12/14 パリ・オペラ座バレエ「ラ・バヤデール」
オペラ座での「ラ・バヤデール」2回目。マチアス・エイマンが怪我のために降板し、急遽、本来はソロル役は代役でキャスティングされていなかったユーゴ・マルシャンが踊ることになった。
「ラ・バヤデール」La Bayadere
https://www.operadeparis.fr/saison-15-16/ballet/la-bayadere
Nikiya Dorothée Gilbert ニキヤ:ドロテ・ジルベール
Solor Hugo Marchand ソロル:ユーゴ・マルシャン
Gamzatti Marion Barbeau ガムザッティ:マリオン・バルボー
The Golden Idol Fabien Revillion ブロンズ・アイドル ファビアン・レヴィヨン
The Slave Yann Saïz 奴隷: ヤン・サイズ
Manou Lucie Clement マヌー: ルーシー・クレメント
the Fakir Hugo Vigliotti 苦行僧 : ユーゴ・ヴグリオッティ
the Rajah Pascal Aubin ラジャ : パスカル・オーバン
The Great Brahmin Guillaume Charlot 大僧正 : ギョーム・シャルロ
The Soloist Indian Roxane Stojanov インドの踊り : ロクサーヌ・ストジャノフ
The Indian Soloist Yann Chailloux インドの踊り : ヤン・シャイヨー
1st Variation Hannah O'Neill 第一ヴァリエーション : オニール八菜
2nd Variation Aubane Philbert 第二ヴァリエーション : オーバーヌ・フィベール
3rd Variation Valentine Colasante 第三ヴァリエーション : ヴァランティーヌ・コラサント
Pas D'Action パ・ダクシオン
Charline Gizendanner, Eleonore Guérineau, Silvia Saint-Martin, Juliane Mathis, Mickaël Lafon, Jeremy-Loup Quer,
Fanny Gorse, Ida Viikinkoski, Marie-Solene Boulet, Sophie Mayoux, Caroline Osmont
この日、急遽ソロル役に抜擢されたユーゴ・マルシャン。聞くところによると、本当に急に決まったとのことでリハーサル期間も数日しかなかったようだが、落ち着いており、非常に良いデビューを飾ることができたと感じた。マルシャンはどちらかといえば貴公子タイプで、ソロルの戦士的な要素はあまりないのだが、端正で正確なクラシックのテクニックを持っている。
なんといってもマルシャンは、脚やつま先が圧倒的に美しく、脚の運び方も正確でエレガント。跳躍も軽やかで高く、胸のすくようなパフォーマンスを見せてくれたし、影の王国コーダのドゥーブル・アッサンブレも決まった。これだけ美しい男性ダンサーはそうそういない。合わせる時間が十分なかったためか、パートナーリングのところで少しだけ、スムーズにはいかないところもあったが、それはその後の公演では改善されたとのこと。一瞬の欲とガムザッティの美しさに目が眩んでニキヤを裏切ってしまった男の後悔ぶりもたっぷりと見せてくれた。見栄えする容姿の持ち主でもあり、近いうちにエトワールに昇格するのは間違いないことだろう。
ドロテ・ジルベールは、今まではガムザッティを踊っており、今シーズンが初めてのニキヤ役への挑戦。ニキヤの心のうちに秘めた情熱、強さを体現しつつもたおやかさも表現できており、技術だけでなく、抒情性も身につけていた。ニキヤの苦しみ、悲しみ、強い想いがしっかりと踊りの中からにじみ出ていて、花籠の踊りには恋人に裏切られた女性の心の襞を細やかにのぞかせて圧倒的に魅せてくれた。影の王国の難しいヴェールの踊りでも回転は完璧に踊り切った。初役のマルシャンを的確にリードしていたのも素晴らしい。
ただ、気になるのは、彼女が非常に痩せていたこと。腕が細くなりすぎて肘などが目立ち、2幕ではセパレーツの衣装でお腹を出しているのだけどあまりの細さに思わず心配してしまうほどった。基本的に彼女はテクニックが強く、この日もミスはほとんどなくて素晴らしかったのだけど、筋力が少し弱くなってしまったのか、跳躍があまり大きく跳べなくなってしまっていた。オペラ座を代表するエトワールとなり、魅力的なダンサーなだけに、彼女の健康面が気になってしまう。
ガムザッティ役は、12日のヴィキンコスキに引き続き、11月の昇進試験でスジェに昇格することが決まっているマリオン・バルボー。美貌のダンサーで、フランス的なきれいなアカデミックな踊りをするけれども、非常に技術が強いわけではない。ただ、演技力は優れていてガムザッティの傲慢さ、強さは良く表現されており、ニキヤと対峙するシーンも迫力があった。でもやはりガムザッティ役って、コリフェではなくてエトワールのダンサーに踊ってほしいものだと思う。
ブロンズ・アイドルにはファビアン・レヴィヨン。前回のエマニュエル・ティボーと違って、あまり全身を金色に塗っていない。若い分、跳躍などはもっと大きいし彼もきれいなダンサーなのだけど、仏像らしさでいえばベテランのティボーに軍配が上がる。
マヌーの踊りには子役が2名出演する。オペラ座学校の子役たちの名前はキャスト表には載らないのだが、2名のうち一人は日仏ハーフの女の子だったようだ。
第一ヴァリエーションにオニール八菜さん。プロポーションが美しく技術的にも確実な彼女の踊りは見ごたえもあるし目を引きつけるスター性、風格もある。ただ、オペラ座のファンや批評家に言わせると、トレーニングの違いにより、彼女はエポールマンがややフラットなので、踊りからにじみ出てくる情感というか表現が足りないのだそうだ。私はそれほどフランス流に詳しくないので、あまりそのようには感じなかったのだが。オニールさんは、もちろんエトワールが十分狙える位置にあり、テクニックもあれば華やかさもあるので、後はうるさ型のファンや評論家を納得させるような表現力やフランスバレエらしさをどうやって身につけていくかが課題となっていくのだろう。マリインスキー国際フェスティバルにもガムザッティ役でゲスト出演する彼女の、今後一層の飛躍が楽しみだ。
影の王国はこの日もきれいに揃っていた。前回(12日)にニキヤ役を踊っていたエロイーズ・ブルドン、ガムザッティ役のイダ・ヴィキンコスキも影の王国の群舞の中にいた。主役を踊りながら別の日に群舞を踊るのはなかなかキツイだろうなと感じた。この数日後には、マリインスキー・バレエからクリスティーナ・シャプラン、キミン・キムを迎えた「ラ・バヤデール」で、ブルドンはガムザッティ役を演じることになっていた。彼女には本当に頑張ってほしいものだと思った。
ユーゴ・マルシャンの鮮やかなソロル・デビューを観ることができた幸運もあり、充実した公演だった。エトワール・ガラ2016で彼の踊りを観るのが楽しみ。
« ロイヤル・バレエのプリンシパル・キャラクター・アーティスト、ジェネシア・ロサートが引退 | トップページ | 「Maiko ふたたびの白鳥」 »
「バレエ公演感想」カテゴリの記事
- KARAS APPARATUS 勅使川原三郎x佐東利穂子「幻想交響曲」(2019.07.19)
- 英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』(2018.01.21)
- 勅使川原三郎 KARAS「イリュミナシオン-ランボーの瞬き- 」(2017.12.09)
「パリ・オペラ座バレエ」カテゴリの記事
- マチュー・ガニオも出演、ソウルでのBallet Gala of ETOILES in Paris 2025公演 7月30日-8月1日開催(2025.06.06)
- 韓国でパリ・オペラ座バレエのエトワールたちの公演、Ballet Gala of Etoiles in Paris 2024開催(2024.06.12)
- パリ・オペラ座バレエ シネマ 2022 「シンデレラ」「プレイ」「ジェローム・ロビンズ・トリビュート」劇場公開(2021.10.30)
- パリ・オペラ座バレエのガラ公演配信中(2021.02.01)
- パリ・オペラ座バレエ、ポール・マルクが『ラ・バヤデール』無観客配信公演でエトワールに任命(2020.12.15)
コメント
« ロイヤル・バレエのプリンシパル・キャラクター・アーティスト、ジェネシア・ロサートが引退 | トップページ | 「Maiko ふたたびの白鳥」 »

























いつも詳細な情報、ありがとうございます。
ユーゴ・マルシャンのソロル、見たかったのですが、日程が合いませんでした(涙)
本当に素敵なダンサーです。
くるみで、彼のドロッセルマイヤー/王子、見る機会がありましたが、
長身で、きれいなラインを持っていますよね。
corps de balletで踊っていても、ダントツ目立つんです。
本当に踊るのが好きでたまらないといった気持ちが伝わってくるから不思議です。
4月のロミジュリ、キャスト変更がないことを祈っています!
投稿: marika | 2016/02/26 19:59
marikaさん、こんにちは。
マルシャンは急きょの代役だったので、なかなかスケジュールも合わせるのが難しかったですよね。でもこれから、彼の踊りを観るチャンス場はたっぷりあると思います。くるみのドロッセルマイヤー&王子もステキだったことでしょうね。本当に彼はエレガントで美しいし、群舞にいても目立つのはわかります。
彼のロミオをご覧になれるのですね!素敵なことでしょうね。予定通り無事観られますように。
投稿: naomi | 2016/02/26 23:59
naomiさん、こんばんは。
パリオペラ座のラ・バヤデール鑑賞第二弾、とても楽しく読ませて頂きました。
ありがとうございました。
ユーゴ・マルシャン♪、とても良かったようで嬉しいです~。
ソロル・デビューをご覧になれて本当に羨ましいです。
マルシャンに資質があってもチャンスがなければ輝けないですし、くるみ割りから始まって
そのチャンスを最大限に全ていかした事も素晴らしいです。
ルグリがドロテをエトワールに導いたように、今度はドロテがマルシャンを導いてくれると信じています。
しかし・・ドロテがまた痩せたのですか~。心配ですね。。
オニール八菜さんについて。
naomiさんがお書きになった事、私の仲良しのパリオペ猛烈ファンのマダムがいつも(日本語で)私に言います。
「オニール八菜は、技術も美貌もスタイルも素晴らしいけれども、内面から湧き出るものが感じられない!」
うるさ型の典型的なフランス人なので、はっきり言われます。。
自分の子供をみるように八菜さんを応援しているので、今後表現力をつけて更に輝いてエトワールを目指してほしいです。
(八菜さんとマルシャンは相性も身長も合うので、将来はペアで来日して是非踊ってほしいです。)
エトワール・ガラ2016でのユーゴ・マルシャン♪の来日、とても楽しみです。
投稿: ますみ | 2016/02/27 23:49
ますみさん、こんにちは。
はい、素晴らしいデビューでした。準備期間がほとんどなかったようなので、この後の公演はもっと素晴らしかったんではないかな、と思います。チャンスに恵まれたのはラッキーですが、資質があったからこそチャンスをものにできたわけですよね。
エトワールが次のエトワールを導く、これはオペラ座の素敵な伝統ですよね。
やはりパリのジモティの皆さんはそうおっしゃっていますか…。私はオニールさんはまだ大きな役では観ていないので、その辺のところは何とも言えませんが、もちろん彼女は持っているものが素晴らしいので、経験を積むことでさらにすごいダンサーになると思っています。自分の子どもを見るように応援、わかります。私も応援しています。まだ彼女は若いですしね。可能性は無限ですよね。
そうそう、八菜さん、マルシャンとは仲も良いようですし、これから一緒に踊る機会沢山あるでしょうし、日本でもこの美しいペアで観たいですよね!
投稿: naomi | 2016/02/28 01:21