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2015年7月

2015/07/31

ドキュメンタリー映画『ロパートキナ 孤高の白鳥』が2016年1月公開

ウリヤーナ・ロパートキナの素顔に迫るドキュメンタリー映画『ロパートキナ 孤高の白鳥』(Ulyana Lopatkina: A Russian Star)が、2016年1月下旬より、渋谷Bunkamuraル・シネマほかにて公開される事が決定しました。

http://lopatkina-movie.jp/

本作では、彼女が母校を訪問し、少女だった自分と向き合いながら、踊り始めた理由について語る他、貴重な舞台映像や最愛の娘とのプライベートショットとともに、孤高のプリンシパルの素顔に迫る。

 ウリヤーナ・ロパートキナは、8月に開催される3年に1度のバレエの祭典「第14回世界バレエフェスティバル2015」に出演する他、9月20日から3日にわたってオープンクラスを行う。そして、11月26日から来日するマリインスキー・バレエ公演では、「愛の伝説」のバヌー、そして「白鳥の湖」のオデット&オディールを披露する。

◎上演情報『ロパートキナ 孤高の白鳥』
監督:マレーネ・イヨネスコ
出演:ウリヤーナ・ロパートキナ、アニエス・ルテステュ、ジャン=ギョーム・バール
2016年1月下旬ロードショー

監督のマレーネ・イヨネスコは、バレエのドキュメンタリー映画を多く撮影してきたことで知られています。最近では、ギレーヌ・テスマーとピエール・ラコット夫妻についてのドキュメンタリー、「バレエに生きる ~パリ・オペラ座のふたり~ 」、アニエス・ルテステュのドキュメンタリー「至高のエトワール  ~パリ・オペラ座に生きて~ 」、DVD「アニエス・ルテステュ-美のエトワール-」、「マチュー・ガニオ&カルフーニ~二人のエトワール~ 」などを監督しています。
http://www.marleneionesco.com/

このドキュメンタリー映画は、韓国で今月開催される 11th Jecheon International Music & Film Festival という映画祭に出品されるため、映画祭のサイトで予告編が公開されています。

映画のセールスのサイト
http://widehouse.org/film/ulyana-lopatkina-a-russian-star/

「イン・ザ・ナイト」「マルグリットとアルマン」「愛の伝説」「レ・シルフィード」「ロシアの踊り(ルースカヤ)「カルメン」「ダイヤモンド」「瀕死の白鳥」などを踊る姿が観られるとのことです。

ダンソマニに、イヨネスコがこの映画について語ったインタビューが掲載されています。(フランス語)
http://www.marleneionesco.com/dansomanie---film-ouliana-lopatkina.html

撮影は白夜祭の時に行われたのですが、マリインスキーで撮影するときには、劇場側に細かい条件を付けられていろいろと困難があったようです。しかしロパートキナは非常に協力的で、条件をすべて受け入れてくれ、貴重な映像を提供してくれたほか、プライベートも撮影することができたようです。撮影終了時には、イヨネスコだけでなく撮影スタッフにもプレゼントや花を贈るなど、人柄的にも素晴らしかったとのことです。非常に精神性の高い人物とイヨネスコは評しています。白夜祭の時に彼女に会ったルテステュ、ジョゼ・マルティネス、ジャン・ギョーム・バールらのインタビューもあるとのことです。

世界バレエフェスティバル、そして11~12月のマリインスキー・バレエの公演で彼女の至高の踊りを観ることができるのが楽しみですが、こちらの映画も楽しみですね。

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ところで、ルテステュのドキュメンタリー映画「至高のエトワール  ~パリ・オペラ座に生きて~ 」も素晴らしい作品でしたが、配給会社アルシネテランが倒産してしまったため、DVDがお蔵入りしてしまったのが残念です。

2015/07/30

ボリショイ、セルゲイ・フィーリン芸術監督の契約を更新せず

ボリショイ・バレエは、現在の芸術監督であるセルゲイ・フィーリンの契約を更新しないと、タス通信が報道しています。

http://www.gazeta.ru/culture/news/2015/07/30/n_7420113.shtml

現在のフィーリンの契約は、2016年3月17日までであると、ボリショイ劇場の総裁ウラジーミル・ウーリンが発表しました。

「私は、2016年3月17日に切れるセルゲイ・フィーリンとの契約は延長しないことを決定しました。法的には、雇用契約の2か月前での報告で問題ないのですが、この重要性と信義則、セルゲイに敬意を表して、前もって彼に知らせ、次のステップへと進めるための十分な時間を与えることにしたのです」とウーリンは語りました。

しかしながら、芸術監督の後継者候補の名前を、ウリンは挙げませんでした。

少し前に、フィーリンは実に34回目となる目の手術を6月に受けたとのことですが、体調は良好とのことです。

皆さんご存知のように、フィーリンは2013年1月に顔に酸をかけられて視力に重大な損害を与えられる重傷を負いました。犯人の一人とされるダンサー、パーヴェル・ドミトリチェンコは現在懲役6年の刑に服しています。

英語の記事(AFP配信)
Russia's Bolshoi theatre to ditch acid attack ballet chief
http://news.yahoo.com/russias-bolshoi-theatre-ditch-acid-attack-ballet-chief-104620415.html

もう一つロシア語の記事
http://tass.ru/kultura/2152056

フィーリンは、タス通信に、この決定は予測されていたことであり、特に批判されるようなものではないと語っています。「現代においては、これは当たり前のことですし、フェアだと思っています。プロフェッショナルとして自分を前進させ、新しいことをしなければなりません」と。

フィーリンは来シーズンも芸術監督として働き、契約が終了した後も、ボリショイと協働するような仕事をオファーされているとのことです。

また、ウーリンによると、フィーリンの退任後現在の芸術監督の仕事は一旦リセットされ、より狭い範囲の業務とするとのことです。そして9月ごろフィーリンの後任が発表されるそうです。

ウーリンは、フィーリンに個人的にこの決定を伝えたそうです。「今までのボリショイの歴史のように、芸術監督交代のニュースをメディアから知るのではなく、総裁から伝えられるということが重要なのです」

ウーリンは、フィーリンの仕事ぶりに不満を持っていたわけではないと語っています。それどころか、彼の今までの功績をたたえていました。「バレエ団で素晴らしいダンサーたちが現れ、ボリショイ劇場の新装後、素晴らしい新作が上演されました」特に、ローラン・プティ、ピエール・ラコット、ジョン・ノイマイヤー、ジャン=クリスロフ・マイヨーのような著名な振付家の作品をボリショイで上演したことをフィーリンの功績としています。また、グリゴローヴィッチの2つの作品が復元されて上演されました。

「フィーリンの契約更新が行わなかったのは、主に劇場内部の事情によるものです」とウーリンは語りました。

ウーリンによれば、ボリショイ・バレエの芸術監督の仕事は、今後は組織の管理が中心になるとのことです。バレエ団を支え、高い品質の公演をスケジュールを守って上演し、ツアーのスケジュールを遂行することだそうです。しかしながら、劇場のマネジメントと共に、レパートリーの戦略を立てることも業務の一部ではあると強調もしていました。


*****
おりしも、フィーリン襲撃後を追ったドキュメンタリー映画「ボリショイ・バビロン」が公開されます。

セルゲイ・フィーリンは、ボリショイ・バレエの芸術監督に就任してから、デヴィッド・ホールバーグら外部のダンサーを入団させ、エックの「アパートメント」、マクレガーの「クローマ」、クランコの「オネーギン」、ノイマイヤーの「椿姫」などの現代作品をレパートリーに加えたほか、マイヨーに新作「じゃじゃ馬馴らし」を振付けてもらうなど、レパートリーを改革しました。その改革は、「じゃじゃ馬馴らし」が黄金のマスク賞を総なめするという結果によって、高く評価されました。

しかし、ボリショイ内には強力な反対勢力もあり、ニコライ・ツィスカリーゼが彼を強く批判するなど様々な問題が起きた矢先の襲撃事件でした。混乱の中で、ツィスカリーゼはボリショイを退団し、前総裁のイクサーノフも辞任し、モスクワ音楽劇場の総裁だったウリンが総裁に就任しました。ウリンは、フィーリンの改革路線に否定的で、レパートリーもグリゴローヴィッチの「愛の伝説」のリバイバルなど、旧来のものに戻し、新作にしてもロシア人の振付家に手掛けさせるなど、懐古路線に戻しました。片目をほぼ失明してしまったフィーリンは、実質的に権力を骨抜きにされてしまったわけです。

フィーリンが去った後のボリショイはどうなっていくのでしょうか?

芸術監督の仕事の範囲が狭くなるということは、劇場の総裁の権限が今よりも大きなものになると解釈できそうです。

2015/07/29

2016年7月 ジャパン・アーツ創立40周年記念~オールスター・バレエ・ガラ開催

2016年7月に、ジャパン・アーツ創立40周年を記念したオールスター・バレエ・ガラが開催されます。

http://www.japanarts.co.jp/blog/blog.php?id=1474

≪出演予定≫
ニーナ・アナニアシヴィリ
マルセロ・ゴメス
スヴェトラーナ・ザハーロワ 他

管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

2016年7月23日(土)~27日(水) 東京文化会館

≪公演詳細≫2015年秋発表(予定)

とのことです。鬼が笑うくらい先の話ですが、楽しみですね!

6月にK-BALLET COMPANYの「海賊」に出演したニーナ・アナニアシヴィリを観たのですが、50歳を過ぎているとは思えないくらいの完璧なテクニックで、キラキラしたスターオーラも健在でした。「海賊」のグラン・パ・ド・ドゥを観て涙が出てくる日が来るとは思いませんでした。グラン・フェッテもコントロールが効いていて見事でした。そのニーナがまた観られると思うと本当に嬉しいです。他のメンバーが誰になるのかも、気になりますね。ボリショイ、マリインスキー、ABTのダンサーたちとなることでしょう。


ついでに、今日マリインスキー・バレエの来日公演のプロモーション用動画がアップされていたのでご紹介しましょう。
「白鳥の湖」オクサーナ・スコリク

「愛の伝説」ウリヤーナ・ロパートキナ

「ロミオとジュリエット」

ただいま、サマーキャンペーンとして、マリインスキー・バレエの一部の公演がお求めやすい席で販売されます。7月30日から8月14日まで。
http://www.japanarts.co.jp/s_campaign2015/index.html
S席が17000円、A席が13000円なのでかなりお得ですよね。

2015/07/28

ボリショイ・バレエの追加昇進発表/「ボリショイ・バビロン」予告編

ボリショイ・バレエの2014-15シーズンが終わりましたが、最後に昇進発表がありました。先日、アンナ・ニクーリナとアナスタシア・スタシュケヴィッチのプリンシパル昇進などの発表がありましたが、追加しての発表です。

http://www.bolshoi.ru/en/persons/ballet/

デニス・ロヂキンがプリンシパル昇進

マリーヤ・ヴィノグラードワがリーディングソリストに昇進

マリーヤ・セメニャチェンコがファーストソリストに昇進

アレクサンドル・ヴォドペドフがソリストに昇進


デニス・ロヂキン(ロシア語ではローチキンと読むのが正解らしいです)は、ザハロワと組むことが最近多くて活躍は目立っていましたが、個人的には、プリンシパルにはまだまだという印象があります。パートナーリングが上手くない、演技力もあまりないのですが、長身で見栄えのする容姿、ソロでは伸び伸びと綺麗に踊るので今後の成長が期待できますね。地方のバレエ学校出身ですが、ニコライ・ツィスカリーゼのボリショイ時代の最後の弟子というか秘蔵っ子でした。

9月には、サンクトペテルブルグ・バレエ・シアターの来日公演にロヂキン出演するので、成長ぶりを観ることができますね。


マリーヤ・ヴィノグラードワは、小柄ですがゴージャスな美貌の持ち主で、6月に、イワン・ワシーリエフと結婚したばかり。2013年の「スパルタクス」での共演が縁だったようです。今まであまり日本で観る機会がありませんが、テクニックが強く、次回の来日公演ではきっと期待できるでしょう。「スパルタクス」のフリーギア、「ラ・バヤデール」のガムザッティ、ジゼルなどを踊っています。


マリーヤ・セメニャチェンコは、もともとはモスクワ音楽劇場バレエにいて、前回の来日公演でも活躍しましたが、セルゲイ・フィーリンがボリショイの芸術監督に就任するのに伴い、ダンチェンコからボリショイに移籍しました。長身で、やはり美貌の持ち主です。

******

さて、ボリショイ・バレエの舞台裏に迫ったドキュメンタリー映画「ボリショイ・バビロン」が9月19日より劇場公開されます。予告編も公開されました。フィーリンの襲撃事件、マリーヤ・アラーシュ、ボリス・アキモフらのインタビューなども出てきて大変興味深いですね。

https://youtu.be/EMeE5T9sEj0

2015/07/27

『Stars in the Moonlight 月夜に煌めくエトワール ~Music & Ballet Concert~』公演

来年1月に、Bunkamuraオーチャードホール、愛知県芸術劇場、そして大阪フェスティバルホールで、『Stars in the Moonlight 月夜に煌めくエトワール ~Music & Ballet Concert~』が行われます。

http://www.bunkamura.co.jp/topics/orchard/2015/07/stars_in_the_moonlight_music_ballet_concert.html

http://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/16_stars.html

ヨーロッパで活躍するピアニストのジョルジュ・ヴィラドムスが、パリ・オペラ座のエトワール、エルヴェ・モローと組んだ「Luz de Luna(「月の光」)」公演が昨年11月3日に、ニューヨークのカーネギーホールで開催されました。ヴィラドムズが母国メキシコの恵まれない子供たちに音楽教育を提供するために設立したCrescendo con la Musica財団の資金集めのために行われた公演でした。

http://www.jorgeviladomsweber.com/home/luz-de-luna

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ヴァイオリニストのチャーリー・シエムも迎え、イリ・ブベニチェク振付の「月の光」(昨年の「エトワール・ガラで初演)などを上演したこの公演は好評で、第二弾として今年の6月にジュネーヴで公演が行われました。こちらには、ヴィラドムズ、モローのほか、イザベル・シアラヴォラとチェリストのゴーティエ・カプソンが参加しました。

そしてこのたび、モロー、ヴィラドムズに加えて、オペラ座のきらめくエトワール、マチュー・ガニオ、ドロテ・ジルベール、若手No.1の人気と実力を誇るヴァイオリニスト三浦文彰が参加して、さらにパワーアップした公演が実現することになったのです。

『Stars in the Moonlight 月夜に煌めくエトワール ~Music & Ballet Concert~』

【日 程】2016年1月10日(日)18:00開演/11日(月・祝) 15:00開演

【会 場】Bunkamura オーチャードホール 

【出 演】バレエ:エルヴェ・モロー、ドロテ・ジルベール、マチュー・ガニオ、ピアノ:ジョルジュ・ヴィラドムス、ヴァイオリン:三浦文彰

【演 目】「LUNA」(モロー振付)、「月の光」(ブベニチェク振付)、「瀕死の白鳥」(フォーキン振付)、「トリスタンとイゾルテ」(マンシーニ振付)、リスト:「バラード 第2番 ロ短調」、イザイ:「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調“ バラード”」 他

【チケット料金】S=¥13,000 A=¥9,000 B=¥7,000(税込)
    
【チケット一斉発売】2015年9月5日(土)

【お問合せ】Bunkamura 03-3477-3244(10:00~19:00) 


なお、東京以外の公演の日程は以下の通り

1月13日(水) 愛知県芸術劇場コンサートホール
1月14日(木) 大阪フェスティバルホール

パリ・オペラ座バレエでも人気トップの3人の美しきエトワールと、気鋭のピアニスト、ヴァイオリニストによる豪華な夢の共演、とても楽しみですね!エルヴェ・モロー自身による振付作品もあるほか、ジョルジオ・マンシーニ振付、マチュー・ガニオとドロテ・ジルベールが共演した話題作「トリスタンとイゾルデ」も観られるのがまた楽しみです。

2015/07/26

7/19 バレエ・アステラス2015

昨年、一昨年と行けなかった「バレエ・アステラス」に久しぶりに行ってきました。

指揮:デヴィッド・ガルフォース
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

『シンフォニエッタ』
振付:牧阿佐美
音楽:C.グノー
新国立劇場バレエ研修所
第11期生(阿部裕恵、髙橋依吹、廣川みくり、廣田奈々、中島瑞生)
第12期生(赤井綾乃、杉山澄華、関 優奈、丸山さくら、渡邊拓朗)
予科生 (羽石彩乃)

ひざ下丈のドレスを着た研修生のみなさんは体型も揃っていてプロポーション良く美しいけれど、これと言って突出した人はいなかったように思えた。男子2人は背も高めで今後が楽しみ。しかし作品は面白くなく、ダンサーの良さをアピールするものでもなかった。

『ラ・シルフィード』
パ・ド・ドゥ振付:A.ブルノンヴィル
上山榛名・塚本士朗(貞松・浜田バレエ団)

2人とも健闘していて、特に塚本さんは前半は足捌きもきれいで良かったと思う。照明と衣装の色が保護色になってしまっていて見えにくいところもあった。

『グラン・パ・クラシック』
振付:V.グゾフスキー
フォガティみこ(インディアナ・バレエ・コンサヴァトリー)
ノア・ロング(元カナダ国立バレエ団)

「ファースト・ポジション」で有名になったミコさんも18歳となり、来シーズンにはバーミンガム・ロイヤル・バレエに入団する。すっかり大人っぽくなって、少し肉付きも良くなった。バランスのキープ力はあるしグランフェッテは安定していて美しく、テクニックはしっかりしているのだけど、いろんなコンクールを総なめにしていた頃のキラキラ感が少し失われていたのは残念。ノア・ロングは2009年にはエリック・ブルーンプライズに出場していてパートナーのエレーナ・ロブサノワ(現在プリンシパル)は受賞していたのだけど、彼はバレエ団を退団して「ビリー・エリオット」の全米ツアーで青年ビリーを演じていたとのこと。まだ20代なのに、すでに現役を引退しているようでもったいない。

『白鳥の湖』第2幕アダージォ 
振付:プティパ/L.イワーノフ
奥野 凜、ロベルト・エナケ(ブカレスト国立歌劇場バレエ団)

当初は「ディアナとアクティオン」の予定だったのが演目変更。「ディアナとアクティオン」の方で観たかった。「白鳥の湖」の2幕は、あまりガラ向きの演目ではないし、男性ダンサーの踊りが観られないし。奥野さんはプロポーションに恵まれて大変美しい人。繊細でたおやかな白鳥で、しっかりとアンドゥオールしていてラインの美しさが感じられてた。ロベルト・エナケは、「アリーナ・コジョカル・ドリームプロジェクト」に出演した時は”ロバート・エナシェ”という表記だったので、どっちが正しいのだろうか。サポートが上手でよく息が合っていたし立ち姿も王子らしくて素敵だった。

『幻想~白鳥の湖のように~』クレアとアレクサンダーのパ・ド・ドゥ 
振付:J.ノイマイヤー
河野舞衣、ジェイムズ・リトル(バイエルン国立歌劇場ミュンヘンバレエ団)

ノイマイヤーの「幻想~白鳥の湖のように~」からのパ・ド・ドゥが日本人ダンサーで観られるなんて、素晴らしい。主人公ではなく、主人公の友人カップルの、幸福感に満ちたパ・ド・ドゥ。DVDではシルヴィア・アッツオーニとアレクサンドル・リアブコが踊っている。河野さんは、表情が繊細かつ豊かで、それも顔の表情だけではなく、体全体から歓びがにじみ出ていてとても素敵。恋人たちの語らいの場面であるのに、ノイマイヤーらしくリフトもたくさん登場して大変な作品だけど、軽やかでとても愛らしい。パートナーのジェイムズ・リトルもこの複雑なパートナーリングを見事にこなしていた。

 『ドン・キホーテ』第3幕グラン・パ・ド・ドゥ  
振付:M.プティパ / A.ゴルスキー
木村優里・井澤 駿(新国立劇場バレエ団)

今シーズン、主役にもたくさん抜擢されていて大活躍していた井澤さん。彼は長身で見栄えがする容姿と相俟ってスター性があるのだけど、特に上半身が硬いきらいがあった。でもバジルは、そんな彼の欠点が目立たず、スタイリッシュに決めていて華やかで良かった。木村優里さんは、研修所卒業してからすぐに「白鳥の湖」のルースカヤを踊り、来シーズンも「くるみ割り人形」の主役に予定されており、ソリスト入団で大変期待されている。背が高くて顔も小さくプロポーションに恵まれている。しかし、良くなかった。まず、右脚がアンドゥオールしていないという致命的な欠点がある。このアンドゥオールできていないのは、グランフェッテの時に上げる脚の位置が開いていなくて、変なところで脚が上がってはロンドゥジャンブしているという結果に結びつく。いくらトリプルをたくさんグランフェッテに入れていても、それでは興ざめである。また、音に合っておらず動きの流れが良くないうえ、手の使い方にも癖がある。客席は非常に沸いていたが、これではとても拍手できない。入団してしっかりこれらの問題点を修正してもらいたい。


『シンデレラ』グラン・パ・ド・ドゥ   
振付:鈴木稔
林ゆりえ(スターダンサーズ・バレエ団)・木下嘉人

やはりプロのバレエ団で真ん中を踊ってきた人の踊りは安心する、と林ゆりえさんの踊りを観て思った。「シンデレラ」のこのシーンは派手さはないけれど、そんな中でも彼女には華やかさがあって目を惹きつけられる。木下さんはライプチヒ・バレエなどで踊ってきて来シーズン新国立劇場バレエ団に入団する。経歴からしてもコンテンポラリーの方が得意そうだが、着地もきれいで古典もしっかりしている。

『パリの炎』パ・ド・ドゥ   
振付:V.ワイノーネン
多久田さやか(ロシア国立バレエモスクワ)
清瀧千晴(牧阿佐美バレヱ団)

多久田さやかさんは、コンクール入賞歴も華やかで、結構ベテランだと思っていたのに若手ダンサーちゅうしんのこのガラに出るんだ、と少し驚いた。でもロシアで活躍しているだけあって、非常に技術的に強くて跳躍も高い。清瀧さんは、「パリの炎」というよりはもっとノーブルな印象の強いダンサーだし、今回も派手に決める、ということはしていなくてエレガントだったが、クリアな動き、ふわっとしたジャンプ、足音のしないきれいな着地で素晴らしかった。日本で活躍している男性ダンサーの中ではピカイチの一人だと思う。

『海賊』奴隷のパ・ド・ドゥ   
振付:M.プティパ
日髙世菜、吉田周平(ブカレスト国立歌劇場バレエ団)

幕が開いたら、吉田周平さんが口髭をつけていたので少々笑ってしまったけれども、奴隷商人らしいあくどくてユーモラスな演技をしっかりしていて、役になりきっていたのは好感度が高い(この役を踊ったのは初めてとのこと)。日高さんは長身で手足がとても長く、衣装から見えるお腹も腹筋がくっきり割れていて実に恵まれたプロポーション。その長い手足を綺麗にコントロールしていて、ダイナミックでしなやかで美しい。吉田さんはランケデム役ならではの、深いプリエに降りてからの跳躍が非常に高くて柔らかさもあって素晴らしい。日高さんが長身なのでサポートは少し大変そうだったけど、息は合っていたし、二人とも魅せるツボを心得ているので非常に楽しかった。カーテンコールまでしっかりと役になりきっていて、この日一番のパフォーマンス。

 『海賊』グラン・パ・ド・ドゥ    
振付:M.プティパ
齊藤 耀、三木雄馬(谷桃子バレエ団)

改めて、三木雄馬さんの美男子ぶりに目を見張った。日本人の男性ダンサーでこんなに美形な人がいるとは。奴隷姿も良く似合う。踊りの方は、前半は力強くダイナミックで良かったけど後半少し失速。齊藤 耀さんは調子が悪かったのか、グランフェッテの途中でトウをついてしまってそのまま終了してしまった。

『アルルの女』より抜粋 振付:R.プティ
菅野茉里奈、ウェイ・ワン(ベルリン国立バレエ)

菅野さん、ウェイ・ワンとも表現力に非常に優れていて、ドラマティックだった。菅野さんは、一途にフレデリを想うヴィヴェットの悲しみ、苦悩を愛らしくも切なく演じていた。そしてウェイ・ワンは、愛する女が目に前にいながらもアルルの女の幻に取りつかれて正気を失い、ついには死へとダイブしてしまう男の心の変遷、細かい心境の変化をまるでセリフが聞こえてくるかのように表現。身体のキレもとても良くて、その動きからも物語が伝わってくる。ファランドールの音楽が高揚していくとともに、狂気も増していって、大きく目を見開いてためらうことなく飛び降りる跳躍も美しかった。彼はベルリンではまだコール・ド・バレエだけど、中国国立バレエではプリンシパルだったようだ。菅野さん、ウェイ・ワンとも容姿にも恵まれていて、このような物語が良く似合う。


「バレエ・アステラス」はもともと、海外で活躍するダンサーを見せるという目的のあるガラだったのだが、昨年より、海外のバレエ学校がゲスト出演するという当初の趣向がなくなってしまい、その分、日本で踊るダンサーも出演するようになった。この変更によって、コンセプトがずれてしまったように感じられる。海外バレエ学校の交流というのも大事な要素だったのだが。そして、海外で踊るダンサーと日本で踊るダンサーを並べての公演だと、どうしても、海外で踊っているダンサーたちの方がずっと表現として優れたものを見せているというのがよくわかってしまう。唯一、清滝千晴さんは、日本で踊っているダンサーでもこれだけ素晴らしいというところを見せてくれたのだが。(彼も、ボリショイバレエ学校に留学し、また文化庁新進芸術家海外研修員としてボリショイなどで研修をしていた)

予算の都合などもあって元のコンセプトに戻すのは難しいのかもしれないけれど、日本で踊るダンサーや、ダンサーの卵たちが、海外で踊るダンサーたちに刺激を受けて、芸術性を磨いてくれることを願うばかりである。

2015/07/24

ボリショイ・バレエの新作「現代の英雄」初演(追記あり)

7月22日に、ボリショイ・バレエで、今シーズンの新作「現代の英雄」が初演されました。
http://www.bolshoi.ru/en/performances/813/

ミハイル・レールモントフの有名な小説を原作とし、振付はかつてボリショイで活躍したダンサーで、現在はサンフランシスコ・バレエの常任振付家であるユーリ・ポソホフが振付しました。26歳という若さで決闘のために亡くなったレールモントフですが、「現代の英雄」は大変人気のある小説です。主人公ペチョーリンは、ネガティブな面もある男性ですが魅力的な人物で、エフゲニー・オネーギンと並んでロシア人にとっての永遠のヒーロー像です。

リハーサルの写真
http://www.bolshoi.ru/en/about/press/photo/hero/

この作品は、「BELA」「TAMAN」「PRINCESS MARY」の3つのパートに分かれており、それぞれ異なった年代を描いているため、主人公ペチョーリン役もパートが変わると別のダンサーが踊ることになります。


7月22日、26日
Pétchorine : Tsvirko/Ovcharenko/Skvortsov
Bela : Smirnova
Mary : Zakharova
Ondine : Shipulina

23日、25日
Pétchorine : Lobukhin/Lantratov/Lopatin
Bela : Vinogradova
Mary : Stashkevitch
Ondine : Alexandrova

24日
Pétchorine : Tsvirko/Ovcharenko/Merkuriev
Bela : Smirnova
Mary : Krysanova
Ondine : Shipulina

ボリショイのサイトでは、非常に詳しいあらすじも(英語でも)掲載されています。
http://www.bolshoi.ru/en/performances/813/libretto/

ボリショイ劇場のマガジンには、リハーサルの写真と、ポソホフのインタビューが載っています。原作のある物語バレエではあるのですが、物語を忠実にバレエ化するのではなく、バレエを作り上げるために原作をもとにしたパズルを作ったとのこと。それぞれのエピソードで呼び起される感情を、感情的、歴史的、文化的な様相から描きたかったそうです。

またポソホフによれば、芸術監督のセルゲイ・フィーリンが、振付家ポソホフと、演出家のキリル・セレブレニコフ(舞台の演出や映画監督としても著名ですがバレエを手掛けるのは初めて)が協力して新しいバレエ作品を創ることを提案し、セブレニコフが、「現代の英雄」のバレエ化が良いと答えたそうです。ポソホフ自身は、「エフゲニー・オネーギン」か「戦争と平和」のバレエを作りたかったそうです。

なお、キリル・セレブレニコフは、今月開催されているアヴィニョン演劇祭で、ラース・フォン・トリアーの映画「イディオッツ」の舞台化を行っています。先月、彼のプロダクションのうち7作品はポルノなのではないかと捜査の手が入り、さらにロシアの文化相も彼の古典作品の舞台化は不適切ではないかと批判したなど、議論を呼ぶ演出家のようです。

こちらにもポソホフのインタビュー記事が(英語)
http://rbth.com/arts/2015/07/21/yuri_possokhov_bolshoi_ballet_can_produce_new_generation_of_choreographe_47927.html

リハーサル映像

ゲネプロの映像
http://www.ntv.ru/novosti/1446699/

映像にもある傷痍軍人は、実際に車いすに乗っている3人の車いすダンサー("Russian National Wheelchair Dance Sport team members)が演じているとのことです。

こちらは初日の映像
http://tvkultura.ru/article/show/article_id/137962

こちらの映像はさらによくわかると思います。ザハロワやスミルノワ、ツヴィルコらの踊りや、車いすダンサーの踊りも。バレエのクラスを行っているシーンもありますね。

ファイナンシャルタイムズの批評(英語)
A Hero of Our Time, Bolshoi Ballet, Moscow — review
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/103d328c-311d-11e5-91ac-a5e17d9b4cff.html


カーテンコールの写真は、ダンソマニのフォーラムにアップされています。
http://www.forum-dansomanie.net/forum/viewtopic.php?t=7138&sid=982b6db699fa9107c8442c8986feb93a

32歳という若い作曲家Ilya Demutsky に作曲を依頼したこの作品、オペラ的な歌声なども使った音楽も特徴的だったようです。かなり大胆な演出もあったようで今までになかったような作品だったとのことですが、批評家の評判は良いようです。また、怪我で長いこと舞台を遠ざかっていたオルガ・スミルノワがこの作品で無事復帰を果たしました。

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2015/07/20

7/18 ロシアバレエ トップダンサー達によるグラン・ガラ

2013年に始まった田北志のぶさんによる「グラン・ガラ」、3回目の今年は、東京と仙台だけでなく、全国での公演を行うようになりました。最初の公演が行われた川口公演をまずは観ましたた。(この後、武蔵野、横須賀と観に行く予定)

Grangala

エレーナ・エフセーエワが劇場の都合で来日が遅れているため、川口公演には出演できないとの掲示があり。7月20日にマリインスキー劇場で「ラ・バヤデール」のガムザッティを踊る予定になっているので、そのためかもしれない。おそらくその後は合流してくれるはずです。

川口リリアホールは、川口駅に直結していて交通の便は大変良い。前の方8列くらいは真っ平で観にくそうだったけど、私がいた16列目あたりは段差もありとても見やすかった。音響が悪いのか録音の音質の問題なのか、音楽が良くなかったのは残念。

「白鳥の湖」第3幕より黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ
マリア・アラシュ、アレクサンドル・ヴォルチコフ

来日直後だったためか、二人とも本調子ではなかったようで、アラシュが珍しくグランフェッテで途中でトウがおちてしまった。ヴォルチコフは、ヴァリエーションではドゥーブルアッサンブレで一周してくれたのだけどそれで疲れたのかコーダではいっぱいいっぱいの様子。しかし、二人ともボリショイ・バレエならではの品格と美しさがあったのは流石だった。

「DEUX」
振付:クレール・ブリアン、音楽:ジャック・ブレル
アンドレイ・エルマコフ

当初はエフセーエワとのパ・ド・ドゥの予定だったのだが、彼女が出演できなくなったため、エルマコフのソロパートへ変更。ジャック・ブレルの歌に合わせて、愛の幻影を激しく求める男性の情熱的な姿を見せてくれた。白のシャツに黒のパンツというシンプルな姿のエルマコフは最初は白い薔薇の花を持っていた。美しいラインとエレガントな動きの中にドラマ性があって魅力的だった。後半の公演ではパ・ド・ドゥ版が観られることだろう。

「バヤデルカ」第二幕より:ガムザッティとソロルのグラン・パ・ド・ドゥ
オレーサ・シャイターノワ、ブルックリン・マック

初めて観るオレーシャ・シャイターノワはキエフ・バレエのソリスト。小柄で愛らしく、とても若い(2013年バレエ学校卒業)。非常に軽やかで力みがなく、小気味よくくるくる回ってくれるし、ポール・ド・ブラも美しい。イタリアンフェッテも完璧。なるほど期待の新星とプログラムに書いてあるだけのことはある。ヴァルナ国際コンクール金賞受賞のブルックリン・マックは、最近では話題のミスティ・コープランドと「白鳥の湖」を踊って注目された。バネがあって跳躍は非常に高いし、柔軟性もあってソロル役はぴったりだけど、少し力みがあったかもしれない。彼はテクニックがあるだけでなく、キーロフ・アカデミーで学んだだけあって、腕の使い方などがエレガントなのが良い。

「カルメン組曲」抜粋
振付:アルベルト・アロンソ
田北 志のぶ、アレクサンドル・ザイツェフ、イーゴリ・コルプ

アロンソ版「カルメン」からの抜粋で、カルメンのハバネラのソロ、ドン=ホセのソロ、エスカミーリョのソロ、カルメンとエスカミーリョのアダージョ、カルメンとドン=ホセのアダージョという構成。ストイックなイメージの田北さんはカルメンのキャラクターはちょっと違うかな、と最初感じたけれども、彼女ならではの強くセクシーな情勢を熱演してくれた。田北さんは脚が長くて美しいので、カルメンの衣装も良く似合う。ザイツェフは純朴そのもののドン=ホセで、カルメンに魅せられていくのが良く伝わってきたし、二人のパ・ド・ドゥでのパッションもどこか切ない。コールプのエスカミーリョはもはや十八番で、スタイリッシュでけれんみたっぷりに魅せてくれる。このガラならではの組み合わせは何とも贅沢で見ごたえがあった。


「海賊」より:メドーラとアリのグラン・パ・ド・ドゥ
オレーサ・シャイターノワ、ブルックリン・マック

ブルックリン・マックは、こっちの方が良かった。観たことのないようなあっと驚く跳躍も見せてくれたし来るだろうなと思ってやっぱり見せてくれた540も決まった。シャイターノワははつらつとしていて、小気味よく音楽性が大変優れていて、コーダの高速シェネも美しい。これから間違いなく頭角を現す一人だろう。

「愛の伝説」より:メフメネ・バヌーとフェルハドのパ・ド・ドゥ
振付:ユーリ・グリゴローヴィッチ
音楽:アリフ・メーシコフ
マリア・アラシュ、アレクサンドル・ヴォロチコフ

「愛の伝説」から、醜くなってしまった自分の顔がもしも元の美貌だったら、と女王メフメネ・バヌーが妄想の中でフェルハドと結ばれる切ないパ・ド・ドゥを抜粋。フェルハドの衣装は、これは罰ゲームか、と思うほど微妙なものだったけど、ヴォルチコフはサポートで頑張って、グリゴローヴィッチらしい垂直さかさまリフトも魅せてくれた。映画館中継でもこの役を踊ったアラシュの表現力の素晴らしさは言うまでもない。ガラの中で見せるには難しい作品だけど、見ごたえはあった。

「ロミオとジュリエット」より:バルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:レオニード・ラヴロフスキー
田北 志のぶ、イーゴリ・コルプ

田北さんとコールプのロミオとジュリエットなんて、一般的なロミオとジュリエットのイメージとかけ離れているんじゃないかと思っていたのだが、杞憂だった。確かに大人のカップルではあるのだけど、二人とも初々しく、恋の歓びを甘く伝えてくれていて、とても素敵だった。田北さんはスレンダーな体型なので案外ジュリエットの衣装が似合うし、表現も非常に細やかで少しずつ高揚する気持ちを素直に、はにかみながら見せていて愛らしい。コールプは髪型は変だったけど、彼も少しシャイなところを見せてくれて、若々しく見えてくるからアラ不思議。ラヴロフスキー版ならではの奥ゆかしさ、生々しさがない振付も相まって、切ない余韻を残してくれた。

「Notation I-IV」
振付:ウヴェ・ショルツ
音楽:ピエール・ブーレーズ
アレクサンドル・ザイツェフ

マラーホフのために振付けられた「ノーテーション」だが(マラーホフは世界バレエフェスティバルでも踊っている)、ザイツェフは初演のセカンド・キャストで、彼は現在ショルツ作品の振付指導者としても世界中で活躍している。今回楽しみにしていた作品の一つ。4つのパートが異なる感情を表している作品なのだが、かなり高度なテクニックを要するし音楽に合わせての非常に激しい動きがある。シュツットガルト・バレエを退団して2年経ったザイツェフだが、バレエ団時代の技術と体型を保っているのが素晴らしく、驚くような柔軟性、そして物語のない作品の中に感情とドラマを見せてくれるところは流石だ。

ここにザイツェフがこの作品を踊った映像があるのだけど、この時からおそらく何年も経っているだろうに、体型も雰囲気も技術もほとんど変わっていないのだから恐れ入る。
https://youtu.be/R3fzbWRF6PU

「瀕死の白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン
田北 志のぶ

田北さんは非常に腕が長く、ロシア・バレエの体現者ならではの、美しく繊細な腕使いがドラマティックだ。震えるような細かいパ・ド・ブレ。彼女の持つ少し硬質な雰囲気が、凛として気高い白鳥の姿に重なり、そんな中でも潔く死を迎えるのではなく、時には激しく抗い、そしてついに力尽きて死んでいく様子を通して、生と死の儚さを感じさせてくれる。いろんな人の「瀕死の白鳥」を観てきたけれども、現役ではロパートキナが一番だが田北さんはその次くらいに素晴らしいパフォーマンスを見せてくれていると思う。まさに入魂の演技。

「ドン・キホーテ」第三幕より:キトリとバジルのグラン・パ・ド・ドゥ
マリア・アラシュ、アンドレイ・エルマコフ

当初はエフセーエワがキトリを踊る予定が、彼女の来日が遅れたことで代役にアラシュ。グランフェッテ32回転を2回も踊らなくてはならなくて大変だと思うが、今回は踊り切れて良かった。ボリショイならではの華やかさがあるし少しエキゾチックな容姿もキトリに合っている。エルマコフは正統派マリインスキースタイルのダンサーなので、流派が合わないところはあるけれども、長身なのに綺麗に良く跳ぶし、気品がありつつも決めるところはきっちりと決めてくれるのが良い。長い脚と美しいつま先にはうっとり。初めて組む相手だろうにサポートもうまく、魅力的なバジルだった。

最後は、1回目、2回目と同じように、「花は咲く」の歌に合わせて出演者たちが花を持って客席に降りてきて、花を配るという趣向(ヴォルチコフも、あの珍妙な罰ゲーム衣装で!)。温かみがあって、とても素敵なガラ公演だった。今回、近郊での公演が多かったため、チケットの売れ行きがやや苦戦していて空席も目立ってしまっていた。でも、ロシア・バレエの魅力を再認識させてくれるし、出演者も良いダンサーばかりなので、迷っている方はぜひ観てほしいと思う。

今後の公演の予定

http://fsquare-freedomstudio.co.jp/concertschedule.html#201507takita

エルマコフのInstagramから、終演後の写真
https://instagram.com/p/5RXsXqh-GB/

2015/07/18

TV番組ボリショイ(ビッグ)・バレエが帰ってくる!寺田翠さん、大川航矢さんも出場

2012年にロシアの国営テレビKulturaで放映されて大きな話題を呼んだバレエ番組、ボリショイ・バレエ。(ボリショイ、とはボリショイ・バレエ団のことではなくて、大きな(ビッグ)バレエ、という意味)

2012年に放映された時には、クリスティーナ・シャプラン、セルゲイ・ポルーニン、ウラディスラフ・ラントラートフ、アルチョム・オフチャレンコ、アンドレイ・エルマコフ、オルガ・スミルノワらが出演していました。バレエ団を代表して出場したペアが踊り、審査員、および視聴者の投票で順位を決めるものです。この時は、1位がシャプラン、2位がポルーニン、3位がエルマコフという結果。

http://tvkultura.ru/vote/answer/vote_id/1/brand_id/22545

この素晴らしい番組、Большой балетで検索すれば前回の動画なども視聴することができます。


さて、このビッグ・バレエが今年帰ってくることになりました。

ボリショイ・バレエ団のサイトにも情報が載っています。
http://www.bolshoi.ru/about/press/articles/2015/3389/

ボリショイ・バレエからは、ダリア・ホフロワとイーゴリ・ツヴィルコ、
マリインスキー・バレエからはレナータ・シャキロワとエルンスト・ラティポフ、ナデージダ・バトーエワとキミン・キム。
ミハイロフスキー・バレエからはアナスタシア・ソボレワとヴィクトル・レベデフ、
クラスノヤルスク劇場バレエからは Ekaterina Bulgutova と Yuri Kudryavtsev
ペルミ・バレエからは Inna Bilash と Nikita Chetverikov
タタール・カザン・オペラ劇場バレエからは、寺田翠さん、大川航矢さん

以上6バレエ団、7組が出場することになります。(前回の台風の目、モスクワ音楽劇場バレエは出場しないのですね)

審査員は、ブリジット・ルフェーブル、ウラジーミル・ワシーリエフ、リュドミラ・セメニャカ、Xiao Suhua(北京舞踊アカデミー教師、振付家)、ファルフ・ルジマトフ、ナタリア・オシポワ、エフゲーニャ・オブラスツォーワが務めるとのこと。司会はイルゼ・リエパ。

収録は7月28日から8月6日まで行われ、秋にテレビ放映されるそうです。


ロシア・バレエの精鋭たちが競うこの番組で、日本人ペアの寺田翠さん、大川航矢さんが出場することは凄いことです。2013年のバレエ・アステラスで2人の素晴らしいテクニックを目の当たりにした方も多いことでしょう。第12回ペルミ国際バレエコンクールで1位と2位に輝いたペアです。どれくらい健闘するか、楽しみですね。

「パリの炎」

こちらは、二人がこの番組のためにリハーサルする様子。ロシアのニュースから。

http://tvkultura.ru/article/show/article_id/137468/

これは彼らが所属するタタール・カザン・オペラ劇場のサイトに掲載された、番組のお知らせ
http://kazan-opera.ru/news/10069/

マリインスキー・バレエから出場するレナータ・シャキロワは、現在はまだワガノワ・アカデミーの学生で、先ほど卒業公演を終えたばかり。マリインスキー・バレエの団員一覧にはもう名前は載っていますが、コール・ド・バレエでの入団です。しかしながら、アカデミー在籍中からマリインスキー・バレエの公演「コンチェルトDSCH」「アポロ」等に主演し、またワガノワ・アカデミーの「くるみ割り人形」に主演している期待の星です。


ボリショイ・バレエのダリア・ホフロワとイーゴリ・ツヴィルコがこの番組のためにマルコ・ゲッケの作品リハーサルをしている映像。彼らは、このほか、ユーリ・ポソホフとヴァチェスラフ・サモドゥーロフの作品も踊るそうです。
http://tvkultura.ru/article/show/article_id/136643/

2015/07/14

イレク・ムハメドフがENBのバレエ・マスターとキャラクター・アーティストに

イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)が新入団、昇進と退団を発表していました。

http://blog.ballet.org.uk/promotions-new-joiners-20152016-season/

一番の大ニュースは、ボリショイ・バレエ、ロイヤル・バレエと活躍した大スターのイレク・ムハメドフが、プリンシパル・バレエ・マスターとキャラクター・アーティストとしてENBに参加することです。

ムハメドフは、ギリシャ国立バレエ、スロベニア国立バレエの芸術監督を歴任した他、ENBでもゲスト教師として活躍していました。ダンサー、教師としての経験を若いダンサーに伝えるとともに、キャラクター・アーティストとしても舞台に立ってくれるということで、非常に嬉しいニュースです。演技力に定評のある彼の舞台、ぜひ観たいものです。

Alison McWhinney, James StreeterとMax Westwellがソリストに昇進。ジェームズ・ストリーターは、小林紀子バレエシアターに客演し、「NHKバレエの饗宴」にも出演しているので、踊る姿を見た方は多いのではないでしょうか。彼は振付の才能もあり、先日ネット中継されたENBの若手振付家の夕べでも、作品を披露していました。2014年のローザンヌ国際コンクールに出場してスカラシップを獲得し、YAGPでもグランプリに輝いて昨年入団したばかりのCesar Corrales セザール・コラレスが早くもジュニア・ソリストに昇進します。

ゲスト・アーティストとして迎えられるのがオシール・グネーオ。現在ノルウェー国立バレエのプリンシパルです。今年の世界バレエフェスティバルに出演するので、今年の夏彼の踊りを観ることができるでしょう。

新入団としては、Naomi Bottomer (イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクール), William Beagley, Josephine Frick 、Erik Woolhouse (3人ともロイヤル・バレエ・スクール)そして、ローザンヌ国際コンクールのスカラシップを獲得した金原里奈さんです。エリック・ウルハウスは、日英ハーフで、第15回NBA全国バレエコンクール 中学生男子の部 1位です。Young British Dancer of the Year 2014にも輝いています。

一方でベテラン・プリンシパルのドミトリー・グルージェフ(22年も在籍)とアリオネル・ヴァルガスが退団します。昨年入団したジョアン・セバスチャン・ザモラ(映画「ファースト・ポジション」に出演)は退団し、ジョフリー・バレエに移籍します。


ENBは、非常にテクニックの強い若手ダンサーに恵まれている一方で、男性ダンサーのプリンシパル級が相次いで退団しています。現在、リード・プリンシパルには、オランダ国立バレエから移籍したイザック・エルナンデス、プリンシパルにはヨナ・アコスタとアレハンドロ・ヴィレレスしか男性ダンサーはいません。ベテランプリンシパルが2人去ったことで、空席がさらにできることになります。ゲストを迎えることも多いバレエ団ですが、男性プリンシパルの強化が一つの課題となることでしょう。

芸術監督のタマラ・ロホは強いリーダーシップを発揮しており、2018年には本拠地をロンドンの東部に移転し、バレエスクール、事務所、スタジオ、リハーサル室などを新築する予定です。
http://blog.ballet.org.uk/announcement-new-home/

また、昨シーズンのアクラム・カーン、リアム・スカーレット、ラッセル・マリファントを起用した「Lest We Forget」トリプルビルが非常に高い評価を得ており、来シーズンは女性振付家3人による新作トリプルビルを上演する予定と、非常に意欲的な試みをしています。日本人ダンサーも多く活躍しているENB、ぜひ日本でも舞台を観たいものですね。

ブベニチェク兄弟公演のDVD発売

2013年に東京で開催された「ブベニチェク・ニューイヤー・ガラ」が好評だった、イリとオットー・ブベニチェク。

彼らが昨年行ったプラハでの公演が収録され、DVD化されました。彼らのサイトで購入できます。PayPal決済で日本にも発送してくれます。

http://bubenicek.eu/LBB_shop.html

出演はブベニチェク兄弟のほか、ドレスデン・バレエのダンサーたち、そしてヤナ・サレンコです。


LE SOUFFLE DE L’ESPRIT 「ル・スフル・ド・レスプリ」
TO OLGA AND MARIE

Choreography: Jiří Bubeníček
Music: Otto Bubeníček, Johann Sebastian Bach,
Roman Hoffstetter, Johann Pachelbel
Sets, costumes and video: Otto Bubeníček
Lighting: Jiří Bubeníček, Fabio Antoci

Dancers: Otto Bubeníček, Jiří Bubeníček, Jón Vallejo,

Raquél Martínez, Anna Merkulova, Elena Vostrotina,
Duosi Zhu, Claudio Cangialosi, Arsen Mehrabyan,
Francesco Pio Ricci, Michael Tucker.

TOCCATA「トッカータ」
TO ILONA

Choreography: Jiří Bubeníček
Music: Otto Bubeníček
Costumes: Otto Bubeníček
Lighting: Jiří Bubeníček, Fabio Antoci

Dancers: Anna Merkulova, Iana Salenko, Duosi Zhu,
Claudio Cangialosi, Arsen Mehrabyan, Michael Tucker,
Jón Vallejo.

FAUN「牧神の午後」

Choreography: Jiří Bubeníček
Music: Francis Poulenc, Claude Debussy
Sets and costumes: Otto Bubeníček
Lighting: Fabio Antoci, Jiří Bubeníček

Dancers: Raphaël Coumes-Marquet, Jón Vallejo, Claudio Cangialosi,

Jan Oratynski, Francesco Pio Ricci, Johannes Schmidt,
Michael Tucker, Fabien Voranger.

THE PICTURE OF DORIAN GRAY「ドリアン・グレイの肖像」
TO OTTO BERTIS

Choreography: Jiří Bubeníček, Otto Bubeníček
Music: Keith Jarrett, Bruno Moretti
Costumes: Denisa Nova
Sets: Otto Bubeníček
Lighting: Jiří Bubeníček, Fabio Antoci
Photography: Klemens Renner

Dancers: Otto Bubeníček, Jiří Bubeníček, Raquél Martínez.


いずれも「ブベニチェク・ニューイヤー・ガラ」で上演された作品ですが、本当に美しく個性的な作品ばかりで、また観たいと思っていたので嬉しいですね。また彼らのガラが日本で開催されると良いのですが。

なお、先日のニジンスキー・ガラでオットー・ブベニチェクはハンブルグ・バレエを退団しました。彼に捧げた映像を、同僚プリンシパルのイヴァン・ウルバンが作っています。シルヴィア・アッツオーニ、アレクサンドル・リアブコ、エレーヌ・ブシェー、ロイド・リギンス、さらには菅井円加さんらも心温まるメッセージを寄せています。

http://youtu.be/xj57nslRhxY

2015/07/12

「バレエ・ビューティフル・マタニティ」発売

元ニューヨーク・シティ・バレエの団員で、映画「ブラック・スワン」に出演した時のナタリー・ポートマンのトレーナーを務め、そのほかミランダ・カー、リブ・タイラーなど多くのセレブレブティのトレーニングも行っているメアリー・ヘレン・バウアーズ。彼女の「バレエ・ビューティフル」シリーズは大人気を呼び、すでにDVDも6枚発売されています。

メアリー・ヘレン・バウアーズは少し前に来日もして特別レッスンを行い、その際に参加もさせていただいたのですが、狭い日本の住宅事情でも手軽に取り組めて、確実な成果が見えて楽しい優れもののエクササイズです。このブログ経由でDVDを買い求めてくださる方も多数います。

メアリー・ヘレン・バウアーズは2013年に出産をされているのですが、その際に、体調管理のためにマタニティ・エクササイズも考案し、出産直前まで実践しました。その自身の経験を基に作られたのが、今回のマタニティ編です。

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バレエ・ビューティフル マタニティ ~妊娠前期編~
ストレッチや、イスを使った優しい動きからなる約15分のエクササイズを4つ収録しました。背中の痛みをやわらげるコアのワークアウトや、むくみを取る腕の運動、足首や足先の疲れを癒すストレッチなどを収録しています。身体が強くなることで毎日の生活が楽になり、おなかの赤ちゃんと向き合うことができるプログラムです。

1.背中と腰のストレッチ
2.イスに座っての優しい動き
3.イスに手を添えての立位の動き
4.10分ストレッチ

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バレエ・ビューティフル マタニティ ~妊娠後期編~
妊娠後期に入るとおなかはとても大きくなり身体の自由も利かなくなってきます。姿勢を正し、コアに意識を向けることに重点を置いた4つのエクササイズで健康を保ち、出産に向けての体力をつけましょう。マットの上に座って行う運動がメインですので、身体への負担が少なく、快適に行えます。

1.全身のストレッチ
2.腕と姿勢
3.脚の調整
4.優しいストレッチ

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妊娠中に起きる様々な心身の変化に優しく寄り添いながら、妊娠期間をよりアクティブに健康的に過ごすための数々のエクササイズを収録しています。医師の専門的なアドバイスを取り入れながら、メアリーの真髄であるバレエ・ビューティフルのエッセンスをしっかりと閉じ込めたマタニティ版です。

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このように妊娠中は大きなおなかをしていたメアリー・ヘレンさんも、今ではすっかりスリムな体型を取り戻しました。このエクササイズはバレエ・ダンスの経験は不要とのことです。妊娠中に起きる体のむくみや痛み、肩こりの解消にも役立ち、出産に必要な体力をつけることができるし、短期間で元の身体に戻すことができるそうです。医師のアドバイスに基づいて作られているので、安心して取り組めます。

今ではプロのバレリーナも子供を持ち、出産後もバレエを続けるのが当たり前の時代となりました。プロのバレリーナでない私たちにも、バレリーナ気分を味わいながら楽しく体力づくりができるプログラムです。写真を見るとわかるように、美しいメアリー・ヘレンさんのエクササイズをする姿を見るだけでも癒されます。

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妊婦ではない方は、こちらをどうぞ。

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2015/07/11

マチルダ・クシェシンスカヤの伝記映画「マチルダ」の予告編

帝政ロシア末期に君臨し、プリマ・バレリーナ・アッソールタの称号も戴いた伝説的なバレリーナ、マチルダ・クシェシンスカヤの伝記映画「マチルダ」の予告編が公開されています。

ワガノワ・アカデミーのFacebookより
https://www.facebook.com/academyvaganova/videos/794322074000413/?fallback=1&fref=nf

Trailer for Alexey Uchitel’s "Mathilde"

Трейлер фильма Алексея Учителя «Матильда» о любви легендарной балерины Матильды Кшесинской и Николая II.The official trailer for “Mathilde” – Alexey Uchitel’s historical film of the love affair between the last Russian Tsar Nicholas II and the legendary ballerina Mathilde Kshesinska.

Posted by Академия Русского балета имени А.Я.Вагановой on 2015年7月8日

imdb
http://www.imdb.com/title/tt4419196/fullcredits?ref_=tt_ov_st_sm

クシェシンスカヤは、19世紀末期からマリインスキー劇場で活躍し、ロシア人で初めて32回転のグランフェッテを踊り圧倒的な人気を誇りました。皇太子時代のニコライ2世(ロマノフ王朝最後の皇帝)の恋人であり、ロマノフ王家の人々との華やかな交際により絶大な権力を誇りました。しかしロシア革命でニコライ2世一家は殺され、命からがらロシアを脱出してパリに亡命。ディアギレフのバレエ・リュスの公演にも出演します。彼女のドラマティックで数奇な人生は、自伝「ペテルブルグのバレリーナ クシェシンスカヤの回想録」に詳しく語られています。非常に面白い本です。

さて、この映画「マチルダ」の製作にあたっても、様々なドラマがありました。

映画のプロデューサーであるウラジミール・ヴィノクールは、ロシアでは人気のあるコメディアンで、娘のアナスタシア・ヴィノクールは、ボリショイ・バレエのソリストです。この企画が上がった時、もう一人のプロデューサーとしてウラディスラフ・モスカレフの名前がありました。モスカレフは、スヴェトラーナ・ルンキナの夫君であり、「20世紀のエトワール」公演などの興行主でもあります。

ヴィノクールが、共同製作者であるモスカレフが映画の資金を持ち逃げしたとして裁判を起こしました。ヴィノクールはロシアン・マフィアとつながりがあり、モスカレフとルンキナは命を狙われる事態となり、その結果として、ルンキナの一家はカナダに脱出。そしてルンキナは今年ボリショイ劇場を退団し、昨年よりナショナル・バレエ・オブ・カナダに移籍することになったのです。移籍がうまくいったルンキナは、先日はヌレエフ版の「眠れる森の美女」に主演し、今年の世界バレエフェスティバルにも出演するので、ピンチを逃れることができました。

映画の話に戻ると、監督のAleksey Uchitelは、いくつかの映画賞を受賞している高名な映画監督で、2000年には彼の作品Wife's Diaryはアカデミー賞のロシア代表作品にも選ばれました。3千万ドルの製作費をかけた、ロシアでは今年最大の大作です。クシェシンスカヤ役の候補には、ディアナ・ヴィシニョーワ、そしてルンキナの名前が取りざたされていましたが、未だ伏せられています。ロシアのブラッド・ピットの異名をとり、「ヴァンパイア・アカデミー」でハリウッドにも進出したダニーラ・コズロフスキーが出演するほか、ドイツ、フランス、リトアニアの俳優が出演するなど国際色豊かなキャストとなっています。

Kozlovsky to star in Russian epic Mathilde
http://www.screendaily.com/news/kozlovsky-to-star-in-russian-epic-mathilde/5078613.article

マチルダ・クシェシンスカヤ役を誰が演じるのかも興味がありますし、どんな作品に仕上がっているのか、非常に楽しみです。

ペテルブルグのバレリーナ―クシェシンスカヤの回想録ペテルブルグのバレリーナ―クシェシンスカヤの回想録
マチルダ・F・クシェシンスカヤ 関口 紘一

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新国立劇場バレエ団、来シーズンもワディム・ムンタギロフがシーズンゲストに

新国立劇場バレエ団は、新入団ダンサーを発表していましたが、同時にいつの間にかダンサーのリストを更新していました。

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/nbj/dancer/contract.html

これを見ても、誰が昇進して、誰が退団したり登録したのかがわかりません。正直、新国立劇場バレエ団の広報体制はお粗末としか言いようがありません。昇格や退団も発表するべきなのに。ダンサーのリストにしても、写真が載っているのはソリスト以上というのは、コール・ド・バレエのダンサーに対する敬意があまりにもないと思います。

素晴らしいのが、新国立劇場バレエ団ファンサイトさんで、ここで昇格、退団がまとめてあります。

http://www.dd.e-mansion.com/~marukyo/news/news_f.html

コール・ド・バレエの要で長年活躍してきた大和雅美さん、元東京バレエ団で、キャラクター色の強い役柄で強い印象を残していた古川和則さんなどが登録に移行してしまったのが寂しいところです。
新たにソリストやプリンシパルに昇格された方はいなくて、アーティストからファースト・アーティストに昇格された方が何人かいます。

一方、こちらの皆さんが入団されています。

●ソリスト(女性1名 男性1名)
木村 優里 新国立劇場バレエ研修所出身
中家 正博 牧阿佐美バレエ団

●ファースト・アーティスト(女性1名 男性1名)
仙頭 由貴 新国立劇場バレエ団登録ダンサー
木下 嘉人 ザルツブルク州立劇場バレエ団

●アーティスト(女性4名 男性2名)
菊地 飛和 新国立劇場バレエ団登録ダンサー
中沢 恵理子 広瀬・加藤バレエスタジオ出身
土方 萌花 新国立劇場バレエ研修所出身
山田 歌子 新国立劇場バレエ団登録ダンサー
吉岡 慈夢 新国立劇場バレエ団(アプレンティス)
渡部 義紀 MIHO BALLET SCHOOL出身

新国立劇場の研修所の卒業生が、新国立劇場バレエ団に入ったのが2名で、東京バレエ団には3人も入団しています。新国立劇場の研修所の役割や方向性というのも、そろそろ考え直された方がよいのではないかと思われます。研修所の卒業生の中でも優秀な生徒が、必ずしも新国立劇場バレエ団に入団していないのは、なぜなんでしょうね。

ファースト・アーティストで入団する木下 嘉人さんは、今年のバレエ・アステラスにも出演します。仙頭 由貴さんは、元ウィーン国立バレエ団員ですね。

そして、ダンサーリストの中で、シーズンゲストプリンシパルとして、今シーズンに引き続きワディム・ムンタギロフの名前がありました。ロイヤル・バレエに移籍後ますます活躍の場が広がり、今年の世界バレエフェスティバルにも出演するほか、9月のサンクトペテルブルグ・バレエ・シアターの来日公演にも出演する彼。そんな多忙で人気の高い彼が、ロイヤルのくるみ割り人形の日程を縫ってまた出演してくれるのは喜ばしいことです。

(が、こんな人気トップダンサーが出演してくれることを新国立劇場バレエ団は、もっと宣伝すべきだと思います)

ワディム・ムンタギロフは、12月の「くるみ割り人形」の公演にゲスト出演することも発表されています。米沢唯さんとの共演。テレビでも放映された「白鳥の湖」でも、この二人の息はとても合っていました。牧版の「くるみ割り人形」は非常につまらない演出なのが残念で、せっかくのワディムなのにもったいないところですが、それでもやはり彼が観られるのは嬉しいですね。今後もほかの演目にも出演してくれたらもっと嬉しいです。
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/news/detail/150709_006893.html

「くるみ割り人形」では、研修所を卒業してソリストとして入団、すでに「白鳥の湖」でルースカヤも踊った木村 優里さんが金平糖の精に抜擢されています。ですが、あまりにも早すぎるのではないでしょうか。むしろ、細田千晶さんや奥田花純さんといった、伸び盛りのソリストに金平糖の精を踊ってもらったほうが良いように思えます。

2015/07/10

NBAバレエ団「ドン・キホーテ」にエフゲーニャ・オブラスツォーワがゲスト出演

美空ひばりの生涯を描いた「HIBARI」が大きな話題となり、乗りに乗っているNBAバレエ団。次の公演は、9月26日、27日の「ドン・キホーテ」です。

http://www.nbaballet.org/performance/2015/don_quijote/index.html

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この「ドン・キホーテ」に、ボリショイ・バレエのエフゲーニャ・オブラスツォーワがゲスト出演することになりました。

オブラスツォーワは、マリインスキー・バレエ時代の2008年にも、NBAバレエ団の「ドン・キホーテ」にゲスト出演しています。この時の公演を観ることができたのですが、とてもキュートでテクニックも正確な、魅力的なキトリでした。

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オブラスツォーワは昨年、東京バレエ団の「ドン・キホーテ」にゲスト出演する予定でしたが、怪我をしてしまったために残念ながら出演をキャンセル。しかし、無事回復して、今回、一段と成長した彼女のキトリが観られることになったわけです。

オブラスツォーワの出演は9月26日(土)ですが、27日(日)の公演は竹田仁美さんと高橋真之さんが出演。元新国立劇場バレエ団の竹田さんは、先日、森山開次さんの「サーカス」にもバレリーナ役で出演していて、顔に覆いを付けた状態でスポッティングを変えながらのグランフェッテを見せるなど、見事なテクニックを披露していました。

なお、ゆうぽうとホールは9月末で営業を終了します。おそらく、この公演がゆうぽうとでの最後のバレエ公演になるのではないかと思われます。


2015年9月26日(土)・27日(日)ゆうぽうと

公 演 名:
『ドン・キホーテ』
日   時: 9月26日(土)16時15分開場 17時開演
9月27日(日)13時15分開場 14時開演
会   場: ゆうぽうと

チケット料金:
全席指定
SS席      ¥12,000-
S席        ¥10,000-
A席        ¥8,000-
B席        ¥5,000-
学生席    ¥3,000-

チケット販売:
7月13日(月)12時〜22日(水)
  ファンクラブ先行予約開始
7月16日(木)〜19日(日)
  チケットぴあ先行抽選予約 20日(月)抽選
7月23日(木)一般発売開始

2015/07/09

サンフランシスコ・バレエ、NYCBなどの舞台を映画館で上映

ニューヨークのリンカーンセンターは、4つのバレエ団の舞台を収録した映像を、映画館で上映することを発表しています。

http://lincolncenteratthemovies.org/

上映されるのは、

サンフランシスコ・バレエ
「ロミオとジュリエット」(ヘルギ・トマソン振付)
9月24日
マリア・コチェトコワが、自分が出演した「ロミオとジュリエット」が収録されたと自身のInstagramで語っているので、その可能性が高いようです。

アルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンス・シアター
「Chroma」 「Grace」 「Takademe」 「Revelations」
10月22日
カンパニーを代表する「レベレーションズ」(アルヴィン・エイリー振付)と、ウェイン・マクレガー振付の「クローマ」など

バレエ・ヒスパニコ
CARMEN.maquia と Club Havana
11月12日

ニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)
「くるみ割り人形」(ジョージ・バランシン振付)
12月5日と12月10日


バレエの映画館上映はすっかり広がっており、ロイヤル・バレエ、ボリショイ・バレエ、マリインスキー・バレエ、パリ・オペラ座バレエなどが取り組んできました。その一方で、映画館で観る舞台の先鞭をつけた「ライブ・インHD」のメトロポリタン歌劇場があるにもかかわらず、バレエの分野においては、アメリカのカンパニーは今までなかなか映画館での上映は行われてきませんでした。

今回の上映については、アメリカのみならず、世界での映画館上映も目指しているようです。生中継ではなく、収録された映像を上映するので、少しハードルが低い部分もあることでしょう。

上演カンパニーも、NYCB以外はなかなか日本で観る機会もないところが多いわけで、これが日本でも観られたらいいなあ、と思うのです。が、まだ来シーズンのロイヤル・バレエやボリショイ・バレエの映画館上映が行われる予定もはっきりしていないのですよね。


パリ・オペラ座バレエの入団試験結果

パリ・オペラ座バレエの入団試験が7月3日(パリ・オペラ座学校最終学年を対象とした内部試験)、6日(外部試験)に行われていて、結果が発表されています。

Danses Avec La Plumeでまとめて記事にしているので、こちらを参考にします。

<内部試験、女子>

1 - Victoire Anquetil 入団契約

2 - Camille Bon

3 - Celia Drouy

4 - Nine Seropian

5 - Nais Duboscq

6 - Adele Belem

<内部試験、男子>

1 - Francesco Mura, 入団契約

2 - Chun Wing Lam, 入団契約

3 - Thomas Docquir 入団契約

4 - Andrea Sarri

5 - Jeremiah Neveu

6 - Simon Catonnet

男子で入団契約を勝ち取った3人のうち、Chun Wing Lamは香港出身で2011年にパリ・オペラ座学校に入学しました。また、Thomas Docquirはベルギー人で、オペラ座初のベルギー人団員となります。


外部試験は、16歳から26歳のダンサーに受験資格があります。オペラ座学校の最終学年、および卒業生も受験できるので、2日の内部試験で契約を勝ち取れなかったダンサーも、敗者復活戦として受験できます。


<外部試験、女子>

1 - Sofia Rosolini, 入団契約

2 - Camille Bon 入団契約

3 - Katherine Higgins

4 - Amber Chiarcosso

5 - Celia Drouy

6 - Alizee Sicre

7 - Seo Yun-Hoo

8 - Chloé Réveillon

9 - Nais Duboscq

10 - Nine Seropian

11 - Calista Ruat

12 - Pearl Vilette

13 - Adele Belem

14 - Elodie Lee

15 - Manon Cazalis

16 - Melissa Patriarch

17 - Kellyu Riffaut-Laneurit

18 - Shanti Mouget


1位のSofia Rosoliniは25歳で、ミラノ・スカラ座バレエ学校の出身。数年間オペラ座の短期契約団員として舞台に立っていました。2位のCamille Bonは内部入団試験で惜しくも2位でしたが、こっちで契約を勝ち取りました。3位のキャサリン・ヒギンスは、アメリカ人で2012年にローザンヌ国際コンクールに出場し、またYAGPやヘルシンキ国際コンクールなど多くのコンクールで賞を取り、ベルギーのロイヤル・アントワープ・バレエスクールに留学。昨年よりパリ・オペラ座の短期契約団員として舞台に立っています。

Celia Drouy、Nais Duboscq、Nine Seropian、Adele Belemもオペラ座学校の最終学年の生徒たちです。最終学年の生徒は、もう一年学校に残って来年再受験することもできます。韓国出身のSeo Yun-Hooは、2014年のヴァルナ国際コンクールで銅賞を受賞しています。

※追記 パリ・オペラ座は、キャサリン・ヒギンスも正式な団員として入団すると発表しました。もともと7枠あったところ、6人しか埋まっていなかったわけなので、合理的な判断と言えます。


<外部男子>

1 - Andrea Sarri

2 - Loïc Pireaux

3 - Simon Le Borgne

4 - Simon Catonnet

5 - Mike Derrua

6 - Jeremiah Neveu

7 - Dorian Browne

8 - Nikolaus Tudorin

9 - Gaëtan Vermeulen

10 - Manuel Garrido

11 - Alexander Cagnat

12 - Simone Dale

外部試験では男子は誰も契約を勝ち取ることができませんでした。1位のAndrea Sarriはオペラ座学校の最終学年、2位のLoïc Pireauxは現在短期契約団員です。8位のNikolaus Tudorinは2012年のローザンヌ国際コンクールに出場し、チューリッヒ・バレエアカデミーで学んでいました。

今年は契約は7枠あったとのことですが、結局契約を勝ち取れたのは6人でした。しかし上位にランクされたダンサーたちは、短期契約団員としてオペラ座の舞台に立つ道があり、その中には、翌年の外部試験で正式契約を勝ち取れる人もいます。スジェとして活躍し、主役も踊っているオニール八菜さんやパク・セウンも、最初の試験では正式契約を手に入れることができず、再チャレンジで合格することができました。今回契約できなかった人の中にも、将来のスターが出てくる可能性はあります。

そして、内部試験で合格した二人をはじめ、オペラ座の団員も徐々に国際化している様子がうかがえます。

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2015/07/08

シュツットガルト・バレエの次期芸術監督がタマシュ・ディートリッヒに決定

シュツットガルト・バレエは、現芸術監督のリード・アンダーソンが2018年に任期が切れますが、後任が誰になるのかが不明でした。

1年前から、シュツットガルト(バーデン・ヴュッテンブルグ州)の文化相と市長が、次期芸術監督を決めるための委員会を開催していました。この委員会には、ジョン・ノイマイヤーがアドバイザーとして参加もしていました。その中で、20人以上の候補者の中から振付家のサシャ・ヴァルツの名前が挙がっており、有力候補の一人であることが明らかになって、波紋を呼んでいました。そうなった場合には、バレエ団の方針が完全に変わってしまうからです。

しかし結局、現在のシュツットガルト・バレエの観客動員が94%~98%と好調であることもあり、現在のクランコ路線を継承することが決まったとのことで月曜日に、タマシュ・ディートリッヒが次期芸術監督となると発表されました。

公式サイトにお知らせ掲載
http://www.stuttgart-ballet.de/home/

バーデン・ヴュッテンブルグ州文化省のプレスリリース
http://mwk.baden-wuerttemberg.de/de/service/presse/pressemitteilung/pid/die-findungskommission-schlaegt-dem-verwaltungsrat-einstimmig-den-stellvertretenden-intendanten-des/

新聞記事
http://www.stuttgarter-zeitung.de/inhalt.intendantenwechsel-beim-stuttgarter-ballett-tamas-detrich-soll-neuer-tanzchef-werden.78e3f095-56cc-421f-a4a4-273f5c55c908.html

タマシュ・ディートリッヒは、アメリカ出身。1977年にシュツットガルト・バレエに入団し、1981年にはプリンシパルに昇進。世界バレエフェスティバルにも出演したことがあるスターダンサーでした。2004年よりバレエ・マスターとなり、2009年には副芸術監督に。リード・アンダーソンの片腕として活躍してきました。今年の夏に56歳となります。

リード・アンダーソンは今あまり体調がよくないとのことですが、2018年にジョン・クランコスクールの新しい校舎が完成することから、それまでは芸術監督を務めるとのこと。今シーズンオフには、プリンシパルのアレクサンダー・ジョーンズ(チューリッヒ・バレエに移籍)、ソリストのラケーレ・ブリアッシ(ボストン・バレエに移籍)、ニコラ・ゴドノフ、アルマン・ザジャン、ドゥミ・ソリストのエリザベス・ワイゼンバーグら合計8人のダンサーが退団するなど、ここ数年ダンサーが大幅に入れ替わっています。クランコ・レパートリーを熟知しているタマシュ・ディートリッヒが後任に決まったことは朗報だと思われます。

2015/07/05

ボリショイ・バレエ、ニクーリナとスタシュケヴィッチがプリンシパルに昇進

ボリショイ・バレエの団員一覧が更新されていて、いつのまにか幾つかの昇進が明らかになっています。

http://www.bolshoi.ru/en/persons/ballet/

http://www.bolshoi.ru/en/about/press/articles/


<プリンシパル>
アンナ・ニクーリナ、アナスタシア・スタシュケヴィッチがプリンシパルに昇進

<リーディング・ソリスト>
デニス・サヴィン、イーゴリ・ツヴィルコ、アルテミイ・ベリャコフがリーディング・ソリストに昇進

<ファースト・ソリスト>
ダリア・ホフロワ、ユーリ・バラノフがファースト・ソリストに昇進

<ソリスト>
アナスタシア・ヴィノクール、Angelina Karpova, Ana Turazashvili、Alexander Smoliyaninovがアーティストからソリストに昇進


昇進したダンサーはいずれも、最近の活躍が目立っている人たちばかりです。ニクーリナは、来日公演でのオデット/オディールやニキヤ役が記憶に新しいですし、スタシュケヴィッチも、東京バレエ団の「ドン・キホーテ」でゲスト出演し、最近ではマイヨーの「じゃじゃ馬馴らし」でのビアンカ役なども踊っています。

イーゴリ・ツヴィルコは、「マルコ・スパーダ」などでも活躍した、見事なテクニックの持ち主。デニス・サヴィンは、すでにずいぶん多くの主演作品があります。ベリャコフは、日本ではロットバルトを踊っていますね。ユーリ・バラノフは来日公演の「ライモンダ」でアブデラクマンを踊っていたのが印象的だったのですが、ようやくファースト・ソリストに。

ボリショイ・バレエのダンサーの人材の豊富さはさすがに他のバレエ団の追随を許していません。後は、次の芸術監督が誰になるのかが気になるところです。

2015/07/03

マシュー・ボーンの「眠れる森の美女」明日より劇場公開

マシュー・ボーンの手によって新鮮に生まれ変わったバレエ「眠れる森の美女」が明日より劇場公開されます。

_

http://matthewbournecinema.com/nemurerumorinobijo.html

今日まで大好評で公開されていたマシュー・ボーン版「白鳥の湖」3D上映に続いての劇場公開です。

1992年「くるみ割り人形」、1995年「白鳥の湖」と続いたマシュー・ボーン演出・振付によるチャイコフスキー3大バレエ作品の上演の最後を飾るのが、この「眠れる森の美女」です。

オーロラ姫のおとぎ話をバレエ化した古典の名作は、マシュー・ボーンの手によって新鮮な傑作として生まれ変わりました。New York Times紙が「これがマシュー・ボーンの最高傑作」と評し、日本公演も来年に予定されている話題のプロダクションが、映画館の大画面で鑑賞できるのは嬉しいです。

出演は、「オーロラ姫」にハナ・ヴァッサロ、本来なら王子の役である「レオ(国王の狩猟番)」には、「白鳥の湖」で王子を熱演したドミニク・ノース、そして「ライラック伯爵」には、やはり「白鳥の湖」での昨年の来日公演での素晴らしい演技、踊りも記憶に新しいクリストファー・マーニーが妖しい魅力を見せます。「カラボス / カルドック」には、また妖艶なアダム・マスケルが扮しています。

「A Gothic Romance」と題しているように、ゴシックでダークで独特の美意識に彩られた作品です。1890年、まさに「眠れる森の美女」が初演された年から物語は始まり、そしてオーロラの16歳の誕生日には20世紀初頭へ、目覚めた100年後には現代、という時代の雰囲気を伝えてくれる美術も素晴らしい。妖精、ヴァンパイア、貴族などが登場した目くるめく世界が展開します。

2015年7月4日(土)より「YEBISU GARDEN CINEMA」ほかで全国順次公開

恵比寿ガーデンシネマでの上演時間は、10:20 と 20:10 です。

尺:105分/収録:2013年5月、イギリス、ブリストル ヒッポドローム劇場/演出・振付:マシュー・ボーン/舞台・衣装デザイン:レズ・ブラザーストン/照明:ポール・コンスタブル/音響:ポール・グルースイス/音楽:ピョートル・チャイコフスキー


夢へ翔けて ~戦争孤児から世界的バレリーナへ~ ミケーラ・デプリンス/エレーン・デプリンス著

世界最大のバレエコンクール、YAGP(ユースアメリカグランプリ)の出場者を追ったドキュメンタリー映画「ファースト・ポジション―夢に向かって踊れ!」に出演して一躍有名になった、ミケーラ・デプリンス。シエラレオネの戦争孤児だった彼女がアメリカ人の養父母に引き取られ、バレリーナになるという夢をかなえました。その彼女の自伝「夢へ翔けて ~戦争孤児から世界的バレリーナへ~」が発売され、アメリカでは大きな話題となり、映画化も決定しています。その邦訳がこのたび発売されました。

この本がアメリカで発売された時には、ミケーラはまだ18歳で、オランダ国立バレエに入団したばかり。その若さで自伝を発売するのって早すぎるのでは、とその時には思いました。でも、この本はできるだけ早く発売され、できるだけ多くの若い人たちに読まれるべきなのではないかと読み終わった後に感じました。


ミケーラがシエラレオネの内戦で両親を失って孤児となってしまったということは、「ファースト・ポジション」の中でも語られていますが、シエラレオネでの内戦下の暮らしがあまりにも過酷だったことに驚きました。一夫多妻制で女性の扱いがひどく、女に教育なんてもってのほかという中で、ミケーラの両親は賢い彼女に早くから勉強を教えていました。

しかしデビルと呼ばれる反政府勢力(RUF)に父は殺され、母は飢えで亡くなってしまいます。おじは彼女を孤児院に入れますが、白斑がある彼女は悪魔の子と言われ、孤児院では疎んじられいじめられます。孤児院の先生もデビルに殺され、シエラレオネから脱出するときも、大勢の子供たちが殺されている姿を見るなど試練が続きますが、ミケーラと親友のミアは、アメリカ人の養父母に引き取られ、アメリカへ。

ミケーラとミアは、養父母の深い愛情に包まれて、アメリカでは幸福な生活を送ります。養父母はアフリカから6人の子供たちを養子として育てているだけでなく、3人の息子たちに加えて2人の血友病の男の子たちを養子に迎えており、その血友病の子たちはAIDSで亡くなってしまっていました。

孤児院にいたときに、風で飛ばされてきた、アメリカ人が持ち込んだバレエ雑誌の表紙がミケーラの運命を変えます。ポワントを履き、チュチュを着た美しいバレリーナが表紙を飾っていたのでした。いつか、私もバレリーナになりたいという夢がミケーラを支えます。

養父母はミケーラをバレエ教室に連れて行ってくれて、やがて彼女は頭角を現します。アメリカでも肌の色が黒いということで差別されたり、バレエの世界においても、黒人のバレリーナはほとんどいないという現実に直面します。バレエは白人のためのものであるという根強い偏見は今でもあります。それでも養母に励まされ、同じくバレエを習っていたミアと切磋琢磨して頑張るミケーラ。養母も、ミケーラのバレエ教育を全面的にサポートし、少ない予算の中で衣装を手作りし工夫もして彼女を支えます。

サマースクールに参加したダンス・シアター・オブ・ハーレムでは、初めてアフリカ系アメリカ人としてNYCBのプリンシパルとなったアーサー・ミッチェルに出会います。10歳でYAGPに初めて出場し、ABTのサマースクールへの参加、さらにYAGPへの出場を重ね、「ファースト・ポジション―夢に向かって踊れ!」にも出演。「ファースト・ポジション」に出演したことで一躍注目を浴びてマスコミにも登場するようになります。南アフリカでの公演に出演し、10数年ぶりにアフリカの地を踏みます。アフリカ、特にシエラレオネの女性や子供たちのために何ができるだろう、と思うようになります。そして、オランダ国立バレエに入団。クラシックバレエのバレエ団の団員になるという夢が実現しました。米ハフィントン・ポスト2012年「18歳以下の18人―年間最優秀ティーン」の一人にも選ばれました。

国連のボランティアとして、戦争に翻弄される子供たちの様子を伝える機会を与えられたこと、そして世界女性サミットに参加して自分の戦争に翻弄された経験を語ることができたことは、ミケーラにとって大きな出来事でした。戦争を逃れ、アメリカに渡ってバレリーナになることができた彼女は幸運でした。ミケーラに、養母は、恵まれている人間は分かち合う責任があると言います。養父母は、だからこそ、アフリカの孤児たちを引き取って愛情深く育てていったわけです。ミケーラは何を分かち合うべきなのか、自分自答した時に出てきた答えは、「希望」でした。困難な中を生きていく子供たちに希望を分け与えるために、彼女はこの若さで自伝を書いたわけです。

*******

戦争、両親の死と大変な苦難を生き抜き、アメリカに渡っても差別されるという現実に直面しながら、努力を重ねて夢の扉を開いたミケーラ。だけど、養母エレーンと共に書いたこの自伝では、等身大の彼女の姿が、素直な言葉で生き生きと綴られています。決して成功に酔うことなく、様々なトラウマや恐怖、姉妹となったミアとの友情と葛藤など、若い女の子ならではの視点で語られているので、とても好感度が高いのです。翻訳もとても読みやすく、ルビも振ってあって小学校高学年くらいでもスルスル読めてしまうし、ドラマティックで感動的で、面白い内容です。

また、日本人の留学生も多い名門バレエスクール、ロックスクールでのバレエ教育のこと、予選を経てYAGPのコンクールに参加する過程、衣装や振付の準備、芸術性をどうやって獲得していくか、バレエ団の就職活動など、バレリーナを目指す子にとっても参考となる話が出てきて、これもとても興味深いです。

子供にとって(大人にとっても)一番大切なことは、希望。生きるということは、困難な現実に直面し、悲しいことや苦しいことに出会い、思うようにいかないことも多いけど、でも頑張ればきっとそれは乗り越えられて、夢に近づくことができる。そして努力する姿を見て支えてくれる人たちが、必ずどこかにはいる。そのことをこの本は伝えてくれます。

これはアメリカ的な考え方なのかもしれませんし、キリスト教の影響も大きいと思うのですが、ミケーラの養母が実践している「恵まれている人間は分かち合う責任がある」という思想は素晴らしいことだと思いました。私も、決してものすごく恵まれているわけではありませんが、飢えてはいないし教育は受けることができたわけなので、やはり自分の持っているものを人々に分け与えることができればいいなと感じました。

この自伝は映画化も決定しているということで、こちらも大変楽しみです。東京小牧バレエ団三代目団長 菊池宗氏の推薦文つき。

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2015/07/02

第26回<バレエの祭典>プレミアム・シーズン ラインナップ

第26回<バレエの祭典>プレミアム・シーズン ラインナップが発表されています。

2015年12月から2016年9月まで東京で開催される、世界最高峰のバレエ団・アーティストたちによる人気公演のチケットを、一般発売前に優先的に確保する、バレエ好きのためのシステムです。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/26.html


1)2015年12月17日~20日【1演目】

 世紀のプリマの引退公演―<進みゆく人生>
 ワールド・ツアー最終公演
 シルヴィ・ギエム<ライフ・イン・プログレス>

この公演については、概要がつい昨日発表されたばかりです。東京文化会館で4公演行われます。
http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/post-551.html#002193

2011年の日本公演でも深い感動を呼んだマッツ・エック振付「バイ」と、アクラム・カーン振付「テクネ」、ラッセル・マリファント振付「ヒア・アンド・アフター」の二つの新作をギエムが踊ります。絶対に見逃すことのできない公演ですね。


2)2016年2月【1演目】

 ロシアが誇るドラマティックな名ヴァージョンを
 東京バレエ団初演
 ブルメイステル版「白鳥の湖」 東京バレエ団初演

モスクワ音楽劇場バレエも先日の来日公演で踊った、ドラマティックで面白い「白鳥の湖」です。衣装、装置などプロダクションも新しいものになるでしょうから楽しみですね。


3) 2016年3月【2演目】
 
 巨匠ノイマイヤーのカンパニーが、
 話題作を携えて<バレエの祭典>初登場
 ハンブルク・バレエ団
 「リリオム(回転木馬)」/「真夏の夜の夢」

  ◆予定されるゲスト:アリーナ・コジョカル

ハンブルグ・バレエの本国オフィシャルサイトでも、この来日公演のことは発表されていました。「リリオム」は2012年のブノワ賞で、主演のアリーナ・コジョカル、カーステン・ユング、そして作曲のミシェル・ルグランがそれぞれ受賞しています。

本国サイトでは、このほかガラも予定されているとのことですが、おそらくこれは、祭典演目には含まれていなくて別途購入する形になるものと思われます。

公式サイトによれば、3月4,5,6日が「リリオム」、3月8、9日が「ノイマイヤーの世界ガラ」、3月11、12、13日が「真夏の夜の夢」のようで、会場は東京文化会館です。


4) 2016年6月【2演目】

 絶好調のロイヤル。十八番の名作を携えて、
 3年ぶりにリターン
 英国ロイヤル・バレエ団
 「ロミオとジュリエット」/「ジゼル」

前回のロイヤル・バレエの来日公演では、マクミラン作品もアシュトン作品もありませんでした。今回はマクミランの「ロミオとジュリエット」が入ったので喜ばしい限りです。


5) 2016年7月【1演目】
 
 選び抜いた旬のバレエの王子様たちを、
 ごきげんなプログラムでご賞味ください。
 新企画!<バレエの王子様>(仮題) 

  ◆予定される出演者
  スティーヴン・マックレー、レオニード・サラファーノフほか

これは新しい趣向なので大変興味深いですね。海外では、「Kings of the Dance」や「Men In Motion」といった、男性ダンサーをフィーチャーした公演がちょっとしたブームですが、王子様というところが、日本らしいと言えるかもしれません。ルグリやマラーホフのグループ公演が終わってしまった今、新しいスターの発掘は大きな課題です。ほかに誰が出るのか、興味津々ですね。


6) 2016年9月【1演目】

 芸術とモードの街ミラノ自慢のスカラ座が、
 豪華ゲストで贈る絢爛華麗な舞台
 ミラノ・スカラ座バレエ団
 「ドン・キホーテ」

  ◆予定されるゲスト
  ナターリア・オシポワ、レオニード・サラファーノフほか

バレエ団の評価はあまり高くないものの、毎回豪華なゲストダンサーを入れてのミラノ・スカラ座バレエの公演です。特に英国で絶大な人気を誇るオシポワと、すべてのダンサーの中でも3本の指に入るほどのテクニック自慢のサラファーノフという組み合わせは、海外のバレエファンも羨むことでしょう。


今回は、期間もラインアップ演目も少なめので、少し値段も安くなるのではないかとちょっと期待します。バレエファンなら絶対に見逃すことのできないギエムの引退公演やハンブルグ・バレエ来日公演があるので、今回も人気を呼ぶことでしょう。

2015/07/01

ドキュメンタリー映画「ボリショイ・バビロン」が9月に日本公開

2013年に起きたボリショイ・バレエ芸術監督セルゲイ・フィーリンの襲撃事件の内幕、事件後のバレエ団の混乱を収めたドキュメンタリー映画「ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏」が9月19日に日本公開されます。

http://www.cinematoday.jp/page/N0074492

2013年1月、ボリショイ・バレエ団の元スターダンサーで、芸術監督のセルゲイ・フィーリン氏が何者かに襲撃され硫酸を顔面に浴びる事件が発生。捜査が進むにつれ、団員同士の確執、ポジション争い、バレエ団の財政危機といった内情が浮かび上がり、ファーストソリストのパーヴェル・ドミトリチェンコが逮捕された。

 本作では、事件発生後退団するスターダンサーが続出し、大混乱の中、それでもなお踊り続けるダンサーたち、そして舞台裏を支えるスタッフたちに肉迫。バレエ団を海外に売り込もうとするメドヴェージェフ首相にあらがう上層部をはじめ、ロシアの権威を示すバレエ団としての誇りを取り戻そうとする人々の葛藤が明かされる。

公式サイト
http://www.bolshoi-babylon.jp/

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この映画のエグゼクティブ・プロデューサー、サイモン・チンは、2008年にアカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画「マン・オン・ワイヤー」、そして「シュガーマン 奇跡に愛された男」もプロデュースしています。監督のニック・リードは、イラク戦争、天安門事件など様々な国々でのドキュメンタリー番組を監督してきました。ボリショイ・バレエに初めて映画のカメラが入り、その舞台裏を捉えています。事件が起きた後の2013-14年シーズンを準備するところから始まるようです。

華やかな公演の舞台裏にある苦悩と恍惚が、ダンサーやスタッフの親密な肖像とドラマティックなエピソードによって浮かび上がっているそうです。今までに実現できなかった舞台裏の様子を描くことによって、この映画はダンサーたちの傑出した芸術的および身体的な才能し、彼らの怪我への恐怖、そして世界で最も有名なバレエカンパニーで生き残るための用捨のない野望に敬意を表すそうです。英国では今年の12月4日に劇場公開されるそうで、世界に先駆けて日本で公開されるということになります。

(英国の配給会社のマーケット用資料)
http://www.altitudefilment.com/film/sales/21/bolshoi-babylon

出演:マリーヤ・アレクサンドロワ(プリンシパル)、マリーヤ・アラシュ(プリンシパル)、セルゲイ・フィーリン(芸術監督)、ウラジーミル・ウリン(現劇場総裁)、アナトリー・イクサーノフ(前劇場総裁)
アナスタシア・メスコーワ(ソリスト)、リュドミラ・セメニャカ(教師)、ジョイ・ウーマック(現クレムリン・バレエ)、ニコライ・ツィスカリーゼ(現ワガノワ・アカデミー校長)、ボリス・アキモフ(教師)ほか

配給
UK - Altitude Film Distribution
US - HBO
日本 - 東北新社

9月19日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次ロードショー

ミスティ・コープランド、ステラ・アブレラがABTプリンシパルに、マリア・コチェトコワ、アルバン・レンドルフがABT移籍

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)での昇進が、New York Timesで報じられました。

http://www.nytimes.com/2015/07/01/arts/dance/misty-copeland-is-promoted-to-principal-dancer-at-american-ballet-theater.html

ABTの発表
http://www.abt.org/insideabt/news_display.asp?News_ID=522

大きな話題となったのが、ミスティ・コープランドのプリンシパル昇進です。TIME誌の表紙を飾り、トニー賞授賞式ではプレゼンターとして登場し、アンダー・アーマーでのCM出演など話題に事欠かなかった彼女。先日メトロポリタン・オペラハウスで「白鳥の湖」に主演した時には、チケットはソールドアウトとなりました。ABT史上初のアフリカ系アメリカ人の女性プリンシパルが誕生しました。

ミスティ出演のアンダー・アーマーのCM映像は、800万回以上の再生回数を誇っています。

ソーシャルメディアなどでの宣伝が先行している、技術的には欠点があり「白鳥の湖」での主演の時にグラン・フェッテが32回回れず途中でフェアテに変更した、など批判もある彼女ですが、バレエも多様性の時代であることを物語っています。バレエ界にとどまらない知名度を持ち、アメリカでもっとも有名なバレリーナの一人であり、ティーンエイジャーに絶大な人気を誇っているのは間違いありません。

「白鳥の湖」主演後には、ものすごい人数の若い女性ファンたちがサインを求めて出待ちをしていたことが報じられました。この舞台では、バレエ・リュス・ド・モンテカルロの元プリンシパル、レイヴン・ウィルキンソンと、ヒューストン・バレエの元プリンシパル、ローレン・アンダーソンという二人の偉大なアフリカ系アメリカ人元バレリーナが、カーテンコールでミスティに花束を贈りました。

ミスティの昇進は、米国大統領カウンシルからも祝福されました。


賛否はありますが、歴史的なニュースであり、New York Timesではブレイキングニュース(号外)となり、全米のテレビでも芸能ニュースで大きく報道されるほどの事件でした。ミスティがプリンシパルとなったことで、今までバレエを観なかった層が劇場に足を運ぶようになるでしょうし、それはバレエにとっては素晴らしいことです。

CNNニュース

ABCニュース


怪我をしたポリーナ・セミオノワの代役で先日「ジゼル」を踊って高く評価され、ABTの通なファンの間で熱狂的な人気を誇るステラ・アブレラもプリンシパルに昇進しました。2001年にソリストに昇進して以来長いこと不遇だった彼女ですが、ロイヤル・ニュージーランド・バレエで「眠れる森の美女」、オーストラリア・バレエで「ジゼル」にゲスト出演。ベテラン実力派の彼女もついに報われる時が来ました。ステラは、映画「センターステージ」に出演した元ABTソリスト、サシャ・ラデツキー夫人でもあります。

ダニール・シムキンのTwitterより。ステラの嬉しそうな表情と周りの団員の祝福が素敵です。


また、ABTにもたびたびゲスト出演してきたマリア・コチェトコワがサンフランシスコ・バレエから移籍。Twitterのプロフィールで一足先に「ABTプリンシパル」とフライングしていたことから、彼女の移籍はすでに公然の噂となっていました。さらに、昨年ゲスト出演し、今年の世界バレエフェスティバルにも出演するアルバン・レンドルフは、デンマーク・ロイヤル・バレエから移籍します。2人とも、元のカンパニーにも在籍し続けるとのことです。

ソリストへの昇進と移籍も発表されました。スカイラー・ブラント、ルチアーナ・パリス、トーマス・フォースター、アーロン・スコットとカサンドラ・トレナリーがソリストに昇進します。また、ボストン・バレエのプリンシパルで、先週の「スター・ガラ2014」で来日していたジェフリー・シリオもソリストとして移籍します。

ABTは、今年パロマ・ヘレーラ、シオマラ・レイエス、ジュリー・ケントと3人の女性プリンシパルが引退しました。また、ポリーナ・セミオノワ、デヴィッド・ホールバーグが怪我をし、さらにゲストですがナタリア・オシポワも怪我をしたことで主演を踊る人がいなくなってしまって、代役探しに奔走したり、実力のないダンサーに代役をさせる大変な事態になってしまいました。これらの昇進と移籍により、もう少し状況は良くなるものと思われますが、引き続き、特に春のMETシーズンは綱渡り状態が続いてしまうことでしょう。かつての栄光の日々を取り戻すのは難しそうです。

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