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2015/06/15

【吉田都×堀内元 Ballet for the Future】トークイベント

8月に開催される【吉田都×堀内元 Ballet for the Future】を記念したトークイベントが先日、チャコット勝どきスタジオで開催されましたので、伺ってきました。

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長年海外で活躍してきた堀内元さん(セントルイスバレエ芸術監督)と吉田都さん(元ロイヤル・バレエプリンシパル)。二人のバレエに賭ける熱い思い、次世代ダンサーたちへの期待が伝わる素晴らしいトークを聴くことができました。

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この公演を開催するにあたっての想い

堀内:これからの日本のバレエを担うダンサーたち、次世代ダンサーへのメッセージとして、一人でも多くの人たちに伝えたいと思います。ダンサーとしての夢、希望、バレエの楽しさを多くの人たちに伝えていきたいのです。

5年間、堀内元バレエUSAとして兵庫県立芸術文化センターで、セントルイスで上演した作品を日本のダンサーに踊っていただいていました。一昨年からは吉田都さんにも参加していただいています。アメリカで作った作品を日本のダンサーに踊ってもらって日本で観てもらう、という企画を東京でもやるというのが、今回の公演です。良い作品に出会うことで、ダンサーとして伸びる、成長して行くことができます。世界一流の踊りを皆さんに観てほしいと思います。

吉田:私の年齢でチャレンジできるものを踊っていきたいと思っています。今まで古典の作品を踊ることが多かったのですが、それもまたチャレンジでした。元さんの作品を踊ると自分が解放されるのを感じました。自分も楽しく、お客さんにも楽しんでいただけて、勇気をもらえました。もう少し踊っていければいいなと、気持ちを変えていただきました。

元さんはもともとは私にとっては遠い存在で、私の小さいころからスターでした。同じ日本人として誇りに思える方です。そういう方が、ローザンヌ賞を獲ってからチャレンジするようになって刺激され、たくさん勉強させられました。
同じローザンヌコンクール受賞者でも、元さんと私では意識の違いがありました。私は勉強のためにチャレンジしたという感じでしたが、元さんは、その先にどうしようかと考えていらっしゃったのです。

堀内:当時ローザンヌで同じころに受賞されたのはぼく以外には都さんだけだったので、勇気づけられました。当時、東京新聞コンクールで一緒でした。その時から、都さんが出場されるから勝てるかどうかわからないと思っていたのです。ものすごく安定したテクニックの持ち主で、励みになりました。一緒の世代でやっているんだと思いました。ロイヤル・バレエがメトロポリタン・オペラハウスで公演した時、「眠れる森の美女」で都さんが、ダーシー・バッセルの代役としてムハメドフと踊るのを観ることができました。尊敬する人です。

海外のカンパニーでプリンシパルとして踊り続ける難しさ

吉田:才能の違いを日々見させられました。どうしても難しい、だからこそ刺激を受けて勉強になりました。いろんな面で大変でした。バレエを踊るうえで日常生活の面も踊りにつながっていきます。そこが苦労しました。

堀内:私が海外に出たときには、FAXもなく、手紙でやり取りするしかありませんでした。手紙だと日本に連絡が付くのも一週間後でした。文化の違いがあり、生活に慣れるのも大変でした。どうやって文化に適応していくか、そこからの勉強が大変でした。
都さんはすごい集中力の持ち主で、人の言ったことに対して120%で応える人で強い。だからこそ、長いことロイヤルでプリンシパルとして踊ることができたのだと思います。

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コンクールについて

吉田:目標を持ってチャレンジするのは素晴らしいことです。ローザンヌ賞を獲っても、そこからがスタートです。菅井円加さんが1位となった年、マスコミが大騒ぎして私にも取材が殺到しました。どうしてそんなに大騒ぎをしているのかと思いました。嬉しいニュースですし、震災後なので明るいニュースとして取り上げたいということで良いことだと思いましたが、そこがスタートラインなのに、大騒ぎされて、受賞者も気の毒だと思いました。イギリスでは、コンクールに参加するというのはあまりありません。

堀内:コンクールは目先の目標になっていいと思いますが、スターのステイタスになるわけでもないし、それでバレエ団には入れるわけでもありません。セントルイスバレエでも、団員のうち24人はセントルイス以外の出身で、サンフランシスコ、ボストンといったメジャーなバレエ学校の出身者が多いのです。毎日のトレーニングが大事なのであって、コンクールで賞を獲ることが大事ではないのです。

吉田:私はピーター・ライトとの仕事を経験してきました。89歳の今でも彼は変わらず仕事をしていて、最近も彼に会いました。ピーターとの出会いがあってこその自分だと思っています。日本でのバレエ教育は素晴らしいとピーターに言っていただいたのが嬉しいです。技術より表現、演じるということを、彼の作品から教えられて成長していくことができました。

ジョージ・バランシンについて

堀内:最初彼が認めてくれたのは、私にしっかりしたテクニックがあったことからです。ニューヨークシティバレエに入団した翌年にバランシンは亡くなってしまい、正味一年半しか一緒に仕事はできませんでしたが、彼がいたからこそ、私もアメリカに残ることができました。人一倍バランシンを勉強したものです。亡くなってから、彼の素晴らしさがわかりました。今もバレエ団で彼の作品を上演するときに発見があります。自分の土台を築いてくれた人です。亡くなる前、5,6
か月入院していて、2,3回病院で話すことができました。彼はパーキンソン病(実際にはクロイツェル・ヤコブ病)を患っていて手の自由がきかない状態でした。「真夏の夜の夢」公演の数日前、手を取ってくれて10分間、手を握って離してくれなかったのを覚えています。

堀内さんの作品「La Vie」を踊ることについて

吉田:セントルイスバレエにゲスト出演して堀内さんの作品を踊りました。その後兵庫でも踊り、セントルイスで踊ったのと、ここまで違うのかというのが面白かったです。同じ振付でも、日本人とアメリカ人と全然違うのです。解釈などが違っていました。

「ドン・キホーテ」のアントレの振付について

堀内:私は「ドン・キホーテ」を踊ったことがないので、振付も面白かったです。基本的に「ドン・キホーテ」の3幕のプティパの振付についてはほとんど誰も手を付けていなくて原型が残っているのですが、私は原形をとどめつつも、新しいステップをどんどん取り入れていくようにして、今のテクニックに合うスピードで作りました。

日本で生徒を教えることによって感じたこと

吉田:日本で教える機会があった時、生徒たちがあまりに静かで無反応なので悩んだ時期がありました。しかし彼らは中に熱い気持ちを持っている人たちで気にしないようにしました。自分の中でこういうことにチャレンジしたい、今までと違うことに、もっとシンプルにして、ここをちゃんとしなければならない、ということを教えています。バレエには近道というのはなくて、基本の基本を積み重ねるしかないということを伝えています。コンクールで一つのソロですべてを見せるという意識の人が多いのですが、もっと地味なのがバレエです。積み重ねた後に違うところに行けるのですが、そこまでの時間は長いけれど、いつも基礎が大事と教えたいと思います。

セントルイスバレエの現状

堀内:今年でセントルイスも15年目になります。芸術監督に就任した当初は、7人しかダンサーがいなくて、「くるみ割り人形」の上演だけをしていました。バレエ学校の生徒も50人だけでした。土台を築きあげ、すでにあるものはないので作り上げました。リーダーとして引っ張っていくからには大変だけど、小さなバレエ団なので、自分でプランを立てて、作品を選び、ダンサーを教育していって、ここ数年で形になってきました。いつかは吉田都さんをゲストで呼びたいと思っていて、12年目でやっと実現しました。今はいい形になりました。年4回の公演を打てるようになり、お客さんは2万人、バレエ団のダンサーは26人、バレエ学校の生徒は350人います。中西部のバレエ団としては、ミルウォーキーやカンザス・シティバレエと同じくらいのレベルとなり、軌道に乗りました。

NPOなので、半分位がチケットの売り上げで、残りは寄付やスポンサーシップです。予算は2億円でダンサーを雇い、作品を創っています。日本ではこれができているバレエ団は2,3カンパニーといったところでしょう。新作は年に2,3回発表するつもりで、くるみは13回の公演を行っています。

吉田さんとバランシン

吉田:ロイヤル・バレエでもバランシンの作品の上演は多いのです。バーミンガムロイヤル・バレエでは「シンフォニー・イン・スリー・ムーブメンツ」を踊りましたが、NYCBとは踊り方が全然違います。ロイヤルのダンサーがバランシンに挑戦するのは、トレーニングが違うため難しい時代でした。スタンリー・ウィリアムズという先生が松山バレエ団にも来て指導してくれましたが、「(堀内)元を観ればバランシンがわかる」と言ってました。音の取り方、リズムの取り方もクラスで教えてもらいました。

堀内:ブルノンヴィル・スタイルはスピード感があり、これは必ず全部教えなければならないテクニックです。一方古典はメロディなのであって、これは教えるものではありません。バランシンはとにかくカウント、カウントです。私はストーリー物は大好きで、物語を伝えるのが好きです。バランシンでも「真夏の夜の夢」や「Steadfast Tin Soldier」などを踊りました。適応性がある人が1日、2日でそのスタイルに入ることができ、都さんはそこが違います。

吉田:私はいつも抑え目なので、バランシンを踊るにあたって自分を解放できるので気持ちよく踊れます。ただそこまで行くのは大変です。音楽と一体となっている振付なので、音楽に助けてもらえます。自然と体が動くような感じです。

<質疑応答>
Q. この30年で日本のバレエ界は変化しているが、進歩していくには何が必要か

堀内:ダンサーの意識の問題はあります。最近のダンサーは一度海外の舞台に立てば満足してしまい、海外で2,3年踊ると帰国してしまいます。私は辞めろと言われるまで海外にいたいと思っています。バレエは日本で生まれたものではないし、本場で踊りたいと思わないのかと思います。アメリカで踊ろうと声をかけても、日本の方が楽しいと言われてしまいます。バレエは苦しいものですし、アルバイトをしてでも舞台に立ちたいという気持ちが少ないようです。

後はお客さんづくりが大事です。寄付をしてくれる人たちとお友達になることが大事です。パーティ、サポーターとの交流をセントルイスでは行っています。コミュニティづくりがまだまだ日本にはありません。どうやってサポータを作っていくかということがない。

Q. バランシンとの交流について

堀内:バランシンとの会話は他愛のないものが多かったです。彼はフィジカルセラピストに対しては、日常の話ばかりしていて、親しみやすい人でした。料理が好きなので料理の話、特にロシアの料理の話が多かったです。素敵なおじさんという感じでした。どうやって、この人があのような作品を作っていたのか、と思います。私は自分で解釈して自分で作っていきたいです。

Q. オーディションではどのようなダンサーを求めていますか?

堀内:適応性がとても大事です。デモンストレーションでどうやって対応できるかというのを見ています。後は、スタイルを崩せる人、求めているものを素直に受け取れる人です。

Q. 吉田さんが今後やっていきたいこと。

吉田:応援していただけているのは励みになっています。新しいチャレンジもできると思います。この舞台もそうです。あまり先のことは予定は立てられませんが、まずは今頑張ろう、チャレンジしていきたいと思います。

堀内:都さんは人の三倍練習する人なんです。他の人が帰っても、ホテルで考えてビデオを見て翌日質問する、すごい勉強家です。一人で毎日リハーサルをしていて、延々と誰もいないところで練習しています。都さんでさえもこれだけ練習するということを知ってほしいです。(吉田さんは「私はドンくさいだけです」と応じていたのが謙虚かつ可愛らしかったです)

*********
堀内元さん、吉田都さんと日本バレエの2大巨人のお話は、多くのことに気づかされました。まだまだ日本のバレエは発展途上にありますが、彼らのような先人がいたからこそ、今は多くの日本人ダンサーが海外でも活躍するようになってきたのですね。吉田都さんのように、テクニックに定評のある人で、とっくにバレエを辞めているような年齢でも、このように人の三倍練習して修練を続けているということはすごいことです。それだけに、バレエには近道はなく、基本に始まり基本に終わる、という言葉が説得力を持ちます。まだまだ日本のバレエ界には課題が多く、地域との交流も足りないように思えますが、彼らが伝えたいメッセージは、この「Ballet for the Future」公演で伝わってくることでしょう。

【吉田都×堀内元 Ballet for the Future】
http://www.chacott-jp.com/j/special/ticket/bff/index.html

金沢公演
本多の森ホール(石川・金沢) 2015年8/25(火)
開場17:45 開演18:30
主催:北國新聞文化センター/チャコット 共催:北國新聞社
お問い合わせ:北國新聞文化センター TEL076-260-3535

東京公演
ゆうぽうとホール(東京・五反田) 2015年8/27(木)
開場17:45 開演18:30
主催:チャコット/イープラス
お問い合わせ:チケットスペース TEL03-3234-9999(月〜土10:00-12:00/13:00-18:00)

堀内さんを取り上げたアメリカの番組。

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