シュツットガルト・バレエの2015/16シーズンと次期芸術監督問題、アレクサンダー・ジョーンズ移籍
シュツットガルト・バレエの2015/16 シーズンが発表されています。
http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2015-16-season/
注目の新作は、
デミス・ヴォルピ振付の「サロメ」。
「クラバート」で大成功を収めた、バレエ団常任振付家のヴォルピが、オスカー・ワイルドの原作のバレエ化に挑みます。2016年の6月10日初演予定。
http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2015-16-season/salome/
このほか、新作扱いは以下のミックスプロです。
キリアン/ファン・マーネン/クランコ ミックスプロ
http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2015-16-season/kylian-vanmanen-cranko/
FORGOTTEN LAND(キリアン)、SOLO、VARIATIONS FOR TWO COUPLES(ファン・マーネン)、POÈME DE L'EXTASE(「法悦の詩」、クランコ)
フォーサイス/ゲッケ/ショルツ プロ
http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2015-16-season/forsythe-goecke-scholz/
「セカンド・ディテール」(フォーサイス)、ゲッケの世界初演作品、「ベートーヴェン交響曲7番」(ショルツ)
KAMMERBALLETT ミックスプロ (中劇場での上演)
http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2015-16-season/kammerballette/
CHAMBER BALLET(ファン・マーネン、カンパニー初演)、ARENA(グレン・テトリー)、カタルツィナ・コツィルスカの世界初演作品
リバイバルとレパートリーは、
「欲望という名の電車」(ノイマイヤー)
「眠れる森の美女」(ハイデ)
「ロミオとジュリエット」(クランコ)
クランコ・クラシックス(クランコのミックスプロ)
http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2015-16-season/cranko-classics/
「パイナップル・ポール」「貴婦人と道化師」
また、リード・アンダーソンの芸術監督20周年を記念してのフェスティバルが行われます。
http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2015-16-season/festival-20years/
6月16日~24日にわたって行われ、バレエ団出身で他のカンパニーの芸術監督をしている元ダンサーたちを迎えたトークあり、ミックスプロあり、「ロミオとジュリエット」「オネーギン」などの特別公演あり、カンパニー団員の振付家たちの新作をそろえたガラありと盛りだくさんです。最終日は海外からのゲストを迎えてのガラ公演で締めくくられます。
さて、2018年にリード・アンダーソンの芸術監督としての任期が切れ、その時に69歳となる彼は退任する予定です。その後任人事を巡って、バレエ団が揺れているようです。
http://www.stuttgarter-nachrichten.de/inhalt.vertrag-von-reid-anderson-sorge-um-die-zukunft-des-stuttgarter-balletts.048390a9-2d8c-4210-aee9-ddc70dd2e07d.html
http://www.stuttgarter-nachrichten.de/inhalt.diskussion-um-nachfolge-klares-bekenntnis-zur-cranko-tradition.1b53afd1-d517-405f-b57f-4d528b6c1342.html
現在、リード・アンダーソンの後任芸術監督はサシャ・ヴァルツとなり、完全にレパートリーを一新するという噂があり、バレエ団が揺れています。一月に地元新聞でこのことが報じられた時にはダンサーたちは動揺し、退団を申し入れた団員も続出しました。後任人事のための委員会が、バーデン・ヴュッテンブルグ州の文化庁によって組織されています。その委員会のアドバイザーにジョン・ノイマイヤーがおり、シュツットガルト・バレエは、クランコ作品と密接な関係を保ってきたと語っています。(一応、サシャ・ヴァルツ就任の噂については、委員会では否定されているようです) が、ノイマイヤーが後継者になるべきだという声も上がっていたようです。
シュツットガルト・バレエは、ジョン・クランコの急逝を受けて、1974年にグレン・テトリーが芸術監督を引き受けました。「春の祭典」「ヴォランタリーズ」などの傑作を振付けた振付家であるテトリーは、バレエ団のカラーを一新しようとしましたが、結局2年で退任し、マリシア・ハイデが引き継いで、クランコ作品の伝統を守ってきました。リード・アンダーソンは、1996年に芸術監督に就任してその路線を保ちつつも、現代作品の新作なども多く取り入れ、クリスチャン・シュプック、マルコ・ゲッケ、そしてデミス・ヴォルピなどの振付家が育っていったのです。
また、このカンパニーの出身者の多くが、他のバレエ団の芸術監督として活躍しています。ハンブルグ・バレエを長年率いているジョン・ノイマイヤーを始め、チューリッヒ・バレエ芸術監督のシュプック、カールスルーエ・バレエ芸術監督のビルギット・カイル、韓国国立バレエ芸術監督のスージン・カン、そしてフィリップ・バランキエヴィッチも次期チェコ国立バレエ団の芸術監督に決定しています。ブリジット・ブライナーはドイツのゲルセンキルヘンのカンパニー、エリック・ゴーティエはゴーティエダンス、ロバート・コンはアウグスブルグ・バレエの芸術監督、そしてマリシア・ハイデはチリのサンチアゴ・バレエの芸術監督です。
プリンシパル・クラスで多くの退団者が相次いでいるなど、いろいろと困難に直面しているシュツットガルト・バレエですが、大きな財産であるクランコのレパートリーを守り抜いてほしいものですね。
その退団者の話ですが、若手プリンシパルのアレクサンダー・ジョーンズが退団し、チューリッヒ・バレエに移籍します。ソリストも、ラケーレ・ブリアッシがボストン・バレエに、アルマン・ザジャンが米国のタルサ・バレエに、そしてニコライ・ゴドノフは引退します。6人のソリストのうち3人が退団、1人が昇進なのでソリストが2人しかいないというびっくりの事態に。
11月の来日公演でアレクサンダー・ジョーンズのロミオやオネーギンが観たかったので、残念ですね。一方で、来日公演の「オネーギン」に主演する予定のソリストのロマン・ノヴィツキーがプリンシパルに昇進します。
« ミュージカル「パリのアメリカ人」でクリストファー・ウィールドンが振付賞を受賞 | トップページ | HBCサマーワークショップ 2015のご案内 »
「バレエ(情報)」カテゴリの記事
- 彩の国さいたま芸術劇場で、ノエ・スーリエ 『The Waves』公演とさいたまダンス・ラボラトリ(2024.01.21)
- 『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2022/23』、開幕は平野亮一主演「うたかたの恋―マイヤリング―」(2022.12.06)
- 英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン、ロイヤル・バレエ「くるみ割り人形」2月18日より劇場公開(2022.02.17)
- 英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22が、2月18日ロイヤル・バレエ『くるみ割り人形』で開幕(2022.01.23)
- 「ボリショイ・バレエ inシネマ2021-2022 Season」5上映作品が12月より劇場公開(2021.10.16)
「シュツットガルト・バレエ」カテゴリの記事
- シュツットガルト・バレエのドキュメンタリー番組(2016.07.22)
- シュツットガルト・バレエの2016-17シーズン(2016.06.03)
- シュツットガルト・バレエの次期芸術監督がタマシュ・ディートリッヒに決定(2015.07.08)
- シュツットガルト・バレエの2015/16シーズンと次期芸術監督問題、アレクサンダー・ジョーンズ移籍(2015.06.10)
- 12/31 シュツットガルト・バレエ「Silvester Gala」(2015.02.02)
コメント
« ミュージカル「パリのアメリカ人」でクリストファー・ウィールドンが振付賞を受賞 | トップページ | HBCサマーワークショップ 2015のご案内 »
naomi様
こんばんは。
シュツットガルト・バレエの未来がそのようなことになるとはびっくりしました。
愛着のあったバレエ団がガタガタになるのは嫌なものです。監督が変わる、プリンシパルや団員が去る、路線変更等、ABTもパリオペも何とも言えない状態が続いていますが、シュツットガルトは微妙な感じがここ最近しばらくあったものの、なんとなく大丈夫だと思っていたんですよね…
ヴァルツなら、ノイマイヤーがいいと言い出すのもわかります。ノイマイヤーが2人いれば良いのですが。クランコの伝統を受け継ぎながら、少しずつレパートリーなり、バレエ団のカラーなりを新陳代謝をしていける人はいないでしょうか・・・
「オネーギン」のチケットも早々に取ってワクワクしていたのですが、なんだか心配です。
投稿: sandy | 2015/06/11 00:15
naomi様、いつも貴重な情報をありがとうございます。
記事を読んで、アンダーソン監督の印象がガラリと変わってしまいました。
ボリショイで『オネーギン』初演時のトラブルに巻き込まれていた軽いイメージは完全に誤解で、
後進を育てる芸術監督なのですね。
次のシュツットガルト来日公演では、そういう観点からも見てみたいと思います。
そして、アレクサンダー・ジョーンズ君は、チューリヒに移籍するんですね……(涙)
本人が決めたことでしょうし、チューリヒでの活躍を願うばかりですが、今後は日本で彼を見ることはかなり厳しくなりますね。
私も彼のロミオを見たかったので残念です。
投稿: uriko | 2015/06/11 00:42
sandyさん、こんばんは。
お返事が遅くなってしまって申し訳ありません!私もシュツットガルトには15,6回は足を運んできて、とても愛着があっただけに、ここ1~2年でバレエ団が正直ガタガタの状態となり、ほとんどのダンサーがいなくなっていることがとても悲しいです。もう私もあの素敵な街に行くことはないんだろうなと思うと。
サシャ・ヴァルツ就任説はどうも違うっぽいのですが、一応ノイマイヤーは自分のところでも「オネーギン」やっているし、シュツットガルト・バレエOBでもありますからね。とはいえ、彼も高齢なのでちょっとそれもないだろうなと思います。リード・アンダーソンがあまり体調がよくないらしくて、それも混迷の原因のようですね。ご覧のようにOB/OGは世界中で芸術監督として活躍をしているのですが、亡くなってしまった振付家の作品を引き継いでいくことの難しさを実感してしまいます。
投稿: naomi | 2015/06/13 01:48
urikoさん、こんばんは。
リード・アンダーソンは自分自身は振付をしない人なので、そういう意味でも、振付家やダンサーを本当にたくさん育ててきて素晴らしい実績を残したと思います。ただ、高齢となり、さらに健康上の問題で今ほとんど出社していないらしくて、それもあってバレエ団が停滞してしまって、ここにはあまり書けませんがいろいろと問題が出てきたようです。ザハロワ騒動も、元といえば彼が体調が悪くてモスクワまで足を運べず、ダンサーを選ぶプロセスに参加していないのに、彼女の出演を却下してしまったのが問題だったのです。(そして、クランコの版権を持っている人物は、元ダンサーでもなければ教師・振付家でもない…)
アレクサンダー・ジョーンズの件は本当に残念ですよね。演技力も技術もあり、ルックスもいい、とてもいいダンサーなのに。チューリッヒ・バレエは、元シュツットガルト・バレエ常任振付家クリスチャン・シュプックが率いていて、3年前にも2人シュツットガルト・バレエのプリンシパルが移籍しているので、全く知らないところに移籍するわけではないのですが。日本で観られる機会はなかなかなくなってしまいましたね。悲しいです。
投稿: naomi | 2015/06/13 01:54