BlogPeople


2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

ブログパーツ

  • HMV検索
    検索する
無料ブログはココログ

« オーレリー・デュポンさよなら公演「マノン」が4/24プレミアムシアターで放映/DVD発売 | トップページ | 3/27 YUKIO SUZUKI Projects【warp mania #1】 »

2016/03/28

3/20 ナショナル・バレエ・オブ・カナダ「ロミオとジュリエット」

ナショナル・バレエ・オブ・カナダの「ロミオとジュリエット」最終日は、スヴェトラーナ・ルンキナと、エヴァン・マッキー主演。11月含め12回の公演があったというのに、実はこのペアは一回だけの登場。しかし、一般公開ではない3月15日の公演で、72人のシリア難民を招いての特別公演があった。この公演は、こちらのペアが主演した。テレビのニュース番組にも公演の模様が少し紹介されている。カナダは難民受け入れに積極的な姿勢を打ち出しており、慣れない生活に疲れた難民の心を癒すために、このように芸術に触れる機会を提供しているのだ。素晴らしい試みだと思う。

Canadian arts organizations offer hope, healing for Syrian refugees
http://www.cbc.ca/beta/news/arts/syrian-refugees-arts-community-1.3505564

12923251_1715592402043582_522211899

Juliet Svetlana Lunkina ジュリエット: スヴェートラナ・ルンキナ
Romeo Evan McKie  ロミオ:エヴァン・マッキー
Mercutio Jack Bertinshaw  マキューシオ: ジャック・パーティンショー
Tybalt  McGee Maddox  ティボルト: マッギー・マドックス
Paris  Ben Rudisin* パリス: ベン・ルディシン
Benvolio  Dylan Tydaldi ベンヴォーリオ : ディラン・ティダルディ


ジュリエット役のスヴェートラナ・ルンキナは、ジュリエット役はボリショイ時代にガラ公演でラヴロフスキー版の一部を踊ったことがあるだけで、実は全幕でジュリエットを踊るのが初めて。このことに少々驚いたのだけど、ちょっとクールビューティーで硬質なイメージがある彼女のジュリエットってどんな感じになるのだろうかと思っていた。

今回、ルンキナというバレリーナの豊かな表現力、繊細さ、動きを通して物語を伝える力の素晴らしさに改めて目を瞠らされた。彼女のボリショイ時代に、ラトマンスキーが芸術監督を務めていて、「明るい小川」など彼が振付けた作品の多くに出演していたので、彼の振付言語に馴染んでいるということも大きいだろう。技術に優れているだけでなく作品を解釈する力があるので、ラトマンスキーの動きの多い振付も余裕をもって、ニュアンスと意味を込めて踊ることができる。冒頭の無邪気でお転婆な女の子から、ロミオと結ばれてすぐの別れと大人の階段を駆け上がりながらも、最後まで純粋な少女らしさを失わない姿まで、ナチュラルで清新な演技には心を動かされた。彼女は、どんな風にも化けることができる、稀有な演技力を持ったバレリーナなのだと改めて実感した。一つ一つの動きも大きくてしなやかで美しいし、愛を貫くしっかりとした意思をもった、強い女の子を演じていた。特に、神父のところへと助けを乞うことを決意するまでの踊りながらの感情表現の雄弁さには心を打たれた。

そのルンキナと最近パートナーシップを汲むことが多いのがエヴァン・マッキー。2年前の「白鳥の湖」に始まり、「くるみ割り人形」「クローマ」「冬物語」と共演が続いている。彼もまた、パリ・オペラ座バレエの「プシュケー」でラトマンスキーの作品を踊った経験があり、彼の振付スタイルをよく理解していた。実際、「ロミオとジュリエット」のバルコニーシーンでは、「プシュケー」に登場する振りと似た振付がいくつか登場する。ラトマンスキーの作品を踊るには、振付をきっちりと踊るだけでは足りなくて、一つ一つの動きの意味をしっかりと考えてそれを踊りにしていかなければならない。パートナーリングも、かなり複雑でリフトも多いし、お互いにポジションを交換したり、古典バレエを逸脱したような表現も多い。

ルンキナとエヴァンは、今まで共演を重ねてきていることもあり、お互いに信頼関係が築かれていて、振付の意味を理解ししっかりと踊りこんでいるのがよくわかる舞台だった。演技もしっくりと組みあって同じテンションで進んでいくから、物語がすっと入っていく。エヴァンはどちらかといえば貴公子タイプのダンサーではあるけれども、音楽性に優れた小気味の良い動き、快活さなど、動きでロミオの疾走感や若々しさを出すことができていたし、マキューシオ、ベンヴォーリオとの絡みも楽し気で仲の良さが感じられた。シュツットガルトでクランコ版のロミオを演じた時よりも、この役に合っていると感じた。

この二人の、台詞が可視化されていくように紡ぎだすドラマには、毎回目が離せないし、これからも共演を重ねていければいいと思った。お互いの良い部分を引き出しあうことができるパートナーシップだ。(ただし、バルコニーシーンの最初で、ジュリエットが投げた花をロミオが投げ返すシーンを2回も失敗してしまったのは、ちょっと間抜けだったが)一般公開の公演では、このペアによる「ロミオとジュリエット」が1回だけだったのは非常にもったいない。カーテンコールでの、役に入り切ったままお互いを慈しみあうような表情には忘れがたいものがあった。特にルンキナが、カーテンコールの時でも少女のような愛らしく初々しい表情だったことに驚かされた。

マキューシオのジャック・バーティンショーは、別キャストのスカイラー・キャンベルよりもさらに剽軽で軽やかで愛すべきキャラクターを好演。ダンスもキレがあった。ベンヴォーリオのディラン・ティダルディも、テクニックの見事さには定評のあるダンサーだ。ただ、二人ともあまり大きくないので、背の高いエヴァンを二人でリフトするところは少しぐらついたところがあった。

この日のカーニバルダンスには、ローリーナス・ヴェーヤーリスが登場。入団一年目とは思えない、華やかで魅力的なダンスを繰り広げた。佐藤航太さんも、群舞の中でひときわ魅力的で明るいキャラクター、胸のすくような踊りを見せてくれた。男性群舞が物語の通奏低音として機能しているこの「ロミオとジュリエット」は、現代的でスピーディーで楽しい作品に仕上がっているし、それでいて最後の両家の和解で終わる幕切れには、初演のラヴロフスキー版へのオマージュを感じさせるゆかしさもある。マクミラン版やクランコ版を乗り越えるのは難しいが、それとは違った魅力があるのは間違いない。

Resize0788


« オーレリー・デュポンさよなら公演「マノン」が4/24プレミアムシアターで放映/DVD発売 | トップページ | 3/27 YUKIO SUZUKI Projects【warp mania #1】 »

バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

naomiさん、こんにちは。

ナショナル・オブ・バレエ・カナダがシリアの難民のためにバレエという芸術を見てもらう事、素晴らしい取り組みだと思いました。今、アメリカの大統領選挙でもあるように同じ人間として生きる難民を快く受け入れる人がこの世界で少ないのは事実です。
でもカナダで過ごす難民の人々がバレエを見て、生きる勇気をもたらすことが出来たことは大変素晴らしいことだと感じました。
今の日本は、何をしているのでしょうか?難民として苦しんでいる人が同じ世界に沢山いるのに<遠い>という理由で自分の国の発展ばかりに注目している気がします。また難民を受け入れても長い時間は申請が認められず、働けません。日本は先進国なわけですからもっともっと難民の苦しみに耳を傾ける事が必要だと改めて感じました。

今の私はこの日本を変えていくことが出来ません。そして将来も政治の世界では無く、バレエの世界で生きていきたいと思っています。バレエはとても華やかな世界ですが、オードリー・ヘップバーンやダイアナ姫のように貧しい人たちの事も忘れないようにしたいです。

話が大きくそれましたが、ルンキナ、カナダで再びバレエを続けることが出来て良かったと思います。この前、日本に来日した時見に行きましたが、昔と変わらずしなやかな腕の使い方、豊かな表現力がとても魅力的でした。周りの人と一緒に踊っていても一際違いました。
これからもナショナル・オブ・バレエ・カナダで活躍していってほしいですね!

k.jさん、こんにちは。

カナダは、新しい首相が非常にリベラルな考えの持ち主で、難民の受け入れにも積極的なのですよね。実際トロントは、本当に多民族が共存しているダイバーシティが進んだ都市で、特に自分と同じような東洋系の人を多く見かけます。
そして、遠い国まで戦禍を逃れて来た難民の方たちも、ホテルや施設の部屋で何もしないでいるのはストレスがたまることでしょうね。新しい国の文化に親しみつつ、芸術で心を癒すことは生きていくうえでも大切なことですよね。

k.jさんもお若いのに、このように真剣に世界のことを考えていて素晴らしいです。もっとこういう若い人が日本にも増えればいいんでしょうけどね。もちろん、難民を迎えるといろいろと摩擦が起きることもあるでしょうが、その国にとどまっていたら死んでしまうような人たちを追い返すのは酷ですしね。芸術を通して、いろんな視野を広げることはできると思うし、芸術による世界平和や、芸術を通した国際交流によって世界が結ばれるということもあります。

ルンキナさんは、カナダで本当に生き生きと頑張っているようです。いろいろあってこっちに移ってきたわけですが、彼女は現代作品も非常に素晴らしいし、ジュリエットをほとんど踊ったことがないと聞いてびっくりしたのですが、こうやって新境地を開くことができたわけですしね。牧阿佐美バレエ団での「白鳥の湖」、私も観に行ったのですが、素晴らしかったですよね。本当に彼女は表現力が豊かで美しく、今は円熟期のバレリーナだと思うし、バレエ団の若いダンサーにも非常に良い影響を与えているようです。いつかこのバレエ団の来日公演が実現すると良いのですが。(日本人団員もたくさん活躍しているし)

Noamiさま、
新米バレエファンです。
以前からこのサイト拝見させていただいておりました。
Naomiさんの知識の豊富さに本当に感嘆いたしております。
今回のNational Ballet of Canadaの『Romeo&Juliet』の記事大変勉強になりました。
Naomiさんはカナダ在住なのでしょうか?日本での公演もたくさんご覧になっていらっしゃるようですし、世界中のバレエ公演について精通されていて本当にすごいです。
私は『Romeo&Juliet』19日の公演を観てきました。すごく良かったです。
Naomiさんの記事を読み今までの違いとか奥深いところまでわかりますますバレエの魅力に惹かれています。
ありがとうございます。
たくさんたくさんお聞きしたいことがあります。
これからもいろいろ教えてください。よろしくお願いいたします。

momofukuさん、こんにちは。サンクトペテルブルグに行っていて、お返事が遅くなりました。

私は東京在住ですよ~。最近割とトロントに行ったりすることが多いのですが(笑)。19日は昼の公演でしたか?それとも夜ですか?私は昼公演の方に行ったのですが、ライム病という難病で2年間踊れなかったブレンダン・セイが復帰していて、とても良い公演でしたね。チェルシーのジュリエットも可愛かったです。
momofukuってシャングリラ・ホテルの下にあるラーメン屋さんの名前ですよね?何回か行ったことがあります!これからもどうぞよろしくお願いいたしますね♪

Naomiさま、
お返事ありがとうございます。
マリインスキー国際フェスティバルをご覧になっていたのですね。本当に羨ましいです。
私の夢はいつかボリショイやマリインスキーを生で見ることです。
もしカナダツアーがあるという情報があったら是非教えてください。(本当は現地で見たいと思っているのですが勇気がなくて)
『Romeo&Juliet』の公演は私は19日の夜の公演を観てきました。Elena Lobsanovaさんもとても可愛かったです。
次回は同じ演目で違うプリマの公演も観てみようと思いました。
ひとつ教えていただきたいのですが、キャストの発表は公演の2週間ほど前と聞いたのですが、その場合好きなプリマの公演を観るのは運に頼るしかないのでしょうか?それともいい席は望めなくてもキャスト発表まで待ったほうがいいのでしょうか?
本当に新米ファンでこんな質問をしてすみません。

momofukuさん、こんにちは。

ボリショイ、マリインスキーは数年に1回くらいはトロントに来ているみたいなのですが、いつも「白鳥の湖」ばかりだという話です。あったらお知らせしますね。

エレーナ・ロブサノワはとても可愛らしくて、しかもテクニックのあるロシア人若手プリンシパルですよね。今回残念ながら観られなかったのですが、若手では一押しだと思います。

キャストの発表は毎回遅いですよね…。「くるみ割り人形」以外は売り切れることはほとんどないので、原則キャストが発表されるまでチケットを買うのは待った方がいいと思います。キャスト発表されてからでも十分良い席は残っています。バレエ団のTwitterなどを見ていると、時々ディスカウントも出ているし、あと、当日チケットが残っていたらラッシュチケットといって、朝11時より60カナダドルで売り出して運が良ければオーケストラ席でも観られるのでお得です。やはりここのバレエ団だったら、ルンキナ、ドロニナがトップでしょうね。エレーナちゃんも良いですが!

Naomiさま

早々にお返事ありがとうございます。
Naomiさん、すごいです!!!すごく勉強になります。
本当にありがとうございます。
Naomiさんのブログをもう一度バックナンバーの最初から見て知識を深めようと思います。

またいろいろ質問してまうかもしれませんがよろしくお願いいたします。

明日はボリショイシネマの『ドン・キホーテ』上映です。見に行ってきますね。楽しみです。
いつかNaomiさんのように本場で見られるといいのですが。

本当にありがとうございました。

momofukuさん、こんにちは。

ブログの最初の方の記事ってあまり知識がない時に書いたので結構恥ずかしいです(^^;)

ボリショイのシネマ、日本での上映はライブではなくて4月20日ですが、これは必見だと思って観に行こうと思っています。楽しみにしています。マリインスキーはチケットも比較的取りやすいし、サンクトペテルブルグは西欧的で旅行しやすいのですが、ボリショイはちょっとチケットを取るのも大変だし値段も高いんですよね~。モスクワはサンクトペテルブルグに比べれば若干敷居も高い感じがします。

また私でわかることがあれば遠慮なくご質問くださいね!

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« オーレリー・デュポンさよなら公演「マノン」が4/24プレミアムシアターで放映/DVD発売 | トップページ | 3/27 YUKIO SUZUKI Projects【warp mania #1】 »