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2015年3月

2015/03/31

スヴェートラナ・ルンキナがボリショイ・バレエを退団

ボリショイ・バレエ史上最年少の18歳でジゼル役を踊り、エカテリーナ・マキシモワ直伝のロシア・バレエの精緻な美を体現したプリンシパルとして活躍してきたスヴェートラナ・ルンキナ。3年前に、夫君の映画製作に関するトラブルから脅迫され、ロシアを逃れてカナダに移住していました。

ボリショイ・バレエを無給で2年間休職していた彼女ですが、ついにボリショイ劇場に対して辞表を提出したとのことで、イズベチヤ紙に語っていました。

(翻訳記事)Lunkina resigns from the Bolshoi
http://www.ismeneb.com/Blog/Entries/2015/3/28_Lunkina_resigns_from_the_Bolshoi.html

一応まだボリショイ劇場のサイトには、プロフィールが残っています。
http://www.bolshoi.ru/en/persons/ballet/78/

彼女が語ることによれば、昨年夏にボリショイ劇場は彼女を解雇しようとしたとのことです。そしてそのような試みは今後も続くので、そのような状況で時間を無駄にしても仕方ないと。一方、ボリショイのウリン総裁は、彼女に復帰してもらおうとしていたし帰ってきたら喜んで迎え入れるつもりだったのに、交渉が上手くいかなかったと言っており、また辞表のことは聞いていないとしています。ただ、休職も4年目を認めることは難しい、もう3年以上も舞台に立っていないのに、さらに一年の休職は認められないだろうとしています。

ルンキナは自身のサイトで、何回か、ボリショイ劇場の上層部を強く批判するコメントを書いていました。2年間もの間、ボリショイから一度も連絡がなかったとのことです。

彼女の夫君ウラディスラフ・モスカリョフはカナダの市民権を得ており、二人の子供たちもカナダで生まれてカナダの市民権を持っているそうです。

この騒動については、ロシア・バレエに詳しい守るも攻めるもさんが詳しく書いていますので、そちらもご覧ください。

一方で、ルンキナは、2013年にナショナル・バレエ・オブ・カナダのゲストプリンシパルとして契約し、2014年9月には正式団員として入団しました。カナダでは、「白鳥の湖」、「くるみ割り人形」に主演したほか、先日まで上演されていたクリストファー・ウィールドンの「アリス」ではハートの女王、ジョン・ノイマイヤーの「ニジンスキー」ではニジンスキーの妻ロモラ、そして、ウェイン・マクレガーの「クローマ」にも出演し、非常に高い評価を得てきました。

もともと、ボリショイ・バレエで「クローマ」が上演された時、ルンキナもこの作品に出演してマクレガーに気に入られ、マクレガーがボリショイで振付ける予定だった「春の祭典」(結局実現せず)の主役を予定されていました。古典だけでなく、現代作品についても高い評価を得ているバレリーナで、カナダでも様々な新しい作品に挑戦しているようです。

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ルンキナは、4月18、19日に台北で開催される台北インターナショナルスター・ガラに、エヴァン・マッキーとともに出演します。ほぼ毎年行われているこのガラ、出演者が豪華です。ほかに、スティーヴン・マックレーとサラ・ラム、ドロテ・ジルベール、倉永美沙さんとダニール・シムキン、イーゴリ・コールプらが出演します。

http://www.artsticket.com.tw/CKSCC2005/Product/Product00/ProductsDetailsPage.aspx?ProductID=oK4bYlG1Gfz2Pb77oSKp2

スヴェトラーナ・ルンキナとエヴァン・マッキーがこのガラで踊る「Mask Duet」 ダグラス・リー振付
https://youtu.be/GhSSJlgn6K8

ミハイロフスキー劇場のケフマン総裁が、ノヴォシビルスク劇場の総裁にも就任

3月29日、ロシアの文化大臣メディンスキーは、ミハイロフスキー劇場の総裁、ウラジーミル・ケフマンがノヴォシビルスクオペラ・バレエ劇場の総裁に就任することを発表しました。

http://www.mikhailovsky.ru/press/news/vladimir_kekhman_vozglavil_teatr_v_novosibirske/

さっそくノヴォシビルスク劇場の総裁として、劇場のサイトにもプロフィールが載っています。
http://www.opera-novosibirsk.ru/names/kehman.php

ケフマンは、ノヴォシビルスク劇場とミハイロフスキー劇場のマネジメントを統合する計画なのだそうです。劇場相互の結びつきを強めることが彼の構想だそうです。彼は週に4日間ノヴォシビルスクで働き、残り3日間はミハイロフスキーで働くそうです。そして、ノヴォシビルスクの劇場名も「シベリア劇場」と改めるとのこと。

ノヴォシビルスクは、人口150万人とロシア第三の都市であり、劇場はロシア最大のサイズを誇る立派なものです。劇場はロシアの国より資金を得て運営されています。

さて、このケフマンの就任劇ですが、ノヴォシビルスク劇場で上演されたワーグナーのオペラ「タンホイザー」が大スキャンダルを起こし、現在の総裁であったボリス・メズドリッチが文化省によって解雇されたために、代わりにケフマンが就任することになったのです。

Director of Novosibirsk Opera and Ballet Theatre fired in religious backlash
http://siberiantimes.com/culture/theatre/news/n0169-director-of-novosibirsk-opera-and-ballet-theatre-fired-in-religious-backlash/

Theatre director fired over Wagner opera that offended Russian Orthodox church
http://www.theguardian.com/world/2015/mar/29/russian-director-fired-over-wagner-opera-that-offended-powerful-orthodox-church

Timofey Kulyabin演出によるこの「タンホイザー」はロシア正教を冒涜し、西洋の堕落した価値観を押し付ける内容だったとのことで、何千人もの人々が抗議のデモ隊となって劇場に押し寄せたそうです。一方で、知識人たちの主導による芸術の自由を守れというデモもあったようなのですが、プーチン大統領がロシア正教会の重要性を強調し、西洋的な価値観を否定している今のロシアでは、宗教原理主義の方が強いようです。

イズヴェチヤ紙の記事によれば、文化大臣メディンスキーは2週間前、メズドリッチに面会し、このプロダクションのための資金を中止し、謝罪することを要求したとのことです。メズドリッチが両方とも拒否したことから、今回の解雇に結び付いたそうです。

ケフマン自身は、ロシア正教は重要なものであり、それを否定するようなプロダクションは上演すべきではないと考えているそうです。ミハイロフスキー・バレエのファンにとっては有名な話ですが、もともとケフマンはバナナなどフルーツの輸入で財をなして、バナナ王と揶揄されていました。豊富な資金で劇場を改装し、たくさんのスターダンサーを連れてきて、ナチョ・ドゥアトを芸術監督に据え、劇場は欧米での知名度を一気に上げたのでした。

なお、ノヴォシビルスク劇場バレエの芸術監督は、今年の世界バレエフェスティバルにも出演するイーゴリ・ゼレンスキーです。ゼレンスキーは、来シーズンからミュンヘン・バレエの芸術監督に就任することが決まっていますが、ノヴォシビルスク劇場、そして同じく芸術監督を務めているモスクワ音楽劇場バレエの芸術監督の職を辞するわけではなく、3つの劇場を掛け持ちするそうです。

2015/03/29

3/28 NHKバレエの饗宴 2015

NHKバレエの饗宴 2015
http://www.nhk-p.co.jp/event/detail.php?id=455
2015年3月28日 (土曜日) 17時開演
NHKホール

指揮 園田隆一郎
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団


第4回目となったNHKバレエの饗宴。2回目だけ足を運んでいないので観に行ったのは3回目。

前回は、オープニングでダンサーが紗幕の向こうで少し踊りを見せてくれる趣向だったけど、今年はそれはなくなって、リハーサル映像を少しデジタル処理したものが映し出された。上手のバルコニーにバンダが現れてのファンファーレ。指揮者が、前年までの大井剛さんでなくなってしまったのが少し残念。


牧阿佐美バレエ団
「パキータ」

振付 マリウス・プティパ,改訂振付 アレクサンドロワ・ダニロワ,牧阿佐美
音楽 ミンクス
プリンシパル 青山季可,菊地研
パ・ド・トロワ 織山万梨子,米澤真弓,清瀧千晴
ヴァリエーション 伊藤友季子

私たちが見慣れている「パキータ」とはすこし構成と編曲が違っているダニロワ版。パ・ド・トロワの他はヴァリエーションは聴き慣れない音楽のものが一つ入っているだけ。ガラ公演での「パキータ」というと、テクニック自慢のソリストが華やかなヴァリエーションを繰り広げるのが通常なのに、それがないのがつまらない。つい先週、ネット中継していたテリョーシキナ・ガラの「パキータ」で、テリョーシキナはじめ、コンダウーロワ、オスモルキナのようなスターバレリーナを観たばかりなので余計にそう感じた。

パ・ド・トロワの清滝千晴さんが素晴らしかった。バロンのある跳躍とはこのことを言うのだろう、浮かび上がるようで、アントルシャ・シスも高い。身体もやわらかいようだった。菊地研さんも、ジュッテに高さがあって良かった。青山さんは、エトワールのヴァリエーション、きちんと踊っていたのだけど、印象にあまり残らないようなさらっとした踊り。その代わり、コーダのグランフェッテは、2回に1回ダブルを入れていて軸もしっかりとして余裕があるほどで、見事だった。

しかしそれ以外の水準は残念ながら低く、これがテレビに映ってしまうと思うといかがなものかと感じられた。ヴァリエーションで伊藤さんはイタリアンフェッテ、最初から不安定で途中で落ちて失敗。コール・ドも、途中で皆がグランフェッテをするところがあるのだけど、途中からよろよろとよろけて、ぐだぐだになっていた。新国立劇場バレエ研修所出身のダンサーも数人いたのに、このレベルとは。1回目の「バレエの饗宴」の「ライモンダ」の出来も残念だったわけで、なぜこのレベルのバレエ団がここに出られるのか。セットも衣装も貧弱で、祝祭感にも欠けた。


Noism 1
「supernova

演出・振付 金森穣
音楽 黛敏郎「G線上のアリア」
衣装 ISSEY MIYAKE 宮前義之
演奏 (ヴァイオリン) 渡辺玲子
井関佐和子
亀井彩加,角田レオナルド仁,簡麒麟,石原悠子,池ヶ谷奏,吉崎裕哉,梶田留以,佐藤琢哉

今回は、このNoismの新作を観ることが最大の目的。黛敏郎作曲の「G線上のアリア」という曲を、NHKのプロデューサーに紹介されたことがこの作品を創るきっかけとなったという。Noismというカンパニーは、良くも悪くも、井関佐和子さんという圧倒的なカリスマ性のあるダンサーが中心となっている。その彼女を星とみなし、星と周囲の闇との関係性を作品にしたという。幕が開くと、天上から射し込むダウンライトの下には、真っ白な衣装の井関さん。この衣装が、白いユニタードの上に白いネットのようなもので顔を含む全身を覆うというものなので、表情を読み取ることはできない。残り8人のダンサーたちは、この衣装の黒バージョン。三方をスクリーンで囲まれ、井関さんを中心に、この星と闘争を繰り広げたり、闇同士がぶつかりあったり。 黛敏郎の不協和音を奏でる渡辺玲子さんのヴァイオリンが、ものすごいひりひりとした緊張感を与える。その中でも、孤高の存在であり続け、一人輝きを放つ井関さん。クラシックバレエをベースにした、研ぎ澄まされた動きはゆっくりだけどアカデミックで一つ一つのポジションが美しい。場を支配する力は、この広いNHKホールの隅々にまで届いていたと思う。15分という短い上演時間だけが残念だが、これはヨーロッパのカンパニーにも負けないクオリティの高い舞台。しかも、黛の音楽を使っており、闇と光との戦いという東洋的なテーマも使っていて、グローバル性を感じさせる。

Noismのいち早い公演報告
http://noism.jp/reports/%E3%80%8Cnhk%E3%83%90%E3%83%AC%E3%82%A8%E3%81%AE%E9%A5%97%E5%AE%B42015%E3%80%8D%E3%81%8C%E7%B5%82%E5%B9%95%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82/


下村由理恵バレエアンサンブル
「カルメン」から抜粋

演出・構成・振付 篠原聖一
音楽 ビゼー ほか
出演 下村由理恵,山本隆之,森田健太郎

天井から降りる布と棒を使ったシンプルな舞台装置であるにかかわらず、照明の使い方などの工夫で、場面転換もスムーズで、非常に巧みな舞台づくりであった。「カルメン」の物語をうまくコンパクトに35分間のものに縮めているし、ラストの赤い照明の効果も見事だ。下村さん、もう50歳だと思うのに、テクニックは揺るぎないし、ドラマティックな表現が素晴らしい。カルメンそのものになりきっている。ドン・ホセ役の山本さんも、カルメンに翻弄されて運命を狂わされていく様子を好演。相変わらずの優柔不断な色男ぶりがはまっていた。彼らのような大人のダンサーが、今の日本には少ないのである。湯川麻美子さんが引退してしまう今、新国立劇場バレエ団に足りないのは、下村さん、山本さん、湯川さんのような人なのだ。
少ない人数と予算でも、素晴らしいダンサーと演出の工夫があれば、充実した舞台を作ることができる良い例である。


新国立劇場バレエ団
「眠れる森の美女」から第3幕

振付 ウエイン・イーグリング(マリウス・プティパ原振付による)
音楽 ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(ギャヴィン・サザーランド編曲)
オーロラ姫:小野絢子
デジレ王子:福岡雄大
リラの精:寺田亜沙子
国王:貝川鐵夫
王妃:佐々木美緒
式典長カタラビュート:輪島拓也
宝石 エメラルド:細田千晶
   サファイア:柴山紗帆
   アメジスト:奥田花純
   ゴールド:奥村康祐
フロリナ王女:米沢唯
青い鳥:井澤駿
白い猫:原田舞子
長靴を履いた猫:原健太
赤ずきん:広瀬碧
狼:福田紘也
親指トム:八幡顕光

公演を結ぶのは、新国立劇場バレエ団が昨年新制作した「眠れる森の美女」。最初に登場するカタラビュットの輪島さん、マントを翻す姿がとても絵になって素敵だしドラマの幕が開ける感じがする。主役は、セカンドキャストの小野絢子・福岡雄大ペア。小野さんは、いつの間にか揺るぎないプリマオーラを身につけた。可愛らしく初々しいのに、踊りは揺るぎない。伸びやかで鷹揚で大切に育てられたお姫様なのだけど、やがては女王になる身という貫録も感じさせる。小野さんは音楽性がとにかく素晴らしく、コーダのフェッテなど難しいことも軽々と、たやすいことのように魅せてしまうし、余裕がある。福岡さんの、サポートは今回しっかりしていたので3回のフィッシュダイブもスムーズに行われていた。福岡さんは、ヴァリエーションでも、トゥールザンレールはしっかり綺麗に5番に降りられていたし、少し重さはあったものの、ほぼ完ぺきな出来。締めくくるのにふさわしい風格のある二人だった。

新国立劇場ではオーロラ役のファーストキャストだった米沢さんは、今回はフロリナ姫。さえずるような軽やかさ、鳥のような飛び立つ感じがあってよかったのだけど、衣装があまり似合わず、オーロラの方が合っていたかもしれない。でも踊りそのものは言うまでもなく精緻で素晴らしい。青い鳥の井澤さんは、足先や跳躍はとても良かったけど、少し上半身が硬く、最後飛び立つところも硬さを感じさせてしまった。でも、まだ入団したばかりであるし、長身と美しいプロポーション、脚の強さがあるので今後大いに期待できるだろう。

宝石は、ゴールドの奥村さんはさすがの端正さだし、速いスピードにもしっかり乗って軽やかに跳躍していた。(衣装が露出度高すぎてちょっとセクシーすぎだが)エメラルド、サファイア、アメジスト、それぞれ良かったけど、なかでも細田さんが繊細で美しい。白い猫と長靴をはいた猫のやり取りもユーモラスで楽しかった。別キャストでゴールドで素敵だった池田武志さんが今回猫の担ぎ役というチョイ役だったのは残念。親指トムの八幡さんの、胸のすくような超絶技巧の数々も楽しかった。

イーグリング版「眠れる森の美女」は欠陥もあるプロダクションではあるけど、こうやって3幕を取り出してガラで踊るには、とても華やかできらびやかで、楽しめた。ワルツやリラの精たちといった出番のすくないメンバーも踊って、美しい絵巻物として目を楽しませてくれるとともに、現在の新国立劇場バレエ団の充実ぶりを見せてくれた。


Noismと新国立劇場バレエ団で十分楽しませてもらった「NHKバレエの饗宴」だけど、回を重ねるにあたって、今後工夫してもらいないと思うところもある。せっかくテレビ放映するならば、ロイヤルバレエの映画館中継の時のように、舞台裏の様子、準備を行うスタッフの様子やリハーサルなどを見せてくれたら、もっと楽しいはず。出演者も、国内バレエ団は一巡したようではあるけど、意外なカップリングやコラボレーションなども観られたらいいな、と思う。そして、日本のバレエ、ダンスの在り方そのものについても、一考しなければならない時に来ているということも、この公演を通して考えさせられた。


NHKバレエの饗宴2015は
4月12日(日)日曜 午後9時~11時
Eテレ「クラシック音楽館」で放映されます。
http://www4.nhk.or.jp/ongakukan/

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プリモルスク(沿海州)オペラ・バレエ劇場がマリインスキー劇場傘下に

2013年10月にロシア極東のウラジオストクでオープンしたプリモルスク(沿海州)オペラ・バレエ劇場。極東ではヤクーツクにあるサハ和国オペラ・バレエ劇場につぐ劇場です。APEC首脳会議の一環として建てられたロシアで一番新しい劇場で、1200席の大劇場はバレエ向けに床の硬さなどが調節されているとのことです。

ウラジオストクは、東京から空路で2時間45分で到着できる、日本にも近いロシアです。

http://primopera.ru/

劇場の紹介記事
http://www.russia.co.jp/_tema/primor_theater.htm

現在の芸術監督は、マリインスキー・バレエでファーストソリストとして活躍した、アンドレイ・イワーノフ(2015年2月に就任)。日本公演でも、「白鳥の湖」の道化などで観ている方は多いと思います。

バレエ団団員約36人には、日本人4人(うちソリスト3人)のほか米国人、ブラジル人などがいます。日本人プリンシパルの田中順子さんは、ボリショイ・バレエアカデミー出身で、プリンシパルになった時にいくつかのメディアに取り上げられました。角山明日香さん、永瀬愛莉菜さん、則竹江里子さんもソリストです。

花開くバレエ、日本人も活躍中〈ウラジオストク〉
http://www.asahi.com/articles/ASF0TKY201312210397.html
ロシア極東に日本人プリマ、新設の国立バレエ団
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO63829630Q3A211C1CR8000/

また、アメリカ人プリンシパルのジョセフ・フィリップスは元マイアミ・シティ・バレエ、ABTの団員で、ABT時代から将来を期待されたダンサーでした。

団員一覧
http://primopera.ru/troupe/index.php?SECTION_ID=3

このプリモルスク劇場が、マリインスキー劇場傘下となることが発表されました。これはロシア大統領プーチンの命令によるもので、マリインスキー劇場の芸術監督ワレリー・ゲルギエフがこの劇場も統治することになります。

http://slippedisc.com/2015/03/reports-putin-gives-gergiev-a-pacific-opera-house/

ロシア語のニュース
https://news.mail.ru/inregions/fareast/25/society/21494743/

ゲルギエフは、このプリモルスク劇場を、アジア太平洋沿岸における、オペラとバレエの世界的な中心地にする、と語っていました。マリインスキー・バレエのダンサーたちも定期的にここで公演することになるかもしれませんね。

2015/03/28

マシュー・ボーン「白鳥の湖」3D版、恵比寿ガーデンシネマで公開

ロイヤル・バレエ、ボリショイ・バレエ、パリ・オペラ座などバレエを映画館で上映することが広がっていて喜ばしいこの頃です。

さて、本日3月28日より、2011年に一度閉館した恵比寿ガーデンシネマ YEBISU GARDEN CINEMAが再オープンします。そのラインアップが発表されましたが、その中に、マシュー・ボーンの「白鳥の湖」3D版がありました。6月6日より公開です。

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(チラシ画像はクリックすると拡大します)

リチャード・ウィンザー、ドミニク・ノース主演の映像です。DVD化されていますが、家庭では3Dでは観られません。映画館ならではの大画面、大音響、しかも3Dの映像でこの名作が観られるのは本当に嬉しいですね。

チラシにもあるように、マシュー・ボーンの「眠れる森の美女」も公開される予定だそうです。


これを弾みに、さらにマシュー・ボーンの作品が映画館で観られると良いですよね。NHKで放映される予定が中止になってしまった「シザーハンズ」、そして今年の夏にロンドンのサドラーズ・ウェルズで上演される「ザ・カー・マン」(マルセロ・ゴメスもゲスト出演)などなど…。

新生・恵比寿ガーデンシネマで大人カルチャーを体験!
http://allabout.co.jp/gm/gc/453390/

追記:恵比寿ガーデンシネマの作品紹介サイト
http://www.unitedcinemas.jp/yebisu/movie.php?movie=4688&from=movie

https://youtu.be/CUqfdDEYFLQ

マシュー・ボーンの『白鳥の湖』2010年版<ブルーレイ> [Blu-ray]マシュー・ボーンの『白鳥の湖』2010年版<ブルーレイ> [Blu-ray]

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2015/03/27

第14回世界バレエフェスティバルの追加出演者

第14回世界バレエフェスティバルの追加出演者が発表されていました。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/movie/14-2.html

マリーヤ・アレクサンドロワ Maria Alexandrova
(ボリショイ・バレエ)

アリシア・アマトリアン Alicia Amatriain
(シュツットガルト・バレエ団)

アシュレイ・ボーダー Ashley Bouder(Aプロのみ)
(ニューヨーク・シティ・バレエ)

ウリヤーナ・ロパートキナ Ulyana Lopatkina
(マリインスキー・バレエ)

マルセロ・ゴメス Marcelo Gomes(Bプロのみ、8/9から参加)
※本人の都合によりBプロの初日(8/8)に出演することができません。ご了承ください。
(アメリカン・バレエ・シアター)

ウラディスラフ・ラントラートフ Vladislav Lantratov
(ボリショイ・バレエ)

イーゴリ・ゼレンスキー Igor Zelensky
(モスクワ音楽劇場バレエ、ノヴォシビルスク・バレエ)


マルセロ・ゴメスはサドラーズ・ウェルズで上演されているマシュー・ボーンの「ザ・カー・マン」に出演するために、AプロとBプロ初日に出演できないのですよね。「ザ・カー・マン」は8月9日まで上演しているので、もしかしたらロンドンから直接日本に来るのかもしれません。

マルセロ・ゴメスは、もちろん本編の踊りも楽しみですが、ガラ公演の恒例のファニー・ガラで最高のユーモアのセンスを見せてくれているので、今年も期待します。

ロシア勢も最初の発表では全然いなかったのが、アレクサンドロワ、ロパートキナ、ラントラートフ、ゼレンスキーがでることになって、ちょっと一安心と言ったところですね。

第5回 世界バレエフェスティバル(1988年) カーテンコール
https://youtu.be/sioQEzQ75o4

世界バレエフェスティバル、歴代公演のカーテンコール映像

ご存知の方も多いかもしれませんが、NBSのサイトで、第14回世界バレエフェスティバルの開催を記念して、第1回の世界バレエフェスティバルから、3年前に開催された第13回までのカーテンコール映像を、13日連続で公開しています。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/renew/wbf1.html

今のところ、第4回まで公開されていますが、いずれも、綺羅星のごときスターの姿を見ることができて、とても感動的です。貴重な映像の数々です。

第1回世界バレエフェスティバルが開催されたのは1976年。20名以上もの世界のトップダンサーが集い共演するという、当時としては世界的にも異例と言われた豪華な公演となりました。マイヤ・プリセツカヤ、マーゴ・フォンテイン、アリシア・アロンソという世界三大バレリーナが同じ舞台に立つ前代未聞の華やかさでした。

第1回と第4回、そして第13回はテレビでも放映されています。1985年の第4回あたりでも、エヴァ・エフドキモワ、フェルナンド・ブフォネス、リチャード・クラガン、ジョルジュ・ドンともうこの世にいないスターが登場していました。その一方で、第4回に出演していたジル・ロマンは今でも踊っているし、リアン・ベンジャミンも一昨年引退と長いダンサー人生を送っています。このカーテンコール映像はバレエ界の歴史そのものですね。


今年の第14回世界バレエフェスティバルのサイトもできています。
http://www.nbs.or.jp/stages/2015/wbf/


予定される演目としては、以下のものが挙げられています。

Aプロ
【予定される演目】
「ジゼル」 「ドン・キホーテ」 「白鳥の湖」より“黒鳥のパ・ド・ドゥ” 「ロミオとジュリエット」 「椿姫」 「老人と私」 「トゥギャザー・アローン」他

Bプロ
【予定される演目】
「ドン・キホーテ」 「パリの炎」 「マノン」 「椿姫」 「ヌアージュ」 「デジャ・ヴュ」 「フェアウェル・ワルツ」


まだ、だれが何を踊るかは発表されていませんが、推測してみると、

「トゥゲザー・アローン」 Together Aloneは、バンジャマン・ミルピエがオーレリー・デュポンとエルヴェ・モローのために振付けた作品なので、この二人が踊る可能性が高いです。
https://youtu.be/7Ah4OLXtDek

「老人と私」 "The Old Man and I"は、ハンス・ファン・マネンの作品です。ディアナ・ヴィシニョーワが自身の20周年記念公演をサンクトペテルブルクとモスクワで開催するのですが、その中で、ウラジーミル・マラーホフとこの作品を踊ると言っています。http://www.vishneva.ru/ru/news

「フェアウェル・ワルツ」The Farewell Waltz は、パトリック・ド・バナが昨年開催した上海のガラ「パトリック・ド・バナ&フレンズ」において、イザベル・ゲランとマニュエル・ルグリのために振付けられた作品です。
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=799587623417393&id=646027255440098


「デジャ・ヴュ」は100%確証はありませんが、やはりハンス・ファン・マネンの振付作品に同名のものがあるので、その可能性もあると思われます。
https://youtu.be/TzkbZWUW-bw

2015/03/26

SWAN MAGAZINE 2015 春号 Vol.39 (スワンマガジン)

SWAN MAGAZINE 2015 春号が発売されました。

http://swanmagazine.heibonsha.co.jp/

今回は「エトワールに夢中」はお休みで、代わりにパリ・オペラ座で年末に上演された2演目、「泉」と「くるみ割り人形」を巻頭で大きく取り上げています。
「くるみ割り人形」に主演した、注目の若手(スジェ)のレオノール・ボーラックのインタビューが掲載されています。金髪に小さな顔に大きな瞳、愛くるしいレオノールは、「ダフニスとクロエ」でも目立つ役を踊っていました。彼女だけでなく、「くるみ割り人形」では、11月の昇進試験でスジェに昇進したジェルマン・ルーヴェ、ユーゴ・マルシャンも主演し、また「泉」ではやはりスジェのパク・セウンが抜擢されるなど、若手の起用が目立ちます。

特集は「ロシア・バレエに夢中!」

年末から年始にかけて来日したロシア系カンパニー、ボリショイ・バレエとミハイロフスキーバレエを大きく取り上げています。また、キエフ・バレエの「バレエ・リュスの祭典」の公演のレビューも。ボリショイは、瀬戸秀美さんの美しい写真がたくさんあり、世界最高峰のバレエを見せてくれた公演を懐かしく反芻することができます。

ミハイロフスキー・バレエについては、公演の紹介とともに、レオニード・サラファーノフとイリーナ・ペレンというカンパニーを代表するプリンシパルのインタビューがあります。サラファーノフは「白鳥の湖」が大嫌いだと語り、「ジゼル」のアルブレヒトは意志が弱くて無責任、ダメな男だと言いきったりしていて、本音が見えて面白いインタビューでした。サラファーノフ、ペレンとも、ナチョ・ドゥアトが芸術監督を務め、彼の作品を踊ったことでいろんな表現を手に入れ、新しい目で作品を理解することができるようになったと語っていたのも印象的でした。

また、来日公演で旋風を引き起こした二人の若手、ヴィクトル・レベデフとアナタスタシア・ソボレワに着目し、彼らのメッセージも掲載しています。ワガノワ・バレエ学校ではトップだったのにもかかわらず敢えてマリインスキーではなくミハイロフスキーに入団したレベデフ、ボリショイ・バレエから移籍したソボレワ。二人が共演した「ジゼル」はとても初々しく、伸び盛りの2人のきらめきを観ることができた素敵な公演でした。

今年の一月には、パリのオペラ・ガルニエでスウェーデン王立バレエ団によるマッツ・エック振付「ジュリエットとロミオ」の公演がありました。この作品で栄えあるブノワ賞に輝いた木田真理子さんが主演し、また第2キャストでは、鳴海令那さんもジュリエット役を演じたということで、鳴海さんのインタビューが掲載されています。マッツ・エックは振りは全部彼が踊って見せてくれているのだそうですね。このジュリエット役を創ったのが木田さんなのですが、鳴海さんは彼女自身のアプローチで演じたそうなので、2キャストを観た方は、より一層この作品を楽しめたことでしょう。

「世界の劇場から、こんにちは」、はヒューストンバレエのソリスト、飯島望未さんをインタビュー。
ヒューストン・バレエは団員数55人と比較的大きなカンパニーで、日本人は、昨年移籍したプリンシパルの加治屋百合子さんをはじめ7人。飯島さんは昨年ソリストに昇格し、「白鳥の湖」のオデット/オディール、デヴィッド・ビントレー振付「アラジン」のプリンセスなどの主役も踊っています。現在は疲労骨折で舞台を休んでいるそうですが、そのような逆境の中でも強い気持ちを持ち、自分にしかできないことをやっていこうという気概で前進し続けています。

[連載] ハンブルク便りも5回目となりました。

今回は、来シーズンよりノイマイヤーに指名され芸術監督代理となるロイド・リギンスが初めて振付けた「ナポリ」を紹介。ブルノンヴィルのオリジナルをベースにしながら、失われた2幕をリギンスが復元。デンマークロイヤルバレエで7年間踊り、ブルノンヴィルに精通した彼ならではの、ブルノンヴィルテイストの2幕に仕上がったようです。

https://youtu.be/TtRlarA_hTM

また、団員の石崎双葉さんのインタビューが掲載されています。ローザンヌ国際コンクールでファイナリストとなり、ハンブルグ・バレエ学校を経て2011年に入団しました。学校時代から見込まれ、オーディションを受けずに入団で来て順調満帆だった彼女ですが、ノイマイヤーからは内面の感情を表現することの大切さを学んだそうです。いろいろな踊りを踊ってみたいという意欲を持つ彼女、「ナポリ」ではパ・ド・シス、「ジゼル」ではドゥ・ウィリを踊るなど活躍しています。
そしてちょうど昨日、トロントで行われた、権威あるエリック・ブルーンプライズ・コンクールに石崎さんはハンブルグ・バレエを代表して出場しました。「ジゼル」とコンテンポラリー作品を同僚のクリストファー・エヴァンスと踊りました。ナショナル・バレエ・オブ・カナダ、ハンブルグ・バレエ、ロイヤル・デンマーク・バレエ、サンフランシスコ・バレエ、ボストン・バレエを代表して若手ダンサーが1組ずつ出場するコンクール、1回目はロイド・リギンスも出場しました。石崎さんは残念ながら受賞は逃したものの、素晴らしいパフォーマンスを見せたようです。

有吉京子さんの連載「SWAN ドイツ編」は第三回に。
ノイマイヤーの「オテロ」を巡り、レオンの今まで見られなかった意外な側面が描かれます。謎の美青年、クリスも登場し、あっと驚くどきどきの展開となります。これはぜひ手に取ってお読みください。

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2015/03/24

マルセロ・ゴメスがニュー・アドベンチャーズ「ザ・カー・マン」にゲスト出演

日本でのマシュー・ボーン版「白鳥の湖」が大好評だったマルセロ・ゴメス。ニュー・アドベンチャーズとの関係は、この作品限りではなく、今度は、ロンドンのサドラーズ・ウェルズで上演される「ザ・カー・マン」にゲスト出演することが発表されました。

http://new-adventures.net/the-car-man/news/marcelo-gomes-to-guest-star-in-the-car-man-at-sadlers-wells

7月14日から8月9日までの、サドラーズ・ウェルズ公演で、ルカ役を、日本での「白鳥の湖」でザ・スワン役を分け合ったジョナサン・オリヴィエ、クリス・トレンフィールドとのトリプルキャストで演じるのだそうです。

ニューアドベンチャーズは通常ゲストを迎えるということはしませんが、マルセロはすっかりファミリーの一員として受け入れられたようですし、マルセロにとっても「白鳥の湖」への出演は、生涯に残る経験だったようです。「カルメン」を下敷きにしたこの作品のルカ役も、とてもセクシーな役柄。ご覧になれる人がとても羨ましいですね。

今年の世界バレエフェスティバルに彼が出演しないのは、そういう理由だったのですね。

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映画館上映 ロイヤル・バレエ「白鳥の湖」

3月18日に映画館上映されたロイヤル・バレエ「白鳥の湖」を観に行ってきました。

http://www.roh.org.uk/showings/swan-lake-live-2015

http://t-joy.net/roh_2014/

アンソニー・ダウエル演出による、28年間上演され続けたこのプロダクションは、今回が最後の上演となるとのことです。
http://www.theguardian.com/stage/2015/mar/22/swan-lake-royal-ballet-review-mcrae-obraztsova

まだ正式に発表されているわけではありませんが、ロイヤル・バレエの常任振付家であるリアム・スカーレットが振付けるという説が、上記記事にあるように有力です。全幕の物語バレエを振付けた経験がないため、未知数ですが、すぐれた作品も作っていたので、期待されています。

現行のこのプロダクションは、賛否両論を呼んでおり、英国では否定的な評価の方が多いようです。19世紀を舞台に設定したため、ヨランダ・ソナベントによる衣装はやや現代的で、3幕では特に重たい印象を受けます。セットは豪華ですが、豪華ゆえ舞台の上が狭くなってしまい、ダンサーが思う存分動けません。3幕の王子のタイツが黒いのに床も黒いため、脚の動きがよく見えません。そして特徴的な長い丈の白鳥群舞のチュチュは、どことなく襤褸切れのように薄汚れた印象があります。酔っぱらっている家庭教師や友人たち、メイポールとごちゃごちゃした印象が強いようですし、最後にゴンドラに乗ってオデットと王子が結ばれる結末も、安っぽいイメージがあります。

一方で、ダウエル版の前に採用されていたアシュトン版の振付も一部残っており、この部分に関しては評価は高く、特に3幕のナポリの踊りは人気が高いそうです。

Conductor Boris Gruzin
Orchestra Orchestra of the Royal Opera House

Odette/Odile Natalia Osipova
Prince Siegfried Matthew Golding
The Princess Elizabeth McGorian
Von Rothbart Gary Avis
The Tutor Alastair Marriott
Benno Ryoichi Hirano
Pas de trois Francesca Hayward
Pas de trois Yuhui Choe
Pas de trois Alexander Campbell

Swan Melissa Hamilton
Swan Itziar Mendizabal

Spanish dance Kevin Emerton
Spanish dance Thomas Whitehead
Czárdás Claire Calvert  
Czárdás Bennet Gartside
Neapolitan dance Laura Morera
Neapolitan dance Ricardo Cervera

ロイヤルの映画館中継は、見せる工夫がたくさんあって、本編以外も楽しめます。案内役はダーシー・バッセル。今回は、アンソニー・ダウエルと対談しました。ダウエルは、白鳥ではなくて女性として演じてほしいと彼女に指導したそうです。また、1幕、2幕に登場する二人の可愛い子役、マノンとエミリー・ローズのインタビューもありました。もちろん、リハーサル風景などもふんだんに登場します。オシポワのインタビューもありましたが、彼女はまだ英語があまり話せないのか、ロシア語で話していました。主役を指導するジョナサン・コープ、群舞を指導するサマンサ・レインの姿も見られます。観客のツイートが映し出されたり、ライブ感覚で観られるのも臨場感があって楽しいです。

スペシャルゲストとして、このダウエル版初演に出演したシンシア・ハーヴェイも登場しました。今年のローザンヌコンクールの審査員でもありましたが、28年経っているとは思えないくらい若く美しかったです。

https://youtu.be/6Kim3HTwvU4

https://youtu.be/1_YvpXPFatI

https://youtu.be/fvVJmaOUhzk

英国でオシポワの人気は絶大で、2009年にマリアネラ・ヌニェス主演のDVDが発売されているにもかかわらず、今回の映像もDVD化されることが決定したと発表されました。
http://www.roh.org.uk/news/swan-lake-starring-natalia-osipova-and-matthew-golding-to-be-released-on-dvd

オシポワのオデットは、非常に個性的でした。身体能力の高さは圧倒的なので、とにかく体がよく動くのですが、オデット役にしては動きすぎで何もかも大げさで、繊細さはありません。白鳥なのに、こんな風に動いてしまうの?と意表を突かれるところがいくつもありました。意志がとても強く生命力にあふれています。マイムシーンはじめ、顔で表情を作ってしまうのは、舞台で観るにはいいかもしれませんが映画館上映で大写しになると、やりすぎ感が強いです。ボリショイ・バレエでは一度も白鳥を踊らなかった意味が分かりましたが、英国ではこれが人気のようです。既成概念にとらわれない、自分なりのキャラクター作りをしていたし、たしかに、こんなオデットは他にはいないので、面白いと言えます。4幕では悲劇性を強調していましたが、きっと身を投げても死なないだろうなと思いました。王子との心の交流は感じられませんでしたが、マシュー・ゴールディングと白鳥で共演するのは初めてなのでそのあたりは難しかったのかもしれません。

オシポワのオディールに関しては、強くて獰猛なところが役に合っていたと思います。迫力があるので王子が魅せられるのもよくわかります。グランフェッテは非常に速くてほとんどダブルで安定してきれいに回っていましたが、腕をずっとアン・ナヴァン(胸の前あたり)で固定していたので、表情や変化には乏しく感じられました。繰り出す回転のスピードなどのインパクトは強いので、思わず興奮してしまうシーンにはなっています。

一方、マシュー・ゴールディングの王子は、テクニックは冴えわたっていて良かったと思います。持ち前の美しいピルエットは、特に3幕のコーダでフルに発揮されていたし、いつもきれいに5番に降りていて、長身なのに体は良くコントロールされていました。軍服のような衣装も似合います。ロイヤルに移籍後、英国のファンの皆さんは彼は演技力がないということで厳しい評価を下していましたが、白鳥の王子なんてそんなに演技力も必要ないし、基本的に白と黒の見分け方もつかないような人なんで、演技力なんか邪魔なくらいです。迷えるモラトリアム王子という役柄に彼は合っていたと思います。もったいなかったのが、前述したように、このプロダクションは重厚でセットが場所を取るため、舞台が狭くなってしまい、思う存分跳躍できなかったのではないかと思われること。脚の長い彼には、もっと広い舞台で踊ってもらいたいですね。

この版のロットバルトは、2幕4幕ではフクロウであまりかっこよくないのですが、それをかっこよく見せてしまうのが、ギャリー・エイヴィスの素晴らしさです。3幕のモヒカン姿は、あまりのスタイリッシュさ、歌舞伎役者のような見得の切り方とロックスターのような存在感で、目が思わず引き寄せられてしまいます。プロダクションが変わってしまうことで一番残念なのは、このギャリーさんのモヒカンロットバルトが見られなくなってしまうことです。

目についたのは、パ・ド・トロワと4羽の白鳥の右端を踊っていたフランチェスカ・ヘイワード。幕間の映像でもインタビューを受けていましたが、ひときわ小柄なのに踊りが美しくて惹きつけられます。間違いなく次世代のスターとなることでしょう。キャラクター・ダンスは、なんといっても、アシュトン振付の複雑なステップを見事にこなしたラウラ・モレーラとリカルド・セルヴェラが、胸のすくようなリズミカルな踊りで素晴らしかったです。職人のようなベテラン二人ですが、ロイヤルの宝です。

白鳥の群舞は全く揃っていませんが、あの長い襤褸切れ衣装もあると、ますます揃っていないように見えてしまいます。この衣装だけは苦手だったので、新しいプロダクションでは、普通のクラシックチュチュにしてほしいと切に思います。

いろいろと書きましたが、楽しめる映像であったことは間違いありません。ロイヤル・バレエの映画館上映は、非常にこなれていて、エンターテインメント性が高いので、バレエに興味を持った初心者でも楽しめます。そして、ディレイ上映による臨場感あふれるところも、まるで生の舞台を観ていると錯覚するほどなので、わくわくする体験となります。

まだ来シーズン、日本でのロイヤル・バレエの舞台中継が続くかどうかは未定のようですが、私が観に行った新宿バルト9は満席でした。ぜひ続けてほしいと思います。

ロイヤル・バレエの映画館中継はあと1回、「ラ・フィーユ・マル・ガルデ」が予定されています。
http://t-joy.net/roh_2014/movie.html#la_fille_mal_gardee

主演はナタリア・オシポワとスティーヴン・マックレー。2015年5月6日(水) 7:00PMからです。とても楽しい作品なので、映画館で観るのも、盛り上がることができて良いと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=3y-g4175_XY

ローラ・エケがパリ・オペラ座のエトワールに任命

3月23日のパリ・オペラ座の「白鳥の湖」の公演後、オデット/オディール役を全幕で初めて踊ったローラ・エケがエトワールに任命されました。

https://www.youtube.com/watch?v=P-ZsxQwMFk0&feature=youtu.be

オペラ座の公式サイトでのお知らせ

LUNDI 23 MARS 2015
LAURA HECQUET
NOMMÉE DANSEUSE ÉTOILE DE L’OPÉRA NATIONAL DE PARIS
http://www.operadeparis.fr/blogopera/laura-hecquet

公式の昇進の瞬間をとらえた映像
https://youtu.be/LVTFPJmqltg

エケはプロポーションに恵まれ、エレガントさがある逸材でしたが、怪我が長くて踊れない期間が続いていました。去年ようやくプルミエに昇格し、このたびめでたくエトワールに。

白鳥向きの長い手脚と優美な雰囲気の持ち主のエケ、きっと美しい踊りだったことでしょう。最近は疑問符のつく昇進もあったオペラ座でしたが、彼女はいずれエトワールになることが期待されていて順当といえます。おめでとうございます。

2015/03/23

NBAバレエ団6月公演「HIBARI」~全ての美空ひばりファンに捧げる

NBAバレエ団は、リン・テイラー・コルベット振付による新作「HIBARI」を今年6月に上演します。国民的歌手、美空ひばりさん(1937~89年)の生涯をバレエ化したものです。

http://www.nbaballet.org/performance/2015/hibari/index.html

リン・テイラー・コーベットは、昨年NBAバレエ団が上演した「ガチョーク賛歌」などのバレエ作品のほか、大ヒットミュージカル「Swing‼」や映画「フットルース」の振付などを手掛け、ブロードウェイをはじめ、世界中で活躍しています。昨年5月に「ガチョーク賛歌」の振付指導で来日した際、テレビで偶然、ひばりさんのドキュメンタリー番組を見て感銘を受け、バレエ化を提案したとのことです。

Poster_3

「ひばりさんの歌声は、エディット・ピアフやジュディ・ガーランドに並ぶと思った。テレビを見た瞬間から恋におちた」とリン・テイラー・コルベットは語っています。「何が何でも舞台を創りたい」とひばりさんの息子、加藤和也さんに直談判し、ひばりさんの墓前にも手を合わせたそうです。

美空ひばりさんの名曲の数々と、NBAバレエ団によるバレエ・映像を融合させ、ステージ上に時空を超えるような空間を創りだし、美空ひばりさんの半生を描き出しすとのことです。また元宝塚歌劇団宙組トップスターとして活躍し、その後も舞台女優としての経歴を重ねている和央ようかさんがゲスト出演。ステージ上に漂う時空の案内役を演じるそうです。

映像・衣裳ディレクターもアメリカブロードウェイを中心に活躍するアメリカのディレクター、作曲もアメリカフォックスやディスカバリー、ディズニーチャンネル等で音楽制作を手掛けるマイケル・モリッツ氏というトップのスタッフをそろえました。

舞台構成は、5セクションから成り立ち、美空ひばりさんの幼少期から始まり、日本を代表する大スターまでの過程の中で起こった悲しみや苦しみ、明るさや幸せを、「お祭りマンボ」など彼女の曲およそ10曲に合わせて表現していくそうです。

美空ひばりさんの映像とバレエダンサーの融合、どんなものになるのか楽しみですね。そしてこの作品がアメリカで上演されたら面白いのではないかと思います。ひばりさんの歌は、とてもダンサブルなものもあったり、多岐にわたっています。バレエファンのみならず、幅広い客層に来てもらえそうな作品になりそうですね。

読売新聞の記事
http://www.yomiuri.co.jp/culture/20150316-OYT1T50103.html

サンケイスポーツの記事
http://www.sanspo.com/smp/geino/news/20150314/oth15031405050002-s.html

【公演日】
6月13日(土)17時開演(16時15分開場)
6月14日(日)12時30分開演(11時45分開場)
6月14日(日)17時開演(16時15分開場)

【会場】
メルパルクホール東京

【チケット】
SS 12,000円
S  10,000円
A  8,000円
B  6,000円
学生 3,000円(高校生・大学生)

3月24日(火)一般発売開始
問い合わせ: Tel. 04-2924-7000
nba@nbaballet.org

https://youtu.be/KtbdfEbCqV0

2015/03/20

シルヴィ・ギエムのオリヴィエ賞特別賞、さよならツアー、日程追加そして日本公演

シルヴィ・ギエムのさよならツアーはすでに始まっていますが、サドラーズウェルズでの5月の公演がすべてソールドアウトなど、大変な好評のため、追加公演や新しい日程が彼女の公式Facebookとサドラーズウェルズのプレスリリースで発表されています。

http://londondance.com/articles/news/sylvie-guillem-further-performances-olivier-award/

http://dancetabs.com/2015/03/dance-superstar-sylvie-guillems-last-ever-uk-performances-will-take-place-at-the-birmingham-hippodrome/

https://www.facebook.com/pages/Sylvie-Guillem/206175282869244

SYLVIE GUILLEM INTERNATIONAL TOUR SCHEDULE

31 March 2015
Teatro Communale, Modena, Italy イタリア、モデルナ

2 April 2015
Equilibrio Festival, Sala Santa Cecilia, Auditorium Parco della Musica, Rome, Italy ローマ、イタリア

15 & 16 May 2015
Lodz International Ballet Festival, Lodz, Poland Lodz、ポーランド

26 – 31 May 2015
Sadler’s Wells, London, UK サドラーズウェルズ、ロンドン、英国

3 & 4 June 2015
Athens & Epidauras Festival, Athens, Greece アテネ、ギリシャ

23 – 26 June 2015
Chekhov Festival, Moscow, Russia チェーホフ・フェスティバル、モスクワ、ロシア

29 June – 2 July 2015
Les Nuits de Fourvière, Lyon, France リヨン、フランス

5 July 2015
Genova Opera House, Genova, Italy ジェノア、イタリア

28 July – 2 August
London Coliseum, London, UK ロンドン・コリセウム、ロンドン、英国 (追加公演)

8 – 10 August 2015
Edinburgh International Festival, Edinburgh, UK エジンバラ国際フェスティバル、エジンバラ、英国 (追加公演)

8 & 9 September 2015
Birmingham Hippodrome, Birmingham, UK バーミンガム、英国 (追加公演)

3 & 4 October 2015
National Theatre, Taipei 台北、台湾

2 December 2015
Festspielhaus, St Polten, Austria セント・ポルテン、オーストリア

17 – 20 December 2015 日本
NBS, Tokyo, Japan


ギエムのFacebookによれば、北京、上海、シンガポール、シドニーの公演も予定されていますが、まだ日にちは確定されていないとのこと。また、日本では、さよなら公演とは別に、東京バレエ団との共演で12月9日から31日まで全国で公演を行うそうです。詳細は後日発表。

そして、4月12日にロイヤル・オペラハウスで授与されるローレンス・オリヴィエ賞の授賞式にて、彼女の輝かしいキャリアを祝うために、ローレンス・オリヴィエ賞の特別賞が授与されるそうです。


日本での公演日程は、現在のところ、一つだけわかっていて、それは12月22日(火)に兵庫県芸術文化センターで行われる「シルヴィ・ギエム ファイナル」です。

(話はずれますが、2016年2月17日には、東京バレエ団のブルメイステル版「白鳥の湖」の公演もこの劇場で予定されています)
http://www1.gcenter-hyogo.jp/sysfile/center/images/2015/lineup2015.pdf

追記:教えていただいたのですが、富山のオーバードホールでの公演も予定されています。
12月12日(土) シルヴィ・ギエム&東京バレエ団全国縦断公演
<シルヴィ・ギエム・ファイナル>
http://www.aubade.or.jp/static/schedule/index.html

また、グリーンホール相模大野での公演も。
12月10日(木) グリーンホール相模大野
http://hall-net.or.jp/wp-content/uploads/pdf/issue/vol.265.pdf#search='2015%E5%B9%B4+%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%82%AE%E3%82%A8%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%8A%E3%83%AB

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2015/03/19

マリインスキー国際フェスティバル、テリョーシキナガラのネット生中継

今日サンクトペテルブルク時間17:3019:30、日本時間1::30よりマリインスキー国際フェスティバルの一環としての、ヴィクトリア・テリョーシキナ・ガラが行われ、ネット生中継されます。演目は愛の伝説、シェヘラザードとパキータです。(すみません、訂正しました。最初に書いた時間から変更になったので、ちょっと見づらい時間になってしまいました)
このリンク先、Mariinsky TVでの中継です。


Mariinsky TV

XV International Ballet Festival MARIINSKY

An artistic evening with Viktoria Tereshkina
The Mariinsky Orchestra
Conductor: Valery Ovsyanikov

The programme includes:
I. The Legend of Love (Act II)
Music by Arif Melikov
Libretto by Nazim Khikmet
Choreography by Yuri Grigorovich (1961)
Set, costume and lighting design: Simon Virsaladze

Shyrin: Alina Somova
Ferkhad: Kimin Kim
Mekhmeneh Bahnu: Viktoria Tereshkina
The Vizier: Yuri Smekalov


II. Schéhérazade (choreographic drama in one act)
Music by Nikolai Rimsky-Korsakov
Scenario by Léon Bakst and Michel Fokine after Arabian Nights fairytales
Choreography by Michel Fokine (1910)
Reconstruction by Isabelle Fokine, Andris Liepa
Set and costume design by Anna Nezhnaya, Anatoly Nezhny after original sketches: Léon Bakst

Shahriar: Vladimir Ponomarev
Zobeide: Viktoria Tereshkina
Zobeide’s Slave: Danila Korsuntsev
The Odalisques: Olga Belik, Viktoria Brilyova, Anastasia Zaklinskaya


III. “Paquita” Grand pas
Music by Ludwig Minkus
Choreography by Marius Petipa (1881)
Revival consultants: Pyotr Gusev, Lidia Tiuntina, Georgy Konishchev
Set design by Gennady Sotnikov
Costume design by Irina Press

Soloists: Viktoria Tereshkina and Vladimir Shklyarov

追記:次のライブ中継が始まると削除されてしまうようなのですが、現在のところアーカイブが残っているので「パキータ」だけ見てみました。生中継の時に最初に上演された「愛の伝説」はアーカイブにもならなかったようです。テリョーシキナが子供時代に踊った「くるみ割り人形」「コッペリア」などの映像も流れました。

上記キャスト表には載っていない、「パキータ」の出演者が大変豪華でした。

ヴァリエーションは、
第一(「ドン・キホーテ」の3幕友人のヴァリエーション) アナスタシア・マトヴィエンコ
「海賊」2幕などで使われるヴァリエーション フィリップ・スチョーピン
第二 (非常にゆっくりな音楽)クリスティーナ・シャプラン
男性ヴァリエーション(グラン・パ・クラシック) ティムール・アスケロフ
第四 (チェレスタとパ・ド・シュヴァル) エカテリーナ・オスモルキナ
タリスマンのヴァリエーション キム・キミン
エトワール エカテリーナ・コンダウーロワ
コッペリアのヴァリエーション ウラジーミル・シクリャーロフ
グラン・ジュッテのヴァリエーション ヴィクトリア・テリョーシキナ

いろいろとゴタゴタもあるマリインスキーではありますが、さすがにレベルの高さ、コール・ドのダンサーたちの容姿の美しさ、細長い体型とポール・ド・ブラの繊細さはダントツです。ヴァリエーションもそれぞれ素晴らしいものでした。産休から復帰してそれほど経っていないオスモルキナはマリインスキーらしい繊細な気品があって軽やかだったし、シクリャーロフは笑っちゃうくらい跳んでいるし、コンダウーロワのエトワールもエレガントでうっとりさせるものでした。テリョーシキナのアカデミックで華麗なテクニックはコーダのグランフェッテで存分に発揮されていました。

良い企画だったので、せっかくの映像、どこかで観られるようにしてほしいですよね。

2015/03/17

3/15 東京バレエ団「ジゼル」ザハロワ、ボッレ

http://www.nbs.or.jp/stages/1503_giselle/index.html

ジゼル: スヴェトラーナ・ザハロワ
アルブレヒト:ロベルト・ボッレ
ヒラリオン:森川茉央


【第1幕】

バチルド姫:吉岡美佳
公爵:木村和夫
ウィルフリード:岸本秀雄
ジゼルの母:坂井直子
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):
乾友子-原田祥博、吉川留衣-松野乃知、
川島麻実子-梅澤紘貴、河谷まりあ-入戸野伊織
ジゼルの友人(パ・ド・シス):
小川ふみ、加茂雅子、伝田陽美、二瓶加奈子、政本絵美、三雲友里加


【第2幕】

ミルタ:奈良春夏
ドゥ・ウィリ:乾友子、吉川留衣

指揮:ワレリー・オブジャニコフ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

ザハロワの踊りは最近では、12月のボリショイ・バレエ来日公演の「白鳥の湖」と「ラ・バヤデール」で観ていたのだけど、美しいとは思ったものの、パートナーとの気持ちの通い合いが希薄で、踊りも悪い意味でボリショイ的になって大げさになっており、それほど積極的に観たいダンサーではなくなっていた。

しかし、今回は、ミラノ・スカラ座で共演し、3枚のDVDを出しているロベルト・ボッレがパートナー。もしかしたら、この組み合わせならお互いの良い点を引き出すのではないかと期待し、観に行くことにした。しかも、ジゼルは、以前インタビューで、日本でぜひ踊りたいと語っていた演目。スーパースターペアがゲスト出演とあって、すぐに売り切れ、追加公演まで行われた人気ぶりだった。

DVDでのザハロワのジゼルは、とても村娘には見えず、お姫様のようなジゼルだったが、今回は、貴族の落胤だと思わせるような澄み切った美しさや気品はあるけれど、はじらうような純真さを感じさせてくれた。甘い雰囲気のボッレとは美男美女のカップルだけど、どこか初々しく微笑ましい感じがする。狂乱のシーンでは、彼女はあまり乱れることなく、静かに壊れていく様子を見せていた。この場面でも、髪は乱れずにさらさらとなびき、表情はあくまでも美しく感情をあらわにすることはないけど、迫真性はあった。ウィリたちが呼んでいる様に呼応しながらも、心はどこかへ飛んで行ってしまったかのようだった。この場面は、ジゼル役がいろいろな解釈ができるのが面白いのであって、ザハロワの、魂が抜けて行ってこと切れる、というのも一つの役の理解として説得力はあった。

ボッレのアルブレヒトは、あまり深く物事を考えず、目先の恋を楽しんでいる青年。プレイボーイ風ではあるものの、優しさももっていて、そのジェントルさにジゼルはきっと参ってしまったのだろう。ジゼルが壊れて行っても、最初はなんでこんなことになってしまったのか理解できず、途中でやっと事の深刻さに気が付く始末。だけど、彼女が死んでしまってからの動揺は驚くほど激しい。

そんな彼の情熱的な姿は、2幕のジゼルのお墓に百合を捧げに行くところで最高潮となる。お墓にしがみつき、愛おしい彼女を抱くようにしながら泣き崩れているのだ。心から彼女を裏切ってしまったことを後悔していたかのようだ。なんともストレートな表現だけど、1幕でのラテン・ラバーとも整合性が取れたキャラクター作りだった。だが、あれだけの美貌の持ち主であるにもかかわらず、ボッレはナルシスティックな姿は見せず、あくまでもザハロワのジゼルを美しく見せて、彼女を立てるために存在していた。

ボッレのアルブレヒトには、ジゼルの姿は見えていないかのようで、ジゼルが懇願するところですら、彼はお墓のそばにいて彼女の姿は見えていない。おぼろげに存在を感じ始めたのは、やっとパ・ド・ドゥのところであったけど、最後まで彼女の実態は見えていたのだろうか。

見えていない、と思わせるくらい、ザハロワのジゼルは風の精のように軽やかで浮遊感があり、細く長い腕はふわりふわりとしなやかに空気をはらんで浮かんでいた。それをさらに軽く見せるのが、ボッレの盤石のサポート。彼は本当にパートナーリングが上手くて、ザハロワにまったく体重がないように見えた。羽根のような軽さでありながらも、ザハロワは感情表現はしっかり残していて、ぬくもりすら感じさせるジゼルだった。彼女の演技は、表情に出やすくて、やはり表現がストレートなボッレ同様とてもわかりやすいため、好き嫌いは出るというか、深みに欠けると考える人も多いかもしれない。だけど、誰が見ても二人の心情が手に取るようによくわかることで、多くの人に受け入れられるパフォーマンスとなっている。朝の鐘が鳴った時に二人とも安堵の表情を見せるから、助かったんだ、ということがわかるし。

2人ともベテランの領域に入っており、特にボッレはこの3月で40歳になるというのに、肉体的な衰えは微塵も見えなかった。きゅっと引き締まったヒップ、暑い胸板、そして完璧なパートナーリング。中でも観る者を驚かせたのが、2幕のアントルシャ・シスだった。途中からは腕の力を使っていたものの、40回も見せてくれて、それも高さがあって足先も美しい。悪魔に魂でも売ったのか、と思うほどだった。とても大柄な彼なのに、足音もほとんどしないのが素晴らしい。

ジゼルがお墓の中へと消えてしまった後も、墓の上に泣き崩れるアルブレヒトだったが、ジゼルが残していった花一輪を見つけてそれをいとおしげに捧げ持つ彼の顔には微笑みが。彼女の魂は今もここにいる、と感じたのだろう。

ザハロワは、4日間で3回も全幕を踊っていたせいか、少し疲れたところもあったものの、2幕登場の高速回転、スーブルソーとアントルシャ・カトル、いずれも非の打ちどころはない。デヴェロッペは非常にゆっくりだけどなめらかで、とても高く脚を上げるわけだけど、ロマンティックチュチュで脚が見えすぎないせいか、やりすぎという印象はなかった。チュチュで踊るようなバレエだと、ザハロワはどうもトゥーマッチ感があったり、女王様気質が出すぎてしまうところがあるのだが、「ジゼル」だとそういう欠点が全く感じられず、純粋に踊りで見せてくれているから、今の彼女にぴったりと合っている役柄だと言える。これから、ますます役柄を深めて行って、さらに透明度と精神性の高い、至上のジゼルを見せて行ってくれるのではないかと期待できる。

ただし、二つだけ残念な点がある。2幕のアダージオで、跪いたアルブレヒトの背中にジゼルが身体を預けるようにアラベスクでポーズをする、「ジゼル」の中でも象徴的なポーズ(下のDVDのジャケット参照)がとられていなくて、2人バラバラにポーズを取っていたので、心が寄り添っていないように見えてしまったこと。そして2幕終盤で、アルブレヒトにサポートされながらジゼルが移動していくところで、ポワントの足先を蹴るように進んでいく振付が割愛されていたこと。これは「ジゼル」の中でも大事なところだと思うので、惜しいと感じてしまった。

この点を割り引いても、並んだ姿も麗しい二人のパートナーシップはこの上なく美しいものであったし、二人とも持てる最高のパフォーマンスを見せてくれたのが伝わり、満足度は非常に高かった。

東京バレエ団のパフォーマンスのレベルも高かった。踊りの面では、マラーホフに相当鍛えられたのだろう。ダンサーたちもすっかり世代交代をしたのだが、パ・ド・ユイットがとてもクオリティが高く、特に松野さん、梅澤さんがよく跳んでいてシンクロしたラインも美しい。東京バレエ団のヒラリオンといえば、毎回木村和夫さんが熱くて印象的な演技を見せていたのだが、後任の森川さんも健闘、武骨で情熱的、気の毒な若者を熱演。ベルタ役の坂井さんは演技が上手いし、吉岡さんのバチルドは、ザハロワにも負けない高貴さ。

2幕のウィリもとても良くそろっており、足音も小さく、アラベスクしたまま交差するシーンはぞくぞくするほど美しかった。ドゥ・ウィリの2人、乾さん、吉川さんもレベル高く、特に吉川さんはお手本のようにクラシカルな正確さだった。ミルタの奈良さんも上手いのだが、頭一つ抜けるほどの存在感の強さ、怖さそして威厳は少し欠けていたのが惜しい。ウィリたちも、男性に捨てられた悲しみ、恨みが冷ややかな恐ろしさとして伝わってきたらきっともっと凄い舞台になったことだろう。どうも、ヒラリオンをいたぶるウィリたちはなんだか楽しげで、そういう解釈もありとは思うけど、もっと迫力が欲しいところだ。ザハロワ、ボッレという当代随一のスーパースターと共演しても違和感がないほど、カンパニー全体のパフォーマンスが充実していたのは、満員の観客が皆感じたはず。良い公演だった。

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2015/03/14

ボリショイ・バレエの2015-2016シーズン映画館中継

ボリショイ・バレエの映画館中継は、すっかり定着した感じがありますね。先シーズンに続き今シーズンも映画館中継が日本でも行われ、先日は「ロミオとジュリエット」を観てきました。グリゴローヴィッチ版「ロミオとジュリエット」はすべて踊りで綴られていてちょっと変わっていますが、踊りのレベルがとにかくすごく高いですし、見ごたえたっぷりでしたね。

Bolshoi Ballet in Cinema - Episode 6: ROMEO & JULIET
https://youtu.be/QbQqAAClnrQ

来週3月20日(金)・21日(土)は「愛の伝説」の上映もあるので、観に行こうと思います。

http://bolshoi-cinema.jp/

さて、もう来シーズンの映画館中継も発表されています。(フランス版ダンソマニより)
http://www.pathelive.com/
(まだこちらには、来シーズンのことは載っていません)

October 11, 2015 5:00 p.m. Giselle Direct 「ジゼル」中継

August 11, 2015 4:00 p.m. Jewels Rediffusion  「ジュエルズ」録画

June 12, 2015 4:00 p.m. The Lady of the Camellias Direct 「椿姫」中継

December 20, 2015 4:00 p.m. Nutcracker Rediffusion 「くるみ割り人形」録画

January 24, 2016 4:00 p.m. Taming of the Shrew Direct 「じゃじゃ馬馴らし」中継

March 13, 2016 4:00 p.m. Spartacus Rediffusion 「スパルタクス」録画

April 10, 2016 5:00 p.m. Don Quixote Direct 「ドン・キホーテ」中継


今年よりも充実したラインアップで、これが日本で観られたらめっちゃ嬉しいです。特に、ブノワ賞を受賞した、ジャン・クリストフ・マイヨー振付の話題作「じゃじゃ馬馴らし」が観られるのは本当に素晴らしいですね。

来シーズン、日本でも中継が観られるかはまだわかりませんが、少なくとも東京での上映は盛況でアンコール上映もあるくらいですので来シーズンも期待しています。今シーズン、「イワン雷帝」のみ日本での中継はないのですが、やはり全演目観たいですよね。

2015/03/13

パリ・オペラ座バレエの「白鳥の湖」でオニール八菜さんが主演

現在、パリ・オペラ座バレエでは、ヌレエフ版「白鳥の湖」が上演されています。

http://www.operadeparis.fr/saison-2014-2015/ballet/le-lac-des-cygnes-rudolf-noureev

3月11日に幕が開けたのですが、波乱含みで、初日に出演予定のステファン・ビュリヨンが怪我をしたため、初日はリュドミラ・パリエロとマチアス・エイマンが主演、ロットバルトはカール・パケットという豪華なキャストで、良い舞台だったようです。マチアスの完全復帰はうれしい限りで、夏のバレエフェスが楽しみです。

今回の白鳥の湖は、「マノン」での引退を控えたオーレリー・デュポンが、オデット、オディールを踊るというのが大きな話題でした。オドリック・ベザールと、4月2日、8日に踊る予定になっていました。オーレリーはマニュエル・ルグリと「白鳥の湖」を踊ったことがあるくらいで、あまり得意とする役ではなかったようなので、彼女がキャスティングされたことで驚きの声が上がっていました。

しかし、先ほど、フィガロ紙のバレエ担当記者であるAriane Bavelier氏がTwitterで、オーレリーは白鳥を踊らないことになり、代役はオニール八菜さんになると書いていました。

彼女の書いていることはかなり信憑性があるので、そうなる可能性は高そうです。スジェの彼女にとっては大抜擢ですね。オニールさんは、「白鳥の湖」では、パ・ド・トロワとスペインを踊ることになっていますが、オデット、オディール役も代役には入っていました。

追記:オペラ座公式サイトも更新され、オニールさんは4月8日にオドリック・ベザールと「白鳥の湖」オデット、オディールを踊る予定となっています。
http://www.operadeparis.fr/saison-2014-2015/ballet/le-lac-des-cygnes-rudolf-noureev


なお、オーレリーといえば「マノン」で5月18日にアデューを迎えます。当初、エルヴェ・モローが相手役を務める予定でしたが、エルヴェが「大地の歌」の初演を前に怪我をしてしまい、全治3か月とのこと。最近になって、やはりAriane Bavelier氏が、モローは出演せず、代わりにロベルト・ボッレがさよなら公演でデ・グリューを演じるとTwitterで書いていました。オーレリーの公式Facebookでもそのことを認めています。ボッレのデ・グリューは素晴らしいですが、引退公演では、オペラ座のダンサーが相手役だったらよかったのに、とも思います。

また、このオーレリー・デュポンのさよなら公演は、彼女のドキュメンタリーも撮影した映画監督、セドリック・クラビッシュが撮影し、YouTubeと映画館で中継上映される予定だそうです。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=455637134584653

NHK BSプレミアム「三宅一生 デザインのココチ」にNoism出演/NHKバレエの饗宴2015」放映は4/12

デザイナー三宅一生の信念・美意識・創造の秘密・デザイン哲学を描くポートレイト・ドキュメンタリー番組「三宅一生 デザインのココチ」にNoismが出演します。

三宅さんの服には、"着る人の身体がそこに入ることではじめて服が完成する"という精神があります。
人の身体の動き・着心地を考え尽くしてつくられた服。
その服から刺激を得て、Noism芸術監督・金森穣が演出振付、Noism1の女性舞踊家が身に纏い、イサム・ノグチによる石の空間〈天国〉で撮影を行いました。


三宅一生 デザインのココチ
NHK BSプレミアム
2015年3月28日(土)14:30~15:30
2015年4月23日(木)22:00~23:00(再放送)
http://www4.nhk.or.jp/P3506/

写真を見ると、井関佐和子さんが踊っていますね。これはぜひ観たいです。ちょうど3月28日といえば、NHKバレエの饗宴2015にNoismが出演する日です。こちらの方も楽しみですね。

なお、「NHKバレエの饗宴2015」TV放送日も決定しています。
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クラシック音楽館
2015年4月12日(日)21:00-23:00 NHK Eテレ

「NHKバレエの饗宴2015」
1: 牧阿佐美バレヱ団『パキータ』
2: Noism1『supernova』(新作)
3: 下村由理恵バレエアンサンブル『カルメン』から抜粋
4: 新国立劇場バレエ団 『眠りの森の美女』から第3幕

http://www4.nhk.or.jp/ongakukan/

2015/03/12

サンクトペテルブルク・バレエ・シアター来日公演、ムンタギロフとロヂキンゲスト出演

イリーナ・コレスニコヴァを擁するサンクトペテルブルク・バレエ・シアター(タッチキン・バレエ)の来日公演が発表されています。
http://www.koransha.com/pickup/lineup/#pickup02

イリーナ・コレスニコヴァは、ワガノワ出身で「白鳥の湖」オデット、オディール役には定評のあるプリマ、表現力も豊かです。日本で開催されたダニール・シムキンのガラ「インテンシオ」にも出演していました。
ゲストが豪華です。ロイヤル・バレエで、新国立劇場バレエ団のシーズンゲストでもあるワディム・ムンタギロフと、ボリショイのデニス・ロヂキン。若手では世界のトップクラスです。

白鳥の湖
9/2(水) 19:00開演/コレスニコヴァ&ロヂキン
9/3(木) 19:00開演/コレスニコヴァ&ムンタギロフ
9/4(金) 19:00開演/サモストレーロワ&未定&ロヂキン(ロットバルト)

眠れる森の美女
9/5(土) 14:00開演/サモストレーロワ&ムンタギロフ
9/5(土) 19:00開演/コレスニコヴァ&ロヂキン
9/6(日) 14:00開演/コレスニコヴァ&未定

会場:オーチャードホール

チケットが良心的で、劇場のオーケストラの演奏つきでS席14000円、今なら先行発売でさらに千円引きです。この値段は嬉しいですね。
カンパニーも、昨年は、ムンタギロフ、シムキン、サレンコをゲストに迎えてのパリ公演を行なうなど、ツアーで鍛えられておりクオリティも高いようです。

ホセ・カレーニョ率いるバレエ・サンノゼの危機 (追記あり)

カリフォルニア州、シリコンバレーがあるサンノゼには、バレエ・サンノゼというカンパニーがあります。設立29年目で団員は33人。ベイエリアではサンフランシスコ・バレエに次ぐ存在。現在新国立劇場バレエ団プリンシパルの米沢唯さんも、新国立に移籍する前にこのカンパニーに所属していたことがあります。

http://www.balletsj.org/index1.html

2013年秋に、キューバ出身でABTを中心に世界的なスーパースターとして活躍し、日本でも世界バレエフェスティバルの常連で大人気だったホセ・カレーニョが芸術監督に就任しました。2012年には、ABTとパートナーシップ契約も結んでいます。2011年に引退後も「Dancing with the Stars」などのテレビ番組にも出演していたスターダンサーがやってきたことは、大きなニュースであり、ミハエル・バリシニコフも、カレーニョの就任を喜ぶコメントを新聞に語っています。

http://www.mercurynews.com/entertainment/ci_25106487/jos-233-manuel-carre-241-o-era-begins

レパートリーも、「ドン・キホーテ」などの古典から、ロビンスの「ファンシー・フリー」やバランシン、トワイラ・サープ「イン・ジ・アッパー・ルーム」、さらには、オハッド・ナハリンの「マイナス16」など現代作品まで幅広く、魅力的なものです。シリコン・バレーのハイテク好きの人々を引き付けるために、ダンサーのジェスチャーをコンピューターが捉えて音楽が演奏されるという画期的な作品“Eighty One”(ジェシカ・ラング振付)の初演など、斬新な試みにも挑戦してきました。

しかしながら、カレーニョが就任する前から、カンパニーは深刻な財政危機に見舞われていました。ドル箱の「くるみ割り人形」に思ったほど観客が入りませんでした。シリコン・バレーにおいては、芸術文化はなかなか根付かず、サンノゼ・レパートリー・シアターという劇場も昨年閉鎖されました。バレエ・サンノゼには、長年にわたって、合計2千万ドルも寄付してきた大口のパトロンがいたのですが、近年その寄付金の額が減っているうえ、国税庁への税金の滞納もありました。2009年には年間予算は800万ドルありましたが、それが560万ドルにまで削減されています。

カンパニーを存続させるために、カレーニョは苦肉の策として、マチネ公演を取りやめたり、生演奏からテープに切り替えて経費を削減しました。それでも、10月までに350万ドルの資金を得られなければ、カンパニーを維持することは不可能となってしまうとのことです。1月より、資金集めのキャンペーンが始まりました。そして3月4日に発表されたのですが、わずか10日後、3月14日までに55万ドルもの資金を集めなければ、危機は乗り越えられないとのことです。

Ballet San Jose needs $550,000 to keep running
http://www.mercurynews.com/entertainment/ci_27641879/ballet-san-jose-needs-550-000-keep-running?source=pkg

Curtains for Ballet San Jose? Troupe led by Jose Manuel Carreno faces shutdown
http://www.washingtonpost.com/blogs/style-blog/wp/2015/03/04/curtains-for-ballet-san-jose-troupe-led-by-jose-manuel-carreno-faces-shutdown/

寄付集めキャンペーンのために、カレーニョもTwitterのアカウントを開設して呼びかけていました。さらに、シリコン・バレーのIT企業の経営者たちも、キャンペーンに参加して、自身が踊る映像を投稿したりして支援を行っています。バレエ・サンノゼのバレエ学校の生徒たちは、フラッシュモブを行って寄付を呼び掛けています。

http://www.nbcbayarea.com/news/local/Tech-Leaders-Plie-and-Pirouette-To-Save-Ballet-San-Jose-295769941.html

そして、これらのキャンペーンが功を奏して、3月11日の時点で、3月15日までの目標金額の60%、33万ドルは集まったそうです。5ドルを寄付した子供から、10万ドルを小切手で寄付した人まで、様々な人々が応援しているとのことです。

Ballet San Jose more than halfway to make-or-break fund goal
http://www.mercurynews.com/entertainment/ci_27684912/ballet-san-jose-more-than-halfway-make-or

ただし、これでとりあえずは存続できても、10月までに350万ドルを集めるというゴールまでの道のりは遠く険しいものです。サンノゼはサンフランシスコから車で一時間しか離れておらず、サンフランシスコ・バレエなど、大都会サンフランシスコの舞台芸術と競合しなければなりません。存続のために懸命に頑張っているカレーニョやダンサーたちの願いが通じることを祈っています。


追記:14日までに55万ドルの目標は達成されました。結果的に64万ドルの寄付が集まったそうです。

Ballet San Jose Silicon Valley raises enough money to survive
http://www.mercurynews.com/entertainment/ci_27714718/ballet-san-jose-silicon-valley-raises-enough-money

サンノゼ市の文化事業局が、10万5千ドルを提供したことが決定的な決め手となりました。窮状を一般に訴え、うまくソーシャルメディアを使うことができたのも、寄付金集めに功を奏したようです。シリコンバレー地域の支持を得るために、今後カンパニー名は、バレエ・サンノゼ・シリコンバレーと名を改めるそうです。

2015/03/11

坂東玉三郎演出、DAZZLE「バラーレ」ゲネプロ

坂東玉三郎さんがプロデュース、演出したDAZZLEのバラーレ、公開ゲネプロを見せていただきました。

http://www.tbs.co.jp/act/event/ballare/

“すべてのカテゴリーに属し、属さない曖昧な眩しさ”をスローガンに掲げているDAZZLEは、コンテンポラリーダンスとストリートダンスを融合させているカンパニー。今回は、玉三郎さんの提案により、クラシック音楽を使用しての3演目が上演されました。玉三郎さんとDAZZLEは、玉三郎さんが2012年から芸術監督を務める太鼓芸能集団「鼓童」を通じて一昨年夏、出会ったのだそうです。今回玉三郎さんは、初めてダンスの演出を手がけたとのこと。


ストラヴィンスキー「春の祭典」 振付:長谷川達也

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撮影:岡本隆史

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ストラヴィンスキーの「春の祭典」は、ニジンスキーやベジャールはじめ、本当に多くの振付家が振付けていて、アイディアはある意味出尽した作品である。ここでは、男性ばかりのキャストで、荒々しさも表現したり、DAZZLEならではのストリートダンス的な要素も出しつつも、リフトなども取り入れた巧みな群舞の構成で魅せてくれて新鮮だった。舞台装置は何もないけれども、公演全体を通して照明が非常に美しく、特に闇の中にダンサーたちが浮かび上がる姿がドラマティックだ。踊りのクオリティも高いが、さらに激しさ、ワイルドさを見せても良かったのではないか、と感じたところもあった。

マーラー「交響曲第四番」第三楽章 振付:長谷川達也
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撮影:岡本隆史

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非常に美しく柔らかいマーラーの旋律。こちらは、「平安なる死」というテーマがあるとのこと。暗闇に青白く浮かぶ上がる白装束のダンサーたちは、一つ一つが魂を象徴しているかのようだった。魂同士が触れ合い、時にはぶつかり合い、変幻自在にフォーメーションを変えながら死へと向かっていく。途中で照明が明るくなり、後ろの幕が上がると、さらに合計33人と大勢のアンサンブルが登場。ユニゾンで音楽に寄り添いながら動くさまは清々しく神聖さを感じさせた。メランコリックさを排し、作品としての完成度は高かった。バレエダンサーたちで観たら、これまた違った感じで素敵だろうなと思わせる作品。

ブロードウェイミュージカル「タンゴ・アルゼンチーノ」 振付:長谷川達也

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撮影:岡本隆史

前2作品と打って変わって、アルゼンチン・タンゴ。最初はピアソラのアディオス・ノニーノから。半円形に椅子を並べ、黒ずくめで髪を撫でつけたダンサーたちがずらりと並んだ様子は、オハッド・ナハリンの「マイナス16」を一瞬思わせる。タンゴのリズムに乗って切れ味鋭くスタイリッシュに踊る様子は、マスキュリンでセクシーだった。ここでも、フォーメーションの豊富なアイディアや構成のうまさが光る。

全体的に、ストリートダンスの要素は少なめで、クラシックを使っているところから、バレエ的なイメージが強い公演だった。玉三郎さん演出ならではの美意識の高さを感じさせるもので、振付も変幻自在、照明やアンサンブル、フォーメーションの使い方は巧みで目に快い舞台。生の音源で踊ってくれたら、さらに作品の世界に没入できただろうなと思う。この試みを第一弾として、さらに進化させ、彼らならではのストリートダンス的な要素、型破りなところををもっと強く出してくれたら、そして一人一人の個性をもっと出していけば、さらにエンターテイメントとして強く訴えかけるものになるのではないかと思う。難を言えば、とても美しいのだけど、美しすぎるように感じられた。

ただし、飽きるところも、テンポが悪いと感じるところも一瞬もなく、観ている間はとても楽しめる舞台だった。公演期間中にも、進歩を見せてくれるのではないかと期待できるし、今後の彼らの動向にも注目したい。15日まで上演。

http://youtu.be/co0m5QO5rBM

演出:坂東玉三郎、出演:DAZZLE
airweave presents『バラーレ』

■公演日程
2015年3月7日(土)~15日(日)

■会場
赤坂ACTシアター

■公演スケジュール
*全7公演

■料金
S席8,500円 A席6,000円 U-22 3,000円
(全席指定・税込・未就学者児童入場不可)
※【U-22(アンダー22)チケット】
22歳以下の学生のお客様がお求めになれるチケットです。

チケットスペース
 03-3234-9999 (オペレーター)
 http://www.ints.co.jp/
・チケットホン松竹
 0570-000-489(オペレーター10:00~18:00)
 03-6745-0100
・チケットWeb松竹
 http://www1.ticket-web-shochiku.com/pc/
・チケットぴあ
 0570-02-9999(Pコード:440-784)
 http://pia.jp/t/ballare/
・ローソンチケット
 0570-084-003(Lコード:34438)
 0570-000-407(オペレーター10:00~20:00)
 http://l-tike.com/ballare/
・イープラス
 http://eplus.jp/ballare/

■特別協賛
株式会社エアウィーヴ

■製作
松竹
■主催
TBS / TBSラジオ
■問合せ
チケットスペース 03-3234-9999

2015/03/10

ローレンス・オリヴィエ賞のダンス関係ノミネート

英国でその年に上演された優れた演劇・オペラに与えられる賞であり、同国で最も権威があるとされているローレンス・オリヴィエ賞のノミネートが発表されました。

http://www.olivierawards.com/

ダンス関係のノミネートのみ挙げていくと、

Best New Dance Production 最優秀新作ダンスプロダクション
http://www.olivierawards.com/nominations/view/item274582/best-new-dance-production/

32 Rue Vandenbranden Peeping Tom at Barbican
ピーピング・トム「32 Rue Vandenbranden」(バービカン劇場)

Mats Ek’s Juliet And Romeo by Royal Swedish Ballet at Sadler’s Wells 
マッツ・エック振付、スウェーデン王立バレエ「ジュリエットとロミオ」 (サドラーズ・ウェルズ劇場)

Tabac Rouge by Compagnie Du Hanneton/James Thiérrée at Sadler’s Wells 
Compagnie Du Hannetonの「Tabac Rouge」(サドラーズ・ウェルズ劇場)

Outstanding Achievement in Dance ダンスにおける傑出した功績
http://www.olivierawards.com/nominations/view/item274583/outstanding-achievement-in-dance/

Christopher Wheeldon for The Winter’s Tale at Royal Opera House 
クリストファ・ウィールドン「冬物語」(ロイヤル・オペラハウス)

Crystal Pite for her choreography in the productions of The Associates - A Picture Of You Falling, The Tempest Replica and Polaris at Sadler’s Wells 
クリスタル・パイト、「A Picture Of You Falling」, 「The Tempest Replica」 and 「Polaris」(サドラーズ・ウェルズ劇場)

Rocio Molina for Bosque Ardora at Barbican
Rocio Molina、「Bosque Ardora」(バービカン劇場)

The Elders Project as part of the Elixir Festival at Sadler’s Wells
「The Elders Project」、サドラーズ・ウェルズ劇場のElixir Festival


日本でなじみのない名前もあります。

最優秀新作ダンスプロダクションでは、マッツ・エック振付「ジュリエットとロミオ」がノミネートされています。受賞すれば、ブノワ賞の木田真理子さんの受賞に次ぐ、この作品にとっての栄誉ですね。


ダンスにおける傑出した功績では、まずはDVDも発売され、今年の11月にはナショナル・バレエ・オブ・カナダでも上演されるウィールドンの「冬物語」。

クリスタル・パイトは、最近注目されているカナダ出身の女性振付家で、自身のカンパニー Kidd Pivotを率いています。サドラーズ・ウェルズおよびNDTのアソシエイト・アーティストでもあります。元フランクフルト・バレエのダンサーで、今までにNDT、ナショナル・バレエ・オブ・カナダ、クルベリ・バレエ、アルバータ・バレエ、フランクフルト・バレエ、セダー・レイク・コンテンポラリー・バレエ、ルイーズ・ルカヴァリエなどに作品を提供しています。

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2015/03/09

バレエに愛された男 熊川哲也とKバレエ展

松屋銀座で開催されている「バレエに愛された男 熊川哲也とKバレエ展」に行ってきました。

http://www.matsuya.com/m_ginza/exhib_gal/details/20150226_kumakawa_8es.html

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第1章 天才ダンサーの誕生~世界への扉を開く

第2章 世界の頂点へ~英国ロイヤル・バレエ団時代

第3章 バレエ芸術への飽くなき探求~熊川版グランド・バレエの世界

第4章 偉大なる歴史との対話~芸術監督の部屋

第5章 未来に向かって~熊川哲也のプロジェクト

という構成で、バレエを始めたころから、現在までの熊川さんの歩みをたどることを主軸に、彼のK-Ballet Companyの足跡も振り返っていくというものでした。

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想像以上に充実した展示で非常に面白かったです。

まずは、東京新聞バレエコンクールやローザンヌ国際コンクールに出場した時の記録。コンクールの映像、衣装やメダルがありました。熊川さんはバレエを始めたのは10歳の時とやや遅かったのですが、頭角を現すのは本当に早かったようです。東京新聞のコンクールも、一年目は「リゼット」で、その翌年は「ドン・キホーテ」。映像を見ると、一年間でどれだけ進歩したかがよくわかります。東京新聞やローザンヌの時の出場者リストも展示してあり、彼の同期にはすごいダンサーたちがいたのかもわかって興味深いです。ローザンヌコンクールで練習をしている時の写真を見ると、他の出場者より跳躍が全然高いのがわかりますね。ロイヤル・バレエスクール時代の試験の映像も、画質は悪いですが、当時の彼のものすごいテクニックをうかがうことができます。

ロイヤル・バレエ時代については、ロイヤル・バレエで使われていて所蔵されている衣装を借りてきているのがすごいです。「ラ・バヤデール」、「エリート・シンコペーションズ」、「くるみ割り人形」、「ミスター・ワールドリー・ワイズ」など。ソロルの衣装は、フリオ・ボッカとブルース・サムソンも着用したようです。当時のキャスト表などもありました。また、舞台写真のパネルなども。

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26歳という若さでロイヤル・バレエを電撃退団した時は、ガーディアン紙のトップを熊川さんのカラー写真が飾りました。赤いスポーツカーにもたれかけてポーズをとる熊川さん。「この男はロイヤル・バレエを壊そうとしているのか」という見出し。でも、足元はサンダルなのがちょっとお茶目です。

K-Balletの今までの歩み、歴史がパネルで紹介されていましたが、設立時の写真を見ると、彼について行ったロイヤル・バレエのダンサーたちも写っています。ギャリー・エイヴィスやスチュアート・キャシディも若い。ロイヤル退団後にも、ENBなどに客演していたのですね。

入口に飾ってあった「眠れる森の美女」の衣装を始め、K-Ballet Companyで上演した数々のバレエの衣装が飾ってありました。このカンパニーの衣装は、毎回毎回とてもセンスがよく、手が込んでいて豪華なものばかりです。特に、「眠れる森の美女」や「ラ・バヤデール」の華麗さは目を惹きます。ニキヤの白いチュチュは、チュールが円を描いていてとてもユニークなもの。「シンデレラ」のティーポットの精などは、ロイヤルコペンハーゲンの陶器のようで可愛らしいです。ねずみなどの着ぐるみも凝っているし、様々な小道具も、近くで見ても良くできているのがわかります。チュチュというのが、刺繍など繊細な手仕事で作られているものなのかがわかります。かなり近くで細かいところまで見られるのがいいですね。「カルメン」の舞台装置の模型などもありました。

ジュニア・カンパニー「K-Ballet ユース」の紹介や、Ballet Gentsの紹介、K-Balletスクールなど、これからのダンサーを育てる様々なプロジェクトの紹介や映像もありました。ただ、ちょうど行ったときに、神戸里奈さんと井澤諒さんのトークショーをやっていた会場に展示してあったので、ちゃんと見られなかったのが残念です。K-Ballet ユースが4月に上演する「トム・ソーヤの冒険」の舞台装置のデッサンなどもありました。

トークショーの方も、土曜日の昼間ということもあって非常に混雑していたため、ゆっくり聞くことができなかったのですが、3月に上演される「シンデレラ」について、神戸さんが演じてみたいキャラクターは意地悪お姉さんだという話がとても面白かったです。

最後に、熊川さんはバレエの歴史に関する貴重なコレクションを持っているということで、その一部が展示されていました。これが、かなりのお宝が含まれていました。主にバレエ・リュス関係です。ニジンスキーの直筆サイン入り写真、レオニード・マシーンの直筆サイン入り写真、そしてバレエ・リュス公演の美しいプログラム、写真などです。ベートーヴェンの第九交響曲の初版楽譜などもありました。

こうやってこの展覧会を見ると、熊川さんという人が、若い時から自分のやりたいこと、目標を明確に持って、強い意志でやり遂げて、旧態依然としたバレエ界に風穴を開けるべく果敢に挑んできたということが改めてよくわかりました。26歳という若さでロイヤル・バレエのプリンシパルという地位を捨てて、自分のカンパニーを育てて15年。大きな成功を手にすることができましたが、40代となり、次世代を育てていく必要性を実感されているのだな、ということも。最初から一流の舞台を提供できるように努力し、古典の再振付中心ですが、自前のプロダクションで次々とユニークな改訂版を生み出してきました。本当に彼は凄い人です。

会場を出たところでは、ポストカード、クリアファイル、スイーツなどオリジナルのグッズもたくさん売られていて、とても楽しい雰囲気です。6階のスタンプラリーのクイズに正解すると、ポストカードも一枚もらえました。
http://www.welci.jp/matsuya/user_data/kumakawa/top.php

また、5階と6階の間の階段の踊り場には、「海賊」の衣装が飾ってあって、ここは撮影も自由にできました。スモーキーな色遣いが素敵な衣装です。

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明日までの開催ですが、熊川さんやK-Balletファンのみならず、バレエ・リュスに興味がある人や、舞台衣装などに関心がある方は楽しめると思います。

【開催期間】2015年2月26日(木)~3月9日(月)

【場所】松屋銀座8階 イベントスクエア

【開場時間】午前10時~午後8時
(最終日は5時閉場 入場は閉場の30分前まで)

【お問合せ】松屋銀座 03-3567-1211

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2015/03/08

ABT ラトマンスキー版「眠れる森の美女」

アメリカン・バレエ・シアター(ABT)は、アレクセイ・ラトマンスキー振付の「眠れる森の美女」を3月3日に、カリフォルニア州コスタ・メサのSegastrom Center for Artsで初演しました。

http://www.scfta.org/events/detail.aspx?id=11607

今回の再振付を手掛けたラトマンスキーは、1890年のプティパによるマリインスキー劇場での初演にできるだけ近い形で実現させようと心がけました。具体的には、初演以来の年月にかけて、より現代的でいわゆる「バレエ」というものに近づけてきたのを、本来の姿に戻そうとすることです。.

http://www.theguardian.com/stage/dance-blog/2015/mar/03/alexei-ratmansky-sleeping-beauty-american-ballet-theatre

ラトマンスキーは、1903年にニコラス・セルゲイエフが記録したノーテーション(舞踊譜)を使って、この再振付を行いました。ステパノフ記譜法によって記された舞踊譜自体、解析するのが極めて難しく、何か月もかけてラトマンスキーとその妻タチアナは象形文字のような記号や音符を解読しました。まるでジグソーパズルのピースを合わせるような作業だったようです。

この舞踊譜では、脚の高さやポジション、フレーズの方向については明確に記録されていましたが、腕のポジションについてはほとんど情報がありませんでした。それでも、ラトマンスキーは、振付の豊かさーステップの集中、そしてそれを合わせたときの驚くべき創造性に富んだ様子に魅了されました。「現在よりも身体能力には依存せず、脚の位置は低く、リフトも今のように多くありませんが、一つのフレーズの中にあるステップの数は今よりも多く、組み合わせも新鮮で興味深く、ディテールに富んでいます」

ラトマンスキーは、自身の振付家としての役割を取り除こうとし、オリジナルに忠実なものを創ろうとしました。「一つのパッセージを解読したり、今日のダンサーにうまく踊らせることが難しくても、舞踊譜に沿った形でやる方法を探りました。それに従って進めれば、非常に多次元で、現在観ているようなバレエよりも生き生きとしていて複雑な踊りを得ることができます」

ABTのダンサーにとって、これはとても難しいことでした。動きは、踊られているほとんどのバレエと比較して身体能力を使うものではないにもかかわらず、「信じがたいようなスタミナ」が必要な振付でした。ダンサーが一息をつけるような、ヴァリエーションやフレーズの間の休息が少ないのです。そして、ほとんどの出演者にとって、過去に彼らが踊った「眠れる森の美女」の記憶を上書きするための多大な努力が必要でした。

初日に主演したディアナ・ヴィシニョーワは、今まで少なくとも6つの異なった「眠れる森の美女」のプロダクションを踊ってきたけれども、今回がスタイル的に最も挑戦を必要とするものだと語っています。「今までの、ある一定の高さに脚をアラベスクやパッセに運んだり、腕の運び方にもっと振幅があるのに慣れていると、新しい振付になじむのは大変です」

ラトマンスキーは、出演者たちが苦労しているのを乗り越えさせるために、全く新しい振付家の作品に挑戦すること、全く新しいスタイルでの実験だと考えるように伝えました。プティパのバレエの振付的な豊かさをよみがえらせるのにあたって、彼は、プロダクションをオリジナルその通りに細かく再現させるつもりではないという意図もあったので、とても興味深いことです。

「眠れる森の美女」の復元と言えば、1999年にマリインスキー・バレエがセルゲイ・ヴィハレフによって復元した4時間にもわたる版が知られていますが、今回のラトマンスキー版は、それとは異なっています。今回は、上演時間の長さや出演者の人数においても、もっと現実に沿うものとなっており、また振付のソースにおいても、折衷的なものとなっています。セルゲイエフの舞踊譜においては、西側でこのバレエが初めて上演された時の断片が挿入されています。3幕のパ・ド・ドゥのフィッシュダイブや王子のヴァリエーションがその例です。ラトマンスキーは、これらを自身の版に取り入れ、また彼ならではの、21世紀の感覚に従ったマイムやストーリーテリングによって色付けを行っています。

リハーサルの間、彼は、貴族役や農民と言った出演者たちにも、バレエ的な人格を排したものではなく、一人一人の人間として演じるように伝えました。2幕の目隠し遊びをする場面、王子の友人ガリソンが侍女を不注意でつかんでしまった時には、侍女役に「少し痛いけど愛の気持ちを込めて」彼をひっぱたくように指示しました。

プロダクション制作にあたっては、ラトマンスキーとデザイナーのリチャード・ハドソンは、ディアギレフのバレエ・リュスの1921年のロンドン公演のためにレオン・バクストがデザインしたプロダクションを発想の源としました。「私は、デザイン画や写真や現存する衣装を観て、これは素晴らしいと感じました」

バレエ・リュスの歴史を知っている方にとっては既知のことですが、1921年のバレエ・リュスの「眠れる森の美女」のプロダクションはバクストの華麗なデザインで知られているものの、失敗に終わり、バレエ・リュス自体を解散の危機に追いやりました。現在は「眠れる森の美女」は古典バレエでも最も人気のある作品の一つですが、1921年においては、ロシアの外ではほとんど知られていませんでした。ディアギレフは、皮肉にも彼の観客たちには、イノベーションとアヴァンギャルドなシックさを期待するように育ててきており、「眠れる森の美女」は彼らの期待には沿えなかったのです。

この高価なプロダクションの失敗により、ディアギレフは破産に追い込まれましたが、今回のラトマンスキー版「眠れる森の美女」は、ABTとミラノ・スカラ座の共同制作となっており、ハドソンは、1921年のデザインを完全に復元するわけではありません。現代的な生地をつかうことによって、衣装の重さも製作費も軽減されており、縫製も、現代の長身で細身のダンサーの体型に合うように配慮されています。

今回の「眠れる森の美女」は、過去の精神を生かしつつも、完璧に再現することを狙ったわけではありません。ラトマンスキーは、時代の流れとともに隠れてしまったプティパの振付の中の生命力とエネルギーを発見したと確信しています。「この眠れる森の美女を創ることで、プティパが、今まで自分が理解していた以上に、どれほど素晴らしい名匠であったことを知ることができました」


こちらの記事では、衣装デザインを行ったリチャード・ハドソンのインタビューと、衣装をダンサーたちが試着している様子、デザイン画、そしてオリジナルの衣装の写真のスライドショーがあります。

http://www.ocregister.com/articles/costumes-652786-bakst-production.html

レオン・バクストがバレエ・リュスの「眠れる森の美女」のためにデザインした衣装は300点以上でしたが、このバレエの興行上での失敗により、ディアギレフは多大な借金を負うことになりました。この衣装は彼の借金のかたに取り上げられ、そのいくつかは、個人のコレクター、そして世界中の美術館によって購入されました。(先日、日本で行われたバレエ・リュス展においても、オーストラリア国立博物館に所蔵されている「眠れる森の美女」の衣装が出展されたので、それをご覧になった方は多いと思います)

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今回のプロダクションの制作にあたり、バクストのデザインの完全な復元を行うわけではないということが最初に確認されました。1920年当時からは、照明の技術も変わっており、そのまま復元しても衣装は魅力的には見えないということが大きな理由です。

「衣装を完全に複製するのではなく、インスピレーションを得ました。バレエ・リュスの専門家の友人がいて、リサーチを行ってくれました。いくつかの衣装のデザインは失われていたので、一から作らなければならないものもあります。使われた色も、バクストのものとは異なっています。ダンサーの体型も当時からはかなり変わっていて、プロポーションを変える必要がありました。チュチュの長さも、バクストのオリジナルより短いものとなっています。」
「生地や素材も、1920年代にバクストが用いたものよりずっと軽いものになっています。私はロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート美術館に行き、舞台芸術部門にあるオリジナルの衣装を見せてもらいました。非常に重い生地をつかっており、現在では使われることのない毛皮も使われていました。生地そのものはすべてニューヨークで購入しています」
「生地としては、たくさんの錦織、シルクそしてラメを使いました。このプロダクションではたくさんの金と銀が使われています」
.
「デザインを始めたときから、少し古風なものを創りたいと思いました。1920年代にデザインされた衣装にインスピレーションを得ることで、それはできたと思います。古風というのは、絵本、フェアリーテールのような感じにするということです。『眠れる森の美女』が誰よりも子供たちにアピールするということが大事だし、もちろん大人の鑑賞に堪えることも重要です」


そして実際の公演のレビューも出ています。
ABT's 'Sleeping Beauty' at Segerstrom a lush return to tradition
http://www.latimes.com/entertainment/arts/la-et-cm-abt-sleeping-beauty-review-20150305-story.html

初日の主演を務めたディアナ・ヴィシニョーワとマルセロ・ゴメスは素晴らしかったようです。ヴィシニョーワは1幕では16歳というより12歳という無邪気で愛らしいオーロラで、とても温かみのあるキャラクターだったそうです。彼女の高い身体能力は見せびらかされないように気を使われていました。

デザインは、まさに飛び出す絵本のようなもので、大変華麗でしたが、かつらなどが多用されているのは、好き嫌いも分かれたようです。妖精たちは目で演技をしていてそれがとても効果的だったとのこと。1月にミュンヘン・バレエでラトマンスキーが振付けた「パキータ」でも、この目線の演技は重視されていました。

他の日程では、マルセロ・ゴメスはカラボス役も演じることになっており、これもぜひ観てみたいと思います。

70人のバレエ団のダンサーの他に、子役を含む100人もの出演者がいたという大変豪華なプロダクションでした。9月には、ミラノ・スカラ座でも上演され、こちらでは、スヴェトラーナ・ザハロワとデヴィッド・ホールバーグが主演する予定です。


2015/03/06

デヴィッド・ホールバーグがABTのMETシーズンを降板

昨年半ばに脚の怪我をして以来、舞台から遠ざかっていたデヴィッド・ホールバーグ。4月から7月までのABTのMETシーズンに出演する予定でしたが、残念ながら降板することになったと発表されました。昨年秋に、脚の手術を受けたのですが、まだ完全に回復していないようです。

David Hallberg Out for American Ballet Theater’s Spring Season
http://artsbeat.blogs.nytimes.com/2015/03/04/david-hallberg-out-for-american-ballet-theaters-spring-season/

デヴィッド・ホールバーグはMETシーズンに13公演出演する予定でしたが、すべて降板するため、「ジゼル」はウラジーミル・シクリャーロフが、そして「眠れる森の美女」と「ラ・バヤデール」はレオニード・サラファーノフが代役を務めます。サラファーノフがABTにゲスト出演するのは初めてのこととなります。

ABTはちょうどいま、カリフォルニア州コスタ・メサのSegerstrom Center for the Artsで、カンパニー設立75周年を記念した、ラトマンスキー振付による新作「眠れる森の美女」の上演中です。



http://www.scfta.org/events/detail.aspx?id=11607
http://www.ocregister.com/articles/beauty-653012-production-ratmansky.html
レオン・バクストがバレエ・リュスのロンドン公演のためにデザインした衣装を復元した、大変注目を集めている舞台です。素晴らしい作品だったようなので、改めてご紹介したいと思います。この「眠れる森の美女」でも、ホールバーグ不在により、キエフ・バレエからデニス・ニェダクがゲストとして出演します。

6月9日には、パロマ・ヘレーラの引退公演が、この「眠れる森の美女」で行われます。しかしホールバーグ降板により玉突きキャスト変更が発生し、彼女の相手役は現在未定となってしまいました。
http://www.abt.org/calendar.aspx?startdate=6/1/2015

METシーズンのゲスト・ダンサーは、シクリャーロフ、オシポワ、キム・キミン、コチェトコワ、サラファーノフ、テリョーシキナ、スミルノワ、チュージン、オブラスツォワ、ニェダク、ヌニェスと11人もいます。ヌニェス以外は全員ロシア系のダンサー(キム・キミンは韓国人ですが、マリインスキーのファースト・ソリスト)というのが、なんともいえないというか、いつの間にかロシア人ゲストにすっかり浸食されてしまったABTとなってしまいました。特に、「ラ・バヤデール」は、コルネホ、スターンズ、セオ、パールト、セミオノワ以外はすべてゲストダンサーです。

あまりにもロシア人ゲストに頼りすぎなのもいかがなものかと思われますが、カンパニーのダンサーを育てようという姿勢があまり見られない上に、広大なメトロポリタン・オペラハウスを埋めるにはネームヴァリューが必要なことがあって、痛し痒しですね。

ABTにはラトマンスキーという当代一の素晴らしい常任振付家がいるので、もっとカンパニーダンサーを引き立てるようにしてほしいなと思います。ホールバーグはボリショイと掛け持ち、ゴメスは人気、実力とも世界でもトップクラスですが、昨年のインタビューで、「ラ・バヤデール」は体力的に厳しくてもう踊らない、と語っていました。プリンシパル候補を育てるのは喫緊の課題と思われます。ソリストのジョセフ・ゴラックが最有力候補なので早く育って欲しいですね。

ホールバーグの怪我の早い回復を祈っています。しっかり治して、世界バレエフェスティバルで彼の元気な姿を観たいですね。

なお、ホールバーグは、4月17日のYAGPガラの時に、彼の企画 “David Hallberg Presents: Legacy,”を開催します。彼が今までのキャリアで共演してきたカンパニーのダンサーたちが出演するそうです。具体的には、マリインスキー、ボリショイ、東京バレエ団、そしてオーストラリア・バレエのダンサーとのことです。
http://yagp.org/?page_id=5119

2015/03/05

フィンランド国立のムーミンバレエさらに続報 追記:予告編映像

フィンランド国立バレエで、あのムーミンを子供向けのバレエ作品として創り、上演するというワクワクするニュースは大きな話題になってインす。

この作品の最新のフォトアルバムが、フィンランド国立オペラ劇場のFacebookにアップされてありました。もう可愛いすぎてメロメロになっています。作品の雰囲気も伝わってきますね。

https://www.facebook.com/media/set/?set=a.10152772463046716.1073741896.192041626715&type=1

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Photo: Mirka Kleemola

全部の登場人物が着ぐるみを着ているわけではなく、クラシックチュチュのダンサーも登場するし、スナフキンと思しきキャラクターも登場します。4歳以上の子供が観覧可能ということで、基本的には子供向けなのかもしれませんが、写真で見るとダンサーたちのテクニックも発揮されているようですし、大人も楽しめそうですね。

初演は3月6日。さて、どんな作品に仕上がることでしょうか?
http://www.opera.fi/en/productions/moomin_and_the_comet/2681

そして、ニュース映像もアップされていました。ムーミンが動いてます!
http://www.katsomo.fi/?progId=449308

ムーミン公式サイトのニュース
https://www.moomin.com/en/blog/comet-moominland-ballet-2/

追記:そして予告編映像です。ニョロニョロも登場しています。
http://youtu.be/9ei40-FoMo8

2015/03/04

2/17 新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」

音楽 レオン・ミンクス
編曲 ジョン・ランチベリー
振付 マリウス・プティパ
演出・改訂振付 牧 阿佐美
指揮 アレクセイ・バクラン
管弦楽 東京交響楽団

ニキヤ 小野絢子
ソロル ワディム・ムンタギロフ
ガムザッティ 米沢 唯
ハイ・ブラーミン マイレン・トレウバエフ
ラジャー 貝川鐡夫
マグダヴェーヤ 福田圭吾
黄金の神像 八幡顕光
アイヤ 今村美由起
つぼの踊り 寺田亜沙子

第一ヴァリエーション 寺田亜沙子
第二ヴァリエーション 堀口 純 
第三ヴァリエーション 細田千晶

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150217_003720.html

「ラ・バヤデール」は、牧阿佐美改訂の古典作品の中で、「ライモンダ」とならび、オーソドックスで出来の悪くない演出と言える舞台の一つ。ニキヤと奴隷とのパ・ド・ドゥや太鼓の踊りなどの割愛があったり、メーンキャラクター3人+大僧正以外は存在感も演技も薄いのでドラマの厚みがないという問題点はあるが、大きな破綻はない。

今回はシーズン・ゲストダンサーのワディム・ムンタギロフを迎えているのだが、公演数が4回と非常に少ないうえ、ムンタギロフ出演2回のうち1回は平日昼間の公演で学生の大きな団体が入っていており、もう一公演も平日の夜のため、勤め人が観に行くにはなかなか厳しい。もちろん、若い人にバレエを観てもらうことは大事なことではあるし、平日マチネの需要も最近は大きいようではあるのだが、4回しか公演がないのにそのうちの一回がスクールマチネ、しかも、今世界的にももっとも注目される男性ダンサーをゲストに迎えているのに、その出演回数の一回がこの半貸し切り公演というのはいかんせん勿体ない。いかに、この劇場が、バレエファンを大事にしていないというのが伝わってきてしまって残念だ。キャストの発表も毎度のことだが非常に遅く、ガムザッティ役ですら公演が迫ってからの発表だった。

初日はムンタギロフに加え、ニキヤ役に小野絢子さん、ガムザッティ役に米沢唯さんというバレエ団のトップバレリーナを加えた豪華なキャスト。やはりガムザッティ役には、ニキヤ役と対等に張り合えるレベルのバレリーナをキャスティングしないと盛り上がらない。この点で、こちらの配役は非常に成功していた。2人が火花を散らし、丁々発止で演技そして踊りをぶつけ合う姿をたっぷり堪能できた。

小野さんのニキヤは、儚さの中にも芯の強さが伝わってくる踊り。神に身を捧げた巫女でありながら禁断の恋に胸を焦がす業の強い女性であり、恋人ソロルが現れたらパッと表情が輝く一方で、誇り高くもあり、横恋慕する大僧正に対しては凛としてはねつける。恋敵ガムザッティが彼は私のものよ、と迫ってくると、追い詰められながらもナイフを手に取る様子に想いの強さと激しさがある。小柄で華奢な小野さんだが、しなやかな動きの中に強靭さを感じさせ、それがニキヤの強い意志へとつながっていっているのだ。特にソロルとガムザッティの婚約式での花籠を持った踊りでは、悲しみをあふれさせた始まりから、花籠を贈られての歓び、胸の鼓動が早まる昂揚感と報われない想いがまじわってのクライマックス、そして絶望と様々な感情を、アダージオからアレグロへと変化していく体の動きを通じて鮮烈に見せた。清純なイメージの強い小野さんも、すっかり大人の表現力を身につけて、役に魂を吹き込み役を生きられるようになった。

一方の米沢さんも、鮮やかなガムザッティ像を見せてくれた。彼女のガムザッティ像は、可愛らしさがある反面、とても傲慢でわがままなお姫様だ。ソロルに恋心を寄せる一方で、ニキヤに対しては、この踊り子風情が私に刃向うなんて、とニキヤをとても見下している。そのため、ニキヤがナイフを持って立ち向かった時には、心底怒りを感じ、1幕最後の「殺してやる」マイムでも、殺意に心を煮えたぎらせ、目の中に強い炎を燃やしていた。普段は愛らしく優しげな顔立ちの米沢さんだが、今回はメイクを工夫して、目をくっきり描き、ガムザッティの強さと怖さを表現。婚約式では、ソロルに脚を見せて誘惑する一方でニキヤの悲しみの舞を冷やかに見つめ、「あなたが蛇を入れたのね」とニキヤに指さされても、ふん、知らないわ、と平気な顔で立ち去ることができる。悪役という新境地を米沢さんは見事に開くことができた。鉄壁のテクニックを誇る米沢さんは、難易度の高いガムザッティのヴァリエーションも余裕でこなす。くっきりとした輪郭のイタリアンフェッテ。グランフェッテも、涼しい顔でいつの間にかダブルやトリプルが入っている。音楽性にも優れているし、華やかさも十分で、婚約式のクライマックスを盛り上げてきた。

新国立劇場を代表するプリマに挟まれた形のワディム・ムンタギロフ。彼の良さは、ただ一人の外国人ゲスト、しかもトップスターという状況にあっても、カンパニーから浮くことなく、目立ちすぎることもなく、バランス感覚に優れていて自然体であること。若くて貴公子然としている彼は、戦士ソロルを演じるには優男であるようにも感じられたが、踊りのテクニックは輝かしい。吸い付くような着地、美しいつま先、浮かび上がるような跳躍、そしてソロルらしさを出すために、特徴的な、大きく背中を反らせて着地するポーズを綺麗に決めてくれた。一つ一つの動きにエレガンスがあるし、動きはダイナミックで柔らかい。長身なので、小柄な小野絢子さんと組む時には少しバランスは悪いところもあるが、パートナーリングも上手く、驚くほどの高さでリフトをすることができる。演技もごくナチュラルで、やりすぎでないけれども、しっかりとコミュニケーションが成立し、パートナーとともに物語を紡ぎあげることができるところに大変好感が持てた。

何よりも、ソロルと言えば影の王国のコーダのマネージュである。ここの6連続ドゥーブル・アッサンブレはチャブキアーニによる追加振付を踏襲しているものだと思うのだが、ソロル役ダンサーにとって最も重要なところだと思っている。ここがムンタギロフは素晴らしかった。見事な空中二回転に続く美しい着地の連続をきっちりと決めてくれて、ソロルならではの勇壮さを感じさせてくれた。

影の王国での小野さんも心を打つものがあった。情熱的な2幕での彼女と打って変わって、死によって浄化され、魂だけになったような透明感を持ちながらも、動きはなめらかで伸びやかで美しい。ヴェールを持ってのヴァリエーションは、この牧版の特徴か、アラベスクで回転をした後でパ・ド・ブレでフィニッシュするので少し難易度が下がっているものの、小野さんはバランスを完ぺきに保っていて、歌い上げるように踊っていた。2人の魂が触れ合っているように感じられていたから、神殿崩壊後、スロープをあがっていくニキヤの魂を追いかけるソロルが力尽きてしまう、このヴァージョンならではの最後が、彼らの表現とは整合性がないのではないかと感じてしまった。ニキヤを裏切ったソロルは結局許されないという結末は面白い解釈だと思うけど、このペアに関しては合っていない気がする。

新国立劇場バレエ団自慢のコール・ド・バレエによる影の王国は、思わず息も止まるほどの神秘的な体験をさせてくれる。3段のスロープを、アラベスク・パンシェしながら降りてくる32人のダンサーたち。よく見ると、一人おきにエポールマンの方向を変えているので、その結果ジグザグのアラベスク模様を描くことになって、これがまた大変美しい。まさに一糸乱れぬ動きで、見事としか言いようがない。

ただ、欲を言えば、衣装が純白ではなくて銀色の模様が入っていることと、照明が明るすぎるのが不満であった。12月にボリショイ・バレエの来日公演でも「ラ・バヤデール」があり、こちらも美しかったものの、揃いっぷりでは新国立劇場の方が一枚上だった。だが、ボリショイの場合、スロープが4段というのが凄いのと、青くて海の底に沈んでいるかのような照明の中でダンサーたちが白く浮かび上がる様子が実に幽玄で、まさに黄泉の世界を思わせていたことが記憶に新しいからだ。しかしこれはダンサーの責任ではない。

ここのコール・ド・バレエは、世界の中でもトップを争うほどの揃い方であり、また機械的に、一ミリの狂いもないようにそろえたという感じではなくて、一人一人の息遣いを感じさせるような人間的な美しさも感じさせるのが素晴らしいのだ。

影の王国の3人のヴァリエーションもそれぞれ称賛に値するものだったが、中でも第三ヴァリエーションの細田さんの音楽性とたおやかさは光っていた。ソリストレベルでも、このバレエ団のメンバーの粒がそろってきたのを実感できた。

八幡さんのブロンズアイドルはさすがの安定感。仏像らしい動き、まるで空中で止まっているかのようなバロン、そして回転の正確さと日本では最高峰のパフォーマンス。そしてもう一人、印象に残ったのがマイレン・トレウバエフ演じる大僧正。個性的な演技で毎回楽しませてくれる彼だが、彼の演じたハイ・ブラーミンは、熱烈なまでにニキヤに恋しており、ひたすら熱く彼女に迫っていた。胸にしまったニキヤのヴェールをいとおしそうに持つ姿にも愛情を感じさせた。毒蛇にかまれたニキヤに薬を差し出す表情の演技も細かく、彼女が死んだ時の慟哭も激しかった。おそらくは、神殿が崩壊したのも、神の怒りに触れたのではなく、大僧正が失恋のあげくに地震を引き起こしてすべてを破壊させてしまったのではないかと思うほどだった。思わずセリフが聞こえてきそうなマイレンの演技で、舞台はさらにドラマティックになるので、これからもずっと舞台に立ち続けてほしいと願わずにはいられない。

東京交響楽団の演奏は見事なものであり、特に3幕のハープやヴァイオリンソロの響きの美しさで、影の王国の世界にどっぷりとつかることができた。アレクセイ・バクランのロシアの魂を感じさせる熱い指揮も多きに貢献したのは言うまでもない。

この後、他に2キャスト「ラ・バヤデール」を観たが、いずれも非常に充実した、素晴らしい上演であり、新国立劇場バレエ団のレベルの高さを改めて実感したのであった。クラシックバレエの神髄を感じさせるこのような上演が、今回4回しかなかったのは、繰り返しになるが、実にもったいないことであると言える。

2015/03/03

バットシェバ舞踊団、10月に来日公演

現代最高の振付家の一人である、オハッド・ナハリン率いるイスラエルのバットシェバ舞踊団が、10月に来日公演を行います。

http://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/index2.html

現在のところ判明しているのは、愛知県芸術劇場での公演のみ。

バットシェバ舞踊団
「Deca Dance - デカダンス」
愛知芸文フェス
愛知県芸術劇場大ホール
10月7日(水)
振付:オハッド・ナハリン 出演:バットシェバ舞踊団
S席:8,000円、A席:6,000円、B席:4,000円、C席:3,000円、C席学生:2,000円 ほか

愛知で水曜日の公演ということなので、きっと週末に関東圏で公演があるだろうと勝手に期待しています。

今回上演される「デカダンス(Deca Dance)」は、バットシェバ舞踊団でのナハリンの集大成とも言える作品です。ナハリンは、オリジナルの作品の個性を残しつつ、既存作品の一部を独創的な新たな表現に再編成していきます。「デカダンス(Deca Dance)」は、彼の作品の中で最も感動的な側面をみることのできると同時に、今日もまだ進化し続けている作品です。
ナハリン作品の中でも最も有名な「マイナス16」(昨年末のスペイン国立ダンスカンパニーの来日公演でも上演)も、この作品の中に含まれています。有名な詩人、チャールズ・ブコウスキーによるテキストも引用され、そこからインスピレーションを得た作品とのことです。

なんとこの作品、マリインスキー劇場でバットシェバ舞踊団が上演したこともあるんですよね。
http://www.balletandopera.com/modern_dance/Batsheva_Dance_Company__Tel_Aviv__Deca_D/info/sid=J43wx6r6G49Gs86Eu31g&play_date_from=01-Jun-2013&play_date_to=30-Jun-2013&playbills=30014

Ohad Naharin Deca Dance
http://youtu.be/Bk-odQ-23_4

個人的に、オハッド・ナハリンは現代ダンスの振付家の中でも、一番好きなアーティストなのです。本当に来日が楽しみなのですが、愛知で水曜日だと観に行くのが難しいので、ぜひ関東での上演も期待したいところです。

なお、バットシェバ舞踊団は、来年1/5-9にパリ・オペラ座、ガルニエで客演し、Threeという作品が上演されます。
ナハリンは以前オペラ座に振付をしたことがありますが、オペラ座にバットシェバ舞踊団が招かれるのは初めてのことです。
http://saison15-16.operadeparis.fr/en/ballet/batsheva-dance-company-ohad-naharin

2015/03/02

倉永美沙さん出演「スター・ガラ2015 ボストン・バレエの精鋭たちによる饗宴」

モスクワ国際バレエコンクールのジュニア部門金賞、ジャクソン国際バレエコンクールのシニア部門金賞など数々の賞に輝く、ボストン・バレエのプリンシパル倉永美沙さん。高度なテクニックと表現力を併せ持った、トップ・バレリーナです。

最近では、ビューティ・ブランドSK-IIのブランドムービーにも登場して、バレエ・ファンだけにとどまらない知名度を上げ、多くの女性たちにインスピレーションを与えています。
http://www.sk-ii.jp/ja/changedestiny.aspx

その倉永さんをフィーチャーした公演が2015年6月26日(金)に行われます。
Bostonflyer
(画像はクリックすると拡大します)

「スター・ガラ2015 ボストン・バレエの精鋭たちによる饗宴」
http://www.komakiballet.jp/?p=1503

東京小牧バレエ団の菊池宗団長と、日本でもおなじみの、ボストン・バレエのセカンドソリスト、アルタンフヤグ・ドゥガラーがプロデュースしたガラ公演です。ボストン・バレエからは、プリンシパルが7人、ソリストが4人来日。ボストン・バレエは来日公演を行ったことがありませんが、今回の公演では全米有数のカンパニーからのトップダンサーを観ることができます。

第一部では、倉永美沙さんがドゥガラーと「ジゼル」2幕を踊り、ミルタに市河里恵さん、ヒラリオンには、ユーリ・ヤノウスキーが出演します。

第二部は、ガラならではの華麗なパ・ド・ドゥと、日本で初演される現代作品が踊られます。

第1部「ジゼル」第2幕
ジゼル:倉永美沙 アルブレヒト:アルタンフヤグ・ドゥガラー
ミルタ:市河里恵 ヒラリオン:ユーリ・ヤノウスキー
共演:東京小牧バレエ団&オーディションによる出演者

第2部 ボストン・バレエダンサーらによるコンサート
「海賊」 パ・ド・トロワ ホイットニー・ジェンセン、イザック・アキバ、ブラッドリー・シャラゲック
「Niris」 振付:ユーリ・ヤノウスキー キャスリーン・ブリーン・コムズ、ユーリ・ヤノウスキー
「ジェフリー・シリオ 振付作品(新作)」 ジェフリー・シリオ
「Of Trial」 ジェフリー・シリオ振付 リア・シリオ、ホイットニー・ジェンセン、アルタンフヤグ・ドゥガラー、イザック・アキバ、、ブラッドリー・シャラゲック
「椿姫」より パ・ド・ドゥ 振付:ヴァル・カニパロリ ユーリ・ヤノウスキー キャスリーン・ブリーン・コムズ
「ドン・キホーテ」より 倉永美沙、ジェフリー・シリオ


■来日予定ダンサー■
アルタンフヤグ・ドゥガラー (ボストン・バレエ セカンドソリスト)
倉永美沙 (ボストン・バレエ プリンシパル)
ジェフリー・シリオ (ボストン・バレエ プリンシパル)
キャスリーン・ブリーン・コムズ (ボストン・バレエ プリンシパル)
リア・シリオ (ボストン・バレエ プリンシパル)
ホイットニー・ジェンセン (ボストン・バレエ プリンシパル)
ラシャ・ホザシヴィリ (ボストン・バレエ プリンシパル)
ユーリ・ヤノウスキー (ボストン・バレエ プリンシパル) 
イザック・アキバ (ボストン・バレエ ソリスト)
市河里恵 (ボストン・バレエ ソリスト)
ブラッドリー・シャラゲック (ボストン・バレエ ソリスト)

※出演者・演目は3月現在の予定です。変更になる場合があります。

2015年6月26日(金)
開場17:45 開演/18:30 新宿文化センター大ホール

入場券・全席指定 S席:10,000円 A席:8,000円 B席:6,000円 C席:4,000円

プレイガイド/博品館1F TICKET PARK チケットぴあ
ローソンチケット e+(イープラス) 【3月7日(土)発売開始】

お申込み・お問合せ 東京小牧バレエ団 03-3377-7764


ボストン・バレエのダンサーは、倉永美沙さんと、牧阿佐美バレエ団や東京小牧バレエ団でもゲスト出演を重ねてきたドゥガラーを除けば、日本ではなじみのない人が多いのですが、全米有数のカンパニーだけあって優秀なダンサーが揃っています。

ユーリ・ヤノウスキーは、ロイヤル・バレエのゼナイダ・ヤノウスキーの兄で、長年にわたってカンパニーの主力ダンサーとして活躍。今年、22年間のキャリアに終止符を打ちます。引退公演では、今回も上演される「椿姫」を夫人であるキャスリーン・ブリーン・コムズと踊ります。
http://www.bostonglobe.com/arts/theater-art/2015/02/19/dancer-yury-yanowsky-retire-from-boston-ballet/sRtROp1msiGOqNET56JiMN/story.html

ジェフリー・シリオはYAGPシニアグランプリ、ジャクソン国際コンクールとヘルシンキ国際コンクールで金賞を受賞し、テクニックの強さには定評があるとともに、倉永さんと組むことも多いとのこと。また、最近では振付家としても活動しており、ボストン・バレエの本公演のために来シーズンは新作を振付ける予定です。ホイットニー・ジェンセンも、YAGPやヴァルナ国際コンクールで賞を受賞しています。

市河里恵さんは、昨年の「バレエ・アステラス☆2014~海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて」公演にドゥガラーと出演しており、ボストン・バレエに15年在籍しているベテラン。キャスリーン・ブリーン・コムズは、2012年にクランコの「ロミオとジュリエット」ジュリエット役でブノワ賞にノミネートされています。ラシャ・ホザシヴィリは、グルジア国立バレエ時代に来日公演で主演しており、いずれも実力派です。

話題のトップ・プリマ、倉永美沙さんのジゼルと、なかなか観られないボストン・バレエの素晴らしきダンサーたちが観られるこの公演、見逃せませんね。特にユーリ・ヤノウスキ-は日本で観られるのはこれが最初で最後のようです。

http://youtu.be/2oOsazErbq0

2015/03/01

4/26 NHK-BSプレミアムシアターでマシュー・ボーン「シザーハンズ」放映→番組変更

3月になったので、4月のNHK-BSの番組表が更新されました。

http://www.nhk.or.jp/bsmile/lineup/bspremium_nextmonth.pdf

4月26日(日曜)24時より、 NHK-BSプレミアムのプレミアムシアターで
マシュー・ボーン振付の「エドワード・シザーハンズ」が放映されます。

マシュー・ボーンの「エドワード・シザーハンズ
出演:ドミニク・ノース、リアム・マウワー、アシュリー・ショウ ほか
音楽:テリー・デイヴィーズ、 ダニー・エルフマン
演奏:ニュー・アドベンチャーズ・オーケストラ
振付・監督:マシュー・ボーン
指揮:ブレット・モリス

また、以前にも放映された、同じくマシュー・ボーンによる「眠れる森の美女」も同時に放映されます。

マシュー・ボーンの
バレエ「眠りの森の美女」

音楽:チャイコフスキー
出演:ハナ・ヴァッサロ(オーロラ)、
    ドミニク・ノース(レオ)、
    クリストファー・マーニー(ライラック伯爵)、
    アダム・マスケル(カラボス、カラドック)
演奏:ザ・スリーピング・ビューティー・オーケストラ
振付:マシュー・ボーン
指揮:ブレット・モリス

「エドワード・シザーハンズ」はまだDVD化されていません。このキャストは、現在のツアーでの最新キャストですね。リアム・マウワーは、ミュージカル「ビリー・エリオット」のロンドン初演の少年ビリー役で、現在日本の映画館でも上演されている「ビリー・エリオット ミュージカルライブ リトル・ダンサー」でも、大人のビリー役で出演しています。

「シザーハンズ」も「眠れる森の美女」も大変面白い作品です。「シザーハンズ」は来日公演も以前にありましたが、両作品、ぜひ生で見たいものです。

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追記:番組表が変更となっており、「シザーハンズ」「眠れる森の美女」の放映はなくなってしまいました。代わりに、同じ時間にボリショイ・バレエの「マルコ・スパーダ」と、マリインスキー・バレエの「シンデレラ」が放映されます。

http://www.nhk.or.jp/bsmile/lineup/bspremium_nextmonth.pdf

4月26日(日)0:00 (月曜日早朝)
ボリショイ・バレエ団公演
「マルコ・スパーダ」
出演:デヴィッド・ホールバーグ(盗賊マルコ・スパーダ)、
エフゲーニャ・オブラスツォーワ(マルコの娘)、
    ボリショイ劇場バレエ団 ほか
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団
音楽:ダニエル・オーベール

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