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« 新国立劇場2015/2016シーズンラインアップ | トップページ | DVD「マラーホフのマスタークラス」 »

2015/01/20

1/16 新国立劇場バレエ団 Dance to the Future -Third Steps-」

去年の秋ごろからなんだかものすごく忙しくて、ろくに寝る時間も取れなくてバレエの感想をたくさん溜めてしまっていて申し訳ありません。どれから取り掛かろうか悩むだけでも時間はたってしまうので、まずは直近のものから書いていこうと思います。

Dance to the Future -Third Steps- NBJ Choreographic Group

http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/150116_003725.html


バレエ団の中で、振付家を育てていく試みは海外では盛んに行われている。一番有名なのは、シュツットガルト・バレエのノヴェール・ソサエティで1958年に発足し、ジョン・ノイマイヤー、イリ・キリアン、ウィリアム・フォーサイス、ウヴェ・ショルツ、最近ではクリスチャン・シュプック、マルコ・ゲッケ、デミス・ヴォルピが育っていった。毎年「若手振付家の夕べ」という公演が行われている。ハンブルグ・バレエでも、"Young Choreographers" という公演がある。

NYCBでは、コレオグラフィック・インスティテュートがあり、必ずしも団員とは限らないものの、イリ・ブベニチェク、ジャスティン・ペックらがここで学んでいる。ロイヤル・バレエでは「Draft Works」という、団員が振付けた作品を披露する公演がある。パリ・オペラ座バレエでは、バンジャマン・ミルピエが団員の中から振付家を育てていく側面をもっと強化しようとしているとのことだ。


デヴィッド・ビントレー前舞踊芸術監督の発案・監修のもとに発足した、新国立劇場バレエ団の中から振付家を育てるプロジェクトも、今回で3回目。上演作品の数が減った分、クオリティは上がったように感じられた。かなり多くの作品の中から絞り込まれて、選ばれた7作品に、招待作品として平山素子さんの代表作の一つである「Revelation」が加えられた。平山さんは全体の監修も行っている。


「はなわらう」振付:宝満直也
[音楽]髙木正勝「Rama」 [衣裳]堂本教子
出演:福岡雄大、米沢唯、奥田花純、五月女遥、朝枝尚子、石山沙央理、フルフォード佳林、盆子原美奈

米沢さんと福岡さんのペアを中心に、6人の女性ダンサーを配置した淡くも爽やかな作品。タイトルの通り、6人の女性たちは花が咲き散っていく様子を表したようで、かわいらしい中に儚さを感じさせる。ちょっと崩してユーモアを交えた部分もあり、アンサンブルの配置や構成は工夫されている。米沢さんの柔らかい愛らしさと身体能力の高さという相反する要素をうまく使っていて、なんともいえない切なさも感じさせてくれる。


「水面の月」振付:広瀬 碧
[音楽]久石譲「6番目の駅」 [衣裳]広瀬碧、本城真理子
川口藍、広瀬碧

今回(招待の平山さんを除き)唯一の女性振付家である広瀬さんは、『ファーストステップス」から3回続けて作品を発表している。第一回には「ドッペルゲンガー」という女性2人が出演する作品を発表し、今回も自身と川口さんという女性2人の作品を作り上げた。白いドレスの広瀬さんと黒いドレスの川口さんは鏡に映ったお互いの映し身のよう。美しいだけではない、内面のダークサイドを覗かせるような作品で面白かった。


「Chacona」振付:貝川鐵夫
[音楽]ヨハン・セバスティアン・バッハ「シャコンヌ」 [衣裳]千歳美香子
奥村康祐、堀口純、輪島拓也、田中俊太郎

バッハの「シャコンヌ」を使用したネオクラシック作品で、男性3人は上半身裸に白いタイツ。「シャコンヌ」を使った作品はたくさんあるし、ありがちな作品になる危険性はあったのだが、今度「ニューイヤーガラ」で昨年の「Second Steps」で上演された「フォリア」が再演されるなど、振付家としての才能が認められつつある貝川さんだけのことはある。男3、女1という組み合わせを自在に操って構成力の巧みさを感じさせた。中でも奥村さんと輪島さんの男性同士のパ・ド・ドゥは妖しい雰囲気もあり、緊張感も感じさせて楽しめた。レオタード姿の堀口さんの身体のラインの美しさも印象的。
最近、輪島さんは比較的キャラクテール役が多くて踊りを見られる機会が少ないのだが、この作品で、彼の表現力、伸びやかできれいな身体のラインを見ることができたのも良かった。もっと踊る役にキャスティングしてほしいダンサーである。


「Revelation」振付:平山素子
[音楽]ジョン・ウィリアムズ「シンドラーのリスト」 [衣裳]鳥海恒子
小野絢子

唯一の招待作品であり、スヴェトラーナ・ザハロワが気に入ってたびたびガラでも踊っていることで知られている。平山さんが1999年に初めて振付をした作品だが、この習作集の中にあってはさすがに別格の完成度。一脚の椅子と、白いドレスの小野さん。ザハロワが踊るこの作品はYouTubeでも観られるが、二人のプロポーションの違い以上に、全く違った作品に見えた。いつもは可憐な小野さんが、時には壊れた人形のような怖さ、そして振り絞るような激しさ、切り裂くような鋭さと、一方では繊細さを見せて、圧倒的だった。小野さんの恐るべき才能の一端を観ることができてうれしかったのだが、反面、今の新国立劇場のレパートリーでは、彼女のこの表現力を見せる機会はあるのだろうか、とふと不安に思った。来シーズンも女性が踊るコンテンポラリー作品は一作品もないのだから。


「The Lost Two in Desert」振付:髙橋一輝
[音楽]グレゴリー・プリヴァ「Ritournelle」 [衣裳]竹内さや香
高橋一輝・盆子原美奈

題名の通り、砂漠をイメージした作品で衣装もエキゾチック。女性の衣装がワイルドなのだけど、下に履いているショートパンツで官能性がなくなってしまって、ちょっと残念。2人の踊りはパワフルで訴えかけるものはあったのだけど、衣装ひとつでちょっと萎えてしまった。


「Andante behind closed curtain」振付:マイレン・トレウバエフ
[音楽]ダン・クレアリー「Andante in steel」
湯川麻美子

これは湯川さんという女優バレリーナにマイレンから捧げられたラブレターだと感じた。「椿姫」のマルグリットを思わせるようなドレスに身を包んだ湯川さんがカーテンの向こうから現れて、椅子に腰かける。様々な感情を露わす彼女。栄光、苦悩、老いの恐怖を、時にはぎくしゃくとした動きで表現。やがて湯川さんは、片方のポワントを脱ぎ、ポワントのリボンで自分の首を絞める動作までする。そして首にポワントのリボンを巻き付けたまま、片足はポワント、もう片方は裸足で、それでいてポワント状態でパ・ドブレしながら去っていく。表現者としての湯川さんを余すところ見せ、そして振付としてのオリジナリティもある。サンクトペテルブルグで振付についてしっかりと学んだマイレンならではの、巧みさと、湯川さんへの想いが感じられ、思わず胸がいっぱいになった。椅子というモチーフは「Revelation」と共通するものであり、この二つの女性ソロが、この日の舞台で最も際立った鮮烈な表現であったと言える。


「Phases」 振付:福田圭吾
[音楽]スティーブ・ライヒ「New York Counterpoint : Fast」
    ヨハン・セバスティアン・バッハ & シャルル・グノー「アヴェ・マリア
菅野英男、寺田亜沙子、五月女遥、丸尾孝子、石山沙央理、成田遥

菅野さんと寺田さんのデュオが描くしっとりとした世界と、残り4人の女性ダンサーによるアスレチックな動きの2面性がある作品だが、どうもこの二つの世界観が融合しなくてちぐはぐなイメージが残ってしまった。菅野さんは、普段の古典作品で見せる姿と違った一面を見せてくれてとても素敵だったのだが。


「Dancer Concerto」振付:小口邦明
[音楽]ヨハネス・ブラームス「ピアノ協奏曲第二番 Op.83 第二楽章」
細田千晶、小口邦明、小柴富久修、林田翔平、原健太、若生愛、柴田知世、原田舞子

新国立劇場の小劇場の小さな舞台で、まさかシンフォニックバレエが観られるとは。舞台が狭いので若干踊りづらそうではあったが、ブラームスのピアノコンチェルトに合わせた美しい作品で、音楽性豊かで目に快い。普段真ん中で踊ることが少ない若手ダンサーたちをたっぷり見ることができたのも楽しかった。バランシンの亜流といえばそれまでなのだが、それでも主役が代わる代わる入れ替わっていく構成はきっちりしているので、大きな舞台に移し替えても映えると思われる。ダンサーでは、女性は断然細田さん、男性はオープニングで真ん中を踊った林田さんと、振付を手掛けた小口さんが美しかった。


というわけで、まだ3回目の催しではあり、まだまだ玉石混交の部分もある公演ではあるのだが、小さな会場でダンサーたちの息遣いが聞こえてくるほどの近い距離で、彼らが創作した荒削りの作品を観ることができるのはとてもスリリングであり、大変楽しめた。貝川さんのように、本公演で作品が上演されるようになった振付家も出現した。また、普段はコール・ド・バレエでしか観ることができない若手ダンサーが作品の真ん中やソロを踊るところを見ることができるのも嬉しい企画である。あともう少し手を入れれば傑作になる、というレベルの作品もあった。

「First Steps」の時は、作品数が非常に多くて、クオリティも様々であり「石」レベルの作品が多かったものの、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさと、親密な空気があった。3回目となると、ある程度のクオリティまで全体のレベルが上がってきた分、もう少しフォーマルに感じられた。来シーズンの第4回は、中劇場での公演に格上げとなる。更なるクオリティの上昇も期待できる反面、少しだけ寂しい気持ちもある。

いずれにしても、この試みが継続していることは良いことであり、デヴィッド・ビントレー前監督が蒔いた素晴らしい種である。さらに新しい振付家の才能が出てくることを期待し、そしてその作品がもっと、本公演の方でもどんどん上演されるようになることを願う。とにかく、今の新国立劇場バレエ団は、新しい振付家の作品を上演することが皆無なので、その状況に風穴を開けてほしいのだ。

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