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2015/12/20

12/17 シルヴィ・ギエム「ライフ・イン・プログレス」

シルヴィ・ギエム「ライフ・イン・プログレス」

http://www.nbs.or.jp/stages/2015/guillem/

ついに迎えてしまったシルヴィ・ギエムのフェアウェル・ツアー。12月30日のファイナル公演もあるとはいえ、この公演こそが、彼女の伝えたかったものなのだろうなと感じながらの鑑賞となった。引退ツアーであるにもかかわらず、ここで彼女が踊る3作品のうち2つは新作。最後の最後まで前に進んでいき、新しいものを貪欲に吸収して最高のものを見せてくれた、彼女らしいプログラム。彼女の存在が無ければ、新作の現代作品中心の公演が日本で5回分、完全にソールドアウトとなることもなかっただろう。彼女のおかげでこのプログラムを観ることができたことにも、感謝したい。

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- 東京バレエ団初演 -
イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド
振付:ウィリアム・フォーサイス 音楽:トム・ウィレムス(レスリー・スタックとの共同制作)
演出・照明・衣裳:ウィリアム・フォーサイス 振付指導:キャサリン・ベネッツ

川島麻実子 渡辺理恵 秋元康臣
河合眞理 崔 美実 高橋慈生 伝田陽美 松野乃知 吉川留衣

ギエムの印象の強いこの作品を、東京バレエ団が初めて踊った。なんといっても目を引きつけられたのは、今シーズン入団した秋元さん。古典が上手い人なのはわかっていたけど、このような作品でも、カリスマ性と大胆な動きができて、非常にスタイリッシュ。日本人男性らしからぬ、マスキュランな魅力があった。川島さん、渡辺さんはじめ、みなさんテクニックがあって美しいダンサーばかりだし、正確に踊っているのだけど、フォーサイス特有の粘り気、少し外した音取りや大胆さがもう少しあると、もっとそれらしく見えると感じた。


ドリーム・タイム
振付・演出 :イリ・キリアン 振付助手:エルケ・シェパース 音楽:武満徹 オーケストラのための「夢の時」(1981)
装置デザイン:ジョン・F. マクファーレン 衣裳デザイン:ジョン・F. マクファーレン
照明デザイン:イリ・キリアン(コンセプト)、ヨープ・カボルト(製作) 技術監督、装置・照明改訂:ケース・チェッベス

吉岡美佳 乾 友子 小川ふみ
木村和夫 梅澤紘貴

この作品を観るのは初めてだけど、神事が行われそうな舞台美術も、作品自体も東洋的で美しく、このバレエ団にはよく合っている作品だと感じた。木村、吉岡のベテランペアは、スピリチュアルな世界を表現しているのに適していて眼福。トリオでの踊りを効果的に取り入れていて、厳かで神秘的な雰囲気に包まれた。ラストの、木村さん、梅澤さんが吉岡さんをリフトするところは、緊張感が漂うけど効果的なエンディング。


テクネ
振付:アクラム・カーン
音楽:アリーズ・スルイター(マッシュルーム・ミュージック・パブリッシング/BMGクリサリス、
プラサップ・ラーマチャンドラ、グレイス・サヴェージとの共同制作)
照明デザイン:アダム・カレー、ルーシー・カーター 衣裳デザイン: 中野希美江 リハーサル・ディレクター:ホセ・アグード

シルヴィ・ギエム
パーカッション:プラサップ・ラーマチャンドラ ビートボックス:グレイス・サヴェージ ヴァイオリン、ヴォイス、ラップトップ:アリーズ・スルイター

ここからギエム登場。舞台の真ん中には、銀色の木のような構造物があり、3人のミュージシャンも舞台の後方に。始まりは照明が非常に暗くて、地を這うような動きのギエム。短めの髪のウィッグをかぶってミニ丈のドレスを着ていると、より若く見えて少女のよう。やがて立ち上がったギエムは、木の周りをぐるぐるとシェネしたりいろいろな回転技を見せ、そして自分を解き放つように脚を鋭く振り上げたりする。生の声(ビートボックスと歌声)が響き、内省的でひそやかな小宇宙が展開するなかで、ざわめきのように踊りが響く。ここでもギエムの強靭さや完璧なフォルムが観られるのだけど、技術だけが際立つことはない。


デュオ2015
振付:ウィリアム・フォーサイス 音楽:トム・ウィレムス
照明:タニヤ・リュール ステージング:ブリーゲル・ジョカ、ライリー・ワッツ

ブリーゲル・ジョカ、ライリー・ワッツ

後半で唯一、ギエムが踊らない作品。フォーサイスが96年に振付けた作品を、今回のツアー用に改作。フォーサイス・カンパニーに所属していた二人の男性ダンサー。はじめは無音から始まり、二人が掛け合いのように踊ったり、呼応したりしなかったり、何とも絶妙の距離感を保っている。二人とも非常にしなやかな体の持ち主で、少しゆるい感じの動きが何とも言えず心地よいけど、そう思ったら鋭い瞬間もあり、常に緊張感が漂っていて退屈することがない。そして、ほんの一瞬だけど、黒い服に髪をまとめたギエムが割って入る。


ヒア・アンド・アフター
振付・演出:ラッセル・マリファント
照明デザイン:マイケル・ハルズ 音楽:アンディ・カウトン 衣裳デザイン:スティーヴィー・スチュワート

シルヴィ・ギエム、エマヌエラ・モンタナーリ

ミラノ・スカラ座の女性ダンサー、エマヌエラ・モンタナーリとの共演。同じ衣装に身を包んだ二人は、シンクロするように同じ動きを見せたり、左右対称の動きをしたり、お互いを補完するように動く。ゆっくりと彫刻的な動きから始まるが、非常に速い音楽に合わせて踊るところもあり、同じマリファント振付の「TWO」と同様に、残像を残すような腕の動き、素早いバットマンなども。ゲーム盤のような照明のセッティングはユニークで、ゲームのキャラクターのようにも見える。二人でユニゾンの動きをすると、どうしてもギエムの方が可動域が広くて大きく踊っているのがわかってしまうところもあるが、お互いを引っ張り合ったり、背中を預け合ったり、女性同士の緊張感と同志愛のような関係性が感じられてスリリング。かと思ったら、最後に音楽は思いがけずヨーデルとなって、リラックスした雰囲気にもなるのが面白かった。


バイ
振付:マッツ・エック
音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン ピアノソナタ第32番 Op.111 第2楽章(演奏:イーヴォ・ポゴレリチ)
装置・衣裳デザイン:カトリン・ブランストローム 照明デザイン:エリック・バーグランド 映像:エリアス・ベンクソン
共同プロデュース:ストックホルム・ダンセン・フス

シルヴィ・ギエム

前回も観たこの作品、彼女とのお別れにふさわしい一作だ。12月30日のファイナルも観に行くけど、本当は、この作品で彼女を送り出した方がいいような気がする。扉の映像の中から抜け出してきた、ちょっとあか抜けない服装のギエム。カーディガンと靴、靴下を脱ぎ棄てて、奇妙さを感じさせながらも、未だ衰えない圧倒的な身体能力で美しく伸びやかにグランジュッテしたり、軽やかにパ・ド・シャしたり、素早く回転したり、奔放で見事なんだけど、ちょっとだけ哀しげ。イーヴォ・ポゴレリチによるピアノの録音がまたこれに絶妙に寄り添っている。三点倒立も2回登場する。扉の中からは、彼女の友人や家族と思しき人々が集まってきて、少し心配げに彼女を見守る映像、やがて彼女はこの扉の中へと入っていく。最後にこちらに別れを告げるような、少し寂しげな表情でちらっと見つめながら。本当に胸を締め付けられるような瞬間だ。

今回はオーケストラが入らなかったため、オーケストラピットは板で覆われていて、ギエムはこの覆われた部分のところまで出てきてくれた。すべてをやり切ったような晴れやかな表情には、思わず涙がこぼれてしまう。今でも、ほかの誰よりも踊ることができて、誰よりも先進的でアーティスティックなのに、もう永遠に踊りを観ることができなくなってしまうなんて。でも彼女の晴れやかな表情を見ていると、新しい旅立ちもきっと素晴らしいものになるのだと感じられるし、すべてをやり切った満足感が感じられる。観客への惜しみない愛も伝わってきた。でも、これを書いている今も、思わず涙があふれてきて、寂しくて寂しくて仕方ない。ギエムの大ファンではなかった私なのに、彼女がいない世界があるなんて。本当に彼女は光だった。

もう一度、横浜での最後の公演が観られることを心の支えとしていこう。

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