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2016/01/20

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2015/16 「ヴィサラ/牧神の午後/チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ/カルメン」

英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2015/16 「ヴィサラ/牧神の午後/チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ/カルメン」が、1月23日(土)より劇場公開されます。

http://roh2015jp.wix.com/cinemaseason

https://www.facebook.com/royaloperahouse.jp/

こちらの試写会に参加させていただいたので、ご報告しますね。

11月12日にロイヤル・オペラハウスで上演されたミックスビルの、映画館中継を劇場で公開するものです。この公演はまた、カルロス・アコスタがロイヤル・バレエのプリンシパルとしての最後の舞台となった公演でもありました。司会進行を務めたダーシー・バッセルが、引退公演を目前に控えたアコスタにインタビューする映像も流れました。ミックスプロを映画館中継するのは、ロイヤル・バレエでは初めてのことだそうです。

アコスタが1998年に入団したときは、凄い人が入ってきたと大評判になってたとダーシーが彼に言います。アコスタは、若いころから「ドン・キホーテ」など高いテクニックを求められる役が得意だったけど、必ずしも似合う役ではなかったり得意だと思われていない作品にも挑戦してきたと語りました。
バレエを始めたきっかけとしては、子供時代にサッカーをやっていてサッカーの方が楽しかったのだけど、バレエは父親にやれと言われて仕方なく始めたとのことです。バレエが自分を救ってくれたと語ってました。自分が夢見ていた以上の素晴らしい人生を送ることができたし、自分のさよなら公演に、まさか自分が振付けた「カルメン」を踊ることになるとは思わなかったよ、とアコスタは笑っていました。


「ヴィサラ」Viscera

本編前の映像で、振付のリアム・スカーレットのインタビュー。「ヴィサラ」とは内臓(guts)のことだそう。3パートに分かれた作品で、真ん中にパ・ド・ドゥがあり、最初と最後は群舞。「コール・ド・バレエというよりは塊として振付けた」とのこと。米国の作曲家、ローウェル・リーバーマンのピアノ協奏曲を使用したもので、2012年にマイアミ・シティ・バレエのために振付けられた。最初と最後のパートは非常に素早く、この素早い音楽を、メーンのラウラ・モレーラが実に見事に精確に、小気味よく踊っている。群舞ではあるものの目立つ場所でソロ・パートもある役に崔由姫さん。パ・ド・ドゥは一転してゆっくりとした曲調で、マリアネラ・ヌニェスと平野亮一さんが踊る。美しくエモーショナルな振付で、平野さんのサポートもとてもスムーズだ。長身の平野さんはここでは非常に魅力的な男性に見える。全編、このピアノコンチェルトに良く沿った実に音楽的な作品で、全体的な群舞のレベルも高く観ていて楽しかった。

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<振付>リアム・スカーレット
<出演>平野亮一/ラウラ・モレーラ/マリアネラ・ヌニェス/崔由姫
Laura Morera, Marianela Nuñez, Ryoichi Hirano
Yuhui Choe, Meaghan Grace Hinkis, Emma Maguire, Alexander Campbell, Tristan Dyer
Olivia Cowley, Elizabeth Harrod, Tierney Heap, Chisato Katsura, Yasmine Naghdi
Nicol Edmonds, Benjamin Ella, Kevin Emerton
Solo piano Robert Clark


「牧神の午後」 Afternoon of a Faun

こちらも本編前の映像で、振付指導のJean-Pierre Frohlich(ジャン=ピエール・フローリッヒ)が登場。NYCBのバレエマスターでロビンス作品の振付指導を行っている彼は、あのイザベル・ゲランの夫君でもある。3面を鏡で囲まれたスタジオが舞台というこの作品、第4の壁面=鏡は観客席。若い女性ダンサーと男性ダンサーは決してお互いを見つめ合わないけど、客席にあるはずの鏡を通してお互いの姿を見ているというのがわかる。

サラ・ラムとワディム・ムンタギロフという美しい二人で、ナルシスティックな視線のこの作品に、これ以上の適役はいないと思うほど。美しい幻のようでうっとりとしてしまう。サラ・ラムの瞳の表現力も素晴らしくて、一瞬だけの、ぞくりとするほどの色香がふっと漂った。

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<振付>ジェローム・ロビンス
<出演>サラ・ラム/ワディム・ムンタギロフ
Sarah Lamb and Vadim Muntagirov


「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」Tchaikovsky pas de deux

おなじみのチャイコフスキー・パ・ド・ドゥ、ダーシー・バッセルも現役時代に踊っていた作品で、軽やかに見えるけど本当に体力を使って大変なのよ、と語っていた。今回のペアは、去年の夏の世界バレエフェスティバルでも、チャイコフスキー・パ・ド・ドゥを踊ったサレンコとマックレー。二人とも技術的には申し分がなく上手いのだけど、どうも音楽性が合っていなくて、スピーディーで軽やか、というよりは少し重たく見えてしまう。サレンコの踊り方がロシア的に溜めを入れるものなので、ますます音に合っていないように見えてしまっているのかもしれない。二人の笑顔もいかにも作り物っぽい。コーダで女性が男性のところに飛び込むところは、バレエフェスの時よりは思い切りよく勢いをつけてやっていたので、ここはとても良かったと思う。

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<振付>ジョージ・バランシン
<出演>ヤーナ・サレンコ/スティーヴン・マックレー
Iana Salenko and Steven McRae


「カルメン」Carmen

カルロス・アコスタが、2013年の「ドン・キホーテ」に続き、振付を手掛けた作品。芸術監督ケヴィン・オヘアのインタビューの中で、「ドン・キホーテ」の初演が成功に終わった時に、アコスタが、今度は「カルメン」を振付けるよ、とオヘアに言ったという。アコスタも振付けるにあたってはいろいろと悩み苦労したと語っていた。しかしながら、こちらの作品、現地の批評家には酷評の嵐だった。やや怖いもの見たさという気持ちで観てみた。

そして、予想以上に突っ込みどころ満載の作品だった。あれもこれも入れたら収拾つかなくなった作品とでもいうべきか。冒頭の男性ダンサーたちのダンスはストリップですか?という失笑もの。ダンサーたちにモノトーンの衣装を着せて、ナハリンの「マイナス16」を思わせるような椅子を使ったダンス、フラメンコ(これはスタイリッシュで単品としては悪くなかった)、ミュージシャンを舞台に上げて演奏させる、オペラ歌手に舞台の上で歌わせる、といったいろんな趣向を凝らしてみたけれど、その結果、何とも統一感というかまとまりのない作品になってしまった。その上、カルメンとホセのパ・ド・ドゥも、カルメンとエスカミーリョのパ・ド・ドゥも振付的にいまひとつで、床の上で転がったり変化に乏しかった。ヌニェスはラテンの女らしい明るく情熱的なカルメンだったけど、キャラクターが明るすぎてファム・ファタルらしさに欠ける。アコスタは不器用なドン・ホセを好演し、ボネッリのエスカミーリョはソロが華やかでセクシーだったが、二人とも衣装が地味であまり冴えない。

失敗作ではあるけど、いろいろな要素を詰め込んでいるので、退屈はしないのが救いである。カルメンの不吉な運命を象徴する牛が登場するのだけど、これがジャミロクワイそっくりでマッチョで笑ってしまった。顔を塗っているのでよくわからなかったのだけど、マシュー・ゴールディングが演じていた。ほとんど踊ることのない役なのに。

「ヴィサラ」「牧神の午後」「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」と非常に洗練された3作品の後だけに、非常に泥臭い作品のように感じられた。バレエというよりはミュージカル的な作品だと感じられたので、いっそのこと、ミュージカル用に作り直した方が良いのかもしれない。


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<振付>カルロス・アコスタ
<出演>
マリアネラ・ヌニェス(カルメン)/カルロス・アコスタ(ドン・ホセ)
フェデリコ・ボネッリ(エスカミーリョ)
Carmen Marianela Nuñez
Don José Carlos Acosta
Escamillo Federico Bonelli
Fate Matthew Golding
Zuñiga Thomas Whitehead
Remendado Valentino Zucchetti
Dancaïre Tomas Mock
Frasquita Kristen McNally
Mercedes Lara Turk
Artists of The Royal Ballet
Fortune-Teller Fiona Kimm (Mezzo-soprano)
Royal Opera Extra Chorus

アコスタのフェアウェル公演なので、盛大なカーテンコールとなった。最初の幕前カーテンコールから客席より赤いガーベラの花が降り注ぎ(中にはアコスタを直撃する花も)、再びカーテンが開くと、通常のカーテンコールに続き、ケヴィン・オヘアや今度は出演していない団員らも舞台に。彼の小さな可愛い娘さんも出てきた。アコスタはダンサー仲間や観客だけでなく、カーテンの陰やオフィスにいるスタッフにも感謝の弁を述べた。あなた方のおかげだ、と。彼を入団させたアンソニー・ダウエル、そしてモニカ・メイソンにも。ケヴィン・オヘアは、彼はプリンシパルとしては引退するけれども、指導者としてロイヤル・バレエには帰ってきてもらうからと述べた。

そしてアコスタは、共演したバレリーナたちにも名前を挙げての謝辞を続けた。その中にはタマラ・ロホ、リアン・ベンジャミン、サラ・ラムらとともに吉田都さんの名前も。そして若い人たちにアドバイスしたい、と語った。「失敗を恐れるな、失敗というのは存在しない」と。カルメンが失敗作と言われているので、ちょっとだけ皮肉ではあるのだけど、でもアコスタの人柄の良さが伝わる温かいフェアウェルで、胸がじーんときた。

*******

ミックスプロのプログラムを映画館で上映するというのは珍しい機会だけど、多彩な作品を観ることができて非常に楽しい。最後にアコスタのフェアウェルの様子を見ることもできたのもとても良かった。臨場感のある映画館でのバレエ鑑賞は、生には及ばないまでも、それに近い体験をすることができるのでお勧めです。

上映時間:約3時間23分
上映劇場:TOHOシネマズ日本橋、TOHOシネマズららぽーと横浜、お台場シネマメディアージュTOHOシネマズ名古屋ベイシティ 大阪ステーションシティシネマ ほか
1月23日(土)より一週間限定公開

TOHOシネマズ日本橋  14:55-18:30。
TOHOシネマズららぽーと横浜  12:40-16:10、プレミアスクリーン。
お台場シネマメディアージュ 土日が16:20-19:55、平日 19:00-22:35。

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