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2015/10/01

スターダンサーズ・バレエ団「オール・チューダー・プログラム」

スターダンサーズ・バレエ団「オール・チューダー・プログラム」
2015年9月26日(土曜日)14時開演
テアトロ・ジーリオ・ショウワ

スターダンサーズバレエ団ブログ掲載の、舞台写真
http://www.sdballet.com/blog/?p=243

スターダンサーズバレエ団と、振付家アンソニー・チューダーには非常に深い縁がある。スターダンサーズバレエ団の創設者、太刀川瑠璃子さんが、1965年に「スターダンサーズによるアンソニー・チューダー特別公演」を行っているのだ。これがきっかけで、1966年にスターダンサーズバレエ団という組織がスタートしたのである。以来、自前の振付家による作品の上演、古典作品、そしてフォーサイス、バランシンなどの現代作品と並行して、チューダーの作品はこのバレエ団の大切なレパートリーとして上演され続けたのである。

今回は、アンソニー・チューダー財団より、元ABTのアマンダ・マッケローとジョン・ガードナー夫妻が振付指導に携わった。マッケローと少しお話をさせていただく機会があったが、チューダーは日本での仕事をとりわけ愛していて、「あまり幸せではなかった人だったけど、日本では彼は幸せだったそうです」との話を聞かせていただいた。また、晩年彼は仏教の影響を受けて、庵を作ってそこに住んでいたのだそう。麻薬中毒でぼろぼろになっていたゲルシー・カークランドが立ち直ることができたのも、チューダー作品のおかげだった。彼女は「葉は色あせて」の初演キャストである。

スターダンサーズバレエ団が大切に守り抜いてきたレパートリーを、バレエ団創立50周年を記念してのオールチューダープログラムとして上演するのは本当に素晴らしいことだ。商業ベースに乗りにくい作品を、設立当初の「スターダンサーズによる公演」のコンセプト同様、外部からの豪華ゲストを招くことで観客動員も図った。「リラの園」、「火の柱」という二つのドラマティックバレエを中心に、小品やパ・ド・ドゥを交えたプログラム構成も上手い。


「Continuo」
林ゆりえ、松本実湖、酒井優、加地暢文、安西健塁、渡辺大地

パッヘルベルの「カノン」を使用した、プロットレスの作品。この音楽を聴くとどうしてもイリ・ブベニチェクの「ル・スフル・ド・レスプリ」を思い出してしまうのだけど、こちらは3組の男女によって踊られる。リフトを多用していて、軽やかで音楽的な作品。3人の女性ダンサーは非常に美しい。ここの課題は男性ダンサー。


「リラの園」
カロライン:島添亮子(小林紀子バレエシアター)
その愛人:吉瀬智弘
カロラインの婚約者:横内国弘
彼の過去の女:佐藤万里絵
友だちと親戚:西原友衣菜、金子紗也、谷川実奈美、池尻奈央、大野大輔、宮司知英、川島治、友杉洋之

ショーソンの「神曲」に振付けられた、チューダー26歳の時の作品。ヴァイオリンのソロが非常に美しい(髙木和弘さん演奏)。お互いに別の人を想っている4人の登場人物の心理描写を中心にしたドラマティックバレエで、ここですでに独特のチューダー節というか、心の揺らぎを繊細に動きで見せる表現が観られる。マクミランのように大きなリフトでダイナミックに表すのではなくて、視線とか、手、首、パ・ド・ブレ、エポールマンなどの細やかな動きが中心。カロライン役の島添さんはさすがの演技力で、結婚を前に恋人の前で揺れ動く心境を体現していた。チューダーの振付は、また人物の配置が非常に面白くて、コンテンポラリーではないのに構築的というか立体的でドラマ性を際立たせていた。過去の女・佐藤万里絵さんの艶やかさも素敵だった。


「小さな即興曲」
鈴木優,加地暢文
ピアノ 蛭崎あゆみ

シューマンの「子供の情景」に振付けられた愛らしい小品。雨の午後の子供たちの情景が描かれている。大きな布をマント代わりに使ったり、雨避けにしたり、さらには小さく巻いて赤ちゃんのおくるみのようにしたり。鈴木優さん、加地暢文さんとも、新国立劇場バレエ研修所出身の若い二人。特に華奢な鈴木さんのラインの美しさが目を惹いた。


「ロミオとジュリエット」よりパ・ド・ドゥ(日本初演)
林ゆりえ,吉瀬智弘

マッケローに聞いたところ、実はこの1幕ものの「ロミオとジュリエット」は完全な形では残っておらず、この作品を復元するために、ノーテーション(舞踊譜)や映像の断片を探しているのだとのこと。フレデリック・ディーリアス作曲の1943年の作品で、実は初日に振付が完成せず、完成版が披露されたのは初日の4日後だったそう。最初はサルバドール・ダリに衣装、装置を依頼する予定だったが意見が合わなかったとパンフレットに書いてある。原題は「The Tragedy of Romeo and Juliet」とあるように、二人の悲劇に焦点を当てている。パ・ド・ドゥでも、ほとんど上演されたことがないため、非常に貴重な日本初演となった。

この場面は、ティボルトを殺してしまい追放されたロミオと、ジュリエットの別れの朝のシーン。短いけれども濃密で悲痛で、特に林さんの演技力の高さを感じた。


「葉は色あせて」よりパ・ド・ドゥ
吉田都,山本隆之(新国立劇場バレエ団)

昨年のNBAバレエ団での全編上演も記憶に新しい作品。アマンダ・マッケローとジョン・ガードナーが踊ったパ・ド・ドゥは、ABTの「ABTスターの饗宴」のDVDにも収められている。ドヴォルザークの美しい旋律(「弦楽四重奏のための『糸杉』」ほか)に載せてのパ・ド・ドゥは情感豊かで、具体的なストーリーはないものの交わす目線も印象的。吉田都さんは、音楽に寄り添うように、歌うように軽やかに踊り、美しい曲線を繰り広げていく。山本さんはサポートが中心。非常にサポートが複雑な作品であるため、さすがのサポート達人の山本さんをもってしても、スムーズにいかない場面はあった。もう少しリハーサル時間が必要だったのかもしれない。いずれにしても、秋という季節にぴったりの、全編が素晴らしい作品なので、全体で観たかったと感じた。もちろん、上演時間(32分)もあるので今回はそれは難しいだろうけど、また次の機会に。

「火の柱」
姉:天木真那美
ヘイガー:本島美和(新国立劇場バレエ団)
妹:西原友衣菜
友だち:山本隆之(新国立劇場バレエ団)
向かいの家から出てきた男:吉瀬智弘
若い恋人たち:松坂理里子,木原萌花、窪田希菜,横澤真悠子,鈴木就子,川島治,安西健塁,愛澤佑樹
愛人たち:金子沙也,荒原愛,久保田小百合,横内国弘、渡辺大地,宮司知英
老嬢:岩崎祥子、坂井萌美

こちらの作品は、2003年にABTで上演されたのを2公演観ている。ヘイガー役にアマンダ・マッケローとジリアン・マーフィ―、友達にイーサン・スティーフェルとアンヘル・コレーラ、妹にシオマラ・レイエス、向かいの家から出てきた男にマルセロ・ゴメス。今にして思えば大変豪華なキャストだった。

1942年の作品で、女性が抑圧されていた時代、オールドミスの厳格な姉と奔放な妹に挟まれ、姉のようなになることを恐れ鬱屈した毎日を送るヘイガーの心理を中心に描いている。ひそかに想っている男性に愛を告白できず、いかがわしい家に出入りする男に衝動的に身を任せてしまい、後ろ指をさされてしまうヘイガー。この難しい役を演じたのは、本島美和さん。もともと演技力に定評のある本島さんは、内に情熱と欲望を抱えながらもそれを表に出せない鬱々した気持ちで日々を過ごし、そして周りに拒絶されてしまう女性の性を体現するような踊りで、見事だった。(新国立劇場バレエ団も、彼女のような大人のダンサーが表現力を発揮できるような演目をもっと上演すればよいのに) 軽薄な妹役を演じた西原さんも、軽やかでとても良かった。もう少し姉役が怖いというかギスギスした女性に演じられていたほうが、この時代の抑圧的で保守的な気分が出てリアリティが出たのではないかと思うが。

それにして、この作品の振付はユニークだ。4組の若い恋人たち、向かいの家のいかがわしい人々といった群舞の配置もさることながら、主要登場人物、とくに3姉妹の感情表現の見せ方も独特である。身を任せてしまった男に再びヘイガーが迫るものの、冷たく拒絶されてしまうところの容赦なさ。人間の暗部を視線や手の使い方などのちょっとしたしぐさ、そして振付で見せてしまうチューダーって凄いと感じた。シェーンブルグの「浄夜」のテーマのように、最後にヘイガーは、想いを寄せていた男性によって救われ、魂も浄化される。ラスト、舞台奥に配置された夜の森を歩く人々のシルエットも、趣があって余韻を残す。

非常に優れたプログラムで、よくまとまった公演だった。派手さのないチューダー作品は、日本では興行的には難しいのかもしれないけれども、引き続き、大切なレパートリーとして上演され続けてほしいと願う。

「リラの園」収録

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

とても整理され、簡潔で分かりやすい感想、ありがとうございました!
私は、翌日の鑑賞をしたのですが、土曜のことも気になっておりましたので、イメージすることができてうれしく思います。
本島美和さんのヘイガーや、島添亮子さんのカロラインは、すごく素敵だったのですね!
2日間観ることができたらよかったのに…と思いました。

アマンダ・マッケローさんから伺ったお話を掲載してくださってありがとうございます。
マッケンローさん自身が、The Tragedy of Romeo and Julietの舞踏譜や映像を探されているというレアは特に興味深かったです。チューダーのバレエは、これからの時代に徐々に評価が高まってもおかしくない作品だと感じました。
是非とも、アマンダ・マッケローとジョン・ガードナー御夫妻に穴埋めをしていただき、すべてを完成さえていただきたい気さえします。
それから、パンフレット中には、チューダーがダリに頼んだのは、衣装と装置と書いてありました。
先日、私はダリ美術館を見に行ったのですが、ドンキホーテと題する作品がたくさんあったり、ダンサーの模写的な作品もありまして(めちゃめちゃ系でしたが…)、ダリ自身が、舞踏的なものに強い関心を示していたよう感じは展示物から伝わってきました。ただ、ダリはこの作品にあうような 清らかなな雰囲気の美術製作をしたがらないだろうな・・・・というのも想像できます。
それなのに、どうして、チューダーはダリにと思ったのか?というところも大変興味深いです。
チューダーがダリに求めた要素は何だったのか? どういう点で意見が合わなかったのか?
非常に、興味深く思います。

ブログ、いつも楽しみに拝読しております。

OLIVEさん、こんにちは。

そうなんですよ~2日間観られれば良かったのですが、新百合ヶ丘が遠くて(でもやっぱり、このようなプログラムはめったにない機会なので観ればよかったんですが)。初日は友人の娘さんも出演していたのでした。

ダリの話、衣装って書こうとして振付と間違えて書いてしまってすみません。修正しておきました。ダリ美術館はまだ行ったことがないのでいつか行ってみたいんですよね。おっしゃる通り、なぜチューダーがダリに美術を頼もうと思ったのか、そのへんのことは私も知りたいです。アマンダさんがおっしゃるには、チューダーは非常に日本的なものに魅かれていて、日本人独特の繊細さが自分の作品に合っていると言っていたそうなんです。

私もOLIVEさんのブログ楽しみにしていますよ~。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

アマンダさんとのお話でお聞きになったこと、また教えていただけ感激します。

オールチューダーをみた後、色合いが秋らしいプログラムだったなーとシミジミしたのですが、ブロ友さんにも季節感を書かれている方がいました。

まさに、季節と感情が呼応する部分など日本人独特の繊細さがチューダー作を表現するのにとても役だっていると感じます。チューダーについまた少し理解が深まりました。

わたしのブログは、起伏にあふれていて、度々失礼千万な内容になっしまっています点、お恥ずかしく、お目こぼしくださいf^_^;。

OLIVEさん、こんにちは。

そうなんですよ~、特に「葉は色あせて」はまさに秋が舞台の作品ですからね。このジュリー・ケントとマルセロ・ゴメスの写真など、本当に雰囲気があって素敵です。
https://in.pinterest.com/pin/289285976038392174/
確かに日本人らしい繊細な感覚、四季折々の風景が盛り込まれたような作風もあり、だからこそ早い時期に太刀川瑠璃子さんらが注目したんでしょうね。

いえいえ、いつも楽しくブログ拝読していますよ~。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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