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« YAGP2016ファイナル速報 ジュニア男子1位に増田慈さん/追記あり | トップページ | 第44回ローザンヌ国際バレエコンクール 5/7テレビ放映 »

2016/05/01

4/4 マリインスキー・バレエ「ジゼル」(マリインスキー国際フェスティバル)

マリインスキー国際フェスティバル2演目目は、「ジゼル」。

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マリインスキー劇場で「ジゼル」を観るのは1年ぶりのこと。昨年ディアナ・ヴィシニョーワのマリインスキー・バレエ20周年記念公演が「ジゼル」で、ヴィシニョーワは、無駄なものをすべてそぎ落とした、美しく純粋なパフォーマンスを見せてくれたのだった。何より、マリインスキー・バレエの長い歴史が詰まったクラシックな劇場でバレエを観られたのが嬉しかった。特に、「ジゼル」は、1884年にプティパが振付けた版をそのまま踊っているので、歴史の重みが違う。

(もちろん「ジゼル」の初演は1841年にパリ・オペラ座で行われているのだが、1868年以降長年オペラ座のレパートリーからは失われており、バレエ・リュスを経てようやくリファールがオペラ座にて蘇らせた)

さて、今年のマリインスキー国際フェスティバルのジゼル。当初予定されていたアリーナ・ソーモワが怪我のために降板。また、ミルタ役もエカテリーナ・コンダウーロワが予定されていたのがエカテリーナ・イワニコワに、ハンス(ヒラリオン)役もイーゴリ・コールプからイスロム・バイムラードフにそれぞれ変更。

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マリインスキー国際フェスティバルは、こんな感じでキャスト変更が多々あるようで、「眠れる森の美女」ではウラジーミル・シクリャーロフが降板してフィリップ・スチョーピンに変更となり、またガラ公演で予定されていたアマンディーヌ・アルビッソンとエルヴェ・モロー、ダニエル・カマルゴも降板した。日替わりで公演が行われており、ゲストダンサーやゲストカンパニーもあるので、リハーサルなどのスケジュールが厳しく、ダンサーにとっては大変だったようだ。ゲネプロなども十分にできない場合もあったとのこと。


http://www.mariinsky.ru/en/playbill/playbill/2016/4/4/1_1930/

Conductor: Boris Gruzin
Giselle: Yekaterina Osmolkina ジゼル:エカテリーナ・オスモルキナ
Count Albrecht: Evan McKie (National Ballet of Canada) アルブレヒト:エヴァン・マッキー
Hans: Islom Baimuradov ハンス:イスロム・バイムラードフ
Bathilde : Yulia Kobzar バチルド:ユリア・コブザール 
Sword-bearer : Alexei Nedviga ウィルフリード:アレクセイ・ネドヴィガ
The Duke : Vladimir Ponomarev 公爵:ウラジーミル・ポノマレフ
Myrtha: Yekaterina Ivannikova ミルタ:エカテリーナ・イワニコワ
Classical duet: Renata Shakirova and Philipp Stepin ペザント・パ・ド・ドゥ:レナータ・シャキロワ、フィリップ・スチョーピン
The Wilis : Monna : Xenia Ostreikovskaya ドゥ・ウィリ モイナ:クセニア・オストレイコフスカヤ
Zulma: Diana Smirnova             ズルマ:ディアナ・スミルノワ

World premiere: 28 June 1841, Théâtre de l´Académie Royal de Musique, Paris
Premiere in St Petersburg: 18 December 1842, Bolshoi Theatre
Premiere Marius Petipa´s version: 5 February 1884, Bolshoi Theatre, St Petersburg

エカテリーナ・オスモルキナは、ほとんどの古典作品の主役をマリインスキーで踊ってきたのに未だプリンシパルではないのが不思議な実力派バレリーナ。派手さはないものの、ザ・マリインスキーと言うべき、とても雄弁で繊細な上半身の持ち主で、技術もアカデミックで盤石、そのうえキャラクター的にもジゼル役はぴったりだった。オスモルキナは、どちらかといえば古風なダンサーで、決して派手なことはしないし、今風の手脚長くて細くて、というタイプでもない。でもジゼルの持つ繊細さ、素朴な愛らしさを踊りを通じて表現しているし、しっかりとパートナーの目を見て演技をしていて、説得力がある。ジゼル役を演じているではなくて、自然にジゼルそのものになっていて、踊りが大好きな、普通に恋する女の子だった。狂乱のシーンでの、静かに哀しみを深めていく演技は悲痛で、大げさなところは微塵もないのに、心を激しく揺さぶるものだった。

2幕では、とても軽やかで透明感があるけれども、同時に人間の感情やぬくもりも残していて、アルブレヒトへと寄せる愛の深さが伝わってくる。現世と死後の世界の間に漂う、人ではなくなってしまったけれども想いはこの世に残したままなのが見えた。ここでも、彼女は決して脚を高く上げすぎたり技巧に走りすぎることなく、ロマンティック・バレエらしく控えめに、しかしリリカルに情感豊かに演じていた。オスモルキナは、正統派ペテルブルグ派スタイル。抑制が効いていながらも実に雄弁なポール・ド・ブラとバロンで、理想的なジゼルそのものだった。

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エヴァン・マッキーのアルブレヒトも、オスモルキナに良くマッチしていたと言える。1幕で登場した時は赤いマントを翻して貴公子的だったものの、マントを預けた後はシャツを腕まくりしていて庶民の振りをしていた。だが、しぐさの一つ一つに貴族の気品を漂わせていた。洗練されているプレーボーイなのだけど、同時にとても優しくジゼルに接するものだから、ついついジゼルは恋してしまう。特に身体の弱い彼女を気遣う心遣いがずっと感じられていて。彼自身も、遊びとわきまえながらも、ジゼルとの恋に本気になっている瞬間もあった。1幕でジゼルとアルブレヒトが一緒に踊るシーンは、気持ちが通い合っていて多幸感がいっぱい。ハンス(ヒラリオン)に正体を明かされ、バチルドが現れたときには、何のことか理解できないようだった。そしてジゼルが正気を失った時に、本当に彼女を愛していることに気が付く。

マッキーの2幕は、マリインスキーの紫色の衣装が良く似合っていた。エフゲニー・イワンチェンコの衣装を借りたという。今回は、セルゲイ・ヴィハレフとタチアナ・テレホワに指導を仰いで、マリインスキーらしいエレガンスを学んだとのこと。もちろんワガノワ育ちではないので、多少踊りのスタイルの違いはあるものの、ボリショイの名教師ピョートル・ペストフに学んできたので基本的にはロシアンスタイルの踊りだ。長身をマントに包み百合の花を抱えた姿は絵になる。つま先もよく伸びて美しいし、オスモルキナとの息も合っていて、サポートも余裕があった。ただ、彼はアルブレヒトの気品や想いを見せることを主眼にしているので、その分派手さはない。ヴァリエーションであまり大きく後ろカンブレをしない、カブリオールもダブルにはしない。アラベスクは高くて美しく、ポジションも精確で動作の流れも滑らかで優雅なのだが、今の多くの男性ダンサーが技を見せつけるようなことは何もしないので、地味に感じられてしまう。特に終盤、ミルタに踊らされてしまうところは、以前観たときにはアントルシャ・シスで32回跳ぶというのをしていたのだが、今回はブリゼだった。ブリゼの足先もバットゥリーもとてもきれいだったのだが、今の主流はアントルシャ・シス。本人曰く、今は誰もがアントルシャ・シスをやるので敢えてブリゼにした、と言うのだが、このようなフェスティバルでのゲスト出演では、観客が技術的にも難しいことを求めているのだから、素直にアントルシャ・シスにすれば良かったと思う。

ただ、二人ともこのように派手なことは何もしなくて、正統派の美しさと、心が通じ合う様子が手に取るようにわかる、練り上げられたドラマ性を見せていたので、とても美しく心に残るパフォーマンスになったと思う。バレエというものは技術を競い合うものではなく、踊りを通じて演じられるドラマであり物語であり表現であるということを改めて見せてくれた。

ハンス役は、キャラクター役に定評のあるイスロム・バイムラードフ。粗暴だけど純情で熱い心を持つハンスを熱演し、ジゼルへの報われない想いを全身で表現していて素晴らしかった。どこかチャーミングでユーモラスですらある、憎めない存在で、ドラマに良いアクセントを加えた。ペザント・パ・ド・ドゥは、「ビッグ・バレエ」に出場した、まだ新人のレナータ・シャキロワと、最近ファースト・ソリストに昇格したフィリップ・スチョーピン。スチョーピンは正確な技術、高い跳躍とエレガンスがあり、着地もきれいで柔らかく、最後のフィニッシュが少しだけ乱れた以外は完璧。この後の「眠れる森の美女」でもシクリャーロフの代役を務め、身長が少し低めなことを除けばすべてが揃っている良いダンサー。シャキロワも生き生きとしていてテクニックには優れているけれども、マリインスキーのバレリーナにしては少しプロポーションに恵まれないところがあるかもしれない。前の日の「青銅の騎士」にピョートル一世役で出演していた、名キャラクテールのウラジーミル・ポノマレフがこの日は公爵役で出演していて、重厚さをドラマに与えていた。

ミルタのアナスタシア・イワニコワは、バドブレは美しいのだけど、ややカリスマ性には欠けていて、ウィリの女王らしい支配力が薄かったのが残念。ミルタが秘めているべき哀しみもあまり感じさせず、ただ怖いだけだった。ドゥ・ウィリの二人、クセニア・オストレイコフスカヤとディアナ・スミルノワは流石にレベルが高く、特にオストレイコフスカヤはベテランならではの詩情を感じさせる、気持ちの息届いた踊り。ウィリたちはとてもきれいに揃っていた。

歴史と風格を誇るマリインスキー劇場にふさわしい、古典的で控えめながらも美しい、心に残るパフォーマンスだった。ロシアがバレエの聖地であることを改めてかみしめた。

イスロム・バイムラードフとウィリたち
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エカテリーナ・オスモルキナとエヴァン・マッキー
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カナダの新聞Globe and Mailの記事
http://www.theglobeandmail.com/arts/theatre-and-performance/torontos-evan-mckie-completes-holy-trinity-of-global-ballet-stardom/article29657172/

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