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2016/03/25

3/18 ナショナル・バレエ・オブ・カナダ「ロミオとジュリエット」

ナショナル・バレエ・オブ・カナダは、以前はクランコ版の「ロミオとジュリエット」を上演していたが、2011年にアレクセイ・ラトマンスキーに依頼して新しい「ロミオとジュリエット」を制作。従来のクランコ版を愛してきたファンからは批判もあったものの、レパートリーに定着し、ロンドン公演などでも上演されている。

Choreography: Alexei Ratmansky 振付:アレクセイ・ラトマンスキー
Music: Sergei Prokofiev 音楽: セルゲイ・プロコフィエフ
Set, Costume and Properties Design: Richard Hudson
Lighting Design: Jennifer Tipton

Juliet Sonia Rodriguez ジュリエット: ソニア・ロドリゲス
Romeo Naoya Ebe  ロミオ:江部直哉
Mercutio Skylar Campbell  マキューシオ: スカイラー・キャンベル
Tybalt Jonathan Renna  ティボルト: ジョナサン・レンナ
Paris Ben Rudisin* パリス: ベン・ルディシン
Benvolio Robert Stephen ベンヴォーリオ : ロバート・スティーヴン

ラトマンスキー版の「ロミオとジュリエット」は、日本にいる観客がよく観ているマクミラン版やクランコ版の「ロミオとジュリエット」とはかなり違う。最大の違いは、マイムを最小限に抑えて、物語をすべてダンスで語らせるというところだ。ロミオもジュリエットも、そしてティボルトやパリス、ジュリエットの父まで皆よく踊る。ソードファイトの場面も、単にフェンシングをするだけではなく、ダンスとして振付けられていて、剣を振り回しながらも回転やジュッテなどのテクニックを盛り込んでいる。ジュリエットとロミオの出会いのシーンでは、二人はマキューシオやパリスらに高々とリフトされるし、ジュリエットがパリスとの結婚を迫る両親に抵抗したり、毒薬を飲む決意を行う決心などの心理描写までもが踊りで表現される。このあたりが、あまりにも動きが多くて余韻が少ないと感じられて好き嫌いが出るところだろう。ジュリエットが決意を固めるところの、延々と音楽を聴きながらベッドの上で微動だにしないシーンが好きな人も多いはずだ。

特に特徴的なのはバルコニーのシーンで、ラトマンスキーの振付に特有の、オフバランスやお互いの間をぐるぐる回ったり、床に転がったりする振付が多用されている。フィギュアスケートのペアダンス的なところもあるし、脚をターンインさせるなど、クラシックバレエというより、よりコンテンポラリー的な要素もある。リフトがとても多いところはマクミラン版などとは共通しているとはいえ、余白が少ないので情緒に欠けるように感じられてしまう。その代わり、若い二人の迸るような情熱やスピード感がある。最初に観たときにはあまり感動はなかったけれども、何回かリピートしていくうちに、こういうのもありと感じるようになった。

ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオのトリオでの踊りが、とても見ごたえがある。キャピュレット家の舞踏会の前の踊りだ。男性同士のリフトなどもたくさん登場して、仲の良さが強調される。ここでのマキューシオは、他の版以上にたくさん踊るし非常にコミカルなキャラクターだ。彼のすばしっこい踊りは、敵であるキャピュレット家の面々ですら拍手をさせるほどである。それだけに、彼の死のシーンは痛ましい。この日のマーキューシオは、金髪巻き毛の美青年スカイラー・キャンベルだったけど、いつものイメージを投げ捨てて、ひょうきんでキュートでキレキレに踊ってくれた。全体的に男性ダンサーがたくさん踊るシーンが多くて、それが、より生き生きとしていてフレッシュな印象を与えた。日本とリトアニアのハーフであるローリーナス・ヴェヤリーズさん、そして佐藤航太さんの二人が群舞の目立つ位置にあって大活躍していた。佐藤さんは、2幕のカーニバルダンスのソリストとしても登場して、客席を沸かせていた。群舞男性がみんなおかっぱのカツラだったのには、見慣れるのに時間がかかってしまったが。

演出的に、わかりやすさを高める工夫はいろいろとあって、ジュリエットがローレンス神父のところに相談する時には、紗幕の向こうで、ジュリエットの影とロミオを登場させ、薬を飲む作戦とその成功が具体的に表現される。ジュリエットが薬を飲んだ後、追放されたロミオがジュリエットを探し求める様子は、彼が大勢の男性ダンサーたちにリフトされては前へと投げ飛ばされていく動作で表現されていた。ロミオがティボルトを殺してしまった後、一瞬ジュリエットの姿がリフトされながら舞台を横切って去っていく演出もあり、彼女との別れを暗示している。

ラトマンスキーが、古巣ボリショイで踊られてきたラヴロフスキー版に影響されていたと感じたのは、最後のシーン。ジュリエットの死を嘆く友人たちやパリスの姿はなく、墓所に行くともうロミオは横たわるジュリエットを見つけている。死体ダンスはなく、ロミオはソロを踊った後ジュリエットの横で毒薬を飲む、とその時ジュリエットは意識を取り戻し、二人は短い間だけ再会して歓喜の踊りを踊るものの、毒が回ってロミオは死んでしまい、ジュリエットが後を追う。音楽の使い方が少し変わっていて、二人の死はあっけない。二人が死んでいるのを両家の人々(ベンヴォーリオやローレンス神父も)が見つけ、そこで和解したところで幕を迎える。若い恋人たちの死よりも、彼らの死をもたらした対立の大きさということが大きな悲劇として表現されていた。

さて、この日のロミオ役は、日本人プリンシパルの江部直哉さん。初演の2011年の時にも、彼はロミオ役を踊っていた。すらりとしていて長い脚、美しいプロポーションの持ち主で二枚目、アルブレヒトなど貴公子も良く似合う彼だが、この日はまっすぐで情熱的なロミオを熱演。ラトマンスキーの振付は、踊れる人でないと見栄えしないし、だからといって、ダンスのテクニックがあるだけでも伝わってくるものは少ない。一つ一つの動きの意味を理解し、そこから何を伝えるかということが大切だ。江部さんは、まず何よりもテクニックに優れていて、音楽性も豊かで、一つ一つの動きに切れがあって美しいし、つま先もよく伸びていてきれい。かつてはパートナーリングが少し苦手かと思わせる時もあったのだが、今回はジュリエット役が、ベテランやはり技術に優れているソニア・ロドリゲスが相手だったため、こちらもスムーズだった。清潔感、純粋さを感じさせつつもロマンティックさもあって、素敵だった。日本人男性がこの大きなカンパニーで、ロミオ役をこんなにも見事に踊って、胸が熱くなった。

ジュリエットのソニア・ロドリゲスは入団26年目というベテランだが、小柄で華奢、演技力も達者で(この前のプログラム、「ラ・シルフィード」ではシルフィードとマッジの二役を演じていた)愛らしいジュリエットを好演。彼女の心の揺らぎ、恋する気持ちから決意、そして悲劇へと突き進む姿も生き生きと描かれていた。特にジュリエット役は3幕など、他の版よりもずっと踊りながら演じる場面が多くて大変な役なのだが、ロドリゲスは強靭なのに少女らしさも忘れさせなくて名人芸だった。そろそろ引退も、という噂もあるのだが(彼女の夫君は、フィギュアスケート界の大スター、カート・ブラウニングで、ふたりの息子さんも子役として「くるみ割り人形」や「冬物語」で活躍)、ソリストの女性がこのバレエ団はまだ十分育っていないので、まだまだ踊り続けてほしいもの。

舞台装置は、ヴェローナの街並などは非常にシンプルであまりに簡素すぎると感じたが、キャピュレット家の舞踏会はそれなりに豪華。ジュリエットの寝室などはドレープをうまく使っていた。クランコ版やマクミラン版のように長年踊りつづけられてきた名作とは、全く違った味わいの作品ではあるが、現代的なスピード感のあるロミオとジュリエットとして、こういう作品があっても良いと感じた。とにかくこの日は、主演の二人が素晴らしかったので、非常に楽しめた公演であった。江部さんは、もっと日本でも知られるべき、美しい男性プリンシパルダンサーだ。日本で彼の踊る機会があれば良いのだけど。

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