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2015年10月

2015/10/30

第16回英国ナショナル・ダンス・アワードのノミネート

第16回英国ナショナル・ダンス・アワードのノミネートが発表されていました。2014年9月1日から2015年8月31日までの間に英国で行われた公演が対象で、400ものノミネートから絞り込まれたものです。Dance Section of the Critics’ Circleという50人の批評家からなる団体が選びました。受賞者は2016年1月25日に発表されます。

http://dancetabs.com/2015/10/2015-national-dance-awards-announcement-of-nominations/

ガーディアン紙の記事
http://www.theguardian.com/stage/dance-blog/2015/oct/29/national-dance-awards-2015-nominations

シルヴィ・ギエム、アレッサンドラ・フェリとベテラン女性ダンサーのノミネートが目を引きます。また、私はあまりよく知らないのですが、フラメンコ系のアーティストもかなりノミネートされています。フラメンコの革命児として話題のイスラエル・ガルバンは来年のあいちトリエンナーレで来日します。アイスダンスのアーティスト(LE PATIN LIBRE)がノミネートされたのはこの賞では初めてなのだそうです。

ロイヤル・バレエのマシュー・ボールは、2部門にノミネートされている英国人若手ダンサーで、ファースト・アーティストながら「ロミオとジュリエット」でロミオ役を演じるなど、今大変注目を集めています。ほとんどが英国のカンパニーのアーティストがノミネートされる中、マリインスキー・バレエのロンドン公演で活躍したキミン・キムのノミネートも目を引きますね。

DANCING TIMES AWARD FOR BEST MALE DANCER  最優秀男性ダンサー

Tobias BATLEY (NORTHERN BALLET) トビアス・バトリー(ノーザン・バレエ)
Israel GALVÁN (COMPAÑÍA ISRAEL GALVÁN) イスラエル・ガルヴァン
Steven McRAE (THE ROYAL BALLET) スティーヴン・マックレー (ロイヤル・バレエ)
Vadim MUNTAGIROV (THE ROYAL BALLET) ワディム・ムンタギロフ (ロイヤル・バレエ)
Edward WATSON (THE ROYAL BALLET) エドワード・ワトソン (ロイヤル・バレエ)
 

GRISHKO AWARD FOR BEST FEMALE DANCER  最優秀女性ダンサー

Alina COJOCARU (ENGLISH NATIONAL BALLET) アリーナ・コジョカル(ENB)
Alessandra FERRI (Guest with THE ROYAL BALLET) アレッサンドラ・フェリ (ロイヤル・バレエのゲスト)
Sylvie GUILLEM (LIFE IN PROGRESS TOUR) シルヴィ・ギエム
Rocío MOLINA (COMPAÑÍA ROCÍO MOLINA) ロシオ・モリーナ
Marianela NUÑEZ (THE ROYAL BALLET) マリアネラ・ヌニェス (ロイヤル・バレエ)
 

STEF STEFANOU AWARD FOR OUTSTANDING COMPANY 傑出したカンパニー

CANDOCO DANCE COMPANY CANDOCO DANCE COMPANY
ENGLISH NATIONAL BALLET イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)
MATTHEW BOURNE’S NEW ADVENTURES  マシュー・ボーンのニューアドベンチャーズ
NORTHERN BALLET  ノーザン・バレエ
 

BEST INDEPENDENT COMPANY 最優秀インディペンデント・カンパニー 

2FACED DANCE
BALLET CYMRU  
COMPANY CHAMELEON
ROSIE KAY DANCE COMPANY
SHOBANA JEYASINGH DANCE COMPANY
 

BEST CLASSICAL CHOREOGRAPHY 最優秀古典振付賞

Paco PEÑA, Fernando ROMERO, Angel MUÑOZ, Charo ESPINO & Carmen RIVAS (‘FLAMENCURA’ for PACO PEÑA COMPANY) パコ・ペーニャ・カンパニー

David BINTLEY (‘THE KING DANCES’ for BIRMINGHAM ROYAL BALLET) デヴィッド・ビントレー (バーミンガム・ロイヤル・バレエ 「The Kings Dances」)

Wayne McGREGOR (‘WOOLF WORKS’ for THE ROYAL BALLET) ウェイン・マクレガー (ロイヤル・バレエ「ウルフ・ワークス」)

Liam SCARLETT (‘AGE OF ANXIETY’ for THE ROYAL BALLET) リアム・スカーレット (ロイヤル・バレエ「エイジ・オブ・アンザイエティ)

Kenneth TINDALL (‘THE ARCHITECT’ for NORTHERN BALLET) ケネス・ティンダル (ノーザン・バレエ「The Architect」)
 

BEST MODERN CHOREOGRAPHY 最優秀現代振付賞

Mark BALDWIN (‘DARK ARTERIES’ for RAMBERT)

Ben DUKE (‘PARADISE LOST [lies unopened beside me]’ for LOST DOG)

Rosie KAY (‘5 SOLDIERS’ for ROSIE KAY DANCE COMPANY)

LE PATIN LIBRE (‘VERTICAL INFLUENCES’ for LE PATIN LIBRE) (カナダのアイスダンスグループ)

Crystal PITE (‘POLARIS’ for SADLER’S WELLS) クリスタル・パイト
 

EMERGING ARTIST AWARD  新人アーティスト賞

Avatâra AYUSO (Choreographer & Performer, AVA DANCE/ SHOBANA JEYASINGH DANCE COMPANY)振付家、パフォーマー

Matthew BALL (Dancer – THE ROYAL BALLET) マシュー・ボール(ロイヤル・バレエ、ダンサー)

Cesar CORRALES (Dancer – ENGLISH NATIONAL BALLET) セザール・コラレス(ENB ダンサー)

Carlos PONS GUERRA (Choreographer – DENADA DANCE THEATRE) 振付家

Kenneth TINDALL (Freelance Choreographer) 振付家
 

OUTSTANDING FEMALE PERFORMANCE (CLASSICAL) 傑出した女性クラシックバレエダンサー

Lauren CUTHBERTSON (in ‘SONG OF THE EARTH’ for THE ROYAL BALLET) ローレン・カスバートソン (ロイヤル・バレエ「大地の歌」)

Alessandra FERRI (in ‘WOOLF WORKS’ for THE ROYAL BALLET) アレッサンドラ・フェリ (ロイヤル・バレエ「ウルフ・ワークス」)

Francesca HAYWARD (in the title role as ‘MANON’ for THE ROYAL BALLET) フランチェスカ・ヘイワード (ロイヤル・バレエ「マノン」マノン役)

Laura MORERA (as Lise in ‘LA FILLE MAL GARDÉE’ for THE ROYAL BALLET) ラウラ・モレーラ (ロイヤル・バレエ「ラ・フィーユ・マル・ガルデ」リーズ役)

Eve MUTSO (as Blanche DuBois in ‘A STREETCAR NAMED DESIRE’ for SCOTTISH BALLET) Eve MUTSO (スコティッシュ・バレエ「欲望という名の電車」のブランチ・デュボワ役)
 

OUTSTANDING MALE PERFORMANCE (CLASSICAL)傑出した男性クラシックバレエダンサー

Matthew BALL (as Lensky in ‘ONEGIN’ for THE ROYAL BALLET) マシュー・ボール (ロイヤル・バレエ「オネーギン」レンスキー役)

William BRACEWELL (as Le Roi Soleil in ‘THE KING DANCES’ for BIRMINGHAM ROYAL BALLET) ウィリアム・ブレイスフウェル (バーミンガムロイヤル・バレエ「THE KING DANCES」の太陽王役)

Erik CAVALLARI (as Stanley Kowalski in ‘A STREETCAR NAMED DESIRE’ for SCOTTISH BALLET) エリック・カバラッリ (スコティッシュ・バレエ「欲望という名の電車」のスタンリー・コワルスキー役)

KIMIN KIM (as Siegfried in ‘SWAN LAKE’ for ST PETERSBURG BALLET THEATRE) キミン・キム (マリインスキー・バレエ「白鳥の湖」ジークフリート役)

Vadim MUNTAGIROV (in ‘SYMPHONIC VARIATIONS’ for THE ROYAL BALLET) ワディム・ムンタギロフ (ロイヤル・バレエ「シンフォニック・ヴァリエーションズ)
 

OUTSTANDING FEMALE PERFORMANCE (MODERN) 傑出した女性モダン・ダンサー

Sylvie GUILLEM (in ‘LIFE IN PROGRESS’) シルヴィ・ギエム (「ライフ・イン・プログレス」)

Rocío MOLINA (in ‘BOSQUE ARDORA’) 

Nancy NERANTZI (as Marie in ‘BURNING’ for RICHARD ALSTON DANCE COMPANY)

Zizi STRALLEN (as Lana in ‘THE CAR MAN’ for MATTHEW BOURNE’S NEW ADVENTURES)  ジジ・ストラーレン (マシュー・ボーン「欲望という名の電車」のラナ役)
 

OUTSTANDING MALE PERFORMANCE (MODERN) 傑出した男性モダンダンサー

Ben DUKE (in ‘PARADISE LOST [lies unopened beside me] for LOST DOG)

Isráel GALVAN (in ‘TOROBAKA’) イスラエル・ガルバン (「TOROBAKA」)

IGOR AND MORENO (for ‘IDIOT-SYNCRACY’)

Dominic NORTH (in the title role as ‘EDWARD SCISSORHANDS’ for MATTHEW BOURNE’s NEW ADVENTURES) ドミニク・ノース (マシュー・ボーン「シザーハンズ」のシザーハンズ役)

Liam RIDDICK (as Franz Liszt in ‘BURNING’ for RICHARD ALSTON DANCE COMPANY)
 

10/30 吉田都さん出演「日本舞踊×オーケストラ」、11/3ギエム出演「世界文化賞授賞式」

ギリギリのお知らせになってしまいましたが、吉田都さんが出演した「日本舞踊×オーケストラ」が本日NHK Eテレで放映されます。

10月30日(金)夜 午後10:00~午後11:00 NHK Eテレ

にっぽんの芸能「日本舞踊×オーケストラ」(2)

http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&ch=31&date=2015-10-30&eid=26041&f=1830

オーケストラの生演奏に乗せて日本舞踊家が踊る「日本舞踊×オーケストラ」公演の2回目。今回は日本を代表するバレエダンサー吉田都が出演する。バレエとしても人気のラヴェル「ボレロ」を男性舞踊家たちと共に踊る。宝塚出身の女優・麻実れいが花柳流家元・花柳壽輔と共演した幻想的な舞台「パピヨン」、バレエ作品をもとにドラマチックな舞踊に仕上げた「ライラックガーデン」(藤間蘭黄、水木佑歌ほか)

「ライラックガーデン」
「詩曲」エルネスト・ショーソン:作曲
(指揮)園田 隆一郎、(演奏)東京フィルハーモニー交響楽団、(ヴァイオリン)三浦 章宏
(15分00秒)
~東京文化会館大ホール~

「パピヨン」
「“夜想曲”Ⅰ雲、Ⅲシレーヌ」クロード・ドビュッシー:作曲
(指揮)園田 隆一郎、(演奏)東京フィルハーモニー交響楽団、(合唱)新国立劇場合唱団、(合唱指揮)河原 哲也
(18分00秒)
~東京文化会館大ホール~

「ボレロ」
モーリス・ラヴェル:作曲
(指揮)園田 隆一郎、(演奏)東京フィルハーモニー交響楽団
(16分00秒)
~東京文化会館大ホール~

吉田都さんが踊る「ボレロ」ももちろん楽しみですが、「ライラックガーデン」は、チューダーの「リラの園」を基にした作品なんですね。

******

また、先日行われた第27回高松宮殿下記念世界文化賞授賞式の模様が、フジテレビで放映されます。もちろん、受賞者の中には演劇・映像部門のシルヴィ・ギエムもいます。

11月3日(火) 24:25~24:55 放送 フジテレビ

「第27回高松宮殿下記念世界文化賞授賞式」

http://www.fujitv.co.jp/b_hp/sekaibunka/index.html

▽ポップから絵画へ…瀬戸内寂聴が語る横尾忠則
▽天才バレリーナと福島の少女…その意外な関係
▽何と牛乳&花粉から彫刻の謎
▽軍事政権下で映画を作った若者たち

ギエムと福島の少女のエピソードは、フジテレビのニュースでも少し流れましたがとても感動的でした。もう一度観られるのが嬉しいです。

2015/10/27

ミラノ・スカラ座バレエのエトワール・ガラ 10/30ネット中継/追記

現芸術監督のマハール・ワジーエフがボリショイ・バレエの芸術監督に就任することに決まり、大騒ぎ中のミラノ・スカラ座バレエ。(もちろん、後任のめどは立っていません。ワジーエフは多額の違約金を払わされる可能性もあります←どうやらこれは免れる模様)

そのミラノ・スカラ座バレエですが、10月30日(金)に、GALA DES ÉTOILESというガラを開催します。

http://www.teatroallascala.org/it/stagione/2014-2015/balletto/gala-des-etoiles.html

スカラ座のエトワールであるスヴェトラーナ・ザハロワ、ロベルト・ボッレ、マッシモ・ムッルを始め、マリア・アイシュヴァルト、イワン・ワシーリエフ、ルシア・ラカッラ、レオニード・サラファーノフ、アリーナ・ソーモワ、ポリーナ・セミオノワなど出演者は大変豪華です。 ロシア系ダンサーが多いのは、さすが元マリインスキー・バレエ芸術監督ワジーエフの人脈ですね。

このガラが、スカラ座公式サイト、およびスカラ座のYouTube公式チャンネルで生中継されます。ただし、夜8時からというスタートのため、日本時間では深夜3時からとちょっと辛い時間です。(イタリアは10月末までサマータイムなので日本との時差は7時間)

イタリアではテレビ中継、映画館上映もされるそうです。そして、インターネット中継は、テレビと同じ映像ではなくて、舞台袖からの映像なのだそうです。映画館でやるということは、もしかしたらDVDも出るのかもしれません。


Gala des Étoiles
Lucia Lacarra – Marlon Dino Light Rain – Pas de deux 「ライト・レイン」
Choreography by Gerald Arpino
Music by Douglas Adams and Russ Gauthier

Melissa Hamilton – Claudio Coviello Manon – Pas de deux – Act I 「マノン」1幕パ・ド・ドゥ
Choreography by Kenneth MacMillan
Music by Jules Massenet

Maria Eichwald – Mick Zeni La rose malade 「薔薇の死」
Choreography by Roland Petit
Music by Gustav Mahler

Alina Somova – Leonid Sarafanov Grand Pas Classique 「グラン・パ・クラシック」
Choreography by Victor Gsovsky
Music by Daniel-François Auber

Polina Semionova – Roberto Bolle Carmen – Pas de deux 「カルメン」
Choreography by Roland Petit
Music by Georges Bizet

Svetlana Zakharova La morte del cigno 「瀕死の白鳥」
Choreography by Mikhail Fokin
Music by Camille Saint-Saëns

Nicoletta Manni – Ivan Vasiliev Don Quixote 「ドン・キホーテ」
Grand Pas de deux, Act III
Choreography by Marius Petipa
Music by Ludwig Minkus

Lucia Lacarra – Marlon Dino Three Preludes 「3つのプレリュード」
Choreography by Ben Stevenson
Music by Sergei Rachmaninov
Piano Roberto Cominati

Maria Eichwald – Massimo Murru  Romeo and Giulietta – Balcony Pas de deux 「ロミオとジュリエット」
Choreography by Kenneth MacMillan
Music by Sergei Prokofiev

Maria Vinogradova – Ivan Vasiliev Spartacus – Pas de deux 「スパルタクス」
Choreography by Yuri Grigorovich
Music by Aram Khachaturian

Roberto Bolle Prototype 「プロトタイプ」
Concept and choreography Massimiliano Volpini
Original music by Piero Salvatori produced by Fausto Dasè
Visual effects and video editing Avantgarde Numerique e Xchanges Vfx Design

Svetlana Zakharova – Leonid Sarafanov Le Corsaire – Pas de deux 「海賊」
Choreography by Marius Petipa
Music by Riccardo Drigo

こちらに紹介記事があります。
http://www.gramilano.com/2015/10/full-programme-of-la-scalas-gala-des-etoiles-30-and-31-october/


<追記>
ロベルト・ボッレのメールマガジンに、映画館中継やテレビ放映についての情報が掲載されていました。

Live broadcast:
Italy, RAI 5
Czech Republic, Ceska televiza
Russia, Vgtrk

Pre-recorded Broadcast:
Slovenia, RTV Slovenija
Japan, Tohokushinsha

Live broadcast at the cinema:
All’opera in France, francophone countries in Europe and Spain
Abramorama in USA

Pre-recorded broadcast at the cinema:
Palace Entertainment in Australia
SDC Corea in Korea
Sony in Japan
Latin America, England, Ireland, Italy

ということで、日本での放映用に東北新社が、映画館での上映はソニーが担当するとあります。したがって、この映像は日本でも観られそうですね。楽しみです。

<さらに追記>

スカラ座の舞台袖からの映像とインタビューなどは、今もYouTubeで視聴できます。ただ、本当に袖からの映像なので、結構見づらいというか、ちゃんと踊りを観るという感じではないのですが。

「愛と哀しみのボレロ デジタル・リマスター版」首藤康之トークショー

10月17日より11月13日まで、恵比寿ガーデンシネマにて、「愛と哀しみのボレロ デジタル・リマスター版」が公開されています。

http://mermaidfilms.co.jp/bolero/

1981年に製作された『愛と哀しみのボレロ』(クロード・ルルーシュ監督)は、戦争に翻弄され引き裂かれた4組の家族の半世紀を描いた大河ドラマ。ルドルフ・ヌレエフ、エディット・ピアフ、ヘルベルト・フォン・カラヤン、グレン・ミラーという実在の芸術家たちをモチーフにした登場人物たちが、最後にパリのエッフェル塔の下トロカデロ広場に集結する大団円までをドラマティックに描いています。親子を同じ俳優が演じているため、わかりにくくなってしまうところもところどころありますが、ナチス・ドイツのもたらした悲劇の重さが改めて伝わってきました。強制収容所に連行される途中で子供を手放してしまった母親が、戦後もいつまでも子供を探し続ける姿を観ると、胸がつぶれそうな思いがします。

なんといっても圧巻なのが、ジョルジュ・ドンの踊り。あまりにも有名なラストのベジャール振付「ボレロ」ももちろんですが、途中で登場する、パリ・オペラ座という設定の場所でのダンス(明らかにガルニエではありませんが)が凄まじい。力強く、まさに舞踊の神というべき強烈な存在感を見せてくれます。映画の歴史に残るような見事な名作ですが、中でも、このジョルジュ・ドンの鮮烈な踊りを大スクリーンで観るためだけでも、映画館で観る価値のある映画です。

21世紀の今となっても、世界中で紛争が絶えません。また安保法制が可決されてしまった今の情勢においてこの映画を観ることは、非常に重要なことなのではないかと思います。戦争の恐ろしさともたらされる悲劇、平和の尊さについても今一度考えることができました。


さて、公開初日には、首藤康之さんのトークショーがありました。この映画の中の『ボレロ』のシーンを、今までに何千回と見たという首藤さんが、熱く語りつつ、興味深いエピソードをいくつも披露してくれました。

この映画の中でリズムは衣装を着ていますが今は上半身裸、という話から。ベジャールに衣装を依頼された三宅一生さんが、「ダンサーは肉体そのものがいちばん美しい」と言ったことから上半身裸になったそうで、首藤さんも初めてボレロを観たときは着衣だったそうです。

ドンの踊りは性別を超えているという見解は多くの人が持っています。「ドンさんが踊ることによって、性を超えて、男も女も関係ない、人間としての踊りになっていった」と首藤さんも語りましたが、実はベジャールは、リズムを女性ダンサーたちに踊らせようとしたこともあったそうです。それがしっくりいかなかったので、男性のリズムに戻したそうですが、実は私、この映画「愛と哀しみのボレロ」クライマックスでのボレロを観ながら、リズムを女性ダンサーたちが踊ったらそれは面白いだろうな、と感じたのでした。首藤さんも、女性ダンサーたちの中で踊ってみたいと言ってました。「ボレロ」のメロディは男性も女性も踊っていますが、振付を替えずに同じ踊りで男性も女性も踊る作品というのは非常に珍しいと首藤さんは言います。シンプルな形が多いからそれができるのではと。

かつて首藤さんが「M」を踊った時、ベジャールが首藤さんの手を取って、いい手をしているねと話しかけたそうです。手の角度を直角にできるかと首藤さんに聞いたそうです。ボレロが踊れるように直角にできるようにしてくださいと。93年7月にそれを言われ、2か月半必死に練習したとのこと。10月のヨーロッパツアーで初めて踊った時には、ベジャールに、手が直角になっていたねと褒められたそうです。しかしベジャール曰く、ドンはいくら言っても、手を直角にすることができなかったとのことです。「ドンもできなかった」とすごく褒めていただいた、と思い出を語りました。

「ボレロはドンが絶対無二」だと首藤さん。ベジャールはダンサーによって言うことを変えているそうです。たとえばボレロは背の高いダンサーしか踊ってはいけないという暗黙の了解があるのですが、首藤さんは身長173cmと小柄でした。ベジャールは柔軟な考え方の持ち主だったようです。

メロディとリズムの関係も非常に興味深く、リズムがあってのメロディだと首藤さんは考えています。しかし必ずしもアイコンタクトがなくても、リズムとコミュニケーションはとれるし大丈夫だとも。たとえばシルヴィ・ギエムはすごくリズムをよく見ているし目線を送るそうですが。アイコンタクトをしなくても、リズムの空気が伝わってくるし乗せられているのがわかるそうです。ベジャールは、「ずっとそこに立って熱を感じなさい」と言い、スポットライトが当たると熱が走り血液に伝わると言っていたのですが、首藤さんはなかなかその光の熱は感じられなくて、少し苦労したとも。

ベジャールの大半の作品の主題は「愛と死」で、「ボレロ」は「海」がもうひとつの大きなテーマです。初演を踊ったのはデュスカ・シフニオスという女性ダンサー。ベルギー、オステンドの海から彼女が浮かび上がっていくところを見て、ベジャールが「ボレロ」を思いついたそうです。海から出てくる神聖なものを表現したいと。海から生まれて海に還っていくような。

ラヴェルも実は、海沿いでこの曲を作曲したそうです。1930年代に、フランスの避暑地でピアニストにリズムを叩いてもらって作曲したとのことです。ラヴェルとベジャールの逸話もユニークで、一度だけ、モンテカルロのカジノで出会ったそうです。ラヴェルは気難しい人で、会話もほとんどなかったそうですが、ベジャールが「カジノで賭けたことはありますか?」と聞くと、ボレロで儲けたときに一度だけ、とラヴェルは答えたそうです。実は、ボレロという曲名も、当初は「ファンダンゴ」という曲名だったそうですし、「ボレロ」も最初はラヴェルの曲ではなく、映画「日曜日はダメよ」の音楽に振付けたそうですがそれではあまりにも音楽に合いすぎていたので、ラヴェルにしたそうです。

この映画は、第二次世界大戦とその後の激動の時代を描いた作品。バレエも、この映画のように社会的、歴史的なな背景と切っても切り離せません、と首藤さん。ベジャールは、プティパの弟子の人にマルセイユでバレエを習いました。またバランシンとは、スザンヌ・ファレルを通じてつながっています。ベジャールは、女性が踊るボレロの中では、ファレルが踊ったものが最高だったと言っていたそうです。はるか昔の人であっても実は意外に近い存在で、歴史を感じながらバレエを観ていくと面白い。世界が広がっていくのが楽しいし遠いところでこういうつながりがあるとワクワクします、と首藤さんは語りました。

「愛と哀しみのボレロ」はぼくの歴史の教科書のような作品です、と首藤さんは映画に対する思い入れを語りました。最後に一つ思い出として、一つのエピソードを披露しました。「春の祭典」を踊った時、これは鹿の交尾の映画にインスパイアされた作品なのだそうですが、ベジャールは、実際の鹿の交尾を描いた壁画の前で踊ることを考えたそうです。湿度などの関係で、壁画にダメージを与えてしまうためにそれは実現しませんでしたが、このようにユニークな発想をするのがベジャールという人だったと。


YEBISU GARDEN CINEMAにて10月17日(土)~11月13日(金)4週間限定上映
10/26(月)〜30(金)は①11:00②14:40③18:30 の3回上映となります。
http://www.unitedcinemas.jp/yebisu/film.php?movie=4910

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2015/10/26

ボリショイ・バレエの芸術監督に、マハール・ワジーエフが就任決定

ボリショイ・バレエの現芸術監督セルゲイ・フィーリンが契約を更新せず、来年3月で退任するため、次期芸術監督がまもなく決定されることになっていました。

そして本日、後任の芸術監督が発表されました。

ボリショイ公式サイトの発表
http://www.bolshoi.ru/about/press/articles/appointment/5016/

元マリインスキー・バレエ、現ミラノ・スカラ座バレエ芸術監督のマハール・ワジーエフが、来年3月18日より、ボリショイ・バレエの芸術監督に就任すると、ウラジーミル・ウリン総裁が発表しました。

現在54歳のワジーエフは、1979年にワガノワ・アカデミーを卒業してマリインスキー・バレエに入団。1989年にマリインスキー・バレエのプリンシパルとなりました。1995年4月から2008年の3月までマリインスキー・バレエの芸術監督でした。ゲルギエフ総裁との不協和音からマリインスキー・バレエを離れた彼は、2008年から現在までミラノ・スカラ座の芸術監督を務め、「ライモンダ」の復元版の上演、ABTと共同でラトマンスキー版「眠れる森の美女」を新制作するなど、芸術上の成果を上げていました。

ワジーエフは、最近ミラノ・スカラ座の芸術監督の契約を更新したばかりでしたが、総裁のアレクサンダー・ペレイラと契約について話し合うつもりだと語っています。

ロイター通信の記事(英語)
http://www.reuters.com/article/2015/10/26/us-russia-bolshoi-idUSKCN0SK1JU20151026

イズベチヤ紙の記事(ロシア語)
http://izvestia.ru/news/593989

なお、ウリンが以前インタビューで語ったところによれば、ボリショイ・バレエの新芸術監督の仕事は、今までフィーリンが担っていた権限より狭められて、総裁に従属して、主に管理的な業務となってしまうとのことです。ミラノ・スカラ座では、自由にやりたいことができて、しかも成果を上げていたワジーエフでした。が、ボリショイでの新しい仕事は、いわばマリインスキー・バレエで彼が総裁ゲルギエフに口出しをされていたことの繰り返しになってしまう可能性もあります。


このニュースが発表される前にアップされていた、イスミーン・ブラウン氏の記事
http://www.ismeneb.com/blogs-list/151025-why-urin-is-glad-to-get-shot-of-filin.html

フィーリンも引き続きボリショイ・バレエで仕事を続け、2016年夏に予定されているボリショイ・バレエのロンドンツアーの責任者の任を負い、またボリショイにおける新作振付のプログラム担当もするそうです。ボリショイの中からも新しい振付家を育てるプログラムです。(ただし、モスクワの観客は保守的で、フィーリンが導入したエック、マクレガー、ウィールドン、マイヨーなどの作品は任期がなく、また政治家たちの受けも良くなかったため、本当にこんなことができるのか、という疑問も上がっているようです)

また、実はウラジーミル・ウリンの総裁としての任期もあと2年半しか残っていないため、新しい芸術監督がその間にできることは限られているのではないかと考えられているようです。


そして、イスミーン・ブラウン氏の新しい記事。次期芸術監督就任発表された直後に、タチアナ・クズネツォワ氏がワジーエフに行ったインタビューの翻訳を基にしています。
http://ismeneb.com/blogs-list/151026-makhar-vaziev-appointed-bolshoi-ballet-head.html

どうやら、ボリショイ・バレエの芸術監督の仕事は、言われていたように管理的な業務のみに限定されるということはなくて、ワジーエフは腕を振るえる環境にいられるようです。ワジーエフは5年契約を結ぶとのことなので、ウリンの契約が切れる2018年以降も留任するとのこと。スカラ座と同様の芸術監督としての役割を果たせるようです。

ワジーエフはこれからの3~4か月の間は移行期間として、スカラ座での責任ある仕事を少しずつ減らしていくとのことで、その間に、フィーリンは芸術監督としての最後のシーズンを完遂することができ、ボリショイでの新作振付担当という業務への移行を果たせるということのようです。実はワジーエフの好みというのは、それほどフィーリンと違っているわけではなく、ラトマンスキー、バランシン、フォーサイスといった20~21世紀の振付家を好んでスカラ座で上演してきました。ロシア人の観客の一部には、海外の振付家の作品にて意向を示す向きがあるため、まずはそれと闘わなくてはならないと思われます。

特にワジーエフは、19世紀の古典バレエの復元について熱意を示しています。現在、チューリッヒ・バレエとミラノ・スカラ座は共同制作で、ラトマンスキーによる復元版「白鳥の湖」に取り組んでいます。(チューリッヒでの上演が先ですが、スカラ座では6月に初演予定) ワジーエフはマリインスキー・バレエ時代、15年ほど前に、「眠れる森の美女」と「ラ・バヤデール」の復元に取り組み、評判は良かったもののすぐに上演されなくなってしまいました。ボリショイで引き続き、このように古典作品の復元に取り組むのではないかと期待する向きもあります。

2015/10/25

10/24 カンパニー マリー・シュイナール 『春の祭典』『アンリ・ミショーのムーヴマン』

6年ぶりの来日公演となる、カナダはモントリオールを本拠地とするカンパニー マリー・シュイナール。「春の祭典」と「アンリ・ミショーのムーブマン」の2作品を引っ提げての公演。

http://www.kaat.jp/d/cmc


『春の祭典』  Le Sacre du printemps
http://www.mariechouinard.com/le-sacre-du-printemps-111.html

コンセプト・振付・芸術監督:Marie Chouinard
音楽:Igor Stravinsky, The Rite of Spring, 1913
照明:Marie Chouinard
衣装:Vandal
プロップ:Zaven Paré
メイク:Jacques-Lee Pelletier
ウィグ:Daniel Éthier

「春の祭典」は今までも様々な振付家によって創られている作品だが、シュイナールは、物語性を完全にはぎ取って、音楽の持つ衝動を振付にした。10人のダンサーが出演するが、ユニゾンとなった群舞はほとんどなく、暗い舞台の上でスポットライトの丸い光の中でソロを踊るダンサーたちの踊りが中心となる。群舞のシーンでも、一人一人のダンサーが異なった動きをしているので、荒々しい印象だ。

舞台の中心にスポットライトが当たり、そこに浮かびあがる女性ダンサー。上半身は乳房をむき出しにして、下半身は黒いショートパンツ。髪を、まるで角を思わせるようないくつかのお団子に結い、目の周りは赤く塗った独特のメイク。激しい動きで、非常に身体能力が高いのがわかる。左右に一つずつ、同じようにピンスポットが当たり、その中に一人ずつダンサーが。10人全員が舞台の上にいる時も、一人一人がこのピンスポットの円の中にいて、球形のカプセルに閉じ込められて踊っているように見える。

長いトゲトゲを思わせる板を手首、肘など身体にたくさん取りつけている女性ダンサーふたりの絡み合いは、妖艶だけど同時に闘争的にも見える。この長いトゲを全員が手首につけて踊るシーンでは、彼らはまるで牛の群れにも、鹿にも見える。(そういえば、ベジャールは鹿の交尾の映像を見て「春の祭典」を振付けたとのことだった) 

男性ダンサーのソロは、グランジュッテで舞台を横切ったり、何回も飛び上がってみたり。マッチョな男性が多い。地面を小刻みに踏みつけるダンサーたち。ペアになってお互いににらみ合い身をくねらせて対峙しながらポーズするダンサーたち。この力強い音楽に触発された動物たちの、解き放たれた野生の生命力、その鼓動を感じさせる。ダンサーたちはしっかりとしたクラシックの技術を持っているし、しなやかでよくコントロールされた動きを見せてくれる。だが、振付そのものは混沌としながらもほかの誰にも似ていないオリジナリティが感じられて、クラクラするほど刺激的だった。

『アンリ・ミショーのムーヴマン』HENRI MICHAUX : MOUVEMENTS
http://www.mariechouinard.com/henri-michaux-351.html

振付・芸術監督:Marie Chouinard

音楽:Louis Dufort
照明:Marie Chouinard
舞台美術:Marie Chouinard
音響:Edward Freedman
衣装: Marie Chouinard
ヘアスタイル:Marie Chouinard
声:Marcel Sabourin
テキスト・画:Henri Michaux Mouvements (Édition Gallimard, 1951)より

2011年8月、ウィーンのImPulsTanzフェスティバルで初演。シュイナールは、アンリ・ミショーの「ムーヴマン」という、黒インクで描かれた64ページにわたるデッサンと15ページの詩が書かれた本に触発されてこの作品を振付けた。このデッサンと詩の両方を合わせた振付として、背景に映写された一つ一つのデッサンを黒衣のダンサーが舞台の上で表現するという作品。

一見単純な発想に思えるが、単に画像の形をなぞるのではなく、ポーズをとるだけではなくそのインクの染みのような形を一人一人のダンサーがダンスとして表現するし、それがスピーディーに次の画像に切り替わるので、ものすごい表現力と瞬発的な身体能力が必要となる。最初は、一人のダンサーがソロとして表現してかわるがわる次のダンサーが出てくるのだが、動きによってはそれが二人となって、スクリーンの上に映し出された、ロールシャハテストのような複雑な形状を模倣する。こんな風にこの形を再現するんだ!という新鮮な発見があって楽しい。白いスクリーンに黒い画像、白いリノリュームを貼っただけの舞台にぴったりとした黒衣のダンサーが踊るだけというモノクロームの舞台なのに、すごく多彩な感じだ。まさに床の上にも絵を描いていくという感じ。

激しくリズムを刻む、ノイズのような音楽がずっと続いているのだけど、途中で、一人の女性ダンサー(「春の祭典」でも最初のソロを踊ったキャロル・プリヤー)がリノリュームの下にマイクを持って潜り込み、まるで怒鳴るようにミショーの詩を朗読する。朗読の間も、ダンサーたちは画像模倣ダンスを続けている。そのうちこの詩朗読パートは終了し、画像模倣は続けられているけれども、これが群舞へと変化ていく。動きはユニゾンだが、しなやかでスピード感があり力強い。「そんなバカな!」と思えるような形もダンスで作っちゃうのだから、シュイナールという人は天才というか、変態というか。

最後のパートで舞台上は暗転し、真っ暗な舞台の上、ピンスポットの光の中で男女ペアがパ・ド・ドゥを踊っている間、ストロボが点滅し、残像を残しながら超高速で男性が女性をリフトして操っているように目の錯覚が起きる。このパ・ド・ドゥも、やがて3人となり、人数が増えていく。脳みそがシャッフルされるような、熱くて興奮させられるパフォーマンスだった。シンプルな発想の中から、誰にも真似できない独創性を発揮して、実に楽しいパフォーマンスだった。

今回、シュイナール本人は、この後に続く高知と金沢でのパフォーマンスで3時間にもわたるソロを踊るとのことで、その準備のために横浜公演には来られなかった。もともと、シュイナールはソロのダンサー/振付家として出発した人である。カンパニーと、シュイナールのソロの両方が観られる高知と金沢の観客が羨ましい。しかし、今回この公演が観られて本当に良かった。


高知公演
日程:2015年10月31日(土)開場18:30 開演19:00
*終演後アフタートーク有(モデレーター:石井達朗/舞踊評論家)
上演時間:100分(「春の祭典」35分、休憩20分、「アンリ・ミショーのムーブマン」35分)
会場:高知県立美術館ホール
http://www.kochi-bunkazaidan.or.jp/~museum/contents/hall/hall_event/hall_events2015/Marie/hall_event15marie.html

ソロ公演
「イン・ミュージアム」 IN MUSEUM
日程:2015年11月1日(日)開場13:00 開演13:30 (上演時間:180分)
会場:高知県立美術館1階 県民ギャラリー
入場無料/出入自由


金沢公演
【日時】2015年11月7日(土) 18:00開演(17:30開場)
【会場】金沢市文化ホール
【演目】『春の祭典』『アンリ・ミショーのムーヴマン』
    ※終演後にマリー・シュイナールによるアフタートークを行います。
http://www.kanazawa-arts.or.jp/event/2239

イン・ミュージアム IN MUSEUM / カンパニー マリー・シュイナール ソロ公演
2015年11月8日(日)13:00〜16:00
http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=25&d=1784
会場:
金沢21世紀美術館 交流ゾーン
料金:無料


2015/10/23

ボリショイ・バレエ in シネマSeason 2015 – 2016 上映決定

ボリショイ・バレエの映画館上映も決定して、発表されています。

ボリショイ・バレエ in シネマSeason 2015 – 2016
http://bolshoi-cinema.jp/

プレスリリース
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000366.000003481.html

11月11日(水)を皮切りに全5作品、全国の映画館にそれぞれ1日限定配信とのことです。

≪上映作品および日時≫

2015年11月11日(水)19:30~ 『ジゼル』 (スヴェトラーナ・ザハロワ、セルゲイ・ポルーニン主演、10月11日に現地で中継)
 

2015年12月16日(水)19:30~ 『くるみ割り人形』

 
2016年1月13日(水) 19:30~ 『椿姫』

 
2016年2月17日(水) 19:30~ 『じゃじゃ馬ならし』


 2016年4月20日(水) 19:30~ 『ドン・キホーテ』

上映される映画館のリストは、こちらにあります。
http://bolshoi-cinema.jp/venuelist.html

≪料金≫ 全席指定 3,000円(税込)

≪一般チケット発売≫
『ジゼル』 2015年 10月24日(土) 15:00 ~ 2015年 11月10日(火) 12:00
◎イープラス:http://eplus.jp/bolshoi-cinema201511/ (PC、モバイル共通)

または、全国のファミリーマート店内のFamiポートにて
◎チケットぴあ:http://w.pia.jp/t/bolshoi-giselle/ (PC、モバイル共通)
または、全国のセブン-イレブン店内の端末「マルチコピー機」、全国のサークルK・サンクス店内の端末「Kステーション」、チケットぴあの店舗にて販売

The Bolshoi Ballet Season 2015-16 公式サイト
http://www.pathelive.com/international

現地で中継される演目全部ではありませんが、傑作、マイヨー振付「じゃじゃ馬馴らし」も観ることができるのは嬉しいですね。(1日だけなのは少し残念ですが)

ジゼルの映像(ザハロワ、ポルーニン)


昨年中継された、ザハロワとロヂキン主演の「白鳥の湖」

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Bolshoi Ballet

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チャコット主催「バレエ・プリンセス」公演、出演者オーディション開催

チャコットは、バレエ鑑賞普及啓発の一助となすことを目的としたバレエ公演「バレエ・プリンセス〜バレエの世界のお姫様たち〜」を、2016年3月31日に開催します。

http://www.chacott-jp.com/j/special/ticket/princess/index.html


「バレエ・プリンセス」は、世界中で愛されているメルヘンより、お姫様の登場する代表的な三つの作品(三大プリンセス物語)で構成。プロローグに「白雪姫」、第一部にバレエ作品としても大人気の「シンデレラ」(第二幕)、第二部にクラシック・バレエの代名詞とも言われる「眠れる森の美女」(第三幕)を上演します。白雪姫、シンデレラ、そしてオーロラ姫という“バレエの世界のお姫様たち”が響宴し、バレエの名作がハイライトでご鑑賞もいただけるクラシック・バレエの魅力が満載な公演です。

演出・振付を手掛けるのは、2014年第46回舞踊批評家協会新人賞を受賞した伊藤範子さん(谷桃子バレエ団)。趣旨に賛同した、新国立劇場バレエ団の米沢唯さんをはじめとする日本を代表するトップダンサー、次代のスターダンサーら豪華キャスト陣が作品で共演します。バレエファンはもちろんのこと、大人からお子様までバレエをはじめてご覧になる方にも存分にお楽しみいただける舞台を届けるとのことです。

また、公演の出演者(子役、女性ダンサー)オーディションを開催するとのことです。


< 公演概要 >

公演日・会場
2016年3月31日(木) 新宿文化センター

構成
プロローグ「白雪姫」 / 第1部「シンデレラ」(第二幕) / 第2部「眠れる森の美女」(第三幕) / エピローグ

演出・振付
伊藤範子(一般財団法人谷桃子バレエ団/2014年第46回舞踊批評家協会新人賞受賞)
※ 受賞理由: 『ホフマンの恋』の演出・振付でみせた、オペラの世界を舞踊として再構築する創作の可能性と丁寧でレベルの高い表現に対して

バレエミストレス:林かおり / 眠れる森の美女 マズルカ監修:鈴木未央

主な出演者
オーロラ姫: 米沢唯 (新国立劇場バレエ団プリンシパル)
リラの精: 長田佳世 (新国立劇場バレエ団プリンシパル)
白 雪 姫: 木村優里 (新国立劇場バレエ団ソリスト)
  *
王子(シンデレラ): 橋本直樹
王子(眠れる森の美女):浅田良和

※公演情報、チケット情報等詳細は、12月上旬頃に発表予定
主催 チャコット株式会社

オーディションの詳細はこちらです。(PDF)
http://www.chacott-jp.com/j/special/ticket/princess/ballet%20princess_audition.pdf

日本のトップダンサー主演による夢の舞台が観られるほか、バレリーナを目指す女の子たちにとっては、憧れのスターと共演するチャンスでもありますね。こういう一流の公演でのバレエとの出会いによって、バレエの素晴らしさ、美しさを知る子供たちもたくさん出てくるのではないかと思います。

2015/10/21

シルヴィ・ギエムのラスト公演 「東急ジルベスタ―コンサート2015-2016」に出演

現在、高松宮殿下記念世界文化賞(演劇・映像部門)の授賞式で来日中のシルヴィ・ギエム。(今日が授賞式)

2015年限りでの引退を表明しているシルヴィ・ギエムが、テレビ東京系で毎年、新年のカウントダウンを生中継している「東急ジルベスタ―コンサート2015-2016」に出演し、代表作の「ボレロ」とともにカウントダウンすることが決定しました。12月31日、まさに日本でのラストステージが、この「東急ジルベスタ―コンサート2015-2016」となります。

21回目を迎える今回は、彼女の代表作品でもある「ボレロ」でカウントダウンを行い、2015年のフィナーレとともに、ダンサーとしての活動に幕を下ろすことになりますね。

http://www.bunkamura.co.jp/topics/orchard/2015/10/_2015-2016.html

◆番組概要
「東急ジルベスタ―コンサート2015-2016」
 放送:2015年12月31日(木)23:30~1月1日(金)00:45
テレビ東京系6局ネット、BSジャパン
 カウントダウン曲:「ボレロ」(モーリス・ラヴェル作曲/モーリス・ベジャール振付)

【出演】
 指揮:大友直人
 バレエ:シルヴィ・ギエム
 ソプラノ:小川里美
 バリトン:与那城敬
 ヴァイオリン:成田達輝
 ヴァイオリン:山根一仁

 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
 バレエ:東京バレエ団

 司会:宮本亜門、松丸友紀(テレビ東京アナウンサー)


◆公演情報
 公演日時:2015年12月31日(木) 21:30会場/22:00開演
 会場:Bunkamuraオーチャードホール
 チケット一般発売:2015年12月6日(日)10:00~
 チケット料金:後日発表
 主催:テレビ東京
 特別協賛:東急グループ
 企画制作:Bunkamura


◆お問い合わせ先
【番組に関して】
 テレビ東京(代表)03-5470-7777

【公演内容やチケット情報に関して】
 テレビ東京 事業部 03-3435-7000 <平日11:00~17:00>
 Bunkamura 03-3477-3244 <10:00~19:00>


12月30日の神奈川県民ホールの「シルヴィ・ギエム ファイナル」のチケットが取れてほっとしていたら、最後にこんな隠し玉があったんですね。東急ジルベスタ―コンサートはテレビ中継もあるので、多くの人が観られますね。注目の舞台なので、いっそのこと世界にもネット中継したら素晴らしいと思うのですが。

第27回高松宮殿下記念世界文化賞の受賞者による合同記者会見の映像
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00306225.html

世界文化賞 演劇・映像部門受賞のシルヴィ・ギエム氏が来日(ニュース映像)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00306098.html

「世界文化賞」に5人 東京で記者会見
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151021/k10010276591000.html

このうち、演劇・映像部門で選ばれたフランスの世界的バレエダンサー、シルヴィ・ギエムさんは、会見で「東京は自分が若いころ国際的に活動する出発点となった場所です。その日本で受賞できたことに感動しています」と喜びを語りました。 ギエムさんは東日本大震災が発生した際に、被災した人たちを勇気づけたいと福島県や岩手県でバレエを披露しました。ことし12月の公演を最後に引退することを表明しているギエムさんは「私はバレエを通じて訪れた場所やそこで出会った人たちを愛してきました。そのことが評価されたのだと思います」と述べました。

高松宮殿下記念世界文化賞 演劇・映像部門 シルヴィ・ギエムさん
http://www.sankei.com/life/news/151018/lif1510180019-n1.html

シルヴィ・ギエム氏(演劇・映像部門)「愛したから、という理由で賞をいただけた」
http://www.sankei.com/entertainments/news/151020/ent1510200010-n1.html

今までの受賞者の名前を見て感銘を受けました。バレエを始めてこれまで私は何をしてきたか、問い直しました。私は愛しただけ。自分がしていることを愛しました。している場所を愛して、誰のためにしているか、その人を愛した。謙虚な気持ちでいただきます。ただ単に「愛したから」という理由で賞をもらえた気がします。ただ、この世界でそれは美しいこと、必要なことだと思います。愛することは必要、なすべきことをするために、社会や文化のために。文化は社会の一部、そのために愛することは必要です。貢献の一部分を、愛することで行ってきたと思います。

こちらは、フェアウェルツアー「ライフ・イン・プログレス」のプロモーション映像

笹本龍史さんが山崎広太さん振付「OQ」でベッシー賞を受賞

ニューヨークにおけるダンスやパフォーマンスの先鋭的な達成に贈られる、第31回ベッシー賞の授賞式が10月19日にアポロ・シアターでありました。ニューヨークのショービジネスにおいては重要な賞の一つです。

プレゼンターの一人として、マルセロ・ゴメスも登壇しています。司会は、元NYCBプリンシパルのジョック・ソト。
https://instagram.com/p/9CqJmnCuWw/

受賞者の一覧はこちらです。
http://www.dance.nyc/partner-resources/the-bessies/news

バレエ関係の受賞者としては、

傑出したプロダクション
ジャスティン・ペック 
『Rodeo: Four Dance Episodes』NYCB(ニューヨークシティバレエ)

傑出したリバイバル作品
アレクセイ・ラトマンスキー
『眠れる森の美女』 ABT(アメリカン・バレエ・シアター)

パフォーマンスにおける継続的な功績
アマール・ラマサール NYCB(ニューヨークシティバレエ)

また、傑出したパフォーマンス (Outstanding Performance)で、
笹本龍史
『OQ』 山崎広太振付、ジャパンソサエティ

が受賞しています。

受賞理由は
「並外れて素晴らしいダンサーたちのダンスの宮殿の中でも傑出した存在感と高い芸術性。流れるような奔流の中での現代的な感覚と、深くしみ込んだ”ロックとポップ”の感覚が結合した、終わることのない動きの流れ」


**********
山崎広太さんは、2007年にBAMハーベイ・シアターでの『Fagaala』で受賞しています。また、勅使川原三郎さんも、同年にリンカーンセンターでの『Bones in Pages』で受賞するなど、過去にも日本人の受賞者はいました。

『オーキュー(OQ)』のストーリーは、平安時代に始まったとされる宮中の歌詠みの会「歌会」と、鎌倉時代から興った「連歌」に着想を得て作られた作品で、「おうきゅう(王宮)」の雅やかな空気、野中で連綿する歌詠みの宇宙観を、山崎が繊細かつダイナミックな身体表現を以て再現していくというものだそうです。北米でツアーが行われていたようです。
http://www.dailysunny.com/2015/05/29/ev0529-9/


笹本龍史さんは、「舞台 死刑執行中脱獄進行中」に出演する予定です。

森山未來主演,長谷川寧演出にて、「ジョジョの奇妙な冒険」で知られる漫画家 荒木飛呂彦氏の短編作品、初の舞台化です。

◇東京公演11/20(金)~29(日)天王洲 銀河劇場
◇12月 仙台、広島、札幌、富山、大阪ツアー
http://ssds-st.com/
元Noismの宮河愛一郎さんも出演しています。

2015/10/20

悲劇のバレリーナ、タナキル・ル・クラークの伝記映画製作へ

ジョージ・バランシン、ジェローム・ロビンスという20世紀では最も重要な振付家のミューズであり、バランシンの4番目にして最後の妻だったタナキル・ル・クラーク。

長身で美貌に恵まれたタナキルは、15歳でニューヨークシティバレエに入団。バランシンの「シンフォニー・イン・C」「ラ・ヴァルス」「ウェスタン・シンフォニー」「コンチェルト・バロッコ」、そしてロビンスの「牧神の午後」の初演キャストでした。しかし26歳の時にツアー先のデンマークでポリオに侵され、脚が不自由となりダンサー生命を絶たれます。献身的にバランシンは看病するものの、やがて二人は離婚。しかしバランシン、そしてロビンスとの友情は生涯続き、タナキルは、ダンス・シアター・オブ・ハーレムの教師として活躍し、71歳まで一人で強く生きました。

タナキル・ル・クラークの生涯については「Afternoon of A Faun」という長編ドキュメンタリー映画が制作され、DVDにもなっています。
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2014/01/post-55d1.html

そのタナキルの伝記映画が、米ワインスタイン・カンパニーによって製作されることが明らかになっています。

http://eiga.com/news/20151020/19/

http://www.tracking-board.com/exclusive-the-weinstein-company-developing-biopic-about-ballerina-tanaquil-le-clercq/

タイトル未定の伝記映画のスタッフ、キャストは現在のところ未定だそうです。ワインスタイン・カンパニーは、ミラマックスを創業した映画業界の実力者、ハーヴェイ・ワインスタインとボブ・ワインスタイン兄弟が設立した独立系映画会社で、クエンティン・タランティーノやスティーヴン・フリアーズ監督らの映画を製作しています。最近では、数学者アラン・チューリングの伝記映画「イミテーションゲーム」(ベネディクト・カンパーバッチ主演)を製作。この映画はアカデミー賞の脚色賞に輝いています。

まだスタッフやキャストは未定ですが、美貌でも知られた伝説的なバレリーナの伝記映画ということで、誰が主演するのか、バランシンやロビンスを演じるのは誰なのか、非常に興味深いところですね。今回の映画は、特に50年代のバレリーナとしての短すぎる絶頂期、そしてバランシン、ロビンスとの三角関係を中心として描いているとのことです。

タナキル・ル・クラークとジャン・ダンボワーズが踊る「牧神の午後」


なお、タナキル・ル・クラークの生涯を、小説という形で発表した「ミスター・Bの女神 バランシン、最後の妻の告白」(ヴァーレー・オコナー著、鵺子訳)が出版されています。バランシンの他の妻たちと違って、タナキル・ル・クラークは自伝を書きませんでした。そのため、彼女の人生については、詳細がわからない点があります。この本は小説ではありますが、丹念なリサーチを行って限りなく真実に近い内容となっております。書評を書こうと思ってなかなかご紹介できませんでしたので、改めて記事を書きたいと思っています。彼女の人生の戦い、病に負けなかった強さ、バレエやバランシンに対する深い終生の愛が感じられて、とても感動的な一冊となっています。(僭越ですが、この書籍の「ダンスマガジン」誌広告に推薦文を寄せさせていただきました)

ミスター・Bの女神―バランシン、最後の妻の告白ミスター・Bの女神―バランシン、最後の妻の告白
ヴァーレー オコナー Varley O’Connor

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2015/10/19

エルヴェ・モローのレペットでの「月夜に煌めくエトワール」公演イベント

パリ・オペラ座のエトワール、エルヴェ・モローが、「月夜に煌めくエトワール」公演のリハーサルとプロモーションのために来日中です。

レペット銀座店でファンを集めてのイベントがありました。とても素敵な店内において少人数で、大変和やかな雰囲気でした。 すらりと背が高く長身のエルヴェ、足元はレペットの白いZiziの靴でした。

Resize06671

バレエを始めたきっかけは、二人の兄が柔道、テニスをやっていて5歳からスポーツしないといけなくて、子供達が踊っている作品を見てバレエやりたいと思ったとのことです。

レペットとの縁は、ボルドーのバレエ学校の時代にグレーのタイツ、バレエシューズ地元の店を通して注文していました。パリ・オペラ座学校に入ってからもガルニエ近くの店に通ったそうです。

日本には何回来たか数えていないけど初めて来たのは学校の14歳の時。仕事が忙しくなかなか時間がないけど、観光のためだけにも是非来てみたいとのことです。

今回の「月夜に煌めくエトワール」公演は、「まず皆さんに観て頂けるのが嬉しい。パーソナルな願いから生まれ僕が好きなアーティストとコラボレーションしました。初演の作品が観られるのは良いチャンスです。すでにニューヨークで上演した自作Lunaもネオクラシックの作品で好評で、エトワールガラで踊ったイリ・ブベニチェクの「月の光」、そして中村恩恵さんと創った「ツクヨミ」、さらにパトリック・ド・バナ作品ではマチュー・ガニオと踊る作品を見せられるのを嬉しく思います」とのことです。

質問タイム

Q オーレリーがオペラ座引退した後誰と踊りますか?
もちろんパリ・オペラ座の他のダンサーとも踊ることになるけど、オペラ座の外でオーレリーと踊りたいと思います。

Q何故そんなに背が高いのですか?
実は小さな頃は背が低く、オペラ座学校でも心配されて病院で診察されました。一年留年しているのですが、小柄過ぎて次の学年でやるリフトができないと判断されたからです。しかし運よく、17歳の時に急に背が伸びました。

Q.今後どんな振付家の作品を踊りたいですか?
今回の「月夜に煌めくエトワール」公演で好きな振付家と仕事をしたので、しばらくはあまり新しい人と仕事をしたいは思ってないけど、結局踊れなかった「大地の歌」を振りつけたノイマイヤーとはまた仕事したいです。

Q 以前にベジャールの「ボレロ」を踊る予定になっていましたが、その後どうなりましたか?
「ボレロ」はボルドー時代に観て、自分が固まってしまうほど感動した作品。ダンスの世界に入ったきっかけの作品で、現役を終えるまでには一度は踊りたいです。

Q.バレエダンサーとして必要なものは何ですか?
大切なのは情熱を持つこと、踊ることに情熱を持てること。心も身体もダンスに向けること、夢を持つことが大事。

Q 日本人の女性ダンサーと踊ったことはありますか?
ないのですが、パリ・オペラ座学校にいるミオという面白い子がいるのでいつか踊る機会があればいいと思います。他の日本人女性ダンサー、例えば東京バレエ団のダンサーとも踊る機会があればいいなと。今回、公演のために作品を創ってくれた中村恩恵さんは、以前にも仕事をしたことがあり、情熱を感じる人です。

Resize06682

大変爽やかで、気配りもあり微笑みを絶やさないエルヴェは、本当に素敵でした。そして、今回世界初演となる2作品、パトリック・ド・バナによるマチュー・ガニオとのデュオ作品、そして中村恩恵さんの創作「ツクヨミ」とも、順調にクリエーションが進んでいるとのことです。

日本だけの特別バージョンとなった、「月夜に煌めくエトワール」楽しみですね。チケットも非常に良く売れているようです。

「月夜に煌めくエトワール」公演サイト
http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/16_stars/index.html

公演日程
2016/1/10(日)18:00開演
2016/1/11(月・祝)15:00開演

会場
Bunkamuraオーチャードホール


愛知県芸術劇場公演(コンサートホールでの開催)
http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/etoile/

2016年1月13日(水) 19:00開演

2015/10/18

ロイヤル・バレエの元プリンシパル、デヴィッド・ドリュー逝去

ロイヤル・バレエで56年間も活躍してきた偉大なダンサーで教師だったデヴィッド・ドリューが亡くなりました。77歳でした。

http://dancetabs.com/2015/10/obituary-david-drew-royal-ballet-principal-with-the-company-56-years/

彼の長いキャリアの出発点には、タマラ・カルサヴィナ、ブロニスラヴァ・ニジンスカ、リディア・ロポコワ、レオニード・マシーン、ジョージ・バランシン、アリシア・マルコワ、セルゲイ・グリゴエフなどバレエ・リュスで活躍したダンサーや振付家たちがおり、彼らの薫陶をドリューは受けてきました。一方で、アリーナ・コジョカル、マリアネラ・ヌニェス、クリストファー・ウィールドン、デヴィッド・ドーソンなどのダンサー、振付家たちも教え、バレエの継承に力を注いできました。

「ロミオとジュリエット」キャピュレット公を演じたときのカーテンコール

1938年に生まれ、1954年にサドラーズ・ウェルズ・バレエ(現在のロイヤル・バレエ)に入団したドリューは、最初の出演作はレオニード・マシーンの「三角帽子」だったようです。マシーンが出演した映画「赤い靴」でのマシーンに魅せられてドリューはバレエの世界に入りました。もっとも有名な役の一つは、DVD化されているマクミラン振付「ロミオとジュリエット」(アレッサンドラ・フェリ主演)でのティボルトですが、他にも、たとえばニジンスカ振付「結婚」の上演の際に彼女の振付を再現したところなども映像に収められています。

1961年にソリストに、1974年にプリンシパルとなったドリューは、その後プリンシパル・キャラタクター・アーティストとなり、2003年に引退したのちも、ゲストとして立ち役でロイヤル・バレエの舞台に立ち続けました。最後の舞台は2011年の「ジゼル」でした。その後、病気のために舞台には立たなくなりましたが、モニカ・メイソン前芸術監督は、彼の代表的な役柄の一つである「ロミオとジュリエット」のキャピュレット公としての出演を待ち望んでいました。

ドリューは高い演技力が評価されていたダンサーで、アンソニー・チューダーの「Shadowplay」の初演キャストであり、ビントレーの「シラノ」ではデ・ギッシュ役を初演しました。マクミラン作品では、「マノン」の看守役を初演したほか(アンソニー・ダウエル主演「マノン」のDVDにも登場)、ムッシュGM役も演じていました。「マイヤリング」ではベイ・ミドルトン役を初演し、そして皇帝フランツ・ヨーゼフを演じました。また、マクミランの「ディファレント・ドラマ―」でのサディスティックなキャプテン役は彼のお気に入りの役でした。

キャピュレット公の他、「ロミオとジュリエット」ではマキューシオとティボルト、「ジゼル」ではウィルフリードとヒラリオン、「ハムレット」ではレアティーズとポロニアスを演じました。ロイヤル・バレエならではのドラマティックな役柄に魂を感じさせることで彼は良く知られていました。「火の鳥」のカースチェイ、「ペトルーシュカ」のショーマン、「白鳥の湖」ではロットバルト、アシュトンの「シンデレラ」では長姉、「マルグリットとアルマン」の父などを演じています。(彼の「火の鳥」のカスチェイ役は、ロイヤル・バレエ「火の鳥/結婚」のDVDに収められています)

アシュトン「シンデレラ」のアグリー・シスターズを演じるデヴィッド・ドリュー

また、デヴィッド・ドリューは、40年以上、ロイヤル・バレエの労働組合の代表として活躍し、それらの功績を称えられて大英帝国勲章(MBE)を受章しました。カンパニーの年金制度の創設にも関わり、労働条件の向上に務めました。ロイヤル・オペラハウスが改装工事をされた時には、リハーサル設備や追加の公演場所の必要性を強調し、その結果、Cloreスタジオとリンバリー・シアターが開設されました。

ロイヤル・バレエスクールでは卒業学年のパ・ド・ドゥクラスを担当しました。彼の生徒の中には、アレッサンドラ・フェリ、ダーシー・バッセル、サラ・ウィルドーなどがいました。また振付クラスでの指導に誇りを持っており、このクラスではマシュー・ハート、ポール・ライトフットなどが学びました。

ロイヤル・バレエスクールでパ・ド・ドゥクラスを指導するデヴィッド・ドリュー。(BBCのドキュメンタリー、「ダンサー」「バレリーナ」より)

デヴィッド・ドリューは振付の分野でも活躍して、6作品バレエ作品を振付けたほか、ミュージカルも何本も振付けています。中でも「カンタベリ物語」はロンドンで5年間上演され、ブロードウェイでも上演されました。また、バレエ作品のシナリオも書き、その中で「三銃士」はデヴィッド・ニクソンがノーザン・バレエのために振付け、エストニア国立バレエでも上演されています。ロイヤル・バレエで最近も上演された「レイヴン・ガール」は、ドリューが原作者オードリー・ニッフェンガーを振付家のウェイン・マクレガーに紹介したことから実現しました。

さらに近年においては、ドリューは失われたバレエ作品を再上演することにエネルギーと時間を割いていました。ロバート・ベルプマン振付の「Miracle in the Gorbals」(最後に上演されたのは1958年)を再上演するために2年をかけて調査を行っていました。

ロイヤル・バレエに長年貢献してきた彼の死を、多くのロイヤル・バレエのダンサーや元ダンサー、教師たちが悼んでいます。ロイヤル・バレエの「ロミオとジュリエット」の昨日の公演では、芸術監督ケヴィン・オヘアが公演をデヴィッド・ドリューにささげました。


ロイヤル・オペラハウスのサイトに載った訃報
http://www.roh.org.uk/news/david-drew-a-look-back-at-his-life-with-the-royal-ballet
同僚や教え子たちに深く愛されていたのが伝わってきます。

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2015/10/17

ABTの2016年METシーズンのキャスト

ABTの来年春のMETシーズンのキャストがメトロポリタン歌劇場のサイトで発表されています。

http://www.metopera.org/calendar#/all-events?year=2016&month=4

5月9日、12日 「シルヴィア」 マーフィ、ゴメス、ホワイトサイド
5月10日、14日昼 「シルヴィア」 セミオノワ、ボッレ、スターンズ
5月11日 14日夜 「シルヴィア」 ボイルストン、レンドルフ、シムキン
5月13日 「シルヴィア」 コチェトコワ、コルネホ、シムキン

5月16日 ガラ

5月17日、21日夜 ショスタコーヴィッチ3部作(ラトマンスキー)
コルネホ、ゴメス、セミオノワ、未定、コチェトコワ、シムキン、マーフィー、スターンズ

5月18日昼、19日 ラトマンスキーの新作、セブン・ソナタ、「火の鳥」
パールト、コルネホ、ゴラック、レーン、ホーヴェン、セオ、コープランド、レンドルフ、未定、アブレラ
5月18日夜、21日昼 ラトマンスキーの新作、セブン・ソナタ、「火の鳥」
アブレラ、パリス、スコット、ロイヤル、未定、シェフチェンコ、ボイルストン、ゴメス、ザービン、パールト

5月20日、23日 ショスタコーヴィッチ3部作(ラトマンスキー)
ボッレ、シリオ、パールト、ホワイトサイド、ロイヤル、シェイヤー、シェフチェンコ

5月24日、27日 「ラ・フィユ・マル・ガルデ」 ボイルストン、レンドルフ
5月25日昼、28日夜 「ラ・フィユ・マル・ガルデ」 マーフィ、スターンズ
5月25日夜、28日昼 「ラ・フィユ・マル・ガルデ」 コープランド、コルネホ
5月26日、29日 「ラ・フィユ・マル・ガルデ」 アブレラ、未定

5月31日、6月2日 「海賊」 コチェトコワ、コルネホ、レーン、シリオ、シムキン
6月1日昼、4日夜 「海賊」 パールト、スターンズ、トゥッシャー、ホワイトサイド、アン
6月1日夜、4日昼 「海賊」 マーフィ、レンドルフ、アブレラ、シムキン、シェイヤー
6月3日 「海賊」 セオ、ホワイトサイド、コープランド、未定、レンドルフ

6月6日、9日 「金鶏」(ラトマンスキー) パールト、ブラント
6月7日、10日 「金鶏」(ラトマンスキー) アブレラ、トレナリー
6月8日昼、11日夜 「金鶏」(ラトマンスキー) セオ、レーン
6月8日夜、11日昼 「金鶏」(ラトマンスキー) コープランド、コチェトコワ

6月13日、18日昼 「白鳥の湖」 セミオノワ、ゴメス
6月14日 「白鳥の湖」 ボイルストン、レンドルフ
6月15日昼 「白鳥の湖」 コープランド、シムキン 
6月15日夜 「白鳥の湖」 パールト、ホワイトサイド
6月16日 「白鳥の湖」 セオ、ボッレ
6月17日昼 「白鳥の湖」 マーフィ、スターンズ
6月18日夜 「白鳥の湖」 コチェトコワ、コルネホ

6月20日 「ロミオとジュリエット」 セオ、スターンズ
6月21日、25日夜 「ロミオとジュリエット」 ヴィシニョーワ、ゴメス
6月22日昼 「ロミオとジュリエット」 ボイルストン、未定
6月22日夜 「ロミオとジュリエット」 マーフィ、未定
6月23日 「ロミオとジュリエット」 フェリ、コルネホ
6月24日 「ロミオとジュリエット」 セミオノワ、ボッレ
6月25日昼 「ロミオとジュリエット」 コープランド、未定

6月27日、7月2日昼 「眠れる森の美女」 ボイルストン、ゴラック
6月28日 「眠れる森の美女」 マーフィ、スターンズ
6月29日昼 「眠れる森の美女」 トレナリー、ホワイトサイド
6月29日夜、7月2日夜 「眠れる森の美女」 セオ、未定
6月30日 「眠れる森の美女」 アブレラ、ゴメス
7月1日 「眠れる森の美女」 レーン、コルネホ

ABTのサイトにも、日ごとのキャストがアップされています。
http://www.abt.org/calendar.aspx?startdate=5/1/2016

全幕作品7本、そしてトリプルビル2本、さらにはガラと2か月弱の期間にギュッと詰まって大変なスケジュールのMETシーズンです。

2015年はとにかくロシア系のゲストが多かったのですが、今年はなんとロシアンゲストは0です。ゲストダンサーは現在のところ、「ロミオとジュリエット」1公演に出演するアレッサンドラ・フェリのみ。ABTとしては画期的と言えます。コチェトコワ、レンドルフ、シリオが移籍で加入し、アブレラ、コープランドがプリンシパルに昇進しました。また、ソリストに昇格したばかりのカサンドラ・トレナリーが「眠れる森の美女」に主演します。

一方で、現在のところ、デヴィッド・ホールバーグの出演予定がありません。ボリショイ・バレエとの出演の調整、そしてけがの回復の具合を待って、未定の枠に入ってくるのではないかと思われます。(「ラ・フィユ・マル・ガルデ」、「ロミオとジュリエット」、「眠れる森の美女」に男性ダンサーが未定の日程があります)また、ヴィシニョーワの出演予定が「ロミオとジュリエット」2公演のみと極端に少なくなっています。

例年、過酷なスケジュールのMETシーズンはけが人が続出して、外部のダンサーの助けを借りる羽目になっていますが、とりあえず今回は内部ダンサー中心のキャストが組めたので、今年ほどの深刻な事態にならないと思われます。(ならないでほしいですね)

「白鳥の湖」初演についての発見続き

10月7日に投稿した「白鳥の湖」初演失われていた資料が発見の続報について、New York Timesで記事が載ったので、ご紹介します。

※私は専門家ではないので、へぇ~と思ったことをメモ程度にまとめているため、あまり細かい突っ込みはご遠慮いただければと思います…。

http://www.nytimes.com/2015/10/14/arts/dance/swan-lake-discoveries-allow-for-a-deeper-dive-into-its-history.html

併せて、今回の発見をまとめた書籍がボリショイ劇場より発行されました。この書籍についての説明の動画(ボリショイ劇場のYouTube)がありますが、この動画に映し出されている本と解説も大変興味深いものです。

(この映像の中で、Sergei Konaev,氏は、当時バレエのリハーサルは2艇のヴァイオリンの演奏によって行われていて、チャイコフスキーはリハーサルを観るのを楽しんでいたと母親に語っていたと話しています)

前回の記事をおさらいつつ、今回のいきさつについて書いてみます。モスコワの芸術研究所の主席研究員であるSergei Konaev,氏が、ボリショイの古い建物で様々な発見をしました。1876年のリハーサルスコアが発見され、その中には、オリジナルの衣装、キャスト、その他の記述があったのです。これは、先週モスクワで行われたシンポジウムで発表されました。

そのシンポジウムに参加した音楽学の研究者でプリンストン大学の教授であるサイモン・モリソン氏(ボリショイバレエの歴史について研究)が、今回の発見について報告しています。

「セットや衣装の完全で正しい描写を与えてくれ、また何十もの演出のキューや指示、そして最後の洪水についての新しい詳細を教えてくれました。モスクワ帝室劇場のバレエマスター、Vladimir Petrovich Begichevがこのバレエのシナリオの作者であると解明しました。ライジンガーによる1877年のオリジナル初演においては、スコアはオリジナルの順番で演奏されていたということを確認しました。そして初演する予定だったバレリーナの名前が、チャイコフスキーが敬意を抱いていたプリマ・バレリーナの Lidiya Geytenであることも判明しました。彼女は、この音楽は自分のためのものではないと判断して降板するまで、このバレエのリハーサルに参加していました。また、1880年における、モスクワでの2回目の上演(Joseph Peter Hansen.演出)についても多くのことが話されました」

ライジンガ―も、Joseph Peter Hansenも、振付についてはさほど素晴らしいものではなくて、チャイコフスキーは主に、モスクワの舞台美術家Karl Valtsによる見事な舞台美術効果について熱狂したようです。Valtsもチャイコフスキーの音楽は素晴らしいと感じていたとのことです。Valtsは、自伝でこのように語っています。

「嵐のシーンでは、湖は堤防を越えて決壊し、洪水で舞台を埋めました。チャイコフスキーは、我々は本物の渦潮を再現し、湖を囲んでいる木の枝も折れて水の中に落ち、波にさらわれるべきだと主張しました」


この終幕の洪水は、「白鳥の湖」の1895年以降の多くの上演において省かれているものの一つです。(注:ヌレエフ版、クランコ版など洪水が出てくる演出はいくつかはあります)この大団円に物語に向っているということを、われわれに思い出させます。

1877年のスコアの最大の疑問は、いわゆる「黒鳥のパ・ド・ドゥ」と呼ばれているシーンにあります。ここの音楽は、チャイコフスキーは本来1幕で、王子ジークフリートがまだオディールにもオデットにも出会っていないところの場面のために書きました。チャイコフスキーは、3幕でオディールが踊った音楽はどの曲だったのでしょうか。

リハーサルのスコアにより、ジークフリートは、「村人1」とだけ表現されている若い女性と1幕のパ・ド・ドゥを踊ったことが判明しています。しかしこの女性は、この場面にのみ登場します。

オディールについては、3幕の舞踏会に現れるや否や、スコアではパ・ド・シスとしている複雑な踊りの組曲に参加します。新しい発見により、ライジンガーは、この組曲の最も驚くべき一曲、美しく悲痛なアンダンテ・コン・モートを使っていることが判明しました。これが悲劇的なクライマックスを導くと、バレエのスケールが宇宙的であると感じます。もし、この曲を、チャイコフスキーがもともとはオディールの踊りのために作ったと考えると、彼女のイメージが一変します。この音楽は、オデットのために書かれた曲同様、胸を刺すような、運命に翻弄される様子を描いているように聞こえます。

そして民族舞踊が続き、クライマックスの5曲目は、ジプシータイプのヴァイオリンソロを前面に出したルースカヤです。1877年においては、衣装を替えたオディールが、この曲を踊るために現れ、この音楽に合わせて踊ったオディールによってジークフリートは完全に誘惑されます。

この「白鳥の湖」のデータの集積を完全に吸収し検証するには時間がかかると思われます。新しい発見によって、このバレエの謎が解明されるというよりは、より迷宮の中に入り込むことになるでしょう。1877年のスコアを使って「白鳥の湖」を上演するという努力の成果は、現代においては、ブルメイステルによる1953年のモスクワでのプロダクションに現れています。しかしながら、今回の成果により、チャイコフスキーの本来の意図を舞台化するという試みの話はすでに浮上しています。

********
「白鳥の湖」のアンダンテ・コン・モートが、本来はオディールに使われていた曲だったということは非常に興味深いものです。この美しい音楽は、「白鳥の湖」の演出においてはいろんなシーンに使われています。4幕の悲しみに沈む白鳥たちに使われることもあれば、2幕冒頭の王子のソロでも使われることがあります。さらには、マシュー・ボーンの「白鳥の湖」では、王子が母の愛を求めてすがりつくシーンで印象深く使われていました。つまりは、チャイコフスキーは、オディールも非常に悲劇的な背景をもつ存在であると描きたかったのかもしれません。

音楽の順番が比較的チャイコフスキーの原典に近いブルメイステル版の「白鳥の湖」は、来年2月に東京バレエ団でも上演されます。
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/post-561.html

NBS WEBチケット先行販売:10月16日(金)9:00p.m.~10月22日(木)6:00p.m.
 [座席選択・対象S~D席]

一斉前売開始:10月31日(土)10:00a.m.~

お問い合わせ・お申込み
 NBSチケットセンター 03-3791-8888

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2015/10/16

マニュエル・ルグリが、ウィーン国立バレエ芸術監督の契約を2020年まで延長

ウィーン国立バレエの芸術監督(およびウィーン・フォルクスオーパー・バレエの芸術監督)を2010/11シーズンより務めているマニュエル・ルグリ。現在の契約は2017年まででしたが、このたび、2020年8月31日まで延長されることが発表されました。

http://diepresse.com/home/kultur/klassik/4844322/StaatsballettDirektor-Manuel-Legris-verlaengert-bis-2020

この任期は、ウィーン国立歌劇場総裁のドミニク・マイヤーの2期目の任期と同一となります。

「マニュエル・ルグリは、ウィーンをバレエの都市にしました。彼のリーダーシップの下で、ウィーン国立バレエは、オーストリアだけでなく国際的に成功し、非常に高い評価を誇っています」と木曜日にマイヤーはプレスリリースでルグリのことを評価しました。また、フォルクスオーパーの総裁ロバート・マイヤーも、「マニュエル・ルグリはフォルクスオーパーでも成功し続けることを嬉しく思います」と語っています。

「劇場内、および運営陣による貴重な支援を感じ、そして観客も熱狂してくれています。さらに5年間、私のカンパニーと共に歩めること、そして多くのエキサイティングなプロジェクトを導入することができることを喜ばしく思います」とルグリは語っています。

ウィーン国立バレエは新しいシーズンも始まり、来年3月には、ルグリ振付による新作「海賊」も上演されます。

7月に行われた沖縄公演、私も観に行きましたが、ティエリー・マランダンの作品など、バラエティに富んだ演目も楽しかったですし、カンパニーのクオリティの高さも実感しました。ルグリの就任により、カンパニーの存在感はますます大きくなっています。

なお、ウィーン国立バレエでは、日本人のピアニスト、滝澤志野さんが活躍しています。滝澤さんを取り上げた記事が読売新聞に掲載されています。
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/special/feature/CO006040/20151006-OYT8T50129.html

滝澤さんは、レッスンやリハーサルでの演奏だけでなく、バレエ公演での演奏もしています。ウィーン国立バレエの演奏は、ウィーン・フィルが演奏していますので、非常にクオリティが高いわけですが、その中で滝澤さんが頑張っているのは嬉しいことですね。また、橋本清香さん、木本全優さんの日本人ソリストも、たびたび主演するなど奮闘しています。

この「くるみ割り人形」のチェレスタを弾いているのも滝澤さんです。(パストラルには橋本清香さんも出演)

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2015/10/14

NHK-BS 10/17 Her Story「フィリピン 伝説のバレリーナ」

NHK-BSのドキュメンタリー番組「Her Story」で、10月17日(土)深夜に「フィリピン 伝説のバレリーナ」という番組を放送します。

http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2015-10-17&ch=11&eid=18830&f=etc

2015年10月18日(日) 午前3:00~午前3:20(20分) 

ロシアの名門マリインスキーバレエ団で史上初の外国人ソリストに登用されたフィリピン人バレリーナ、リサ・マクハ・エリザルデ(Lisa Macuja-Elizalde)。
母国に戻ってから、バレエ・マニラを創立、まだまだ、認知度の低いバレエ文化の普及に努めている。
また、次世代のダンサーを育成するために下部組織としてバレエ学校も設立。
才能ある子どもには奨学金制度を設けて教えている。
そのプロジェクトから、スラム街でスカウトされ、プロバレリーナとなり、貧困を抜け出した少女も育っている。スラム街で生まれ育ち、両親とともにゴミ拾いをしていたジェッサ・バロテだ。
リサが、なぜ、バレリーナとして成功できたのか?
その秘密と、若い才能を発掘して、未来のバレエダンサーを育てる現場を取材する。ジェッサらが出演する記念公演の舞台裏に密着し、リサの夢を描く。


この番組の英語版は、9月30日にすでに放映されており、こちらのNHKのサイトでオンデマンドで視聴できます。
http://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/tv/herstory/201509120600/

リサ・マクハ・エリザルデについては、今年の一月にバレエ・マニラを訪ねた鈴木晶氏のブログで詳しく書いてあります。フィリピンのバレエ事情が分かって非常に興味深いです。
http://shosbar.blog.so-net.ne.jp/2015-01-31

リサ・マクハ・エリザルデは、ワガノワ・アカデミーでナタリア・ドゥシンスカヤに師事しトップの成績で卒業しました。マリインスキー・バレエ初の外国人ソリストで、マリインスキーでの主役も「ドン・キホーテ」「くるみ割り人形」「ジゼル」などを踊っているほか、様々なコンクールでの受賞歴もあります。

フィリピン出身のバレリーナと言えば、ABTのプリンシパルに最近昇進したステラ・アブレラ(アメリカ国籍)がよく知られています。また、ボストン・バレエからABTに今年移籍したジェフリー・シリオも、フィリピン系アメリカ人です。

2015/10/12

ボリショイ・バレエの「ジゼル」生中継中

10月11日はボリショイ・バレエの「ジゼル」の中継です。現在中継中です。

今まで、ボリショイの生中継は、YouTubeではジオブロックされていましたが、今日の公演は普通に視聴できています。

https://www.youtube.com/watch?v=Emt57z3CE3c

ジゼルにスヴェトラーナ・ザハロワ、アルブレヒトにセルゲイ・ポルーニン、ミルタにエカテリーナ・シプリーナです。ハンス(ヒラリオン)はデニス・サヴィン、ペザントはダリア・ホフロワとイーゴリ・ツヴィルコ。
http://bolshoi.ru/performances/41/roles/#20151011180000

映画館での中継も行われています。(日本での劇場公開は未定)

追記
録画もしばらくは観られるようです。(観られなくなっていたらごめんなさい) モバイルやスマホではだめみたいです。私はChromeブラウザで観ています。
http://www.youtube.com/watch?v=Emt57z3CE3c


追記:この「ジゼル」ですが、ボリショイ・バレエ in シネマSeason 2015 – 2016として、日本でも映画館で上映されます。2015年11月11日(水)19:30~ 

上映される映画館のリストはこちら。
http://bolshoi-cinema.jp/venuelist.html

「ジゼル」映画館中継の予告編映像(2幕パ・ド・ドゥ)

ミルタのソロ(シプーリナのミルタ素晴らしいです)

ペザント・パ・ド・ドゥ (ダリア・ホフロワ、イーゴリ・ツヴィルコ)

2015/10/11

彩の国さいたま芸術劇場 ボワヴァン/ウバン/ラリュー『En Piste-アン・ピスト』

彩の国さいたま芸術劇場で、11月6日、7日に、フランスの3人の振付家ボワヴァン、ウバン、ラリューによる『En Piste-アン・ピスト』が上演されます。

http://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/3052

1980年代のフランス・ダンス界を席巻したヌーヴェル・ダンスの流れで活躍した
3人の現代ダンス振付家をフランスより迎えてお届けする本作。
レオ・フェレやセルジュ・ゲンスブール、エディット・ピアフなど、1968年~80年代のフランスを映し出すシャンソン16曲にのせ、
“アラ還”世代の3人の振付家が、手話のようなダンススタイル「シャンソン・ドゥ・ジェスト」で、
革命的であった当時に今の時代を重ね合わせて踊ります。

作品全体の映像を見せていただいたのですが、これがポップでキュートなところもあればユーモラスなところもあり、そして辛辣だったり、しんみりするところまでバラエティに富んでいて、とても面白い作品に仕上がっているんですよね。彼らが青春時代だったころが、ポスト5月革命の時代だったわけで、それらの時代へのノスタルジーとともに、かなり政治的な意味合いも込められたりしている側面もあります。人生経験を重ねた彼らならではの深みと、メッセージ性、エモーションが伝わってきました。パスカル・ウバンの美しい腕使いによる手話を使った動きなども印象的ですが、しっかりとした表現力豊かなダンスも観られるし、シャンソンの歌声、歌詞とも絶妙な結びつきが感じられて、かえって新鮮な感じすらします。

伝説的な振付家である3人による、この素敵なパフォーマンスが観られるのは本当に貴重な機会です。

ボワヴァン/ウバン/ラリュー『En Piste-アン・ピスト』
2015年11月6日(金)19:00開演/7日(土)15:00開演
彩の国さいたま芸術劇場
構成・振付・出演:ドミニク・ボワヴァン(リヨン・オペラ座バレエに『くるみ割り人形』)、パスカル・ウバン、ダニエル・ラリュー(94年~2002年トゥール国立振付センター芸術監督、。89年『風の薔薇』(関内ホール)と96年『デルタ』(神奈川県民ホール)にて来日)
音楽:バルバラ、レオ・フェレ、セルジュ・ゲンスブール、ジャック・ブレル、エディット・ピアフ他

料金
(税込) 一般4000円、メンバーズ3600円、U25 2000円


【チケット取扱い】
■SAFチケットセンター
・電話 0570-064-939(彩の国さいたま芸術劇場休館日を除く10:00~19:00)
 ※一部携帯電話、PHS、IP電話からは、ご利用いただけません。
・SAFチケットオンライン http://www.ticket.ne.jp/saf/

■プレイガイド
・イープラス http://eplus.jp
・チケットぴあ http://t.pia.jp
 0570-02-9999(音声自動認識/Pコード:445-686)
・ローソンチケット http://l-tike.com/
 0570-000-407(オペレーター対応)
 0570-084-003(Lコード:36567)

【お問い合わせ先】
SAFチケットセンター 0570-064-939(彩の国さいたま芸術劇場休館日を除く10:00~19:00)

2015/10/10

ミスティ・コープランドのドキュメンタリー映画と、ヨーヨ・マとの共演

ABTで初のアフリカ系アメリカ人プリンシパルとなった、ミスティ・コープランド。彼女の生い立ちから今までを追ったドキュメンタリー映画「A Ballerina’s Tale」が10月14日に全米で封切られ、またオンデマンドでもリリースされます。

http://www.huffingtonpost.com/entry/misty-copeland-documentary_56153872e4b021e856d30330

映画の予告編

その公開に先駆けて、ミスティはいろいろなメディアに登場しています。CBSの人気番組「レイト・ナイト・ウィズ・スティーヴン・コルベア」では、チェリストのヨーヨー・マと共演して、マルセロ・ゴメスが振付けた作品を踊りました。

番組では、トークもしています。

TIME誌のサイトでは、この時に踊ったゴメスの作品は、どんな音楽でもミスティはぴったり合わせることができる、という面白い動画が紹介されています。
http://time.com/4066214/misty-copeland-dance-secret/

「人々は、私が黒人であるという事実のほか、胸が大きい、筋肉質であるということという事実に基づいて判断していると私は思っています。でも、クラシック・バレエの世界には変化が求められています、この芸術は滅びようとしていると人々は考えているからです。変化がなければ、バレエは進化しないし存在し続けることができません。変化は起きなくてはならないのです」
映画は、ミスティの貧しい生い立ち、バレエを始めたのは13歳という遅いスタート、キャリアをもうすぐで終わらせるところだった大きな怪我との戦い、そして世間の偏見といったところを描いています。


New York Timesの記事によれば、2年前のテレビのパーソナリティ主催のパーティで、怪我から回復する途中だった彼女は映画監督のネルソン・ジョージに出会ったとのことです。ネルソン・ジョージはヒップホップやアフリカ系アメリカン・カルチャーについての映画で知られている存在でした。「彼女は、バリシニコフ以来のバレエ界のポップスターになると確信していたよ」

http://www.nytimes.com/2015/10/11/arts/dance/misty-copeland-on-pushing-ballets-boundaries.html

この記事の中での、二人の間の会話は興味深いものです。

Q この映画はどのような作品ですか?

ジョージ 「この映画は、伝記ではなくて、危機に直面している瞬間のアーティストを捉えたものなのです」

コープランド 「そして、バレエ界における多様性の欠如、アフリカ系アメリカ人のバレリーナが少ないことについて、詳しく語っているのです。これが、最初から私が求めていたことです」

Q あなたは、自分が黒人のバレリーナであるという事実を強調しているということについて、キャリア的に後悔したことはありませんか?

コープランド 「全くありません。それは必要なことだったのです。過去のダンサーたちもそのことについて話してきましたが、私のようなプラットフォームによりものではなくて、それは大きな違いです。私が黒人であることは私の一部であり、私の人生とそこでの苦闘における経験の一部です。今までの道のりは簡単なものではなくて、その理由の多くは、私がアフリカ系アメリカ人であり、私たちの多くはそのためにいろんな経験をしてきました。私が一定の知名度を得たり成功したことは、偶然のことではないし、黒人であることは今でも私の一部です。私が今プリンシパルになれたことで、そのことが消えてなくなるわけではありません」

ジョージ 「もし、彼女が『私はちょっと黒人の血が入っていて、こういう人です』という態度だったら、人々は、そうか、彼女は単にゲームに参加しているだけだと思うでしょう。でも、彼女にとってはゲームではなかったのです。黒人であるという点が重要だという事実から彼女は逃げませんでした。もし、彼女が自分の血を受け入れて大事にしていなかったら、そのことはここまで重視されなかったことでしょう」

Q この映画の中で、ABTの前エグゼクティブ・ディレクター、レイチェル・ムーアのような人々が、あなたはもっと集中すべきことがあると感じていたのがわかります。同じようにあなたは感じていましたか?

コープランド 「この映画が撮影され始めた時、私は体重を落とすようにと言われていました。私は、道に迷っていて、何に集中すればいいのかわからなくなっていました。どのように自分を扱うべきかわからなくなっていました。誰も私を導いてくれなかったし、仕事の時も、ここが私のいるべき場所だと思えなくなってきて、漂い始めていました。多くのダンサーがこのような経験をしています。私たちは大人になっていません。バレエに集中していてばかりいたので、大人になるための技術を得られていませんでした」

ジョージ 「彼女の物語は、並外れた枠組みの中での、ありふれたものです。これはすべてのダンサーに起こりえることです。怪我をする可能性、『私はプリンシパルになれるのかしら?』という不安。でも、ここで人種問題が出てくると、すべてのことがより厳しい賭けになっていきます。そしてこの映画は、そのことを扱っているのです。『彼女は今怪我をしてしまいました。これは、どんなダンサーでも経験することです』。その通りです。でも、その側面においては、ありふれた話なのです」

Q クラスレッスンの時、フラストレーションを見せていますね。「どうしてこの映画を撮影することに同意したのか?」と思いませんでしたか?

コープランド 「いえ、私はそのように感じませんでした。彼がそこにいたからではなく、その時に、フラストレーションがあるプロセスだったのです。Steps(NYのオープンクラスのスタジオ)の端に座って、何日も泣いていました。何が起きるかわからなかったからです。それは無理だ、と思いました」

ジョージ 「この映画は最もハッピーと思える終わり方をしますが、そのように終わるという保証は、その時はなかったんです」

*******
プリンスとの共演、再生回数933万回を記録したアンダーアーマーのCMへの出演、TIME誌の表紙、そしてABTのプリンシパルへの昇格と映画の公開。ミスティ・コープランドは間違いなく知名度では全米でナンバーワンのバレリーナとなったようです。今までバレエを観たことがなかった層や、若い人たちが劇場に詰めかけるようになって、彼女が出演する日のチケットはソールドアウトになっているようです。メジャーなメディアにバレリーナがたくさん露出することは素晴らしいことですし、人種の壁を越えて努力したことも素晴らしい功績です。

ただ、ミスティを一人のバレエダンサーとして見たときには、まだ技術的に物足りない部分や、まだ自分のものにできない役柄があることも否めません。とはいえ、まだ彼女はプリンシパルに昇格したばかり。これからどのように成長していき、実力も歴史に残るようなバレリーナになっていく過程を見守っていければと思います。

2015/10/08

Noismの「カルメン」再演と、平田オリザ脚本新作「ラ・バヤデール」

精力的な活動を続ける、金森穣さん率いるNoism。

Noism設立10周年の記念作品として2014年に上演し多くの話題を呼んだNoism1&Noism2合同公演、劇的舞踊『カルメン』が再演されます。

Noism1×Noism2 劇的舞踊『カルメン』再演 
演出振付:金森穣
音楽:G. ビゼー《カルメン》 オーケストラ版&組曲版&交響曲版より
衣裳:Eatable of Many Orders
家具:近藤正樹
映像:遠藤龍
出演:Noism1 & Noism2、奥野晃士(SPAC- 静岡県舞台芸術センター)

【新潟公演】※公演情報ページはこちら
2016年 1/29(金)19:00、30(土)17:00、31(日)15:00
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館≪劇場≫
 
【神奈川公演】※公演情報ページはこちら
2016年 2/19(金)19:00、20(土)17:00、21(日)15:00
KAAT神奈川芸術劇場≪ホール≫
 
チケット
11/14(土)一般発売開始
11/12(木)N-PAC mate(りゅーとぴあ友の会)&KAme(かながわメンバーズ)先行発売

http://noism.jp/news_1007_carmen/

とてもドラマティックでパワフルな舞台でした。再演でどのようにバージョンアップされるのでしょうか。


そしてもう一つ、Noismの来年の公演情報が。なんと、劇作家の平田オリザさんが、『ラ・バヤデール』を翻案して新作を書き下ろします。平田オリザさんのブログの昨年のエントリでも、このことに触れていました。

劇的舞踊『ラ・バヤデール − 東洋の幻』(仮)
http://noism.jp/npe/la-bayadere_niigata/

Noism1×Noism2

演出振付:金森穣
脚本:平田オリザ
空間:田根剛(DORELL.GHOTMEH.TANE / ARCHITECTS)
衣裳:宮前義之(ISSEY MIYAKE)
出演:Noism1 & Noism2、ゲスト俳優(SPAC − 静岡県舞台芸術センター)

日時
新潟公演:2016/6/17(金)- 19(日)
神奈川公演:2016/7/1(金)- 3(日)予定
兵庫公演:2016/7/8(金)- 9(土)予定
愛知公演:2016/7/16(土)予定
静岡公演調整中

会場
りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館〈劇場〉 ほか


古典バレエの『ラ・バヤデール』を平田さんと金森さんがどのように翻案するのか、今から楽しみで仕方ありません。

ウリヤーナ・ロパートキナのイェール大学でのレクチャー&パフォーマンス、ネット中継

現代最高のバレリーナの一人であるウリヤーナ・ロパートキナ(マリインスキー・バレエ)。その彼女が、イェール大学の音楽学部に招かれ、10月13日~15日の3日間、レクチャーとパフォーマンスを行います。

http://news.yale.edu/2015/10/06/yale-school-music-presents-prima-ballerina-performance-and-conversation

http://music-tickets.yale.edu/single/eventDetail.aspx?p=15128

これらのレクチャーとパフォーマンスはすべて無料で(ただし観覧の申し込みは必要)、インターネットで生中継されます。(ストリーミングのサイトはこちら

10月13日(火曜)16時にには、レクチャーとデモンストレーションが行われます。ロパートキナは、バレエダンサーのキャリアにかかわる技術的な問題やトピックについて話します。質疑応答も行われます。

15日(木曜)12:30には、イェール大学のダンス研究所のディレクターEmily Coatesと、音楽学部長のRobert Blockerと対談します。

そして14日(水)19:30からは、ロパートキナがアンドレイ・エルマコフと共演してパフォーマンスを行います。「ロシア・バレエの3つの伝説」と題された公演は、アンナ・パヴロワ、ガリーナ・ウラノワ、そしてマイヤ・プリセツカヤのロシア3大バレリーナへのトリビュートとなります。3人のバレリーナの映像も上映されます。

ロパートキナが踊るのは、「白鳥の湖」のルースカヤ、「ショピニアーナ」のワルツ、メッセレル振付の「メロディ」、そしてローラン・プティ振付「薔薇の死」。そして締めくくりには、パヴロワ始め3人の偉大なバレリーナたちも踊った「瀕死の白鳥」が踊られます。

イェール大学がある米国コネチカット州と日本の時差は14時間です。14日の公演は、日本では15日の朝9:30となるので、仕事の時間に重なりそうですが、頑張れば観られそうですね。

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2015/10/07

「白鳥の湖」初演の失われていた資料が発見

1877年の「白鳥の湖」の初演(ボリショイ劇場)については、未だ謎に包まれている部分があります。しかし、火曜日にモスクワで行われたカンファレスで、最近になって発見された資料が、この初演についてのいくつかのヒントとなりそうです。

Discoveries Clear the Mists From the Original ‘Swan Lake’
http://artsbeat.blogs.nytimes.com/2015/10/06/discoveries-clear-the-mists-from-the-original-swan-lake/

現在多くの「白鳥の湖」は、1895年にマリインスキー劇場で初演された、プティパ/イワーノフ版に基づいています。この版は、チャイコフスキーが亡くなった後に振付けられたもので、リッカルド・ドリゴが編曲したものです。1877年ボリショイ劇場における初演は、ジュリウス・ライジンガーによって振付けられていますが、不評だったとのことで、まだ判明していない部分が多い作品です。

モスクワの芸術研究所のリサーチャーであるSergey Konaevは、この初演版「白鳥の湖」についてのいくつかの疑問を解くカギをいくつか発見しました。その中には、ドリゴ編曲によって変えられてしまったスコア、リブレット(台本)の著者、そしてキャスト、衣装についてのヒントがありました。

彼が発見した資料の中には、失われていたと思われていたヴァイオリンのリハーサルのスコア、それぞれのオーケストラ・リハーサルのメモが書かれたヴィオラのパート譜、そして劇場と製作部門の経理帳簿を含んだ重要な経理記録がありました。(この中で、「白鳥の湖」というタイトルは、チャイコフスキーが作曲する前の1875年に記述が現れています)

これらの発見によって、いくつかの問題とされてきた点が明確になったと、プリンストン大学の音楽教授であるサイモン・モリソンはメールで述べています。「これでシナリオの著者、初演を予定されていたバレリーナ、そしてオリジナルの衣装とデザインの特徴も判明しました。これらの事項は、今までは学者たちの推測に基づいていましたが、重要なソースは未入手だったのです」

これらの記録を分析した結果、この作品にかかわっていると考えられていたものの、裏付けがなかった、ボリショイ劇場の役員であったVladimir Begichevによってリブレットは書かれたことが証明されました。また、初演のバレリーナは、リハーサルには参加したものの降板したLydia Geitenであったこともわかりました。彼女は、チャイコフスキーのスコアに反対したために降板したようです。Konaev氏によれば、彼女はチャイコフスキーの音楽が退屈だったため、彼の最初のバレエを踊ることを拒否したという彼女の言明が、新しい資料によって証明されたそうです。また、今回の資料によって、1880年にボリショイ劇場で行われた改訂版にも光を当てたとのことです。

新しく発見された資料は、研究者、バレエファン、そしてチャイコフスキーのファンにとって大変興味深いものでしょう。長年、初演版は洪水で終わる悲劇的なものであったと知られています。Konaev氏によれば、今回発見された資料により、チャイコフスキーは最後の大嵐でのプロダクションの詳細部分に特に強い関心を持っていたとのことが判明したそうです。

********
様々なバージョンが生み出されてきた「白鳥の湖」。ロシアのクラスノヤルスクク国立オペラ・バレエ劇場では、昨年10月に、初演版に準拠した「白鳥の湖」が上演されました。(セルゲイ・ボブロフ振付)

また、近年、初演に準拠した「眠れる森の美女」や「パキータ」を再振付してきたアレクセイ・ラトマンスキーは、チューリッヒ・バレエにおいて、「白鳥の湖」の再振付を行います。(ミラノ・スカラ座バレエとの共同制作)初演は、2016年2月6日。

http://www.opernhaus.ch/en/activity/detail/-5a44b0b735/

Dance Magazineのラトマンスキーについての記事
http://dancemagazine.com/inside-dm/bringing-the-past-alive/
チューリッヒ・バレエでの「白鳥の湖」は、ステパノフの舞踊譜に基づくものになるそうです。

NHKハートネット ブレイクスルー File.38 “唯一無二”になる ―ダンサー・大前光市―

もう放映が終わってしまった番組のご紹介で恐縮なのですが、とても良い番組だったのでご紹介します。

9月28日に放映された(10月5日再放送)NHKEテレのハートネット ブレイクスルー File.38では、ダンサーの大前光市さんを取り上げていました。

http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/calendar/2015-09/28.html

大前さんは、23歳の時、入団オーディション前日に酒酔い運転の車にはねられて左脚を切断する大けがを負いました。ダンスの仕事を失い、アルバイトをしても人と同じようには動けないのですぐにクビになってしまう。絶望の淵にあった彼が、義足を外して踊ったことが転機となり、「怖いものはなくなった」。この身体でしか表現できないことをしようと自分なりのダンスを見せるために文字通り血のにじむ努力をします。バレエのクラスに初心者に交じって通い、体操、アクロバットなどダンスに役立つものに取り組みます。

なかでも印象的だったのが、彼の師の一人である、舞踊家佐藤典子さんの言葉。「人間は生まれながらに定められた自分の台本を持つ。それは変えられない。でもだからこそ、その台本を自分らしく演じきらなくては」。佐藤さんの娘さんもバレエを踊っていましたが、20代の若さで骨肉腫を発症して脚を切断。そののち亡くなってしまいます。亡くなった娘さんに、大前さんの姿を重ねているようでした。そして大前さんは、この身体だからこそできるダンスを踊ろうと決意します。

表現を磨くために、大前さんは、新国立劇場バレエ団のマイレン・トレウバエフの指導も仰ぎ、彼の作品「SWAN」をリハーサルする様子も番組では登場していました。義足をつけて「パリの炎」のヴァリエーションも踊るというガッツ。義足を普通より長いものにして、その義足を軸足にして踊るダンスも見せます。発表会で踊ったピエロも非常に魅力的なものでした。

大前さんは、ダンス集団Alphactに参加しています。
http://www.alphact.jp/artist/omae/

パリ・オペラ座バレエ団の公演でも踊ったことがあるバレエ・ダンサーの大柴拓磨さんら、様々なジャンルのダンサーたちによるこのユニットは、なかの国際ダンスコンペティション創作部門に大柴さんの作品「Login」で出場しました。結果は2位。

片脚で踊っているから凄いとか、そういうことではなくて、純粋にダンスとして素晴らしく心を打たれる踊りをするダンサーだと見ていて思いました。大柴さんが、大前さんをAlphactに誘った理由もそこ、彼のダンスを見て素晴らしいダンサーだと思って、よく見たら脚が片方なかった、ということだったそうです。大前さん、純粋にダンスを踊るのが今は楽しくて仕方ないように見えて、こちらもとても胸が熱くなりました。思わず背筋を正さなくては、と思うほどに。

大前さんのブログ
http://ameblo.jp/shinka0927/

大前さんは、11月10日(火曜日)19時開演でダンス公演を東京、練馬で行います。普段は関西で活動している大前さんの踊りを観る機会です。
http://taichokouen.blogspot.jp/2015/09/normal-0-0-2-false-false-false-en-us-ja.html?m=1

第4回 Dance Creation Award 2014で審査員特別賞を受賞した『目覚めよと叫ぶ声が聞える』
http://www.chacott-jp.com/magazine/news/concours/4-dance-creation-award-2014.html

2015/10/06

「トップランナー 金森穣(2003年放映)」10/11再放送

Noismの芸術監督で振付家の金森穣。日本のダンス界をけん引する彼が、Noism設立前の2003年に出演した番組「トップランナー」。多くのリクエストに応えて、このたび再放送が決定しました。

Noism設立メンバーである井関佐和子さん(現・副芸術監督)と、島地保武さんも出演しています。

NHK Eテレ
2015年10月11日(日) 午前0:00~午前0:45(45分) *土曜深夜
http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2015-10-10&ch=31&eid=13985&f=1662

金森穣(かなもりじょう)。17歳でヨーロッパへ渡り、バレエ界の巨匠モーリス・ベジャール、イリ・キリアンに師事。2001年よりフリーで活躍。世界的評価を受けている。2003年にスウェーデン国立エーテボリ・バレエで新作「SIDE IN/SIDE OUT」を発表。番組では当時の新作の映像やワークショップを紹介しながら、スタジオトークによる金森流「演出振付」「ダンス」を伝えていく。


2015/10/05

10/4 バットシェバ舞踊団「DECADANCE-デカダンス」

振付家オハッド・ナハリン率いるバットシェバ舞踊団。今回の公演「DECADANCE - デカダンス」は、ナハリンの代表的な作品のハイライトシーンをつなげた、いわばナハリン・グレイテスト・ヒッツ。

http://dance-yokohama.jp/eventprogram/decadance/

「DECADANCE」というタイトルの上演は、今ちょうどニューヨークでも公演中のジュニア・カンパニー、バットシェバ・アンサンブルも行っているのだが、微妙に上演作品が違っている。「DECADANCE」は、毎回少しずつ上演する作品を入れ替えているようだ。

今回上演された「DECADANCE」は、以下の作品からの抜粋。
Z/na (1995),
Anaphase (1993)
Mabul (1992)
Naharin's Virus (2001),
Zachacha (1998),
Sadeh21 (2011),
Telophaza (2006),
Three (2005),
MAX (2007)

世界中のバレエ団で上演されている、あまりにも有名な「アナフェイズ」(「マイナス16」、というタイトルの方が知られているかもしれない。半円形にずらり並べられた椅子に座ったダンサーたちが、一枚ずつ服を脱いでいく)から始まる、めくるめくナハリン・ワールド。

(こちらはスペイン国立ダンスカンパニーの「マイナス16」映像)

CND, Minus 16 from COMPAÑIA NACIONAL DE DANZA on Vimeo.

構成が巧みで一つの流れをしっかり作っているので、つぎはぎ感、寄せ集め感はない。ナハリンの作品の多くには、テーマ性やコンセプトがあったり、政治的なメッセージの隠喩も感じられたりするのだが、今回はこれらのコンテクストや物語性はすべてはぎ取られ、純粋なダンスとしての動きとして観ることになった。

そうすると、作品の中に、意味などなくてもダンスの動きだけでも十分魅せることができる、それだけの力量がある振付家ということを実感できた。「アナフェイズ」はもちろん、「MAX」、「テロファーザ」、「SADEH21」など自分が観てきた最近の作品が、メッセージ性を取り払われ、コラージュされているのを観るのも面白いし、同時に、それらの作品を観たときの自分の感情を反芻しながら観ることもできる。コンテクストが取り去られていると、振付の妙味や独自性、ダンサーたちの並外れた能力を改めて感じることができた。

中でも「SADEH21」は衝撃的な作品だっただけに、あの強烈すぎるメッセージがなくても、ダンス作品として本当に凄いんだな、と実感した。決して難解ではなく、ダンスなんてほとんど見たことない人でも楽しめるのがナハリン作品。それでいて、音楽や声の使い方も心憎いばかりにオリジナリティがあり、様々なアイディアにあふれている。男性同士のセンシュアルなタンゴ、デュオ、パ・ド・トロワなど組み合わせは自在だし、3グループに分かれて順番に様々なインプロヴィゼーションを披露する「スリー」は、ユーモラスなところもあり、なんじゃこりゃと思うけど、めちゃめちゃ面白い。

これはこれで非常に楽しいし、ダンスそのものが持つ力を存分に堪能できて最高なんだけど、ナハリンの一つの作品というのもやはり観たい、という気持ちもある。しかしダンスの魅力を幅広く新しい観客に提示するということでは、「DECADANCE」はとても有効だったのではないかと思った。

そして改めて驚かされるのがダンサーたちの身体能力の凄さ。恐るべき強靭さ、しなやかさ、身体性、肉体の存在感の強さ。男性同士でも軽々~とリフトしたりコンタクトしたり。どれだけダンサーたちは体幹が強いんだろう。これもGAGAメソッドのたまものなのだろう。数字を数えながら、それに対応していく動きをダンサーが見せていくところは、何回観ても凄い。一体どうやって動きを身体に覚えさせているのか。跳びかかろうとする獣のように野性的で柔軟、身の詰まった肉体の彼らの動きを見ていると、ああ、生きているんだな、という実感を呼び覚まされる。だからこそ、「アナフェイズ」では観客を舞台上に上げて踊らせるという趣向があるんだな、と感じた。だって、自分たちだって突き動かされて踊りたくなるもの。

GAGAメソッドのワークショップ、3年前にさいまたで受けたけど、また受けたい。
(なお、愛知公演、北九州公演に付随して、それぞれバットシェバ舞踊団ダンサーによるGAGAワークショップが実施される)
http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/decadance/index2.html
http://www.kitakyushu-performingartscenter.or.jp/entry/2015/0928gaga.html

SADEH21

2015年10月7日(水) 19:00開演 愛知県芸術劇場大ホール 
http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/decadance/
2015年10月11日(日) 14:00開演 北九州芸術劇場
http://www.kitakyushu-performingartscenter.or.jp/event/2015/1011bat.html

2015/10/03

ハンブルグ・バレエ「タチヤーナ」、11/23 NHK-BSプレミアムで放映

ジョン・ノイマイヤーは、アレクサンドル・プーシキンの韻文詩「エフゲニー・オネーギン」をもとに、タチヤーナを主人公にしてバレエを振付けました。それが「タチヤーナ」です。

ジョン・クランコの「オネーギン」とストーリーはほぼ同じなれども、表現はかなり違っている作品で、音楽は、「人魚姫」の音楽も作曲したレーラ・アウヘルバッハ。ハンブルグ・バレエは、昨年は、「オネーギン」と「タチヤーナ」の両作品を上演していました。モスクワ音楽劇場バレエとの共同制作品であるため、モスクワ音楽劇場では、ディアナ・ヴィシニョーワがタチヤーナ役を演じました。

http://www.hamburgballett.de/e/_tatjana.htm

この「タチヤーナ」が早くも収録され、NHK-BSプレミアム「プレミアムシアター」で放映されます。
http://www.nhk.or.jp/bs/lineup/pdf/bsp_nextmonth.pdf

11月23日(月)午前0:10~ (日曜日の深夜です)

ハンブルグ・バレエ「タチヤーナ」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:レラ・アウアーバッハ
出演:エレーヌ・ブーシェ、
    エドヴィン・レヴォゾフ、
    レスリー・ハイルマン、
    アレクサンドル・トルーシュ、
    カールステン・ユング

ちょうどジョン・ノイマイヤーの京都賞授賞式の後であり、また既報の通り3月には来日公演も予定されているので、ちょうど良いタイミングです。


なお、この「タチヤーナ」の放送に引き続き、再放送ですが、ロイヤル・バレエの「アシュトン・セレブレーション」も放映されます。

ロイヤル・バレエ「アシュトン・セレブレーション」
曲目:(M1)ラ・ヴァルス(ラヴェル)
    (M2)マルグリットとアルマンほか
    (フランツ・リスト)
出演:(M1)小林ひかる、平野亮一、
    サマンサ・レイン ほか
    (M2)タマラ・ロホ、
    セルゲイ・ポルーニン ほか
     英国ロイヤル・バレエ団
振付:フレデリック・アシュトン
管弦楽:コヴェントガーデン王立歌劇場管弦楽団
指揮:エマニュエル・プラッソン


また、11月9日(月)の「プレミアムシアター」では、モンテカルロ・バレエの「LAC」の再放送もあります。

モナコ公国モンテカルロ・バレエ
「LAC~白鳥の湖~」

音楽:バレエ音楽「白鳥の湖」
    (チャイコフスキー作曲)
出演:ベルニス・コピエテルス、
    アニヤ・ベーレント、
    エープリル・バール、
    ステファン・ボルゴン、
    モンテカルロ・バレエ団
振付:ジャン・クリストフ・マイヨー


今週末10月5日(月)0:00~には、バレエではありませんが、プレミアムステージで新国立劇場での公演、
「かがみのかなたはたなかのなかに」が放映されます。

「かがみのかなたはたなかのなかに」
出演:首藤康之、長塚圭史、
    松たか子、近藤良平
作:長塚圭史
音楽:近藤良平

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2015/10/02

ワールド・バレエ・デー2015

10月1日のワールド・バレエ・デー、皆さま楽しまれたことでしょうか?

http://worldballetday.com/

今年はオーストラリア・バレエ、ボリショイ・バレエ、ロイヤル・バレエ、ナショナル・バレエ・オブ・カナダ、サンフランシスコ・バレエに加えて、その他のカンパニーも映像などで参加して、多彩な催しとなりました。私もこの日は仕事がなかったので、オーストラリア・バレエからナショナル・バレエ・オブ・カナダまで、(途中で食事したりお風呂入ったりしながら)18時間も見続けて、楽しいながらもぐったり、の一日でした。

オーストラリア・バレエは、マッカリスター版「眠れる森の美女」のリハーサル、そしてStephen Baynesという振付家の作品のリハーサルが見ごたえがありました。「眠れる森の美女」は青い鳥がチェングゥ・グォ、フロリナ王女が近藤亜香さん、そして妖精の一人に久保田美和子さん、オーロラにラナ・ジョーンズ、王子にケヴィン・ジャクソンで、皆、非常に素晴らしかったです。特にチェングゥ・グォの跳躍とブリゼ・ボレは凄い。オーストラリア・バレエは、カンパニーのピアニストも素晴らしいです。

ボリショイ・バレエは、「ボリショイ・バビロン」にも出演していたボリス・アキモフ指導によるクラスレッスンが素晴らしく、またラトマンスキー振付「ロシアン・シーズン」の振付指導も興味深かったです。アレクサンドロワ、クリサノワ、チュージン、ロヂキン、ニクーリナ、シプーリナなどのスターのクラスレッスンは眼福でしたし、ボリショイのダンサーたちの身体能力には目を見張りました。しかしフィーリンの姿は影も形もないのが気になりました。また、モンテカルロ・バレエ、そしてNDTのポール・ライトフットのSkype参加、さらにはモスクワ音楽劇場バレエから「白鳥の湖」(ソーモワ、ポルーニン主演)の映像なども。

ロイヤル・バレエは、ローレン・カスバートソンとフェデリコ・ボネッリの「ロミオとジュリエット」のドレスリハーサル、崔由姫さんとアレクサンダー・キャンベルの「二羽の鳩」のリハーサル、新星マシュー・ボールが踊る、アコスタ振付「カルメン」のエスカミーリョのリハーサル、スティーヴン・マックレーのタップ作品「チャルダッシュ」が観られて楽しかったです。平野亮一さんのマクレガー「レイヴン・ガール」、ラウラ・モレーラのリアム・スカーレット「Viscera」も見ごたえありました。また、この枠の中で登場したENBのアクラム・カーン振付「DUST」(高橋絵里奈さん、ジェームズ・ストリーター)、ノーザン・バレエのデヴィッド・ニクソン振付「嵐が丘」、スコティッシュ・バレエのデヴィッド・ドーソン振付「白鳥の湖」の振付指導も面白かった。特にドーソン本人が指導した「白鳥の湖」は美しくもユニークな作品でした。デヴィッド・ビントレー、タマラ・ロホら英国のカンパニーの芸術監督たちによる対談、パーキンソン病患者へのバレエの取り組みなども紹介されました。

アクラム・カーン振付「DUST」

ドーソン振付「白鳥の湖」

ナショナル・バレエ・オブ・カナダは、モントリオールでの旅公演。スヴェトラーナ・ルンキナのクラスレッスンの模様が観られたのが良かったです。また、ゲッケの「薔薇の精」マクレガーの「クローマ」のゲネプロを見ることができました。ルンキナ、エヴァン・マッキーの主役ペアを始め精鋭のキャストで、「クローマ」という作品の複雑でスリリングなところをたっぷり堪能。途中、ボストン・バレエとABTの映像も紹介され、ボストン・バレエでは倉永美沙さんの「くるみ割り人形」そして「パ・ド・カトル」、ABTではマルセロ・ゴメス、ジェフリー・シリオらのインタビューが登場しました。

さすがにサンフランシスコ・バレエのパートではもう寝なければならなくて観られなかったのですが、今回のワールド・バレエ・デーの映像は、BBCがホストする特設サイトで30日間、全部のアーカイブを残してくれます。見逃した方も大丈夫。さらに、抜粋は各カンパニーの公式YouTubeにもアップロードされます。

オーストラリア・バレエの全編

ロイヤル・バレエの全編

ナショナル・バレエ・オブ・カナダの全編 (残念ながら、「クローマ」の大部分は削除されてアップされ直されていました)

ボリショイ・バレエの全編

サンフランシスコ・バレエの全編

踊っている映像や写真を世界中から募集したものをまとめた動画Dance Anywhere Challenge も、楽しいですね。

そしてBBCのサイトでも、いくつかの抜粋映像がアップされています。
http://www.bbc.co.uk/programmes/p03424qz

ABT紹介映像、カナダの「クローマ」のゲネプロ、ロイヤルの「ロミオとジュリエット」バルコニーシーンや「レイヴン・ガール」のリハーサル、タマラ・ロホなどです。

ヒューストン・バレエの映像(「マノン」の舞台映像も)

ボストン・バレエの映像 (「マーラー交響曲3番」、倉永美沙さんの金平糖リハーサルなど。倉永さんのピルエット凄い!)

2015/10/01

ハンブルグ・バレエ2016年3月日本公演

ハンブルク・バレエ団2016年日本公演の概要が発表されています。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/2016-2.html#002253

「リリオム─回転木馬」 プロローグ付全7場(休憩1回)

3月4日(金) 6:30p.m. 
リリオム:カーステン・ユング ジュリー:アリーナ・コジョカル
3月5日(土) 2:00p.m.
リリオム:カーステン・ユング ジュリー:アリーナ・コジョカル
3月6日(日) 2:00p.m.
リリオム:カーステン・ユング ジュリー:アリーナ・コジョカル

カーステン・ユング、アリーナ・コジョカル、そして作曲のミシェル・ルグランが「リリオム」でブノワ賞に輝いています。


ガラ公演 〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉

「椿姫」より、「マーラー交響曲第3番」より、「マタイ受難曲」より、「ニジンスキー」より、「くるみ割り人形」より(予定)

演出・語り:ジョン・ノイマイヤー  出演:アリーナ・コジョカル、及びカンパニー総出演

3月8日(火) 6:30p.m.  
3月9日(水) 6:30p.m.  


「真夏の夜の夢」 プロローグ付全2幕(休憩1回)

3月11日(金) 6:30p.m. 
ヒッポリータ/タイターニア:エレーヌ・ブシェ シーシアス/オベロン:エドウィン・レヴァツォフ 
ヘレナ:シルヴィア・アッツォーニ デミトリアス:アレクサンドル・リアブコ 
ハーミア:アンナ・ラウデール ライサンダー:クリストファー・エヴァンス

3月12日(土) 2:00p.m. 
ヒッポリータ/タイターニア:アリーナ・コジョカル シーシアス/オベロン:カーステン・ユング 
ヘレナ:レスリー・ヘイルマン デミトリアス:カレン・アザチャン 
ハーミア:フロレンシア・チネラート ライサンダー:ヤコポ・ベルッシ

3月13日(日) 2:00p.m. 
ヒッポリータ/タイターニア:エレーヌ・ブシェ シーシアス/オベロン:エドウィン・レヴァツォフ 
ヘレナ:カロリーナ・アグエロ デミトリアス:アレクサンドル・リアブコ 
ハーミア:アンナ・ラウデール ライサンダー:クリストファー・エヴァンス


※記載の配役は2015年10月1日現在の予定。カンパニーの都合等で変更になる場合があります。正式な配役は公演当日に発表。


■会場:東京文化会館(上野)

■演奏:
「リリオム」は北ドイツ放送協会ビッグバンド、及び特別録音による音源を使用
〈ジョン・ノイマイヤーの世界〉は特別録音による音源を使用
「真夏の夜の夢」は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


■入場料:
S=¥23,000 A=¥20,000 B=¥17,000 C=¥14,000 D=¥11,000  E=¥8,000 

■発売日:
11月29日(日) 10:00a.m.より一斉発売開始!

特別協賛:公益財団法人稲盛財団
主催:公益財団法人日本舞台芸術振興会/日本経済新聞社

ジョン・ノイマイヤーが京都賞を受賞したため、稲盛財団が特別協賛に入っていますね。

早稲田大学演劇博物館「Who Dance ? 振付のアクチュアリティ」展開催

早稲田大学坪内博士記念演劇博物館では、10月1日より、企画展「Who Dance ? 振付のアクチュアリティ」を開催中です。

http://www.waseda.jp/enpaku/ex/3628/

「コレオグラフィ/振付」という概念は、17世紀末にフランスで誕生して以来、変化し続けています。その変化は、同時代の美学やテクノロジーなど私たちの考え方や感性を左右する社会的条件と無縁ではありません。
本展では、ダンスの歴史を振り返りつつ、「身体」「空間」「テクノロジー」という3つの観点から21世紀以降のコンテンポラリーダンスの実践に焦点を当て、私たちの生きる現代に特有の「コレオグラフィ/振付」とは何かを考えます。

展示構成

第1部:踊る身体の多様化—誰が踊る?
現代の振付/コレオグラフィは身体に架せられてきた「美」の基準を解除しながら、老若男女、いかなる身体も魅力的であることを示す視座を提供しているのではないか? 第1部では「身体」に焦点を当て、現代のダンスの舞台においては、多様な身体が観客の眼差しの前に現れていることを検証する。

≪紹介作家≫
アオキ裕キ(ソケリッサ)、川村美紀子、さいたまゴールド・シアター×瀬山亜津咲、ボリス・シャルマッツ、ジェローム・ベル、室伏鴻(Ko&Edge Co.)

第2部:踊り場の生成―どこで踊る?
現在、ダンスは劇場空間に限らず、様々な空間で展開されている。さらに振付の対象は観客にも及び、祝祭的な踊りの場が生み出すこともある。第2部では踊りの「空間」に焦点を当て、「振付」が身体感覚や経験の共有を可能にする空間を生成している例について検証する。

≪紹介作家≫
伊藤キム、伊藤千枝(珍しいキノコ舞踊団)、レミ・エリティエ、近藤良平(コンドルズ)、田中泯、ウィリアム・フォーサイス、ロジェ・ベルナット

第3部:遍在するダンスー誰もが踊る?
テクノロジーの発達は、ダンスにも変化を及ぼしている。第3部では「テクノロジー」に焦点を当て、モーションキャプチャ技術やプロジェクションマッピングがダンスに応用された例や、21世紀以降に出現したSNSや動画投稿サイトの出現によって振付が遂げた変容について検証する。

≪紹介作家≫
ELEVENPLAY、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル(ローザス)、コンタクト・ゴンゾ、Perfume Global Site Project、ウィリアム・フォーサイス×日本女子体育大学、フラッシュモブ、他


映像作品上映コーナー
ダンスの公演記録映像やダンスを題材とした長編の映像作品を紹介します。プログラムは後日発表します。

サシャ・ヴァルツ、レミ・エリティエ、ボリス・シャルマッツ、田中泯、ジェローム・ベル、室伏鴻(Ko&Edge Co.) 他


コンタクト・ゴンゾ「訓練されていない素人のための振付コンセプト001/重さと動きについての習作」
コンタクト・ゴンゾによる、本展のために構成されたプロジェクト。「訓練されていない素人のための振付コンセプト001/重さと動きについての習作」のスコア(指示書)をもとに、世界中のダンサーが再演を試みます。


会期:2015年10月1日(木)〜2016年1月31日(日)
休館日:10月21日、11月6日、11月18日、12月16日、2015年12月23日〜2016年1月5日、1月10日~12日
会場:2階 企画展示室
入場無料

非常に貴重な上演映像もたくさん観られるということで、ぜひとも行ってみたい企画展です。

スターダンサーズ・バレエ団「オール・チューダー・プログラム」

スターダンサーズ・バレエ団「オール・チューダー・プログラム」
2015年9月26日(土曜日)14時開演
テアトロ・ジーリオ・ショウワ

スターダンサーズバレエ団ブログ掲載の、舞台写真
http://www.sdballet.com/blog/?p=243

スターダンサーズバレエ団と、振付家アンソニー・チューダーには非常に深い縁がある。スターダンサーズバレエ団の創設者、太刀川瑠璃子さんが、1965年に「スターダンサーズによるアンソニー・チューダー特別公演」を行っているのだ。これがきっかけで、1966年にスターダンサーズバレエ団という組織がスタートしたのである。以来、自前の振付家による作品の上演、古典作品、そしてフォーサイス、バランシンなどの現代作品と並行して、チューダーの作品はこのバレエ団の大切なレパートリーとして上演され続けたのである。

今回は、アンソニー・チューダー財団より、元ABTのアマンダ・マッケローとジョン・ガードナー夫妻が振付指導に携わった。マッケローと少しお話をさせていただく機会があったが、チューダーは日本での仕事をとりわけ愛していて、「あまり幸せではなかった人だったけど、日本では彼は幸せだったそうです」との話を聞かせていただいた。また、晩年彼は仏教の影響を受けて、庵を作ってそこに住んでいたのだそう。麻薬中毒でぼろぼろになっていたゲルシー・カークランドが立ち直ることができたのも、チューダー作品のおかげだった。彼女は「葉は色あせて」の初演キャストである。

スターダンサーズバレエ団が大切に守り抜いてきたレパートリーを、バレエ団創立50周年を記念してのオールチューダープログラムとして上演するのは本当に素晴らしいことだ。商業ベースに乗りにくい作品を、設立当初の「スターダンサーズによる公演」のコンセプト同様、外部からの豪華ゲストを招くことで観客動員も図った。「リラの園」、「火の柱」という二つのドラマティックバレエを中心に、小品やパ・ド・ドゥを交えたプログラム構成も上手い。


「Continuo」
林ゆりえ、松本実湖、酒井優、加地暢文、安西健塁、渡辺大地

パッヘルベルの「カノン」を使用した、プロットレスの作品。この音楽を聴くとどうしてもイリ・ブベニチェクの「ル・スフル・ド・レスプリ」を思い出してしまうのだけど、こちらは3組の男女によって踊られる。リフトを多用していて、軽やかで音楽的な作品。3人の女性ダンサーは非常に美しい。ここの課題は男性ダンサー。


「リラの園」
カロライン:島添亮子(小林紀子バレエシアター)
その愛人:吉瀬智弘
カロラインの婚約者:横内国弘
彼の過去の女:佐藤万里絵
友だちと親戚:西原友衣菜、金子紗也、谷川実奈美、池尻奈央、大野大輔、宮司知英、川島治、友杉洋之

ショーソンの「神曲」に振付けられた、チューダー26歳の時の作品。ヴァイオリンのソロが非常に美しい(髙木和弘さん演奏)。お互いに別の人を想っている4人の登場人物の心理描写を中心にしたドラマティックバレエで、ここですでに独特のチューダー節というか、心の揺らぎを繊細に動きで見せる表現が観られる。マクミランのように大きなリフトでダイナミックに表すのではなくて、視線とか、手、首、パ・ド・ブレ、エポールマンなどの細やかな動きが中心。カロライン役の島添さんはさすがの演技力で、結婚を前に恋人の前で揺れ動く心境を体現していた。チューダーの振付は、また人物の配置が非常に面白くて、コンテンポラリーではないのに構築的というか立体的でドラマ性を際立たせていた。過去の女・佐藤万里絵さんの艶やかさも素敵だった。


「小さな即興曲」
鈴木優,加地暢文
ピアノ 蛭崎あゆみ

シューマンの「子供の情景」に振付けられた愛らしい小品。雨の午後の子供たちの情景が描かれている。大きな布をマント代わりに使ったり、雨避けにしたり、さらには小さく巻いて赤ちゃんのおくるみのようにしたり。鈴木優さん、加地暢文さんとも、新国立劇場バレエ研修所出身の若い二人。特に華奢な鈴木さんのラインの美しさが目を惹いた。


「ロミオとジュリエット」よりパ・ド・ドゥ(日本初演)
林ゆりえ,吉瀬智弘

マッケローに聞いたところ、実はこの1幕ものの「ロミオとジュリエット」は完全な形では残っておらず、この作品を復元するために、ノーテーション(舞踊譜)や映像の断片を探しているのだとのこと。フレデリック・ディーリアス作曲の1943年の作品で、実は初日に振付が完成せず、完成版が披露されたのは初日の4日後だったそう。最初はサルバドール・ダリに衣装、装置を依頼する予定だったが意見が合わなかったとパンフレットに書いてある。原題は「The Tragedy of Romeo and Juliet」とあるように、二人の悲劇に焦点を当てている。パ・ド・ドゥでも、ほとんど上演されたことがないため、非常に貴重な日本初演となった。

この場面は、ティボルトを殺してしまい追放されたロミオと、ジュリエットの別れの朝のシーン。短いけれども濃密で悲痛で、特に林さんの演技力の高さを感じた。


「葉は色あせて」よりパ・ド・ドゥ
吉田都,山本隆之(新国立劇場バレエ団)

昨年のNBAバレエ団での全編上演も記憶に新しい作品。アマンダ・マッケローとジョン・ガードナーが踊ったパ・ド・ドゥは、ABTの「ABTスターの饗宴」のDVDにも収められている。ドヴォルザークの美しい旋律(「弦楽四重奏のための『糸杉』」ほか)に載せてのパ・ド・ドゥは情感豊かで、具体的なストーリーはないものの交わす目線も印象的。吉田都さんは、音楽に寄り添うように、歌うように軽やかに踊り、美しい曲線を繰り広げていく。山本さんはサポートが中心。非常にサポートが複雑な作品であるため、さすがのサポート達人の山本さんをもってしても、スムーズにいかない場面はあった。もう少しリハーサル時間が必要だったのかもしれない。いずれにしても、秋という季節にぴったりの、全編が素晴らしい作品なので、全体で観たかったと感じた。もちろん、上演時間(32分)もあるので今回はそれは難しいだろうけど、また次の機会に。

「火の柱」
姉:天木真那美
ヘイガー:本島美和(新国立劇場バレエ団)
妹:西原友衣菜
友だち:山本隆之(新国立劇場バレエ団)
向かいの家から出てきた男:吉瀬智弘
若い恋人たち:松坂理里子,木原萌花、窪田希菜,横澤真悠子,鈴木就子,川島治,安西健塁,愛澤佑樹
愛人たち:金子沙也,荒原愛,久保田小百合,横内国弘、渡辺大地,宮司知英
老嬢:岩崎祥子、坂井萌美

こちらの作品は、2003年にABTで上演されたのを2公演観ている。ヘイガー役にアマンダ・マッケローとジリアン・マーフィ―、友達にイーサン・スティーフェルとアンヘル・コレーラ、妹にシオマラ・レイエス、向かいの家から出てきた男にマルセロ・ゴメス。今にして思えば大変豪華なキャストだった。

1942年の作品で、女性が抑圧されていた時代、オールドミスの厳格な姉と奔放な妹に挟まれ、姉のようなになることを恐れ鬱屈した毎日を送るヘイガーの心理を中心に描いている。ひそかに想っている男性に愛を告白できず、いかがわしい家に出入りする男に衝動的に身を任せてしまい、後ろ指をさされてしまうヘイガー。この難しい役を演じたのは、本島美和さん。もともと演技力に定評のある本島さんは、内に情熱と欲望を抱えながらもそれを表に出せない鬱々した気持ちで日々を過ごし、そして周りに拒絶されてしまう女性の性を体現するような踊りで、見事だった。(新国立劇場バレエ団も、彼女のような大人のダンサーが表現力を発揮できるような演目をもっと上演すればよいのに) 軽薄な妹役を演じた西原さんも、軽やかでとても良かった。もう少し姉役が怖いというかギスギスした女性に演じられていたほうが、この時代の抑圧的で保守的な気分が出てリアリティが出たのではないかと思うが。

それにして、この作品の振付はユニークだ。4組の若い恋人たち、向かいの家のいかがわしい人々といった群舞の配置もさることながら、主要登場人物、とくに3姉妹の感情表現の見せ方も独特である。身を任せてしまった男に再びヘイガーが迫るものの、冷たく拒絶されてしまうところの容赦なさ。人間の暗部を視線や手の使い方などのちょっとしたしぐさ、そして振付で見せてしまうチューダーって凄いと感じた。シェーンブルグの「浄夜」のテーマのように、最後にヘイガーは、想いを寄せていた男性によって救われ、魂も浄化される。ラスト、舞台奥に配置された夜の森を歩く人々のシルエットも、趣があって余韻を残す。

非常に優れたプログラムで、よくまとまった公演だった。派手さのないチューダー作品は、日本では興行的には難しいのかもしれないけれども、引き続き、大切なレパートリーとして上演され続けてほしいと願う。

「リラの園」収録

ベスト・オブ・アメリカン・バレエ・シアター 「黒鳥のパ・ド・ドゥ」ほか [DVD]ベスト・オブ・アメリカン・バレエ・シアター 「黒鳥のパ・ド・ドゥ」ほか [DVD]

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