」)が予定されているだけです。

**********

ミラノ・スカラ座の芸術監督選びにあたっては、かなり多くの候補者がいたのですが、元パリ・オペラ座メートル・ド・バレエのローラン・イレールが、ビゴンゼッティと共に最終候補の二人まで絞り込まれていました。イレールが選ばれていたら、スカラ座の今までの伝統はおそらく守られていたことでしょう。今シーズン、ミラノ・スカラ座バレエがヌレエフ版「ドン・キホーテ」を上演するにあたって、ローラン・イレールがスカラ座へ振付指導を行っていました。

この「ドン・キホーテ」を持ってミラノ・スカラ座バレエは9月に来日します。ローラン・イレールの薫陶を浴びたダンサーたちが踊ってくれるわけですが、その次の来日公演では、果たして何が踊られることでしょうか。

この話とずれますが、ミラノ・スカラ座バレエ来日公演の「ドン・キホーテ」にゲスト出演予定のポリーナ・セミオノワは、健康上の理由により、ABTのメトロポリタン・オペラシーズンを全キャンセルしています。無事に来日公演に出演してくれると良いのですが。

2016/05/18

オニール八菜さんが、ブノワ賞を受賞

バレエ界で最も権威のある賞の一つであるブノワ賞を、パリ・オペラ座バレエのプルミエール・ダンスーズ、オニール八菜さんが受賞しました。おめでとうございます。

バレエ
ブノワ賞にオニール八菜さん
http://mainichi.jp/articles/20160518/k00/00m/040/152000c


【斉藤希史子、モスクワ杉尾直哉】バレエ界のアカデミー賞」と称される「ブノワ賞」が17日夜(日本時間18日未明)、モスクワのボリショイ劇場で発表され、女性ダンサー部門は東京都出身でパリ・オペラ座バレエ所属のオニール八菜(はな)さん(23)に決まった。対象は、昨年5月に本拠で踊った古典作品「パキータ」の表題役。日本仕込みの端正な技術と、フランスらしい優雅さが高く評価された。

 オニールさんは「世界のビッグスターに与えられてきた賞。これからもたくさん踊り続けたい」と話している。

 日本からの受賞は、2014年の木田真理子さん(スウェーデン王立バレエ所属)に続いて2人目。

バレエの最高権威・ブノワ賞にオニール八菜さん
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20160518-OYT1T50008.html

 【モスクワ=田村雄】世界で最も権威のあるバレエ・ダンス賞の一つ、ブノワ舞踊賞が17日、モスクワで発表され、女性ダンサー部門で、日本人を母に持ち、フランスのパリ・オペラ座バレエ団で踊るオニール八菜さん(23)が受賞した。

 オニールさんは東京生まれで日本国籍を持つ。日本出身のダンサーで同賞を受けるのは2014年の木田真理子さん以来、2人目となる。

 同賞は振付家ユーリー・グリゴロービチさんが代表を務める国際ダンス連合が主催し、前年に最も優れたパフォーマンスを披露したダンサーや振付家らを顕彰する。オニールさんは、振付家ピエール・ラコットの復刻・振り付けによる古典「パキータ」での主役の踊りを高く評価された。

@aliciaamatriainが投稿した写真 -

まだブノワ賞の公式サイトでは、受賞者は発表されていません。他の賞の受賞者も気になるところです。
http://benois.theatre.ru/

今回ノミネートされたダンサーたちの一覧はこちらでまとめてあります。
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2016/04/post-4690.html

<追記>

ブノワ賞、受賞者は以下の通りです。

http://m.ria.ru/culture/20160517/1435334970.html


振付家賞 
ユーリ・ポソホフ (ボリショイ・バレエ「現代の英雄」)、ヨハン・インガム (スペイン国立ダンスカンパニー「カルメン」、NDT「One on One」)

最優秀女性ダンサー賞 
オニール八菜 (パリ・オペラ座バレエ)、アリシア・アマトリアン (シュツットガルト・バレエ)

最優秀男性ダンサー賞 
キミン・キム (マリインスキー・バレエ。ただし対象のパフォーマンスはパリ・オペラ座に客演した「ラ・バヤデール」)

舞台美術賞  
REN DONGSHENG 「Emperor Yu Li」(北京ダンスアカデミー)

ブノワ・モスクワ・マシーン・ポジターノ賞(特別賞)  
エカテリーナ・クリサノワ (ボリショイ・バレエ)

傑出したパートナーシップに与えられる特別賞 
 アレクサンドル・リアブコ (ハンブルグ・バレエ)

オニール八菜さんがジェルマン・ルーヴェと踊るAscension

<追記>
バレエ・ブノワ賞
端正な踊り、堂々と…オニール八菜さん
http://mainichi.jp/articles/20160518/k00/00e/040/171000c

世界の一流ダンサーの仲間入りを果たしたが、「たくさんのエトワール(パリ・オペラ座の最高位)をはじめ、世界のビッグスターに与えられた賞。まだ実感がわかない」と語った。
(中略)
目指すはエトワールだが、「それだけでは仕方がない。役作りに励んで、とにかくいっぱい踊りたい」という。

 日本でバレエの基礎を教えてくれた恩師、岸辺光代さんを今でも毎年のように訪ね、時にはレッスンをつけてもらう。「先生には本当に感謝している。これからもよろしくお願いします」と語った。

バレエ「ブノワ賞」に日本生まれのオニール八菜さんが選ばれる(フジテレビ、映像ニュース)
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20160518-00000992-fnn-int

バレエ「ブノワ賞」 オニール八菜さん最優秀賞に(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160518/k10010525191000.html

Dance Cubeの最新インタビュー
http://www.chacott-jp.com/magazine/interview-report/interview/post-116.html

テレビ朝日のニュース映像(インタビュー付き)

日テレの受賞の喜びを語るニュース映像
http://www.news24.jp/articles/2016/05/19/10330490.html

パリ・オペラ座バレエは来年3月に来日予定ですが、こちらのダンスキューブのインタビュー記事によれば「ラ・シルフィード」を踊る可能性が高いそうだとのことです。

NBAバレエ団×林英哲×新垣隆新作「死と乙女」リハーサル

5月27日に初演となる、NBAバレエ団の新作「死と乙女」のリハーサルに先日お邪魔しました。

http://www.nbaballet.org/performance/2015/sitootome/index.html

注目の作曲家新垣隆さんが楽曲を手掛け、新垣さんのピアノと林英哲さんの和太鼓による演奏、舩木城さんの振付による作品です。この日は、初めて、林さんと新垣さんが演奏しながら通しで踊るというリハーサルでした。

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まず、新垣隆さんと林英哲さんが生み出す音楽が力強くてメロディアスで、圧倒的に素晴らしいです。ピアノと和太鼓のみの演奏の楽曲でバレエを踊るというのはイメージしづらかったのですが、よく考えてみたらピアノも打楽器なのです。ピアノと和太鼓の応酬によって生まれたハーモニーというのは、パワーを感じさせながらも、同時にメロディも美しく、そして斬新でスタイリッシュ。林英哲さんは言うまでもなく和太鼓では第一人者ですが、新垣さんは作曲家としてだけでなく、演奏者としても超一流で爆演を聴かせてくれ、この二人が火花を散らす様子には興奮します。この音楽でCD出してほしいと思いました。

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舩木さんの振付は、この音楽の持つイメージをそのままダンスにしているのですが、彼の振付も非常に独創的です。タイトルの「死と乙女」はエゴン・シーレの同名の絵画にインスピレーションを得たもの。この絵画の持つ、時にはエロティックな愛と死のイメージももちろんありますが、中心となるペアがあるわけではなく、群舞あり、パ・ド・ドゥあり、同時多発的に様々な動きがあり、さらには複数のダンサーを組み合わせてのリフトなど、複雑な動きもあります。ダンサーたちが駆け抜けていく疾走感のある動きがとても印象的です。途中で大声で泣き出す女性ダンサーが登場するなど、ダンサー一人一人が表情豊かに生の感情を表現していくので、魂を呼び起こし、理屈抜きで人間の根源的な部分に働きかけて、内なる様々な想いを掻き立てていきます。

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新垣さんは、ストラヴィンスキーに影響を受けていると記者会見でも語っていましたが、確かにこの作品はバレエ・リュス的なイメージ、特にニジンスキーが振付けた「春の祭典」を連想させるところがあります。一瞬、「ショピニアーナ」のフレーズが登場したりするところも、バレエ・リュスへのオマージュを感じさせます。一流の音楽家たちとコラボレーションして、新しい作品を作り上げるというコンセプト自体が、とてもバレエ・リュス的だと感じました。

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エゴン・シーレ「死と乙女」

100年前に、パリでディアギレフ、ニジンスキー、ストラヴィンスキーがバレエに革命を起こしたように、この「死と乙女」という作品が日本のバレエ界に革命を起こしてくれるのではないか、そういった期待を持たせてくれる、大変わくわくさせてくれたリハーサルでした。

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もう一作品、アイルランドの民族舞踊を基にした「ケルツ」のリハーサルもありました。こちらの作品でも、途中の男性ダンサーたちによるパートは、和太鼓の生演奏に合わせて踊られます。この和太鼓を演奏するのは、林英哲さんの音楽に共鳴する若手奏者たちの太鼓ユニット「英哲風雲の会」で、パワフルな男性ダンサーたちの踊りにとてもマッチしていました。躍動感があって、とても素敵な作品でした。

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日本のバレエ界は、どうしても古典作品中心で、新しい作品が生まれにくくなっています。そのような状況を打破すべく、久保紘一芸術監督は、日本発の新しいバレエを生み出そうと今回の公演を企画しました。この挑戦する姿勢は素晴らしいし、そしてリハーサルを観た限りでは、とても興奮させられる、そして観て聴いて面白い、新しい芸術の誕生に立ち会える瞬間が待っていると感じさせてくれました。バレエやダンスに関心がある人だけでなく、音楽を愛好する人、アートを愛する人、いろんな人が観て、インスピレーションを得られる作品になっていると思います。振付家、作曲が日本人で、和太鼓を使っているクオリティの高い作品ということで、海外に持って行っても日本発の最新作ということで勝負できるのではないかと思いました。公演がとても楽しみです。

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公 演 名:
『死と乙女』
日   時:
2016年5月27日(金)開場18:30・開演19:00
    5月29日(日)開場12:30・開演13:00
            開場16:30・開演17:00
公演は約2時間を予定
会   場: 北とぴあ
チケット料金:
全席指定
5月27日(金)プレビュー公演
SS席 9,000円
 S席 7,000円
 A席 6,000円
学生席 3,000円(大学・高校生)
5月29日(日)本公演
SS席 10,000円
 S席 8,000円
 A席 7,000円
学生席 3,000円(大学・高校生)
お問い合せ・
電話予約: NBAバレエ団事務局(月~金10:00~17:00)
Tel:04-2937-4931

芸術監督・演出:久保紘一
作曲:新垣隆
振付:第三部「死と乙女」/舩木城 ・ 第一部「和太鼓」/宮内浩之

Act1 和太鼓 英哲風雲の会
Act2 ケルツ ライラ・ヨーク振付
Act3 舩木城 新作「死と乙女」

2016/05/17

モンテカルロ・バレエ「くるみ割り人形カンパニー」ネット視聴可能

昨年12月30日にインターネットと映画館で生中継された、モンテカルロ・バレエの「くるみ割り人形カンパニー」(ジャン=クリストフ・マイヨー振付」が、Cultureboxで全編視聴可能となっています。(ジオブロックなし)

http://culturebox.francetvinfo.fr/live/danse/danse-contemporaine/casse-noisette-compagnie-par-les-ballets-de-monaco-232877

2013年に初演された「くるみ割り人形カンパニー」、今回はボリショイ・バレエからオルガ・スミルノワとアルチョム・オフチャレンコという豪華なゲストを迎えています。クララの母役として小池ミモザさんが出演。

クララの両親が経営するバレエ学校のスタジオが舞台で、クララはバレリーナを夢見る眼鏡をかけた少女。スタジオの壁面には「牧神の午後」のニジンスキーなど、バレエ・スターの写真が飾られています。そして1幕ではチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」に合わせてバレエ学校の生徒たち(プリンセス・グレース・アカデミーの生徒たち)が踊るシーンも挿入されています。ドロッセルマイヤーは妖精という設定で女性ダンサーが演じており、初演ではベルニス・コピエテルスが踊ったとのこと。2幕もカラフルながらマイヨーらしいスタイリッシュさで、各国の踊りには、マイヨーの「シンデレラ」「ロミオとジュリエット」「ラ・ベル」「夢」からの引用が観られます。終盤に登場するスミルノワ(「美女」)とオフチャレンコ(ロミオ)のパ・ド・ドゥはこの上もなく美しく華麗なものです。衣装の一部をカール・ラガーフェルドが手掛けており、クリスマスにふさわしい、華やかで楽しい作品となっています。

Le Père – Alvaro Prieto
La Mère – Mimoza Koike
Clara – Anjara Ballesteros
Fritz – Lucien Postlewaite
La Fée Drosselmeyer – Mariana Barabás
Les Anges gardiens – George Oliveira, Alexis Oliveira
Casse-Noisette – Stephan Bourgond
Charmant, ami de Clara – Christian Tworzyanski
Zoé, amie de Fritz – Victoria Ananyan
Albrecht, Danseur étoile – Gabriele Corrado
Giselle, Danseuse étoile – Liisa Hämäläinen
Roméo – Artem Ovcharenko
La Belle – Olga Smirnova

ニュース映像

2016/05/15

オーレリ・ デュポン引退公演『マノン』映画館上映決定

昨年5月の、オーレリ・ デュポン引退公演『マノン』。先日はNHK-BSでも放映されましたが、この記念すべき公演を大スクリーンで観るチャンスがやってきます。ご案内いただきました。

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Photo : © Christian Leiber / Opéra national de Paris

バレエ史上最も多くのファンに愛されたバレエダンサーの一人であるオーレリ・デュポンが長年トップエトワールとして活躍してきたパリ・オペラ座で、2015 年 5 月に彼女のダンサー人生の幕を閉じる引退公演が行われた。世界中のファンから愛された彼女の最後の公演には、映画界や政界などのセレブを含む総計 2000 人を超えるファンが駆けつけ、これまでの彼女のダンサーとしての努力と経験を基盤とする円熟した踊りに酔いしれる一夜となった。

この引退公演「マノン」には、主役のオーレリ・デュポンだけでなく、ステファン・ビュリオン、アリス・ルナヴァン、バンジャマン・ペッシュ、カール・パケットなど豪華エトワールが参加している。しかもオーレリ・デュポンの相手役を務めたゲスト・ダンサーのロベルト・ボッレはミラノ・スカラ座バレエ団エトワールでありアメリカン・バレエ・シアターのプリンシパルだ。オーレリのためにトップダンサーが集結した引退公演は、ファンに大きな感動を与え、オーレリ・デュポンにとってはダンサー人生の素晴らしい幕引きとなった。

この公演は日本のバレエファンの中でも話題になり、フランスでは収録された公演が映画館で上映されたこともあり、日本での映画館上映を心待ちにしていた方々も多いだろう。収録にあたり監督を務めたのは、映画界でも高い評価を得てきた映画監督セドリック・クラピッシュ。クラピッシュによる繊細な映像は、生の公演の感動をそのままに、オーレリの細かな表情や仕草、そしてダイナミックな舞台上の動きを見事にとらえている。劇場公開では、一部、本邦初公開となるオーレリのインタビュー映像も一緒にご覧頂ける。ハイスペックな映画館の音響環境と大スクリーンで、オーレリの最後のダンスに酔いしれてください。

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というわけで、やはり映画館のスクリーンで『マノン』を観られるのは、テレビの画面で観るのとは違った大きな感動があるはずです。こちらの『マノン』、主演の二人や、ステファン・ビュリヨン、カール・パケット、バンジャマン・ペッシュといったエトワールのパフォーマンスも観られますし、それ以外の脇キャストでも、容姿端麗のパリ・オペラ座ダンサーたちを大きなスクリーンで観ることができるという楽しみもあります。

パリ・オペラ座 オーレリ・デュポン引退公演『マノン』
出演:
マノン・レスコー:オーレリ・デュポン
デ・グリュー:ロベルト・ボッレ
レスコー:ステファン・ビュリョン
レスコーの愛人:アリス・ルナヴァン
ムッシューG.M.:バンジャマン・ペッシュ
看守:カール・パケット
指揮・編曲:マーティン・イェーツ
演奏:パリ・オペラ座管弦楽団
美術:ニコラス・ジョージアディス
振付:ケネス・マクミラン
監督:セドリック・クラピッシュ、Miguel Octave
収録:2015年5月18日 パリ・オペラ座 ガルニエ宮(フランス)

上映劇場及び上映日
2016 年 6 月 18 日(土)~6 月 24 日(金)
【東京】TOHO シネマズ 日本橋、吉祥寺オデヲン
【神奈川】TOHO シネマズ ららぽーと横浜
【愛知】TOHO シネマズ 名古屋ベイシティ
【大阪】TOHO シネマズ 梅田
【兵庫】TOHO シネマズ 西宮 OS
【京都】TOHO シネマズ 二条
【福岡】TOHO シネマズ 天神
     2016 年 7 月 1 日(金)〜7 月 7 日(木)
【宮城】TOHO シネマズ 仙台(*仙台のみ 7/1~公開)
料金:一律 3,500円(税込)(*TOHOシネマズ 日本橋のPBS:4,500円(税込))
劇場HP:TOHOシネマズ https://www.tohotheater.jp 、吉祥寺オデヲン
http://cinemaodeon.jp/
配給:カルチャヴィル合同会社 配給・宣伝協力:dbi inc.
引退公演『マノン』情報HP:http://www.culture-ville.jp

また7月には『マノン』のDVDの発売もあります。ファンは映画館、家でDVDと何回も楽しめてラッキーですよね。

パリ・オペラ座バレエ「マノン」~オーレリ・デュポンさよなら公演~ [DVD]パリ・オペラ座バレエ「マノン」~オーレリ・デュポンさよなら公演~ [DVD]

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2016/05/14

4/5 マリインスキー・バレエ「白鳥の湖」(マリインスキー国際フェスティバル)

マリインスキー国際フェスティバルの私にとっての4日目で最終日は、「白鳥の湖」。パリ・オペラ座から、エロイーズ・ブルドンをゲストに迎えての公演。昨年11月に、オペラ座の昇進コンクールで審査員として参加したユーリ・ファテーエフが彼女を気に入って、ゲストに迎えたとのこと。ブルドンはパリでとても人気があるためか、フランスからサンクトペテルブルグに遠征してきたファンも多く、何人かのフランス人やイギリス人の知人に会場で会った。いろんな国から観客が集まるのは、バレエ・フェスティバルの楽しみである。

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「白鳥の湖」はやはり人気の演目であり、チケットは早々に売り切れたのだが、出発する数日前に2枚だけ戻りチケットが出てきているのに気が付いて何とか買うことができた。といっても、下手サイド舞台寄りの4階席、舞台寄りの見づらい席。1列目なので前の人の頭を気にする必要はないし1列しかないので後ろの人も気にしなくていいのだけど、舞台の3分の一は見えない。4階席といっても古い劇場なのであまり高さはなく、舞台との距離は近いのだけど。値段は3000円程度なので、席は悪いけど、格安ではあるし、豪華な客席もよく見える。

席からの眺めはこんな感じ
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Odette/Odile : Heloise Bourdon  オデット/オディール エロイーズ・ブルドン
Prince Siegfried : Timur Askerov ジークフリート王子 ティムール・アスケロフ
The Prince's Friends: Nadezhda Batoeva 王子の友人 ナデージダ・バトーエワ
Sofia Ivanova-Skoblikova                  ソフィア・イワノワ=スコブリコワ
Xander Parish                         ザンダー・パリッシュ
Jester : Vladimir Shmakov  道化 ウラジーミル・シュマコフ
Von Rothbart: Konstantin Zverev ロットバルト コンスタンチン・ズヴェレフ
Cygnets : Anastasia Mikheikina
Svetlana Ivanova
Svetlana Russkikh
Elina Kamalova
Swans: Victoria Brilyova
Yekaterina Chebykina
Diana Smirnova
Yukuaba Chereshkevich
Two Swans : Xenia Ostreiskovskaya
Sofia Ivanova-Skoblikova
Spanish : Yulia Kobzar
Maria Shevyakova
Alexei Kuzmin
Alexander Beloborodov
Neapolitan : Anna Lavrinenko
Alexei Nedviga
Hungarian : Olga Belik
Kirikk Leontiev
Mazurka : Zenia Dubrovina
Alisa Rusina
Maria Lebedeva
Alisa Petrenko
Dimitry Pykhachov
Roman Belyakov
Dimitry Sharapov
Alexander Romanchikov

マリインスキー劇場で「白鳥の湖」を観ることができるのは感慨深いものがあった。セルゲイエフ版のオースドックスで控えめな感じも劇場によく合っているし、上階から観るマリインスキー・バレエのコール・ド・バレエは幻想的でよく揃えられており、息をのむほど美しい。

「白鳥の湖」をトレードマークとしている劇場に、パリ・オペラ座のバレリーナがゲスト出演するというのは、なかなかプレッシャーがかかるものだと思われる。フランス人の熱心なバレエファンに聞くと、オペラ座で現在オデット/オディールを最も得意としているのは、エロイーズ・ブルドンとのこと。きっちりとした古典の技術、長身でほっそりとしており手脚も長いし上半身も柔らかくリリカルな表現を得意としている。

その彼女も、バックにマリインスキー・バレエの白鳥の群舞を従えると、メソッドの違いは明らかだし、ワガノワ出身者を中心とするマリインスキーのダンサーたちの、典雅でしなやかな上半身の美しさには及ばない。かなり早めにサンクトペテルブルグ入りをし、マリインスキーの教師たちにマリインスキー流バレエを学んできたとのことで、ロシア流の足先が高いアティチュード、手首や腕の細かい使い方などは身につけていたのだが。流派の違いはさておき、ブルドンは傾斜のある舞台の上でも落ち着いており、白鳥の女王たる堂々とした風格と凛とした美しさで、詩的なオデットを好演していた。若いバレリーナ(26歳)ならではの清新さがありつつも、若さゆえの自己主張もあり、長身を利用して空間を大きく切り取っていた。

オディールのブルドンは、技術的にはレベルが高く、グランフェッテもダブルを入れて少しだけ早く終わったもののきれいに回っていたけれども、なぜかオデットほどの支配力がなかったようにも感じられた。ここではゲストならではの緊張感と、若さがちょっと災いしたかもしれない。とはいっても、ミスをしたわけではないし、彼女がオペラ座ではいまだにスジェであることを考えれば、立派なパフォーマンスと言える。最終幕のオデットは、2幕よりもさらに堂々としていながら悲劇的で、非常に美しかった。彼女が心をこめて、周到な準備を重ねてこの大舞台に挑んだのが伝わってきて心を打った。ミルピエには冷遇され、同じころ上演のオペラ座の「ロミオとジュリエット」ではジュリエットの友達やロザラインといった端役しか与えられていないブルドンだが、芸術監督も交代することだし、このゲスト出演の成功を糧に、オペラ座を代表するバレリーナとして羽ばたいてほしいと感じた。

一方、王子役はティムール・アスケロフ。長身で白タイツが良く似合う長く美しい脚、正確な古典技術の持ち主でサポートも上手い。いつでもきれいに5番に入るトゥールザンレール、脚がきれいに伸びたマネージュと、基本的には文句のつけようがない。しかし彼はワガノワ出身ではないこともあり、上半身が硬い。さらに演技力というか表現力が致命的に欠けているので、オデットに対する感情もほとんど見えないし、退屈なダンサーなのだ。昨年の来日公演の「ダイヤモンド」はストーリーのないバランシン作品だったので、彼にとっては良かったと思うのだが、物語バレエで観るのはつらい。パートナーがオペラ座からのゲストということもあったので、パートナーシップというものが築けていなかったし愛はなかった。

ロットバルトのコンスタンチン・ズヴェレフは長身で踊りがシャープなのだが、彼はワガノワ育ちならではのエレガンスもあり、情熱的でしなやかな大きな踊りをする人。3日前の「青銅の騎士」の主役で好演するなど、演技力にも優れている。ズヴェレフはまだ「白鳥の湖」の王子を踊ったことがないのだが、今回はむしろ彼が王子を踊ったほうが良かったのではないかと感じた。終幕の存在感は遥かにアスケロフを上回る。

パ・ド・トロワは、目下大売出し中のトリオ、ナデージダ・バトーエワとソフィア・イワノワ=スコブリコワに、ザンダー・パリッシュ。女性二人とも、跳躍力やプティ・アレグロに優れているダンサー。ソフィア・イワノワ=スコブリコワは、マリインスキー・バレエの女性ダンサーにしてはふくらはぎが太くてプロポーションには恵まれていないけれども、スブレット的な役(キトリなど)には向いているように感じられた。彼女は、終幕の2羽の白鳥も踊っていたけれど、それはやはりこの役の大ベテランであるクセニア・オストレイコフスカヤの抒情性にはるかに及ばない。バトーエワも生き生きとして魅力的だった。ザンダー・パリッシュは、12月の来日公演の時よりもサポートも巧くなってきているし、マリインスキー的ではないものの、美しい脚、クリアで丁寧な踊りで、容姿の美しさも相俟って目の保養になることこの上なしだった。

道化のウラジーミル・シュマコフは今までは知らないダンサーだったが、愛嬌たっぷりだったし、見せ場のピルエット・ア・ラ・スゴンドもとてもよく回っていて、魅力的だった。きっと次の来日公演では活躍することだろう。

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3幕の民族舞踊はナポリのアレクセイ・ネドヴィガ、ハンガリーの美しいオルガ・ベリクが目立ったくらいで、あとはそれほど印象に残らなかった。スペインはやはりもっと派手に華やかに踊ってもらいたい。

コール・ド・バレエのエレガンスと統一感は前述の通りで、マリインスキー・バレエの白鳥の美しさは世界一だと改めて実感した。それをこの古風で歴史を感じさせる劇場で観られた幸せはひとしおだった。ブルドンは情感豊かで技術に優れた、美しく素晴らしいバレリーナだし、これからオペラ座ではオデットを何回も踊ることだろう。でも次マリインスキー劇場で観ることができるなら、その時はやはりマリインスキー・バレエのオデット/オディールで観たい。

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ENB(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)のコンクール「エマージング・ダンサー」5/17ネット中継 /追記 (結果)

ENB(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)の若手ダンサーが出場する、バレエ団内のコンクール第7回「エマージング・ダンサー」が5月17日(火)に開催されます。

http://www.ballet.org.uk/whats-on/emerging-dancer-2016/

過去の受賞者の中には、2011年に受賞し、現在はファースト・ソリストとして主演も多くしている加瀬栞さんがいます。審査員が選ぶ賞と、観客が選ぶ観客賞があります。

今年の出場者は、

Isabelle Brouwers
Jeanette Kakareka
Rina Kanehara (金原里奈)
Cesar Corrales
Daniele Silingardi
Erik Woolhouse

の男女各3人、合計6人です。

(男性出場者の紹介ビデオ)

(女性出場者の紹介ビデオ)

金原里奈さんは、昨年のローザンヌ国際コンクールでスカラシップを受賞しているので、覚えている方も多いのではないかと思います。昨年秋に入団し、すでに「海賊」のオダリスク役を踊っているなど活躍を見せています。カンパニー最年少団員だそうです。映像を見ると、英語が流ちょうなのに驚きます。

セザール・コラレスは、2013年にローザンヌ国際コンクールでスカラシップを獲得してABTのスタジオカンパニーに入り、2014年にはYAGPのグランプリに輝きました。2014年に入団して以来、「ロミオとジュリエット」のマキューシオ、「海賊」のアリとビルバントを踊っているなど活躍しており、優勝候補です。

エリック・ウルハウスは、東京生まれの日英ハーフで東京のオーストリア・バレエ・スクールを経てロイヤル・バレエ・スクールを卒業。在学中の2014年に、英国のバレエ学生対象のコンクール「ヤング・ブリティッシュ・ダンサー」で優勝し、昨年入団。

Daniele Silingardiは来シーズンよりハンブルグ・バレエに移籍するそうです。

<出演演目>

パ・ド・ドゥ
Isabelle Brouwers and Erik Woolhouse – Talisman
Jeanette Kakareka and Daniele Silingardi – Black Swan pas de deux from Swan Lake
Rina Kanehara and Cesar Corrales – Diana and Acteon

ソロ
Isabelle Brouwers – new work choreographed by Charlotte Edmonds
Cesar Corrales – Contrabajo para un hombre solo by Maximiliano Guerra
Jeanette Kakareka – solo from Annabelle Lopez Ochoa's Requiem for a Rose
Rina Kanehara – Black Swan solo from Jean-Christophe Maillot's Swan Lake
Daniele Silingardi – opening from John Neumeier's Spring and Fall
Erik Woolhouse – solo from Annabelle Lopez Ochoa's Eros Redux

<審査員>

タマラ・ロホ (ENB芸術監督)
サー・マシュー・ボーン (振付家)
ヴィヴィアナ・デュランテ (元ロイヤル・バレエ プリンシパル)
トーマス・エデュール (元ENBプリンシパル、エストニア国立バレエ芸術監督)
ラッセル・マリファント (振付家)
オクサーナ・パンチェンコ (ニュー・アドベンチャーズ ダンサー)
Morgann Runacre-Temple (バレエ・アイルランド常任振付家)


そして、今回初めて、このコンクールがネット中継されるとのことです。8時間の時差があるので、日本からだと深夜3時半になってしまってなかなか見づらい時間帯ですが。
http://blog.ballet.org.uk/emerging-dancer-live-streamed-tuesday-17-may/

<追記>
ネット中継ストリーミングのURLはこちらです。
http://emerging-dancer.ballet.org.uk/

<さらに追記>

「エマージング・ダンサー」賞、観客賞ともセザール・コラレスが受賞しました。

http://blog.ballet.org.uk/cesar-corrales-wins-emerging-dancer-2016/

パ・ド・ドゥ全部とソロの演技の途中まで観ていたのですが、コラレスの「ディアナとアクティオン」の踊りは圧倒的でした。キューバ出身のダンサーらしい、超絶技巧でどうやって跳んでいるのかもわからないような跳躍を見せてくれました。入団2年目とはいえ、まだプリンシパルでないのが不思議なくらいです。

金原里奈さんは、このコラレスの相手役を「ディアナとアクティオン」で務めましたが、まだ入団1年目で10代という若さですが、少し緊張していたようですが、正確でしかも華のある踊りで技術の高さを見せてくれました。すでにソロ役も踊っていることだし、これからの成長がとても楽しみです。
エリック・ウルハウスはすらりとしてプロポーション、容姿に恵まれ、「タリスマン」で美しい跳躍、よくコントロールされたピルエットで将来性の大きさを感じさせました。アナベル・ロペス・オチョア振付のソロ作品も、表現力があって魅力的でした。

黒鳥のパ・ド・ドゥのDaniele Silingardiは容姿がとても美しいけど技術は少し弱そうでした。ソロの「スプリング・アンド・フォール」はとても爽やかで似合っており、ハンブルグ・バレエに移籍するのも納得。オディールのJeanette Kakarekaもグランフェッテで乱れました。Isabelle Brouwersは、コンテンポラリーのソロ作品が、若手女性振付家シャーロット・エドモンズによるもので面白い作品でした。

画面がとても暗くて、黒い衣装だと見づらいという難点はありましたが、このような団内コンクールをネットで中継するのは、ダンサーたちにとっても励みになるし、バレエ団の宣伝にもなるし、素晴らしい企画だと思いました。続けてほしいと思うし、他のバレエ団でもこういうことをやってくれたら楽しいですよね。

ここに、この「エマージング・ダンサー」の舞台写真が掲載されています。
https://www.flickr.com/photos/dancetabs/sets/72157667813783650

2016/05/13

フランスのアニメ映画「Ballerina」、オーレリー・デュポン監修、英語版の声の出演にエル・ファニング

フランスの大手映画製作・配給会社ゴーモンが製作するアニメーション映画「Ballerina」が注目を集めています。

Cannes: Weinstein Co. Acquires U.S. Rights to Gaumont’s Animated Film ‘Ballerina’ (EXCLUSIVE)
http://variety.com/2016/film/festivals/ballerina-weinstein-co-cannes-elle-fanning-carly-rae-jepsen-1201772057/

Weinstein Co. Picks Up Ballerina, Voiced by Elle Fanning and Carly Rae Jepsen
http://www.comingsoon.net/movies/news/685645-weinstein-co-picks-up-ballerina-voiced-by-elle-fanning-and-carly-rae-jepsen

http://cinema.quad.fr/films/ballerina

3000万ドルの製作費がかけられた、ピクサー社のアニメのようなスタイルの3Dアニメで、共同プロデューサーの中には、あの大ヒット映画「最強のふたり」(アカデミー賞外国語映画賞ノミネート)のプロデューサー Quad Productions のNicolas Duval Adassovsky, Yann Zenou, とLaurent Zeitounもいます。ゴーモンと共に配給を手掛けるワインスタイン・カンパニーは、「最強のふたり」のアメリカ版リメイクも手掛けているとのことです。そして、アメリカでの配給は、ワインスタイン・カンパニーが行います。

「バレリーナ」は、ヒロインの英語版吹き替えにエル・ファニングがキャスティングされていることでも注目されています。また、歌手のカーリー・レイ・ジェプセンもオデット役にキャスティングされています。

あらすじは以下の通りです。1884年にブルターニュの孤児院を逃れパリにやってきた、バレリーナになるという夢を抱いている貧しい11歳の少女フェリーチェが主人公。わがままなライバル、カミ―ユの身分を詐称し、不思議な掃除婦オデットの教えの下必死にバレエを稽古し、発明家を目指す友人ヴィクトールに出会い、そしてパリ・オペラ座学校に入学するという冒険が始まります。

監督は Eric Summer とEric Warin。脚本はCarole Noble と Laurent Zeitoun。この映画の中に登場するダンスの振付はオーレリー・デュポンが監修しています。作品は現在モントリオールで制作中とのことです。公開は年末予定。

音楽は、アカデミー賞主演女優賞を受賞した「ルーム」や、「グラディエーター」のKlaus Badeltで、主題歌をプロデュースし作曲するのは、セレーナ・ゴメスやビヨンセと組んできたChris Braideです。

ワインスタイン・カンパニーの共同経営者ハーヴェイ・ワインスタインは、以下のように語っています。「非常に多くの女の子たちが、バレリーナになることを夢見ています。この映画は、アニメーションの芸術を通して、ダンスの夢を美しく描いています。優れたプロジェクトをもたらしてきたニコラス、ヤン、ローランとチームを組むのはワクワクします」


昨日ご紹介したロイ・フラーの伝記映画La Danseuse」、さらにまもなくフランスで公開予定の、人気グラフィックノベルの映画化作品「ポリーナ」(アンジェラン・プレルジョカージュ監督、ジュリエット・ビノシュ、ジェレミー・ベランガールが出演)と、バレエ/ダンスを扱った作品がほぼ同じ時期に話題になるのは、大変興味深いところです。

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2016/05/12

ロイ・フラーの伝記映画「La Danseuse」、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品

以前にもこのサイトでご紹介した、19世紀末から20世紀初頭に活躍したアメリカ人ダンサー/振付家のロイ・フラーの伝記映画「La Danseuse」(The Dancer)が水曜から開催されているカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品されることになりました。

http://www.terrafemina.com/article/cannes-2016-lily-rose-depp-et-soko-ensemble-sur-la-croisette-pour-la-danseuse-photo_a310938/1

ロイ・フラーの人生を、やはりモダン・ダンスの始祖の一人であるイザドラ・ダンカンとの関係を中心にして、フランスの若手映画監督Stephanie Di Giustoが映画化したものです。(Stephanie Di Giustoは、ブリジット・フォンテーンらのミュージックビデオを監督したり、ヴァネッサ・ブリュノ、クロエ、リーバイスといったファッションブランドのイメージビデオを撮影してきました。)

フランスでの公開日時も、今年の9月28日に決定しています。

製作会社Wild Bunchのサイトより
http://www.wildbunch.biz/movie/dancer-the/

ロイ・フラー役を演じるのは、フランス出身の歌手Soko (映画「博士と私の危険な関係Augustine」に主演してリュミエール賞にノミネート)。人気女優クリステン・スチュワートの恋人だったという噂もあります。そして、イザドラ・ダンカン役を演じるのは、ジョニー・デップとヴァネッサ・パラディの娘、リリー・ローズ・デップです。まだ16歳という若さですが、シャネルの広告にも起用されています。また、人気俳優のギャスパー・ウリエルも出演します。

La_danseuse

アメリカの小さな村に生まれたロイ・フラーは、偶然舞台にに出演していて、「サーペンタイン・ダンス(蛇のダンス)」を生み出しました。ニューヨークからパリに渡った彼女は、トゥルーズ・ロートレック、リュミエール兄弟、ロダンといった人たちを魅了して一世を風靡しました。

ロイ・フラーを有名にした「サーペンタイン・ダンス(蛇のダンス)」。ただしこれを踊っているダンサーはロイ・フラーではなく、Papinta.というダンサーによるもののようです。

<追記>
カンヌ国際映画祭での「La Danseuse」の紹介ページ
http://www.festival-cannes.com/en/films/la-danseuse

ここで2分ほどの映像を観ることができますが、なかなか期待できそうです。カンヌ国際映画祭では、新人監督に与えられる「カメラ・ド-ル」賞の有力候補となっているそうです。


映画のオフィシャルFacebookページもできています。
https://www.facebook.com/LaDanseuse.LeFilm

カンヌ国際映画祭でのStephanie Di Giusto監督とSoko、リリー・ローズ・デップのインタビュー映像。Sokoのダンスシーンは吹き替え無しだったようです。

The Fiilm Stageのレビュー
https://thefilmstage.com/reviews/cannes-review-the-dancer/

Hollywood Reporterのレビュー
http://www.hollywoodreporter.com/review/dancer-la-danseuse-cannes-review-893734

5/14放映 夢をかなえるアン・ドゥ・トロワ~ルグリと目指せバレエの饗宴

マニュエル・ルグリが「NHKバレエの饗宴」に出演する若手ダンサーを選び、レッスンを行った模様を捉えたドキュメンタリー番組「夢をかなえるアン・ドゥ・トロワ~ルグリと目指せバレエの饗宴」が、5月14日(土)15:00~Eテレで放映されます。

http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92872/2872024/index.html (予告編映像も観られます)

http://www.nhk.or.jp/classic-blog/100/244713.html


バレエ界の世界的なスター、マニュエル・ルグリが、日本の若い才能をオーディションで発掘。集中レッスンを施して、バレエの一大イベント「NHKバレエの饗宴」の舞台を目指します。合格したのは、15歳から18歳の男女8人。コンクール入賞の常連から、まだバレエ歴の浅い生徒までさまざま。厳しいレッスンを通してルグリは、バレエとは何か、踊ることとは何かを、伝えていく。本番の舞台までを追う密着ドキュメント。

ルグリさんは、名門パリ・オペラ座バレエ団のエトワールとして大活躍したダンサー。現在はウィーン国立バレエ団の芸術監督を務め、その優れた指導力でバレエ団を急速に成長させています。そんなバレエを知り尽くした彼が、日本の若い才能をどのように発掘し、どう鍛えるのか?そして子供たちはルグリの期待に応えられるのか? 容赦ないオーディション審査、厳しくも愛情あふれるレッスン、そして迎える感動の舞台。かつてないバレエ・ドキュメンタリーにご期待ください! 


【出演】マニュエル・ルグリ,石井日奈子,小川理恵,木村楓音,鳥居ありす,吉江絵璃奈,田野井大登,山仁勇,山本理久
【語り】忽那汐里

出演者のうち、木村楓音さんと吉江絵璃奈さんは、ローザンヌ国際バレエコンクール2016のファイナリストとなりました。先日のテレビ放映でご覧になった方も多いと思います。


なお、NHKバレエの饗宴2016も、5月22日(日)Eテレ午後9時の「クラシック音楽館」で放映されます。

NHKバレエの饗宴2016 開催間近! みどころ紹介 その1 「特別企画未来のエトワールたち」
http://www.nhk.or.jp/classic-blog/100/240229.html

NHKバレエの饗宴2016 開催間近! みどころ紹介 その2 「世界で活躍する日本人ダンサーたち」
http://www.nhk.or.jp/classic-blog/100/240763.html

NHKバレエの饗宴2016 全演目決定! みどころ紹介 その3 「スターダンサーズバレエ団、小林紀子バレエ・シアター、谷桃子バレエ団が上演する3つの作品」
http://www.nhk.or.jp/classic-blog/200/241372.html

1.「レ・ランデヴー」(小林紀子バレエ・シアター)
振付:アシュトン 音楽:オーベール 美術:チャペル
出演:島添亮子、アントニーノ・ステラ ほか

2.「オセロー」<新作>(谷桃子バレエ団)
原案:シェイクスピア 振付:日原永美子 音楽:シュニトケ
出演:齊藤 拓、永橋あゆみ、三木雄馬、佐々木和葉、檜山和久 ほか

3.「モーツァルト・ア・ドゥ」から (橋本清香&木本全優)
振付:マランダン 音楽:モーツァルト

4.「ゼンツァーノの花祭り」パ・ド・ドゥ/「ナポリ」パ・ド・シス
(マニュエル・ルグリ選抜の若手ダンサーたち)
振付:ブルノンヴィル 音楽:ヘルステッド ほか

5.「リラの園」(スターダンサーズ・バレエ団)
振付:チューダー 音楽:ショーソン
出演:渡辺恭子、吉瀬智弘、山本隆之、佐藤万里絵 ほか

6.「くるみ割り人形」グラン・パ・ド・ドゥ(平田桃子&セザール・モラレス)
振付:ライト、イワーノフ 音楽:チャイコフスキー

管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
バイオリン:渡辺玲子、近藤薫
指 揮:園田隆一郎
(2016年4月10日 NHKホール)


<追記>
6月19日(日)午前0時50分(18日深夜)から[Eテレ]で再放送が行われます。
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92872/2872024/index.html

2016/05/10

彩の国さいたま芸術劇場佐藤まいみ、愛知県芸術劇場唐津絵理、各プロデューサーのインタビュー

ダンス情報のwebサイトBallet Factoryに、彩の国さいたま芸術劇場のプロデューサー佐藤まいみさんと、愛知県芸術劇場のシニアプロデューサー唐津絵理さんのロング・インタビュー記事が掲載されています。

両劇場とも、ダンス公演にとても力を入れており、海外の優れたアーティストを招聘するだけでなく、自主企画公演や、その劇場発の作品を海外でも上演するなど素晴らしい実績を上げており、日本のダンス界になくてはならない存在です。地元の舞踊団体とのコラボレーションやアウトリーチ活動も行っています。そしてお二人とも、大変な目利きであり、また各地の劇場でお目にかかる機会も大変多く、精力的に動き回られています。

インタビューは舞踊評論家の高橋森彦さんによるものですが、大変読みごたえのある良いインタビュー記事で、これからのダンスの在り方についても考えさせられるので、ご紹介します。

彩の国さいたま芸術劇場のプロデューサー佐藤まいみ インタビュー
http://www.ballet-factory.com/takahashi/new/035.html

佐藤まいみさんは1980年代にフランスでダンスの制作に携わり、帰国後横浜市開港130周年記念「ヨコハマ・アート・ウェーブ’89」アーティスティック・ディレクターに就任。以後、神奈川国際舞台芸術フェスティバルプロデューサー(神奈川芸術文化財団)、「フランスダンス’03」フェスティバル代表プロデューサー、「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA」ディレクター(2012年&2015年)などの要職を歴任されてきました。2005年にフランス文化勲章オフィシェ受章。現在は彩の国さいたま芸術劇場プロデューサーとしてダンス公演のプロデュースに当たられています。

2006年に彩の国さいたま芸術劇場のプロデューサーに就任された当初は、ヤン・ファーブルの『主役の男が女である時』『わたしは血』、アクラム・カーン&のシディ・ラルビ・シェルカウイ『ゼロ度』などを上演。その後も様々なチャレンジをされていますが、2008年にさいたまで上演した『Hydra ヒュドラ』は森山開次など日本人ダンサーも交えて国際共同製作として企画・制作し、埼玉発信の作品としてヨーロッパ・ツアーも行ったとのことです。

海外招聘だけでなく日本人振付家の作品も制作しました。 『日本昔ばなしのダンス』では近藤良平、伊藤千枝、井手茂太といった振付家を起用し、各地のホールで上演されました。

これからの公演では、残念ながら注目のイスラエル・ガルバンとアクラム・カーンの『TOROBAKA』はガルバンの怪我で公演中止になってしまいましたが、2006年以降毎年さいたまで作品を発表してきたコンドルズの最新作『LOVE ME TenDER』、さらにはフィリップ・ドゥクフレの新作『コンタクト』が予定されています。

さらに、来年3月には、1989年以来、日本の観客にとっては27年ぶりのピナ・バウシュの代表作『カーネーション』を引っ提げてピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団が公演を行います。これは必見の舞台と言えます。

ダンス普及事業として「MEET THE DANCE~アーティスト学校にやってくる!」と題して中学校に出向いてワークショップを開いています。今は中学校ではダンスが必修科目となっていますが、ストリートダンスが90%を占めているとのことで、それ以外のダンスについても知って体験してもらう機会を作り出しています。埼玉県舞踊協会との2年に一度の「ダンスセッション」という企画、また今年は12月に、地元埼玉県のNBAバレエ団の『BREAK THE MOULD』という提携公演も予定するなど、地元との企画も行っています。

『今の日本のダンス界には何が必要か』を考えて次の展開をどうするかを改めて謙虚に考えておられるとのことで、このあたりについては、ぜひこのインタビュー記事を読んでいただければと思います。この劇場で上演されたパフォーマンスの、美しい舞台写真もたくさん掲載されています。

【彩の国さいたま芸術劇場 2016年度 ダンス関連事業】

コンドルズ 埼玉公演2016新作『LOVE ME TenDER』
日程:2016年6月18日(土)開演14:00/19:00、19日(日)開演15:00
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
構成・映像・振付:近藤良平
出演:コンドルズ
※好評発売中

フィリップ・ドゥクフレ カンパニーDCA『CONTACT-コンタクト』(2014年初演)
日程:2016年10月28日(金)19:00/29日(土)・30日(日)15:00
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
演出・振付:フィリップ・ドゥクフレ
出演:カンパニーDCA

ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団『NELKEN-カーネーション』(1982年初演)
日程:2017年3月16日(木)・17日(金)開演19:00、18日(土)開演15:00、19日(日)開演14:00
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
演出・振付:ピナ・バウシュ
出演:ヴッパタール舞踊団

なお、彩の国さいたま芸術劇場は、最近公式Facebookサイトを開設しました。こちらもぜひどうぞ。


唐津絵理(愛知県芸術劇場シニアプロデューサー、「あいちトリエンナーレ2016」キュレーター) インタビュー
http://www.ballet-factory.com/takahashi/new/034.html

 愛知を拠点に国内外の数多くのアーティストと舞台制作を行う唐津絵理さんは先鋭的なパフォーミングアーツの紹介・普及に努め日々東奔西走されています。これまでの軌跡から2016年度の愛知県芸術劇場主催公演および「あいちトリエンナーレ2016」のラインアップ、プロデューサーとしてのポリシー、今後の展望までを伺いました。

大学院でダンスを専攻し自ら踊っていたという唐津さんが、最初に企画されたのは木佐貫邦子さんのダンス公演。その後もコンテンポラリーダンスに力を入れ、1999年にはH・アール・カオスの『春の祭典』を大ホールでオーケストラ付きで上演しました。大ホールでたくさんの人を巻き込むことができるようなスケール感のある作品を創りたかったとのことで、ダンスを核にライブの音楽や声が入った総合的な舞台芸術として『悪魔の物語』&『月に憑かれたピエロ』(2004年)、『青ひげ城の扉』(2005年)、『UZME』(2005年)、『ハムレット~幻鏡のオフィーリア』(2007年)、『神曲』(2008年)をプロデュースしています。

愛知県の劇場として、県民にどうかかわってもらうかをいつも意識されているとのことです。人材育成に力を入れて体験型のワークショップを開催したりプロの人材育成も課題としており、今活躍している米沢唯さん、寺井七海さん(新国立劇場)、佐々部佳代さん(K-Ballet Company)も10代の時に舞台に参加してもらっているとのこと。コンドルズとは地域を巻き込む企画を制作し子どもたちのダンサーが参加する企画も実施したそうです。

2016~17年の企画も多彩です。4月には、ダンスとラップ~島地保武× 環ROY『ありか』という異ジャンルの共演、そして7月のH・アール・カオスの久々の公演である白河直子さんのソロ『エタニティ』、さらにチェコのヴェルテダンス『CORRECTION』、Noismの新作『ラ・バヤデール―幻の国』があります。

さらに、3年に一度の国際的なアートの祭典「あいちトリエンナーレ2016」(8月11日~10月23日)が行われパフォーミングアーツのキュレーターを務められます。フラメンコの革命児イスラエル・ガルバン、愛知県・奥三河地方で伝承されている芸能神事「花祭」に題材を取った山田うんの新作、さらにさいたまでも上演されるフィリップ・ドゥクフレの『コンタクト』、勅使川原三郎演出のプロデュースオペラ『魔笛』など、注目の公演が目白押しです。

今後は、日本のダンスを取り巻く制作・創作環境を底上げしていくことに努められ、ダンスを観る機会の少ない愛知県内の地域にソフトを提供したりして鑑賞機会を広げて行かれることをしていかれたいとのことです。

これから上演される作品や、あいちトリエンナーレについて、そしてアーティストに対するメッセージまで、唐津さんは熱く語られていますので、詳しいことは、ぜひインタビュー記事の方をお読みください。(私も、愛知県出身であることもあり、あいちトリエンナーレにはできるだけ足をたくさん運ぶつもりです)

【愛知県芸術劇場 舞台芸術 主な公演】
http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/index.html

5月27日(金)~30日(月)愛知県芸術劇場小ホール
木ノ下歌舞伎『義経千本桜―渡海屋・大物浦―』

6月19日(日)愛知県芸術劇場小ホール
ニンフェアール第12回公演『ReAccrd』

7月1日(金)~ 3日(日)愛知県芸術劇場小ホール
H・アール・カオス 白河直子ソロダンス『エタニティ』
演出・振付:大島早紀子 ダンス:白河直子

7月16日(土)愛知県芸術劇場大ホール
Noism 劇的舞踊vol.3『ラ・バヤデール-幻の国』
演出振付:金森穣  脚本:平田オリザ

8月23日(火)、24日(水) 愛知県芸術劇場小ホール
おいしいおかしいおしばい『わかったさんのクッキー』

9月9日(金)~12日(月)愛知県芸術劇場ホール
第15回AAF戯曲賞受賞記念公演『みちゆき』

10 月15日(水) 愛知県芸術劇場大ホール
『Sutra (スートラ) 』
出演:シディ・ラルヴィ・シェルカゥイ、少林寺武僧

10 月14 日(金)、15 日(土) 愛知県芸術劇場小ホール
ヴェルテダンス『CORRETION』
振付:イリ・ハベルカ  音楽・演奏:クラリネット・ファクトリー・ライヴ

10月16日(日)、18日(火)、19日(水) 愛知県芸術劇場小ホール
パフォーミングアーツ・セレクション

11 月6 日(日) 愛知県芸術劇場コンサートホール
白井剛&中川賢一&堀井哲史  『ON-MYAKU 2016 -see/do/be tone-』

<あいちトリエンナーレ2016 舞台芸術部門「パフォーミングアーツ公演」>
「あいちトリエンナーレ2016 虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」
開催期間/8月11日(木・祝)~10月23日(日)
http://aichitriennale.jp/artist/index.html#pa

8月11日(木・祝) ~14日(日)愛知県芸術劇場小ホール
8月17日(水)・18日(木) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース
ダニ・リマ『Little collection of everything』

9月17日(土)・19日(月祝)愛知県芸術劇場大ホール
プロデュースオペラ モーツァルト作曲『魔笛』全2幕・ドイツ語上演
指揮: ガエタノ・デスピノーサ  演出: 勅使川原三郎

9月24日(土)・25日(日)オアシス21
『虹のカーニヴァル』

10月7日(金)〜9日(日) 愛知県芸術劇場小ホール
イスラエル・ガルバン『SOLO』

10月8日(土)~10日(月・祝)豊橋公園
アニマル・レリジョン『Chicken Legz』

10月9日(日)・10 日(月・祝) 岡崎シビコ
アジアン・サウンズ・リサーチ(プロジェクト・ディレクター:Sachiko M)『OPEN GATE 2016』

10月15日(土)・16日(日)  名古屋市芸術創造センター
イスラエル・ガルバン『FLA.CO.MEN』

10月15日(土)・16日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
カンパニー DCA / フィリップ・ドゥクフレ『CONTACT』

10月21日(金)~23日(日) 名古屋市内のまちなか
カンパニー・ディディエ・テロン / ディディエ・テロン『AIR』/『LA GRANDE PHRASE』

10月22日(土)・23日(日) 名古屋市芸術創造センター
山田うん『新作(タイトル未定) 』

10月22日(土)・23日(日) 愛知県芸術劇場小ホール
小杉武久『MUSIC EXPANDED #1 / #2』

10月23日(日) 名古屋市青少年文化センター
青木涼子『秘密の閨(ねや)』

2016/05/09

『ボリショイ・バレエ inシネマ Season2015-2016』全6作品アンコール上映決定

ボリショイ・バレエ inシネマ Season2015-2016』の全6作品が、渋谷・Bunkamuraル・シネマにてアンコール上映されます。

名門「ボリショイ・バレエ」のステージ「ボリショイ・バレエ inシネマ Season2015-2016」の6作品が、渋谷・Bunkamuraル・シネマにて限定上映となります。 高解像度HD映像で撮影された貴重な作品から、特に大画面で鑑賞するに相応しい6作品をセレクト。まるでモスクワで鑑賞するような臨場感に溢れた舞台、そしてバックステージ独占映像と幕間のインタビューは、日本ではなかなか視聴できない貴重な体験です。 全作品がたった1~2回限定の上映となるこの機会、是非お見逃しなく!
http://www.bunkamura.co.jp/topics/cinema/2016/05/bol2016.html

昨年11月より映画館で上映されてきた『ボリショイ・バレエ inシネマ Season2015-2016』ですが、それぞれ1日のみの上映で、予定が合わずに見逃してしまった方も多いと思います。

さらに、今回のアンコール上映では上映されなかった「スパルタクス」の上映があるのも嬉しい限りです。この「スパルタクス」は、スパルタクス役にロブーヒン、フリーギア役にニクーリナ、エギナ役にザハロワ、クラッスス役にラントラートフという大変豪華なキャスト。以前映画館上映されたのと同じ映像ですが、特に珍しい悪女役のザハロワが素晴らしいのでファン必見です。

≪上映スケジュール≫
5月19日(木) 18:50~『じゃじゃ馬ならし』 
5月20日(金) 18:50~『くるみ割り人形』 
5月21日(土) 18:50~『ドン・キホーテ』 
5月26日(木) 19:15~『ジゼル』
5月27日(金) 19:15~『椿姫』
5月28日(土) 19:15~『スパルタクス』
6月2日(木)  19:15~『じゃじゃ馬ならし』
6月3日(金)  19:15~『ドン・キホーテ』
6月4日(土)  19:15~『ジゼル』
6月9日(木)  19:15~『くるみ割り人形』
6月10日(金) 19:15~『スパルタクス』

≪料金≫ 3,000円均一(税込・各種割引は対象外となります。)  

特に「じゃじゃ馬馴らし」と「ドン・キホーテ」は素晴らしいパフォーマンスでした。ぜひ大画面で。

海外で活躍する若手ダンサー出演の「Bright Step」7/29開催

昨年の8月に、海外で活躍する若手ダンサーによる公演「Bright Step」の第一回公演が開催されました。開催費はクラウドファンディングで集めたことでも注目されました。

そして、この夏、世界各国で活躍する若きダンサーが、再びBright Stepに集結します。

2016年7月29日に渋谷さくらホールにて、若き日本バレエ界のホープが競演する"Bright Step 2016"が開催されます。

<公演日・開演時間>
2016年7月29日(金)19:00
※上演時間 約2時間

出演キャスト:(五十音順)
大川航矢 (タタールスタン国立カザン歌劇場バレエ団)
奥村 彩 (オランダ国立バレエ団)
刈谷円香 (ネザーランドダンスシアター2)
桑原沙希 (ボルドーオペラ座バレエ団)
河野舞衣 (ミュンヘン国立バレエ団)
坂本莉穂 (オランダ国立バレエ団)
菅井円加 (ハンブルグ・バレエ団)
髙橋裕哉 (ハンガリー国立バレエ団)
寺田 翠 (タタールスタン国立カザン歌劇場バレエ団)
西島勇人 (ロシア国立バレエ・モスクワ)
淵上礼奈 (英国バーミンガムロイヤルバレエ団)
フォガティみこ(英国バーミンガムロイヤルバレエ団)
山本勝利 (ドイツキール州立劇場)
吉田周平 (ブカレスト国立歌劇場バレエ団)

https://facebook.com/Bright-Step-351557865037330

ロシアのバレエ番組「ビッグ・バレエ」に出演して素晴らしい技術で喝采を浴びた寺田 翠さんと大川航矢さん、ローザンヌ国際コンクールで1位に輝いたハンブルグ・バレエの菅井円加さん、オランダ国立バレエでグランド・スジェに昇進してソリスト役を踊っている奥村 彩さん、やはりミュンヘン・バレエでデミソリストの河野舞衣さん、映画「ファースト・ポジション」でおなじみのフォガティみこさんなど、注目のダンサーが一堂に集結します。これは楽しみな公演ですね。

チケットはカンフェッティにて。
http://www.confetti-web.com/detail.php?tid=33660&

「ビッグ・バレエ」で活躍する寺田 翠さんと大川航矢さんの踊りはこちらでどうぞ。
http://tvkultura.ru/video/show/brand_id/59616/episode_id/1272785/video_id/1443840/

2016/05/07

5/3、5 新国立劇場バレエ団「ドン・キホーテ」


http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/don_quixote/

改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ

キトリ(ドゥルシネア)米沢唯
バジル 井澤駿
ドン・キホーテ 貝川鐵夫
サンチョ・パンサ 髙橋一輝
ロレンツォ 小口邦明
ガマーシュ 菅野英男
キトリの友達 柴山紗帆 飯野萌子
エスパーダ マイレン・トレウバエフ
街の踊り子 長田佳世
メルセデス 本島美和
カスタネットの踊り 堀口純
キューピッド 五月女 遥
森の女王 細田千晶
ボレロ 丸尾孝子、中家正博
第1ヴァリエーション 奥田花純
第2ヴァリエーション 寺田亜沙子

指揮:マーティン・イェーツ
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

新国立劇場バレエ団の「ドン・キホーテ」は、アレクセイ・ファジェーチェフ版。ボリショイ・バレエの現行の「ドン・キホーテ」と基本的には同じだが、細部では異なっている(ボリショイでは2幕にジークという踊りが追加されている、3幕にキューピッドが登場しないなど)。踊りはふんだんに盛り込まれているが、登場人物が多く、不必要なキャラクターもいる。そして、2幕の流れが居酒屋で狂言自殺→ロマノ野営地→夢の場面という順番で、ドラマツルギーとしてはあまり説得力がない。3幕の結婚式にキトリの両親が出ないというのも少し不自然だった。でも、何しろ主演陣が圧倒的に素晴らしいので、楽しい舞台となった。

キトリの米沢唯さんは、スーパーテクニックの持ち主なのは周知の事実だけど、技術だけが魅力ではない。高いテクニックに裏付けられて、とても余裕たっぷりで安定度抜群のため、音楽に自在に合わせられるし表情豊かにアクセントもつけられる。1幕では、最初はおすましでバジルをじらしながらも、いたずらっぽい表情で周囲と上手く呼吸を合わせて受けの芝居も巧く、とてもお茶目でキュートなキトリだった。カスタネットの踊りの高速フェアテもさすがの正確さ。超絶技巧を発揮しても、米沢さんはあくまでも品が良い。

米沢さん、踊りは一幕は少しだけ抑え目だったけど、3幕では魅力が炸裂した。ヴァリエーションは扇子を持たないで、エシャッペもパ・ド・シュヴァルもなく連続ルティレ中心なのだが、かなり速い音楽にピッタリと合わせて正確に刻みキトリの闊達さを見せてくれた。グラン・フェッテは、扇子を持って、高く掲げたりひらひらと開閉させながら、トリプルも織り交ぜて実に華やかで観客を興奮のるつぼに放り込んだ。芝居心もありつつ、これだけ強いテクニックを持ったバレリーナは世界的にもあまりいないと思われるし、海外のメジャーなカンパニーでゲストしてもきっと人気を得られるのではないだろうか。2幕のドゥルシネア役の時には、ふわっと柔らかく、打って変わってのお姫さまらしいたおやかさも見せてくれた。

井澤さんは、米沢さんに比べると貫録は足りないし、床屋というよりは端正な王子様っぽいが、真ん中に立つ人らしい華は人一倍ある。長身で顔が小さく、すらりとしてハンサムなのは大きなメリット。しかも容姿の良さだけでなく、技術的にもしっかりしている。やや上半身が硬いのは、ランベルセなどでわかってしまうものの、ふわりと軽やかな跳躍の持ち主でマネージュは足先までよく伸び、きちんと5番に降りられるし、ピルエットも軸がまっすぐでよくコントロールされていてきれい。サポートはあまり得意な方でなくて以前はひやりとさせられたこともあったが、今回は1幕の片手リフトはしっかりと決まったし、2幕でキトリがダイブするところもきっちり受け止められていてよく頑張った。今が伸び盛りの若者を観ると、思わず頬も緩んでしまう。これでもっと積極的にキトリとやり取りできるようになれば、文句なしだろう。

主役以外の見所は、なんといってもエスパーダのマイレンと、街の踊り子長田さんの絡み。マイレンは、キメキメの闘牛士姿がスタイリッシュで、つま先もピーンと伸びてクラシックの技術では他の誰よりも美しい。マント捌きも鮮やかだし、長田さんとの掛け合いや演技が大人の世界で、非常にセクシーだった。2幕での本島さんのメルセデス、堀口さんのカスタネットとの駆け引きもステキだった。舞台人としての自覚がしっかりあって、いつでも演技を欠かさないので舞台が締まる。一方、長田さんの踊り子は、登場したとたんの華やかさ、あでやかさが圧倒的。大人の女性の魅力が溢れているし、一つ一つのポーズも美しいし音楽性も豊か。この役ならではの細かいパドブレなどのポワントワークもさすがだった。闘牛士が突き刺す剣、3日の公演では何本か倒れてしまったので大変だったと思うけど、5日は一本も倒れず決まった。成熟した色香と演劇性は、絶対この劇場には必要なことなので、彼らのようなベテランは大切にしてほしい。

ファジェーチェフ版は、街の踊り子、メルセデス、さらにはカスタネットの踊りの女性と、似たような感じの妖艶女性キャラクターが多いのであまりスッキリしないのだが、その分ソリストがたくさん登場する。メルセデス役の本島美和さんは、持ち前のあでやかな美貌と演技力でしっかりとエスパーダを誘惑していた。彼女は少し背中の柔軟性が足りないのが惜しいけど、これだけ美しいし成熟した雰囲気が出せるので文句なし。カスタネットの踊りは、ファジェーチェフ版の蛇足部分だし、堀口さんはほっそりとしていてセクシーな持ち味はないものの、彼女も幸薄そうな持ち味を生かした演技派だった。

夢のシーンは、森の女王の細田さんが、長くエレガントな腕と気品にあふれた動き、優しく包容力のある微笑みで素晴らしかった。長身なのに足音も全くさせない美しいグラン・ジュッテとしなやかなポール・ド・ブラ。キューピッドの五月女さんは、身体能力に優れていて見事なテクニック、特にアントルシャ・カトルの高さが凄いし音楽性も良い。衣装やかつらには改善の余地があると思える。

しかし、3人のドリアードと4人のドリアードがバタバタしていて揃っておらず、新国立劇場バレエ団のチュチュバレエのシーンがこれで良いのだろうか、と不安になった。これではうっとりとした夢に浸ることができない。子役のキューピッドたちの方がよほどよく踊ることができている。その分、1幕のセギデリアは生き生きしていたし、3幕ファンダンゴはビシッと揃っていて良かったのだが。

また、キトリの友達二人も、果たしてこの役に適任だったかと言えば、ノーであった。演技力もなければ、踊りの方も、音には乗っていないし重たいし技術的にもソリスト役を踊るレベルではなく、発表会を見ているようだった。片方のダンサーは、プティ・アレグロが切れ味鈍くもたもたしていて全く駄目だった。なので、3幕のヴァリエーション、闊達な奥田さんと優雅な寺田さんを観てほっとしたのだった。この二人は、エポールマンがとても優れているので、技術の上にさらに美しく表情豊かに踊ることができている。(それは、細田さんや五月女さんにも共通していて、彼女たちもエポールマンが良い)3幕ボレロの、中家さんはスカッとした切れ味良い踊りを見せてくれたので、彼のバジルが今回観られなくて残念。

脇役で言えば、前回バジル役だった菅野さんがガマーシュ役だった。まだまだ踊ることができるのでもったいないのだが、ちょっととぼけていて可愛らしいガマーシュだった。前回バジルと言えば、奥村さんもトレアドールとファンダンゴだし、別の日にはガマーシュ。何とも贅沢というかもったいない。トレアドールには、踊れる男子を揃えており、特に江本さんや池田さんが光っていたけど、ファジェーチェフ版はトレアドールの踊りもあまり見せ場がないのだった。

メーンの素晴らしい4人を中心に、ソリスト陣もほとんどが非常にクオリティの高い、世界に誇れるレベルのパフォーマンスを見せてくれただけに、ふとしたところに疑問に思えるキャスティングがあったのが残念だった。このバレエ団は、ベテランから中堅にかけては本当にレベルが高いのだが、残念ながら若手の一部にばらつきが見られる。これから世代交代も行われると思うので、今後が少し不安に感じられてしまったし、観客の立場からすれば、未熟な若手を見せられるよりは、ベテランの至芸を楽しみたいと思うし、若いダンサーにも彼らのパフォーマンスを間近で見て、吸収し学んでいってほしいものだと感じた。

最終日8日も鑑賞予定。もちろん小野絢子さんと福岡雄大さんのコンビは鉄板だし、キトリの友達、サンチョ・パン座の八幡さんなどソリストにも期待大。

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2016/05/06

佐々木忠次氏(公益財団法人日本舞台芸術振興会/東京バレエ団代表)逝去 

オペラ バレエ プロデューサーであり、公益財団法人日本舞台芸術振興会(NBS)/東京バレエ団代表の佐々木忠次(ささきただつぐ)氏が、2016年4月30日未明、心不全のため逝去されたとのことです。享年83歳。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/post-626.html

 

佐々木忠次は、1964年に東京バレエ団を設立、以後代表を務めてきました。国内での活動はもとより、これまで29回にわたり30カ国153都市において747回の海外公演を実施するなどの、日本から世界に発信するバレエ団として東京バレエ団を育ててまいりました。
 そのかたわら、パリ・オペラ座バレエ団、英国ロイヤル・バレエ団、モーリス・ベジャール・バレエ団などの著名なバレエ団を招聘し、日本に紹介。1976年から3年に一度開催し14回続いている<世界バレエフェスティバル>では、世界中のトップダンサーを日本に招き、世界で最も重要なバレエ公演として国際的に知られるようになりました。
 また、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、英国ロイヤル・オペラなど欧米の名門歌劇場を定期的に招聘。日本で超一流の歌劇場の舞台を現地のまま観られる引っ越し公演の実現に尽力してきました。
 多くのアーティストと親交があり、ことに指揮者のカルロス・クライバー、ズービン・メータ、ダニエル・バレンボイム、リッカルド・ムーティ、また振付家のモーリス・ベジャール、ジョン・ノイマイヤーとは格別の交誼を結びました。
 「日本のディアギレフ」の異名をとり、8カ国から受章、これらの活動や著作を通じて、佐々木が我が国の音楽・バレエ界に果たした功績は計り知れません。

東京バレエ団を設立しただけでなく、多くのバレエ団を日本に招聘し、そして海外で有名になる前からシルヴィ・ギエム、ウラジーミル・マラーホフなどをいち早く日本に呼んでスターへと育て上げ、また世界バレエフェスティバルなどの開催を通して日本だけでなく世界のバレエ界に大きく貢献をされた方でした。彼がいなければ、私たちはこれだけのバレエ公演を楽しむことはできなかったでしょう。間違いなく目利きの方でありました。彼が亡くなったことで、一つの時代の終わりを感じます。(そしてこれからの日本のバレエ界の行く末が少し心配になります)

その剛腕ぶりから、そして歯に衣を着せぬ物言いから毀誉褒貶入り交じった評価もありましたが、それは彼の芸術に対する熱い想いゆえのことだったようです。

彼の著作『闘うバレエ―素顔のスターとカンパニーの物語』『起承転々 怒っている人集まれ!―オペラ&バレエ・プロデューサーの紙つぶて156』は、そんな彼の情熱と率直な語り口を通じて、日本の芸術を取り巻く現状もよくわかり、大変面白い読み物となっています。

今頃は天国でモーリス・ベジャールと再会していることでしょう。ご冥福をお祈りいたします。

佐々木忠次氏死去=「日本のディアギレフ」、83歳
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016050600540&g=soc

「日本のディアギレフ」オペラ&バレエ・プロデューサーの佐々木忠次さん死去
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160506-00000070-sph-ent

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ボリショイ・バレエの2016-7シーズン、来日公演予定

ボリショイ・バレエの2016-7シーズン予定が発表されています。

http://www.bolshoi.ru/upload/medialibrary/20c/20c115ae3172aeea15884a1c15359cbc.pdf

ロシア語のニュース記事
http://rg.ru/2016/05/05/bolshoj-teatr-obiavil-plany-opernoj-i-baletnoj-trupp-na-241-j-sezon.html

アメリカのフォーラム
http://balletalert.invisionzone.com/index.php?/topic/41370-20162017-season-plans/

来日公演が予定されています。2017年5月から6月で、演目は「白鳥の湖」、「ジゼル」、「パリの炎」が予定されているそうです。また、7月にはニューヨークへのツアーもあり、「ジュエルズ」と「じゃじゃ馬馴らし」が予定されています。

(追記)
なお、日本公演は、東京、広島、大津、名古屋、大阪で予定されており、「白鳥の湖」7公演、「ジゼル」5公演、「パリの炎」3公演だそうです。

また、ニューヨークでの公演はリンカーンセンターのDavid H. Koch Theatreで、7月20~23日が「ジュエルズ」、7月26日~30日が「じゃじゃ馬馴らし」で、「ジュエルズ」のルビーとダイアモンドには、NYCBとパリ・オペラ座のダンサーも参加するとのことです。

*******


ユーリ・グリゴローヴィッチの90歳の誕生日を記念して、2017年1月、2月に彼の作品のレトロスペクティブが開催されます。
「くるみ割り人形」「スパルタクス」「ジゼル」「眠れる森の美女」「愛の伝説」「黄金時代」「ライモンダ」「ロミオとジュリエット」「ラ・バヤデール」「イワン雷帝」などが上演される予定です。「黄金時代」は新制作となり、まずは秋に上演されて映画館中継されます。

新作としては、ルドルフ・ヌレエフの人生を描いた「ヌレエフ」が7月に初演されます。ユーリ・ポソホフが振付、Kirill Serebrennikov が台本を書いてデザインも行うという、「現代の英雄」と同じチームでの作品となります。

また、カンパニー初演としては、ランダーの「エチュード」があります。2017年3月。同時上演は、グレン・テトリー、イリ・キリアン、ジェローム・ロビンスの作品となる予定です。

11月には、ミハイル・ラヴロフスキーの75歳の誕生日を記念してのガラ、12月にはマリス・リエパの生誕80年を記念してのガラが行われます。

芸術監督マハール・ワジーエフは3月に就任したばかりなので、来シーズンに関してはすでにかなりの部分が決まっていたようです。しかし彼は、古典作品を重視することをインタビューで語っています。

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2016/05/05

ウィリアム・フォーサイスが、ボストン・バレエとパートナーシップを締結

ボストン・バレエが、振付家ウィリアム・フォーサイスと5年間のパートナーシップを結んだことを発表しました。

BOSTON BALLET ANNOUNCES LONG-TERM PARTNERSHIP WITH ESTEEMED CHOREOGRAPHER WILLIAM FORSYTHE
http://www.bostonballet.org/Press_Releases/BOSTON_BALLET_ANNOUNCES_LONG-TERM_PARTNERSHIP_WITH_ESTEEMED_CHOREOGRAPHER_WILLIAM_FORSYTHE.html

http://www.nytimes.com/2016/05/05/arts/dance/boston-ballet-partners-with-william-forsythe.html

5年間にわたり毎年、ボストン・バレエは、すでに上演しているフォーサイス作品の再演に加え、レパートリーにフォーサイスの新しい作品を加えることになります。芸術監督のミコ・ニッシネンとフォーサイスは共にボストン・バレエのために作品を選び、フォーサイスとアシスタント、振付指導者はカンパニーと直接仕事をします。結果として、米国においてボストン・バレエは最も多くのフォーサイス作品を上演するカンパニーとなります。

2016-7年にはこのパートナーシップの端緒として、フォーサイスの「アーティファクト組曲」を2017年2月23日~3月5日まで上演します。この全幕作品を北米で上演するカンパニーは、ボストン・バレエが初めてです。2017年2月には、゛Focus on Forsythe"というプログラムにフォーサイスが参加し、カンパニーが上演します。

ボストン・バレエがフォーサイス作品を上演したのは、1989年の「Love Songs」が最初です。2002年以降、4作品、「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」「The Vile Parody of Address」「セカンド・ディテール」「精密の不安定なスリル」が上演されてきました。ここに最低5作品が加わることになります。

ニューヨークタイムズの記事によれば、ミコ・ニッシネン芸術監督は、この発表は、フォーサイスがパリ・オペラ座のアソシエイト振付家の座を7月に辞任することとは無関係であると語りました。この件については、2年くらい前から準備を進めてきていたとのことです。フォーサイスはまた、南カリフォルニア大学 Glorya Kaufman School of Danceの教授でもあります。

フォーサイスのスタイルにダンサーを慣らすため、すでにフォーサイスのカンパニーの元ダンサーで現在はハーバード大学のダンスプログラムのディレクターであるジル・ジョンソンとのワークショップを開始したとのことです。

******

ボストン・バレエは最近もう一つ大きな発表をしています。ロイヤル・バレエで5月28日に初演される、ウェイン・マクレガー振付作品「Obsidian Tear」は、ボストン・バレエとロイヤル・バレエとの最初の共同制作作品となります。ボストン・バレエでは、2017–2018シーズンに上演するとのこと。
http://www.bostonballet.org/Press_Releases/BOSTON_BALLET_AND_THE_ROYAL_BALLET_ANNOUNCE_FIRST_CO-PRODUCTION_WITH_WAYNE_MCGREGOR%E2%80%99S_OBSIDIAN_TEAR.html

この作品は、音楽がエサ=ペッカ・サロネンによるもので(サロネン作曲のヴァイオリンソロ「Lachen verlernt」と交響詩「Nyx」を使用)、ロイヤル・バレエでの最初の3公演は、サロネン自身が指揮をするということで大きな話題を呼んでいます。10人の出演者は全員男性とのこと。

なお、「Obsidian Tear」は、ロイヤル・バレエでのリハーサルの模様がロイヤル・オペラハウスのYouTubeチャンネルで現地時間5月11日(水)19時より生中継されます。
http://www.roh.org.uk/news/watch-obsidian-tear-in-rehearsal-live-streamed


勅使川原三郎連続公演「シナモン」「静か」

シアターXにて、勅使川原三郎連続公演「シナモン」「静か」が4月28日より5月5日まで開催されています。(「シナモン」は終了し、「静か」はあと1公演。

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http://www.st-karas.com/camp0713-2/

「シナモン」

言葉の破片による動体彫刻
ブルーノ・シュルツ作の第一短編集「肉桂色の店」から抜粋

出演:勅使川原三郎、佐東利穂子、鰐川枝里

勅使川原さんは、「青い目の男」「ある晴れた日に」など、ブルーノ・シュルツの著作を基にした作品を8作品も発表しているのだが、シュルツの著作は残念ながら読んでいない。「シュルツ全小説 (平凡社ライブラリー)」、「ブルーノ・シュルツ全集」ともども、絶版になっていて古本の値段も高くなっている。でも、この作品は、佐東利穂子さんが「肉桂色の店」のテキストを朗読しているのが流れるので、読んでいなくても大丈夫。

夢のように美しい舞台だった。テキストを朗読する声が響き、その中の夢幻の世界を体現する照明、そして音楽。狐、すこし呆けたような老人(父)、そして馬にまでなりきる勅使川原さん、激しく動いている時でさえ優雅で気品溢れる、貴婦人のような佐東さん、アクセントを加えるように、エッジーでスピーディな鰐川さんが短い間だけ舞台に登場する。別世界に連れて行かれる陶酔の1時間。

今回はセピアや茶色系統の照明が圧倒的に美しくて、タルコフスキーの映画を思わせるような終末感までも漂わせていた。様々なイマジネーション、風、光、空気、温度、記憶が喚起される。背景に映りこむ、勅使川原さんと佐東さんのシルエットの配置も計算しつくされていた。ショルツのテキストの持つイメージとシンクロして、それはそれは夢幻の時だった。

勅使川原さんは本当に多作なのに、毎回毎回新機軸を打ちだし、汲めど汲めど尽きないイマジネーションの豊かさと舞踊語彙の豊富さには舌を巻くしかない。テキストの寂寥感を体現する照明と舞踊の圧倒的な美。いつまでも観ていたかった。

「静か」
無音が構成する時間とダンス
60分の無音が新たな時間を創出させ、その場にダンスが現れる

出演 佐東利穂子 勅使川原三郎

勅使川原三郎「静か」。アパラタスでの上演も観ていたけれど、アパラタスの閉じていて漆黒の空間とは違った味わい。完全な無音の中繰り広げられるダンスは、今までダンスに持っていた概念を覆すような、有機的で動きそのものが音楽になっているような。時空を歪曲させるようなじわじわ来る力を持っている。

シアターXの茶色い壁を生かした照明。時に細長く区切られた壁の前で繰り広げられるダンスは、古代ギリシャの壁画を思わせるここともあり、また襖のように見えて和の空間に見えることも。勅使川原さんの動きは、ニジンスキーの『牧神の午後』を思わせることもあれば、佐東さんを操る魔術師のようにも見えた。

勅使川原さんの舞台は、ダンスに力みがなくてふわっとしているのに、同時にものすごく濃密で、音がないこともあって、自分たち観客ともども、異空間にワープしたような気持ちになる。時間の概念も忘れてしまうような。大地に足をつけた勅使川原さんと、柳のようにしなやかで、空気をはらんだように、力が入っていないようにも感じられる佐東さんの対比も鮮やかで、この二人にはしっかり距離があるのに絶妙の間があって不思議に共鳴し、ハーモニー、つまりは音楽を奏でているのも面白かった。

音がないので、いったいどうやって動きのきっかけを作っているのだろか、どうやってお互いの距離を測っているのだろうか。「アップデイトダンス」では日々振付が変化する部分があったので今回も、即興的なところもあったと思うのだが、そのあたりのスリリングさも、勅使川原さんの作品、佐東さんのダンスの醍醐味の一つだ。

公演はあと一回、
5月5日(祝)16:00
劇場 東京・両国シアターX

問合せ KARAS
電話 03-3682-7441 メール info@st-karas.com

5月終わりより、またKARAS APPARATUSでのアップデイトダンスシリーズの公演もあります。

アップデイトダンスNo.34「春と修羅」
5月26日(木)~6月3日(金) (5月30日(月)のみ休演)


No.35「トリスタンとイゾルデ」
6月8日(水)~16日(木) (6月12日(日)のみ休演)

No.36「白痴」
6月21日(火)~29日(水) (6月25日(土)のみ休演)

月~金は20:00開演、土、日は16:00開演

【料金】
予約2500円
当日3000円
学生1500円

【予約】
メール updatedance@st-karas.com
件名を「アップデイトNo.34」とし、本文にご希望の日付、一般または学生、枚数、住所、氏名、日中連絡のつく電話番号をご記入ください。メール予約受付は各回とも前日の24時まで受け付けています。

【場所】
カラス・アパラタス/B2ホール

問合せ  カラス・アパラタス:03-6276-9136

2016/05/02

ルーマニア国立バレエ(ブカレスト国立歌劇場)での混乱

既に多くのメディアで報じられているので、ブカレスト国立歌劇場バレエ団(ルーマニア国立バレエ)で大きな問題が起きていることは皆さんご存知かと思います。

Guardianの記事
Romanian opera row intensifies as culture minister resigns
http://www.theguardian.com/world/2016/apr/27/romanian-opera-row-artistic-director-johann-kobborg-steps-down

事の発端は、4月4日に、ブカレスト国立歌劇場の総裁代行George Calinが退任し、指揮者であるTiberiu Soareが総裁に就任したことです。就任の翌日、ルーマニア国立バレエのウェブサイトの芸術監督のところからヨハン・コボーの名前が取り除かれ、コール・ド・バレエの場所に名前がありました。これは、コボーが自身のFacebookで明らかにしました。
Soareが言うには、コボーはそもそも芸術監督という地位には書類上はなっていない、その事実を反映させた、ということです。(彼の契約は、プリンシパル・ダンサーとしてのものだったそうです)

結果的に、30人ほどのダンサーたちがこの仕打ちに抗議し、アリーナ・コジョカルが主演する予定だった4月9日の「マノン」の公演はキャンセルされました。

そして4月12日にコボーは辞表を提出。新しいマネジメントの下で、ダンサーたちは脅迫され、マネジメントが行ったことが、嘘を用いてアーティストたちのせいにされたから、という理由からです。.

その後、報道によれば、このオペラハウスの従業員(アーティスト、スタッフ)が、反対にコボーに対して抗議集会を行うようになったとのことです。コボーが芸術監督として着任した時に、それまでのルーマニア語ではなく英語が公用語化されたこと(これは事実ではないそうです)、そして金銭的な問題に対してに抗議しているとのことでした。

歌劇場のディレクターの一人が地元メディアに語ったことによれば、コボーは月給7,300ユーロという大きな金額の給料をもらっているのに対し、ルーマニア人のダンサーは1000~2000レイ(300~500ユーロ相当)しか支払われていないうえ、コボーは外国人ダンサーだけを採用し、ルーマニア人を蔑ろにした、とのことです。諸外国のバレエ団の芸術監督としては、コボーの給料は高すぎるものではありませんが、ルーマニアの所得水準が低いため、そのように受け止められていたと言えます。(そして外国人ダンサーの方が、元から在籍していた、よりダンサーとしての地位の高い団員より給料が高いとのことです)

その2日後に、ルーマニアの首相Dacian Ciolosがコボーとコジョカルに面会し、「素晴らしいアーティストは、どの国の出身であっても尊敬されるべきであり、世界に開かれているルーマニアにとって、外国人嫌悪はあってはならないこと」と自身のFacebookに書きました。

4月20日に、文化大臣のVlad Alexandrescuが、関係者の間で話がつき、コボーは芸術監督として復帰すると発表しました。George Calinが再び総裁代行として復帰し、その間に国際的な経験のある総裁を探すということで話はついたはずでした。ところが、引き続き、劇場の関係者の多くは反対デモを続け、オペラの方の副芸術監督でもあるSoareが、これは正式な同意ではないとプレスリリースで発表し、再びCalinが更迭される羽目となりました。

まず4月20日のオペラ「ファルスタッフ」の公演がキャンセルされました。23日の「真夏の夜の夢」「DSCH」のバレエ公演は開催されることになっていましたが、オーケストラが演奏をボイコットしたため、やはり公演が結果的にキャンセルされてしまいました。結果的に3公演がキャンセルされることになりました。

さらに、4月25日には、コボー、コジョカルを含む9人の関係者(総裁代行だったCalinも含む)が、歌劇場への立ち入りを禁止されてしまうという事態になってしまいました。

そしてついに4月27日には、Vlad Alexandrescuが文化大臣を辞任するという事態にまで発展したのです。

(以上、上記Guardianおよび下記ルーマニアメディア(英語)の記事に基づく)

Romanian employees’ strike cancels shows at the Bucharest National Opera
http://www.romania-insider.com/romanian-employees-strike-cancels-shows-at-the-bucharest-national-opera/169281/

Famous ballet dancers Alina Cojocaru and Johan Kobborg banned from the Bucharest National Opera
http://www.romania-insider.com/alina-cojocaru-johan-kobborg-banned-bucharest-national-opera/169395/

ヨハン・コボーがルーマニア国立バレエの芸術監督に就任したことで、レパートリーは英国バレエを中心に変化して多様化し、そして観客動員数も飛躍的に伸びました←売り上げは上がっているようですが、芸術監督が来てからチケットの値段が2倍に上がったことも理由にあるようです。海外からの有名ダンサーのゲストを招くようになり、コボーの貢献によりカンパニーのレベルも向上して高い評価を得るようになりました。昨年は、Dance Europe誌で「カンパニー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれるなど、彼のディレクターシップは大成功を収めたように思われていました。また、アリーナ・コジョカルは、ポワントをたくさんカンパニーのために寄付したり、チャリティ公演を開いたりして、母国のために尽くしてきました。

コボーが退任するとなれば、カンパニーの上演の質が保証されない、と多くの作品の権利者が上演許可を取り消そうとする動きまで出ています。

ところで、今回の件については、ヨハン・コボーが多くの出来事を自身のFacebookを中心に発表し、アリーナ・コジョカルがTwitterで追従するという形でソーシャルメディアで多くの動きが出ています。少々問題かと思われるのは、西側の報道や第三者たちによってナショナリズム、外国人嫌悪、ルーマニアという旧共産圏の国の閉鎖性という文脈で語られすぎているところがあり、これらに反応したり便乗した、第三者(一部ジャーナリスト、および英国人を中心としたファン)がSNSやバレエフォーラム上でヒートアップし、名指しでルーマニア人ダンサーなどを厳しく批判していることです。

内部のことは、結局内部の人にしかわからないわけですし、メディアに出ている英語の情報(ルーマニア語でも多くの報道が出ていますが、言葉の壁もあり、その内容は外国にはなかなか伝わりません。自動翻訳では正確な意味を捉えることは難しいと考えられます)と、コボーのSNS上の発言だけでは判断できないのではないかと思われます。劇場側の言い分もほとんど伝わってきていません。実際には劇場の750人の従業員の大半は、Soareを支持しているとのことです。しかし結果的に、劇場だけでなく、ルーマニアという国自体も、今回の件で大変イメージが悪化してしまったところがあります。

私自身も、こうやって記事を書いていますが、これがどこまで真実なのかわからないところがあり、今までこの件について書くことをためらっていました。

ここで、ブカレスト国立歌劇場バレエ団の日本人ダンサーの二人が、心境をブログで述べられています。ブログの内容にあるように、団員という立場もあり、公に言えないことも多いと思われるのですが、西側で報道されていることだけが真実ではないということです。勇気を出して、愛する劇場のために現状を書ける範囲で書いてくださった二人の勇気は素晴らしいと思います。

外国人嫌悪といったことは、少なくともバレエカンパニー内ではなかったようです。バレエ団の100人の従業員のうち、現在30人ほどが外国人です。コボーが芸術監督となってからは、外国人は大幅に増えましたが、以前から外国人ダンサーは在籍していました。

ダンサーにとっては、舞台に立って踊ることが仕事であり、それが、今回の混乱で公演が中止されたり、落ち着いて踊ることができないのは大変つらいことだと思われます。さらに、愛着を持っていたカンパニーが、このような形で内部崩壊に近い形になってしまうことや親しい同僚たちが非難されることも、大変悲しいことでしょう。

英国ロイヤル・バレエから移籍した、ダヴィッド・チェンツェミエックはブカレスト国立歌劇場バレエ団を退団し、5月より、母国ポーランドのポーランド国立バレエ団に移籍することを発表しています。

吉田周平さんのブログ
http://ameblo.jp/shuheivagyok/entry-12153356478.html

日高世菜さんのブログ
http://ameblo.jp/senachika/entry-12149890707.html

早く事態が解決して落ち着き、ダンサーたちも踊ることに集中できる日が来ることを祈ります。

Tiberiu Soareのインタビュー(英語字幕付き) ここでは、長年にわたり現在に至るまで、前総裁Razvan Dinca(汚職で昨年逮捕されています)によるものををはじめとした劇場内での金銭的な問題が続いていたことなどを語っています。オペラハウスの音響なども、間違った工事によって悪化したと。また、コボーが、劇場の予算の範囲を超えたお金の使い方をしていたと。それらを正すのが自分の役割だったと。

ここでSoareは、読者からの疑問に答えるとして、質問に対して回答をしています。
http://slippedisc.com/2016/05/bucharest-crisis-soare-speaks-out/

第44回ローザンヌ国際バレエコンクール 5/7テレビ放映

恒例のローザンヌ国際バレエコンクールのテレビ放映が5月7日(土)にEテレにてあります。

http://www4.nhk.or.jp/P3022/

http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2016-05-07&ch=31&eid=29390

[Eテレ]
2016年5月7日(土) 午後3:00~午後5:00(120分)

若いダンサーの登竜門として知られるローザンヌ国際バレエコンクール。今年の2月6日にスイス・ボーリュ劇場で行われた決選の模様をお届けします。

【解説】バレリーナ…小山久美

<クラシック・ヴァリエーション>

「“ラ・バヤデール”から 第3ソリストのバリエーション」
ミンクス:作曲
プティパ 振付…(15歳 韓国)キム・ダンビ エスポワール賞

「“眠りの森の美女”第3幕 オーロラのバリエーション」
チャイコフスキー:作曲
プティパ 振付…(17歳 韓国)アン・セヒョン

「“ドン・キホーテ”パ・ド・ドゥから バジルのバリエーション」
ミンクス:作曲
プティパ 振付…(18歳 韓国)金世友

「“ドン・キホーテ”第3幕 パ・ド・ドゥから キトリのバリエーション」
ミンクス:作曲
プティパ 振付…(18歳 イタリア)シルヴィア・シメオネ

「“ラ・バヤデール”から 第2ソリストのバリエーション」
ミンクス:作曲
プティパ 振付…(15歳 オーストラリア)ライリー・ラプハム

「“コッペリア”第3幕 フランツのバリエーション」
ドリーブ:作曲
サン・レオン 振付…(16歳 オーストラリア)ブレイデン・ガルーチ

「“パキータ”第1幕 パ・ド・トロワから 第1バリエーション」
ミンクス:作曲
プティパ 振付…(16歳 中国)付一楊

「“眠りの森の美女”第3幕 オーロラのバリエーション」
チャイコフスキー:作曲
プティパ 振付…(19歳 日本)岡野祐女

「ラ・フィーユ・マル・ガルデ から」
エロルド:作曲
アレキサンダー・ゴルスキー 振付…(16歳 南アフリカ)リロイ・モクハートレ 4位、観客賞

「“ラ・バヤデール”から 第3ソリストのバリエーション」
ミンクス:作曲
プティパ 振付…(16歳 中国)于航 1位

「“パキータ”第1幕 パ・ド・トロワから 第1バリエーション」
ミンクス:作曲
プティパ 振付…(15歳 日本)吉江絵璃奈

「“海賊”オダリスクのパ・ド・トロワから 第2バリエーション」
アダン:作曲
マジリエ 振付…(15歳 オーストラリア)マッケンジー・ヘンソン 

「“アルレキナーダ”から 男性バリエーション」
ドリーゴ:作曲
プティパ 振付…(16歳 中国)白鼎愷 7位

「“眠りの森の美女”第2幕 オーロラのバリエーション」
チャイコフスキー:作曲
プティパ 振付…(18歳 スイス)ローラ・フェルナンデス 5位、コンテンポラリー賞

「“ラ・バヤデール”から 第1ソリストのバリエーション」
ミンクス:作曲
プティパ 振付…(15歳 ブラジル)カロリン・デ・フレイタス・ガルヴァン

「ラ・フィーユ・マル・ガルデ から」
エロルド:作曲
アレキサンダー・ゴルスキー 振付…(16歳 日本)中村淳之介 6位

「“眠りの森の美女”第3幕 オーロラのバリエーション」
チャイコフスキー:作曲
プティパ 振付…(17歳 アメリカ)マディソン・ヤング 2位

「“眠りの森の美女”第3幕 デジレ王子のバリエーション」
チャイコフスキー:作曲
プティパ 振付…(17歳 ブラジル)ジョアン・ペドロ・デ・マットス・メネグッシ

「“ラ・バヤデール”から 第3ソリストのバリエーション」
ミンクス:作曲
プティパ 振付…(15歳 日本)木村楓音

「“ドン・キホーテ”パ・ド・ドゥから バジルのバリエーション」
ミンクス:作曲
プティパ 振付…(18歳 イタリア)ヴィンチェンツォ・ディ・プリモ 3位、コンテンポラリー賞

<コンテンポラリー・ヴァリエーション>

「バウ」
コレルリ:作曲
ゴヨ・モンテロ 振付…(15歳 韓国)キム・ダンビ

「“ロッシーニ・カーズ”から ソロ」
ロッシーニ:作曲
マウロ・ビゴンゼッティ 振付…(17歳 韓国)アン・セヒョン

「グリンディング・ザ・ティース」
オーウェン・ベルトン:作曲
ゴヨ・モンテロ 振付…(18歳 韓国)金世友

「春の祭典」
ストラヴィンスキー:作曲
リチャード・ウェアロック 振付…(18歳 イタリア)シルヴィア・シメオネ

「バウ」
コレルリ:作曲
ゴヨ・モンテロ 振付…(15歳 オーストラリア)ライリー・ラプハム

「フリア・コルポリス」
ベートーベン:作曲
マウロ・ビゴンゼッティ 振付…(16歳 オーストラリア)ブレイデン・ガルーチ

「“ロッシーニ・カーズ”から ソロ」
ロッシーニ:作曲
マウロ・ビゴンゼッティ 振付…(16歳 中国)付一楊

「バウ」
コレルリ:作曲
ゴヨ・モンテロ 振付…(19歳 日本)岡野祐女

「ディエゴのためのソロ」
セオドラキス:作曲
リチャード・ウェアロック 振付…(16歳 南アフリカ)リロイ・モクハートレ

「バウ」
コレルリ:作曲
ゴヨ・モンテロ 振付…(16歳 中国)于航

「春の祭典」
ストラヴィンスキー:作曲
リチャード・ウェアロック 振付…(15歳 日本)吉江絵璃奈

「バウ」
コレルリ:作曲
ゴヨ・モンテロ 振付…(15歳 オーストラリア)マッケンジー・ヘンソン

「ディエゴのためのソロ」
セオドラキス:作曲
リチャード・ウェアロック 振付…(16歳 中国)白鼎愷

「“ロッシーニ・カーズ”から ソロ」
ロッシーニ:作曲
マウロ・ビゴンゼッティ 振付…(18歳 スイス)ローラ・フェルナンデス

「バウ」
コレルリ:作曲
ゴヨ・モンテロ 振付…(15歳 ブラジル)カロリン・デ・フレイタス・ガルヴァン

「ディエゴのためのソロ」
セオドラキス:作曲
リチャード・ウェアロック 振付…(16歳 日本)中村淳之介

「バウ」
コレルリ:作曲
ゴヨ・モンテロ 振付…(17歳 アメリカ)マディソン・ヤング

「ディエゴのためのソロ」
セオドラキス:作曲
リチャード・ウェアロック 振付…(17歳 ブラジル)ジョアン・ペドロ・デ・マットス・メネグッシ

「バウ」
コレルリ:作曲
ゴヨ・モンテロ 振付…(15歳 日本)木村楓音

「グリンディング・ザ・ティース」
オーウェン・ベルトン:作曲
ゴヨ・モンテロ 振付…(18歳 イタリア)ヴィンチェンツォ・ディ・プリモ

<ご参考:コンクールの結果>

http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2016/02/44-3317.html

1位:Hang YU, 16歳, 中国
2位:Madison YOUNG, 17歳, アメリカ
3位:Vincenzo DI PRIMO, 18歳, イタリア
4位:Leroy MOKGATLE, 16歳, 南アフリカ
5位:Laura FERNANDEZ, 18歳, スイス
6位:Junnosuke NAKAMURA 中村淳之介, 16歳, 日本
7位:Dingkai BAI, 16歳, 中国

コンテンポラリー賞:
Laura FERNANDEZ, 18歳, スイス
Vincenzo DI PRIMO, 18歳, イタリア

ベストスイス賞:
Laura FERNANDEZ, 18歳, スイス

観客賞:
Leroy MOKGATLE, 16歳, 南アフリカ

エスポワール賞:
Danbi KIM, 15歳, 韓国

2016/05/01

4/4 マリインスキー・バレエ「ジゼル」(マリインスキー国際フェスティバル)

マリインスキー国際フェスティバル2演目目は、「ジゼル」。

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マリインスキー劇場で「ジゼル」を観るのは1年ぶりのこと。昨年ディアナ・ヴィシニョーワのマリインスキー・バレエ20周年記念公演が「ジゼル」で、ヴィシニョーワは、無駄なものをすべてそぎ落とした、美しく純粋なパフォーマンスを見せてくれたのだった。何より、マリインスキー・バレエの長い歴史が詰まったクラシックな劇場でバレエを観られたのが嬉しかった。特に、「ジゼル」は、1884年にプティパが振付けた版をそのまま踊っているので、歴史の重みが違う。

(もちろん「ジゼル」の初演は1841年にパリ・オペラ座で行われているのだが、1868年以降長年オペラ座のレパートリーからは失われており、バレエ・リュスを経てようやくリファールがオペラ座にて蘇らせた)

さて、今年のマリインスキー国際フェスティバルのジゼル。当初予定されていたアリーナ・ソーモワが怪我のために降板。また、ミルタ役もエカテリーナ・コンダウーロワが予定されていたのがエカテリーナ・イワニコワに、ハンス(ヒラリオン)役もイーゴリ・コールプからイスロム・バイムラードフにそれぞれ変更。

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マリインスキー国際フェスティバルは、こんな感じでキャスト変更が多々あるようで、「眠れる森の美女」ではウラジーミル・シクリャーロフが降板してフィリップ・スチョーピンに変更となり、またガラ公演で予定されていたアマンディーヌ・アルビッソンとエルヴェ・モロー、ダニエル・カマルゴも降板した。日替わりで公演が行われており、ゲストダンサーやゲストカンパニーもあるので、リハーサルなどのスケジュールが厳しく、ダンサーにとっては大変だったようだ。ゲネプロなども十分にできない場合もあったとのこと。


http://www.mariinsky.ru/en/playbill/playbill/2016/4/4/1_1930/

Conductor: Boris Gruzin
Giselle: Yekaterina Osmolkina ジゼル:エカテリーナ・オスモルキナ
Count Albrecht: Evan McKie (National Ballet of Canada) アルブレヒト:エヴァン・マッキー
Hans: Islom Baimuradov ハンス:イスロム・バイムラードフ
Bathilde : Yulia Kobzar バチルド:ユリア・コブザール 
Sword-bearer : Alexei Nedviga ウィルフリード:アレクセイ・ネドヴィガ
The Duke : Vladimir Ponomarev 公爵:ウラジーミル・ポノマレフ
Myrtha: Yekaterina Ivannikova ミルタ:エカテリーナ・イワニコワ
Classical duet: Renata Shakirova and Philipp Stepin ペザント・パ・ド・ドゥ:レナータ・シャキロワ、フィリップ・スチョーピン
The Wilis : Monna : Xenia Ostreikovskaya ドゥ・ウィリ モイナ:クセニア・オストレイコフスカヤ
Zulma: Diana Smirnova             ズルマ:ディアナ・スミルノワ

World premiere: 28 June 1841, Théâtre de l´Académie Royal de Musique, Paris
Premiere in St Petersburg: 18 December 1842, Bolshoi Theatre
Premiere Marius Petipa´s version: 5 February 1884, Bolshoi Theatre, St Petersburg

エカテリーナ・オスモルキナは、ほとんどの古典作品の主役をマリインスキーで踊ってきたのに未だプリンシパルではないのが不思議な実力派バレリーナ。派手さはないものの、ザ・マリインスキーと言うべき、とても雄弁で繊細な上半身の持ち主で、技術もアカデミックで盤石、そのうえキャラクター的にもジゼル役はぴったりだった。オスモルキナは、どちらかといえば古風なダンサーで、決して派手なことはしないし、今風の手脚長くて細くて、というタイプでもない。でもジゼルの持つ繊細さ、素朴な愛らしさを踊りを通じて表現しているし、しっかりとパートナーの目を見て演技をしていて、説得力がある。ジゼル役を演じているではなくて、自然にジゼルそのものになっていて、踊りが大好きな、普通に恋する女の子だった。狂乱のシーンでの、静かに哀しみを深めていく演技は悲痛で、大げさなところは微塵もないのに、心を激しく揺さぶるものだった。

2幕では、とても軽やかで透明感があるけれども、同時に人間の感情やぬくもりも残していて、アルブレヒトへと寄せる愛の深さが伝わってくる。現世と死後の世界の間に漂う、人ではなくなってしまったけれども想いはこの世に残したままなのが見えた。ここでも、彼女は決して脚を高く上げすぎたり技巧に走りすぎることなく、ロマンティック・バレエらしく控えめに、しかしリリカルに情感豊かに演じていた。オスモルキナは、正統派ペテルブルグ派スタイル。抑制が効いていながらも実に雄弁なポール・ド・ブラとバロンで、理想的なジゼルそのものだった。

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エヴァン・マッキーのアルブレヒトも、オスモルキナに良くマッチしていたと言える。1幕で登場した時は赤いマントを翻して貴公子的だったものの、マントを預けた後はシャツを腕まくりしていて庶民の振りをしていた。だが、しぐさの一つ一つに貴族の気品を漂わせていた。洗練されているプレーボーイなのだけど、同時にとても優しくジゼルに接するものだから、ついついジゼルは恋してしまう。特に身体の弱い彼女を気遣う心遣いがずっと感じられていて。彼自身も、遊びとわきまえながらも、ジゼルとの恋に本気になっている瞬間もあった。1幕でジゼルとアルブレヒトが一緒に踊るシーンは、気持ちが通い合っていて多幸感がいっぱい。ハンス(ヒラリオン)に正体を明かされ、バチルドが現れたときには、何のことか理解できないようだった。そしてジゼルが正気を失った時に、本当に彼女を愛していることに気が付く。

マッキーの2幕は、マリインスキーの紫色の衣装が良く似合っていた。エフゲニー・イワンチェンコの衣装を借りたという。今回は、セルゲイ・ヴィハレフとタチアナ・テレホワに指導を仰いで、マリインスキーらしいエレガンスを学んだとのこと。もちろんワガノワ育ちではないので、多少踊りのスタイルの違いはあるものの、ボリショイの名教師ピョートル・ペストフに学んできたので基本的にはロシアンスタイルの踊りだ。長身をマントに包み百合の花を抱えた姿は絵になる。つま先もよく伸びて美しいし、オスモルキナとの息も合っていて、サポートも余裕があった。ただ、彼はアルブレヒトの気品や想いを見せることを主眼にしているので、その分派手さはない。ヴァリエーションであまり大きく後ろカンブレをしない、カブリオールもダブルにはしない。アラベスクは高くて美しく、ポジションも精確で動作の流れも滑らかで優雅なのだが、今の多くの男性ダンサーが技を見せつけるようなことは何もしないので、地味に感じられてしまう。特に終盤、ミルタに踊らされてしまうところは、以前観たときにはアントルシャ・シスで32回跳ぶというのをしていたのだが、今回はブリゼだった。ブリゼの足先もバットゥリーもとてもきれいだったのだが、今の主流はアントルシャ・シス。本人曰く、今は誰もがアントルシャ・シスをやるので敢えてブリゼにした、と言うのだが、このようなフェスティバルでのゲスト出演では、観客が技術的にも難しいことを求めているのだから、素直にアントルシャ・シスにすれば良かったと思う。

ただ、二人ともこのように派手なことは何もしなくて、正統派の美しさと、心が通じ合う様子が手に取るようにわかる、練り上げられたドラマ性を見せていたので、とても美しく心に残るパフォーマンスになったと思う。バレエというものは技術を競い合うものではなく、踊りを通じて演じられるドラマであり物語であり表現であるということを改めて見せてくれた。

ハンス役は、キャラクター役に定評のあるイスロム・バイムラードフ。粗暴だけど純情で熱い心を持つハンスを熱演し、ジゼルへの報われない想いを全身で表現していて素晴らしかった。どこかチャーミングでユーモラスですらある、憎めない存在で、ドラマに良いアクセントを加えた。ペザント・パ・ド・ドゥは、「ビッグ・バレエ」に出場した、まだ新人のレナータ・シャキロワと、最近ファースト・ソリストに昇格したフィリップ・スチョーピン。スチョーピンは正確な技術、高い跳躍とエレガンスがあり、着地もきれいで柔らかく、最後のフィニッシュが少しだけ乱れた以外は完璧。この後の「眠れる森の美女」でもシクリャーロフの代役を務め、身長が少し低めなことを除けばすべてが揃っている良いダンサー。シャキロワも生き生きとしていてテクニックには優れているけれども、マリインスキーのバレリーナにしては少しプロポーションに恵まれないところがあるかもしれない。前の日の「青銅の騎士」にピョートル一世役で出演していた、名キャラクテールのウラジーミル・ポノマレフがこの日は公爵役で出演していて、重厚さをドラマに与えていた。

ミルタのアナスタシア・イワニコワは、バドブレは美しいのだけど、ややカリスマ性には欠けていて、ウィリの女王らしい支配力が薄かったのが残念。ミルタが秘めているべき哀しみもあまり感じさせず、ただ怖いだけだった。ドゥ・ウィリの二人、クセニア・オストレイコフスカヤとディアナ・スミルノワは流石にレベルが高く、特にオストレイコフスカヤはベテランならではの詩情を感じさせる、気持ちの息届いた踊り。ウィリたちはとてもきれいに揃っていた。

歴史と風格を誇るマリインスキー劇場にふさわしい、古典的で控えめながらも美しい、心に残るパフォーマンスだった。ロシアがバレエの聖地であることを改めてかみしめた。

イスロム・バイムラードフとウィリたち
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エカテリーナ・オスモルキナとエヴァン・マッキー
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カナダの新聞Globe and Mailの記事
http://www.theglobeandmail.com/arts/theatre-and-performance/torontos-evan-mckie-completes-holy-trinity-of-global-ballet-stardom/article29657172/

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