10/4 バットシェバ舞踊団「DECADANCE-デカダンス」
振付家オハッド・ナハリン率いるバットシェバ舞踊団。今回の公演「DECADANCE - デカダンス」は、ナハリンの代表的な作品のハイライトシーンをつなげた、いわばナハリン・グレイテスト・ヒッツ。
http://dance-yokohama.jp/eventprogram/decadance/
「DECADANCE」というタイトルの上演は、今ちょうどニューヨークでも公演中のジュニア・カンパニー、バットシェバ・アンサンブルも行っているのだが、微妙に上演作品が違っている。「DECADANCE」は、毎回少しずつ上演する作品を入れ替えているようだ。
今回上演された「DECADANCE」は、以下の作品からの抜粋。
Z/na (1995),
Anaphase (1993)
Mabul (1992)
Naharin's Virus (2001),
Zachacha (1998),
Sadeh21 (2011),
Telophaza (2006),
Three (2005),
MAX (2007)
世界中のバレエ団で上演されている、あまりにも有名な「アナフェイズ」(「マイナス16」、というタイトルの方が知られているかもしれない。半円形にずらり並べられた椅子に座ったダンサーたちが、一枚ずつ服を脱いでいく)から始まる、めくるめくナハリン・ワールド。
(こちらはスペイン国立ダンスカンパニーの「マイナス16」映像)
CND, Minus 16 from COMPAÑIA NACIONAL DE DANZA on Vimeo.
構成が巧みで一つの流れをしっかり作っているので、つぎはぎ感、寄せ集め感はない。ナハリンの作品の多くには、テーマ性やコンセプトがあったり、政治的なメッセージの隠喩も感じられたりするのだが、今回はこれらのコンテクストや物語性はすべてはぎ取られ、純粋なダンスとしての動きとして観ることになった。
そうすると、作品の中に、意味などなくてもダンスの動きだけでも十分魅せることができる、それだけの力量がある振付家ということを実感できた。「アナフェイズ」はもちろん、「MAX」、「テロファーザ」、「SADEH21」など自分が観てきた最近の作品が、メッセージ性を取り払われ、コラージュされているのを観るのも面白いし、同時に、それらの作品を観たときの自分の感情を反芻しながら観ることもできる。コンテクストが取り去られていると、振付の妙味や独自性、ダンサーたちの並外れた能力を改めて感じることができた。
中でも「SADEH21」は衝撃的な作品だっただけに、あの強烈すぎるメッセージがなくても、ダンス作品として本当に凄いんだな、と実感した。決して難解ではなく、ダンスなんてほとんど見たことない人でも楽しめるのがナハリン作品。それでいて、音楽や声の使い方も心憎いばかりにオリジナリティがあり、様々なアイディアにあふれている。男性同士のセンシュアルなタンゴ、デュオ、パ・ド・トロワなど組み合わせは自在だし、3グループに分かれて順番に様々なインプロヴィゼーションを披露する「スリー」は、ユーモラスなところもあり、なんじゃこりゃと思うけど、めちゃめちゃ面白い。
これはこれで非常に楽しいし、ダンスそのものが持つ力を存分に堪能できて最高なんだけど、ナハリンの一つの作品というのもやはり観たい、という気持ちもある。しかしダンスの魅力を幅広く新しい観客に提示するということでは、「DECADANCE」はとても有効だったのではないかと思った。
そして改めて驚かされるのがダンサーたちの身体能力の凄さ。恐るべき強靭さ、しなやかさ、身体性、肉体の存在感の強さ。男性同士でも軽々~とリフトしたりコンタクトしたり。どれだけダンサーたちは体幹が強いんだろう。これもGAGAメソッドのたまものなのだろう。数字を数えながら、それに対応していく動きをダンサーが見せていくところは、何回観ても凄い。一体どうやって動きを身体に覚えさせているのか。跳びかかろうとする獣のように野性的で柔軟、身の詰まった肉体の彼らの動きを見ていると、ああ、生きているんだな、という実感を呼び覚まされる。だからこそ、「アナフェイズ」では観客を舞台上に上げて踊らせるという趣向があるんだな、と感じた。だって、自分たちだって突き動かされて踊りたくなるもの。
GAGAメソッドのワークショップ、3年前にさいまたで受けたけど、また受けたい。
(なお、愛知公演、北九州公演に付随して、それぞれバットシェバ舞踊団ダンサーによるGAGAワークショップが実施される)
http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/decadance/index2.html
http://www.kitakyushu-performingartscenter.or.jp/entry/2015/0928gaga.html
SADEH21
2015年10月7日(水) 19:00開演 愛知県芸術劇場大ホール
http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/decadance/
2015年10月11日(日) 14:00開演 北九州芸術劇場
http://www.kitakyushu-performingartscenter.or.jp/event/2015/1011bat.html
« ハンブルグ・バレエ「タチヤーナ」、11/23 NHK-BSプレミアムで放映 | トップページ | 「トップランナー 金森穣(2003年放映)」10/11再放送 »
「バレエ公演感想」カテゴリの記事
- KARAS APPARATUS 勅使川原三郎x佐東利穂子「幻想交響曲」(2019.07.19)
- 英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』(2018.01.21)
- 勅使川原三郎 KARAS「イリュミナシオン-ランボーの瞬き- 」(2017.12.09)
« ハンブルグ・バレエ「タチヤーナ」、11/23 NHK-BSプレミアムで放映 | トップページ | 「トップランナー 金森穣(2003年放映)」10/11再放送 »
コメント