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« 12/14 パリ・オペラ座バレエ「ラ・バヤデール」 | トップページ | 2/27 新国立劇場バレエ研修所 「エトワールへの道程2016」 »

2016/02/27

「Maiko ふたたびの白鳥」

ノルウェー国立バレエのプリンシパル、西野麻衣子さんが、子供を出産、「白鳥の湖」を踊って再びプリンシパルとして復帰しようとする姿を映したドキュメンタリー映画「Maikoマイコ ふたたびの白鳥」(オセ・スベンハイム・ドリブネス監督)。

http://www.maiko-movie.com/

一人のバレリーナが妊娠出産を経て舞台に復帰する模様を丁寧に追っていると同時に、バレエ団の裏側、バレエ団ではどのように仕事が動いているかも見せてくれるので、大変面白いドキュメンタリーだった。西野麻衣子さんが、バレリーナである以前に、大変魅力的な人物であることも伝わってきた。

西野麻衣子さんは、子どもの時に決めた「プリマ・バレリーナになる」という夢を、大変な努力を通して貫いた、意思が強くて頑張り屋さん。だけど結構人間的なところがあって不安を感じたり弱音を吐いたりすることもある。それでも、留学費用のために大変な犠牲を払った両親、キャリアウーマンとして子供3人を育て上げた難波のおかんの背中を見て育ち彼女のようになりたいと見習い、叱咤激励されて頑張る。強いけど人情派のお母さんの娘だな、と感じた。Skypeで大阪弁でやり取りする様子は、どこにでもいる普通の親子のようでもある。出産を一緒に頑張ろうと育児休暇を取った夫君のニコライさん。愛情あふれる家族に恵まれたというのは大きい。同僚の皆さんもライバルだったりするけど、復帰そして成功を称え合ったり、みんな暖かく優しい。その周りに西野さんが感謝している様子も伺えて、グランフェッテが本番で成功した時には思わず胸が熱くなった。

Maiko_nishino_1_2

新しい芸術監督イングリッド・ロレンツェンが就任するにあたり、「皆さん全員を喜ばせることはできません、泣いてもらう方もいると思います」、と最初にガツンと言ったのは結構強烈だった。芸術監督に気に入られるかどうかが露骨にキャスティングに現れているのは、実際見てきただけに、正直なのかもしれないのだが。しかし女性である芸術監督は、西野さんに対しては厳しいことも言うけれども、暖かい目で見守っていた。妊娠したからといって降板させたりはせず、キャスト発表されているから、イースターまでは予定通りに出演してもらうわね、と。

来季に向けての面談でいろんな振付家の名前が出てくるのも、馴染みのないバレエ団なだけに面白かった。(シュツットガルト・バレエのプリンシパルだったダグラス・リーの作品やってるんだ、とか、NDT芸術監督ポール・ライトフットとソル・レオンの作品とか。劇中出てきた「火の鳥」、エンドクレジットを見たらリアム・スカーレットの振付だった。このバレエ団はレパートリーが大変興味深いもので、古典からドラマティックバレエ、そして現代作品まで幅広く、振付家も注目される人たちの作品を起用。西野さんの次の舞台は、「アンナ・カレーニナ」。これを振付けたのが、現チューリッヒ・バレエの芸術監督クリスチャン・シュプック。これはぜひ観てみたい作品だ。

Maiko_nishino_2_2

西野さんが復帰に当たって芸術監督と行う面談の様子も大変興味深かった。「復帰がうまくいくかどうかわからないから代役立てるわよ、才能のある若い子達にも機会を与えないとね」と芸術監督に言われてしまう。バレエって残酷な芸術で、西野さんが産休を取っている間は他のダンサーにとってはチャンスだとも言われる。妊娠のために踊ることが叶わなかった「火の鳥」には、代役にヒューストン・バレエからゲストが呼ばれ、その舞台を西野さんは客席から観ることになる。復帰の演目に選んだ「白鳥の湖」、ゲネプロで全然グランフェッテが決まらないところは、彼女にとっては針の筵の心境だったと思われる。しっかり本番では決めた西野さんも凄いけど、上手くいかなくても「本番はうまくいくわ」と任せた芸術監督も素晴らしい。

西野さんは、中学の時から講習会でスイスに行き、海外でバレエダンサーになることを早くから決意していた。福祉が発達した北欧で、41歳の定年までの雇用が保証されているノルウェー国立バレエ。バレエ団の知名度よりも、生活環境や待遇がよくてしっかりバレエに取り組めるバレエ団を選んだとのことだが、非常に賢明な選択だと感じられた。ヨーロッパのバレエ団のプリマとして活躍できる長身と長い手足、ロイヤル・バレエスクールで学んだドラマティック・バレエの基礎があったことも幸いしたことだろう。

この映画の中でも、バレエ団は西野さんの出産に対して理解があり、身体面でも様々なサポートがあると感じられたが、今では、海外の多くのバレエ団で出産後もプロのバレリーナを続けるのが当たり前になっている。たとえばナショナル・バレエ・オブ・カナダでは、一番若手のプリンシパルを除いて、女性プリンシパルは全員子どもがいる。クラスレッスンに行けば、ここは保育園かと思うくらい多くの子どもたちがスタジオでママのレッスンを見ている。パリ・オペラ座やマリインスキー・バレエも、ママさんバレリーナが多い。それを考えると、まだまだ日本のバレエ界は、出産しても続けているダンサーは少ないと感じる。これが変わっていけばいいのに、と切に思う。それもあって、優秀な日本人バレリーナは海外に流出するのだから。もちろん、日本の社会全体も、もっと女性が働きながら子供を産み育てやすい社会になってほしい。

西野麻衣子さんの白鳥の湖

西野さんが「マノン」をリハーサルする映像

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コメント

naomiさんこんにちは、

西野さんのことはテレビ番組でも見ました。
テレビでは日本語も喋っていて、僕と同様全くの大阪弁でした(笑い)。
今の大阪の子供たちは、イントネーションがどんどん変化しています。
将来西野さんの子供さんが日本語を喋るときは30年前の大阪弁が
そのまま残るのでしょうかねえ?

ノルウェーの《白鳥の湖》をご紹介いただいてありがとうございました。
世界中にはいろいろな白鳥がありますが、未知の作品に触れること
が出来るのはたいへん嬉しい。それを可能にすることが出来る
naomiさんの広範な知識とご努力がこのブログの強みなんでしょう。
有り難いことです。

個々の舞台装置は素晴らしいですね。2,4幕の違いは初演の時の
版画の影響か・・・。1幕に湖があるのはブルメイステル版の影響?
悪魔もブルメイステル版的ですよね。

特筆すべきは、照明の素晴らしさ。幕切れの白鳥たちの後ろで
朝日に照らされながら滅びていく悪魔の姿は、まさにチャイコフスキー
の音楽にぴったりだと感じました。

やすのぶさん、こんにちは。

ノルウェー国立バレエでは白鳥といえば古典の白鳥というよりは、実はアレクサンドル・エクマンの奇抜な「A Swan Lake」の方が今は有名な作品かもしれません。

古典版の方は、セルゲイエフ版をベースにした、アンナ・マリー・ホームズ版を上演しているとのことです。彼女の「ライモンダ」や「海賊」はABTで(「海賊」はENBでも)上演されています。アンナ・マリー・ホームズはキーロフで踊った初めてのアメリカ人バレリーナなので、ロシアバレエのエキスパートとして知られています。ボストン・バレエの芸術監督だったこともありますね。

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