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2016/05/07

5/3、5 新国立劇場バレエ団「ドン・キホーテ」


http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/don_quixote/

改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ

キトリ(ドゥルシネア)米沢唯
バジル 井澤駿
ドン・キホーテ 貝川鐵夫
サンチョ・パンサ 髙橋一輝
ロレンツォ 小口邦明
ガマーシュ 菅野英男
キトリの友達 柴山紗帆 飯野萌子
エスパーダ マイレン・トレウバエフ
街の踊り子 長田佳世
メルセデス 本島美和
カスタネットの踊り 堀口純
キューピッド 五月女 遥
森の女王 細田千晶
ボレロ 丸尾孝子、中家正博
第1ヴァリエーション 奥田花純
第2ヴァリエーション 寺田亜沙子

指揮:マーティン・イェーツ
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

新国立劇場バレエ団の「ドン・キホーテ」は、アレクセイ・ファジェーチェフ版。ボリショイ・バレエの現行の「ドン・キホーテ」と基本的には同じだが、細部では異なっている(ボリショイでは2幕にジークという踊りが追加されている、3幕にキューピッドが登場しないなど)。踊りはふんだんに盛り込まれているが、登場人物が多く、不必要なキャラクターもいる。そして、2幕の流れが居酒屋で狂言自殺→ロマノ野営地→夢の場面という順番で、ドラマツルギーとしてはあまり説得力がない。3幕の結婚式にキトリの両親が出ないというのも少し不自然だった。でも、何しろ主演陣が圧倒的に素晴らしいので、楽しい舞台となった。

キトリの米沢唯さんは、スーパーテクニックの持ち主なのは周知の事実だけど、技術だけが魅力ではない。高いテクニックに裏付けられて、とても余裕たっぷりで安定度抜群のため、音楽に自在に合わせられるし表情豊かにアクセントもつけられる。1幕では、最初はおすましでバジルをじらしながらも、いたずらっぽい表情で周囲と上手く呼吸を合わせて受けの芝居も巧く、とてもお茶目でキュートなキトリだった。カスタネットの踊りの高速フェアテもさすがの正確さ。超絶技巧を発揮しても、米沢さんはあくまでも品が良い。

米沢さん、踊りは一幕は少しだけ抑え目だったけど、3幕では魅力が炸裂した。ヴァリエーションは扇子を持たないで、エシャッペもパ・ド・シュヴァルもなく連続ルティレ中心なのだが、かなり速い音楽にピッタリと合わせて正確に刻みキトリの闊達さを見せてくれた。グラン・フェッテは、扇子を持って、高く掲げたりひらひらと開閉させながら、トリプルも織り交ぜて実に華やかで観客を興奮のるつぼに放り込んだ。芝居心もありつつ、これだけ強いテクニックを持ったバレリーナは世界的にもあまりいないと思われるし、海外のメジャーなカンパニーでゲストしてもきっと人気を得られるのではないだろうか。2幕のドゥルシネア役の時には、ふわっと柔らかく、打って変わってのお姫さまらしいたおやかさも見せてくれた。

井澤さんは、米沢さんに比べると貫録は足りないし、床屋というよりは端正な王子様っぽいが、真ん中に立つ人らしい華は人一倍ある。長身で顔が小さく、すらりとしてハンサムなのは大きなメリット。しかも容姿の良さだけでなく、技術的にもしっかりしている。やや上半身が硬いのは、ランベルセなどでわかってしまうものの、ふわりと軽やかな跳躍の持ち主でマネージュは足先までよく伸び、きちんと5番に降りられるし、ピルエットも軸がまっすぐでよくコントロールされていてきれい。サポートはあまり得意な方でなくて以前はひやりとさせられたこともあったが、今回は1幕の片手リフトはしっかりと決まったし、2幕でキトリがダイブするところもきっちり受け止められていてよく頑張った。今が伸び盛りの若者を観ると、思わず頬も緩んでしまう。これでもっと積極的にキトリとやり取りできるようになれば、文句なしだろう。

主役以外の見所は、なんといってもエスパーダのマイレンと、街の踊り子長田さんの絡み。マイレンは、キメキメの闘牛士姿がスタイリッシュで、つま先もピーンと伸びてクラシックの技術では他の誰よりも美しい。マント捌きも鮮やかだし、長田さんとの掛け合いや演技が大人の世界で、非常にセクシーだった。2幕での本島さんのメルセデス、堀口さんのカスタネットとの駆け引きもステキだった。舞台人としての自覚がしっかりあって、いつでも演技を欠かさないので舞台が締まる。一方、長田さんの踊り子は、登場したとたんの華やかさ、あでやかさが圧倒的。大人の女性の魅力が溢れているし、一つ一つのポーズも美しいし音楽性も豊か。この役ならではの細かいパドブレなどのポワントワークもさすがだった。闘牛士が突き刺す剣、3日の公演では何本か倒れてしまったので大変だったと思うけど、5日は一本も倒れず決まった。成熟した色香と演劇性は、絶対この劇場には必要なことなので、彼らのようなベテランは大切にしてほしい。

ファジェーチェフ版は、街の踊り子、メルセデス、さらにはカスタネットの踊りの女性と、似たような感じの妖艶女性キャラクターが多いのであまりスッキリしないのだが、その分ソリストがたくさん登場する。メルセデス役の本島美和さんは、持ち前のあでやかな美貌と演技力でしっかりとエスパーダを誘惑していた。彼女は少し背中の柔軟性が足りないのが惜しいけど、これだけ美しいし成熟した雰囲気が出せるので文句なし。カスタネットの踊りは、ファジェーチェフ版の蛇足部分だし、堀口さんはほっそりとしていてセクシーな持ち味はないものの、彼女も幸薄そうな持ち味を生かした演技派だった。

夢のシーンは、森の女王の細田さんが、長くエレガントな腕と気品にあふれた動き、優しく包容力のある微笑みで素晴らしかった。長身なのに足音も全くさせない美しいグラン・ジュッテとしなやかなポール・ド・ブラ。キューピッドの五月女さんは、身体能力に優れていて見事なテクニック、特にアントルシャ・カトルの高さが凄いし音楽性も良い。衣装やかつらには改善の余地があると思える。

しかし、3人のドリアードと4人のドリアードがバタバタしていて揃っておらず、新国立劇場バレエ団のチュチュバレエのシーンがこれで良いのだろうか、と不安になった。これではうっとりとした夢に浸ることができない。子役のキューピッドたちの方がよほどよく踊ることができている。その分、1幕のセギデリアは生き生きしていたし、3幕ファンダンゴはビシッと揃っていて良かったのだが。

また、キトリの友達二人も、果たしてこの役に適任だったかと言えば、ノーであった。演技力もなければ、踊りの方も、音には乗っていないし重たいし技術的にもソリスト役を踊るレベルではなく、発表会を見ているようだった。片方のダンサーは、プティ・アレグロが切れ味鈍くもたもたしていて全く駄目だった。なので、3幕のヴァリエーション、闊達な奥田さんと優雅な寺田さんを観てほっとしたのだった。この二人は、エポールマンがとても優れているので、技術の上にさらに美しく表情豊かに踊ることができている。(それは、細田さんや五月女さんにも共通していて、彼女たちもエポールマンが良い)3幕ボレロの、中家さんはスカッとした切れ味良い踊りを見せてくれたので、彼のバジルが今回観られなくて残念。

脇役で言えば、前回バジル役だった菅野さんがガマーシュ役だった。まだまだ踊ることができるのでもったいないのだが、ちょっととぼけていて可愛らしいガマーシュだった。前回バジルと言えば、奥村さんもトレアドールとファンダンゴだし、別の日にはガマーシュ。何とも贅沢というかもったいない。トレアドールには、踊れる男子を揃えており、特に江本さんや池田さんが光っていたけど、ファジェーチェフ版はトレアドールの踊りもあまり見せ場がないのだった。

メーンの素晴らしい4人を中心に、ソリスト陣もほとんどが非常にクオリティの高い、世界に誇れるレベルのパフォーマンスを見せてくれただけに、ふとしたところに疑問に思えるキャスティングがあったのが残念だった。このバレエ団は、ベテランから中堅にかけては本当にレベルが高いのだが、残念ながら若手の一部にばらつきが見られる。これから世代交代も行われると思うので、今後が少し不安に感じられてしまったし、観客の立場からすれば、未熟な若手を見せられるよりは、ベテランの至芸を楽しみたいと思うし、若いダンサーにも彼らのパフォーマンスを間近で見て、吸収し学んでいってほしいものだと感じた。

最終日8日も鑑賞予定。もちろん小野絢子さんと福岡雄大さんのコンビは鉄板だし、キトリの友達、サンチョ・パン座の八幡さんなどソリストにも期待大。

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。私は3日(火)に観ました。一番の印象は、「井澤さん、上手になったなあ!」 唯お姉さまのご指導が良いのでしょうか(笑)
米沢さんも安心して飛び込んでいる感じで、観ていて微笑ましく感じました。「ホフマン物語」の時とは比較にならないくらい、いいパートナーシップになっていると思います。
ここ数シーズンはアコスタ版ばかり観ていたので、ちょっと違和感を感じるところもありましたが、豪華で観ていて楽しめます。オケが最初、ちょっと重かったのが残念。でもきっと、湿度のせいですよね。

junさん、こんにちは。

そう、井澤さんの成長は目を瞠るばかりです。おっしゃる通り、あの飛び込むところもしっかりと受け止められていたし、片手リフトもばっちりで本当にうまくなりましたね。ホフマン物語でうっかり小野さんを落としてしまったことを思うと。唯ちゃんがきっとしっかり教えたんだと思います。唯&井澤コンビはいいですよね。華があります。

ファジェーチェフ版はキャラクターが多くてちょっと混乱しますが、確かに豪華な舞台ですよね~。キャストもメーンどころは豪華。今回の指揮者さんが、ドン・キホーテを振るのが初めてだったらしいので、初日はたしかにそういうところがあったかもしれません。

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