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2015/05/28

5/23 モスクワ音楽劇場バレエ「白鳥の湖」

楽しみにしていたモスクワ音楽劇場バレエの来日公演。「エスメラルダ」も観て、こちらも素晴らしかったのだけど、まずは記憶が新しい「白鳥の湖」の方から。

実は、23日夜公演があまりに素晴らしかったので、思わずリピーター券を購入して24日も行くことにしたのです。千円割引ですが、それでも、リピーター券ってすごくいいシステムだと思うし、他の公演でも取り入れてほしいですね。

https://www.facebook.com/mamt2015

スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念
国立モスクワ音楽劇場バレエ

5月23日(土)17:30
オデット/オディール:エリカ・ミキルチチェワ
ジークフリート王子:ゲオルギー・スミレフスキ
悪魔ロットバルト:イワン・ミハリョフ
道化:アレクセイ・ババイェフ

アダージオ:オクサーナ・カルダシュ
パ・ド・カトル エリザベータ・チェブラソワ、マリーヤ・ゾーロトワ、セミョーン・ヴェリチコ、ドミトリー・ヂャチコフ

三羽の白鳥 オクサーナ・カルダシュ、ナターリヤ・クレイミョノワ、ユリア・ステパノワ

指揮:アントン・グリシャニン
管弦楽:国立モスクワ音楽劇場管弦楽団


ブルメイステル版の「白鳥の湖」を観るのは久しぶりだけど、改めて、この版の面白さを実感した。演劇的な要素が強く、プティパ/イワーノフ版に忠実な2幕でさえも、コーダで群舞が踊っている間、王子とオデットが熱い視線でお互いを見つめ合っており、濃厚な感情表現が観られた。

特に畳みかけるような展開の3幕が最高にエンターテインメント性が高くて、スペクタクルを観ているような気分になる。この版では、民族舞踊はすべてロットバルトの手下の悪い人たちで、下手の玉座に腰掛ける王子を挑発するように、彼に向けて踊りを繰り広げられる。スペインは女性ソリスト一人が男性たちを従えているのだけど、過剰なまでにセクシーで今にも襲い掛かりそうな勢い、そんな妖しい世界が展開する中を、オディールも現れては消えて王子を惑わす。ナポリ、チャルダッシュと続き、マズルカで再び、幻影のようなオディールの姿がダンサーたちの間を駆け抜けていく。ロシア系カンパニーはどこもキャラクターダンスが素晴らしいのだけど、このバレエ団は特に見ごたえがあって、ディヴェルティスマンなのにドラマティックで華やかだ。

ロットバルトの手下4人が真っ赤なマントを翻しての最高にかっこよくて禍々しい前奏曲の後、オディールと王子のアダージオは、「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」。メロディアスで美しい曲なのだが、帯同した劇場オーケストラの盛り上げ方が見事で、まんまと王子が幻惑され策略にはまっていくさまが伝わってくる。そして、ロットバルトと手下たちによって隠されていたオディールが手品のように現れて、グランフェッテを繰り広げるクライマックスの楽しいこと。この華麗で禍々しい3幕の部分だけでも、何回でも観たい。

(ミラノ・スカラ座で以前行われた「チャイコフスキー・ガラ」では、このブルメイステル版の3幕を中心に、ディヴェルティスマンの中にローズ・アダージオ、ブルーバード、くるみ割り人形までも含めたアレンジをしていたのだが、さすがにそれが入ると、この目くるめく展開に水を差されたようで、面白さが減ってしまう)

王子は大ベテランのスミレフスキ。前回の来日公演でも、彼の白鳥の王子を観ていた。9頭身くらいの長身ですらりとした姿に、アンヘル・コレーラに少し似ている面差し。踊りは非常にノーブルで脚も長くてまっすぐで美しい。少しお疲れ気味のようで、途中少しサポートミスがあったり、3幕のヴァリエーションで手をつくといったミスはあったものの、伸びやかでつま先まで行き届いた動きに気品があって理想的な王子様だった。2幕の決めポーズは、膝の上にオデットがアラベスクでポーズするので高度なサポート技術が必要なことだろう。
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スミレフスキは演技も見事で、特に2幕でオデットが残していった一枚の白い羽を大事そうに持ち帰り、3幕でディベルティスマンが繰り広げられている間も、取り出しては愛おしそうにそれを見つめる姿が、かなり危ない人みたいで、役に入り込んでいるのがわかる。1幕の終盤でも、アダージョの女性が彼にモーションをかけているのにほとんど注意を払わず、空を飛んでいく白鳥の姿を目で追っている様子からして、現実離れしていて、年齢は重ねているのに幻想の世界に生きている風変わりな人、という印象を与えていた。

オデット/オディールのエリカ・ミキルチチェワは、まだ若いようだ。前回の来日公演では、まだナタリア・レドフスカヤが踊っていたし、その前はタチアナ・チェルノブロフキナがいたということは、ここ数年で世代交代が続いたということになる。プロポーションに恵まれているうえ、テクニックも非常に強い。コケティッシュなかわいらしさがあり、特に小悪魔のようなオディールがとても魅惑的だった。グランフェッテも、軸がびくとも動かない安定性で、シングル、シングル、ダブルの繰り返しで非常に速く回転していてクライマックスを盛り上げてくれた。オデットも悲劇的でドラマティックで抒情性があり、美しかった。

ブルメイステル版の「白鳥の湖」は、2幕と4幕は比較的オーソドックスなものの、圧倒的な3幕に加えて1幕もなかなか面白い。まず、通常パ・ド・トロワのところが男女二人ずつのパ・ド・カトルになっている。男性ペアが左右対称の振付でよく跳ぶし、二人とも脚が長くてきれいなうえ、技術がしっかりしていて美しい。女性の片方は、以前マリインスキー・バレエ、そしてキエフ・バレエに所属していたエリザベータ・チェブラソワだった。王子のソロは、通常は3幕黒鳥のパ・ド・ドゥのアダージオで使われる曲なのだが、「白鳥の湖」が初演された時には、1幕に使われていた曲だという。道化のアレクセイ・ババイェフは、他のバレエ団での道化役と違って背が低いわけでもないのだが、テクニックは素晴らしくいつまででも回転できるように見えた。道化のピルエット・ア・ラ・スゴンドでは、居眠りしているところを起こされて、それでいきなり超絶技巧を見せるのだからなかなかすごい。

白鳥の群舞のクオリティの高さには驚かされた。ここはモスクワ流派で、モスクワ舞踊アカデミー出身者が多いためマリインスキーのような優雅さはないけれども、皆手脚が長くプロポーションが美しく、容姿端麗なうえ、良くそろっているので観ていて惚れ惚れとする。オデットと王子のグラン・アダージオでも群舞が動いたりするところは少し気が散って邪魔な感じもするけれども、これだけ美しいのだから許してあげようと思う。そして大きな3羽の白鳥には、マリインスキーから移籍したユリア・ステパノワがいた。隣のオクサーナ・カルダシュ(「エスメラルダ」で主演)が華奢で小さ目のため、大柄に見えるものの、さすがに腕の動きのエレガントさ、存在感の華やかさで際立っていた。彼女はすでにマリインスキー・バレエでもオデット/オディールを踊っているし、このカンパニーでも近いうちにその機会が回ってくることだろう。

4幕はロットバルトが岩の上に乗ったままでほとんど動かないし、王子もあまり闘わないので、結末はあまり盛り上がらないのだけど、群舞の使い方がなかなか面白い。白鳥たちは王子の裏切りに怒っていて、王子がやってきても「フン!」と無視をする。下手から上手に向かって黙々と歩んでいく白鳥たち。その中に紛れ込んで、どこにいるのかわからないオデット。しかし王子の姿に、彼女は許しをこめた表情で振り返るのだ。このあたりにもドラマ性が感じられて、この版は魅惑的なものに仕上がっている。

そして、劇場のオーケストラの演奏が、実にロシアの香りたっぷりで素晴らしかった。「白鳥の湖」というチャイコフスキーの曲のドラマティックさを知り尽くして、仰々しいまでに盛り上げてくれるので観ている方の気分は上がりっぱなし。特に3幕以降の緩急自在、ピアニッシモとフォルテッシモが際立った演奏には聞き惚れた。

劇場のオーケストラを帯同させて、このクオリティの高い公演が値段が手ごろだったのも嬉しい。しかも客席にはゼレンスキーやウヴァーロフはいるし(ゼレンスキーはなんと2つ隣の席に座っていたのでちょっとドキドキしてしまった)、楽しい来日公演だった。また間を置かずに来日してほしいと強く思った。

それと、公演パンフレットの内容もとても充実していて、丁寧に作られていたのに好感を持った。ダンチェンコ劇場への訪問記、ゼレンスキー監督、そして主演するキャスト一人一人へのインタビュー、ソリストまで顔写真を載せていたりするところ、細かい作品解説と、実によくできている。ウラジーミル・ブルメイステルさんって、ものすごい美男子だったんですね…。モスクワ訪問記や舞台装置なども紹介していたFacebookでの情報提供もとても良かった。

DVDで楽しむバレエの世界[鑑賞ナビ付]ミラノ・スカラ座バレエ団「白鳥の湖」(全4幕/ブルメイステル版)DVDで楽しむバレエの世界[鑑賞ナビ付]ミラノ・スカラ座バレエ団「白鳥の湖」(全4幕/ブルメイステル版)

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バレエ公演感想」カテゴリの記事

コメント

naomiさんこんばんは、

僕はブルメイステル版は映像でしか見たことないのですが、実演を観られて羨ましいですね。
ちょっと疑問に思っていることがあります。もし、台本、プログラム解説、実演上でお気づき
でしたらお教えいただければ嬉しいです。疑問は、本文にも書かれている「羽」についてです。
<2幕でオデットが残していった一枚の白い羽を大事そうに持ち帰り、3幕でディベルティスマンが繰り広げられている間も、取り出しては愛おしそうにそれを見つめる姿が、かなり危ない人みたいで、役に入り込んでいるのがわかる。>

この「羽」は、オデットがチュチュあるいは髪飾りの中から自分で抜いて落とすのではなく、
直前に王子から「こっそり」(?)手渡されたものを落としていますよね。
何故自らの体から引き抜いて落とさないのか?自分の羽を引き抜くということはバレエでは
禁忌事項なのでしょうか?
あるいは単純に踊っているときに落としてしまうのが怖いからそうするのか?
それとも、パダクシオンあたりでオデットから貰った羽を永遠の愛の誓いとして王子から
渡されたが、今は成就しないとオデットが落としたのか?

この謎が解ければお教えいただけませんか?

マリインスキー劇場公演 SYLVIA,ミハイロフスキー劇場公演ラバヤデール 観て来ました!
マリインスキー主役はテリョーシキナでした。日本女性が近くにいらして教えて下さったの。お茶とお菓子も頂いて、素晴らしい劇場で感激しました。ミハイロフスキー劇場の舞台は少し傾斜があるようですね。こちらも、楽しかったです。明日からモスクワです。ボリショイとダンチェンコ劇場に行ってきます。本物のバレエに感激している私達です。

やすのぶさん、こんにちは。

私は「白鳥の湖」研究家ではないので、そこまで詳しいことはわかりません…。

今回は、王子がオデットに渡したのではなく、去り際にチュチュから一枚偶然に羽が落ちて、それを拾うということになっていました。というか、そういう設定じゃないんですか?私が観たスカラ座やオペラ座の映像もそうだったように思えたのですが。(見直さないと確信は持てませんが)

引き抜いて渡す、というのは「火の鳥」で出てきますよ。

中川さん、こんにちは。

マリインスキー劇場行かれたのですね。テリョーシキナ主演だったら、見ごたえがあったことでしょうね。日本人の方がいらっしゃったんですね。私が行ったときには日本人の姿は、出口で一回若い女性二人連れを見かけたくらいです。マリインスキー劇場、スイーツなどが充溢しているので幕間も楽しいですよね。マリインスキー劇場は少し古めかしいですが、いかにも風格と格式があって、バレエの聖地に来たんだという気持ちになります。
モスクワは、サンクトペテルブルグとまた全然違った雰囲気の街ですが、ボリショイ劇場はさすがに新装であたらしくてきれいなので、楽しんでくださいね。ダンチェンコだと、日本から帰ってきたばかりのダンサーたちを観られますね。いいな~。やはり本場で観るバレエは格別ですよね。

こんばんは
昨夜はダンチェンコのシンデレラ、今日はボリショイのオネーギンを観て来ました。ダンチェンコは子供達がいっぱい!可愛いドレス着てジッと舞台を見つめている子、せっかくおめかししてるのにバレエに興味のない子、子供達向けなのでしょうか ちょっとミュージカルっぽいバレエの感じでした。ボリショイは格別ですねー。私も主人もウットリしたのは、オネーギンの友達と次女のオルガのバレエ!!!二人の息が合ってたのでしょうか、オルガが宙を舞うような、こちらも夢を見ているのかと錯覚するくらいの優雅ななめらかな動き!!!観客も万雷の拍手でした!申し訳ないけど姉のタチアナ役よりずっと素敵でした。それにしてもボリショイバレエは素晴らしかった!オーケストラ然りでした。
お陰様で充分堪能する事が出来ました。色々と教えて下さり、有り難う御座いました。ご報告まで。

naomiさんご回答ありがとうございました。

これは、これは研究というようなシロモノではなくて
単なる下世話な筋書き上の興味だけの話です。
naomiさんが書かれているように、3幕では非常に
重要なものとして描かれていますから、2幕にその由来が
はっきり示されているのかな?と思ったまでで、それなら
<公演パンフレットの内容もとても充実していて、丁寧に作られていた・・・・ソリストまで顔写真を載せていたりするところ、細かい作品解説と実によくできている。>
の中に制作サイドの説明がなされているのかな?と思い
質問させていただいたまでです。ご回答によると、そういった
解説はパンフレットにはなかったということですね。

実際のところ、羽だけを引用した、贋のわが国でたまに見る
演出では<去り際にチュチュから一枚偶然に羽が落ちて>
という感じですが、本家を含めた正当な(笑い)ブルメイステル版
では、僕の見た限り、全て王子の手から直接貰った羽を
(あるいは王子の袖から抜き取る?)オデットは落としています。
これは、映像のピエトラガラもザハロワ(ミラノ)も同じです。

https://www.youtube.com/watch?v=6LKyWPmtX7Y

↑の1時間12分3秒のところ。

中川さん、こんにちは。

ボリショイ、ダンチェンコと楽しまれて本当に素晴らしい旅になったようですね。良かった!
ボリショイのオネーギンをご覧になったのは30日夜ですか?このキャストかしら?
http://www.bolshoi.ru/en/performances/655/roles/#20150530120000
そうそう、ボリショイにしても、ダンチェンコにしても、オーケストラが素晴らしいんですよね~。劇場の雰囲気も素敵だし。私もまたロシアに行きたいです。

やすのぶさん、こんにちは。

モスクワ音楽劇場の来日公演のパンフレットですが、羽根の件については触れてありません。作品のあらすじというのは、劇場用のパンフレットの中ではそんなに重要なものではありませんので。
劇場の起源、設立したダンチェンコ氏、スタニスラフスキー氏、そしてブルメイステル氏についての詳しい解説、ゼレンスキーのインタビュー、そして各主演キャストのインタビューや劇場訪問記などです。作品についての解説も、高名な評論家のみなさんによってなされていますが、羽根の部分なんて些少な問題に過ぎないと私は思います。そして今回は、間違いなく、王子から渡される部分もありませんし、羽根は衣装から落ちるという演出になっているんですが。(2回観ています)

お返事遅くなりました。二日に帰国、荷物の整理と沢山の洗濯物、春に出かけたのに日本の暑い毎日で衣替え等々・・・忙しくしておりました。ブログも先ほど拝見したばかりでした。
プログラムはどうせロシア語じゃわからないしと思っていて買っていなかったのですが、ボリショイ劇場の販売員に外国人がEnglish?っと聞いていて、あらぁ、英語版もあるんだと気がつき購入。主人が 英語もあるならマリインスキーのも買いたかったなぁって残念がっていました。今、プログラムを見ましたらご質問の通りです。私たちには何方がなんだかさっぱり分りませんが、次女とその彼の踊りに感激してしまいました。長女さんは老けすぎ(笑)というか もう少し可愛らしくてもいいのに・・・。の勝手な感想です。
何か、お分かりのことがありましたら、お暇なときにお知らせくだされば嬉しいです。

中川さん、こんにちは。

私も4月下旬にサンクトに行ったら、ダウンコート持ってきて正解というくらい寒かったので、日本に帰ると暑いのでびっくりですよね。
そうそう、ちゃんと英語のがあるんですよね。マリインスキーは、フォーキンプロのはキャスト表しかなかったのですが、ジゼルはヴィシニョーワの特別公演だったので、ロシアとと日本語の両方が書かれている彼女の特別パンフレットを買うことができました。

ガリャーチェワは確かにベテランです。そして、オルガ役のヴィノグラードワは若手で、実はこの週末にイワン・ワシーリエフと結婚したんですよね。レンスキー役のベイリャコフも注目のダンサーです。主役よりも踊れる方ですね。

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