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2015年1月

2015/01/29

第43回ローザンヌ国際バレエコンクールは来週から(生中継あり)

第43回ローザンヌ国際バレエコンクールは、2月1日より始まります。

http://www.prixdelausanne.org/competition/prix-2015/

出場者は67名で、その一覧はこちらです。
http://www.prixdelausanne.org/wp-content/uploads/2014/06/Results-PDL-video-selection-2015.pdf

拙ブログの過去エントリでは、日本からのセミファイナルの出場者についてお知らせしています。
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2014/11/2015-1f16.html

Airi Igarashi Japan   Reiko Yamamoto Ballet School, Ota, Japan 五十嵐愛梨 
Rina Kanehara Japan  Princess Grace Academy, Monte-Carlo, Monaco 金原 里奈(水野弘子バレエ学園)
Eriko Nakajima  Japan  Epris Ballet Studio, Kumagaya City, Japan 中島 映理子
Anna Ono  Japan  Yuri Sanada Ballet Studio, Sakai City, Japan 小野 杏菜
Miki Shibata Japan  Yuriko Kawaguchi Ballet School, Tokyo, Japan 柴田実樹
Minami Tanaka Japan  Etoile Ballet School, Ikeda, Japan  田中 美波.
Mina Yamanishi Japan  Acri Horimoto Ballet Academy, Tokyo, Japan 山西 美那
Naomi Sano  Australia Sydney Ballet School, Sydney, Australia 

Shogo Hayami  Japan John Cranko Schule, Stuttgart, Germany 速水渉悟(稲尾光子バレエスクール)
Mitsuru Ito  Japan  Escola de Dança do Conservatório Nacional, Lisbon, Portugal  伊藤 充 (アクリ・堀本バレエアカデミー)
Suguru Otsuka  Japan K-Ballet School, Tokyo, Japan 大塚卓


今回は、2月2日から5日までは現地時間午後4時からの1日1時間、そして6日の準決勝(現地時間朝10時から午後5時まで、ファイナリスト発表は午後6時)、そして7日の決勝(現地時間午後3時より)まで、インターネット生中継が行われます。
http://www.prixdelausanne.org/multimedia/live-streaming/

http://youtu.be/nuBQnRtaHug

審査員は、審査委員長に元ABTのシンシア・ハーヴェイ、そしてイーサン・スティーフェル、元ウィーン国立バレエで現在はウィーン国立バレエ学校校長のジモーナ・ノヤ、バーミンガム・ロイヤル・バレエのツァオ・チー、ミュンヘン・バレエのリサ=マリー・カラム、そしてABTジャクリーン・ケネディ・オナシス・スクール芸術監督のフランコ・デ・ヴィータなどです。
http://www.prixdelausanne.org/competition/prix-2015/

ローザンヌ国際コンクールでは、ネットワーキングフォーラムという、出場者と学校やカンパニーをつなぐ場所が用意されていることが特徴です。ファイナリストとならなくても、選考プロセスで目についた場合には、スカラシップが獲得できたり、カンパニーの研修生となったりすることができます。

こちらで、ネットワーキングフォーラムでスカラシップを獲得した2014年の出場者一覧があります。
http://www.prixdelausanne.org/networking-forum-results/

また、コンクールのコーチとしては、クラシック・ヴァリエーションはモニク・ルディエールと、サンフランシスコ・バレエスクールアソシエイト・ディレクターのパトリック・アルマンが教えます。

少し前の記事になりますが、読売新聞では、ローザンヌ国際バレエコンクールで入賞したダンサーの卵たちの現在を追った記事を掲載していました。二井治雄さん、菅井円加さん、そして山本雅也さんについでです。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/news/20141219-OYT8T50128.html

2015/01/28

坂東玉三郎演出、DAZZLEの「バラーレ」、玉三郎特別番組

“すべてのカテゴリーに属し、属さない曖昧な眩しさ”をスローガンに掲げ、幻想的な舞台作品を次々と生み出しているダンスカンパニー“DAZZLE”。

ストリートダンスとコンテンポラリーダンスを融合させた、世界で唯一のオリジナルダンススタイルを生み出し、“DAZZLE:美しさ・華麗さなどが人を幻惑させる”という名を体現する、活躍を見せています。

また、コミック・ゲーム・アニメなど、ジャパニーズカルチャーの要素を取り込み、物語性の強い作品を上演することから、ダンスファン以外からも熱い支持と注目を集めています。

特に日本に古くから伝わる「狐の嫁入り」をモチーフにした作品「花ト囮」(はなとおとり)は、障子や和傘などを巧みに使った美しい作品世界が話題となり、2009年の初演以来、再演を重ね、ダンス公演にも関わらず海外の著名な演劇祭にも招聘されています。動画を観ましたが、これは本当にカッコいいです。

http://youtu.be/6eOmjMSxcSo

そのDAZZLEのダンスを観て衝撃を受けたのが、歌舞伎界の立女方であり、日本を代表する世界的なアーティスト、そして希代の演出家である坂東玉三郎です。今回“初めて”ダンスの演出を手がけることになりました。

玉三郎が既存のクラシック音楽をバックに踊ることを提案し、音楽の選曲から演出まで幅広くプロデュースします。「バラーレ」とは、イタリア語で「踊る」という意味です。

http://www.tbs.co.jp/act/event/ballare/

【予定楽曲】
1:マーラー作曲 「交響曲第四番」
2:ストラヴィンスキー作曲 「春の祭典」
3:ブロードウェイミュージカル「タンゴ・アルゼンチーノ」より

2週に渡り特別番組が放送されます。

■2月1日(日)午後1時~(13:00~13:30) BS-TBSにて
坂東玉三郎の世界 舞台「バラーレ」に迫る!

演出の玉三郎はこれまでDAZZLEが使ったことのないクラシック音楽を選び、
その中でいかに彼らの独特のダンス表現をいかせるかにこだわる。
玉三郎はどんな作品を世界に放つのか?
1年に及ぶ密着映像の中から、貴重な稽古場での様子もお届けします。


■2月8日(日)午後7時~(19:00~20:54) BS-TBSにて
airweave presents「坂東玉三郎 生々流転の人生スペシャル」

歌舞伎界を代表するだけでなく、日本を代表する世界的なアーティスト、
2012年に人間国宝にも認定された坂東玉三郎の芸道の極みに迫る。

撮影時間は200時間以上。今まで語られることのなかった「美」を追求した芸の真髄、それを次世代に遺すこと。
自身の進退の核心に迫る、本人へのインタビューは必見でしょう。


また、アンサンブルには、男子新体操界初のダンスユニット、BLUE TOKYOも出演します。メンバーは青森大学または青森山田高校の新体操部出身者であり、圧倒的な身体能力と芸術性を持っています。

どんな素晴らしい芸術世界が待っているのでしょうか、これは見逃せない公演になりそうです。

■公演日程
2015年3月7日(土)~15日(日)

■会場
赤坂ACTシアター

S席8,500円 A席6,000円 
U-22チケット 3,000円(22歳以下の方のみ、チケットスペースでの電話予約のみでの取り扱い)
(全席指定・税込・未就学者児童入場不可)

・チケットスペース
 03-3234-9999 (オペレーター)
http://www.ints.co.jp/
・ACTオンラインチケット
http://www.tbs-act.com/ticket.html
・チケットホン松竹
 0570-000-489(オペレーター10:00~18:00)
03-6745-0100
・チケットWeb松竹
 http://www1.ticket-web-shochiku.com/pc/
・チケットぴあ
 0570-02-9999(Pコード:440-784)
http://pia.jp/t/ballare/
・ローソンチケット
 0570-084-003(Lコード:34438)
0570-000-407(オペレーター10:00~20:00)
http://l-tike.com/ballare/
・イープラス
 http://eplus.jp/ballare/

■特別協賛
株式会社エアウィーヴ
■製作
松竹
■主催
TBS / TBSラジオ
■問合せ
チケットスペース 03-3234-9999

2015/01/27

第15回英国ナショナルダンスアワードの受賞者発表

第15回英国ナショナル・ダンス・アワードの受賞者が発表されました。

2013年9月1日から2014年8月31日までの間に英国で行われた公演が対象で、400ものノミネートから絞り込まれたものです。Dance Section of the Critics’ Circleという50人の批評家からなる団体が選びました。

http://dancetabs.com/2015/01/2014-national-dance-awards-winners-announced/

CRITICS’ CIRCLE NATIONAL DANCE AWARDS WINNERS 2014

OUTSTANDING MALE PERFORMANCE (MODERN) 傑出した男性ダンサー(モダン) 
ジョナサン・ゴダード、マーク・ブルース・カンパニー「ドラキュラ」ドラキュラ役
Jonathan Goddard in the title role as Dracula for Mark Bruce Company

OUTSTANDING FEMALE PERFORMANCE (CLASSICAL) 傑出した女性ダンサー(クラシック)
Natalia Osipova in the title role as Giselle for The Royal Ballet
ナタリア・オシポワ、ロイヤル・バレエ「ジゼル」

BEST MODERN CHOREOGRAPHY 最優秀モダン振付 
アクラム・カーン「ダスト」、イングリッシュ・ナショナル・バレエ
Akram Khan for Dust by English National Ballet

OUTSTANDING MALE PERFORMANCE (CLASSICAL) 傑出した男性ダンサー(クラシック)
ザンダー・パリッシュ マリインスキー・バレエ「アポロ」
Xander Parish in the title role as Apollo for the Mariinsky Ballet

OUTSTANDING FEMALE PERFORMANCE (MODERN) 傑出した女性ダンサー(モダン) 
ウェンディ・ヒューストン「Pact with Pointlessness」
Wendy Houstoun for Pact with Pointlessness

BEST CLASSICAL CHOREOGRAPHY 最優秀クラシック振付
クリストファー・ウィールドン ロイヤル・バレエ「冬物語」
Christopher Wheeldon for The Winter’s Tale by The Royal Ballet

JANE ATTENBOROUGH DANCE UK INDUSTRY AWARD
Frank Doran MP, Secretary of the All Party Parliamentary Group for Dance

GRISHKO AWARD FOR EMERGING ARTIST 新人アーティスト賞(グリシコ提供)
フランチェスカ・ヘイワード (ロイヤル・バレエ)
Francesca Hayward

BEST INDEPENDENT COMPANY 最優秀インディペンデント・カンパニー
マーク・ブルース・カンパニー
Mark Bruce Company

STEF STEFANOU AWARD FOR OUTSTANDING COMPANY 最優秀カンパニー
イングリッシュ・ナショナル・バレエ
English National Ballet

THE DANCING TIMES AWARD FOR BEST MALE DANCER 最優秀男性ダンサー(ダンシング・タイムズ誌提供)
ジョナサン・ゴダード
Jonathan Goddard

GRISHKO AWARD FOR BEST FEMALE DANCER 最優秀女性ダンサー(グリシコ提供)
ナタリア・オシポワ
Natalia Osipova

DE VALOIS AWARD FOR OUTSTANDING ACHIEVEMENT ニネット・ド・ヴァロワ賞(傑出した貢献)
カルロス・アコスタ
Carlos Acosta CBE


ノミネート一覧はこちらの記事にて
http://dorianjesus.cocolog-nifty.com/pyon/2014/11/post-8167.html


アクラム・カーンは実に6回目の受賞となります(3回は振付家として、3回はダンサーとして受賞)。また、クリストファー・ウィールドンは振付家賞を受賞するのが5回目です。

ナタリア・オシポワとジョナサン・ゴダードは、2部門での受賞。オシポワは最優秀女性ダンサーを受賞するのが4回目です。オシポワは、ロイヤル・バレエでの活躍だけでなく、昨年は、イワン・ワシーリエフとの「Solo For Two」というコンテンポラリー作品の公演を行ったり、ミハイロフスキー・バレエのNY公演にもゲスト出演しました。

タマラ・ロホが芸術監督に就任して以来、「Lest We Forget」のトリプルビルなど、意欲的なプログラムに取り組んできたイングリッシュ・ナショナル・バレエが最優秀カンパニーを受賞しました。最優秀振付賞を受賞したアクラム・カーンの「ダスト」もこのトリプルビルの作品の一つです。

ロイヤル・バレエのフランチェスカ・ヘイワードは、キャスティング当時はファースト・アーティストというコール・ド・バレエでありながら「マノン」のタイトルロールに抜擢され、絶賛を浴びた若手ダンサーです。現在は「不思議の国のアリス」でも主演中。小柄であり、またアフリカ出身で褐色の肌の持ち主ですが、とても魅力的なバレリーナです。

そして先日のマリインスキー・バレエのNY公演でも活躍した、英国出身のマリインスキー・バレエのセカンド・ソリスト、ザンダー・パリッシュが傑出した男性ダンサー賞を受賞しています。Time Out誌でのインタビュー記事が大変興味深いです。長身でハンサム、美しい脚の持ち主のザンダーですが、ロイヤル・バレエに在籍していた当時は全く役に恵まれず、モニカ・メイソンにも見込みがないと言われてしまったとのことです。マリインスキー・バレエのユーリ・ファテーエフに見込まれてマリインスキー・バレエに移籍したところ、見事に花開きました。

ニネット・ド・ヴァロワ賞は、ロイヤル・バレエ等での長年の活躍のみならず、「ドン・キホーテ」の再振付、そして自身がプロデュースした公演も成功させているカルロス・アコスタが受賞しました。プレゼンターは、ダーシー・バッセルだったとのことです。このアコスタ版「ドン・キホーテ」は、今年の夏のロイヤル・バレエのアメリカツアーでも上演されます。

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2015/01/25

ウラジーミル・マラーホフによる「プレスミーティング&特別講座」

1月22日にチャコットの新しいバレエスタジオ<チャコット・ダンスキューブ勝どきスタジオ>で、ウラジーミル・マラーホフによる「プレスミーティング&特別講座」が開催され、参加してきました。

http://www.chacott-jp.com/magazine/news/announce/2015.html

これはDVD「マラーホフのレッスン・シリーズ」の発売と東京バレエ団のアーティスティック・アドヴァイザー就任を記念して行われるもので、特別講座は、バレエ初級ということで一般の生徒を教えるというめったにない機会でした。

プレスミーティングは、チャコット・ダンスキューブ勝どきスタジオ2階にあるダンスキューブ・カフェで行われました。こちらのカフェは、スタジオを利用しない一般のお客さんも利用できるもので、インテリアも明るく素敵だし、メニューも健康によいものが揃っていて、レッスン後に食事もしたのですが美味しかったです。

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プレスミーティングは、プレスの他、この後の特別講座に参加する生徒も見学して、和やかなムードで行われました。マラーホフは少し風邪をひいていたようでしたが、不調さは微塵も見せず、いつもながらのチャーミングで優しいムードで、時にはユーモラスに語ってくれました。

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10年間ベルリン国立バレエの芸術監督を務めてきたのを昨年6月に辞し、東京での新しい生活を送ることについての想い

「10年以上ベルリンにいたので、さよなら公演では悲しい気持ちにもなりました。しかし、次のステップへと進み、次の世代にポストを譲るべきだと思ったのです。ハッピーな気持ちと悲しい気持ちの両方があります。」

「お客さんにさよならを言うのは悲しかったのですが、何かを失うことは人生にはあるものです、さよなら公演のすぐ後に日本に行ったので、落ち込むことはありませんでした。新しいページを開くことはスムーズに進みました。新しい人たちに出会い、新しいダンサーに出会い、新しい発見もありました。何回も日本に来ていましたが、今までは公演で来ていたので時間の余裕がありませんでした。今は、舞台を観に行ったり展覧会に行くといった楽しみもあります」

ベルリンでの芸術監督の仕事について

「芸術監督としてのキャリアも良いものになりました。最初にこの仕事のオファーがあった時、まだ踊りたいと思っていたし、両方をすることができるのか不安でしたが、ずっと踊っているわけにはいかないので、やってみようと思いました。カンパニーのためにレパートリーを増やしたりして、全体のレベルを引き上げました。財政的なことのケアをしたりと芸術監督の仕事は大変でしたが、最終的に、芸術監督しても、ダンサーとしてもうまくいくことができました。それまでにも、いろんなカンパニーと仕事をしていて、芸術監督がどんな仕事をしているのか見てきて、やりながら学ぶことができていたのです」

東京バレエ団のアーティスティックアドバイザーとしてのコラボレーションの予定

「東京バレエ団は昨年50周年を迎えましたが、私と東京バレエ団との共演も20周年だったのです。初めてゲスト出演したのは1994年でした。こんなに長く付き合っているバレエ団はここだけです。今まではゲストでしたが、今回はメンバーの一員として加えていただいて、ダンサーたちの顔も良く見ることができて、とても嬉しいですし、学ぶことも多いです。新しい才能をたくさん発見しました。今回の眠りでその才能を観ていただくことになります」

「眠れる森の美女」でカラボス役を演じることについて。

「とても楽しみにしています。今まではプリンス役ばかり踊ってきましたが、ついに違う役を演じる時がきたのです。ぼくのいやな面を見せることができるのでワクワクしています。嫌なやつになることができるのが嬉しいです。あ、冗談ですよ!(笑)。ぼくはエゴイストではないし、人にはもっと怒ったほうが言われるような優しい性格なので、カラボスのような黒い性格をやるのは挑戦です」

「ジゼル」のアルブレヒトを踊ることについて

「アルブレヒトは、もっともお気に入りの役の一つです。どのカンパニーでも、最初に踊ったのはこの役でした。ABTで初めて踊った時にこんな思い出があります。公演の前の日に友人にコーヒーに誘われ、普段はカフェインをとらないのですが、間違えてカフェイン入りのコーヒーを飲んでしまい、一晩中眠れませんでした。しかし翌日の公演はうまくいき、ニューヨークタイムズでアンナ・キセルコフという批評家が絶賛した批評を書きました」

「マリインスキー・バレエ、シュツットガルト・バレエ、ナショナル・バレエ・オブ・カナダでもアルブレヒト役は踊りました。東京バレエ団でも吉岡美佳さん、齊藤友佳里さんと踊りました。世界バレエフェスティバルでは、アレッサンドラ・フェリと踊りました。最初にフェリと踊る予定の時に、彼女のおめでたが発覚したので延期になってしまい、それは後で実現しました。今回の東京バレエ団の「眠れる森の美女」の後に、新しいキャストによる「ジゼル」が予定されています」

「ニューヨークタイムズに絶賛評が載った後で、こんなことが起きました。ぼくのアルブレヒトは、ミハイル・バリシニコフやエリック・ブルーン、ルドルフ・ヌレエフを超える素晴らしい演技だったと書かれていたので、バリシニコフがぼくと10年間も口をきいてくれなかったのです」

今回発売された、マスタークラスとヴァリエーションレッスンのDVDについて

「多くの人に、あなたから学ぶことはたくさんあると言われました。私には今までの経験によって様々な発見があり、それを伝えてきたのです。もっとそんな機会を多くの人達に与えることができるように、DVDを制作することにしました。ダンサーを教えるというのは、子供を育てるようなものです。ダンサーというのは赤ちゃんのようなもので、そのままでは正しく踊ることはできません。子供に離乳食を与えるように、ピュレにして口の中に入れてあげるような気持ちで、一つ一つ丁寧に教えていきたいです。DVDやCDはいつか作りたいと思っていました。CDも作りましたが、音楽はとても大切だと思っています。踊り心を引き出すのが音楽でありますし、ピアニストも非常に大事です」

ヴァリエーションレッスンで取り上げたヴァリエーションの選択基準について、そして良いレッスンピアニストについて

「コンクールやプレゼンテーションでよく踊られる作品を選びました。世界中のダンサーが踊る作品、『白鳥の湖』『眠れる森の美女』『ディアナとアクティオン』などです。良いレッスンピアニストとは、ダンサーを感じるフィーリングがあるピアニストです。ステップや動きを理解し、テンポを合わせることができるピアニストで、オーケストラにおける指揮者の役割を果たしている人です。いいピアニストがいると、教師にとってもレッスンをやりやすい。素晴らしい音楽を伝えてくれるからです」

成功するバレエダンサーと、成功しないバレエダンサーの違い

「すべてのダンサーは成功しているダンサーであり、成功しない人はいません。才能は誰もが持っているものです。マイナスというのはなくて、プラスが大きいかどうかです。オープンであること、人の意見を聞くこと、恥ずかしがらないで挑戦することが大事です。私の、アーティスティック・ディレクター、アドバイザーとしての仕事は、すべてのダンサーを成功したダンサーにすることなのです」


*******
さて、このプレスミーティングが終わった後、スタジオに移動しての特別講座が始まりました。チャコット・ダンスキューブ勝どきスタジオはとにかく床が柔らかくて足に負担が少なくて踊りやすいところです。新しいので、ロッカールームもとても綺麗ですしシャワーも備え付けられています。26人の受講生の中に私も参加させていただきました。ジュニアの生徒もいましたが、ほとんどが大人の生徒です。

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バーレッスンから始まり、センターへ。マラーホフのお手本は、言うまでもなく優雅で美しいものです。完璧なアンドゥオール、エレガントなポール・ド・ブラに思わずうっとりと見入ってしまいます。一度お手本を見せてくれた後、もう一度見たい?って聞いて再度繰り返してくれるところに、彼の優しさを感じました。スタジオ内を歩き回って一人一人の受講生を見てくれて、もっと上に、とか腕をもっと前に、音楽をよく聴いて、など注意もしてくれます。レッスンに使用したCDは、「ミュージック・フォー・マラーホズ・マスタークラス ベーシック」です。バーレッスンはベーシックなものですが、アダージオについては少し難易度を上げて行きました。マラーホフは日本語もかなり話せるようで、右、左、上、前へ、5番、1番といった指示は流暢な日本語でしてくれます。

センターレッスンも、タンデュなど前半はきちんとお手本を見せてくれます。音楽をどう表現するかということをマラーホフはやはり大事にしているということを感じました。床がいいから、シャンジュマンなどでどんどん跳ねても音がしないよね、などと冗談っぽく話したりもしました。なかなかマラーホフのような消音ジャンプは難しいのですが、良いスタジオならそれも可能なのですね。海賊のパ・ド・トロワのコーダの曲で踊るグラン・パ・デ・シャは気持ちよかったです。最後はまたマラーホフの柔らかいポール・ド・ブラを見ながらフィニッシュ。そして参加者一人一人にサインをしてくれたり、写真に納まったりとサービス。マラーホフのスイートで温かく優しい人柄、永遠の貴公子の美しさに触れて、参加者全員が幸せに包まれた一晩でした。カフェは夜11時まで営業しているので、レッスンが終わった後でもゆっくり食事できます。

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これはフィッシュ&チップス、衣はサフラン、ホウレンソウ、イカ墨を使ってカラフルに仕上げています。

マラーホフがカラボス役で出演する東京バレエ団の「眠れる森の美女」、必見ですね。

http://www.nbs.or.jp/stages/1502_sleeping/index.html
2月7日(土) 2:00PM
2月8日(日) 2:00PM
会場:東京文化会館

http://youtu.be/MrVU1yn6pMw

もちろん、「マラーホフのマスタークラス」「マラーホフのヴァリエーションレッスン」「ミュージック・フォー・マラーホズ・マスタークラス」、いずれも素晴らしい内容なので、ぜひご覧ください。

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2015/01/21

ユリア・ステパノワがモスクワ音楽劇場バレエに入団

昨年、マリインスキー・バレエを電撃的に退団したユリア・ステパノワ。

近年のワガノワ卒業生の中でも最も優秀と言われ、熱心なファンも多い彼女の移籍先が発表されておりませんでした。その後、クレムリン・バレエの「火の鳥」にゲスト出演したものの、足取りがつかめていませんでしたが、Instagramでの「今どこにいるの?」という質問に対してスタニスラフスキー、と本人が答えていたことから、モスクワ音楽劇場バレエに入団したのでは、とささやかれていました。

そして、モスクワ音楽劇場バレエのサイトに、彼女、および同じく元マリインスキー・バレエ団員だった夫君カミル・ヤングラツォフが団員として掲載されていました。

ユリア・ステパノワ (ファースト・ソリスト)
http://stanmus.com/person/1171

カミル・ヤングラツォフ (コール・ド・バレエ)
http://stanmus.com/person/1172


さて、モスクワ音楽劇場バレエと言えば、今年5月に来日公演が予定されています。来日公演に彼女が出演してくれたら嬉しいですよね。

http://www.kyodotokyo.com/mamt

■5/20(水)〜21(木):ブルメイステル版『エスメラルダ』(全3幕)
■5/23(土)〜24(日):ブルメイステル版『白鳥の湖』(全4幕)

1月23日(金)18:00まで、キョードー東京最速先行受付が行われています。
0570-550-799(平日11:00-18:00/土日祝10:00-18:00)

ドラマティックなバレエに定評のあるこのカンパニー、ここが上演するブルメイステル版の「白鳥の湖」はとにかく素晴らしいです。

http://youtu.be/XhPUrCwPDhc

DVD「マラーホフのマスタークラス」

ウラジーミル・マラーホフのダンサーとして、そしてベルリン国立バレエの芸術監督としてのキャリアのエッセンスを集大成した、レッスンDVDのシリーズが発売されています。「マラーホフのマスタークラス」、そして3枚の「マラーホフのヴァリエーション・レッスン」です。レッスンCDも併せて発売されました。

先シーズンまでベルリン国立バレエに所属していた針山愛美さんがプロデュースしたこのシリーズ。彼が作り上げてきたこのバレエ団での素晴らしい日々を映像に残したい、という思いで彼女自身が企画し、編集、製作まで携わったもので、まるでバレエ・カンパニーでの日常のクラスレッスンを見ているような、親密な雰囲気が漂っています。音声は日本語吹き替え、原語の英語と切り替えられますので、マラーホフ自身の声が聴きたい人にも嬉しい仕様。

http://youtu.be/EKcep5dgYH8

ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル、マリアン・ワルターなどプリンシパルダンサー、そして針山さん自身も出演。和気藹々とした雰囲気の中でバー・レッスン、そしてセンターが繰り広げられます。10人ものダンサーが参加してくれているという豪華版です。

マラーホフが見せてくれるバー・レッスンのお手本はさすがに非常に美しく、柔らかいポール・ド・ブラやきれいなつま先が印象的です。そして指導も、優しく丁寧ですが、時にはこうしなさい、これではダメ、という厳しい指示が飛ぶこともあります。全体的には、彼の暖かくお茶目な人柄が伝わってきて、特に最後の方のセンターレッスンでは笑い転げるところもあって、ファンにはたまらないことでしょう。ヤーナ・サレンコのバーレッスンの動きはお手本にふさわしい正確さと美しさです。

特にセンターレッスンでは、マラーホフの考えたアンシェヌマンをダンサーたちが踊っていく様子が見ごたえがあります。さすがにトップバレエ団のダンサーたちの動きは素晴らしく、バレエを習っていない人が見てもとても楽しめるのではないかと思います。ヤーナ・サレンコらの、トリプルまでも交えたグランフェッテ、ディヌ・タマズラカル、マリアン・ワルターによるグラン・ピルエットやソ・ド・バスク、トゥール・アン・レールなど華麗なテクニックもたっぷり堪能できます。サラ・メストロウィチも、ヴァルナ国際バレエコンクールで銅賞を受賞しているだけあって、非常にテクニックがあるバレリーナです。本当に上手な人はどこが違うのか、観ているとヒントがもらえます。そして、クラスレッスンでの動きが、どうやって本番での踊りにつながっていくのかということも見えてきます。

ダンスマガジンで、マラーホフの東京での日々についての連載が始まっていますが、それによれば今、マラーホフは東京バレエ団でクラスレッスンを教えているとのこと。この楽しいレッスンを受けられるダンサーたちは幸運ですね。

そして、特典として37分にもわたる、マラーホフのインタビューが収録されています。こちらの質問もすべて針山さんによるもの。バレエを始めたきっかけ、10歳でボリショイ・バレエ・アカデミーに入学し、名教師ピョートル・ペストフに師事した時のこと、家族を離れて一人で寮生活を始めたときの辛さとそれをどうやって克服したか、ロシアを離れて国際的なダンサーとして西側に渡った時のこと、アレッサンドラ・フェリやジュリー・ケントなど今まで踊ったパートナーたちのこと。ダンサーとして心がけてきたこと、日本という国への想い、東京バレエ団でアーティスティックアドバイザーとしての仕事をする意気込みなどを語ってくれています。ダンサーの人生というものがいかに厳しく険しい道のりであるかということもよく伝わってきます。

異色なこととしては、趣味の料理について、そしてフィギュアスケートなどについても熱く語っていて、非常に面白いです。ダンサーとして必要な表現や芸術性についても、彼の想いを語り掛けてくれています。なので、バレエを学ぶ若い人たちにぜひ見てもらって、聞いてもらいたい素晴らしい内容になっています。ウラジーミル・マラーホフというダンサーはどうして生まれたのかということ、そして彼の人柄が伝わってきます。これほど内容の濃いインタビューもなかなかありません。彼のファンにとっては、必見の映像だといます。この映像を企画してくれた針山さんの熱い想いも伝わってきて、製作してくださったことに感謝です。

1月22日(木)には、マラーホフによる『バレエ初級』特別講座が、チャコット・ダンスキューブ勝どきスタジオで開催されるということで、こちらの映像を日本コロムビアさんに見せていただきました。この特別講座に参加できる皆さんは、本当にラッキーですね。
http://www.chacott-jp.com/magazine/news/announce/2015.html

指導:ウラジーミル・マラーホフ

ダンサー:ヤーナ・サレンコ、ジーヌ・タマズラカウ、マリアン・ヴァルター、ヤーナ・パロワ、サラ・メストロウィチ、クラッシーナ・パヴロワ、マルティン・アロヨス、ニコラ・デル・フレオ、リーザ・フロイガー、針山愛美

ピアニスト:ナディラ・ブルハノワ、マリタ・ミルサリモワ

2014年ドイツ作品 本編(レッスン)65分、特典(マラーホフインタビュー)37分
日本語吹替え(本編)、日本語字幕(特典) ※レッスンの日本語吹替えはON/OFF可
片面1層,チャプター有,メニュー画面
カラー/16:9
音声 ステレオ/ドルビーデジタル
2014年収録。4,800円+税

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2015/01/20

1/16 新国立劇場バレエ団 Dance to the Future -Third Steps-」

去年の秋ごろからなんだかものすごく忙しくて、ろくに寝る時間も取れなくてバレエの感想をたくさん溜めてしまっていて申し訳ありません。どれから取り掛かろうか悩むだけでも時間はたってしまうので、まずは直近のものから書いていこうと思います。

Dance to the Future -Third Steps- NBJ Choreographic Group

http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/150116_003725.html


バレエ団の中で、振付家を育てていく試みは海外では盛んに行われている。一番有名なのは、シュツットガルト・バレエのノヴェール・ソサエティで1958年に発足し、ジョン・ノイマイヤー、イリ・キリアン、ウィリアム・フォーサイス、ウヴェ・ショルツ、最近ではクリスチャン・シュプック、マルコ・ゲッケ、デミス・ヴォルピが育っていった。毎年「若手振付家の夕べ」という公演が行われている。ハンブルグ・バレエでも、"Young Choreographers" という公演がある。

NYCBでは、コレオグラフィック・インスティテュートがあり、必ずしも団員とは限らないものの、イリ・ブベニチェク、ジャスティン・ペックらがここで学んでいる。ロイヤル・バレエでは「Draft Works」という、団員が振付けた作品を披露する公演がある。パリ・オペラ座バレエでは、バンジャマン・ミルピエが団員の中から振付家を育てていく側面をもっと強化しようとしているとのことだ。


デヴィッド・ビントレー前舞踊芸術監督の発案・監修のもとに発足した、新国立劇場バレエ団の中から振付家を育てるプロジェクトも、今回で3回目。上演作品の数が減った分、クオリティは上がったように感じられた。かなり多くの作品の中から絞り込まれて、選ばれた7作品に、招待作品として平山素子さんの代表作の一つである「Revelation」が加えられた。平山さんは全体の監修も行っている。


「はなわらう」振付:宝満直也
[音楽]髙木正勝「Rama」 [衣裳]堂本教子
出演:福岡雄大、米沢唯、奥田花純、五月女遥、朝枝尚子、石山沙央理、フルフォード佳林、盆子原美奈

米沢さんと福岡さんのペアを中心に、6人の女性ダンサーを配置した淡くも爽やかな作品。タイトルの通り、6人の女性たちは花が咲き散っていく様子を表したようで、かわいらしい中に儚さを感じさせる。ちょっと崩してユーモアを交えた部分もあり、アンサンブルの配置や構成は工夫されている。米沢さんの柔らかい愛らしさと身体能力の高さという相反する要素をうまく使っていて、なんともいえない切なさも感じさせてくれる。


「水面の月」振付:広瀬 碧
[音楽]久石譲「6番目の駅」 [衣裳]広瀬碧、本城真理子
川口藍、広瀬碧

今回(招待の平山さんを除き)唯一の女性振付家である広瀬さんは、『ファーストステップス」から3回続けて作品を発表している。第一回には「ドッペルゲンガー」という女性2人が出演する作品を発表し、今回も自身と川口さんという女性2人の作品を作り上げた。白いドレスの広瀬さんと黒いドレスの川口さんは鏡に映ったお互いの映し身のよう。美しいだけではない、内面のダークサイドを覗かせるような作品で面白かった。


「Chacona」振付:貝川鐵夫
[音楽]ヨハン・セバスティアン・バッハ「シャコンヌ」 [衣裳]千歳美香子
奥村康祐、堀口純、輪島拓也、田中俊太郎

バッハの「シャコンヌ」を使用したネオクラシック作品で、男性3人は上半身裸に白いタイツ。「シャコンヌ」を使った作品はたくさんあるし、ありがちな作品になる危険性はあったのだが、今度「ニューイヤーガラ」で昨年の「Second Steps」で上演された「フォリア」が再演されるなど、振付家としての才能が認められつつある貝川さんだけのことはある。男3、女1という組み合わせを自在に操って構成力の巧みさを感じさせた。中でも奥村さんと輪島さんの男性同士のパ・ド・ドゥは妖しい雰囲気もあり、緊張感も感じさせて楽しめた。レオタード姿の堀口さんの身体のラインの美しさも印象的。
最近、輪島さんは比較的キャラクテール役が多くて踊りを見られる機会が少ないのだが、この作品で、彼の表現力、伸びやかできれいな身体のラインを見ることができたのも良かった。もっと踊る役にキャスティングしてほしいダンサーである。


「Revelation」振付:平山素子
[音楽]ジョン・ウィリアムズ「シンドラーのリスト」 [衣裳]鳥海恒子
小野絢子

唯一の招待作品であり、スヴェトラーナ・ザハロワが気に入ってたびたびガラでも踊っていることで知られている。平山さんが1999年に初めて振付をした作品だが、この習作集の中にあってはさすがに別格の完成度。一脚の椅子と、白いドレスの小野さん。ザハロワが踊るこの作品はYouTubeでも観られるが、二人のプロポーションの違い以上に、全く違った作品に見えた。いつもは可憐な小野さんが、時には壊れた人形のような怖さ、そして振り絞るような激しさ、切り裂くような鋭さと、一方では繊細さを見せて、圧倒的だった。小野さんの恐るべき才能の一端を観ることができてうれしかったのだが、反面、今の新国立劇場のレパートリーでは、彼女のこの表現力を見せる機会はあるのだろうか、とふと不安に思った。来シーズンも女性が踊るコンテンポラリー作品は一作品もないのだから。


「The Lost Two in Desert」振付:髙橋一輝
[音楽]グレゴリー・プリヴァ「Ritournelle」 [衣裳]竹内さや香
高橋一輝・盆子原美奈

題名の通り、砂漠をイメージした作品で衣装もエキゾチック。女性の衣装がワイルドなのだけど、下に履いているショートパンツで官能性がなくなってしまって、ちょっと残念。2人の踊りはパワフルで訴えかけるものはあったのだけど、衣装ひとつでちょっと萎えてしまった。


「Andante behind closed curtain」振付:マイレン・トレウバエフ
[音楽]ダン・クレアリー「Andante in steel」
湯川麻美子

これは湯川さんという女優バレリーナにマイレンから捧げられたラブレターだと感じた。「椿姫」のマルグリットを思わせるようなドレスに身を包んだ湯川さんがカーテンの向こうから現れて、椅子に腰かける。様々な感情を露わす彼女。栄光、苦悩、老いの恐怖を、時にはぎくしゃくとした動きで表現。やがて湯川さんは、片方のポワントを脱ぎ、ポワントのリボンで自分の首を絞める動作までする。そして首にポワントのリボンを巻き付けたまま、片足はポワント、もう片方は裸足で、それでいてポワント状態でパ・ドブレしながら去っていく。表現者としての湯川さんを余すところ見せ、そして振付としてのオリジナリティもある。サンクトペテルブルグで振付についてしっかりと学んだマイレンならではの、巧みさと、湯川さんへの想いが感じられ、思わず胸がいっぱいになった。椅子というモチーフは「Revelation」と共通するものであり、この二つの女性ソロが、この日の舞台で最も際立った鮮烈な表現であったと言える。


「Phases」 振付:福田圭吾
[音楽]スティーブ・ライヒ「New York Counterpoint : Fast」
    ヨハン・セバスティアン・バッハ & シャルル・グノー「アヴェ・マリア
菅野英男、寺田亜沙子、五月女遥、丸尾孝子、石山沙央理、成田遥

菅野さんと寺田さんのデュオが描くしっとりとした世界と、残り4人の女性ダンサーによるアスレチックな動きの2面性がある作品だが、どうもこの二つの世界観が融合しなくてちぐはぐなイメージが残ってしまった。菅野さんは、普段の古典作品で見せる姿と違った一面を見せてくれてとても素敵だったのだが。


「Dancer Concerto」振付:小口邦明
[音楽]ヨハネス・ブラームス「ピアノ協奏曲第二番 Op.83 第二楽章」
細田千晶、小口邦明、小柴富久修、林田翔平、原健太、若生愛、柴田知世、原田舞子

新国立劇場の小劇場の小さな舞台で、まさかシンフォニックバレエが観られるとは。舞台が狭いので若干踊りづらそうではあったが、ブラームスのピアノコンチェルトに合わせた美しい作品で、音楽性豊かで目に快い。普段真ん中で踊ることが少ない若手ダンサーたちをたっぷり見ることができたのも楽しかった。バランシンの亜流といえばそれまでなのだが、それでも主役が代わる代わる入れ替わっていく構成はきっちりしているので、大きな舞台に移し替えても映えると思われる。ダンサーでは、女性は断然細田さん、男性はオープニングで真ん中を踊った林田さんと、振付を手掛けた小口さんが美しかった。


というわけで、まだ3回目の催しではあり、まだまだ玉石混交の部分もある公演ではあるのだが、小さな会場でダンサーたちの息遣いが聞こえてくるほどの近い距離で、彼らが創作した荒削りの作品を観ることができるのはとてもスリリングであり、大変楽しめた。貝川さんのように、本公演で作品が上演されるようになった振付家も出現した。また、普段はコール・ド・バレエでしか観ることができない若手ダンサーが作品の真ん中やソロを踊るところを見ることができるのも嬉しい企画である。あともう少し手を入れれば傑作になる、というレベルの作品もあった。

「First Steps」の時は、作品数が非常に多くて、クオリティも様々であり「石」レベルの作品が多かったものの、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさと、親密な空気があった。3回目となると、ある程度のクオリティまで全体のレベルが上がってきた分、もう少しフォーマルに感じられた。来シーズンの第4回は、中劇場での公演に格上げとなる。更なるクオリティの上昇も期待できる反面、少しだけ寂しい気持ちもある。

いずれにしても、この試みが継続していることは良いことであり、デヴィッド・ビントレー前監督が蒔いた素晴らしい種である。さらに新しい振付家の才能が出てくることを期待し、そしてその作品がもっと、本公演の方でもどんどん上演されるようになることを願う。とにかく、今の新国立劇場バレエ団は、新しい振付家の作品を上演することが皆無なので、その状況に風穴を開けてほしいのだ。

2015/01/17

新国立劇場2015/2016シーズンラインアップ

新国立劇場の2015/2016シーズンラインアップが発表されました。

バレエでは、新制作作品は、すでに発表されていた『ホフマン物語』 (ピーター・ダレル)と『Men Y Men』 (ウェイン・イーグリング)です。

バレエ公演
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/variety/#anc2015_16

ダンス公演
http://www.nntt.jac.go.jp/dance/variety/#anc2015_16

<バレエ公演>

[新制作] ホフマン物語
2015年10月30日(金)~11月3日(火)
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150109_006127.html

キャスト

2015年10月30日(金)7:00
ホフマン福岡雄大 オランピア長田佳世 アントニア小野絢子 ジュリエッタ米沢 唯

2015年10月31日(土)1:00
ホフマン菅野英男 オランピア奥田花純 アントニア米沢 唯 ジュリエッタ本島美和

2015年10月31日(土)6:00
ホフマン福岡雄大 オランピア長田佳世 アントニア小野絢子 ジュリエッタ米沢 唯

2015年11月1日(日)2:00
ホフマン菅野英男 オランピア奥田花純 アントニア米沢 唯 ジュリエッタ本島美和

2015年11月3日(火・祝)2:00
未定

くるみ割り人形
2015年12月19日(土)~12月27日(日)
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150109_006128.html

2015年12月19日(土)2:00 2015年12月20日(日)2:00 2015年12月22日(火)7:00
キャスト未定

2015年12月23日(水・祝)1:00
金平糖の精 小野絢子 王子 福岡雄大

2015年12月23日(水・祝)6:00
金平糖の精 柴山紗帆 王子 菅野英男

2015年12月26日(土)1:00
未定

2015年12月26日(土)6:00
金平糖の精 米沢 唯 王子 井澤 駿

2015年12月27日(日)2:00
金平糖の精 長田佳世 王子 奥村康祐


ニューイヤー・バレエ
2016年1月9日(土)~1月10日(日)
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/variety/#anc2015_16
『セレナーデ』 バランシン振付
 細田千晶 本島美和 寺田亜沙子 菅野英男
『フォリア』  貝川鐵夫振付
 新国立劇場バレエ団
『パリの炎』パ・ド・ドゥ 
 1/9 柴山紗帆 八幡顕光 1/10 奥田花純 福田圭吾
『海賊』 パ・ド・ ドゥ 
 1/9 未定  井澤 駿 1/10 長田佳世 奥村康祐
『タランテラ』 バランシン振付
 1/9  米沢唯 奥村康祐 1/10 小野絢子 福岡雄大
『ライモンダ』より3幕
 1/9  小野絢子 福岡雄大  1/10 米沢唯 井澤 駿 


ラ・シルフィード/ [新制作] Men Y Men
2016年2月6日(土)~2月11日(木)
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150109_006130.html

『ラ・シルフィード』ブルノンヴィル振付 /『Men Y Men』 ウェイン・イーグリング振付

2016年2月6日(土)1:00
『ラ・シルフィード』

シルフィード米沢 唯 ジェームス奥村康祐

2016年2月6日(土)6:00
『ラ・シルフィード』
シルフィード細田千晶 ジェームス井澤 駿

2016年2月7日(日)2:00
『ラ・シルフィード』
シルフィード長田佳世 ジェームス菅野英男

2016年2月11日(木・祝)2:00
『ラ・シルフィード』
シルフィード小野絢子 ジェームス福岡雄大


ドン・キホーテ
2016年5月3日(火)~5月8日(日)
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150109_006131.html

キャスト未定

アラジン
2016年6月11日(土)~6月19日(日)

http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/150109_006132.html

キャスト未定


<ダンス公演>

近松DANCE弐題
2015年10月9日(金)~10月18日(日)
http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/150109_006134.html

Aプログラム 「エゴイズム」 加賀谷 香 Dance-SHAN 

Bプログラム「近松の女」 吾妻徳穂(日本舞踊) 酒井はな( バレエ) 蘭このみ(フラメンコ)


DANCE to the Future2016
2016年3月12日(土)~3月13日(日)

http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/150109_006135.html

NBJ Choreographic Group 作品 振付・出演新国立劇場バレエ団

『暗やみから解き放たれて』 振付 ジェシカ・ラング


平山素子「Hybrid -Rhythm & Dance」
2016年3月25日(金)~3月27日(日)

http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/150109_006136.html


高谷史郎(ダムタイプ)「CHROMA(クロマ)」
2016年5月21日(土)~5月22日(日)

http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/150109_006137.html

English National Ballet - Men Y Men

English National Ballet - Men Y Men from Melissa Panayiotou on Vimeo.

バレエ作品については、全体のバランスは古典に偏りすぎていた2014/15シーズンよりは良いと思います。ビントレー「アラジン」の再演、久しぶりの「ラ・シルフィード」の再演は嬉しいところです。

しかしやや残念なのが、このシーズンはトリプルビルがないことと、現代で活躍する振付家の作品がないことです(「アラジン」は別として)。また、公演回数がとても少ないのも残念です。3,4月には公演はないですし(ダンス公演「DANCE to the Future2016」はあります)、「ラ・シルフィード」の上演は4回のみ。オペラの上演作品の多さと比べて作品数も非常に少ないです。

ウェイン・イーグリングの「Men Y Men」新制作はありますが、イーグリングが現代で人気のある振付家であるとは言い難いわけですし、「ホフマン物語」は1972年初演とかなり古い作品であるわけで、牧阿佐美バレヱ団で上演されたこともあります。大原芸術監督の英国人脈ならではの作品なのでしょうが。

評判のよくない牧版「くるみ割り人形」が8回も上演されるのは、北米同様、「くるみ割り人形」がドル箱作品で、この儲けで残りのシーズンを乗り切るというビジネスモデルに基づいているからでしょう。確実にお客さんのはいる作品というのは経営を考えた必要だと思われますが、そろそろ、別の版の「くるみ割り人形」が観たいところです。

海外のバレエ団では、ラトマンスキー、ウィールドン、マクレガー、スカーレット、マリファント、シェルカウイ、エロといった振付家の新作が人気を呼んでいます。もちろん、そういったバレエ団のまねをする必要はありませんが、現代を生きる振付家の新しい作品を踊ることは、バレエ団の実力をつけるうえでも重要なことだと思われます。

先シーズン、ジェシカ・ラングが「暗やみから解き放たれて」を新国立劇場バレエ団のために創ったのも素晴らしいことでした。この作品が「DANCE to the Future2016」で再演されることは喜ばしいことですが、このような気鋭の振付家と組んで新しい作品を創る機会を増やしてほしいと思います。

今日、新国立劇場バレエ団のダンサーによる振付作品を中心とした「Dance to the Future Third Steps」を観てきました。この企画も3回目となり、作品のクオリティも上がって本公演で上演されてもおかしくないクオリティのものも出てきました。振付家として、そしてダンサーとして作品を創ることによって、ダンサーたちは表現力を身につけ、そして様々な語彙を獲得します。また、普段はコール・ド・バレエを踊っている若手ダンサーが、真ん中を踊ることができる貴重な機会でもあります。この試みが、来シーズンも、今度は中劇場と会場も大きくなって続くことはとても喜ばしいことですが、このように新しい作品を創ったり、振付家とリハーサルする機会は、ダンサーの成長のために欠かせないので、本公演でもっと現代作品を踊ることを増やしてほしいと思います。

また、この「Dance to the Future Third Steps」では、小野絢子さんが、平山素子さんの「Revelation」を踊りました。この作品は、スヴェトラーナ・ザハロワが踊ったことで有名な作品ですが、小野さんはザハロワとは全く違ったアプローチで、そして古典作品で見せる可憐なお姫様の姿とは全く違う、情念のこもった凄まじい表現を見せてくれました。こういうものをもっと観たい、って切に思います。

ガラ公演「ニューイヤー・バレエ」で、貝川鐵夫さん振付の「フォリア」が上演されるのは、良いニュースです。これは、まさに昨年の「Dance to the Future Second Steps」から生まれた作品でした。構成力がずば抜けて素晴らしく、また観たいと思っていたので、これがオペラパレスの大きな舞台で観られるとは嬉しい限りです。今回上演された貝川さんの作品もクオリティが高かったです。

2015/01/15

倉永美沙さんがSK-IIのキャンペーンに登場

ボストン・バレエのプリンシパルである倉永美沙さんが、トップスキンケアブランドSK-IIのブランドムービーに登場しています。

http://www.sk-ii.jp/ja/changedestiny.aspx

http://youtu.be/R6HDugp9msQ

日本語版
http://youtu.be/2oOsazErbq0

素晴らしいテクニックと表現力で、ボストン・バレエを代表するプリンシパルとして活躍する倉永美沙さん。モスクワ国際バレエコンクールでジュニア金賞、ジャクソン国際バレエコンクールでシニア金賞を受賞していて実力は折り紙付き。しかしそんな彼女も、156cmという小柄さ、華奢さで「バレリーナ向けではない」と言われ、プロとしてなかなか芽が出ない日々を送っていました。

倉永さんはローザンヌ国際コンクールでスカラシップを獲得し、サンフランシスコ・バレエの研修生となったものの、小柄ゆえ役に恵まれずバレエ団にも馴染めず、解雇されてしまったという苦い経験がありました。再起を期すため彼女は自分よりも若い生徒たちにまじってスクール・オブ・アメリカン・バレエに入り学び直しました。数年間努力を重ね、改めてプロに挑戦し、夢をつかむことができたのでした。「運命を変える」というのが今回のSK-IIのキャンペーンのテーマだそうです。

日本語のインタビュー記事
運命は変えられる。アジア人初のボストン・バレエ団トップダンサーが語る「不可能を越える力」
http://www.huffingtonpost.jp/2015/02/13/misa_kuranaga_n_6560658.html

倉永さんの圧倒的なテクニックは、こちらの「白鳥の湖」の黒鳥の動画で観ることができます(倉永さん自身のチャンネルから)。連続トリプルピルエット、前半は全部ダブルのグランフェッテなどの凄い技を、たやすいことのように軽々とやってのけて、見事としか言いようがありません。身長156cmとは思えない存在感、カリスマ性があります。

ヴァリエーション
http://youtu.be/QxUr5NX2dsw

コーダ
http://youtu.be/Msy-iloVyGo

倉永さんの踊り、どうやら今年は日本でも観られそうですよ。

ドキュメンタリー映画「バレエ・ボーイズ」映画祭「トーキョーノーザンライツフェスティバル」で上映

2015年1月31日(土)から2月13日(金)まで、北欧映画を上映するイベント「トーキョーノーザンライツフェスティバル 2015」が東京・渋谷のユーロスペースとアップリンクで開催されます。

http://www.tnlf.jp/

2015年で5回目を迎える「トーキョーノーザンライツフェスティバル 2015」。今回は、北欧五ヵ国の新旧の秀作から選りすぐりの17本が上映されるとのことで、ラース・フォン・トリアー監督の甥にあたり、既に各国で高い評価を得ているノルウェーの俊英ヨアキム・トリアーと、気鋭の若手アンドレアス・エーマン監督にフォーカスした特集や、北欧ミステリ特集、北欧古典映画の魅力に迫る特集など、4つの特集テーマに合わせた作品が登場するそうです。

ラース・フォン・トリアー初のコメディ作品『ボス・オブ・イット・オール』や、パペット・アニメーション映画『劇場版 ムーミン谷の彗星』なども上映されます。

その中で、「バレエ・ボーイズ」というノルウェーのドキュメンタリー映画のジャパン・プレミア上映もあります。
http://www.tnlf.jp/movie.html#ballet

原題:Ballettguttene/英題:Ballet Boys
監督:ケネス・エルヴェバック(Kenneth Elvebakk)
2014年/ノルウェー/ノルウェー語(Norwegian)
字幕:日本語/75min
提供:アップリンク

予告編
https://vimeo.com/99118757

BALLET BOYS / BALLETTGUTTENE - OFFICIAL TRAILER from Indie Film on Vimeo.

ノルウェーでバレエ・ダンサーを目指す3人の少年を追った4年間。時にはふざけ合いながらも厳しい練習に耐え、夢に向かって切磋琢磨していたが、ある日、彼らの中の1人だけが名門ロンドン・ロイヤル・バレエスクールから招待を受けて…。少年たちの葛藤と奮闘、そして踊る喜びをみずみずしく描き出したドキュメンタリー。
2/5(木)19:30~ 2/11(水)14:00~上映

Facebookサイト
https://www.facebook.com/ballettguttene

http://www.imdb.com/title/tt3447810/

世界中の映画祭で上映されて、好評を博している作品のようです。今月からニューヨークで開催される「Dance On Camera」というダンス映画の映画祭でも上映されます。

この3人の少年のうち一人Lukasは現在ロイヤル・バレエ・スクールの生徒、ほかの2人Syvertと Torgeirはオスロの国立芸術アカデミーで学んでおり、半年後に卒業を控えています。彼らの今後にも注目ですね。

日本での配給権はアップリンクが持っておりますので、劇場公開も期待できるのではないかと思います。

2015/01/13

チェスキーナ永江洋子さん死去

イタリア在住の資産家で、パトロンとして多くの音楽家を支援してきたチェスキーナ永江洋子さんが亡くなりました。享年82歳。

訃報:チェスキーナ永江洋子さん82歳=音楽家らを支援
http://mainichi.jp/select/news/20150113k0000m060072000c.html

イタリア語のニュース記事
http://www.veneziatoday.it/cronaca/contessa-yoko-nagae-ceschina-morta-venezia.html

マリインスキー劇場の公式サイトには、追悼文が掲載されています。この追悼文は、マリインスキー劇場芸術監督であるワレリー・ゲルギエフが自身のFacebookに掲載したものと同じです。
http://www.mariinsky.ru/en/news1/news2/12_232jan/

チェスキーナ洋子さんは、ゲルギエフの個人的な友人として長年彼と親しく交際してきました。マリインスキー・バレエが今月15日よりスタートさせるNY公演においても、彼女はスポンサーとして資金を提供しています。マリインスキー劇場内のコンサートホール新築も、彼女なくしては実現しないことであり、また、マリインスキー劇場管弦楽団やマリインスキー・バレエ、マリインスキー・オペラらの公演を収録してCDやDVD化しているマリインスキー・レーベルも彼女の力添えで実現しました。

ゲルギエフおよびマリインスキー劇場だけではありません。ヴァイオリニスト、マキシム・ヴェンゲロフに彼女はストラディバリウスを贈っており、またニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督アラン・ギルバートのスポンサーでもあります。ニューヨークフィルの2008年の平壌公演のスポンサーであったことでも知られています。東日本大震災のためのチャリティコンサートを、ゲルギエフとともに主催するなど、チャリティ活動にも熱心でした。ミラノ・スカラ座の修復にも資金を提供しています。2014年11月には、プーチン大統領から、ロシア文化に対する貢献やチャリティ活動に対してロシア友好勲章も贈られています。

熊本県出身のチェスキーナさんは、東京芸術大学でハープを学び、東京フィルハーモニー交響楽団の団員を経て戦後初の公費留学生として1960年にイタリアの音楽院に留学。ヴェネチアで資産家のレンツォ・チェスキーナ氏と出会い、77年に結婚しました。彼が亡くなった後、彼の膨大な遺産を巡って遺族と10年にも及ぶ裁判闘争を繰り広げましたが、勝訴。1.9億ドルもの遺産を相続しましたが、その遺産の多くを、音楽家に対するメセナ活動に活用していました。

彼女の数奇な人生を綴った自伝「ヴェネツィア 私のシンデレラ物語」を私も読みましたが、音楽に対する深い愛、貧しい生活から努力して芸大を経てイタリア留学に至るまでの苦労、裁判闘争を戦い抜いた強い意志、そして飾らない人柄が伝わってきて大変面白い読み物でした。単に幸運でお金持ちと出会ったシンデレラガールではなく、自分の力で運命を切り開いた女性として人々にインスピレーションを与えていたわけで、だからこそ、多くの音楽家に敬愛される存在となったのだと感じました。

彼女を失うことは、音楽界、特にマリインスキー劇場にとっては大きな損失です。今後、彼女のようにスケールの大きなパトロンは現れるのでしょうか。ご冥福をお祈りします。

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2015/01/12

12/28 チェコ国立バレエ「白鳥の湖」Labuti Jezero

12月28日にはプラハに移動して、チェコ国立歌劇場でチェコ国立バレエ「白鳥の湖」を観た。2017年からはフィリップ・バランキエヴィッチが芸術監督を務めるカンパニーである。

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http://www.narodni-divadlo.cz/en/show/5872?t=2015-01-14-19-00

チェコは国立歌劇場と国民劇場の二つのオペラハウスがあって両方でバレエを上演しているようだが、劇場としては国民劇場の方が有名かもしれない。しかし国立歌劇場の方も、重厚で美しい劇場だ。内装も渋めの金を多用していて、シックだが華麗。ハンガリー国立歌劇場よりは少し大きめの劇場である。

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キャストはチェックしていなかったのだけど、到着してキャスト表を見たら、なんとオデット・オディール役は日本人。荻本美穂 さんという方で、新国立劇場バレエ団を経て、ドイツ・ライン・バレエ、アールト・バレエ・シアター・エッセンのソリストを務め、2010年にチェコ国立バレエに入団、現在はプリンシパルだという。この荻本さん、長身で手足が長くプロポーションに恵まれているだけでなく、容姿も美しくて西洋人のダンサーにまじっても全く見劣りをしないどころか、さすが主役を務めるだけの存在感がある。思いがけず今まで知らなかった日本人のバレリーナが主演を務めていて、しかも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるのは嬉しいものだ。場内に掲出されてあった「ラ・バヤデール」のポスターも彼女の写真が使われていた。

Choreography: Pavel Ďumbala, Hana Vláčilová
Stage director: Pavel Ďumbala, Hana Vláčilová
Conductor: Václav Zahradník
Sets: Martin Černý
Costumes: Ľudmila Várossová

Odetta / Odilie Miho Ogimoto
Prince Siegfried Giovanni Rotolo
Rudovous Marek Svobonik
Pas de Trois Irina Burduja Benjamin Husson Andrea Kramešová
Sasek Sergej Gherciu

この「白鳥の湖」は基本的にはオーソドックスな演出であるものの、随所に工夫がされていて非常に楽しめるものに仕上がっていた。ブルメイステル版のように、プロローグでオデットは姫の姿で登場し、悪魔ロットバルトによって白鳥の姿に変えられる。衣装はやや現代的というか19世紀くらいの時代のように見受けられてなかなかスタイリッシュだ。パ・ド・トロワの踊りに王子は一瞬参加するものの、女性ダンサーにはあっさり振られてしょぼんとしてしまう。2幕「情景」に移る前に、王子のソロ有。2幕もオーソドックスではあるが、オデットの登場でマイムは登場せず、オデットのヴァリエーションの方がグラン・パ・ド・ドゥより先に踊られていた。

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3幕では、ロットバルトがとてもハンサムな紳士として登場したので、ヌレエフ版やグリゴローヴィッチ版のようにロットバルトのソロがあるかな、と期待したのだけどそれはなかった。オディールが王子の花束をポイッと投げ捨て、思いっきりあざ笑う様子が印象的。また、この公演で実は一番印象的だったのがキャラクターダンス。このバレエ団のキャラクターダンサーたちの踊りが実に見事であり、特にロシアの踊りは、他の版のように女性ソリストではなく男女ペアが何組かで踊るのだが、メーンのペアの踊り、特に男性が凄かった。ロシアの民族舞踊に観られるようなコサックダンス的な踊り。チャルダッシュなどももちろんお手の物。やはり「白鳥の湖」の各国の踊りは、ポワントではなくてキャラクターシューズで踊られた方が見ごたえがあると感じた次第であった。この部分の振付もとても良い。

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そして最終幕では、とちゅうからなぜかオデットの姿が見えなくなり、王子とロットバルトが1対1で戦い対決する。ロットバルトは、翼はあるものの、姿は基本的には3幕のハンサムな紳士のままなので、このシーンはなかなかかっこよくて盛り上がる。王子がロットバルトの翼をもぎ取った後、二人とも波に呑まれるが、王子は岸に泳ぎ着き、見上げると、姫の姿に戻ったオデットの姿が。

オデット・オディールの荻本さんは、華奢で長い腕を生かした、たおやかで繊細な白鳥を演じていた。悲劇性はそれほどないけど気高いイメージがあり、背中が柔らかく表現力も豊かである。オディールの方も、邪悪さというよりは高慢な雰囲気で、手の届かないようなオーラを持っていてぞくぞくした。グラン・フェッテはすべてシングルではあったものの、安定していて正確。舞台の中心に立つにふさわしい華とカリスマ性を持っており、ヨーロッパのカンパニーでプリンシパルを務めるというのはこういうことなのだと実感した。世界には、日本ではあまり知られていないけれど素晴らしい日本人バレリーナがいるのだと感じた。

王子役のジョヴァンニ・ロトーロはイタリア人でドゥミ・ソリスト、まだ入団3年目と若い。長身でイノセントな雰囲気がある。テクニックも冴えていて、グランジュッテの軌跡も、着地もきれい。一方のロットバルトのMarek Svobonikも長身で見栄えがする。道化の跳躍力も大したもの。コール・ド・バレエはそこまでそろっているわけではないけれども、プロポーションは美しい人ばかりで、カンパニーの全体的なレベルも高いと感じられた。しかしやはり一番印象的だったのは、主役の荻原さんと、民族舞踊の実力の高さだった。非常に楽しめる「白鳥の湖」で、普段あまり「白鳥の湖」が好きではない私も、とても満足できた。

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2015/01/11

シディ・ラルビ・シェルカウイx森山未來『プルートゥ PLUTO』プレスコール

現在最も注目されている振付家の一人であり、オリヴィエ賞を2度受賞しているシディ・ラルビ・シェルカウイが、浦沢直樹のコミック「PLUTO」を舞台化した『プルートゥ PLUTO』(1月9日開幕)のプレスコールを見せていただきました。

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プルートゥ イラスト(c)浦沢直樹・スタジオ ナッツ 長崎尚志 手塚プロダクション / 小学館

http://www.pluto-stage.jp/
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/15_pluto/index.html

漫画家の浦沢直樹とストーリー共同制作者の長崎尚志。熱烈な手塚ファンである両氏が手塚治虫の鉄腕アトム「地上最大のロボット」のリメイクを切望し、手塚プロダクションの許諾を得、手塚眞氏の監修のもと、新たな命と使命を吹き込まれ誕生したのがコミック『PLUTO』です。この作品は累計850万部を突破。20以上の言語に翻訳され、全世界に愛読者を持っています。

シディ・ラルビ・シェルカウイは、改めて説明するまでもありませんが、映画「アンナ・カレーニナ」の振付を手掛け、また2011年には、手塚治虫の思想/生涯をダンスというメディアで展開する「テ ヅカ TeZukA」を創作するなど、多岐にわたる活動を行っています。

ベルギー、イスラエルで1年間の平成25年度文化交流使としての活動を終えて帰国したばかりの森山未來はじめ、永作博美、柄本明、吉見一豊 、松重豊、寺脇康文という豪華なキャストを迎えています。それに加え、「Babel (words)」にも出演していた上月一臣、ダンスファンにもおなじみの大植真太郎(元ハンブルグ・バレエ、NDT、クルベリ・バレエ)、原田みのる、池島 優、大宮大奨、渋谷亘宏、鈴木 竜、AYUMIという8人のダンサーが出演しています。

「モロッコ(人の父)とベルギー(人の母)という二つの文化の中で育ってきた僕は、子どもの頃から人間とロボットが共生することを夢見る『鉄腕アトム』に 強く惹かれていた」とシェルカウイは語っており、「手塚治虫は自分の一部のような存在」なのだそうです。

さて、こちらの作品のゲネプロを拝見したのですが(1幕のみ)、これからご覧になる方もあるので細かいことは申し上げませんが、とても刺激的でセンス・オブ・ワンダーに満ちた作品です。出演者を見て、演劇作品なんだと思ったのですが、ダンスとしての要素も高いです。8人のダンサーがとても効果的に演出を担っています。さまざまな種類のロボットの操作と、複雑に形状を変えて動く舞台装置を動かすのがダンサーの役割なのです。

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一辺が1メートル前後の白い台形のパネルが7個あり、ダンサーの面々がそれを数個ずつ組み合わせて、テーブルにしたり、壁にしたり、飛び石のようにバラして置いたりと、多様な形態に変容させている。プロダクションノートより)
とにかく、舞台装置の使い方、そしてそれを操るダンサーの動きがとてもユニークで、わくわくしながら観ていました。

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もうひとつの重要なダンサー陣の役割が、ロボット(=人形)遣いだ。これにはロボットの種類の違い により、「パペッター」と「マニピュレイター」という、2種の呼称が使われている。パペッターは、その名の通り人形遣いで、体長60センチほどのアリから、約4メートルにおよぶプルートゥまで、造形された人形を操作する者のこと。そして「マニピュレイター」は、アトムやゲジヒトなど、俳優が演じる高性能 ロボットに、文楽の人形遣いのように3人1組で寄り添う存在のことだ。彼らは、糸操り人形の糸を引くしぐさでロボット(俳優)を操る動きを見せるだけでなく、ロボットに、向けるべき視線の場所を指示したり、感情の表出の様子を手振りで表現したりと、人工知能による指示系統をビジュアル化したかのような動きを見せる。(プロダクションノートより)

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ダンサーに操られているということで、このキャラクターは人間ではなく、ロボットであるということを表現しているのです。俳優の感情表現も、ダンサーが補完している部分があるのが面白かったです。また、ダンサーたちの動きによって、この場面がどこで行われているのか、といった表現もしています。シェルカウイが純粋な演劇を演出するのは初めてではあるのですが、俳優との仕事やオペラの演出は経験があるので、このあたり非常に巧みです。

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森山さん以外の俳優たち自身は踊らないのですが、もちろん森山未來さんはダンサーとしてもとても優れている人ですし、ダンス以外でも、ダンサーならではの動きはたくさんあります。また、「アンナ・カレーニナ」の演出でも見られるように、俳優の動き一つがダンスだと思えばそう見えてくる、そういうところがシェルカウイならでは、と感じました。

舞台装置にコミックの図柄が映し出されるなど、原作の世界観を見事に表現したこの作品。もちろん、全編を改めて観る予定で、とても楽しみにしています。

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こちらの、シディ・ラルビ・シェルカウイのインタビューがとても興味深いので、併せてどうぞ。
http://allabout.co.jp/gm/gc/450445/

<原作>
浦沢直樹×手塚治虫
長崎尚志プロデュース
監修/手塚眞
協力/手塚プロダクション
※手塚治虫と手塚プロダクションの「塚」は旧漢字

<スタッフ> 
演出・振付:シディ・ラルビ・シェルカウイ
上演台本:谷賢一  映像・装置:上田大樹  照明:ウィリー・セッサ
音楽:吉井盛悟/オルガ・ヴォイチェホヴスカ 音響:井上正弘
キャラクタービジュアル・コスチュームデザイン・ヘアメイクデザイン:柘植伊佐夫
演出助手:長町多寿子 舞台監督:足立充章 

2015/1/9(金)~2/1(日)
Bunkamuraシアターコクーン

[主催]
Bunkamura/TBS

[企画・製作]
Bunkamura

<当日券情報>
各公演、開演1時間前からシアターコクーン当日券売場にて販売。
あれば座席券(席種未定)・中2階立見券(3,500円)を同時に販売。 中2階立見券がなくなり次第、2階立見券(2,500円)を販売いたします

S・¥10,500 A・¥8,000 コクーンシート・¥6,000 (全席指定・税込)
お問い合わせ:Bunkamura 03-3477-3244<10:00~19:00>

FNNnewsCHのニュース映像

2015/01/08

ワガノワ・アカデミーのFacebookとTwitterアカウント、2016年来日公演

ワガノワ・アカデミーのFacebookとTwitterアカウントが開設されていました。

https://www.facebook.com/academyvaganova

https://twitter.com/VaganovaAcademy

Twitterの方はロシア語のみですが、Facebookは英語とロシア語の両方です。公演のキャスティングなどの情報も掲載されています。ワガノワ・アカデミーは、マリインスキー劇場で年末年始に10回の「くるみ割り人形」の公演を行い、その主役キャストは将来のスター候補として大いに注目されます。


ところで、最近、英国のDancing Timesというダンス雑誌の12月号に、マリインスキー・バレエの芸術監督(実際には芸術監督の地位は空席であり、彼はマリインスキー劇場の副芸術監督)であるユーリ・ファテーエフのインタビューが掲載されて物議を読んでいます。

この雑誌はオンライン版はありませんので、英国や米国のフォーラムに転載されたものを情報源としています。それによると、「最近マリインスキー・バレエで主役を演じているのは、ワガノワ・アカデミーの卒業生ではないダンサーたちですよね?」という記者の質問に対して、ファテーエフが次のように答えたとのことです。

「ワガノワ・アカデミーは、ダンサーを育て上げる素晴らしい学校であり、毎年プロフェショナルなアーティストを生み出しています。そのうち大部分は、コール・ド・バレエ向きであり、うち数人はもう少し位の高いコリフェとなります。しかしながら、マリインスキー・バレエは、古典バレエにおいて主役を演じることができる、突出した才能のダンサーを必要としています。これは、どのカンパニーにおいても大きな問題になっています。理由の一つは、最近の親は、バレエ学校ではなくて、体操、スケート、サッカーといったスポーツをさせたがっているからです」

つまりは、ワガノワの卒業生はコール・ド・バレエには向いているけれども、プリンシパルとなる人材は、ワガノワ出身ではない人の方がいいと彼は言っているわけです。これに対しては、各方面から卒業生に対する侮辱だと怒りの声が上がっています。

で、実際見てみると、最近のワガノワ卒業生でセカンド・ソリスト以上に昇格したダンサーが非常に少ないということがわかります(過去10年間の卒業生の中では、セカンド・ソリストのナデジダ・バトーエワのみ)。ワガノワで優秀な成績を収めたオルガ・スミルノワ、クリスティーナ・シャプラン、ヴィクトル・レベデフ、そしてクセニャ・ジガンシナはマリインスキーには入団しませんでした。(ただし、シャプランはモスクワ音楽劇場バレエ、ミハイロフスキーバレエを経てマリインスキーにファースト・ソリストとして入団)。ワガノワの今までの生徒の中でも非常に優秀で多くのファンがいるユリア・ステパノワはコリフェまでしか昇進できず、先日退団してしまいました。

一方で、ワガノワを卒業していないダンサーの活躍が目立っています。ペルミ出身のオクサナ・スコーリクやマリア・シリンキナ、英国ロイヤル・バレエから移籍した英国人のザンダー・パリッシュ、韓国人のキム・キミン、アゼルバイジャン出身のティムール・アスケロフなどです。ミハイロフスキーから移籍したオクサナ・ボンダレンコはボリショイ・アカデミー出身です。
http://www.mariinsky.ru/en/company/ballet/troupe/

今後も、海外のバレエ団などからのゲストの出演もいくつか予定されているようです。


一方で、ワガノワ・アカデミーの校長となったニコライ・ツィスカリーゼ。正式に校長を選ぶための選挙が予定されていましたが、不思議なことに、ワガノワ・アカデミーの校長となるには、法律の学士号を持っていなければならない、という項目が付け加えられており、モスクワ大学で法律を学んだツィスカリーゼしか、この資格に該当しないことになりました。そのため、もう一人校長としての有力な候補者であったイリヤ・クズネツォフ(先日までマリインスキー・バレエのファースト・ソリストだった)は、この資格要件を満たさないために立候補もできなくなってしまったのでした。
http://www.ismeneb.com/Blog/Entries/2014/11/20_Vaganova_Academy_rewrites_criteria_to_suit_Tsiskaridze_alone.html

もう一つ、ツィスカリーゼの強烈なキャラクターを示すインタビュー記事があります。
http://www.ismeneb.com/Blog/Entries/2014/12/28_Save_Russian_ballet_from_half-trained_West%2C_says_Tsiskaridze.html

それによると、西側のバレエ団が、「白鳥の湖」や「ドン・キホーテ」「ラ・バヤデール」などロシアで生まれたバレエ作品にロイヤリティを払わないのはおかしいと彼は語っています。また、西側のバレエは半分しか訓練されていないし、ロシア・バレエはそれらとは隔絶した存在でなければならないとも言っています。しかしながら、ワガノワ・アカデミーの卒業公演においては、バランシンやブルノンヴィルなど西側の作品も上演されていたりします。また、いうまでもなく、バレエのルーツそのものはロシアではなく、フランスです。

このように物議を呼ぶ言動が目立つツィスカリーゼですが、一方で、教師としての彼は非常に熱心で生徒に愛情を持ち、教え方も上手だという評判が聞こえてきています。


そのワガノワ・アカデミーですが、2016年1~2月には来日公演が予定されています。
http://www.arstokyo.jp/2015/ps3/index.html
それも十八番であるワイノーネン版「くるみ割り人形」を持ってくるとのことですので、ここで現在の姿を知ることができるでしょう。

2015/01/06

ミュンヘン・バレエのラトマンスキー復元「パキータ」ネット中継

今シーズンの大きな話題は、振付家アレクセイ・ラトマンスキーが、プティパ版「パキータ」を復元し、ミュンヘン・バレエで初演されたことです。

予告編
http://youtu.be/Mi89XbWLeaI

12月13日に初演されたこの「パキータ」は、さっそくNew York Timesにレビューが掲載されるなど大きな話題を呼んでいます。

この「パキータ」ですが、バイエルン州立劇場のStaatsoper.TVによって、インターネット中継が1月11日(日)ヨーロッパ時間午後6時より行われます。
https://www.staatsoper.de/en/staatsopertv.html

中継ページ
http://www.operlive.de/

今までのバイエルン州立劇場のインターネット中継は、日本向けに見やすい時間帯でのストリーミングを行ってくれていたのですが、今回はそちらの告知はまだありません。

日本語Facebookサイト
https://www.facebook.com/staatsopertvjp

キャスト
Paquita Daria Sukhorukova
Lucien d’Hervilly Tigran Mikayelyan
Inigo Cyril Pierre
Don Lopez de Mendoza Norbert Graf
Pas de trois Katherina Markowskaja, Mai Kono, Javier Amo
Variations Evgenia Dolmatova, Séverine Ferrolier, Magdalena Lonska, Zuzana Zahradníková

パキータ役は、元マリインスキー・バレエで美しい脚を誇るダリア・スホルコワ、リュシアンはティグラン・ミカエリャン、そしてイニーゴはシリル・ピエール。パ・ド・トロワを河野舞衣さんが踊ります。


1881年にプティパによって振付けられ、マリインスキー劇場で上演された作品を当時の姿で復元するために、ラトマンスキーはステパノフ・ノーテーション(舞踊譜)の専門家であるDoug Fullingtonと読み解き、衣装も当時のものを再現しました。1846年に「パキータ」はパリ・オペラ座でジョセフ・マジリエによって振付けられており、プティパがマリインスキー劇場に移ってから最初に振付けた作品である「パキータ」(1847年版)はこの版をベースとしています。1881年のプティパ版は、もともとのÉdouard-Marie-Ernest Delvedezの音楽に加え、アダン、ドリゴ、ドリーブ、プーニらの音楽を付け加えてましたが、現在振付の多くは失われています。

ラトマンスキーは1902年、1903年に記録された舞踊譜をもとに復元を行いました。その中で、現在ポピュラーな「パキータ」の踊りは、2幕のソロ一つだけなのですが、作品全体はすべて舞踊譜に記録されていたそうです。もちろん、腕のポーズなどの細かい点までは記録されていないので、推測するしかないところもあるようですが。

「パキータ」復元版では、現在の流行とは違っていて、脚は腰の高さくらいまでしか上げられていません。サポート付きのアラベスクは前傾しています。エポールマンが非常に重要なポイントとなっています。ディテールに富んだ動きで、細かい足捌き、上半身は常に脚と反対側にひねられており、頭や視線の使い方が雄弁で手のひらは上に向けられることが多いとのこと。今までの19世紀バレエは2次元で写真のようだけど、この作品は立体的に見えるそうです。

パリ・オペラ座でピエール・ラコットが復元した「パキータ」同様、ストーリー自体は他愛のないものです。最後には、「コッペリア」などでも踊られているものを含む6つのヴァリエーションと、華やかなコール・ド・バレエで幕が閉じられます。ラトマンスキーはオリジナルのプティパの振付を再発見し、自身の持つ幅広い知識と洗練によって、バレエの未来にとってもたくさんのアイディアを提供する失われた歴史が明らかにしました。

注目のこの作品、ネット視聴で観られるのは嬉しいです。

(しかし、バイエルン州立劇場の中継はアーカイブはありませんので、ストリーミングでリアルタイムで観るしかないのがちょっと残念なところです。DVDなど出してくれたら嬉しいのですが)

2015/01/05

12/27 ハンガリー国立バレエ「くるみ割り人形」

初めて訪れたブダペストの、ハンガリー国立オペラ劇場で、ハンガリー国立バレエの「くるみ割り人形」を観てきた。残念ながらこの日は出演していないけれども、ここは中村祥子さんがプリンシパルを務めるバレエ団である。

http://www.opera.hu/musor/megtekint/a-diotoro/

ハンガリー国立オペラ劇場は、大きさこそ小ぶりではあるけれども、内装は実に華麗で美しく、特に2階席やホワイエに向かう階段の豪華さは目もくらむほど。どこか東洋的なエキゾチックな意匠も施されている。昼間には劇場ツアーもあるとのことで、参加してくればよかった。「くるみ割り人形」は子供にも人気の演目なので、客席にもお子様は多く、私が買った席は最後の2枚だった。

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このようにとても美しい劇場なのだが、バレエを上演するには舞台が狭いように感じられた。オペラも上演する由緒正しい劇場なので、奥行きはかなりあるようだが、幅が狭い。オーケストラピットも狭く浅い。最前列の端の席で観たのが、目と鼻の先にあるオーケストラピットからハープが2本突き出しており、児童コーラスはバルコニー席にいたようである。

Choreographer Vaszilij Vajnonen
Composer Pjotr Iljics Tchaikovsky
Libretto after E. T. A. Hoffmann by Vaszilij Vajnonen
Set Designer Gusztáv Oláh
Costume Designer Gusztáv Oláh

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Conductor Valéria Csányi
Princess Maria Alexandra Kozmér
Nutcracker Prince Zoltán Oláh
Maria Anna Fülöp
Drosselmeyer Gábor Szigeti
Fritz Gergő Cserháti
Two Snowflakes 1 Kristina Starostina
Two Snowflakes 2 Judit Varga
Mouse King Jurij Kekalo
Nutcracker Vince Topolánszky
Clown Balázs Majoros
Ballerina Olga Chernakova
African dancer Miklós Dávid Kerényi

ここの「くるみ割り人形」はワイノーネン版。東京バレエ団で採用している版と基本的には同じである。ただし、相違点はかなりあり、まず、1幕のマリー(クララ)は子役が演じるし、他のパーティの参加者たちもみな子供で、クリスマスツリーが大きくなるシーンで大人のプリンセス・マリーに入れ替わる。ネズミたちの中に入っているのも子供たちなので、可愛い。また、このクリスマスツリーが大きくなった後で休憩が入り、「くるみ割り人形」にしては異例の3幕構成となっている。そのため、やや冗長に感じられた。

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カンパニーのレベルは比較的高い。特に、雪のシーンでは、コール・ドがとても良くそろっており、ダンサーたちのプロポーションもきれいで見ごたえがあった。ここでのソリストもグラン・ジュッテが大きく、伸びやかで美しい。惜しむらくは、とにかく舞台が狭いので踊りにくそうに見えることであり、途中で一人の群舞が転んでしまった。あの狭さで、転倒することによる他のダンサーに影響が出なくてすぐにリカバリーできたのは大したものだが。

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お菓子の国のソリストたちも水準が高く、特に中国のダンサーは跳躍力に優れていてお見事だった。女性ダンサーたちは容姿も美しい。プリンセス・マリーのAlexandra Kozmérは大人っぽい雰囲気があるけれども、足の甲がよく出て、丁寧で音楽性豊かな踊り。王子のZoltán Oláhは優しげな雰囲気があり、こちらもクラシカルでパートナーリングも巧み、3幕のパ・ド・ドゥでのリフトもスムーズにしっかりと決めてくれた。残念なのは、男性ダンサーが王子はじめ、みなあか抜けない白いカツラをかぶっていること。そして、ワイノーネン版の振付は、3幕花のワルツの振付がつまらない。花のワルツの衣装も、あまりよくない。これはそういうプロダクションなのが問題なのであって、ダンサーの責任ではないのだが。

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しかしながら、子供の姿が多く見られる客席は、みんなわくわくしながら楽しげに舞台に見入っているのが伝わってきたし、席が満席なのもめでたい感じで雰囲気が非常に良い。この劇場は音響も良いうえ、オーケストラの演奏も素晴らしかった。指揮者は、珍しく女性指揮者のValéria Csányi 。豪華な劇場で、水準の高い踊り、美しい「くるみ割り人形」の音楽、満席の客席というのは気持ちが良いし、良い年末の一日を皆味わったに違いない。私も、もちろんその中の一人。

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ハンガリー国立バレエ所属の藤井彩嘉さんのインタビュー記事
http://odoritai.exblog.jp/22558384/


2015/01/02

新年&NHK BSプレミアムで2月にロイヤル・バレエ「冬物語」放映

2015年になりました。あけましておめでとうございます。皆様方にとって、幸せで楽しい一年になりますように。平和で天災のない年になりますように。

今年は喪中だったので年賀状も書かず、年末はクリスマスから新年までヨーロッパに家人と旅行に行ってました。ウィーン、ブダペスト、プラハ、シュツットガルトです。観劇よりも観光が中心の旅でしたが、ブダペストでハンガリー国立バレエの「くるみ割り人形」、プラハでチェコ国立バレエの「白鳥の湖」、そしてシュツットガルトでシュツットガルト・バレエの大晦日ガラを観てきました。とても楽しい旅でした。その間、ブログの更新もできず申し訳ありません。今朝帰国したところです。

さて、2月のNHK-BSの番組表がアップされていました。
http://www.nhk.or.jp/bsmile/lineup/bspremium_nextmonth.pdf

バレエ関係では、

2月8日(日)24:00~ プレミアムシアター
英国ロイヤル・バレエ公演
「ウィンターズ・テイル」
出演:エドワード・ワトソン、
    ローレン・カスバートソン、
    サラ・ラム、ゼナイダ・ヤノフスキ
                    ほか
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:ジョビー・タルボット
管弦楽:コヴェントガーデン
       王立歌劇場管弦楽団
指揮:ディヴィッド・ブリスキン

英国ロイヤル・バレエ公演
「不思議の国のアリス」
出演:ローレン・カスバートソン、
    セルゲイ・ポルーニン、
    エドワード・ワトソン、
    ゼナイダ・ヤノフスキー、
    クリストファー・サウンダースほか
    英国ロイヤル・バレエ団
振付:クリストファー・ウィールドン
管弦楽:コヴェントガーデン
       王立歌劇場管弦楽団
指揮:バリー・ワーズワース

という、クリストファー・ウィールドン振付作品二つの放映があります。「ウィンターズ・テイル」(冬物語)は、DVDも発売されますね。

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なお、今月ですが、
1月11日(日)24:00~ ウィーン・フィル ニューイヤーコンサートの再放送
1月13日(火)23:45~ 森山未來「踊る阿呆」の再放送
1月16日(金)9:00~、「吉田都 輝く女」(再放送) (23日深夜1:55~からも放映有)
1月19日(月)9:00~「サンクトペテルブルク音楽の都300年の物語~ゲルギエフとたどる栄光と苦難」(再放送) (26日深夜0:45からも放映有)
http://www.nhk.or.jp/bsmile/lineup/bspremium_thismonth.pdf

の放映があります。

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