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2016/04/14

あいちトリエンナーレ2016開催、勅使川原三郎オペラ「魔笛」、山田うん新作など

3年に1度、愛知県で開催される現代アートの祭典「あいちトリエンナーレ」が、今年も8月11日から10月23日まで、愛知・愛知芸術文化センターほかで開催されます。この企画発表会に参加してきました。

3回目の開催となる「あいちトリエンナーレ」。今回は「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」をテーマに現代美術、舞台芸術、普及・教育、連携事業の4ジャンルでさまざまな作品の発表、事業展開を行います。3会場で開催され、100組を超えるアーティストが集結します。

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従来のアートの枠組みを越境することも、一つの特徴となっています。たとえば、パフォーミングアートでは、フラメンコの革命児と称されるイスラエル・ガルバン、能と現代音楽を融合させた舞台を創る青木涼子が参加。今までも多数の共同制作を行ってきたり、教育プログラムやアウトリーチプログラムも行ってきている山田うんは、愛知県奥三河地方で数百年継承されてきた神事の花祭をベースに、コンテンポラリーダンスを創作します。

舞台芸術部門は、パフォーミングアーツとプロデュースオペラの二つの柱から構成されています。パフォーミングアーツでは、10組が参加します。すでに発表されているアーティストに加えて、3組が追加されました。追加された3アーティストは屋外でのパフォーマンスとなり、街の中でフェスティバルを盛り上げます。

スペインを拠点とする「アニマル・レリジョン」は現代的サーカスにダンスと音楽の融合を図りながら、動物の本能や宗教に触発された作品を創作しているパフォーマンス・ユニットです。機械と人間の体をミックスした、ダイナミックな屋外スペクタクル作品『Chicken Legz』が豊橋市内で上演されます。

カンパニー・ディディエ・テロン」は、『膨らんだ冒険』シリーズと新作を上演します。風船のように膨らんだ衣装(ドナルド・ベッカーによるデザイン)が大きな視覚的インパクトがあります。新作は今回のために創作されたもので、オーディションをそのために行います。名古屋市内のまちなかでの上演です。

『虹のカーニヴァル』は、一般市民参加型のプロジェクトで、フラメンコ、日本舞踊、サンバ、アクロバット、ストリートダンス、大道芸といった身体表現でにぎわいを演出します。

そして10月7日から会期終了までの期間は、「レインボーウィークス」と称し、パフォーミングアーツの公演を集中して開催。多様な演目を短期間の滞在で鑑賞することができます。

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山田うんさんは会見にも出席し、囲み取材も行いました。
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今回の新作は、愛知県の奥三河地方に700年伝わってきた郷土芸能「花祭」がモチーフです。これは舞踊を中心とした祭りで、男性だけで踊られるものとして継承されてきました。今回、参加するダンサーは全員がこの花祭を実際に体験したとのことです。出来上がっていていて完成された祭りとして継承されてきたものを体で感じて来て、そこで流れている日本人の生き方をフィジカルに表現したいと考えているそうです。作品の長さとしては1時間を超えるものとなります。

この花祭というのは、大変ユニークなもので、舞台芸術ではないため、土間で上演されており、一般の人も観ることができる神楽です。観客、神様、パフォーマーの区別はなく、煤をかぶったりドロドロになったりするとのこと。上演スペースの上に上がるのを許されているのは、舞手と野次を飛ばす人で、野次を飛ばす人たちは応援団のように舞手に水を飲ませたり応援したりします。舞手は仮面を着用して踊るため、今回の作品も仮面をつけて踊ることを考えているとのこと。男性のみが踊り、とても複雑なステップで、衣装も非常に特徴的。ソロダンスから始まって、トリオ、カルテット等があり、年配の舞踊手による踊り、子どもだけの舞もありますが、ほとんどは青年の舞とのこと。

もちろん、この「花祭」の踊りをそのまま再現するのではなくて、コンテンポラリーダンスとして創作することになります。男性ダンサーのみを対象としたオーディションを行う予定となっています。また、名古屋市芸術創造センターの会場用には、専用の土間を意識したステージを作るそうです。


そして、プロデュースオペラとして、勅使川原三郎さんが演出/振付/プロデュースを手掛ける新作オペラ『魔笛』の上演があります。今回のテーマ「旅」にも合っている、モーツァルトの名作です。勅使川原さんにも、囲み取材をすることが出いました。

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勅使川原さんの話によれば、今回は動く音楽、動くオペラを創りたいと考えており、身体が最も重要と考え、演技というよりは音楽的な作品として挑戦的なものにしたいと考えたそうです。また、今回は、東京バレエ団のダンサーが10~15人参加します。群舞、そして合唱も動くので、良いアンサンブルが必要だし、一定の人数も必要なので東京バレエ団に声をかけようと思い立ったそうです。東京バレエ団の方からは、どのダンサーを使ってもいいと快諾を得たとのこと。すでに東京バレエ団を一度訪ねてワークショップを行い、ダンサーたちの動きを見てきましたが、出演者を決めるオーディションはまだこれからだそうです。また、佐東利穂子さんも出演して踊り、さらに「魔笛」は語りがあるので、今回は日本語で佐東さんが進行役として登場して語りを行います。合唱が50名にメーンの歌手たち、ダンサーを加えると100人を超える大規模な作品となります。

今までも、勅使川原さんは、フェニーチェ劇場での『ディドとエネアス』(パーセル)、『エイシスとガラテア』(ヘンデル)、さらには最近ではシャンゼリゼ劇場での新作『ソラリス』など、いくつかオペラを演出してきた経験があります。しかし、その中で、なぜ日本人の自分たちが、モーツァルトのオペラを上演するのか、そのことを問い続けながら答えを見つけて行きたいと考えているとのこと。今回はより身体的な、動くダンスオペラとして表現し、音楽空間を作っていきたい。『魔笛』は人間の旅を描いた作品で、その旅の先には何があるのか、未来があるような不可思議なオペラなので、難しい仕事と感じているそうですが、どの曲をとっても素晴らしい音楽で、魅力的な依頼であったと。

今回『魔笛』は愛知県芸術劇場の大空間での上演となります。空間性を作らなければならないので、抽象性を持たせて、宇宙観がありながら限定した空間を作る、舞台装置が動き、軽やかで自在なものを作り、合唱と統合できる空間を作りたいと勅使川原さんは、考えているそうです。歌手たちにも1か月のワークショップに参加してもらって、若々しい身体を表現してほしい、一方でザラストロは老練なので、ジャコメッティの彫刻のような垂直的な身体のイメージがあるそうです。『魔笛』には鳥刺しが登場しますが、鳥は旅をするとともに、大地と天を結ぶ垂直的な存在です。

オペラ『魔笛』はダンサー、歌手と違ったバックグラウンドがあり、違った身体性を持っているので、その中で共通言語を見つけて、共通の理解をしていくことが重要だと勅使川原さんは考えています。さらに、ダンサーの中でもクラシックバレエとコンテンポラリーでも動き方は違うので、お互いをどうやって理解していくかが大事になってきます。ただ、オペラも音楽もダンスも身体芸術ではあるけど言葉も重大なので、同じところに向かうことはできるのではないかと思っていて、簡単なことではないけれどもとても面白いことだと理解しているそうです。

様々な分野の人間が一緒になって作っていく作品ですが、『魔笛』という世界に生きる命になって、固定観念を溶かしてほしい、自己防衛本能を無しにして、新しい命になり、前の仕事を忘れて素になることができれば持っている以上のものができるのではないかと勅使川原さんは考えています。作品を創るということは、捉え直し、おさらいし直すということで、ある種の教育的なものが含まれてるべきであると思っているそうです。今回の「あいちトリエンナーレ」には、教育という役割もあります。

舞台芸術だけでなく、映像プログラムも含む現代美術の祭典、あいちトリエンナーレ2016。非常に楽しみです。中でも、山田うんさんの新作と、『魔笛」は決して見逃すことはできません。

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