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« ボリショイ・バレエの芸術監督に、マハール・ワジーエフが就任決定 | トップページ | ミラノ・スカラ座バレエのエトワール・ガラ 10/30ネット中継/追記 »

2015/10/27

「愛と哀しみのボレロ デジタル・リマスター版」首藤康之トークショー

10月17日より11月13日まで、恵比寿ガーデンシネマにて、「愛と哀しみのボレロ デジタル・リマスター版」が公開されています。

http://mermaidfilms.co.jp/bolero/

1981年に製作された『愛と哀しみのボレロ』(クロード・ルルーシュ監督)は、戦争に翻弄され引き裂かれた4組の家族の半世紀を描いた大河ドラマ。ルドルフ・ヌレエフ、エディット・ピアフ、ヘルベルト・フォン・カラヤン、グレン・ミラーという実在の芸術家たちをモチーフにした登場人物たちが、最後にパリのエッフェル塔の下トロカデロ広場に集結する大団円までをドラマティックに描いています。親子を同じ俳優が演じているため、わかりにくくなってしまうところもところどころありますが、ナチス・ドイツのもたらした悲劇の重さが改めて伝わってきました。強制収容所に連行される途中で子供を手放してしまった母親が、戦後もいつまでも子供を探し続ける姿を観ると、胸がつぶれそうな思いがします。

なんといっても圧巻なのが、ジョルジュ・ドンの踊り。あまりにも有名なラストのベジャール振付「ボレロ」ももちろんですが、途中で登場する、パリ・オペラ座という設定の場所でのダンス(明らかにガルニエではありませんが)が凄まじい。力強く、まさに舞踊の神というべき強烈な存在感を見せてくれます。映画の歴史に残るような見事な名作ですが、中でも、このジョルジュ・ドンの鮮烈な踊りを大スクリーンで観るためだけでも、映画館で観る価値のある映画です。

21世紀の今となっても、世界中で紛争が絶えません。また安保法制が可決されてしまった今の情勢においてこの映画を観ることは、非常に重要なことなのではないかと思います。戦争の恐ろしさともたらされる悲劇、平和の尊さについても今一度考えることができました。


さて、公開初日には、首藤康之さんのトークショーがありました。この映画の中の『ボレロ』のシーンを、今までに何千回と見たという首藤さんが、熱く語りつつ、興味深いエピソードをいくつも披露してくれました。

この映画の中でリズムは衣装を着ていますが今は上半身裸、という話から。ベジャールに衣装を依頼された三宅一生さんが、「ダンサーは肉体そのものがいちばん美しい」と言ったことから上半身裸になったそうで、首藤さんも初めてボレロを観たときは着衣だったそうです。

ドンの踊りは性別を超えているという見解は多くの人が持っています。「ドンさんが踊ることによって、性を超えて、男も女も関係ない、人間としての踊りになっていった」と首藤さんも語りましたが、実はベジャールは、リズムを女性ダンサーたちに踊らせようとしたこともあったそうです。それがしっくりいかなかったので、男性のリズムに戻したそうですが、実は私、この映画「愛と哀しみのボレロ」クライマックスでのボレロを観ながら、リズムを女性ダンサーたちが踊ったらそれは面白いだろうな、と感じたのでした。首藤さんも、女性ダンサーたちの中で踊ってみたいと言ってました。「ボレロ」のメロディは男性も女性も踊っていますが、振付を替えずに同じ踊りで男性も女性も踊る作品というのは非常に珍しいと首藤さんは言います。シンプルな形が多いからそれができるのではと。

かつて首藤さんが「M」を踊った時、ベジャールが首藤さんの手を取って、いい手をしているねと話しかけたそうです。手の角度を直角にできるかと首藤さんに聞いたそうです。ボレロが踊れるように直角にできるようにしてくださいと。93年7月にそれを言われ、2か月半必死に練習したとのこと。10月のヨーロッパツアーで初めて踊った時には、ベジャールに、手が直角になっていたねと褒められたそうです。しかしベジャール曰く、ドンはいくら言っても、手を直角にすることができなかったとのことです。「ドンもできなかった」とすごく褒めていただいた、と思い出を語りました。

「ボレロはドンが絶対無二」だと首藤さん。ベジャールはダンサーによって言うことを変えているそうです。たとえばボレロは背の高いダンサーしか踊ってはいけないという暗黙の了解があるのですが、首藤さんは身長173cmと小柄でした。ベジャールは柔軟な考え方の持ち主だったようです。

メロディとリズムの関係も非常に興味深く、リズムがあってのメロディだと首藤さんは考えています。しかし必ずしもアイコンタクトがなくても、リズムとコミュニケーションはとれるし大丈夫だとも。たとえばシルヴィ・ギエムはすごくリズムをよく見ているし目線を送るそうですが。アイコンタクトをしなくても、リズムの空気が伝わってくるし乗せられているのがわかるそうです。ベジャールは、「ずっとそこに立って熱を感じなさい」と言い、スポットライトが当たると熱が走り血液に伝わると言っていたのですが、首藤さんはなかなかその光の熱は感じられなくて、少し苦労したとも。

ベジャールの大半の作品の主題は「愛と死」で、「ボレロ」は「海」がもうひとつの大きなテーマです。初演を踊ったのはデュスカ・シフニオスという女性ダンサー。ベルギー、オステンドの海から彼女が浮かび上がっていくところを見て、ベジャールが「ボレロ」を思いついたそうです。海から出てくる神聖なものを表現したいと。海から生まれて海に還っていくような。

ラヴェルも実は、海沿いでこの曲を作曲したそうです。1930年代に、フランスの避暑地でピアニストにリズムを叩いてもらって作曲したとのことです。ラヴェルとベジャールの逸話もユニークで、一度だけ、モンテカルロのカジノで出会ったそうです。ラヴェルは気難しい人で、会話もほとんどなかったそうですが、ベジャールが「カジノで賭けたことはありますか?」と聞くと、ボレロで儲けたときに一度だけ、とラヴェルは答えたそうです。実は、ボレロという曲名も、当初は「ファンダンゴ」という曲名だったそうですし、「ボレロ」も最初はラヴェルの曲ではなく、映画「日曜日はダメよ」の音楽に振付けたそうですがそれではあまりにも音楽に合いすぎていたので、ラヴェルにしたそうです。

この映画は、第二次世界大戦とその後の激動の時代を描いた作品。バレエも、この映画のように社会的、歴史的なな背景と切っても切り離せません、と首藤さん。ベジャールは、プティパの弟子の人にマルセイユでバレエを習いました。またバランシンとは、スザンヌ・ファレルを通じてつながっています。ベジャールは、女性が踊るボレロの中では、ファレルが踊ったものが最高だったと言っていたそうです。はるか昔の人であっても実は意外に近い存在で、歴史を感じながらバレエを観ていくと面白い。世界が広がっていくのが楽しいし遠いところでこういうつながりがあるとワクワクします、と首藤さんは語りました。

「愛と哀しみのボレロ」はぼくの歴史の教科書のような作品です、と首藤さんは映画に対する思い入れを語りました。最後に一つ思い出として、一つのエピソードを披露しました。「春の祭典」を踊った時、これは鹿の交尾の映画にインスパイアされた作品なのだそうですが、ベジャールは、実際の鹿の交尾を描いた壁画の前で踊ることを考えたそうです。湿度などの関係で、壁画にダメージを与えてしまうためにそれは実現しませんでしたが、このようにユニークな発想をするのがベジャールという人だったと。


YEBISU GARDEN CINEMAにて10月17日(土)~11月13日(金)4週間限定上映
10/26(月)〜30(金)は①11:00②14:40③18:30 の3回上映となります。
http://www.unitedcinemas.jp/yebisu/film.php?movie=4910

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