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« 5/23 モスクワ音楽劇場バレエ「白鳥の湖」 | トップページ | オーレリー・デュポンの引退公演「マノン」ネット放映中 »

2015/05/30

バレリーナたちの引退公演-オーレリー・デュポン、パロマ・ヘレーラ、シオマラ・レイエス、カーラ・コーブス

今年は特にバレリーナの引退が続いた一年と言えるかもしれません。5月18日には、パリ・オペラ座のオーレリー・デュポンがオペラ座を引退しました。彼女の引退公演は、現地では映画館で生中継され、そしてセドリック・クラピッシュによって収録された映像は、5月30日にフランスで放映されます。


Les Adieux d'Aurélie Dupont (2/2) - L'Histoire... 投稿者 culturebox

France3でのネット中継も5月30日(土)フランス時間の午後11時より行われますが、日本で視聴できるかどうかは不明です。日本でも、きちんとした形で観られるといいですよね。これだけの人気エトワールですし、有名映画監督のクラピッシュが撮影しているわけですから、テレビ局が放映権を買うか、映画館で上映されるかのどちらかが行われるのではないかと希望的な観測をしています。

http://www.france3.fr/emission/aurelie-dupont-danse/diffusion-du-30-05-2015-23h00

オーレリー・デュポンは、フランスでは国民的な大スターだったので、彼女の引退は新聞やテレビなどでも大きく取り上げられており、ご覧になった方もたくさんいることでしょう。彼女は、この後のウェイン・マクレガー振付「感覚の解剖学」ではゲストとして出演し、そして来シーズンからはオペラ座のメートル・ド・バレエに就任します。

****
ABTでは、今シーズン3人の女性プリンシパルが引退します。パロマ・ヘレーラ、シオマラ・レイエスそしてジュリー・ケントです。ジュリー・ケントはシーズン終わりの「ロミオとジュリエット」で引退するので、まだ少し先ですが、最後のジゼルを踊りました。そして5月27日の「ジゼル」昼公演でパロマ・ヘレーラが、そして夜公演でシオマラ・レイエスがABTにさよならを告げました。

New York Timesで、この3人のバレリーナのインタビューが掲載されておりますが、20年以上第一線で活躍してきた彼女たちならではの、深い言葉がここにあります。と同時に、バレエ団の経営というのは、環境の変化の影響を受けていて、非常に困難な時代になってしまったのだと感じました。3人とも、まだまだ踊れる状態であるし、続けようと思えばつづけられたと言っています。45歳になって技術面の衰えが目立ってきたケント以外は、まだまだ全盛期に近いテクニックを保っていました。

レイエスがいうには、舞台上で役を演じることができなければ成長はできないけれど、ABTは今はゲストの出演が多くて踊る機会が少ない。あと3,4年くらい踊ることはできたけど、もう去るべき時が来た、とのことです。ヘレーラは、今の若いダンサーはクラスレッスン中でも公演中のバックステージでもスマートフォンを手放さなくて、自分がまるで恐竜であるかのように感じてしまうと語っています。そしてケントは、経済の悪化とともに、ABTはあまりツアーをしなくなってしまった、ツアーで公演の経験を重ね、そしてカンパニーが結束を固めることができたのに、と加えています。ABTが続けていくためには、広大なメトロポリタン・オペラハウスの席を埋めなければならず、結果的に有名ゲストに頼る羽目になってしまい、すべてが変わってしまったと。

レイエスの言葉が印象的です。「今は大きなお金はスポーツ興行に向かってしまっていて、芸術には行かなくなってしまいました。バレエはどちらかと言えばエリート主義的な芸術であって、誰もが好むものではない。でも私にとってはこれは単なる娯楽ではなくて、私たちは魂を救う医者なのだと思っています」

今後の予定ですが、パロマ・ヘレーラは今年の秋に故郷ブエノスアイレスで、クランコの「オネーギン」を踊って完全にバレエを引退するとのこと。シオマラ・レイエスは、ダンサーとしての活動は続け、バルセロナでのダンサー向けのサマー・プログラムIBStageの芸術監督を務めます。ジュリー・ケントの予定はまだはっきりしていません。

ヘレーラの引退公演は、平日のマチネで、しかも同じ日のソワレにはレイエスの引退公演があり、25年間もカンパニーで活躍してきたプリンシパルの最後を飾るには、少々不釣り合いな舞台設定でした。もともとは、「眠れる森の美女」で彼女は引退する予定でしたが、彼女自身が「眠り」ではなく「ジゼル」で引退したいと申し出たところ、このような日程になってしまったのです。週末には、イザベラ・ボイルストンやヒー・セオといった、ケヴィン・マッケンジーお気に入りのバレリーナたちが主演する「ジゼル」の公演が行われていました。そのため、多くのファンは、マッケンジーの仕打ちに怒りを感じていたようで、カーテンコールに現れた彼にブーイングする人も多かったとのことです。

しかし引退公演そのものは、二人のバレリーナとも、とても感動的なものだったようです。二人とも、まだまだ引退するには早いと思わせる充実した踊りを見せることができました。そしてABTの現役ダンサーおよび元ダンサーたちも集結し、両方の公演に、彼女たちとよくパートナーシップを組んだアンヘル・コレーラ(現ペンシルバニア・バレエ芸術監督)、そして夜公演にはニーナ・アナニアシヴィリ、ホセ・カレーニョらも舞台上に上がって彼女たちをねぎらいました。シオマラが、花束を渡しに来た同僚やOB/OG一人ずつに、花束から一本花を抜き取って渡している様子がとても素敵ですね。

パロマ・ヘレーラ

シオマラ・レイエス

ダニール・シムキンがInstagramに投稿した、涙を流すジリアン・マーフィ (ジュリー・ケントのジゼルの時のミルタ役)


こちらのワシントン・ポストにおける、この3人のバレリーナへのインタビューも興味深いものです。
http://www.washingtonpost.com/entertainment/theater_dance/these-star-ballerinas-are-retiring--graceful-and-grateful-to-the-last-dance/2015/03/20/62f0ef6a-cf24-11e4-a2a7-9517a3a70506_story.html

ABTはこの3人の引退に加え、ポリーナ・セミオノワが怪我をして今シーズン出演することが不可能となり、また、ゲストですがナタリア・オシポワが「眠れる森の美女」を降板しただけでなく、「ジゼル」上演中に転倒してけがをしてしまったとのことで、今シーズンを乗り切るのも困難な状況のようです。

唯一の明るいニュースは、長年のソリストで地元で人気の高い実力派、ステラ・アブレラがセミオノワの代役で「ジゼル」役をABTで初めて踊り、ウラジーミル・シクリャーロフ相手に感動的で美しい踊りを見せたことです。すでにオーストラリア・バレエではゲストとしてジゼル役を踊っていた彼女ですが、今までなかなか機会に恵まれませんでした。今回やっとスポットが当たることになり、これから更なるチャンスが与えられるといいなと思います。

*******
さて、もう一人、アメリカを代表するバレリーナの一人が引退します。シアトルのパシフィック・ノースウェスト・バレエのプリンシパルである、カーラ・コーブスです。ブラジル出身で、スクール・オブ・アメリカン・バレエを経てNYCBに入団。2000年の来日公演にも出演しています。2005年にソリストに昇進しましたが同じ年に、パシフィック・ノースウェスト・バレエに移籍しました。辛口で知られる、New York Timesの批評家アラステア・マコーリーも、彼女は現在のアメリカでもっとも素晴らしいバレリーナの一人だと評しています。

まだ33歳と引退するには若い年齢の彼女ですが、怪我に悩まされ続けたことが引退の大きな理由のようです。
http://blogs.seattletimes.com/artspage/2014/09/18/pnb-principal-carla-korbes-announces-retirement/

6月7日に、彼女の引退公演が行われ、彼女が得意としたバランシン作品「ダイヤモンド」「セレナーデ」を中心に、特別のプログラムが組まれました。
http://www.pnb.org/Season/14-15/Encore/#Casting

そして素晴らしいことに、この公演はインターネットで生中継されます。
http://pnb.org/Live/ (中継サイト)
6月7日(日)、アメリカ西海岸時間で夜の6時半から中継が行われます。日本との時差は16時間なので、月曜日の朝になりますね。

*******
今年引退するバレリーナと言えば、忘れてはいけないのがシルヴィ・ギエム。彼女の引退公演ツアー「Life In Progress」が始まりロンドンで行われましたが、年内いっぱい続き、最後の舞台は日本となります。ギエムについては、また改めて紹介したいと思います。

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コメント

カーテンコールの映像が見られて嬉しいです。
パロマは40才になるのをきっかけに引退しようと決めていたようで潔い決断だとは思いますが、やっぱりまだもったいないですよね。
シオマラちゃんは私が初めて生のバレエ公演を見に行った時のジュリエットでしたし、2人ともよくアンヘルと踊っていたので淋しく思います。

オーレリーのマノンも日本でTV放送されるといいですね!

プリマローズさん、こんにちは。

パロマは実際まだ39歳ということで、引退するには年齢的にも少し早いと思うし、古典全幕もまだ全然余裕で踊ることができていたのに、まだ美しく踊れるうちに引退するのは、彼女の美学なんでしょうね。引退の発表も早くて、一つずつ作品にさよならを告げて行ったというのは切ないです。パロマというと、まずは、ABTの「ABT Now」というDVDでのアンヘルとの「ドン・キホーテ」の映像の印象がすごく強くて、あの「ドン・キホーテ」は、辛いことがあった時に観ると元気づけられた、とても素敵な映像でしたよね。彼女のジュリエットなども本当に感動的で良かったです。人柄も素晴らしい人でした。

シオマラのジュリエットもとてもかわいらしくて、思い出に残っています。この間台北でバルコニーシーンだけ観られて良かったです。「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」でも、見事な音楽性とスピードがあって、とても引退するとは思えないほどでした。先述のDVDに出演しているダンサーたちも、ジュリーとパロマの引退で、もう現役の人が一人もいなくなってしまって、寂しいです。あのころが全盛期だったんですよね。

こんばんは。

 今日のギエムのサドラーズでの最終公演に、オシポワが(おそらく)ポルーニンと観に来ていました。おそらくとしたのは、髪の毛が五分刈りくらいに短かったので。

守屋さん、こんにちは。

お返事が遅くなってしまって済みません。もうオシポワはロンドンに帰国したということですね。ABTのバヤデールは降板してしまいましたが、これから先が大丈夫なのか気になりますね。
別の知人もやはり目撃したそうで、この二人、+ヴァレンティノ・スケッティが一緒だたそうです。ポルーニンは、マリファントとの企画で髪をほとんどスキンヘッドにしたみたいですね。

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