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2015年2月

2015/02/28

第14回世界バレエフェスティバル 出演者・発売日決定

第14回世界バレエフェスティバルの追加出演者と発売日決定したとのことでお知らせがありました。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/-81-200pm-82-200pm-84-600pm-85.html#002063

また、今日、モンテカルロ・バレエの「LAC~白鳥の湖」を観に行ったら、世界バレエフェスティバルのチラシも折り込まれていました。
(モンテカルロ・バレエの「LAC~白鳥の湖」、スタイリッシュで斬新でものすごく面白い作品で、ダンサーもみな美しく素晴らしかったです。入団したばかりの加藤三希央さんも、見事な活躍を見せていました。おすすめの公演です)

■Aプロ、Bプロ2演目セット券(S,A,B)受付:4月4日(土)10:00a.m.


■一斉前売開始:4月18日(土)10:00a.m.


■予定される女性舞踊手
アマンディーヌ・アルビッソン(パリ・オペラ座バレエ団)☆Aプロのみ出演
シルヴィア・アッツォーニ(ハンブルク・バレエ)
アリーナ・コジョカル(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)
オレリー・デュポン(パリ・オペラ座バレエ団)
マリア・アイシュヴァルト(元シュツットガルト・バレエ団)
イザベル・ゲラン(元パリ・オペラ座・バレエ団)
マリア・コチェトコワ(サンフランシスコ・バレエ)
サラ・ラム(英国ロイヤル・バレエ団)
アンナ・ラウデール(ハンブルク・バレエ)
ミリアム=ウルド・ブラーム(パリ・オペラ座バレエ団)
タマラ・ロホ(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)
ヤーナ・サレンコ(ベルリン国立バレエ団)
ヴィエングセイ・ヴァルデス(キューバ国立バレエ団)
ディアナ・ヴィシニョーワ(アメリカン・バレエ・シアター/マリインスキー・バレエ)

■予定される男性舞踊手
マチュー・ガニオ(パリ・オペラ座バレエ団)☆Aプロのみ出演
オシール・グネーオ(ノルウェー国立バレエ団)
デヴィッド・ホールバーグ(アメリカン・バレエ・シアター/ボリショイ・バレエ)
マチアス・エイマン(パリ・オペラ座バレエ団)
ヨハン・コボー(ルーマニア国立バレエ団)
マニュエル・ルグリ(ウィーン国立バレエ団)
アルバン・レンドルフ(デンマーク・ロイヤル・バレエ団 /イングリッシュ・ナショナル・バレエ ゲスト)
ウラジーミル・マラーホフ
スティーヴン・マックレー(英国ロイヤル・バレエ団)
エルヴェ・モロー(パリ・オペラ座バレエ団)
ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤル・バレエ団)
マライン・ラドメーカー(オランダ国立バレエ団)
エドウィン・レヴァツォフ(ハンブルク・バレエ
アレクサンドル・リアブコ(ハンブルク・バレエ)
ダニール・シムキン(アメリカン・バレエ・シアター)
フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト・バレエ団)


まずは、マニュエル・ルグリの名前を出演者として見たときから、きっと出るんじゃないかと予想していた、イザベル・ゲランが出演することが大きなニュースですね。
以前もこのブログでお知らせしたように、昨年8月にイザベル・ゲランは、上海で行われたガラ「パトリック・ド・バナ&フレンズ」で、バナの新作“The Farewell Waltzをルグリと踊りました。また、「ル・パルク」もルグリと踊っています。
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2014/07/post-5e27.html

ゲランはもちろん以前にも世界バレエフェスティバルに出演しているのですが、いつ以来でしょうか(私が観に行った1994年の第7回には出演していました)。パリ・オペラ座では2003年に踊ったのが最後のようです。

最近のゲランの写真です。今彼女は53歳とのことですが、驚くべき張りのある筋肉です。
https://balletthebestphotographs.wordpress.com/2015/02/14/isabelle-guerin-and-lloyd-knightt/
きっと、今回もマニュエル・ルグリと踊ってくれるんでしょうね。とても楽しみです。


ノルウェー国立バレエのオシール・グネーオは、聞きなれない名前ですが、素晴らしいテクニックの持ち主として注目されているキューバ出身のダンサーです。

彼の踊る「ディアナとアクティオン」。とにかくピルエットが驚異的です。
http://youtu.be/lYl49Zqen90

2006年以来、久しぶりに世界バレエフェスティバルに出演するヴィエングセイ・ヴァルデスとの「ドン・キホーテ」
http://youtu.be/WSJRVwzEZ4U

ヴァルデスも、やはり見たこともない超絶技巧を披露して、2006年には大センセーションを起こしました。グレーオも間違いなく台風の目になるのではないかと思われます。まだ24歳という若さ。2008年にヴァルナ国際バレエコンクールで銀賞を受賞しています。


アルバン・レンドルフは、デンマーク・ロイヤル・バレエのプリンシパルですが、イングリッシュ・ナショナル・バレエ、そしてABTにゲスト出演しているので、英米のバレエファンにはよく知られた存在です。2013年にはブノワ賞を受賞しています。


それほど知名度はないけれども、驚くようなテクニックや存在感を持つダンサーを発見できるのも世界バレエフェスティバルの楽しみですよね。新しいダンサーをここで発見できるのは良いことだと思います。バレエフェスはお祭りなので、普段は観られないような超絶技巧や意外なカップリングが観られると盛り上がりますよね。


反面、今回はロシア系のダンサーが非常に少ないですよね。マリインスキー・バレエからはディアナ・ヴィシニョーワ、ボリショイ・バレエからはデヴィッド・ホールバーグが出演しますが、二人ともABTでも踊っています。それ以外の、ボリショイ、マリインスキー、そしてミハイロフスキー、ダンチェンコなどロシア系バレエカンパニーのダンサーがいないので、ロシア・バレエファンにとっては物足りないかもしれません。

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2015/02/26

「バレエの世界へようこそ:あこがれのバレエ・ガイド」

英国ロイヤル・バレエ全面監修のバレエ・ガイド「Ballet Spectacular」。

ロイヤル・バレエの美しい舞台写真をふんだんに使い、バレエの歴史から主な演目の紹介、チュチュやトウシューズの秘密、バレエのテクニック、舞台の裏方の仕事からバレエ学校、ダンサーの生活まで、これ一冊でバレエのすべてを網羅しています。

この美しい本の日本語版が3月4日に発売されます。

「バレエの世界へようこそ
あこがれのバレエ・ガイド」

英国ロイヤル・バレエ 監修
リサ・マイルズ 著
斎藤 静代 訳

B01073usaea3tt
photo: Akiko Tominaga

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309275352/

そして、僭越ながら、そして少しですが、こちらの本の翻訳協力をさせていただきました。どんな本ができるのか、わくわくし続けた半年でしたが、大判の素敵な本が出来上がりました。大人から子供まで楽しめる一冊で、子供でも読めるようにやさしい言葉遣い、漢字にはルビも振ってあります。元の「Ballet Spectacular」も持っていますが、オリジナルの本にとても忠実に丁寧に作られています。

英国ロイヤル・バレエ監修ならではの、作品紹介もロイヤルのレパートリー中心なのが面白いですし、プリンシパルのローレン・カスバートソンが怪我にどうやって対処したか、といったインタビューも載っています。他にも、若手のダンサーや振付家のインタビューもあるし、ロイヤル・バレエではどんな裏方の人が働いているのかも分かって、大人にとっても興味深く、マニアックな知識までも仕入れられます。

2013年のロイヤル・バレエ来日公演「白鳥の湖」の際の、舞台から客席を撮った写真は、まるで日本のファンへのプレゼントのようですね。

何より、絵本のような夢いっぱいで華やかなビジュアルが美しい。バレエの魔法のような世界へと導いてくれます。舞台やダンサーの貴重な写真がたくさん載っているので、ロイヤル・バレエのファンにとっては嬉しいこと間違いないです。特に、バレエを習い始めたり、バレエに興味を持ち始めたお子さんへのプレゼントにとても喜ばれると思います。新国立劇場バレエ団の小野絢子さんの推薦帯つき。

自分が関わっていなかったとしても、この本はすべてのバレエファンにお勧めです。こんなに綺麗なバレエ本は日本ではいまだかつてなかったと思います。大型の豪華本なのに、値段も2,916円と抑え目でお得です。

バレエの世界へようこそ:あこがれのバレエ・ガイドバレエの世界へようこそ:あこがれのバレエ・ガイド
リサ・マイルズ 英国ロイヤル・バレエ

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Ballet Spectacularの発売記念イベントに登場した、ローレン・カスバートソン、ヤスミン・ナジ、マルセリーノ・サンベ(3人ともこの本にインタビューが掲載)をフィーチャーした記事と写真。ローレンの脚のギブスはこの時は痛々しいです。
http://dancetabs.com/2014/10/book-ballet-spectacular-a-childrens-guide-to-ballet-and-an-insight-into-a-magical-world/
https://www.flickr.com/photos/dancetabs/sets/72157648480468650/

オリジナルの英語版はこちら。

Ballet Spectacular: A Young Ballet Lover's Guide and an Insight into a Magical WorldBallet Spectacular: A Young Ballet Lover's Guide and an Insight into a Magical World
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なお、Ballet Spectacularという題名の、ロイヤル・バレエのDVD-BOXも発売されています。これは、ロイヤル・バレエの「ジゼル」(コジョカル、コボー主演)、「コッペリア」(ベンジャミン、アコスタ主演)、「ラ・フィユ・マル・ガルデ」(ヌニェス、アコスタ主演)の3枚のDVDをカップリングしたお買い得なDVDセットです。

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2015/02/19

イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)の2015-16シーズン

タマラ・ロホ率いるイングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)の2015-16シーズンが発表されています。

http://blog.ballet.org.uk/201516-season-announcement/

一番の目玉は、2016年春に、She Saidという女性振付家3人をフィーチャーした新作トリプルビルを行うことです。
http://www.ballet.org.uk/whats-on/shesaid/

アジュール・バートン(カナダ)、アナベル・ロペス・オチョア(アムステルダム)、そしてヤビン・ワン(中国)という気鋭の女性振付家たちの新作が上演されます。女性振付家がなかなか育たないことはバレエ界の課題であり、ロイヤル・バレエが女性振付家の新作をROHの舞台で上演したのは15年も前のことであり、ENBではかつてなかったことです。

この3人の中では、アナベル・ロペス・オチョアが、スコティッシュ・バレエに「欲望という名の電車」を振付けてナショナル・ダンス・アワードを受賞したり、ダニール・シムキンに「雨」を振付けたりして知名度が高いです。アジュール・バートンは、ミハイル・バリシニコフ、ABT、ナショナル・バレエ・オブ・カナダ、アルヴィン・エイリー・アメリカンダンスカンパニーなどに振り付け、ヤビン・ワンは自身のカンパニーを持つとともに、シディ・ラルビ・シェルカウイとのコラボレーションをしたことがあります。サドラーズウェルズでの上演。


また、昨年のナショナル・ダンス・アワードで数々の賞に輝いたミックスビル「Lest We Forget」が再演されます。
http://www.ballet.org.uk/whats-on/lestweforget/
第一次世界大戦開戦100周年を記念した企画で、リアム・スカーレット(No Man’s Land)、ラッセル・マリファント(Second Breath,)、アクラム・カーン(Dust)という当代人気振付家を起用しての新作トリプルビルでした。非常に評価が高く、タマラ・ロホの敏腕ぶりを印象付けるものでした。今回はサドラーズウェルズのほか、マンチェスターとミルトン・キーンズでも上演されます。
http://youtu.be/XIceL-G_2zw


2015年秋の国内ツアーでは、ルドルフ・ヌレエフ振付の「ロミオとジュリエット」が上演されます。
http://www.ballet.org.uk/whats-on/romeojuliet/


大ヒットを記録した「海賊」も帰ってきます。英国のバレエ団で唯一ENBだけがこの作品を上演しています。
http://www.ballet.org.uk/whats-on/lecorsaire/

アリーナ・コジョカル、ワディム・ムンタギロフ、高橋絵里奈さん主演のDVDが収録されており、今年の3月に発売されます。
DVD/Blu-ray
http://www.roh.org.uk/products/le-corsaire-blu-ray-disc-english-national-ballet


このほか、恒例の「くるみ割り人形」「白鳥の湖」の上演もあります。今シーズンには、ENBのアソシエイトアーティストであるジョージ・ウィリアムソン振付の「マイ・ファースト眠れる森の美女」も初演されます。
http://www.ballet.org.uk/whats-on/myfirstballet-sleepingbeauty/


ツアーは、マドリッドとバルセロナがすでに発表されていますが、2016年6月には、パリ・オペラ座、ガルニエ宮にて「海賊」の公演が行われます。


タマラ・ロホのインタビュー
http://www.theguardian.com/stage/2015/feb/17/the-tamara-rojo-revolution-english-national-ballet

さらに次の2016/17シーズンには、なんとアクラム・カーン振付の「ジゼル」という大変興味深い新作が制作される予定です。非常に意欲に満ちている彼女、ロビイスト活動や資金集めにもとても熱心です。タマラはダンサーとしてのキャリアは期待以上に成功しやりたいことはやり尽したとのことですが、カンパニーのためにも、まだしばらくは踊り続けるそうです。

2015/02/18

フィンランド国立バレエのムーミンバレエ続報/追記

以前も、今年3月に初演されるフィンランド国立バレエのムーミンバレエについてご紹介しましたが、ムーミンの公式サイトでもこのバレエが紹介されたところ、かなり反響を呼んでいます。

Moomin and the Comet (フィンランド国立バレエ公式サイト)
http://www.opera.fi/en/productions/moomin_and_the_comet/2681

Moomin_ballet5

ところがムーミン公式サイトの方は今なぜか記事が観られなくなってしまいました。
(こちらはキャッシュです)
http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:_aH2I3Yf2WoJ:https://www.moomin.com/en/blog/comet-moominland-ballet/+&cd=7&hl=ja&ct=clnk&gl=jp

→と思ったら、写真が差し替えられていたようです。
https://www.moomin.com/en/blog/comet-moominland-ballet-2/

しかし、BBCのサイトの方では紹介されているので、着ぐるみ姿のダンサーたちがリハーサルしている写真を観ることができます。可愛いですよね。
http://www.bbc.co.uk/newsbeat/31520798

ついでに、劇場のFacebookにもこんな写真が!
https://www.facebook.com/ooppera/photos/a.243077371715.147740.192041626715/10152544792961716/?type=1&theater1981748_10152544792961716_161226761

今回バレエ化されるのは「ムーミン谷の彗星」。トーベ・ヤンソンによるムーミンの2作目で、1946年に出版されたものです。この原作をアニメ映画化したものは、ちょうど2月28日より日本でも劇場公開されるので、絶妙のタイミングですね。

3月6日が初日で、11公演が予定されていますが、もうソールドアウトになっている日もあるようです。
チケットはここで買えます。

さらに、2月28日には、ヘルシンキのオペラハウスの外で、屋外でこのバレエの一部が無料公演として上演されるそうです。しかも生演奏付きです。寒そうですが、とても素敵な企画ですね。すごく観てみたいです。

Choreography: Anandah Kononen
Music: Panu Aaltio
Sets: Samuli Juopperi
Costumes: Anna Kontek
Lighting design: Mika Haaranen

Cast:
Moomin / Moomintroll boy: Jani Talo / Florian Modan
The Comet: Mai Komori / Daria Makhateli
Sniff: Ilja Bolotov / Asla Jääskeläinen
Snufkin :Stanislav Beljajevski / Evaldas Bielinis
Snorkmaiden / Snorkmaiden girl: Tiina Myllymäki / Maria Baranova
Moominmamma / Trade Aunt Seller: Riina-Kaisa Huovila / Riina Laurila
Moominpappa / The Condor: Wilfried Jacobs / Sergei Popov
Lizard / Tern: Petia Ilieva / Eun-Ji Ha

彗星の役に、Mai Komoriさんとダリア・マッカテリ。このダリア・マッカテリは、元マリインスキー・バレエのソリスト、ダリア・ヴァスネツォーワのことで、元ロイヤル・バレエのデヴィッド・マッカテリと結婚して、フィンランド国立バレエに移籍したようです。ムーミンパパ役のセルゲイ・ポポフも元マリインスキー・バレエの団員。

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追記:フィンランド国立オペラのFacebookに、このバレエの写真がたくさんアップされていました。ますます観たくなりますね!初日は3月6日です。
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.10152772463046716.1073741896.192041626715&type=1

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勅使川原三郎振付オペラ「ソラリス」にニコラ・ル=リッシュ出演

3月に、勅使川原三郎さんが振付を手掛けたオペラ「ソラリス」が、パリのシャンゼリゼ劇場を皮切りにフランスのリールとローザンヌで上演されます。

http://www.st-karas.com/news_jp/

シャンゼリゼ劇場から勅使川原三郎が、創作を委託された新作オペラです。勅使川原さんが台本、照明、美術、衣装など舞台の全ての演出を行います。そして、ニコラ・ル=リッシュが出演するということで、大変注目されます。

創作オペラ「ソラリス」
勅使川原三郎 台本・演出
藤倉大 音楽

出演ダンサー:勅使川原三郎
       佐東利穂子
       ニコラ・ル・リッシュ
       ヴァスラフ・クーニェス

公演日程:
◯シャンゼリゼ劇場(パリ・フランス)3月5,7日
Théâtre des Champs Elysées
http://www.theatrechampselysees.fr/opera/opera-mis-en-scene/solaris
◯リール・オペラ座(リール・フランス)3月24,26,28日
Opéra de Lille
http://www.opera-lille.fr/en/season-14-15/bdd/cat/danse/sid/99480_solaris
◯ローザンヌ歌劇場(ローザンヌ・スイス)4月24日,26日
Opéra de Lausanne
http://www.opera-lausanne.ch/fr/calendrier/saison-2014-15/detail-spectacles/solaris.html

「ソラリス」の題名から想像できるように、原作は、スタニスラフ・レムの小説で、のちにアンドレイ・タルコフスキーによって「惑星ソラリス」として映画化されています。このオペラにも、タルコフスキーの映画からの映像が一部使われているようです。

http://youtu.be/Y1vCFWrofMY

2月16日〜3月22日まで、荻窪のカラス・アパラタスでは、勅使川原三郎さんの新作映像作品の上映会を開催していますが、その中で、「ソラリス」のパリでの創作現場から、勅使川原さんと佐東利穂子さんのインタビューを毎週更新で届けるとのことで、これも非常に興味深いですね。日本でも「ソラリス」見られるでしょうか。

マリインスキー・バレエ2015年来日公演キャスト/追記

新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」の初日を観に行ったら、マリインスキー・バレエ2015年来日公演のチラシが配られていました。まだジャパンアーツのサイトには載っていないようです。

追記:ジャパンアーツのオフィシャルサイトに、キャスト他概要が載りました。
http://www.japanarts.co.jp/blog/blog.php?id=1298

(新国立劇場バレエ団「ラ・バヤデール」は素晴らしかったです。大満足でした。できるだけ感想は書きたいと思っています)


「ジュエルズ」
11月26日(木)18:30 文京シビックホール
 エメラルド マリーヤ・シリンキナ アレクサンドル・セルゲーエフ
         ヴィクトリア・ブリリョーワ、ロマン・ベリャコフ
 ルビー ナデージダ・バトーエワ、キミン・キム、エカテリーナ・コンダウーロワ
 ダイヤモンド クリスティーナ・シャプラン、ティムール・アスケロフ

「愛の伝説」
11月27日(金)18:30 東京文化会館 
 ウリヤーナ・ロパートキナ、アリーナ・ソーモワ、アンドレイ・エルマコフ、ユーリ・スメカロフ
11月28日(土)13:00 東京文化会館
 ヴィクトリア・テリョーシキナ、マリーヤ・シリンキナ、ウラジーミル・シクリャーロフ、コンスタンチン・ズヴェレフ

「ロミオとジュリエット」
11月30日(月)18:30 東京文化会館 
 アリーナ・ソーモワ、ウラジーミル・シクリャーロフ
12月1日(火)18:30 東京文化会館 
 ヴィクトリア・テリョーシキナ、ザンダー・パリッシュ
12月2日(水)13:00 東京文化会館
 クリスティーナ・シャプラン、ティムール・アスケロフ

「白鳥の湖」
12月4日(金)18:30 東京文化会館 
 アリーナ・ソーモワ、キミン・キム
12月5日(土)12:30 東京文化会館 
 オクサーナ・スコリク、ザンダー・パリッシュ
12月5日(土)18:30 東京文化会館
 ウリヤーナ・ロパートキナ、ダニーラ・コルスンツェフ
12月6日(日)13:00 東京文化会館
 エカテリーナ・コンダウーロワ、ティムール・アスケロフ

東京公演以外
 11月20日(金) 三重県文化会館 「ロミオとジュリエット」
 11月21日(土) フェスティバルホール 「白鳥の湖」
 11月22日(日) フェスティバルホール 「ロミオとジュリエット」
 11月23日(月・祝) びわ湖ホール 「白鳥の湖」
 11月29日(日) 愛知県芸術劇場 「白鳥の湖」

チケット発売

夢倶楽部WEB単券 3月14日(土)10:00~ 
夢倶楽部TELセット券 3月15日(日)10:00~
ジャパンアーツぴあネット会員単券 3月22日(日)10:00~
一般 3月28日(土)10:00~


というわけで、前回のチラシではヴィシニョーワの来日も予定されていると書いてあり、「ロミオとジュリエット」に出るのかなと思っていたら今回の出演が無くて、残念です。彼女はこれからはマリインスキーよりも、個人でのコンテンポラリーの活動が中心になってしまうのでしょうか。ヴィシニョーワのジュリエット観たかったです。コールプも来日しません。(コールプは7月22日の田北志のぶさんの「グラン・ガラ」で来日します)

その代わり、前回の来日ではまだ主役級ではなかったフレッシュなダンサーや移籍してきたダンサーが観られます。注目のクリスティーナ・シャプラン、ザンダー・パリッシュ、キム・キミンを主演で観ることができますね。特にクリスティーナ・シャプランは楽しみです。

もちろん、ロパートキナの主演の舞台は絶対に見逃せませんね。年齢的にも全幕はこれが最後になる可能性もあります。

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<追記>
来日公演のオフィシャルサイトができていたので、リンクを貼りますね。
http://www.japanarts.co.jp/mb2015/index.html

2015/02/16

ジェローム・ベル レクチャーパフォーマンス「ある観客 Un Spectateur」

「ザ・ショー・マスト・ゴー・オン」、パリ・オペラ座バレエで上演された「ヴェロニク・ドワノー」などで知られている振付家、ジェローム・ベルのレクチャーパフォーマンス「ある観客 Un Spectateur」が早稲田大学の小野記念講堂で開催されました。

http://web.waseda.jp/enpaku/ex/2527/

振付家としてよく知られているジェローム・ベル(来シーズン、パリ・オペラ座でも新作を上演する予定)の講演ですが、彼自身の作品について語るものではありません。「ある観客」とは、無類のダンス/演劇好きであるジェローム・ベル自身のことであり、観客として目撃してきた様々な舞台について、身振りを交えながら語るものでした。

お金があったら振付や演出などしないで、観客として舞台を浴びるほど観ていたいというジェローム・ベルならではの、観客論。それを通して、私たちは観客としてどのように舞台を観れば良いのか、というヒントがたくさん得られて非常に刺激的で面白いレクチャーでした。また、通訳の福崎裕子さんは、パフォーマーとして「ザ・ショー・マスト・ゴー・オン」に出演したこともあり、舞台について造詣が深く見事な通訳ぶりでした。

高名な演出家といえども、観客としての姿勢というのは、実のところあまり私たちと変わらなかったりするのが面白かったです。つまらない舞台でも、一人のダンサーが大変美しかったので彼女を見ていたら満足してしまったとか、仲間同士でサークルを作って、手分けして舞台を観に行ってSMSで情報交換しているとか、マニアックな一般の観客と似たような姿勢で観ているんですよね。ただし、それゆえ、舞台は観客がいて初めて成立する、ということを彼は誰よりもよくわかっているし、舞台から非常に多くのものを受け取っているということを実感しました。

フィクションである舞台、劇場があるからこそ、私たちは現実の世界を別の視点で観ることができるという視点は、なるほど、と膝を打ちました。そしてフィクションと現実世界を区切るものとして拍手は存在しているということ。何気なく公演の終わりに私たちがしている拍手というものには、このような意味があったんだと目から鱗が落ちました。舞台の見方が大幅に変わりそうです。舞台と人生との関係について深く考えさせられました。


ざっとレクチャーの内容を紹介してみましょう。(テープ起こしをしたわけではなく、聞き書きです。聞き間違いがあるかもしれませんので、その点はご容赦ください)


「劇場の一番良い席に座っているのが観客です。演出家は不安に満ちているものですし、私がもしお金があったら一生、観客として過ごしたいと思います。何も批評せず考えずに作品を楽しむのが理想なんです。でも、生活費を稼ぐために、舞台を観ることができるためには、私は自分自身の舞台を作らなければならないのです。

<時間について>

1992年に、ロバート・ウィルソンの「浜辺のアインシュタイン」という作品の、パリでの再演はソールドアウトでした。席を買えるのなら、売春をしてもいいと思うほどでした。ようやくチケットを手に入れましたが、作品は4時間半で休憩時間なし。その代わり好きな時に外に出ても良いということで、途中出てバーで知り合いと話し、2時間経過していたと思ったら実は30分しか経っていなかったということに驚きました。その作品に対する欲望がありすぎて、実際の上演時間がわからなくなってしまったのです。自分自身の欲望を管理しなければならない、上映時間がどれくらいなのか絶対的に知る必要があると思うようになりました。10分の作品と5時間の作品とは違います。

<空間と舞台技術について>

マース・カニンガムの「レインフォレスト」という作品は、アンディ・ウォーホールが舞台美術を担当しました。ロバート・ラウシェンブルク作の、銀色の布で作った枕にヘリウムを満たして浮かせ、その枕を使ったダンスで今まで体験したことがないものでした。ダンサーが動くと、上に浮いている枕も微妙に動く、ダンサーの作り出す空気による効果、ダンサーが作り出す風、息吹が見事だった。

トリシャ・ブラウンの振付作品で、ドナルド・ジャッドが舞台美術を手掛けた作品は、スクリーンがあるだけだけど、それが鮮やかな色をしていて様々な場所に置かれていました。スクリーンが時々上がり、下がったりすると背景の色が変わります。二人のダンサーの間にスクリーンが下りて、体が動くのが見えると素晴らしい感動がありました。スクリーンの後ろでダンサーが動いていると想像し、スクリーンが上がったら二人のダンサーが動きづづけていました。ニューヨークで私が「ある観客」のパフォーマンスレクチャーを行った時、トリシャ・ブラウン・カンパニーのダンサーが来ていたので聞いてみたのですが、あの時、スクリーンの後ろでダンサーは踊っていなかったとのことです。

<劇場における理解>

ブダペストで数か月滞在した時のことです。ハンガリーのマジャル語は私にはまったく想像がつかない言葉でした。そのブダペストでチェーホフの「三人姉妹」を観に行きました。原作は読んでいなくて、全く何も知らないで観に行ったのですが、驚いたことにすべての内容がわかって感じ取ることができ、緊張感があり、感動しました。言葉がわからないのにすべて理解したのです。フランス語で「三人姉妹」の戯曲を読むと、舞台のことを細かく思い出すことができ、視覚化できました。ひとことも理解していないのにすべて感情も理解できて、レースのハンカチを持っていることで、この女性が結婚したいと思っていると感じることができたのです。理解するというのは正確ではありません。言語を経由しない、何らかの感覚を感じて観客となることができたのです。

ヤン・ファーブルの「Das Gras(頭の中のコップはガラスでできている」という作品は、4人のクラシックバレエのダンサーが、クラシックバレエのシンプルなパを踊るという振付でした。ファーブルはダンスをしたことがないので単純なパで30分、ダンサーたちが前に進み、後ろを向いて同じパで元に戻るというもので、観ていて腹が立ってファーブルを憎んだ。私自身がダンサーだったので、疎外された表象であると感じ、舞台上のダンサーを自分と同一視したからです。このような作品に出演するのは受け入れられないと思いました。しかし一年後パリで、もう一度観に行った。2回目は素晴らしい作品だと感じました。振付を、ダンサーとしてではなくアーティストとして同一視しました。ヤン・ファーブルをアーティストととして感銘を受けたのでした。ダンサーを疎外し、変質させる性格を見せたのでした。

観客であるからと言ってすべてを理解できるわけではありません。そういう思い上がりが舞台を楽しむ邪魔をすることがあります。劇場において、観客として報われない思いをしたことがあります。作品がつまらなかったのです。その時は、私は8人のダンサーのうち一人の美しいダンサーだけを見つめていました。結果的に、作品が終わった後に、私はとても満足したのです。作品を観るというのは、官能性がある、エロティシズム的な行為であり、作品の99%は官能的な関係に基づいていると言えます。

<表象の権力>

クラウディア・トリオーディというイタリア人でパリで活動しているダンサーは、居心地の悪さ、抱えている問題を演じていて、素晴らしい作品でした。マイナスの感情を使って一つの芸術作品を作り上げていました。自分の中の問題を使って芸術を語っていて、動揺しました。彼女本人と話した時には動揺はしなかったのに。

<自分自身と演劇の関係>

観客として舞台、演劇を観る時はただの観客として受け取っています。舞台の上で最悪のことが起きても、フィクションとして受け取ることができます。現実に起きたら耐えられないようなことでも。

ライムント・ホーゲの「私に向かって」
ライムント・ホーゲは、ピナ・バウシュのところでドラマトゥルグとして働いていて、独立しました。私は彼と96年に出会いました。彼は身体障碍者であり、背中も曲がっていて、同性愛者です。ユダヤ人のオペラ歌手、ナチスの被害者、AIDSで亡くなった人などが登場します。その前の年に私は2人の親しい友人をAIDSで亡くしていたこともあり、動揺し打ちのめされました。一人はユダヤ人で一人はキリスト教徒でした。この作品を観ることで、私は彼らの葬式を経験した気がしました。非宗教的な儀式です。すべてが自分の中から出てきてカタルシスを感じました。それまでは葬式は必要ではないと思い彼らの葬儀にも参列しなかったのですが、亡くなった人の儀式が必要だと感じるようになりました。

<子供のための作品>

「ウーグリー・ブーグリー」という8人の赤ちゃんのための作品を観ました。ふくらませて作るお城の中での作品です。生後4か月の私の子供も参加しました。8人の赤ちゃんと、6名のダンサーが踊ります。ダンサーは赤ちゃんの前に座り、赤ちゃんの真似をダンサーがします。赤ちゃんはダンサーが自分の真似をしているのに気が付き、歩き始めます。ダンサー3人が壁に向かって走ると、赤ちゃんは大喜びしていました。赤ちゃんとコミュニケーションに入る方法を彼らは見つけていたのです。

ジャン・クロード・ガロッタの「3世代」という作品では、20分ずつ、3世代のダンサーに踊らせていました。作品は退屈でしたが、観客の子供が、舞台上で踊られているものを真似しだしたのです。舞台上のダンサーと自分を同一視し、自分を舞台の上に探し始めるのです。


アラン・プラテルの「バッハと憂き世」では、実在の独裁者の名前を舞台上で怒鳴りつづけます。ずっと続くので、いらだってしまいます。ヒットラーについて直接語るのはどうかと思ったのです。出演者全員が10分間舞台の上で泣き続けます。表象不可能なものが描かれているので耐えがたく感じました。そうしたことの結果が本当に悲劇的なものであると感じることができました。

ピナ・バウシュの「パレルモ、パレルモ」では4人のダンサーが4組ずつ舞台奥から出てきます。バスケットを抱えてて、ごみがたくさん入っています。そしてカンパニー全員が舞台上でごみを取って音楽に合わせてごみをまき散らします。これを観て、私はもうごみは捨てられないと学び、ゴミひとつ投げ捨てることができなくなりました(笑)。

「ハムレット」の舞台では、ハムレット役をアンゲラ・ディングラーという女優が演じていました。映画「ブリキの太鼓」にも出ていて好きな女優でした。悲劇的な苦しみを感じさせ、有名な「生きるべきか死ぬべきか」の独白のシーンで、私は舞台に上がって彼女を抱きしめたいと思いました。突然声が出てきてそうしろと指示するのです。もう一つ、そうしてはダメだという声も出てきて、それをやめるべきだという声が勝ちました。観客としての理性が私を引き留めてくれたのです。数年後に彼女に出会って一つのプロジェクトを創っていました。休憩時間にこの話を彼女にすると、『とても変なことね』と言われました。

ある舞台では、観客が全員自分の友人だと思いなさい、不幸を友人に打ち明ける、自分を助けてほしいと訴えかけるように、と思って演じました。

<拍手について>

拍手は、目に見える観客の反応です。今回歌舞伎を観たのですが、歌舞伎で俳優が最後に出てきて挨拶をしないのが意味が分からないと思いました。日本の観客の拍手はいつもあまり長く続かないように感じているのは、歌舞伎の伝統があるからなのでしょうか。

パリで、カフカの「流刑地にて」を観ました。これは恐ろしい作品で、スキャンダルになりました。作品が終わらなかったので、誰も拍手をしなかったのです。つまり俳優たちは舞台で挨拶をしなかったのです。「作品を終わらせろ」というデモまで行われたのです。哲学的に舞台は終わるべきであるということで、哲学者協会で集まり、どうしても終わらせるんだとクッションやサンドイッチを持参して劇場にとどまったのです。舞台が終わらないということはあり得ないということを説明していました。フィクションというは終わるべきものであるということです。演劇において、拍手はフィクションを終わらせるものです。舞台の上にフィクションはあり、自分を目覚めさせ、現実に戻る方法として拍手をしてフィクションを終わらせることをやめさせ、厄介ばらいをできなくなるようにしたのです。私は、演出家は素晴らしいと思いました。

作品を気に入らない時でも作品の終わりには拍手をしている自分に気づき、私は苛立ちました。好きでもないのになぜ拍手をしてしまうのか。上演中に自分自身を訓練しようと思いました。好きな作品ではない時に拍手をしないように自分の身体を訓練させました。それができるようになった時に、自分を誇らしく思いました。

フランスの演出家クロード・レジェの「伝道の書」。レジェはSPAC(静岡)でも演出をしています。彼は17歳半のような気がしました。あまりにも革新的でした。一人の俳優を使って、聖書の伝道の書を伝えるものですが、セリフを言えないのです。どうしても言えない、言葉が出てこないのです。これは驚くべき経験でした。観客は誰も拍手をしませんでした。限界のところに迫っていくので、普通の拍手はふさわしくないのです。習慣的ではない、全員が暗黙の一致をしていたかのようでした。

観客は、一人一人が演劇博物館であり、観てきた演劇の残滓が中に存在しているのです。コレクションも自分の中に持っているのでしょう」


(質疑応答)

ライムント・ホーゲの身体性は重要なものです。彼はダンサーとして舞台に立ち、そこから逃れていません。それは芸術的な行為です。障碍者の身体を社会は隠しますが、身体を見せることによって芸術的な素材としています。なるべくさまざまな身体を見せることが大事です。普通と違う身体は、劇場で観るために存在しています。他で観られないものを見せるために、劇場は存在しています。他で見ることができないものを見せるところが芸術の使命です。

「最後の観客」は可能ですか?

舞台は実人生とのかかわりがあるので自分の人生の理解ができます。表象が終わるということはありません。観客がいないと実人生だけが残ります。

観に行く作品を選ぶ基準は?

スペクタクルとかかわりたいという欲望を持っています。なぜわざわざ劇場で観たいという欲望が起きるのでしょうか。劇場で観るというのは高価であり、投資をしなければならないという問題があります。私はパリの友人たちと何を観たかという情報交換のネットワーク、演劇クラブを作り会長となりました。すべてを観るのは不可能なので、担当を決めてSMSで情報交換し、この作品はつまらないからチケットを売ってしまったほうがいいとか、ライバルにチケットを売りつけたほうがいい、などと言い合います。

自分自身には、自分の作品は観客程よくは見えません。そうでなければ、私の作品は人には見せません。自分が作った作品が何なのかは、観客がその作品を観てからわかります。観客の反応を見て、なるほどそういうものだったのか、観客のまなざしが何より語ってくれます。見せることによって自分自身が何なのかを理解できるのです。一番素晴らしい場所は観客席なのです。

The Show Must Go Onでは、最後舞台の上に何もなくて、観客にバラ色の光が当たります。エネルギーは観客席にあり、いつもそこには観客がいて生きているのです。それはとても重要なことなのです。

**********
「劇場は現実世界から遠く離れたところへ私たちを連れていってくれる。その遠いところから私たちは現実世界や自分自身を見直し、問題を提起できる。劇場がなければ、私たちは現実世界を別の視点から見直すことはできない」 そして、その遠いところと現実世界を隔てるものは、拍手であるということなのだと、このレクチャーパフォーマンスで感じることができました。フィクションというものは、人生にとっては不可欠なものなのだと改めて実感した次第です。舞台というものの持つ力と、ジェローム・ベルの、舞台への深い愛も実感しました。

2015/02/14

東京バレエ団の芸術監督に斎藤友佳理氏就任

東京バレエ団の芸術監督に長年プリマとして活躍していた斎藤友佳理氏が8月1日より就任することが発表されました。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/post-524.html#002056

本年8月から芸術監督の職責を飯田宗孝から斎藤友佳理にバトン・タッチし、斎藤友佳理を中心に、レパートリーの選定やキャスティング、日々のリハーサルなどを行って、芸術面の充実を図ります。これまで芸術監督を務めた飯田宗孝は東京バレエ団団長となり、総監督の佐々木忠次を補佐するとともに、バレエ団およびバレエ学校を大所高所から監督いたします。

13日に記者会見があったとのことで、その内容が東京バレエ団のTwitterでツイートされていました。
そこから少し抜粋します。


【斎藤友佳理芸術監督就任会見】斎藤氏

「すでに決まっていることも多く、急速にバレエ団を変えることは難しい。苗を植えてから成木に成長するまでには最低でも5年かかると言われている。時間がかかる仕事だが、そのくらいの長いスパンで東京バレエ団の将来を考えていきたい。

芸術監督に就任して最も大きな最初の仕事になるのが、来年2月に予定されている「白鳥の湖」ブルメイステル版の上演。先日ようやく、版権所有者のブルメイステル氏のお嬢様と上演契約を交わすことができた。

ブルメイステル版「白鳥の湖」の魅力はドラマ性が強化されているところ。ブルメイステルはバレエ以前に演劇を学び「ダンサーは舞台上で登場人物の人生を生きなければならない」という言葉を残している。その言葉どおり非常にドラマティックな演出となっている。

8月に就任した直後には<第3回目黒バレエ祭り>の一環として、子どものためのバレエ「ドン・キホーテ」を上演する。この作品はニュープロダクションといってもワシーリエフ版「ドン・キホーテ」を1時間半くらいにまとめたハイライト版と考えていただければ。

11~12月のシルヴィ・ギエム ラストツアーでは、東京バレエ団初演となるフォーサイスの「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」、キリアンの「ドリームタイム」を上演することが決定した。

ギエムからは東京バレエダンのダンサーにフォーサイス作品を踊らせるべきだというアドバイスをもらっていた。また、キリアンの「ドリームタイム」は私も踊ったとても好きな作品。

2016年度以降の演目についてはまだお話しすることはできないが、東京バレエ団の財産である「ザ・カブキ」「月に寄せる七つの俳句」などのオリジナル作品は定期的に上演し続けていきたい。

また、ラコット版「ラ・シルフィード」、ベジャールの「ボレロ」「春の祭典」のように、限られたバレエ団でしか上演されていない作品も、継続して上演していきたい。その際は、その作品に最もふさわしい指導者に指導していただくことも検討したい。」

(それにしても、東京バレエ団はTwitterの使い方が上手いな、と思います)

ということで、大きなニュースとしては、「白鳥の湖」は、新しくブルメイステル版にするということ、そしてフォーサイスの「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」、キリアンの「ドリームタイム」がレパートリー入りすることです。


今までのゴールスキー版「白鳥の湖」は、2幕の群舞の振付があまりよくなかったという問題点がありました。ブルメイステル版は、モスクワ音楽劇場バレエ、パリ・オペラ座、ミラノ・スカラ座などで踊られている、とてもドラマティックで面白いバージョンです。衣装や装置も一新されるでしょうし、これは楽しみですね。まだご覧になっていない方は、ぜひ今年5月のモスクワ音楽劇場バレエの来日公演で観るといいと思います。

シルヴィ・ギエムのラストツアーで「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」が観られるのも期待できます。これは全編上演すると考えて良いんでしょうね。ギエムの代表的な作品の一つでもあったので、彼女のフェアウェルにふさわしくかっちりと仕上げてくれることでしょう。

引き続き、ベジャール作品など、東京バレエ団ならではのレパートリーを上演し続けるのも良いことだと思います。

ウラジーミル・マラーホフをアーティスティックアドバイザーに迎えてクラス指導などをしてもらっていることにより、東京バレエ団のレベルはかなり上がったようです。斎藤さんも、ロシア国立モスクワ舞踊大学院でバレエ教師の資格を取っていて振付指導で今までも活躍してきたわけですし、ロシア系を中心とした独自の人脈もあるということで、東京バレエ団のこれからに期待したいですね。今までのレパートリーを保ちつつも、やはり古典寄りになっていくという感じなのでしょうか。

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2015/02/13

映画「バレエボーイズ」(トーキョーノーザンライツフェスティバル)

ノルウェーのバレエ少年3人の姿を追ったドキュメンタリー映画「バレエボーイズ」が北欧映画の映画祭、トーキョノーザンライツフェスティバルでプレミア上映されるというので観てきました。ユーロスペースは大盛況で、立ち見も出ていました。

Balletboys

http://www.uplink.co.jp/movie/2015/35274

おりしも、このドキュメンタリーに登場する一人、シーヴェルト・ロレンツ・ガルシアは先日のローザンヌ国際バレエコンクールに出場。惜しくも入賞は逃したものの、ファイナリストとなったのでテレビ放映でも踊る姿は観られるはず。
http://youtu.be/pTKchEweUD4

ルーカス、シーヴェルト、トルゲールの3人はノルウェーでバレエダンサーを目指す14歳の少年たち。3人はとても仲良しで、厳しい稽古の合間にもふざけ合ったり、3人だけの秘密を共有していた。中学卒業を前に進路に迷う3人。もしバレエダンサーになれなかったとしたら?学業との両立は?コンクールで失敗をしてしまったシーヴェルトは、一度はバレエをやめることを決意するものの、やはりバレエが忘れられなくて再び学校の門をたたく。アジア系の彼は、とても明るくてチャーミングな少年。

3人は、国立バレエ学校であるKHiO(オスロ国立芸術アカデミー)への入学を目指す。合格するのは10人という狭き門だったが、晴れて3人とも合格。だが、ルーカスには、英国ロイヤル・バレエスクールのアッパースクールの最終オーディションへの招待状も届く。ロイヤルバレエスクールに入学できれば、プロという夢に一歩近づくことができるけれど、それは、バレエを始めてからずっと仲良しだった2人との別れも意味していた…。

BALLET BOYS / BALLETTGUTTENE - OFFICIAL TRAILER from Indie Film on Vimeo.

バレエというのはとても厳しい世界で、バレエダンサーを目指す子供たちは多くのことを犠牲にするし異性と交際するような余裕はない。でも、そんな中でも、この3人がバレエを学んでいる姿には苦しさはほとんど感じられず、好きなことに打ち込んでいられる幸せ、そして心を許せる大切な仲間がいるキラキラした幸せが感じられた。女の子用のチュチュボンをつけて踊ってみたり、更衣室でふざけ合ったり、生き生きした様子はとてもまぶしい。

しかし、幸せな日々にはいつか終わりが来る。同じレベルで切磋琢磨していたと思ったのに、ルーカスが頭ひとつ抜けていて、ついにノルウェーを離れ、ロイヤル・バレエスクールの合格通知が届く。KHiOの男子生徒は4人しかいないので、一人欠けると男子クラスが開講できるかどうかもわからない。僕たちのことは考えなくていいよ、と言われても、合格してからロンドンへと移るまでの短い間に、少しずつルーカスとほかの2人との間には距離が生まれてくる。これが、大人になる痛み。

実際、急速に背が伸びて中学のうちに180cmにもなったルーカスは、成長痛がつらいと言っていたのだが、それ以上に心が痛かったことだろう。

青春ドキュメンタリーとして大変良くできている映画だけど、同時に、バレエ学校ってこうなっているんだ、ということがわかるのもとても興味深い。KHiOの入学試験では、身体の状態が細かく調べられる。怪我などの後遺症はないか、筋肉の強度はどれくらいなのか。トルゲールの脚が熊のように強い、と医師に言われるくだりはかなり可笑しい。

KHiOはかなり設備が良いのに、学費はなんと無料。バレエだけでなく解剖学、栄養学、さらには学科も勉強できて、大学入学資格も得られるので、万が一バレエの道をあきらめても大丈夫。一方、ロイヤル・バレエスクールは世界中から優秀な生徒が集まり、アッパースクールのオーディションには1200人も応募があり、合格者は30人。それなのに学費は年間4万ユーロもかかるので、ルーカスも親の負担を考え、まずは学費の心配をしていた。

晴れてロイヤル・バレエスクールに入学したルーカスが、寮に入るにあたって、食事や料理についての指導を受けるところも大変興味深い。練習でくたくたになってもきちんと食べられるために作り置きをしておくように、やり方は教えるから、と親切なのである。ロイヤル・バレエスクールでの1日目、いきなり厳しい言葉が教師から飛ぶ様子も見られる。

それでも彼らはまだ夢の入り口に立ったばかり。その続きとして、シーヴェルトのローザンヌ出場の様子がコンクールの中継で観られたのは良かった。

この映画のFacebookページでは、18歳となった今、それぞれのバレエ学校で頑張る彼らの姿もレポートしてくれている。とても容姿に恵まれているルーカスは、どこのバレエ団に入団するのかしら、そしてもちろん、シーヴェルトも、トルゲールも。男の子の成長は早いので、実際の彼らはかなり大人っぽくなっています。
https://www.facebook.com/ballettguttene


この「バレエ・ボーイズ」2月17日(火)21:00~NHK-BS1で放映されます。ただし、放映時間は50分で、劇場版は75分。改めての劇場公開も予定されているようです。
http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/shiawase/01/

『バレエ・ボーイズ』(2014年/ノルウェー語/75分/カラー/ドキュメンタリー/原題:BALLET BOYS)
2015年公開予定
監督:ケネス・エルヴェバック/出演:ルーカス・ビヨルンボー・ブレンツロド、シーヴェルト・ロレンツ・ガルシア、トルゲール・ルンド、他
配給・宣伝:アップリンク

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2015/02/11

ナショナル・バレエ・オブ・カナダの2015-16シーズン、今年もワールド・バレエ・デー開催

ナショナル・バレエ・オブ・カナダの2015-16シーズンが発表されています。

http://national.ballet.ca/Tickets/Upcoming

芸術監督カレン・ケインがシーズンを発表している動画
http://youtu.be/q52sF-n9qEU

「ジゼル」では、江部直哉さんのアルブレヒトをちらっと見ることができます。「くるみ割り人形」はスヴェトラーナ・ルンキナとエヴァン・マッキー。

November 14—22, 2015 
「冬物語」 クリストファー・ウィールドン振付(新制作)
ロイヤル・バレエとの共同制作

November 25—December 5, 2015
and March 16—20, 2016
「ロミオとジュリエット」 アレクセイ・ラトマンスキー振付

December 12, 2015—January 3, 2016
「くるみ割り人形」 ジェームズ・クデルカ振付

March 2—6, 2016
「ラ・シルフィード」 ヨハン・コボー振付 (新制作)

March 9—13, 2016
「Cacti.」 アレクサンダー・エックマン振付(新制作)、「ルビー」「フォー・テンペラメンツ」ジョージ・バランシン振付

June 4—12, 2016
「Le Petit Prince (星の王子様)」ギョーム・コテ振付(世界初演)

June 15—19, 2016
「ジゼル」 ピーター・ライト振付


そして10月1日には、去年大好評を博した「World Ballet Day」が再び開催されます。


新国立劇場バレエ団並に上演作品数は少ないのですが、新制作3作品の世界初演1作品なので、なかなか頑張っている印象があります。

ウィールドンの「冬物語」とコテの「星の王子様」はすでに昨年発表されていましたが、コボー版「ラ・シルフィード」が加わりました。

またアレクサンダー・エックマンの「Cacti」が入ったのは興味深いところです。これはNDTで初演された作品で、ボストン・バレエ、アトランタ・バレエとの共同制作です。英国での上演に際しては、ローレンス・オリヴィエ賞にもノミネートされました。
http://youtu.be/FZAde2xVUrg

カンパニーのウェブサイトもリニューアルされて、スタイリッシュになりました。
http://national.ballet.ca/Homepage

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2015/02/10

『ディアギレフ・バレエ年代記 1909ー1929』セルゲイ・グリゴリエフ 著

『ディアギレフ・バレエ年代記 1909ー1929』

セルゲイ・グリゴリエフ 著
薄井憲二 監訳、森瑠衣子 ほか訳

http://www.heibonsha.co.jp/book/b178293.html

セルゲイ・ディアギレフのバレエ・リュスの設立当初から、ディアギレフが1929年に亡くなるまで、舞台監督として、そして彼の右腕として彼を支えたのがセルゲイ・グリゴリエフ。ディアギレフの前を多くのダンサーや振付家、スタッフが来ては通り過ぎて行ったが、最初から最後まで彼のところにいたのは、唯一グリゴリエフだった。

作品の構想、振付、リハーサル、舞台化、宣伝、興行とすべてにかかわっていてすべてを知り尽くしている彼ならではの逸話の数々をここで読むことができる。

マリインスキー劇場のキャラクターダンサーだった彼が、友人のミハイル・フォーキンの紹介でディアギレフに出会ったのが1909年。前の年にディアギレフがパリでのオペラ「ボリス・ゴドノフ」を成功させ、今度はバレエも含めたプログラムをパリで上演しようという時だった。ディアギレフのアパルトマンで関係者を集めて開かれた「ディアギレフ委員会」のくだりからワクワクさせられる。

第一回のバレエ・リュスのパリ公演が成功裏に終わった時、グリゴリエフは、「このパリの出来事はお伽噺だった、夢だったんだ、二度目はないのだ」と思いつつディアギレフと別れたという。しかし、それは、バレエの歴史、アートの歴史を変えた20年間の始まりだったのだ。

ディアギレフは天才的な興行師であり、また新しいものを先取りしたり、様々な分野の芸術を合せて新しい芸術を作り上げる素晴らしい才覚を持っていた。その一方で、あまりにも先進的なところがあったり、独断的なところもあって彼についていけない人たちも出てくる。芸術家同士なので、エゴのぶつかり合いもある。特定のダンサーを偏愛したことで軋轢も生まれた。

バレエ・リュスは最初はフォーキンのエキゾチックな作品が人気を呼んだが、やがてディアギレフは、フォーキンの作品は古いと感じるようになり、ニジンスキーの斬新さに魅かれるようになる。結果的にフォーキンはバレエ・リュスを去る。ニジンスキーは、ロモラと結婚したことでディアギレフを激怒させ、バレエ・リュスを解雇される。その後にディアギレフのお気に入りとなったレオニード・マシーンにしても、振付家、ダンサーとして大成したもののやはり後にディアギレフに追われる。ディアギレフの作品を美術面で支えたブノワやバクストにしても、ディアギレフとのちに決裂している。特に振付家が去った後、次の振付家を探すのには、ディアギレフも、グリゴリエフも大変苦労をした。

このように、ディアギレフは魅力的な人物ではあるものの、決して一筋縄ではいかず難しい面も多々あったのだが、グリゴリエフは一貫として彼を支え続けた。芸術的に妥協することを決してしないディアギレフは、それぞれのプロダクションに湯水のようにお金を注ぎ、観客動員には成功しても財政は常に火の車であったし、赤字のかたに衣装や舞台装置を差し押さえられたり、劇場を確保するのにも苦労した。人間関係も複雑怪奇で、様々な足の引っ張り合いがあった。そういった裏方の仕事を一手に引き受けたのがグリゴリエフである。

しかし、このように想像を絶する苦労を重ねたグリゴリエフなのだが、この本の中には彼の泣き言はほとんどない。淡々と仕事をこなし、そして様々な労苦にしても、終わってみればまるで学園祭がずっと続いていて本当に楽しかった、革命を起こすことができて幸せだった、という思いが伝わってくる。特に誰に肩入れすることもなく、公平な観点で見ていたのがわかるし、エゴイストでなかったことが、これだけ長い期間、バレエ・リュスを支え続けることができた理由だろう。ビザが下りずヴェネチアでのディアギレフの葬儀に参列できなかった彼が、8年後にようやく墓参りを果たすことができたくだりは感動的だ。

バレエ・リュス関係の書物の多くは伝記で、記録と取材を基に書かれているのだが、この本は、当事者の記録ということで非常に貴重である。ニジンスキーについても、多くの本では彼がバレエ・リュスを解雇された時の記述で終わっているのだが、実はその後も何回かアメリカのツアーに参加し、様々なトラブルを経て、ついには狂気に陥ってしまった様子が、第三者の目から冷静に(しかし同情的に)描かれている。

「年代記」とあるように、バレエ・リュスの20年間、1年ずつが時系列につづられている。どの一年も平穏なことは何もなく波乱万丈に過ぎていき、当事者は大変だっただろうが、読む立場の私たちにとっては一度読みだしたら止まらなくなるような面白さにあふれている。実際、読み終わった後で、もう一度最初から読み始めてしまったほどの面白さなのだ。

そしてバレエ・リュスを深く知り、愛情を持っている薄井憲二氏が監訳を手掛けたことで、この書物はより生き生きと躍動感があり、読みやすい一冊に仕上がった。

ディアギレフ・バレエ年代記 1909-1929ディアギレフ・バレエ年代記 1909-1929
セルゲイ グリゴリエフ Sergey Grigoriev

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K-BALLET COMPANY「海賊」にニーナ・アナニアシヴィリ出演

K-BALLET COMPANYは、2015年5月30日(土)~6月20日(土)に「海賊」を上演します。

http://www.k-ballet.co.jp/performances/2015-corsaire

Bunkamuraオーチャードホール

5月30日(土) 12:30、メドーラ:白石あゆ美 コンラッド:宮尾俊太郎 アリ:福田昂平 グルナーラ:浅野真由香
5月30日(土) 16:30 メドーラ:SHOKO コンラッド:S.キャシディ アリ:池本祥真 グルナーラ:浅川紫織
5月31日(日) 14:00 メドーラ:SHOKO コンラッド:S.キャシディ アリ:池本祥真 グルナーラ:浅川紫織
6月13日(土) 17:00 メドーラ:N.アナニアシヴィリ コンラッド:遅沢佑介 アリ:井澤諒 グルナーラ:小林美奈
6月14日(日) 14:00 メドーラ:N.アナニアシヴィリ コンラッド:遅沢佑介 アリ:井澤諒 グルナーラ:小林美奈

神奈川県民ホール
6月20日(土) 14:00 メドーラ:N.アナニアシヴィリ コンラッド:遅沢佑介 アリ:井澤諒 グルナーラ:小林美奈

主催
TBS/Bunkamura/神奈川県芸術協会/神奈川県民ホール

問合せ先
チケットスペース 03-3234-9999
http://www.ints.co.jp

一般発売日
2015年3月7日(土)

というわけで、ニーナ・アナニアシヴィリがメドーラ役でゲスト出演です。以前、ニーナはK-BALLETの「白鳥の湖」でもゲスト出演し、50歳にして見事なグランフェッテを披露しましたが、今回もきっと素晴らしい踊りを見せてくれるはず。これは見逃せない機会ですね。SHOKOさんも久しぶりに日本で踊ってくれます。熊川さんが今回は出演しないのがちょっと残念ですが、代わりにニーナやSHOKOさんに魅せていただきましょう。

熊川さん演出の「海賊」はエンターテインメント要素たっぷりでアリなど男性ダンサーが大活躍し、誰もが楽しめる作品になっています。

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なお、現代バレエ界の至宝「熊川哲也とKバレエ展」 が松屋銀座で開催されるそうです。

http://banq.jp/42369

2015年2月26日(木)~3月9日(月)まで。
会場では、全11作品の衣装や、舞台美術模型、衣装デッサンなど現代バレエ界の財産とも言うべき貴重な品を公開。そのほか、熊川氏に関わる歴史的にも価値のあるコレクションなどを含む約140点が展示されるそうです。

【松屋銀座「熊川哲也とKバレエ展」】
期間: 2015年2月26日 〜 3月9日
会場: 松屋銀座8階イベントスクエア
時間:10時~20時
 *最終日は17時まで
 *入場は閉場の30分前まで
主催:TBS / K-BALLET
特別協賛:株式会社オンワードホールディングス
協賛:チャコット株式会社
問 合 せ:松屋銀座 TEL03-3567-1211(大代表)

2015/02/08

第43回ローザンヌ国際バレエコンクールの結果/追記有

第43回ローザンヌ国際バレエコンクール、ファイナルが行われ、先ほど結果が発表されました。

伊藤充さんが3位、金原里奈さんが5位と日本人出場者も頑張りました。

http://www.prixdelausanne.org/2015-prize-winners/

1位 Harrison Lee (オーストラリア)The McDonald College of Performing Arts, Sydney, Australia
2位 Park Jisoo (韓国)Seoul Art High School, South Korea
3位 伊藤充 (日本) アクリ・堀本バレエアカデミー ポルトガル国立リスボン・バレエ学校
4位 Miguel Pinheiro (ポルトガル) ポルトガル国立リスボン・バレエ学校
5位 金原里奈 (日本)水野弘子バレエ学園、モナコ プリンセスグレース・バレエアカデミー
6位 Julian McKay (アメリカ) ボリショイ・アカデミー
コンテンポラリー賞 Miguel Pinheiro (ポルトガル)
ベストスイス賞と観客賞 Lou Spichtig (スイス) チューリッヒ・ダンスアカデミー

追記:ファイナルの映像を当分の間、フルで観ることができます。見逃した方はぜひ。
http://concert.arte.tv/de/finale-des-43-prix-de-lausanne

さらに追記:ファイナルの全編が、YouTubeのオフィシャルチャンネルにアップされています。パフォーマンスまで観られるのが嬉しいですよね。
http://youtu.be/-DtcCC7dJhs

全体的なレベルもとても高く、観ていて楽しいファイナルでした。1位のハリソン・リーは、「白鳥の湖」のパ・ド・トロワを踊りました。身体がとてもやわらかくて伸びやかで、きれいに伸びたジュッテ・アントルラッセ、柔らかく正確な着地ときっちりした技術の持ち主。まだ15歳ということで、将来が非常に楽しみです。昨年のYAGPでもグランプリを獲得しています。2位のパク・ジスーは古典のガムザッティもとても良かったのですが、コンテンポラリーの「春の祭典」で見せた激しさの中にある表現力が凄まじくてインパクトが強かったです。

3位の伊藤充さんは、「白鳥の湖」3幕ヴァリエーション。日本人男性も王子様を踊れることを証明しました。非常に跳躍が高く正確なテクニックの中に気品がありました。4位のミゲル・ピネイロはコンテンポラリー賞も取っただけあって、コンテでの表現が印象的でした。ラテン男子ならではの色気がある人です。

5位の金原里奈さんは、とても可愛らしいジゼルで、キャラクターへのなり切り方が素晴らしかった、短いヴァリエーションの中でジゼルとして存在していました。足の甲もとてもきれいだし回転は正確。ちょっとだけミスがありましたが、そんなものは問題にならないくらいの表現力で惹きつけられました。6位のジュリアン・マッケイは、スター性はピカいちでアルブレヒトはひたすら美しく、コンテンポラリーも長い手足をシャープに使っての表現が印象的でした。

観客賞とベスト・スイス賞のルー・スピティグは、小柄で金髪のとても可愛らしいダンサー。愛らしさの中に気品があるオーロラも素敵でしたが、コンテンポラリーの「春の祭典」での、打って変わっての激しさと情熱も見事でした。

惜しくもスカラシップを獲得できなかった速水渉悟さんは、古典で少しミスをしたのが響いたのかもしれませんが、コンテンポラリーはしなやかで長い肢体を生かした表現が素晴らしく、入賞してもおかしくないレベルでした。

ローザンヌ国際バレエコンクールは、あくまでも出発点ですが、ファイナリスト、そしてスカラシップ受賞者は素晴らしいスタートを切れたことだと思います。皆さんのこれからの活躍を楽しみにしたいと思います。

ローザンヌ国際バレエ:伊藤充さん3位 金原里奈さん5位
http://mainichi.jp/select/news/20150208k0000m040121000c.html


伊藤充さん3位、金原里奈さんが5位 ローザンヌバレエ
http://www.asahi.com/articles/ASH276675H27UHBI019.html

写真いろいろ。
http://m.huffpost.com/jp/entry/6638192?ncid=tweetlnkjphpmg00000001

公式サイトに準決勝の写真がたくさん
http://www.prixdelausanne.org/gallery/2015-2/selection-day/

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追記:入賞者のヴァリエーションも続々アップされています。
金原里奈さん
「ジゼル」http://youtu.be/9ANCQ4q1qCY
コンテンポラリー「サラバンド」http://youtu.be/WuI8MiMDERs

伊藤充さん
白鳥の湖3幕 http://youtu.be/SCsENjI3HLg
コンテンポラリー「ソロ・フォー・ディエゴ」 http://youtu.be/edxnAriYvDk

2015/02/07

第14回世界バレエフェスティバル 日程・入場料決定

第14回世界バレエフェスティバル 日程・入場料が決定されてという発表がありました。

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/14-1.html#002051

そのままコピペしたものを貼りますね。

3年に一度東京で開催される、バレエの祝典、世界バレエフェスティバル。
このたび、今夏に開かれる第14回世界バレエフェスティバルの日程、入場料、予定される出演者が決定いたしましたので、お知らせいたします。


■公演日程

【Aプロ】 
8月1日(土) 2:00p.m.
8月2日(日) 2:00p.m.
8月4日(火) 6:00p.m. 
8月5日(水) 6:00p.m.
8月6日(木) 6:00p.m.

【Bプロ】 
8月8日(土) 2:00p.m.
8月9日(日) 2:00p.m.
8月11日(火) 6:00p.m. 
8月12日(水) 6:00p.m.
8月13日(木) 6:00p.m.


■会場:東京文化会館


■入場料(税込)
S=¥26,000  A=¥23,000 B=¥20,000  C=¥16,000  D=¥12,000  E=¥8,000

■予定される女性舞踊手
シルヴィア・アッツォーニ / アリーナ・コジョカル / オレリー・デュポン / マリア・アイシュヴァルト /
ミリアム・ウルド=ブラーム / タマラ・ロホ / ディアナ・ヴィシニョーワ / アマンディーヌ・アルビッソン(Aプロのみ) 他

■予定される男性舞踊手
マチアス・エイマン / ヨハン・コボー / マニュエル・ルグリ / ウラジーミル・マラーホフ / スティーヴン・マックレー / エルヴェ・モロー / マライン・ラドメーカー / アレクサンドル・リアブコ /
マチュー・ガニオ(Aプロのみ) 他

※表記の出演者は2015年2月6日現在の予定のもので、今後やむを得ない事情により変更となる場合が
あります。予めご了承ください。尚、変更に伴うチケットの払い戻し、公演日・券種のお振替はいたしません。
正式な出演者・演目は、当日発表とさせていただきます。
※未就学児童のご入場はお断りいたします。

**********
これっておそらくフルメンバーではなくて、一部のみの発表ですよね。ロシア系のダンサーがほとんどいないし、人数も少ないですし。
マチアス・エイマン、シルヴィア・アッツオーニとアレクサンドル・リアブゴの出演は嬉しいです。追加メンバーの発表も楽しみですね。
あと、全幕プロが誰が主演するのか、そして日程も、早く知りたいですね。

ミハイル・バリシニコフがリル・バックとCMで共演

今も現役で活動しているバレエ界のスーパースター、ミハイル・バリシニコフが、ファッションブランドrag & boneのCMで、ストリート・ダンサーのリル・バックと共演しています。そのかっこいいこと。

02032015hp1

http://youtu.be/2rFRTyfwBH8

バレエ的な動きはほとんどないのに、しなやかでスピーディな動きは年齢を感じさせません。年を重ねたことによって加わって、ますます魅力を増しているのがわかります。

ミーシャがモデルを務めている写真もいくつかここに。
http://www.rag-bone.com/collections/mens-fall-winter-2015?hp=1

Baryshnikov and Lil Buck Star In the New rag & bone Ad
http://dancemagazine.com/blogs/admin-admin/6315

リル・バックはストリードダンサーですが、バレエ的な動きも取り入れています。

ストリート・ダンサー、リル・バックさんのバレエ的動き
http://jp.wsj.com/articles/SB12377912224764574491004580261441401641172

ジャンルは違えども、彼もとても素敵なダンサーですね。以前にはヨーヨー・マと共演するなど、ジャンルを超えた活躍を見せています。

彼の凄い踊りが観られるのはこちら。
Jacob Sutton: Lil Buck
https://www.nowness.com/story/jacob-sutton-lil-buck


なお、バリシニコフは、今年夏のスポレート・フェスティバル(イタリア)で、ニジンスキーの日記に基づいた作品に出演する予定だそうです。ロバート・ウィルソンの演出によるもので、ダンスではないのですが動きは振付けられているとのこと。
Mikhail Baryshnikov and Robert Wilson Take On Nijinsky
http://artsbeat.blogs.nytimes.com/2014/11/27/mikhail-baryshnikov-and-robert-wilson-take-on-nijinsky/?_r=1

ローザンヌ国際バレエコンクール ファイナリスト決定

ローザンヌ国際バレエコンクールの準決勝が現地時間の2月6日に行われ、実に7時間もかかりましたが、ファイナリストが発表されました。

http://www.prixdelausanne.org/wp-content/uploads/2014/06/Finale-par-ordre-de-dossard.pdf

日本からは、金原里奈さん(プリンセスグレースアカデミー)、伊藤充さん(ポルトガル国立コンセルヴァトゥール)、速水渉悟さん(ジョン・クランコスクール)が明日の決勝に進出します。

この3人を詳しく紹介した記事。3人ともヨーロッパの学校で学んでいます。

ローザンヌバレエ、準決勝で日本人3人が選出
http://www.swissinfo.ch/jpn/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%B3%E3%83%8C%E3%83%90%E3%83%AC%E3%82%A8-%E6%BA%96%E6%B1%BA%E5%8B%9D%E3%81%A7%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%EF%BC%93%E4%BA%BA%E3%81%8C%E9%81%B8%E5%87%BA/41260272

このほか、注目の出場者としては、ボリショイ・アカデミーのアメリカ人生徒ジュリアン・マッケイ。弟もボリショイ・アカデミーの生徒で姉はミュンヘン・バレエの団員マリア・サシャ・カーンというバレエ一家。ソチ、イスタンブールのコンクールで賞を獲得しており、また容姿が非常に美しいことでも脚光を浴びています。

ドキュメンタリー映画「バレエ・ボーイズ」の主人公3人のうちの一人、Syvert Lorenz Garcia も残りました。

練習中の時も、そしてセミファイナルでも大変美しいと感じたのが、ドリアードの女王を踊った韓国のLee GaYeongです。速水渉悟さんのバジルも素晴らしかったですね。

あまりにも長い時間だったので、全部をしっかりと観ているわけではないのですが、最近のローザンヌはコンテンポラリーが強い子が残ると言われているように、コンテンポラリーの方が皆さんイキイキしているように感じられました。

残念ながら、ミコ・フォガティさんは残れませんでした。 しかしながら、ファイナルに残ることができなくても、最終日のネットワーキングフォーラムで、セミファイナリストたちは様々なバレエ学校やバレエカンパニーと出会うことができ、ここで留学先や研修先を決める人も多いようです。

決勝は土曜日、日本時間夜11時から、結果発表は午前2時です。
http://www.prixdelausanne.org/multimedia/live-streaming/

Group A

Bianca Scudamore Australia

Classical Variation Sleeping Beauty, Lilac Fairy, Prologue - Piotr Tchaïkovsky - Marius Petipa
Contemporary Variation Touch, Feel, Sense - Hans Zimmer - Louise Deleur

Sierra Armstrong United States

Classical Variation La Bayadère, 3rd soloist variation - Léon Minkus
Contemporary Variation Saraband - J.-S. Bach - Goyo Montero

Park Seon Mee South Korea
Classical Variation Paquita, First girl's variation, pas-de-trois Act 1 - Léon Minkus - Marius Petipa
Contemporary Variation Touch, Feel, Sense - Hans Zimmer - Louise Deleur

Amber Ray United States
Classical Variation Sleeping Beauty, Lilac Fairy, Prologue - Piotr Tchaïkovsky
Contemporary Variation Touch, Feel, Sense - Hans Zimmer - Louise Deleur

Rebecca Blenkinsop Australia

Classical Variation Sleeping Beauty, Lilac Fairy, Prologue - Piotr Tchaïkovsky - Marius Petipa
Contemporary Variation Touch, Feel, Sense - Hans Zimmer - Louise Deleur

Bret Coppa  United States

Classical Variation Coppelia, Franz Act 3 - Léo Delibes - Arthur Saint-Léon
Contemporary Variation Desde Otello - Claudio Monteverdi - Goyo Montero

Acevedo Austen United States
Classical Variation Coppelia, Franz Act 3 - Léo Delibes - Arthur Saint-Léon
Contemporary Variation Solo for Diego - Mikis Theodorakis - Richard Wherlock

Lee Harrison Australia

Classical Variation Swan Lake, Solo from the pas-de-trois, Act 1 - Piotr Tchaïkovsky - Marius Petipa
Contemporary Variation Solo for Diego - Mikis Theodorakis - Richard Wherlock

Navrin Turnbull Australia

Classical Variation Coppelia, Franz Act 3 - Léo Delibes - Arthur Saint-Léon
Contemporary Variation Desde Otello - Claudio Monteverdi - Goyo Montero

Jarod Curley United States

Classical Variation Coppelia, Franz Act 1 - Léo Delibes - Arthur Saint-Léon
Contemporary Variation Desde Otello - Claudio Monteverdi - Goyo Montero

Group B

Rina Kanehara Japan

Académie Princesse Grace, Monte-Carlo, Monaco
Classical Variation Giselle, Variation Act 1 - Adolph Adam - Jean Coralli et Jules Perrot
Contemporary Variation Saraband - J.-S. Bach - Goyo Montero

Park Jisoo   South Korea

Classical Variation La Bayadère, Gamsatti - Léon Minkus - Marius Petipa
Contemporary Variation Le Sacre du Printemps - Igor Stravinsky - Richard Wherlock

Lou Spichtig   Switzerland

Classical Variation Sleeping Beauty, Aurora Act 3 - Piotr Tchaïkovsky - Marius Petipa
Contemporary Variation Le Sacre du Printemps - Igor Stravinsky - Richard Wherlock

Lee GaYeong South Korea

Classical Variation Don Quixote, Queen of the Dryads Act 2 - Léon Minkus - Marius Petipa
Contemporary Variation Touch, Feel, Sense - Hans Zimmer - Louise Deleur

Miguel Pinheiro Portugal

Classical Variation Sleeping Beauty, Prince Desiré Act 3 - Piotr Tchaïkovsky - Marius Petipa
Contemporary Variation Desde Otello - Claudio Monteverdi - Goyo Montero

Julian MacKay United States

Bolshoi Ballet Academy, Moscow, Russia
Classical Variation Giselle, Prince Albrecht Act 2 - Adolph Adam - Jean Coralli et Jules Perrot
Contemporary Variation Solo for Diego - Mikis Theodorakis - Richard Wherlock

Jack Thomas United States

Houston Ballet II, Houston, USA; Houston Ballet Academy, Houston, USA
Classical Variation Nutcracker, Nutcracker Prince Act 2 - Piotr Tchaïkovsky - Marius Petipa
Contemporary Variation Out of Breath - Ezio Bosso - Louise Deleur

Mitsuru Ito Japan

Conservatório Nacional, Lisbon, Portugal; Acri Horimoto Ballet Academy, Tokyo, Japan
Classical Variation  Swan Lake, Black Swan Siegfried Act 3 - Piotr Tchaïkovsky - Marius Petipa
Contemporary Variation Solo for Diego - Mikis Theodorakis - Richard Wherlock

Shogo Hayami Japan
 
John Cranko Schule, Stuttgart, Germany
Classical Variation  Don Quixote, Basilio, pas-de-deux - Léon Minkus - Marius Petipa
Contemporary Variation Solo for Diego - Mikis Theodorakis - Richard Wherlock

Syvert Lorenz Garcia  Norway

Oslo National Academy of the Arts, Norway
Classical Variation Don Quixote, Basilio, pas-de-deux - Léon Minkus - Marius Petipa
Contemporary Variation Solo for Diego - Mikis Theodorakis - Richard Wherlock

なお、評価ですが、以下の4項目が各25%ずつ加味されるとのことだそうです。
1. バレエクラス評価
2. コンテンポラリークラス評価
3. 古典ヴァリエーション評価
4 .コンテンポラリー評価

4日目の動画も公開されています。男子のクラシックヴァリエーションのリハーサルなど。
http://youtu.be/YHGMEIkLI2o

2015/02/06

ローザンヌ国際バレエコンクール、準決勝中継中

ローザンヌ国際バレエコンクールの準決勝、ただいま中継中です。

http://concert.arte.tv/fr/selections-du-43eme-prix-de-lausanne

日本時間では午後6時から午前1時まで、決勝進出者が発表されるのは午前2時です。結果が楽しみですね!

皆さん頑張ってほしいですね~。


追記:準決勝の様子も、ARTEのサイトでしばらく見ることができます。全部で310分あります。

http://concert.arte.tv/fr/selections-du-43eme-prix-de-lausanne

2015/02/04

パリ・オペラ座バレエの2015/16シーズン、オフィシャルサイトのリニューアル

パリ・オペラ座の2015/16シーズンが2月4日に発表されました。

ニューヨークタイムズに速報記事が載っているので、これとTwitterの速報を併せてまとめてみます。

http://www.nytimes.com/2015/02/05/arts/international/new-leaders-at-paris-opera-unveil-an-ambitious-future.html

追記:公式サイトにもやっと載りました。
http://saison15-16.operadeparis.fr/en/programme

バンジャマン・ミルピエが芸術監督に就任して、初めてプログラミングをするシーズン。

最大のニュースは、フォーサイス・カンパニーを退団しアメリカに移ったウィリアム・フォーサイスが、2016年に新作を創り、さらに毎シーズン3か月ずつオペラ座で働き常任振付家となることです。

自身のカンパニー以外にフォーサイスが新作を創るのは、1999年以降では初めてとなります。新しくパリ・オペラ座・アカデミーという機関が設立され、ここでフォーサイスは振付家、音楽家、舞台監督や歌手を育てるトレーニングプログラムで指導を行います。

全幕の作品は3つのみ。ヌレエフ版「ラ・バヤデール」「ロミオとジュリエット」、そして現行のパトリス・バール版「ジゼル」。

その一方で、多くの新作がレパートリー入りします。実に19作品。NYCBの団員であるジャスティン・ペック(新作と、旧作 “In Creases”), ウェイン・マクレガー、ジェローム・ベルとミルピエ。そして、さらにバランシン(「テーマとヴァリエーションなど3作品)、ボリス・シャルマッツ、アンヌ・テレサ・ド・ケースマイケル、クリストファー・ウィールドン、ジェローム・ロビンス(Opus 19, Goldberg Variations, Other Dancesと3作品)、アレクセイ・ラトマンスキー、そしてマギー・マランの作品です。

ミルピエは、音楽の重要性を強調し、マクレガーの新作はブーレーズの“Anthème II”に振付けられたもので、この作曲家にオマージュを捧げたミックスプロで上演されると言明。 また、ジャスティン・ペックの新作はプーランクの「2台のピアノとオーケストラのための協奏曲」を使っているそうです。

彼のNYCBでの多くの新作を踊った経験が、今回のプログラミングに影響を与えているようで、確かにパリ・オペラ座というよりはNYCBとしか思えないような作品が並んでいます。ラトマンスキー振付の「セブン・ソナタ」(ABTで初演)、そしてNYCBのみならず世界中のバレエ団で踊られているクリストファー・ウィールドンの「ポリフォニア」。ラトマンスキーは2016-7シーズンにはオペラ座のために、Rシュトラウスの「Schlagobers(ホイップクリーム)」を使って全幕を振付けるそうです。

ミルピエと総裁ステファン・リスナーは、“3e Scene,” または 「サード・ステージ」というデジタルプラットフォームをパリ・オペラ座のウェブサイトに開設することも発表。作曲家、振付家、演出家、ヴィジュアルアーティスト、映画監督や作家が新作を発表できるものだそうです。

オペラとバレエをより密接にしようという意図のもとに、(そもそもミルピエを連れてきたのはリスナーであった)チャイコフスキーのオペラ「イオランタ」と「くるみ割り人形」を合わせたダブル・ビルも予定されているそうです。この「くるみ割り人形」は、アーサー・ピタ、シディ・ラルビ・シェルカウイ、リアム・スカーレット、エドゥアール・ロック、ミルピエの5人の振付家の共同作業で、ディミトリ・チェルニアコフが演出し、シェーンブルグの音楽にも焦点を当てるそうです。もともと、初演当時「イオランタ」と「くるみ割り人形」は同時上演だったという歴史的な背景があり、それに倣った上演と言えそうです。

シャルマッツによる新作がシーズンのオープニングとなり、ガルニエのパブリックエリアで、20人のダンサーが様々な20世紀バレエからのソロを踊るというものになるそうです。また、恒例のデフィレも音楽を一新し、ワーグナーの「タンホイザー」を使用。

ゲストカンパニーとしては、ENBが2016年6月21日~25日に「海賊」を上演し、さらにバットシェバ舞踊団(1月5日から9日)、ローサス(2月26日~3月6日)がオペラ座で公演を行いますが、ローサスの公演はポンピドゥーセンターで行われるそうです。

また、ツアーですが、来日公演は2017年に予定されており、2018年にはアメリカへの大規模なツアーもあるそうです。毎年、フランス国内一都市への地方公演もあるそうです。


なお、オフィシャルサイトのエトワールたちを紹介するページも今までと一新されました。一人一人の紹介映像もついています。
http://saison15-16.operadeparis.fr/artistes-les-etoiles


一言でいえば、パリオペラ座をNYCBにするつもり?ということですね。オペラ座の伝統、フランスバレエの伝統はどうなってしまうのでしょう。フランス人の振付家はミルピエとマギー・マランだけ、一方でアメリカ人はフォーサイスはじめ、バランシン、ロビンス、ペック。アメリカ人ではないもののアメリカを中心に活動しているラトマンスキー、ウィールドンもその中に入れていいでしょう。ジャスティン・ペックなんて、オペラ座で2作品も上演するほどの実力も実績もない、まだ新進のひたすらアメリカンな振付家なので、どうして上演されるのか大いに疑問です。ウィールドンにしてもラトマンスキーにしても、世界中のバレエ団で作品が上演されているので、何もわざわざオペラ座で取り上げるべき振付家なのか、疑問に思ってしまいます。

ただし、フォーサイスが常任振付家として活動することや、パリ・オペラ座・アカデミーの創立は注目すべき取組ではないかと思います。

というわけで、時系列に上演作品をまとめて行きましょう。


オープニング・ガラ(9月24日)

デフィレ、「テーマとヴァリエーション」(バランシン、20年ぶりのリバイバル)、ミルピエの新作


「シャルマッツ振付、20人のダンサーによる20世紀作品」9月22日から10月11日まで13公演 
ガルニエのパブリックスペースにて。新作。


「バランシン、ロビンスとミルピエの夕べ」 2015年9月~10月、ガルニエで11公演

「テーマとヴァリエーション」(バランシン)「 Opus 19 / The Dreamer」(ロビンス、カンパニー初演)、ミルピエの世界初演作品


「アンヌ・テレサ・ド・ケースマイケルの夕べ」2015年10月21日~11月8日、ガルニエで15公演

「Quartet No. 4」「大フーガ」「浄められた夜」,すべてカンパニー初演、ケースマイケル作品


「ラ・バヤデール」11月17日から12月31日まで、バスティーユで23公演
ヌレエフの最後の作品


「ピエール・ブーレーズの夕べ」2015年12月1日~31日、ガルニエで19公演

「ポリフォニア」(ウィールドン、カンパニー初演)、ウェイン・マクレガーの世界初演作品、「春の祭典」(ピナ・バウシュ)


ジェローム・ロビンスとジェローム・ベル 2016年2月5日~20日 ガルニエ 14公演

ロビンスの「ゴールドバーグ・ヴァリエーション」(カンパニー初演)、ジェローム・ベルの新作。


「くるみ割り人形」 オペラとダンスの夕べ 2016年3月9日~4月8日 ガルニエ 13公演

オペラ「イオランタ」とバレエ「くるみ割り人形」(アーサー・ピタ、シディ・ラルビ・シェルカウイ、リアム・スカーレット、エドゥアール・ロック、ミルピエ)


「ロミオとジュリエット」 2016年3月19日~4月10日 バスティーユ 15公演
ヌレエフ


「ラトマンスキー、バランシン、ロビンスの夕べ」  2016年3月22日~4月5日 ガルニエ

「セブン・ソナタス」(ラトマンスキー)、「デュオ・コンチェルタント」(バランシン)、「アザー・ダンシズ」(ロビンス)、「In creases」ペック


マギー・マラン 「Les Applaudissements ne se mangent」 2016日4月25日~30日、ガルニエ


「ジゼル」 2016年5月27日~6月14日、ガルニエ
パトリス・バール

「ジャスティン・ペックとジョージ・バランシン」 7月2日~15日 バスティーユ、7公演

ジャスティン・ペックの新作(プーランク)と、、バランシンの「ブラームス・シューンベルグカルテット」


「フォーサイスの夕べ」 2016年7月4日~16日、ガルニエ 11公演

「アプロキシマート・ ソナタ」(新版)、新作、「Of Any if and」(カンパニー初演、1995年にフランクフルトバレエで初演) 3作品ともフォーサイス


また、映画館中継は続きますが、オペラ作品が中心であり、バレエでの映画館中継が行われるのは、「バランシン、ロビンスとミルピエの夕べ」 と「イオランタ/くるみ割り人形」のみです。

マリ・アニエス・ジロ、エミリー・コゼット、マチアス・エイマンをフィーチャーした映像

エトワールのプロフィール動画のダイジェスト版
http://youtu.be/3tOziQuNKPg

シディ・ラルビ・シェルカウイがロイヤル・フランダース・バレエ芸術監督に就任

パリ・オペラ座バレエの2015-6シーズン発表の他に、もう一つビッグニュースがありました。

世界中で引っ張りだこの振付家で、つい先日まで「PLUTO」が東京で大ヒット上演中だったシディ・ラルビ・シェルカウイ。また、シュツットガルト・バレエのために振付けた新作も、初演を迎えたばかりです。

そのシェルカウイが、母国ベルギーの名門バレエ団、ロイヤル・フランダース・バレエの芸術監督に就任することが発表されました。

https://operaballet.be/en/the-house/blog/sidi-larbi-new-artistic-director-of-royal-ballet-flanders

シェルカウイは、2015年9月1日にこのポストに就任します。次の2015-6シーズンは、前任者Assis Carreiroからの橋渡し的なものになります。このシーズンの概要は、4月に発表されます。

このバレエ団の本拠地、アントワープに生まれ育ったシェルカウイにとって、ロイヤル・フランダース・バレエは身近なものであり、2013-2014シーズンには彼の「牧神の午後」が上演されています。

シェルカウイはこのようにプレスリリースで語っています。

「過去10年間の間、私自身のコンテンポラリーな振付を発展させるとともに、毎年海外のバレエカンパニーと仕事をしてきました。2004年以来、モンテカルロ・バレエ、ジュネーヴ大劇場バレエ、デンマークロイヤル・バレエ、オランダ国立バレエそしてパリ・オペラ座バレエなどです。これらの経験を通して、ロイヤル・フランダース・バレエの芸術監督としての自信とエネルギーを獲得することが出いました。私がカンパニーで追求しようとする道は、一つの結論です。ここ数年において、異なったダンスの訓練の間の交流が育ってきており、以前にもましてクラシックバレエとコンテンポラリーダンスはお互いを補完しています」

シェルカウイは、右腕として、フォーサイス作品で活躍してきたタマシュ・モーリッツを連れて来るとのことです。そして引き続き、自身のコンテンポラリーカンパニーであるイーストマンでの活動も続けるそうです。


ロイヤル・フランダース・バレエは、ベルギー唯一のクラシックバレエのカンパニーです。2005年から2010年までは、フランクフルト・バレエでバレエ・ミストレスを務めていたキャスリン・ベネッツが芸術監督を務めていたこともあり、フォーサイス振付「インプレッシング・ザ・ツァー」(「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」の全幕版)の上演権を唯一持っているカンパニーでした。2013年よりロイヤル・バレエ・オブ・フランダースとフランダース・オペラを同じ組織としたために、芸術監督が交代しバレエ団の規模は縮小しました。

しかしながら、「ドン・キホーテ」、「ロミオとジュリエット」(元ロイヤル・バレエのプリンシパル、ヴャスチャスヤフ・サモドゥーロフ振付)や、「オネーギン」などの全幕作品、そしてフォーサイス作品など現代作品まで幅広いレパートリーを持っています。日本人プリンシパルの齊藤亜紀さんは、バレエ団を代表するスターです。

ローザンヌ国際バレエコンクールのライブストリーミング

現在行われているローザンヌ国際バレエコンクールは、新しい試みとして、コンクールの模様を一日一時間、生中継で見せてくれています。

http://www.prixdelausanne.org/multimedia/live-streaming/

http://lb.streamakaci.com/lausanne/

こちらのサイトで毎晩、日本時間の0時から中継が行われています。

2月2日は、ボーリュー劇場の傾斜した床に慣れさせるという意味もあって、出場者たちが舞台の上でヴァリエーションを練習していました。日本から出場している五十嵐愛梨さんや、ミコ・フォガティさんらの踊りも観ることができました。また、今回審査員を務めており、ローザンヌ国際バレエコンクールでスカラシップを獲得したバーミンガムロイヤル・バレエのツァオ・チーのインタビューなどもありました。

0時という深夜に観るのは難しいという方にも配慮していて、この中継のアーカイブはYouTubeのコンクールオフィシャルチャンネルでアップされています。
http://youtu.be/uh7nnCjP6pM

二日目のアーカイヴもアップ。
http://youtu.be/gRKmoV_9rGg

木曜日までこちらの一日1時間中継があり、その後金曜日には現地時間午前10時(日本時間18時)より準決勝などの中継、そして土曜日は現地時間午後3時(日本時間夜23時)より決勝の生中継があります。わくわくの一週間ですね。

ただ以前やっていたビデオブログはなくなってしまったようで、それはちょっと残念です。

2015/02/03

コジョカル、シクリャーロフを迎えての東京バレエ団「ラ・バヤデール」

東京バレエ団のナタリア・マカロワ版「ラ・バヤデール」の公演概要が発表されています。

http://www.thetokyoballet.com/news/post-108.html

◆公演日程
 2015年
 6月11日(木) 6:30p.m.
 6月12日(金) 6:30p.m.
 6月13日(土) 2:00p.m.

◆会場:東京文化会館

◆予定される主なキャスト
 【6/11、12】
 ニキヤ:アリーナ・コジョカル(イングリッシュ・ナショナル・バレエ)
 ソロル:ウラジーミル・シクリャローフ(マリインスキー・バレエ)
 ガムザッティ:奈良春夏

【6/13】
 ニキヤ:上野水香
 ソロル:柄本 弾
 ガムザッティ:川島麻実子

◆入場料(税込)
 【6/11,12】
 S:¥14,000 A:¥12,000 B:¥10,000 C:¥7,000 D:¥5,000 E:¥4,000

 【6/13】
 S:¥10,000 A:¥8,000 B:¥6,000 C:¥5,000 D:¥4,000 E:¥3,000

 ☆NBSWEBチケット座席選択先行予約[S,A,B] 2/12(木)9:00p.m.~2/16(月)6:00p.m.

最近東京バレエ団は、ゲスト選びのセンスが良いように思えます。
3月の「ジゼル」公演は、ザハロワとボッレという豪華キャストもあって、ソールドアウトとなり追加公演が出たほどでした。

アリーナ・コジョカルは、前回の世界バレエフェスティバルの全幕プロでの「ラ・バヤデール」での公演も記憶に新しいところです。ENBに加えてハンブルグ・バレエでの出演も多く、またヨハン・コボーが芸術監督を務めるルーマニア国立ブカレスト・バレエにも出演するなど多忙な中、日本にも出演してくれるのは嬉しいですね。マリインスキー・バレエ唯一の若手プリンシパルであるシクリャーロフも、ソロル役は定評があります。

「ラ・バヤデール」は、2月17日より新国立劇場バレエ団でも上演されます。こちらは、やはり若手の中でも特に期待の星であるワディム・ムンタギロフがゲスト出演。

昨年12月のボリショイ・バレエの来日公演でも「ラ・バヤデール」が上演され、「ラ・バヤデール」の公演が続きますが、それぞれがクオリティの高い公演で日本の観客を楽しませてくれることでしょう。

2015/02/02

12/31 シュツットガルト・バレエ「Silvester Gala」

感想が遅くなりましたが、2014年の大晦日を飾ったシュツットガルト・バレエのシルヴェスター・ガラを観に行ってきました。アリーナ・コジョカルとエドワード・ワトソンがゲスト出演。

客席には、フィリップ・バランキエヴィッチ、アレクサンドル・ザイツェフ、マリシア・ハイデ、ハンス・ファン=マネン、ヨハン・コボーの姿が見え、幕間にはシャンパンがふるまわれるという華やかなガラ公演。特にバランキエヴィッチの颯爽とかっこいい様子は目を引いた。体調が良くないと噂されるリード・アンダーソンだが、開演前にはあいさつに立っていた。

http://www.stuttgart-ballet.de/schedule/2014-12-31/silverstergala-1415/program-2014-12-31/

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* Debut
** Stuttgart debut

Hommage à Bolschoi 「ボリショイへのオマージュ」

Choreography: John Cranko
Dancers: Elisa Badenes, Daniel Camargo

この日唯一のクランコ作品。シュツットガルト・バレエでも最も技術的に優れている若手ダンサーであるエリサ・バデネスとダニエル・カマルゴが踊った。難しくアクロバティックなリフトをこれでもかと繰り広げるのだが、どれも余裕たっぷり。あっという間に終わってしまうことだけが残念。


Mopey 「モペイ」
Choreography: Marco Goecke
Dancer: David Moore *

日本でもおなじみのこの作品、新プリンシパルのデヴィッド・ムーアがこの日初めて踊った。踊る人によって全然違う印象を見せる作品で、若いデヴィッド・ムーアが踊ると、この奇妙な作品も、爽やかで一服の清涼剤のように感じられるから不思議だ。闇の中に浮かび上がるムーヴメントの残像が美しい。日本ではあまり人気がないゲッケ作品だけど、彼の作品は、このように残像や動きの軌跡を楽しむものであるというのがようやくわかってきた。


Aus Ihrer Zeit
Choreography: Demis Volpi
Dancers: Alicia Amatriain **, Constantine Allen **

シュツットガルト・バレエを代表する往年のバレリーナ、ビルギット・カイルに捧げられた作品で、彼女が芸術監督を務めるカールスルーエ・バレエで初演された。デミス・ヴォルピならではのユーモラスな面と、古典的なまでの端正な美しさが同居するデュエットで、アリシア・アマトリアンの圧倒的な柔軟性と身体能力が生かされている。


Bite
Choreography: Katarzyna Kozielska
Dancers: Anna Osadcenko **, Jason Reilly **

シュツットガルト・バレエの現役のデミ・ソリストでありながら、振付家としても活躍するカタルツィナ・コツィエルスカによって振付けられた作品。実生活でもカップルのアンア・オサチェンコとジェイソン・レイリーによる非常に官能的なパ・ド・ドゥで、オサチェンコの美しい脚、ジェイソンの力強いセクシーさが印象付けられた。特に、開脚したままのオサチェンコを放り投げてジェイソンがキャッチする場面には思わず息を呑んだ。


Äffi 「エフィ」
Choreography: Marco Goecke
Dancer: Marijn Rademaker

世界バレエフェスティバルなどで何回も観ている「エフィ」。しかし、この日でシュツットガルト・バレエを去るマライン・ラドマーカーの万感の思いが込められているように感じた。一人の男性の苦悩、葛藤、行き場のないエネルギー、様々な感情がねじれた動きの中に渦巻く。ここでも闇に浮かび上がる、光輝く肉体と、身体が描く軌跡を追っていると、初見の時には長かったと思えた上演時間もあっという間に過ぎてしまう。静まり返った劇場で、観客の誰もが同じように感じているのが伝わってきた。


Variations for Two Couples (Stuttgart premiere)
Choreography: Hans van Manen
Dancers: Alicia Amatriain*, Anna Osadcenko*, Constantine Allen*, Alexander Jones*

世界中のバレエ団で踊られている、ハンス・ファン=マネンの代表作の一つ。ブリテンの弦楽四重奏などの曲を使用し、アリシア・アマトリアンとコンスタンチン・アレン、アンナ・オサチェンコとアレクサンダー・ジョーンズの2つのペアが踊る。ファン=マネン独特の、プロットレスバレエの中に男女の駆け引きを込めたセンシュアルな部分と、わざと期待を裏切るようなユーモラスな部分が合わさった、ハイセンスで面白い作品。4人のダンサーとも、音楽性に優れているので、洒脱さがよく伝わってくる。特にアマトリアンとオサチェンコという、カンパニーを代表する二人のバレリーナの身体性が拮抗する様はスリリングだった。

これはマリインスキー・バレエでのリハーサル動画。アリーナ・ソーモワの姿が見える。
http://youtu.be/YZVBbabujE0

Pas de deux, Radio and Juliet (Stuttgart premiere)「レディオとジュリエット」
Choreography: Edward Clug
Dancers: Miriam Kacerova **, Roman Novitzky **

去年、アリーナ・コジョカル・ドリームプロジェクトでも踊られた、レディオヘッドの音楽を使用した作品。しかし非常に短い抜粋だったのであっという間に終わってしまった。エドワード・クルグは、シュツットガルト・バレエにも作品を振付けているので、今後この作品がレパートリー入りするのかもしれない。


Allure
Choreography: Demis Volpi
Dancer: Myriam Simon **

一昨年の「メイド・イン・ジャーマニー」プログラムでは、ヒョ・ジュン・カンが踊ったソロ作品。今回は産休から復帰したばかりのミリアム・サイモンが踊った。上半身の動きが雄弁で、しなやかながらもダイナミックでスピーディな作品。フェミニンさと力強さが同居し、ヴォルピならではの個性も感じられた。


3 with D (German premiere)
Choreography: Javier de Frutos
guitar and singer Dan Gillespie Sells  pianist Ciaran Jeremiah
Dancers: Edward Watson (a. G. ) **, Marijn Rademaker **

昨年ロンドンで行われたガラ「Men In Motion」で上演された、ハビエル・デ・フルートス振付の作品。舞台上にギターを持ったヴォーカリストが立ち、ガーシュウィンの「The Man I Love」を、哀愁を帯びた歌声で歌う。これは二人の男性の出会いと別れを描いた作品で、特に別れについてポップで、少しメランコリックな描写をしている。エドワード・ワトソンとマライン・ラドマーカーは絶えず舞台の上を移動しながら同じ動きを繰り返し、重なってアラベスクをしたり、同時に脚を上げたり。柔らかくしなやかでほっそりとしたワトソン、少しマッチョなラドマーカーの対比が鮮やか。キスを交わしたかといえば手を激しくつかんだり。最後にワトソンが去り、ラドマーカーは一人取り残される。何とも言えず切ない余韻が残る、別れの時の甘酸っぱい感傷で胸に響く、美しい一品。

ロンドンでの「Men In Motion」で上演された際のアルバムをここで観ることができる。
http://www.danceeurope.net/gallery/ivan-putrovs-men-in-motion-2014#slide-16-field_images-721

Pas de deux, I. Akt : Manon 「マノン」1幕パ・ド・ドゥ
Choreography: Kenneth MacMillan
Dancers: Alina Cojocaru ** (a. G.), Friedemann Vogel **

コジョカルのマノンの素晴らしさに尽きた。なんという愛らしさ、小悪魔さ、そして一挙一動の軽やかさと動きに込められたキャラクター描写の的確さ。コジョカルの方ばかり見てしまった。甘い雰囲気に包まれてうっとり。まだ彼女が踊る全幕の「マノン」は観られていないのだ。


Scene from II. Akt: Leonce und Lena 「レオンスとレーナ」
Choreography: Christian Spuck
Dancers: Heather MacIsaac, Fernanda Lopes, Ruiqi Yang, Julia Bergua-Orero, Anouk van der Weijde, Aiara Iturrioz
Nicholas Jones, Robert Robinson, Ludovico Pace, Fabio Adorisio, Matteo Crockard-Villa, Roland Havlica

休憩が終わり、幕が上がると、顔を白塗りし、三角帽子をかぶった群舞のダンサーたちがコミカルなポーズで静止している。この静止の時間がずいぶん長く続いた。そのあとは、ややドタバタしているものの、群舞が登場するのはこの作品だけなので楽しいアクセントになった。

Pas de deux, III. Akt: Don Quijote 「ドン・キホーテ」3幕パ・ド・ドゥ
Choreography: Maximiliano Guerra
Dancers: Elisa Badenes, Daniel Camargo

この日唯一の古典作品。エリサ・バデネスとダニエル・カマルゴのペアは、オーストラリア・バレエの「ドン・キホーテ」と「ラ・バヤデール」にもゲスト出演しているほどで、テクニックとともに、若いのに魅せ方を心得ている。ダニエル・カマルゴは、途中ピルエットが少し乱れるところはあったものの、エレベーションが驚くほど高くて超絶技巧を連発。エリサ・バデネスは、スペイン人なのでちゃきちゃきしたキャラクターもキトリにぴったり、グラン・フェッテでは前半は全部ダブルでトリプルも織り交ぜた。


The Chambers of a Heart (World Premiere)
Choreography: Itzik Galili
Dancers: Friedemann Vogel, Jason Reilly

こちらも男性同士の関係をモチーフにしたパ・ド・ドゥで、「モノ・リサ」のイツィーク・ガリリの新作。ベートーヴェンの「月光」に合わせて、2人が絡み合う。エモーショナルでリリカルな、良い作品だと思うのだが、先ほどのフルートスの「3 with D」とテーマが似通っているところがあるので、印象がやや薄かった。そして、女性ダンサーと踊るときにはあんなにセクシーなジェイソン・レイリーが意外とここでは官能性が薄いのが不思議だった。また別の機会に観てみたい作品ではある。


Fanfare LX 「ファンファーレLX」
Choreography: Douglas Lee
Dancers: Alicia Amatriain, Alexander Jones

これはあちこちのガラで踊られているエッジ―なコンテンポラリー作品。音楽は、マイケル・ナイマン作曲の「英国式庭園殺人事件」のサウンドトラックなのだが、この曲がオーケストラで生演奏されたのにはちょっと驚いた。アリシア・アマトリアンもアレクサンダー・ジョーンズも優れたダンサーなのだが、なぜかこの二人で踊ると、別キャストで観たときのスリリングさを感じないのが少し残念だった。


Pas de deux, III. Act : Lady of the Camellias 「椿姫」3幕パ・ド・ドゥ
Choreography: John Neumeier
Dancers: Sue Jin Kang, Marijn Rademaker

ガラの締めくくりは、「椿姫」の黒のパ・ド・ドゥ。今は韓国国立バレエの芸術監督としての仕事が忙しく、在籍はしているもののほとんどシュツットガルトで踊ることがないスージン・カンが、この演目でシュツットガルト・バレエを去るマライン・ラドマーカーのために出演した。そして、このペアこそが、私にとっての最高のノイマイヤー「椿姫」であることを改めて確信したのであった。やつれきっていて、命の灯が今にも消えそうなマルグリットが、最後の情熱を傾けてアルマンと愛し合う、切実さの中にも、包み込むような優しさ、慈しみを感じて、私は彼女の繊細で雄弁な演技の見事さに涙が止まらなくなった。マラインのアルマンは、怒りん坊で、純粋でまっすぐで熱い、だけど以前の彼のアルマンとは違う。悲しみや苦悩をより感じさせるものだった。おそらくこのガラが、この二人で踊る最後の「椿姫」となるのだろう。この最後のパ・ド・ドゥに、二人が持てるすべてを出し切って、感情を絞り出すように燃焼つくしたのが伝わってきた。終演後の万感こもる熱い抱擁も、感動的だった。

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というわけで、これがシュツットガルト・バレエでのラドマーカーのフェアウェルとなったのだが、リード・アンダーソンからの花束贈呈があったくらいで、特に特別なセレモニーはなかった。新年を祝うために、たくさんの紙吹雪とリボン、風船が舞い、涙は少なく晴れやかなカーテンコールだった。しかし誰よりも涙していたのが、スージン・カンだったのは見逃さなかった。出演回数は少ないものの、まだ彼女は2016年までは踊る予定であり、実際年明けの「レクイエム」と「オネーギン」にも出演した。それでもあと舞台に立つ回数は何回だろう、と様々な思いが胸に去来したことだろう。特に、ここしばらく、共演してきたダンサーたちがことごとくバレエ団を去ったから。

シュツットガルト・バレエは、クランコ作品の継承とともに、新しい振付家を育て、新しい作品を上演することを重点的に行っているバレエ団である。しかし、今回のガラで上演されたクランコ作品は、ごく短い「ボリショイへのオマージュ」のみ。ここ3年程で驚くほど多くのダンサーがバレエ団を去ったため、ドラマティック・バレエを踊り演じることができるダンサーが減ってしまったということもある。1月の「オネーギン」でボリショイ・バレエから主演ペアを招いたのは前代未聞のことで、それだけ、この役を演じられるダンサーがこのバレエ団にはいなくなったということであり、由々しき事態である。

新しい振付家については、デミス・ヴォルピという素晴らしい才能、そしてカタルツィナ・コツィエルスカという現役ダンサー振付家の作品も個性的で優れており、その点ではうまく育っていると言える。ここから育ったマルコ・ゲッケ、クリスチャン・シュプック、ダグラス・リーの作品も上演された。以前からよく上演しているハンス・ファン・マネンやエドワード・クラグ、イツィーク・ガリリなども、このバレエ団らしいチョイスだ。新しい作品を積極的に上演するという高い志が感じられる。

ただし、この日上演された作品の全体のクオリティは、正直なところ、玉石混合であるのは否めない。似たような印象の作品が多いのだ。そして、マライン・ラドマーカーが去り、スージン・カンもほとんど出演しなくなることを考えると、成熟したスターダンサーがずいぶん減ってしまって、地味な印象を受けた。客席にいたバランキエヴィッチやザイツェフにも舞台に立ってほしいと思うほどである。もちろん、エリサ・バデネス、ダニエル・カマルゴ、コンスタンチン・アレンという、光り輝くような才能の若手ダンサーたちもいるのだが、技術だけではない、深みのあるパフォーマンスを見せるにはもう少しかかるだろう。今、このバレエ団は過渡期にあり、正直かなり苦しい現状であるという印象を受けた。ここが踏ん張りどころだろう。

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2015/02/01

「バレエ・ボーイズ」2/17放映、そしてパリ・オペラ座「エチュード」「デフィレ」3月放映

先日ご紹介した、ノルウェーのバレエ少年3人を描いたドキュメンタリー映画「バレエ・ボーイズ」が、NHKBS-1で2月17日に放映されます。(Twitterで教えてもらいました)

「バレエ・ボーイズ」
2月17日(火)21:00~21:50

http://www.nhk.or.jp/pr/keiei/shiryou/soukyoku/2015/01/006.pdf

ちなみに、このドキュメンタリーに登場する少年の一人、Syvert は、ローザンヌ国際バレエコンクールに出場しています。無事本選に出場できますように。

ところで、この映画自体の長さは75分なので、放映に際して少しカットされてしまっているところがあると思われます。映画祭「トーキョー・ノーザン・ライツ・フェスティバル」では全編が上映されるので、完全版を観たい方はそちらの方が良いかもしれません。
http://www.tnlf.jp/movie.html#ballet


そしてBSプレミアムの番組表によれば、

3月15日(日)午前0時より、「プレミアムシアター」

パリ・オペラ座バレエ団公演
「バレエの夕べ」

演目:
①デフィレ 音楽:ベルリオーズ
②ダンス組曲
 振付:イワン・クリュスティン
音楽:ショパン
③エチュード
 振付:ハラルド・ランダー
 音楽:ツェルニー
④オーニス
 振付:ジャック・ガルニエ
音楽:モーリス・パシェ
出演:パリ・オペラ座バレエ団

こちらは10月4日のブリジット・ルフェーヴルのさよなら公演です。

パリ・オペラ座バレエ学校
創立300年記念ガラ公演

演目:①今から(ラモー)
    ②ワルプルギスの夜(グノー)
    ③祝典(オーベール)
    ④青春の罪(ロッシーニ)
出演:ジル・イゾアール、マチュー・ガニオ、
    パリ・オペラ座バレエ学校の生徒 ほか

http://www.nhk.or.jp/bsmile/lineup/bspremium_nextmonth.pdf


青山劇場閉館と東京での劇場不足の問題

1985年にオープンした青山劇場と、青山円形劇場が、青山こどもの城の閉館に伴い、こちらも閉館することになり、29日、30日には最終公演「青山バレエフェスティバル―ラスト・ショー」が開催されました。
http://www.aoyama.org/topics/2014/abf.html

青山劇場:最後のバレエフェスティバル 30日まで
http://mainichi.jp/select/news/20150130k0000m040048000c.html


残念ながらこちらの公演は観に行けなかったのですが、長く親しまれた劇場が閉館することは本当に残念に思います。「ローザンヌ・ガラ」「マシュー・ボーンの白鳥の湖」のほか、劇団新感線やミュージカル「オケピ!」そして遊・機械/全自動シアターなどの演劇上演を観に行ったことを思い出します。ローザンヌ国際バレエコンクールも、かつてここで開催されたことがありました。

青山劇場が閉館 あの俳優も疑問の声
http://dot.asahi.com/aera/2015012800101.html

ミュージカル公演が定着したのには、「東洋一」とうたわれた舞台装置がある。全床スライド式の2面の主舞台を持ち、主舞台そのものが入れ替わる大胆な舞台転換ができる。さらに大迫り(迫りとは床をくり抜き昇降装置を施した舞台機構)の上に、24基の小迫りが乗る。意表をつくスペクタクルな演出が可能だ。両劇場プロデューサーの一人、志茂聰明さんは言う。

「東洋どころかブロードウェーにも、世界のどこにもない大がかりで贅沢な舞台装置。日本では二度と作れないでしょう」(AERA  2015年2月2日号の記事より)

厚労省は理由の一つに「老朽化」を挙げていますが、築30年というのは決して古くはありません。実際にはもっと古い劇場はたくさんあります。「こどもの城」厚生労働省内事業仕分け資料(2010年10月)で「建物はまだ十分使用に耐えられることが確認されている」と明記されています。
http://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/19-1f.pdf

(さよなら「こどもの城」:上)子も親も、笑顔になれた
http://www.asahi.com/articles/DA3S11565228.html
閉館の発表は12年9月。厚労省は理由の一つに施設の老朽化を挙げる。特に空調や電源設備が深刻といい、耐震補強など施設全体の改修に120億円が必要だと試算する。様々なタイプの民間テーマパークができるなど遊び場が多様化したことや、自治体で児童館の整備が進んできたことも閉館の理由だと説明する。様々なタイプの民間テーマパークができるなど遊び場が多様化したことや、自治体で児童館の整備が進んできたことも閉館の理由だと説明する。

唯一の国立の児童館だった「こどもの城」。劇場やホテルの宿泊者も含めた利用者は30年間で計2800万人超。2013年度は約80万人が訪れましたた。こどもの城は国立の児童館として約3500の遊びのプログラムを提供、各地の児童館や保育所などに発信しており、その代替する役割を担う施設はありません。

「こどもの城、青山劇場、青山円形劇場の存続を願う有志の会」という会が設立され、署名活動を行うとともに、国会での勉強会、請願などで各方面に働きかけてきました。また、演劇人など多くの著名人も、閉館に反対することを表明してきていました。

こどもの城、青山劇場、青山円形劇場、残して!
http://kodomonosiro.blog.fc2.com/

厚労省によると、閉館後については「未定」。まず人が入れないようにするために建物を覆う塀の設置などに3億円費やすという。(上記AERAの記事より)

というわけで、建物自体はすぐに取り壊しをされるわけではないようですが、「人が入れないようにするために建物を覆う兵の設置などに3億円を費やす」というのは、穏やかではありません。

これはあくまでも噂ではありますが、一等地にあり、裏にも広い空地があることから、オリンピック関連施設ができるのではないかという説もあります。

さよならジャニーズ殿堂 青山劇場閉館
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015013002000235.html (東京新聞)


さて、青山劇場は、ミュージカルの他、バレエ公演も多く行われてきた劇場でした。

青山劇場、日本青年館…消えるバレエの拠点 老朽化で相次ぎ閉館
http://www.sankei.com/entertainments/news/150118/ent1501180013-n1.html

3月末に日本青年館(新宿区)、9月末には、ゆうぽうとホール(品川区)と渋谷公会堂(渋谷区)がそれぞれ老朽化のため、閉館する予定とのことです。特に、ゆうぽうとホールは年間約150日もバレエ公演に利用される“バレエの一大拠点”として知られています。

ゆうぽうとでは、マニュエル・ルグリのガラなど、数々の名公演が行われてきて、思い出深い会場です。また、バレエの発表会などにも多く使われてきました。建物は古いものの、非常に見やすく、劇場の大きさもちょうどよくて、一番安い席でも舞台からの距離が近いので嬉しいところでした。閉館は本当に悲しいです。

上記産経新聞の記事によれば、東京文化会館は2020年の東京五輪・パラリンピック前に再改修が検討されているそうです。そうすると、ますますバレエ公演の会場が足りなくなります。去年も、約半年間、東京文化会館の改装工事がありましたが、その間、あまり見やすくないオーチャードホールやNHKホールに公演が移ってしまって、やむを得ないこととはいえ、ちょっと不満を感じてしまっていました。

危機感を共有する東京のバレエ団を中心に、昨年9月に発足した日本バレエ団連盟は「文化の祭典でもある東京五輪を前に、世界共通の芸術、オペラとバレエの劇場は不可欠。観光資源にもなる」と、活動環境の厳しさを訴えるとともに、国や都に品川周辺への劇場建設を働き掛けている。(産経新聞)

東京の劇場不足深刻化 「バレエ団連盟」が発足 五輪見据え「文化の器」建設求める
http://mainichi.jp/shimen/news/20141020dde012040003000c.html

日本では、新国立劇場バレエ団とNoismは例外として、日本のバレエカンパニーは専属の劇場を持っていませんでした。貸し劇場でバレエ公演が行われてきたということは、来日公演も組み込みやすいし、プロからアマチュアまで、様々な団体が公演を行いやすいという面がありました。

反面、決まった劇場がないというのは、ダンサーの立場からすれば決して良いことではありません。それに加えて、バレエ公演を行ってきた劇場が次々と閉館していっては、踊る場所がなくなってしまうということにもなりますので、ますますバレエ公演を行う環境が悪くなるということです。発表会を行うバレエ教室にしても、会場を押さえるのが難しくなるので、すそ野を広げるのも難しくなります。

打開策として、上記「日本バレエ団連盟」の発足があったということです。真に文化としてバレエ/ダンスが定着するためには、新しい劇場ができればありがたいのですが。欧米のように、劇場が都市の観光資源となったり、広く文化を定着させるための場としての機能をもっと強化させることができたら良いのですが、なかなか道は険しそうです。新国立劇場がもっと外部利用しやすくなれば良いのですが、それもなかなか難しいようです。

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