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2015/06/22

6/21 テロ・サーリネン・カンパニー「MORPHED」

フィンランドのカンパニーが日本で公演を行うのは初めてだという。テロ・サーリネン本人は、2002年に「HUNT」を踊るために来日したことはあったし、昨年、埼玉県舞踊協会が委嘱した「MESH」の上演はあったが。なぜこれほどまでの力を持つカンパニーが今まで日本で上演していなかったのか、不思議に思うほどだった。

http://saf.or.jp/arthall/stages/detail/2333

振付 テロ・サーリネン
音楽 エサ=ペッカ・サロネン
 無伴奏ホルンのための演奏会用練習曲(2000年)
 フォーリン・ボディーズ(2001年)
 ヴァイオリン協奏曲(2009年)
出演 テロ・サーリネン・カンパニー

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舞台の上三方には、すだれのように太いロープがたくさんぶら下がる。黒い上着を着た8人の男たち。フードをかぶっていて、列になって舞台の上を四角いパターンを描きながら歩いていく姿は、まるで修行僧を思わせる。音楽は、エッサ=ペッカ・サロネンの「無伴奏ホルンのための演奏会用練習曲」かなり強烈な音だ。やがて彼らは一列に並んで肩を組んでぐるぐる回り、一人がその列から離脱したり、ロープと戯れ始める。8人という人数は絶妙で、4人と4人に分かれたり、これが2人ずつ4組でそれぞれパ・ド・ドゥに分かれたり、他のダンサーたちがロープのところで背中を向けている間、中央で激しいパ・ド・トロワが繰り広げたりする。

マリメッコのデザイナーであり、フィギュアスケート選手キーラ・コルピの衣装も手掛けているというテーム・ムーリマキによる衣装が大きな役割を果たしている。最初はフード付きのただの上着のように見えるのだが、よく見ると袖などの縫い目のところが裂けている。上着を脱ぐと、下は白いシャツ、に見せかけて後ろ側は黒のシースルーの布だっり、袖なしのベストだったりと着ているものは異なる。踊りが繰り広げられていくうちに汗を含んで、テキスタイルの様子も変化していく。そのシャツやベストもさらに脱ぎ捨てられ、ダンサーたちの肌は汗で光り、赤く染まっていく。まさにタイトルの「MORPHED」を体現している。

ぶら下がっているロープも効果的で、このロープと戯れたり、首つり死体のようにロープからぶら下がるダンサーもいれば、ロープを片側からず―と揺らしていって駆け抜けていき、背景、そして舞台上が大きく乱れた雰囲気になる。加えて、シルエットを見せるかのように変化していく照明も美しい。非常にパワフルで不協和音を含んだサロネンのスコア、それにも負けない踊りの強度。まさに総合芸術としてのダンスを見せられた感じがした。

振付もユニークである。もともとはクラシックバレエのダンサーだったサーリネンだが、大野一雄に1年近く師事したり、ネパールで民族舞踊を学んだりした。バレエだけでなく、ストリートダンスやコンテンポラリーなど様々な出自のダンサーを起用しており、重心の低い動き、舞踏を思わせるゆっくりした動き、マーシャルアーツ、ブレイクダンスなどいろんな要素が顔をのぞかせている。男性同士のパ・ド・ドゥは、コンテンポラリー的でありつつも、リフトもあったりとクラシックバレエの影響もあり、まるでカンフー映画を見ているかのような闘争的なところも、官能性とともにあって、彼らの愛憎すら感じさせるものだし、パ・ド・トロワの動きもとても立体的で面白かった。さいたま芸術劇場の舞台の広い空間を大きく使ったダイナミックな動きが多く、一斉に跳躍したり、何人かのダンサーが横たわっている間を動き続けるダンサー、ロープに引っかかったダンサー、床をうごめくダンサーと、高低差のある立体的な舞台構成が見事である。

最初は淡々とした動きから始まりながらも、どんどん動きは強度を増していき、3曲目のカデンツァを多用したヴァイオリン協奏曲で最高潮に達すると興奮度も増してくる。ダンサーたちが自分たちを覆っていた膜を少しずつはぎ取っていき、生身の自分の姿を見せていくように自分の個性を発揮していく。人生における様々な苦悩や葛藤を昇華していき、最後には疲れ果て死んでしまったかのように横たわったりする姿の中に、試練を乗り越えての再生と浄化を感じさせた。

8人のダンサーたちは、出自は違うものの、皆偉丈夫でがっしりした体つきの人が多い。金髪の長髪の男性が二人おり、この二人の髪が途中でほどけてきて舞うのも視覚的効果として美しかった。背中を向けて立っているだけでも、ものすごくビジュアルとして美しい屈強なダンサーたちである。群舞のシーンも揃いきらないところが個性を感じさせて、個々を際立たせている。なかでも、ストリートダンス出身で肌の浅黒いイマ・イドゥオゼーは鮮烈な印象を与えたダンサーであった。1時間にわたってすべてのダンサーたちが踊り続けるこの作品、ものすごいエネルギーがほとばしる。

鮮やかで打ちのめされるような、心にずしんと響く舞台だった。サーリネンの他の作品、なかでも代表作である「Borrowed Light」や「HUNT」もぜひ観てみたいものである。

この作品のメイキング映像。当初は7人のダンサーで予定されていたようである。

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